説明

吸湿性成形体

【課題】電子デバイス等の装置内部に侵入した水分を容易かつ確実に吸湿できる材料を提供する。
【解決手段】吸湿剤及び樹脂成分を含有する吸湿性成形体に係る。吸湿剤が、アルカリ土類金属酸化物及び硫酸塩の少なくとも1種を含む。樹脂成分が、フッ素系、ポリオレフィン系、ポリアクリル系、ポリアクリロニトリル系、ポリアミド系、ポリエステル系及びエポキシ系の少なくとも1種の高分子材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸湿性成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
電池、キャパシタ(コンデンサ)、表示素子等の電子デバイスは、超小型化・超軽量化の一途をたどっている。これらの電子部品は、必ず外装部の封止工程において、ゴム系シール材あるいはUV硬化性樹脂等の樹脂系接着剤を用いて封止が行われる。ところが、これらの封止方法では、保存中又は使用中にシール材を通過する水分により電子部品の性能劣化が引き起こされる。すなわち、電子デバイス内に侵入した水分により、電子デバイス内部の電子部品が変質又は腐食するおそれがある。例えば、有機電解質を用いる電池又はコンデンサでは、その電解質中に水分が混入すると電気伝導度の変化、侵入水分の電気分解等が起こり、さらに端子間の電圧の降下やガス発生による外装ケースの歪みや漏液を生じることがある。このように、電子デバイス内に侵入した水分により、電子デバイスの性能安定性・信頼性を維持することが困難となっている。
【0003】
また、これを解決するためにハーメチクシール又は金属溶接を行うことも考えられる。ところが、これらの技術では、外装ケースの膨れや内部減圧による歪み、ひいては内部の機能材料の化学変化が引き起こされる。
【0004】
他方、これらの電子デバイスを組み立てる工程では、全工程にわたって湿度を0に維持することは事実上不可能であるため、例えば電子デバイス完成後のエージング工程中において、組立工程中に電子デバイス中に侵入した水分を吸湿することが必要不可欠となる。ところが、前記のように、電子デバイス内に侵入した水分を確実かつ容易に吸湿する技術は未だ確立されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の主たる目的は、これら従来技術の問題を解消し、電子デバイス等の装置内部に侵入した水分を容易かつ確実に吸湿できる材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、これら従来技術の問題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、特定の吸湿性成形体が上記目的を達成できることを見出し、ついに本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の吸湿性成形体に係るものである。
1.吸湿剤及び樹脂成分を含有する吸湿性成形体。
2.吸湿剤が、アルカリ土類金属酸化物及び硫酸塩の少なくとも1種を含む請求項1記載の吸湿性成形体。
3.吸湿剤が、CaO、BaO及びSrOの少なくとも1種である前記項1記載の吸湿性成形体。
4.吸湿剤として、比表面積10m/g以上の粉末が用いられている前記項1記載の吸湿性成形体。
5.吸湿剤として、比表面積40m/g以上の粉末が用いられている前記項1記載の吸湿性成形体。
6.吸湿剤が吸湿性成形体中30〜95重量%含有されている前記項1記載の吸湿性成形体。
7.樹脂成分が、フッ素系、ポリオレフィン系、ポリアクリル系、ポリアクリロニトリル系、ポリアミド系、ポリエステル系及びエポキシ系の少なくとも1種の高分子材料である前記項1記載の吸湿性成形体。
8.さらにガス吸着剤を含有する前記項1記載の吸湿性成形体。
9.ガス吸着剤が、無機多孔質材料からなる前記項8記載の吸湿性成形体。
10.吸湿性成形体表面の一部又は全部に樹脂被覆層が形成されている前記項1記載の吸湿性成形体。
11.樹脂成分がフィブリル化されている前記項1記載の吸湿性成形体。
12.吸湿剤としてCaO、BaO及びSrOの少なくとも1種であって比表面積10m/g以上の粉末が用いられ、かつ、樹脂成分としてフッ素系樹脂が用いられてなる前記項1記載の吸湿性成形体。
13.フッ素系樹脂がフィブリル化されている前記項12記載の吸湿性成形体。
14.前記項1記載の電子デバイス用吸湿性成形体。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の吸湿性成形体は、吸湿剤及び樹脂成分を含有する。吸湿性成形体の形状は限定的でなく、最終製品の用途、使用目的、使用部位等に応じて適宜設定すれば良く、例えばシート状、ペレット状、板状、フィルム状、粒状(造粒体)等を挙げることができる。
【0009】
吸湿剤としては、少なくとも水分を吸着できる機能を有するものであれば良いが、特に化学的に水分を吸着するとともに吸湿しても固体状態を維持する化合物が好ましい。このような化合物としては、例えば金属酸化物、金属の無機酸塩・有機酸塩等が挙げられるが、本発明では特にアルカリ土類金属酸化物及び硫酸塩の少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0010】
アルカリ土類金属酸化物としては、例えば酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ストロンチウム(SrO)が挙げられる。
【0011】
硫酸塩としては、例えば硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、硫酸カルシウム(CaSO)、硫酸マグネシウム(MgSO)、硫酸コバルト(CoSO)、硫酸ガリウム(Ga(SO)、硫酸チタン(Ti(SO)、硫酸ニッケル(NiSO)等が挙げられる。その他にも、本発明の吸湿剤として吸湿性を有する有機化合物も使用できる。
【0012】
本発明の吸湿剤としては、アルカリ土類金属酸化物が好ましい。特に、CaO、BaO及びSrOの少なくとも1種が好ましい。最も好ましくはCaOである。
【0013】
本発明の吸湿剤は、粉末の形態で含有させることが好ましい。この場合、粉末の比表面積(BET比表面積)は、通常10m/g以上、さらには30m/g以上、特に40m/g以上であることが好ましい。このような吸湿剤としては、例えば水酸化カルシウムを900℃以下(好ましくは700℃以下、最も好ましくは500℃以下(特に490〜500℃)で加熱して得られるCaO(粉末)を好適に用いることができる。本発明では、BET比表面積10m/g以上、さらには30m/g以上、特に40m/g以上のCaO粉末を最も好ましく用いることができる。
【0014】
一方、樹脂成分としては、吸湿剤の水分除去作用を妨げないものであれば特に限定的でなく、好ましくは気体透過性高分子材料(すなわち、ガスバリアー性の低い高分子材料)を好適に用いることができる。例えば、フッ素系、ポリオレフィン系、ポリアクリル系、ポリアクリロニトリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリカーボーネート系等の高分子材料が挙げられる。気体透過性は、最終製品の用途、所望の特性等に応じて適宜設定すれば良い。
【0015】
本発明では、これら高分子材料の中でも、フッ素系、ポリオレフィン系等が好ましい。具体的には、フッ素系としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等が挙げられる。ポリオレフィン系としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン等のほか、これらの共重合体等が挙げられる。これら樹脂成分のうち、本発明では、フッ素系樹脂が好ましい。
【0016】
本発明では、吸湿剤及び樹脂成分の含有量はこれらの種類等に応じて適宜設定すれば良いが、通常は吸湿剤及び樹脂成分の合計量を100重量%として吸湿剤30〜95重量%程度及び樹脂成分70〜5重量%程度にすれば良い。好ましくは吸湿剤50〜85重量%程度及び樹脂成分50〜15重量%、最も好ましくは吸湿剤55〜85重量%程度及び樹脂成分45〜15重量%とすれば良い。
【0017】
本発明では、その効果を妨げない範囲内で、必要に応じて他の成分を適宜添加することもできる。例えば、ガス吸収性を示す材料(ガス吸着剤)を配合することができる。ガス吸着剤としては、シリカ、アルミナ、合成ゼオライト等の無機多孔質材料を例示することができる。ガス吸着剤の含有量は限定的でないが、通常は吸湿剤及び樹脂成分の合計量100重量部に対して3〜15重量部程度とすれば良い。
【0018】
また、本発明の吸湿性成形体は、必要に応じてその表面上の一部又は全部に樹脂成分を含む樹脂被覆層が形成されていても良い。これにより、吸湿性成形体の吸湿性能を制御することができる。樹脂被覆層の樹脂成分としては、気体透過性の高い材料であれば良く、具体的には吸湿性成形体に含まれる上記樹脂成分と同様のものを採用することができる。好ましくは、上記ポリオレフィン系のものを使用することができる。
【0019】
上記樹脂成分中には、必要に応じて無機材料又は金属材料からなる粉末を分散させても良い。これにより、急激な温度変化又は湿度変化に対する耐久性等をより高めることができる。特に、マイカ、アルミニウム粉等のリーフィング現象を示す粉末(鱗片状粒子)が好ましい。上記粉末の含有量は特に限定的でないが、通常は樹脂被覆層中30〜50重量%程度とすれば良い。
【0020】
樹脂被覆層の厚さは、所望の吸湿性能、樹脂被覆層で用いる樹脂成分の種類等に応じて適宜設定できるが、通常は0.5〜20μm程度、好ましくは0.5〜10μmとすれば良い。このため、上記粒子の粒径は、一般に樹脂被覆層の厚さよりも小さくなるように設定すれば良い。
【0021】
本発明の吸湿性成形体は、これらの各成分を均一に混合し、所望の形状に成形することによって得られる。この場合、吸湿剤、ガス吸着剤等は予め十分乾燥させてから配合することが好ましい。また、樹脂成分との混合に際しては、必要に応じて加熱して溶融状態としても良い。成形方法は、公知の成形又は造粒方法を採用すれば良く、例えばプレス成形(ホットプレス成形等を含む。)、押し出し成形等のほか、転動造粒機、2軸造粒機等による造粒を適用することができる。
【0022】
吸湿性成形体がシート状である場合、このシート状成形体をさらに延伸加工したものも吸湿性シートとして好適に用いることができる。延伸加工は、公知の方法に従って実施すれば良く、一軸延伸、二軸延伸等のいずれであっても良い。
【0023】
また、樹脂被覆層を形成する場合、その形成方法は限定的でなく、公知の積層方法等に従って実施すれば良い。例えば、吸湿性成形体がシートである場合は、そのシートの表面及び裏面の少なくとも一方に、予め成形された樹脂被覆層用シート又はフィルムを積層すれば良い。
【0024】
例えば、図1に示すように、吸湿性シート(1)の裏面に樹脂被覆層(2)を形成することができる。また、図2に示すように、吸湿性シート(1)の表及び裏面に樹脂被覆層(2)(2)を形成することもできる。
【0025】
吸湿性成形体をシート状とする場合のシート厚さは、最終製品の使用目的等に応じて適宜設定すれば良い。例えば、吸湿性成形体をキャパシタ等の電子デバイスに適用する場合は、通常50〜400μm程度、好ましくは100〜200μmとすれば良い。これらシート厚さは、樹脂被覆層を有する場合は、樹脂被覆層を含めた厚さである。
【0026】
本発明の吸湿性成形体は、樹脂成分がフィブリル化されていることが好ましい。フィブリル化によって、いっそう優れた吸湿性を発揮することができる。フィブリル化は、吸湿性成形体の成形と同時に実施しても良いし、あるいは成形後の加工により実施しても良い。例えば、樹脂成分と吸湿剤とを乾式混合して得られた混合物を圧延することにより樹脂成分のフィブリル化を行うことができる。また例えば、本発明成形体をさらに前記のように延伸加工を施すことによってフィブリル化を行うことができる。より具体的には、CaO、BaO及びSrOの少なくとも1種の吸湿剤粉末とフッ素系樹脂粉末(例えば、ポリテトラフルオロエチレン等)とを乾式混合した後、得られた混合物を圧延することによりフィブリル化された吸湿性成形体を製造することができる。圧延又は延伸は、公知の装置を用いて実施すれば良い。フィブリル化の程度は、最終製品の用途、所望の特性等に応じて適宜調整することができる。吸湿剤粉末は、前記の比表面積を有するものを用いることが好ましい。フッ素系樹脂粉末は限定的でなく、公知又は市販のフッ素系樹脂粉末(粒度)をそのまま使用すれば良い。
【0027】
本発明の吸湿性成形体は、吸湿が必要な箇所又は部位に常法により設置すれば良い。例えば、電子デバイスの容器内雰囲気中の水分を吸湿する場合は、容器内面の一部又は全部に吸湿性成形体を固定すれば良い。また、有機電解質を用いるキャパシタ、電池等において、有機電解質中の水分を吸湿する場合は、有機電解質中に吸湿性成形体を存在させれば良い。
【0028】
上記の固定方法は、容器に確実に固定できる方法であれば特に制限されない。例えば、吸湿性成形体と容器とを公知の粘着テープ、接着剤(好ましくは無溶剤型接着剤)等により貼着する方法、吸湿性成形体を容器に熱融着させる方法、ビス等の固定部材により成形体を容器に固定する方法等が挙げられる。
【0029】
例えば、図3に示すように、表及び裏面に樹脂被覆層を有する吸湿性シートにおいて、離型紙(4)を有する接着層(3)をシート上に形成すれば、使用時に離型紙を剥がし、接着層により固定することができる。また、図4に示すように、エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)等を用いた無溶剤型接着剤(5)により容器に固定することもできる。無溶剤型接着剤は、市販品を用いることもできる。
【0030】
本発明によれば、吸湿性成形体を採用しているので、電子デバイス等の装置内部に侵入した水分をより容易かつ確実に除去することができる。
【0031】
これにより、乾燥手段の設置を機械化することも可能となる。また、これに伴い、雰囲気内に水分が侵入する機会が減り、当初から高い乾燥状態をもつ雰囲気を作り出すことができる。すなわち、高い乾燥状態でデバイスを製造できるとともに製造後も確実に水分を除去できるので、より安定性・信頼性の高いデバイスを工業的規模で提供することが可能となる。
【0032】
また、乾燥手段として従来の乾燥剤(粉末)をそのまま用いた場合と異なり、粉末が脱落して容器に散乱するという問題も回避することができる。さらに、粉末を使用する場合は収納部の確保が必要であったが、本発明ではそのような必要がなくなり、デバイスの小型化・軽量化にも貢献することができる。
【0033】
このような特徴をもつ本発明の吸湿性成形体は、電子材料、機械材料、自動車、通信機器、建築材料、医療材料、精密機器等のさまざまな用途への応用が期待される。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を示し、本発明の特徴とするところをより一層明確にする。但し、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0035】
実施例1
シート状の吸湿性成形体を作製した。
【0036】
吸湿剤であるCaO粉末(純度99.9%)を900℃で1時間加熱して十分脱水させ、次いで180〜200℃の限率乾燥雰囲気中で冷却し、最終的に室温まで冷却した。得られたCaO(BET比表面積約3m/g)60重量%及び樹脂成分としてポリエチレン(分子量:約10万)40重量%を乾式混合した後、約230℃に加熱して溶融で混練し、この混練物をTダイで押し出してシート状に成形することにより、厚さ300μmのシート状吸湿性成形体を得た。
【0037】
実施例2
実施例1と同じ組成のシート状吸湿性成形体の表及び裏面に同時押出で低密度ポリエチレンからなる樹脂被覆層(各厚さ約3μm)を積層し、合計厚さ300μmとなるようにシートを成形した。
【0038】
実施例3
実施例1と同じ組成のシート状吸湿性成形体の表及び裏面に同時押出で低密度ポリエチレンからなる樹脂被覆層(各厚さ約12μm)を積層し、合計厚さ300μmとなるようにシートを成形した。
【0039】
試験例1
実施例1〜3で得られたシートについて、吸湿による重量経時変化を調べた。各シート片(縦25mm×横14mm×厚さ300μm)を温度50℃及び相対湿度80%RHの雰囲気下に設置し、一定時間ごとの重量増加率(%)を測定した。重量増加率(%)は、次式により求めた。
重量増加率(%)=(シート片の重量増加/試験前の吸湿剤の重量)×100
その結果を表1及び図5に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
なお、図5には、比較のため、2種類の吸湿剤の粉末のみの重量変化を調べた結果も併せて示す。図5中、黒い丸印は酸化カルシウム粉末単独(純度99.9%)、白い丸印は酸化カルシウム粉末単独(純度98.0%)、黒い三角印は実施例1、白い三角印は実施例2、黒い四角印は実施例3をそれぞれ示す。
【0042】
図5の結果からも明らかなように、本発明の吸湿性成形体では、適度な吸湿作用が得られることがわかる。これにより、本発明の吸湿性成形体を電子デバイス等に設置した場合、電子デバイス内の初期水分を除去できるとともに、封止剤を通過して侵入してきた水分も確実に除去できることがわかる。
【0043】
実施例4
吸湿剤としてSrO粉末(粒度10μmパス)60重量%及び樹脂成分としてフッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))40重量%を用いた。これらを粉末状態で十分に混合した。得られた混合物を圧延ロールでシート状に圧延成形し、厚さ300μmのシートを得た。得られたシートは、PTFE樹脂がフィブリル化されており、SrOを含有した多孔質構造体となっていた。
【0044】
実施例5
吸湿剤としてSrO粉末(粒度10μmパス)60重量%及び樹脂成分としてポリエチレン40重量%を使用したほかは、実施例1と同様にして厚さ300μmのシート状吸湿性成形体を得た。
【0045】
実施例6
吸湿剤として実施例1と同じCaO粉末を用いたほかは、実施例4と同様にして厚さ300μmのフィブリル化されたシートを得た。
【0046】
試験例2
実施例4〜5で得られたシートについて、吸湿による重量経時変化を調べた。各シート片(縦25mm×横14mm×厚さ300μm)を温度20℃及び相対湿度65%RHの雰囲気下に設置し、一定時間ごとの重量増加率(%)を測定した。重量増加率は、試験例1と同様にして算出した。その結果を表2及び図6に示す。
【0047】
【表2】

【0048】
実施例7
吸湿剤としてBET比表面積48m/gのCaO粉末(粒度10μmパス)60重量%及び樹脂成分としてポリエチレン(分子量:約10万)40重量%を用いた。これらを乾式混合した後、約230℃に加熱して溶融で混練し、この混練物をTダイで押し出してシート状に成形することにより、厚さ300μmのシート状吸湿性成形体を得た。なお、上記CaO粉末は、水酸化カルシウムを窒素ガス中500℃で焼成し、上記比表面積に調整したものを用いた。
【0049】
実施例8
吸湿剤として実施例7と同じCaO粉末60重量%及び樹脂成分としてフッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))粉末40重量%を用いた。これらを粉末状態で十分混合した。得られた混合物を圧延ロールでシート状に圧延成形し、厚さ300μmのシートを得た。得られたシートは、PTFE樹脂がフィブリル化されており、CaOを含有した多孔質構造体となっていた。
【0050】
試験例3
実施例7及び8で得られたシートについて、吸湿による重量経時変化を調べた。各シート片(縦25mm×横14mm×厚さ300μm)を温度20℃及び相対湿度65%RHの雰囲気下に設置し、一定時間ごとの重量増加率(%)を測定した。重量増加率は、試験例1と同様にして算出した。その結果を表3及び図7に示す。なお、吸湿剤単独(高比表面積CaO)による試験結果も併せて示す。
【0051】
【表3】

【0052】
試験例4
実施例1及び6で得られたシートについて、試験例3と同様の試験を実施した。その結果を表4及び図8に示す。なお、吸湿剤単独(低比表面積CaO)による試験結果も併せて示す。
【0053】
【表4】

【0054】
実施例9
吸湿剤であるBaO粉末を900℃で1時間加熱して十分脱水させ、次いで180〜200℃の限率乾燥雰囲気中で冷却し、最終的に室温まで冷却した。このBaO60重量%及び樹脂成分としてポリエチレン(分子量:約10万)40重量%を乾式混合した後、約230℃に加熱して溶融で混練し、この混練物をTダイで押し出してシート状に成形することにより、厚さ300μmのシート状吸湿性成形体を得た。
【0055】
実施例10
吸湿剤として実施例9と同じBaO60重量%及び樹脂成分としてフッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))40重量%を粉末状態で十分混合した。得られた混合物を圧延ロールでシート状に圧延成形し、厚さ300μmのシートを得た。得られたシートは、PTFE樹脂がフィブリル化されており、BaOを含有した多孔質構造体となっていた。
【0056】
試験例5
実施例9及び10で得られたシートについて、試験例3と同様の試験を実施した。その結果を表5及び図9に示す。なお、吸湿剤単独による試験結果も併せて示す。
【0057】
【表5】

【0058】
試験例6
実施例4、6、8及び10で得られたシートについて、試験例3と同様の試験を実施した。その結果を表6及び図10に示す。
【0059】
【表6】

【0060】
以上の結果より、本発明吸湿体はいずれも優れた吸湿性を発揮できることがわかる。とりわけ、BET比表面積48m/gという高比表面積のCaO粉末を用いて成形した実施例8の成形体が最も高い吸湿性を示すことがわかる。また、CaOは、安全性が高いという点からも他のものよりも好ましいと言える。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、本発明の吸湿性成形体の一例を示す図である。
【図2】図2は、本発明の吸湿性成形体の一例を示す図である。
【図3】図3は、本発明の吸湿性成形体の一例を示す図である。
【図4】図4は、本発明の吸湿性成形体の一例を示す図である。
【図5】図5は、試験例1における重量経時変化を調べた結果を示す図である。
【図6】図6は、試験例2における重量経時変化を調べた結果を示す図である。
【図7】図7は、試験例3における重量経時変化を調べた結果を示す図である。
【図8】図8は、試験例4における重量経時変化を調べた結果を示す図である。
【図9】図9は、試験例5における重量経時変化を調べた結果を示す図である。
【図10】図10は、試験例6における重量経時変化を調べた結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸湿剤及び樹脂成分を含有する吸湿性成形体。
【請求項2】
吸湿剤が、アルカリ土類金属酸化物及び硫酸塩の少なくとも1種を含む請求項1記載の吸湿性成形体。
【請求項3】
吸湿剤が、CaO、BaO及びSrOの少なくとも1種である請求項1記載の吸湿性成形体。
【請求項4】
吸湿剤として、比表面積10m/g以上の粉末が用いられている請求項1記載の吸湿性成形体。
【請求項5】
吸湿剤として、比表面積40m/g以上の粉末が用いられている請求項1記載の吸湿性成形体。
【請求項6】
吸湿剤が吸湿性成形体中30〜95重量%含有されている請求項1記載の吸湿性成形体。
【請求項7】
樹脂成分が、フッ素系、ポリオレフィン系、ポリアクリル系、ポリアクリロニトリル系、ポリアミド系、ポリエステル系及びエポキシ系の少なくとも1種の高分子材料である請求項1記載の吸湿性成形体。
【請求項8】
さらにガス吸着剤を含有する請求項1記載の吸湿性成形体。
【請求項9】
ガス吸着剤が、無機多孔質材料からなる請求項8記載の吸湿性成形体。
【請求項10】
吸湿性成形体表面の一部又は全部に樹脂被覆層が形成されている請求項1記載の吸湿性成形体。
【請求項11】
樹脂成分がフィブリル化されている請求項1記載の吸湿性成形体。
【請求項12】
吸湿剤としてCaO、BaO及びSrOの少なくとも1種であって比表面積10m/g以上の粉末が用いられ、かつ、樹脂成分としてフッ素系樹脂が用いられてなる請求項1記載の吸湿性成形体。
【請求項13】
フッ素系樹脂がフィブリル化されている請求項12記載の吸湿性成形体。
【請求項14】
請求項1記載の電子デバイス用吸湿性成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−137165(P2011−137165A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24694(P2011−24694)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【分割の表示】特願2006−189059(P2006−189059)の分割
【原出願日】平成13年5月17日(2001.5.17)
【出願人】(000109037)ダイニック株式会社 (55)
【Fターム(参考)】