説明

吸着ノズルの駆動制御方法

【課題】電子部品や基板の損傷を防止する。
【解決手段】吸着ノズル12を下降ストッパに当接させた状態からボイスコイルモータ31により吸着ノズル12を上昇させ、ロードセル15で検出される荷重に基づいて、吸着ノズル12が下降ストッパから離間するときのボイスコイルモータ31の上昇駆動力を予め確認し、確認された上昇駆動力をボイスコイルモータ31から付与させた状態で、上下動モータ21により可動ブラケット14を下降させて吸着ノズル12の先端部を電子部品C又は基板に当接させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着ノズルの駆動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子部品実装装置は、吸着ノズルを搭載してX−Y平面を自在に移動可能なヘッドを備えており、電子部品のフィーダーから吸着により電子部品を受け取り、基板の部品実装箇所までヘッドが移動して、吸着ノズルから電子部品を解放することで電子部品の搭載を行っている。
【0003】
かかるヘッドには、当該ヘッドの移動時には吸着ノズルを上昇させ、電子部品の受け取り時及び搭載時には吸着ノズルを下降させる機構が設けられている。具体的には、ヘッドは、昇降可能に支持された可動ブラケットを上下動させる上下動モータと、可動ブラケットに対して回転可能且つ上下動可能に支持されると共に吸着ノズルを上下動可能に支持する回転ケースと、可動ブラケットに搭載され、回転ケースを介して吸着ノズルを上下動させるボイスコイルモータと、回転ケースに設けられ、吸着ノズルの先端部に生じる荷重を検出するロードセルとを備えている。
【0004】
かかるヘッドでは、基板への電子部品の搭載時において、回転ケースが上下に振動しないようボイスコイルモータにより当該回転ケースを下方へ移動させて可動ブラケットに当接させた状態で、上下動モータにより可動ブラケットを下降させる。そして、ロードセルにより吸着ノズルの先端部が電子部品を介して基板に接触したことが検出されると、検出荷重が所定の目標荷重となるようにボイスコイルモータを上昇方向に駆動させて、部品搭載時の荷重の調節を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、吸着ノズルと可動部分との間に弾性体を設け、この弾性体のばね定数を、可動部分の質量や、弾性体のばね粘性、衝突直後の電子部品と吸着ノズルとの歪み速度の初期値から算出したものとすることにより、電子部品や基板への衝撃荷重を軽減する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−158743号公報
【特許文献2】特許第3659132号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、吸着ノズルが電子部品を介して基板に接触した際に、ボイスコイルモータによる押圧荷重が電子部品や基板に瞬間的に加わり、これら電子部品や基板を損傷させてしまう恐れがある。電子部品や基板に過大な荷重が加わらないようロードセルで監視していても、ロードセルやボイスコイルモータには反応の遅れがあるため、瞬間的な荷重まで抑制することは困難である。
【0008】
また、上記特許文献2に記載の技術では、摺動部の摩擦や経時劣化の影響が加味されていないために弾性体のばね定数が低めに算出されてしまう。その結果、衝撃荷重を十分に軽減することができず、電子部品や基板を損傷させてしまう恐れがある。加えて、摺動部の摩擦の影響は、その組立状態に依存して変化するため、単純に一定値を用いて数式内で考慮することが難しい。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、電子部品や基板の損傷を防止することができる吸着ノズルの駆動制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
昇降可能な移動体と、前記移動体に昇降動作を付与する第一の昇降駆動源と、前記移動体に対して昇降動作可能であると共に先端部で電子部品を吸着する吸着ノズルと、前記吸着ノズルに昇降動作を付与する第二の昇降駆動源と、前記第二の昇降駆動源から前記吸着ノズルに付与される荷重を検出する荷重検出手段と、前記移動体に設けられ前記吸着ノズルの下降を所定の高さで制止する下降ストッパとを備え、前記吸着ノズルに吸着させた前記電子部品を基板に搭載させるヘッドにおける吸着ノズルの駆動制御方法において、
前記吸着ノズルを前記下降ストッパに当接させた状態から前記第二の昇降駆動源により前記吸着ノズルを上昇させ、前記荷重検出手段で検出される荷重に基づいて、前記吸着ノズルが前記下降ストッパから離間するときの前記第二の昇降駆動源の上昇駆動力を予め確認する駆動力確認工程を備え、
前記駆動力確認工程で確認された前記上昇駆動力を前記第二の昇降駆動源から付与させた状態で、前記第一の昇降駆動源により前記移動体を下降させて前記吸着ノズルの先端部を前記電子部品又は前記基板に当接させることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の吸着ノズルの駆動制御方法において、
前記荷重検出手段として、前記吸着ノズルが前記下降ストッパから離間したときに、検出される荷重の変化が所定範囲内となるものを用い、
前記駆動力確認工程では、前記第二の昇降駆動源の上昇駆動力を所定時間又は所定回数だけ変化させたときであって、前記荷重検出手段で検出された荷重の変化が前記所定範囲内であった場合に、前記所定時間又は前記所定回数だけ変化させる前の前記第二の昇降駆動源の上昇駆動力を、前記吸着ノズルが前記下降ストッパから離間するときの前記第二の昇降駆動源の上昇駆動力とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、吸着ノズルが下降ストッパから離間するときの上昇駆動力を第二の昇降駆動源(例えば、ボイスコイルモータ)に付与させた状態で、吸着ノズルを下降させて当該吸着ノズルの先端部を電子部品又は基板に当接させるので、従来と異なり、吸着ノズルと電子部品又は基板との当接時に第二の昇降軸の自重やボイスコイルモータによる下方への押圧荷重が電子部品又は基板に加わることがない。したがって、吸着ノズルの下降速度を低下させる必要なく、電子部品や基板の損傷を防止することができる。
【0013】
また、荷重検出手段で検出される荷重に基づいて、吸着ノズルが下降ストッパから離間するときの第二の昇降駆動源の上昇駆動力を予め確認するので、摺動部の摩擦や経時劣化の影響等をも含む適切な上昇駆動力を求めることができる。したがって、電子部品や基板の損傷をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】電子部品実装装置の斜視図である。
【図2】吸着ノズルが下降ストッパから離間した状態の昇降装置の側断面図である。
【図3】吸着ノズルが下降ストッパに当接した状態の昇降装置の側断面図である。
【図4】昇降装置の制御構成を示すブロック図である。
【図5】吸着ノズルの駆動制御方法のフローチャートである。
【図6】吸着ノズルの駆動制御方法のタイミングチャートである。
【図7】駆動力確認工程のフローチャートである。
【図8】駆動力確認工程のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(電子部品実装装置の全体構成)
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、電子部品実装装置100の斜視図である。以下、図示のように、水平面において互いに直交する二方向をそれぞれX軸方向(基板搬送方向)とY軸方向(基板搬送方向との直交方向)とし、これらに直交する鉛直方向をZ軸方向というものとする。
電子部品実装装置100は、基板に各種の電子部品の搭載を行うものであって、図1に示すように、搭載される電子部品を供給する複数の電子部品フィーダー101及び電子部品フィーダー101を複数並べて保持するフィーダーバンク102からなる二組の部品供給部と、X軸方向に基板を搬送する基板搬送手段103と、当該基板搬送手段103による基板搬送経路の途中に設けられた基板に対する電子部品搭載作業を行うための基板保持部104と、複数(この例では三基)の吸着ノズル12をそれぞれ昇降可能に保持する昇降装置10と、各昇降装置10が固定されて電子部品の保持を行うヘッド106と、ヘッド106を二組の部品供給部と基板保持部104とを含んだ作業エリア内の任意の位置に駆動搬送するヘッド移動機構としてのX−Yガントリ107と、ヘッド106に搭載され、吸着ノズル12に吸着された電子部品の撮像を行う複数(この例では三基)の撮像手段としてのCCDカメラ108と、吸着ノズル12に保持された電子部品の垂直下方からの画像をCCDカメラ108により撮像可能とする撮像ミラー120と、上記各構成の動作制御を行う動作制御手段110とを備えている。
【0016】
かかる電子部品実装装置100の動作制御手段110は、電子部品フィーダー101の電子部品の受け渡し部101aから各吸着ノズル12に電子部品を吸着させる。また、動作制御手段110は、各吸着ノズル12に吸着された電子部品をそれぞれのCCDカメラ108で撮像して得られた撮像画像データから画像処理を行ってノズル先端部に対する電子部品の位置及びノズルの中心線を中心とする角度(向き)を求め、基板に対する吸着ノズル12の位置決めの補正並びに吸着ノズル12を回転させて電子部品の角度の補正を行い、電子部品の実装制御を行う。
【0017】
(吸着ノズルの昇降装置)
図2は、吸着ノズル12の昇降装置10の側断面図である。この図に示すように、吸着ノズル12の昇降装置10は、ヘッド106に固定支持された本体フレーム11と、ノズルホルダ13に保持されて電子部品Cをその先端部で吸着保持する吸着ノズル12と、上下動可能に本体フレーム11に支持された移動体としての可動ブラケット14と、可動ブラケット14を上下方向に駆動する第一の上下動手段20と、可動ブラケット14に設けられると共に当該可動ブラケット14からノズルホルダ13を介して吸着ノズル12を上下方向に沿って駆動する第二の上下動手段30と、吸着ノズル12に負圧を供給する負圧供給手段40と、吸着ノズル12に付与される荷重を検出する荷重検出手段としてのロードセル15と、上下方向に沿った軸を中心に吸着ノズル12の回転角度調節を行う回転角度調節手段50と、上記各構成の動作制御を行う動作制御手段60(図4参照)とを備えている。以下に各部を詳説する。
【0018】
本体フレーム11は、前述のようにヘッド106に固定支持され、X−Y平面(水平面)に沿って,例えば電子部品Cの受け取り位置や基板の搭載位置に搬送される。
【0019】
可動ブラケット14は、本体フレーム11の下部においてリニアガイド19を介して上下動可能に支持されている。この可動ブラケット14は、本体フレーム11に設けられた第一の上下動手段20により上下方向に駆動される。
【0020】
第一の上下動手段20は、本体フレーム11の上部において下方に出力軸を向けた状態で配設された回転駆動式の上下動モータ21(第一の昇降駆動源)と、その回転角度量を検出するエンコーダ22と、上下動モータ21の出力軸にカップリングを介して連結され,上下方向に沿った状態で回転自在に本体フレーム11に支持されたボールネジシャフト23と、このボールネジシャフト23により上下動が付与されるボールネジナット24とを有している。
ボールネジナット24は、可動ブラケット14に固定されており、上下動モータ21の回転駆動により回転角度量に応じて可動ブラケット14の上下方向の位置決めを行う。また、上記エンコーダ22は、その検出信号が動作制御手段60に出力され、動作制御手段60がこれに基づいて可動ブラケット14の現在位置を認識して上下動モータ21の動作制御を行うことを可能としている。
【0021】
吸着ノズル12は、下端部が先細に形成された管状体であり、当該先端部を電子部品Cに向けた状態で吸着保持が行われる。吸着ノズル12の上端部はノズルホルダ13に連結されている。
ノズルホルダ13は、後述するノズルシャフト41の下端部に設けられ、下端部に吸着ノズル12が着脱自在に取り付けられた筒状体である。
【0022】
負圧供給手段40は、下端部がノズルホルダ13に連結されたノズルシャフト41と、このノズルシャフト41の上端部に連結されたガスケット42とを備えている。このうち、ガスケット42は、吸着ノズル12が電子部品を吸着するための負圧の供給を行う図示しない負圧源たる吸気ポンプ或いはエジェクター等と接続可能となっている。
【0023】
上記ノズルシャフト41は、その上端部が本体フレーム11の上部近傍まで延出されており、後述するスプライン構造を介して回転角度調節手段50に連結されており、回転角度調節手段50から回転動作が付与される構造となっている。つまり、これにより、吸着ノズル12に鉛直上下方向を軸とする回転動作が付与され、吸着した電子部品の向きを調節することを可能としている。
また、ノズルシャフト41の下部は、可動ブラケット14に設けられた空気軸受け43により鉛直上下方向の軸回りに回転及び上下動可能に支持されている。空気軸受け43は、ノズルシャフト41の下部の外径よりわずかに大きな内径のスリーブであって、ノズルシャフト41との隙間に空気を供給することでノズルシャフト41をその中心位置に保持することができる。かかる空気軸受け43は非接触でノズルシャフト41を支持するので摩擦の発生がなく、ノズルシャフト41を円滑に回転及び上下動させることが可能である。
【0024】
回転角度調節手段50は、本体フレーム11の上部において下方に出力軸を向けた状態で配設された角度調節モータ51(回転駆動源)と、その回転角度量を検出するエンコーダ52と、角度調節モータ51の出力軸の下端部にカップリングを介して連結されたスプラインナット53とを備えている。
上記角度調節モータ51とスプラインナット53とは、前述したノズルシャフト41と同心となる位置に配設されており、ノズルシャフト41の上部の外周面はスプラインナット53に嵌合するスプライン軸となっている。かかるスプライン軸とスプラインナット53とによりスプライン構造が構成されている。
これにより、ノズルシャフト41は、角度調節モータ51のトルクが付与されると共に、角度調節モータ51及びスプラインナット53に対して上下動を行うことが可能となっている。
一方、エンコーダ52は角度調節モータ51の出力軸の回転角度量を動作制御手段60に出力しており、これに基づいて動作制御手段60は角度調節モータ51に所定の角度量の回転を生じるように回転駆動制御を行うことを可能としている。その結果、角度調節モータ51の出力軸からスプラインナット52,ノズルシャフト41及びノズルホルダ13を介して吸着ノズル12の回転駆動が行われ、吸着ノズル12の先端部に吸着保持された電子部品Cの向きを調節することが可能である。
【0025】
第二の上下動手段30は、ノズルシャフト41に隣接する配置で可動ブラケット14の上部に固定装備され、鉛直上下方向に沿って往復動作を行う出力軸を備えたボイスコイルモータ31と、ボイスコイルモータ31の出力軸の下端部に垂下支持され、ロードセル15を保持する支持枠32と、一端部がノズルシャフト41に連結され、他端部が支持枠32に支持された荷重アーム33と、荷重アーム33とロードセル15との間に介在する与圧バネ34と、荷重アーム33と支持枠32との間に介在する支持バネ35とを備えている。
【0026】
上記荷重アーム33の一端部はラジアル軸受け36を介してノズルシャフト41の中間位置に連結されており、当該ノズルシャフト41の鉛直軸回りの回転を許容し、鉛直上下方向についてはノズルシャフト41(吸着ノズル12)と荷重アーム33とが一体的に上下動を行うようになっている。また、この荷重アーム33は、前述した空気軸受け43の上側に設けられており、可動ブラケット14に対して吸着ノズル12及びノズルシャフト41を下降させると、空気軸受け43の上端部に荷重アーム33が当接し、それより下方への下降動作を規制する構造となっている(図3参照)。即ち、空気軸受け43は、第二の上下動手段30による吸着ノズル12の下降動作を規制する下降ストッパとしての機能も有していることとなる。
【0027】
支持枠32は、矩形の枠状であって、互いに対向する天板32aと底板32bとを備え、天板32aの上面にはボイスコイルモータ31の出力軸の下端部が固定連結され、天板32aの下面にはロードセル15が下向きに固定設置されている。また、荷重アーム33の他端部は支持枠32の天板32aと底板32bの間に位置し、当該荷重アーム33の他端部の上面とロードセル15の下面(荷重検出面)との間に前述した与圧バネ34が配設されている。また、荷重アーム33の他端部の下面と支持枠32の底板32bの上面との間には前述した支持バネ35が配設されている。
【0028】
上記のように荷重アーム33が上下のバネ34,35により挟まれた配置となることで、ボイスコイルモータ31の出力軸の駆動により荷重アーム33から空気軸受け43の上面に対して付与している荷重をロードセル15により検出させることが可能となっている。また、荷重アーム33から付与される荷重が、吸着ノズル12の先端部で電子部品を基板側に加圧するための荷重と一致する場合があり、その場合には、吸着ノズル12が搭載時の電子部品に付与する荷重を検出することも可能となっている。
【0029】
動作制御手段60は、図4に示すように、吸着ノズル12の昇降装置10の後述する各種制御を実行させる制御プログラムが書き込まれているROM60aと、制御プログラムに従って上下動モータ21,ボイスコイルモータ31,角度調節モータ51及び負圧供給手段40等の各部の動作を集中制御するCPU60bと、CPU60bの処理データをワークエリアに格納するRAM60cとを備えている。
【0030】
さらに、動作制御手段60には、その動作制御に必要となるデータの入力設定や動作の開始の指示入力等を行う設定入力手段64と、当該動作制御手段60からの制御信号に従って各モータ21,31,51を駆動する各駆動回路61,62,63と、エンコーダ22,52,ロードセル15の出力を検出信号として当該動作制御手段60に入力する各入力回路65,66,67が併設されている。
なお、動作制御手段60は、電子部品実装装置100の動作制御手段110と一体的に構成してもよい。
【0031】
(吸着ノズルの駆動制御方法)
続いて、電子部品Cが基板に搭載される際にCPU60bが実行する吸着ノズル12の駆動制御方法について、図5のフローチャート及び図6のタイミングチャートを参照して説明する。これは、CPU60bがROM60aに格納された所定のプログラムを実行することにより行われる処理である。
なお、ここでは、吸着ノズル12が電子部品Cの吸着を行い、角度調節モータ51により吸着ノズル12の先端部の電子部品Cの向きが既に調節されて、基板の搭載位置にヘッド106が搬送された状態にあることを前提とする。
【0032】
まず、CPU60bは、上下動モータ21を駆動させて、吸着ノズル12の先端部をヘッド106搬送時の高さZ3から(図6(1))、高さZ2まで高速で下降させる(ステップS1:図6(2))。このとき、ボイスコイルモータ(VCM)31は非駆動状態(出力V0)にあり、吸着ノズル12は可動ブラケット14に対して最も下降した位置、つまり、荷重アーム33が空気軸受け43の上面に当接した状態にある。なお、高さZ2は、ボイスコイルモータ31が非駆動状態で吸着ノズル12が最も下降した高さであり、吸着ノズル12の下端部が電子部品Cに届くことがない高さに設定されている。また、かかる状態におけるロードセル(LC)15の検出荷重はL0となっている。
【0033】
次に、CPU60bは、エンコーダ22の出力に基づいて吸着ノズル12の先端部が高さZ2に到達したか否かを判定し(ステップS2)、到達していないと判定した場合には(ステップS2;No)、ステップS1に戻る。
【0034】
吸着ノズル12の先端部が高さZ2に到達していると判定した場合には(ステップS2;Yes)、CPU60bは、吸着ノズル12の先端部を高さZ2で停止させると共に、ボイスコイルモータ31の出力をV1まで上げて当該ボイスコイルモータ31に上昇駆動力を作用させる(ステップS3:図6(3))。このときのボイスコイルモータ31の出力V1は、後述する駆動力確認工程によって予め設定されている出力値であり、より詳しくは、荷重アーム33が空気軸受け43の上面から丁度離間する出力値である。なお、吸着ノズル12の先端部を高さZ2で停止させたときに吸着ノズル12に対して下方への慣性力が作用するが、荷重アーム33が空気軸受け43の上面に当接した状態にあるので吸着ノズル12がこの慣性力によって下方へ移動することはなく、吸着ノズル12と電子部品Cとが接触する事態は生じない。
【0035】
次に、CPU60bは、上下動モータ21を駆動させて吸着ノズル12の低速での下降を開始する(ステップS4:図6(4))。このとき、ボイスコイルモータ31の出力はV1のままである。なお、このステップS4における吸着ノズル12の「低速」での下降とは、ステップS1における「高速」での下降に比べて相対的に遅いことを意味している。
【0036】
次に、CPU60bは、ロードセル15からの出力の変化に基づいて、吸着ノズル12の先端部が電子部品Cを介して基板に接触したか否かを判定する(ステップS5)。ここでは、CPU60bは、ロードセル15からの出力の変化がL0からL1まで変化していない場合には、吸着ノズル12が基板に接触していないと判定し(ステップS5;No)、当該ステップS5を繰り返す。
【0037】
一方、ロードセル15からの出力の変化がL0からL1まで変化していた場合には(図6(5))、CPU60bは、吸着ノズル12が基板に接触していると判定し(ステップS5;Yes)、そのときのZ軸高さをZ0としてRAM60cに記憶させると共に、電子部品Cが所定の荷重で基板に当接するようにボイスコイルモータ31に出力V2の下降駆動力を作用させる(ステップS6)。
【0038】
次に、CPU60bは、エンコーダ22の出力に基づいて吸着ノズル12の先端部が高さZ1に到達したか否かを判定し(ステップS7)、到達していないと判定した場合には(ステップS7;No)、当該ステップS7を繰り返す。なお、本実施形態においては、高さZ1は、基板の上面よりも1mm下方の高さとなっている。
【0039】
吸着ノズル12の先端部が高さZ1に到達していると判定した場合には(ステップS7;Yes:図6(6))、CPU60bは、上下動モータ21を停止させて当該高さZ1を保持すると共に、ロードセル15の出力がL2に保たれるようにボイスコイルモータ31の出力をV2に保持する(ステップS8)。なお、吸着ノズル12の先端部が高さZ1に到達していなくとも、ステップS6からボイスコイルモータ31の出力をV2に保持しておいてもよい。
【0040】
次に、CPU60bは、吸着ノズル12の先端部が高さZ1に到達してから所定の加圧時間T1が経過したか否かを判定し(ステップS9)、経過していない場合には(ステップS9;No)、当該ステップS9を繰り返す。そして、所定の加圧時間T1が経過していた場合には(ステップS9;Yes:図6(7))、CPU60bは、上下動モータ21を駆動させて吸着ノズル12の先端部を高さZ2まで低速で上昇させた後(図6(8))、高さZ3まで高速で上昇させる(ステップS10:図6(9))。また、このとき同時に、CPU60bは、ボイスコイルモータ31の出力をV0まで戻す。
以上により、電子部品Cが基板に搭載される際の吸着ノズル12の駆動制御が終了する。
【0041】
(駆動力確認工程)
続いて、上述の吸着ノズル12の駆動制御におけるステップS3でのボイスコイルモータ31の出力V1を予め確認する駆動力確認工程について、図7のフローチャート及び図8のタイミングチャートを参照して説明する。この工程は、CPU60bがROM60aに格納された所定のプログラムを実行することにより行われる処理である。
【0042】
まず、吸着ノズル12の先端部がどこにも触れておらず、且つ、荷重アーム33が空気軸受け43の上面に当接した状態、つまり吸着ノズル12を下降ストッパに当接させた状態とする(ステップT1)。
【0043】
次に、CPU60bは、ボイスコイルモータ31に所定ステップ量の上昇駆動力を作用させて、このときのロードセル15の出力値を取得する(ステップT2)。本実施形態では、5gfを所定ステップ量とする。
【0044】
次に、CPU60bは、ボイスコイルモータ31に更に所定ステップ量の上昇駆動力を作用させ、このときのロードセル15の出力値を取得する(ステップT3)。
そして、CPU60bは、この出力値が前回取得した出力値に対して所定のインポジション範囲内に入っているか否かを判定する(ステップT4)。本実施形態では、±4gfを所定のインポジション範囲とする。
【0045】
ここで、ステップT3で取得したロードセル15の出力値が前回取得した出力値に対して所定のインポジション範囲内に入っていない場合には(ステップT4;No)、ステップT3に移行する。
そして、ステップT3で取得したロードセル15の出力値が前回取得した出力値に対して所定のインポジション範囲内に入っていた場合には(ステップT4;Yes)、連続で所定のインポジション範囲内に入っていた回数が所定回数に達しているか否かを判定する(ステップT5)。本実施形態では、20回を所定回数とする。
【0046】
ステップT5において、連続で所定のインポジション範囲内に入っていた回数が所定回数に満たない場合には(ステップT5;No)、ステップT3に移行する。
そして、連続で所定のインポジション範囲内に入っていた回数が所定回数に達していた場合には(ステップT5;Yes)、所定回数だけ変化させる前のボイスコイルモータ31の出力値を、上記出力V1として設定する(ステップT6)。つまり、本実施形態では、20回連続で前回との差が±4gfの範囲内に入っていたときの最後のロードセル15の出力値V3から、5gf×20回=100gfを引いた値が出力V1となる。
【0047】
この駆動力確認工程によれば、荷重アーム33が空気軸受け43の上面から離間するとロードセル15の出力値は殆ど変化しなくなるので、このロードセル15の出力値の変化に基づいて、荷重アーム33が空気軸受け43の上面から離間するとき、つまり吸着ノズル12が下降ストッパから離間するときのボイスコイルモータ31の出力V1(上昇駆動力)を求めることができる。
【0048】
(作用・効果)
以上の吸着ノズル12の駆動制御方法によれば、つまり吸着ノズル12が下降ストッパから離間するときの上昇駆動力をボイスコイルモータ31に付与させた状態で、吸着ノズル12を下降させて当該吸着ノズル12の先端部を電子部品Cを介して基板に当接させるので、従来と異なり、吸着ノズル12と基板との当接時にボイスコイルモータ31による下方への押圧荷重が電子部品C又は基板に加わることがない。したがって、吸着ノズル12の下降速度を低下させる必要なく、電子部品Cや基板の損傷を防止することができる。
【0049】
また、ロードセル15で検出される荷重の出力値に基づいて、吸着ノズル12が下降ストッパから離間するときのボイスコイルモータ31の上昇駆動力(出力V1)を予め確認するので、摺動部の摩擦や経時劣化の影響等をも含む適切な上昇駆動力を求めることができる。したがって、電子部品Cや基板の損傷をより確実に防止することができる。
【0050】
また、吸着ノズル12が下降ストッパから離間するときの状態を保持できるので、吸着ノズル12を昇降させたときに吸着ノズル12が下降ストッパや上昇ストッパに当接する不具合を防止することができる。
【0051】
(その他)
なお、本発明は上記実施形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。
【0052】
例えば、上記実施形態では、基板への電子部品Cの搭載時に吸着ノズル12の駆動制御を行うものとしたが、電子部品Cの吸着時に同様に行ってもよい。
【0053】
また、駆動力確認工程では、ステップT5において、CPU60bはロードセル15の出力値が前回取得した出力値に対して所定のインポジション範囲内に所定回数入っているか否かを判定するものとしたが、所定回数でなく、所定時間としてもよい。
【0054】
また、荷重アーム33は下方に向かって当接し、ロードセル15は上方への荷重を検出するものとしたが、これらの上下方向が逆であってもよい。この場合には、図6,8に示すボイスコイルモータ31やロードセル15の出力値は正負が反転する。
【符号の説明】
【0055】
12 吸着ノズル
14 可動ブラケット(移動体)
15 ロードセル(荷重検出手段)
21 上下動モータ(第一の昇降駆動源)
31 ボイスコイルモータ(第二の昇降駆動源)
43 空気軸受け(下降ストッパ)
106 ヘッド
C 電子部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降可能な移動体と、前記移動体に昇降動作を付与する第一の昇降駆動源と、前記移動体に対して昇降動作可能であると共に先端部で電子部品を吸着する吸着ノズルと、前記吸着ノズルに昇降動作を付与する第二の昇降駆動源と、前記第二の昇降駆動源から前記吸着ノズルに付与される荷重を検出する荷重検出手段と、前記移動体に設けられ前記吸着ノズルの下降を所定の高さで制止する下降ストッパとを備え、前記吸着ノズルに吸着させた前記電子部品を基板に搭載させるヘッドにおける吸着ノズルの駆動制御方法において、
前記吸着ノズルを前記下降ストッパに当接させた状態から前記第二の昇降駆動源により前記吸着ノズルを上昇させ、前記荷重検出手段で検出される荷重に基づいて、前記吸着ノズルが前記下降ストッパから離間するときの前記第二の昇降駆動源の上昇駆動力を予め確認する駆動力確認工程を備え、
前記駆動力確認工程で確認された前記上昇駆動力を前記第二の昇降駆動源から付与させた状態で、前記第一の昇降駆動源により前記移動体を下降させて前記吸着ノズルの先端部を前記電子部品又は前記基板に当接させることを特徴とする吸着ノズルの駆動制御方法。
【請求項2】
前記荷重検出手段として、前記吸着ノズルが前記下降ストッパから離間したときに、検出される荷重の変化が所定範囲内となるものを用い、
前記駆動力確認工程では、前記第二の昇降駆動源の上昇駆動力を所定時間又は所定回数だけ変化させたときであって、前記荷重検出手段で検出された荷重の変化が前記所定範囲内であった場合に、前記所定時間又は前記所定回数だけ変化させる前の前記第二の昇降駆動源の上昇駆動力を、前記吸着ノズルが前記下降ストッパから離間するときの前記第二の昇降駆動源の上昇駆動力とすることを特徴とする請求項1に記載の吸着ノズルの駆動制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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