説明

吸着フィルタ材料とそれを用いた防護服及びフィルタ材料

【課題】本願発明は、生物学的及び化学的防護機能、特に化学兵器及び生物兵器等の化学的及び生物学的有毒物及び有害物に関する防護機能を有する吸着フィルタ材料を提供する。
【解決手段】本願発明の吸着フィルタ材料は、第1の外側支持層と、第2の外側支持層と、これら2つの外側支持層の間に配される吸着層からなる多層構造を有し、さらに前記吸着フィルタ材料は、少なくとも一つの触媒活性成分を有し、特に第1及び/若しくは第2の外側支持層が、前記触媒活性成分を有するものである。さらに、吸着フィルタ材料は、NBC防護材料(特にNBC防護衣類)において特に有益であり、且つフィルタの製造について有益である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、請求項1の前段部分に記載されるような生物学的化学的防護機能を有し、特にある種の防護材料、ある種のフィルタ及び/若しくはフィルタ材料の製造のための吸着フィルタ材料及びその使用に関する。また、本発明はさらに、本願発明の吸着フィルタ材料を使用して製造された防護材料、フィルタ及び/若しくはフィルタ材料に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚に吸収され、深刻な肉体的損傷(病毒)を引き起こす一連の材料がある。例としては、糜爛性毒ガスHd(イエロークロス及びマスタードガスとしても知られている)及び/若しくは神経ガスサリンである。そのような毒に接触する人は、適当な防護服を着用し、適当な防護材料によってこれらの防護されなければならない。
【0003】
原則として、3つの種類の防護服がある。生物学的及び化学的毒物に対して非透過性であり、着用者に対して急速な熱上昇を生じるゴム層を装着した空気及び水蒸気非透過性防護服と、高い着用生を提供する空気及び水蒸気透過性防護服と、水蒸気を透過させるが生物学的化学的毒物が透過しない層を備えた防護服である。このように、NBC防護衣類は、伝統的に非透過性システム(例えば、ブチルゴムからなる衣服又は層を具備する服)又は、活性炭(例えば、微粉末状活性炭、活性炭繊維材料又は球状カーボン等)に基づく浸透性、空気透過性吸着フィルタシステムのいずれかから製造される。
【0004】
空気非透過性層を備えた衣類は、化学的及び生物学的毒物に対してだけでなく戦争兵器薬物に対しても相対的に良好な防護性能を生じ、空気透過性吸着防護服は、化学的毒物に関してたいへん良好な防護効果を有するが、生物学的有害物に関しては不十分である。
【0005】
それゆえに、特に活性炭に基づく透過性吸着フィルタシステムは、活性炭を制生又は殺生触媒で浸漬することによって、触媒活性成分を付与される。
【0006】
そのような防護材料は、例えば特許文献1に記載されているように、特に炭化繊維の形状の活性炭に基づく吸着層を具備する多様な織物ガス透過性フィルタ材料を含み、前記活性炭が、活性炭材料に基づいて0.05重量%〜12重量%の量で、銅、カドミウム、プラチナ、パラジウム、水銀、及び亜鉛からなる群から選択された触媒で浸漬されているものである。防護材料又はフィルタシステムについての不利益点は、触媒の含浸物は、吸着しこれによって化学的毒物を無力化するのに必要とされる吸着能力の一部を破壊する。これによって、含浸処理は、使用される活性炭の実行能力に反対方向に働く悪影響を有する。さらに、活性炭材料を含浸することは、相対的にコストがかかり、活性炭の製造作業、特に活性化段階との兼ね合いに影響される。その上、触媒の含浸物は、常に、瀬宇仏学的有害物又は微生物に対する所望の有効性を提供しない。最後に、含浸作業は、相対的に大きな量の触媒金属を必要とする。
【特許文献1】DE 195 19 869 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それゆえに、この発明の目的は、従来技術の上述した不利益点を少なくとも実質的に回避する又は少なくとも改善する吸着フィルタ材料又は防護材料を提供する。さらに、吸着フィルタ又は防護材料は、特にある種のNBC防護材料、NBC防護衣類等、及びフィルタ及びフィルタ材料の製造について適当であるべきである。
【0008】
さらにこの発明の目的は、化学毒又は有害物、特に化学兵器に関してだけでなく、生物学的毒物(例えば、バクテリア、ウィルス及び細菌のような微生物)、特に生物兵器に関してさえも同様に有効である透過性、特にガス又は空気透過性吸着材料又は防護材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した問題は、本願発明の範囲において、請求項1記載の吸着フィルタ材料によって解決される。さらに本発明の吸着フィルタ材料の有益な例は、それぞれの従属する請求項の主題を形成する。
【0010】
さらに、本願発明は、防護服、防護手袋、防護履物、防護靴下、防護帽子等、及びある種の防護カバー、好ましくはNBC配備のための民間又は軍事部門のための防護衣類、ある種の防護材料の製造のための本願発明の吸着フィルタ材料の使用と、これよって製造された上述した種類の防護材料自体を提供することにある。
【0011】
本願発明は、NBC防護マスクフィルタ、臭気フィルタ、シートフィルタ、空気フィルタ、特に室内空気浄化用フィルタ、吸着可能支持構造及び病院用フィルタ等の特に空気及び/若しくはガス流からある種の有毒物、臭気及び有害物を除去するためのフィルタ及び/若しくはフィルタ材料、及びこれによって製造されたフィルタ及び上述した種類のフィルタ材料自体を提供することにある。
【0012】
したがって、本願発明は、本願発明の第1の様相において、生物学的化学的防護機能、特に化学兵器及び生物兵器のような化学的生物学的毒物及び有害物の両方に関する防護機能を有する吸着フィルタ材料を設け、前記吸着フィルタ材料は、第1の外側支持層と第2の外側支持層と、2つの外側支持層の間に配される吸着層を具備する多層構造を有し、さらに前記吸着フィルタ材料は、少なくとも一つの触媒活性成分を具備し、前記第1の外側支持層及び/若しくは第2の外側支持層、好ましくは前記第1の外側支持層又は前記第2の外側支持層が、触媒活性成分を有するものである。本願発明によれば、2つの外側支持層の少なくとも一つ及び好ましくは2つの外側支持層の一つだけが、触媒活性成分を含有するものである。
【0013】
このように、本願発明の基本的な概念は、従来技術と対比して、支持層又は層の一部に、触媒活性成分を設けることによって、生物学的毒物、特に生物兵器に関する向上し、改善された防護機能を有する多層構造の吸着フィルタ材料を提供することにある。
【0014】
触媒活性成分が、吸着層として配されるような支持層の一部であるという事実は、複数の利点を提供する。第1に、吸着層、特に活性炭のコスト高及び複雑な含浸工程が回避される。結果として、吸着層、特に活性炭の吸着能力は、触媒活性成分によって減じられ且つ減少することがない。第2に、吸着層の製造作業、特に活性炭の製造が、触媒活性成分の存在によって損なわれない。第3に、触媒活性成分でのコーティングが、吸着層の製造とは別に、特に活性炭の製造とは別に実行されるので、吸着フィルタ材料の全体的な製造作業の製造ラインに、支持層又は層に触媒活性成分を付与することが、製造技術関係においてより簡単となる。
【0015】
その上、出願人の研究は、触媒活性成分が吸着層ではなく、他の層(本願発明によれば、支持層)に付与される本願発明の吸着フィルタ材料の防護機能が、吸着層自体に触媒活性成分が含浸された従来の吸着フィルタ材料に比べて、防護能力が改善されていることを示した。適切な規定及び基準に基づいて実行された出願人の試験は、化学的生物学的毒物及び有害物の浸透量が、吸着層が触媒活性成分を含有する従来の防護材料に比べて(比較は、比較可能な触媒の系及び比較可能な触媒量にて実施される)、本願発明に係る吸着フィルタ材料の場合において明白に減じられる。これは、本願発明の吸着フィルタ材料の領域において、無害にするべき毒物及び有害物が、いわゆる特に生物学的有害物(例えば、バクテリア、ウィルス及び/若しくは細菌等のような微生物)に作用し、所定の環境において無害化し、又はそれに代わって、加賀汽笛有害物及び毒物の一部を破壊する触媒活性成分を具備する層と、化学的有害物及び有毒物、さらに生物学的有害物の一部の良好な吸着又は無害化を行う層である2つの別個の層の形の二重バリヤを通過しなければならない理由である。本願発明によれば、触媒活性成分と吸着成分とが別々の層に配されるという事実の長所によって、触媒活性成分が吸着層だけに配される従来の吸着フィルタ材料と比較して、無害化するべき毒物又は有毒物との滞留又は接触時間が上昇し、防護能力が上昇し、且つ突破する数が減少する。さらに、より少ない量の触媒活性成分が必要とされる。
【0016】
このように、本願発明の防護材料は、化学的毒物及び有害物、特に化学兵器(サリン、Hd、ソマン等の「Cウェポン」)に関してだけでなく、生物学的毒物及び有害物(ウィルス、バクテリア、細菌、微生物、例えば、炭疽菌、天然痘、エボラ、ペスト、マールブルクウィルス等の「Bウェポン」)に対しても有効な防護機能を提供する。
【0017】
本願発明の吸着フィルタ材料の生物学的防護機能は、薄膜システムに匹敵するものであるが、本願発明の吸着フィルタ材料のガス、特に空気浸透性又は透過性は、NBC防護服に加工される薄膜衣服を超える着心地性が明白に強化されることを意味する。しかし、薄膜システムを超える本願発明の吸着フィルタ材料の決定的な利点は、本願発明の吸着フィルタ材料によって生物学的有毒物が無害化され又は分解され、本願発明の吸着フィルタ材料を使用した後、有害な毒物がその材料に何ら残らないのに対して、バリヤ機能だけを有する従来の薄膜システムの場合においては、有害物の表面に残り、汚染又は(例えば、防護衣類が切断された場合に)危険にされられるというリスクを構成する。その上、本願発明の吸着フィルタ材料は、結果として、いわゆる自己汚染除去されることを構成することから、それを汚染除去することなしに、さらなる労力なしに繰り返し使用することができるものである。
【0018】
活性炭自体が触媒活性成分で浸漬された従来の吸着フィルタ材料と比べて、本出願人の測定の過程において、より低い数の貫通率が得られたことから、本願発明の吸着フィルタ材料によって提供される防護機能は、明らかに向上しており、さらに、多量の挑戦的な化学的生物学的毒物又は有害物の場合においてすら、また長時間にわたる実験においてすら、明らかな向上が見られた。
【0019】
また、本願発明の吸着フィルタ材料の概念は、例によって述べられた上述した利点である複数の利点と関連する。
【0020】
上述したように、本願発明の吸着フィルタ材料は、いわゆる吸着層が2つの支持層の間のコア層として配置されるようなサンドイッチ構造を有する。
【0021】
上述したように、原則として、第1の外側支持層だけでなく第2の外側支持層もまた、触媒活性成分を含有する(言い換えると、2つの外側支持層の少なくとも一つが、触媒活性成分を含有する)。しかしながら、本願発明によれば、2つの外側支持層の1つだけが、触媒活性成分を含有していることが好ましく、且つそれは、使用状態において触媒活性成分が含有される有害物側と対峙する支持層であることが好ましい。これは、使用状態において、有害物含有空気流が触媒活性成分を具備する支持層を、確実に最初に通過し、それから吸着層、最後に第2の支持層を通過するようにするものである。稀な例では、両方の支持層が、触媒活性成分を含有し、また異なる触媒活性成分が第1の外側支持層及び/若しくは第2の外側支持層に設けられることも可能である。しかしながら、下記するすべての説明は、両方の例に関し、言い換えると、両方の支持層が触媒活性成分を含有するという上記稀な例だけでなく、2つの支持層の一つだけが、触媒活性成分を含有するという例にもまた関連している。
【0022】
本願発明によって設けられた吸着層は、第1の外側支持層及び/若しくは第2の外側吸着層に(例えば、不連続な、ドットマトリクス形状の接着剤によって)固定され、特に接着される。その結果として、吸着層は、第1の外側支持層及び/若しくは第2の外側支持層と、好ましくは第1の外側支持層及び第2の外側支持層と結合され、特に接着される。しかしながら、原則として、全体的又は部分的なそれぞれの層が、それぞれお互いに緩く配置され、又は少なくとも実質的に接着されないことも可能である。
【0023】
本願発見栄の好ましい例において、前記吸着層は、活性炭に基づくものであり、言い換えると前記吸着可能な層は、活性炭を具備若しくは活性炭からなるものである。前記活性炭は、活性炭粒子及び/若しくは活性炭繊維の形で存在することが可能である。
【0024】
例えば、前記吸着層は、好ましくは粒形状(粒状カーボン)又は球形状(球状カーボン)の活性炭の独立した粒子を具備若しくは粒子からなり、この場合、活性炭粒子の平均直径は、1.0mmより小さく、好ましくは0.8mmより小さく、より好ましくは1.6mmより小さい。また、前記活性炭粒子の平均直径は、少なくとも0.1mmである。この例において、前記活性炭粒子は、10〜500g/mの量で、特には25〜400g/m2の量で、好ましくは50〜300g/m2の量で、より好ましくは25〜275g/m2の量で、更に好ましくは100〜250g/m2の量で、最も好ましくは125〜200g/m2の量で使用可能である。特に、使用される活性炭粒子は、活性炭の粒子、特に活性炭小粒又は小球当たり5N、特には少なくとも10N及び/若しくは20Nまでの破裂圧力を有することが望ましい。
【0025】
しかしながら、これに代えて、吸着層は、活性炭繊維、特に活性炭繊維からなる活性炭織物の形で形成されても良いものである。この例は、特に10〜300g/m2の範囲内、特には20〜200g/m2の範囲内、好ましくは30〜150g/m2の範囲内の基礎重量を有する活性炭繊維を用いるものである。本願発明に有益な活性炭繊維織物は、例えば、活性炭織布、メリヤス編物、レイド又は合成繊維、特に炭化され活性化されたセルロースに基づく及び/若しくは炭化され活性化されたアクリロニトリルに基づくものを含むものである。
【0026】
吸着層を形成するために、活性炭粒子及び/若しくは活性炭繊維を組み合わせることも可能である。
【0027】
吸着層を形成するために使用される活性炭(言い換えると、活性炭粒子又は活性炭繊維)は、少なくとも800m2/g、特には少なくとも900m2/g、好ましくは少なくとも1000m2/g、より好ましくは800〜2500m2/gの範囲内の内部表面積(BET)を有することが望ましい。
【0028】
さらに、本発明の吸着フィルタ材料が、吸着層から離れている第1又は第2の外側支持層の側面に配されるか、結合される少なくとも一つの上部層を具備することが提供される。典型例の一つとして、前記上部層に使用される材料は、織物、特に織布、ニット、レイド、接着布(例えば接着芯)又は不織布である。さらに、典型例の一つとして、前記上部層は、本願発明の吸着フィルタ材料の使用状態において、それが、能力を試すための有毒又は有害物質の側、言い換えると使用時において、有毒物側と対峙する支持層の側に対峙するように配置される。さらにまた、典型例の一つとして、前記上部層は、疎油性化され及び/若しくは疎水性化され、好ましくは疎油性化され且つ疎水性化されて所定のエアゾール防護機能を得ることができ、有毒及び/若しくは有害物質のかなりの大きさの滴がその表面に滴下されるときに、本願発明の吸着フィルタ材料上にそれらを分散させる。また、この目的のための適当な疎油化及び/若しくは疎水化剤は、当業者には、既によく知られている(例えば、フルオロカーボン樹脂等のフルオロポリマー)。さらに、前記上部層は、また防燃性が付与される(例えば、リン酸エステル)。さらにまた、前記上部層は、静電防止処理されることが好ましい。また、前記上部層は、赤外線(IR)反射特性が付与されることが好ましい。最後に、前記上部層は、その有害物側(言い換えると使用状態における外側表面)に、特に、NBC防護服の製造において、偽装プリントを設けることが好ましい。
【0029】
特に好ましい例において、本願発明の吸着フィルタ材料は、上部層/触媒活性成分を具備する第1の外側支持層/吸着層/第2の外側支持層からなる構造を有する。上部層は、一般的に本願発明の吸着フィルタ材料の使用状態において有害物側に面する。さらに、この例において、第2の外側支持層も、同様に、触媒活性成分を含有することが可能である。
【0030】
上述した層と同様に、本願発明の吸着フィルタ材料は、別の層、特に織物層を含んでも良いものである。これらは、上述された層の上、下若しくは間に配されることが可能である。
【0031】
本願発明にしたがって使用される触媒活性成分は、特に制生剤及び/若しくは殺生剤効果、特に静菌又は殺菌及び/若しくはウィルス抑止性又は殺ウィルス性及び/若しくは静真菌性又は殺菌性効果を有する触媒活性成分を具備するものである。典型的な例として、触媒活性成分は、金属又は金属化合物に基づくもので、特に銅、銀、カドミウム、プラチナ、パラジウム、ロジウム、亜鉛、水銀、チタン、ジルコニア及び/若しくはアルミニウム及びそれらのイオン及び/若しくは塩、好ましくは銅及び/若しくは水銀及びそれらのイオン及び/若しくは塩からなる群から選択されることが好ましい。
【0032】
本願発明によれば、前記触媒活性成分は、金属又は金属化合物に基づくものであり、好ましくは無機金属化合物、より好ましくは金属酸化物である。種々の金属又は金属化合物を、同一の支持層に、若しくは別々の支持層において、それぞれ又はお互いに結合させることも同様に可能である。本願発明に係る好ましい例において、触媒活性成分は、金属の形の及び/若しくはイオンの形の好ましくは酸化物の形の銀及び/若しくは銅から選択されることが好ましい。本願発明によれば、特に、触媒活性成分は、Ag、AgO、Cu、CuO及びCuO及び/若しくはそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0033】
本願発明によって使用される触媒活性成分は、通常の条件下で保管された場合、少なくとも5年間、好ましくは少なくとも10年間は、その触媒能力を維持するように選択される。さらに、前記触媒活性成分は、所定の期間、80℃以上で、安定、いわゆる保管安定するべきである。この先行必要条件は、上述した化合物、特に銀及び/若しくは銅に基づく化合物によって充足される。
【0034】
使用される触媒活性成分の量は、広い範囲で変化可能である。一般的に、第1及び/若しくは第2の外側支持層に基づいて、使用される触媒活性成分の量は、0.001重量%〜20重量%の範囲内、特には0.005重量%〜10重量%の範囲内、好ましくは0.01重量%〜5重量%の範囲内である。全体としての吸着フィルタ材料に基づいて、前記触媒活性成分の量は、もちろん少なくなる。一般的に、触媒活性成分は、全体としての吸着フィルタ材料に基づいた量において、0.0001重量%〜10重量%の範囲内、特に0.001重量%〜5重量%の範囲内、好ましくは0.002重量%〜2重量%の範囲内で使用される。それにもかかわらず、特別な使用について又は1回限りのものにおいて、本願発明の範囲から逸脱することなしに、上述した量から離れることも考えられる。
【0035】
前記第1の外側支持層は、少なくとも実質的にシート状であり、又は少なくとも実質的に二次元のものであることが望ましい。特に、前記第1の外側支持層は、織物、例えば、織布、ニット編物、レイドファブリック、接着布(例えば芯材)又は不織布である。一般的に、第1の外側支持層の織物は、10〜150g/m2の範囲内、特には10〜100g/m2の範囲内、好ましくは15〜75g/m2の範囲内、より好ましくは20〜60g/m2の範囲内、最も好ましくは25〜50g/m2の範囲内の基礎重量を有する。
【0036】
一般的に、第2の外側支持層も、少なくとも実質的にシート状であり、少なくとも実質的に二次元のものである。特に、第2の外側支持層は、織物であり、特に織布、ニット編物、レイドファブリック、接着布(例えば芯材)又は不織布であり、一般的に、第2の外側支持層は、10〜150g/m2の範囲内、特には40〜120g/m2の範囲内、好ましくは60〜120g/m2の範囲内の基礎重量を有する。
【0037】
原則として、同一の材料が、前記第1及び第2の外側支持層を形成するために使用される。しかしながら、異なる材料、特に異なる基礎重量及び/若しくは異なる織物及び/若しくは異なる特性を有する織物を使用することが一般的に好ましい。
【0038】
例えば、第1及び/若しくは第2の外側支持層は、天然繊維及び/若しくは人造繊維、特に人造繊維からなる織物であることが好ましい。
【0039】
本願発明によれば、第1及び/若しくは第2の外側支持層が、天然繊維及び/若しくは人造繊維からなる織物、好ましくは人造織物、好ましくは、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリビニル(例えばポリビニルアルコール)及び/若しくはポリアクリル系繊維からなる群から選択されることが好ましい。
【0040】
上述したように、前記第1及び/若しくは第2の外側支持層は、織物として構成される。前記触媒活性成分は、一般的に、前記支持層又は該当する支持層の織物、特に織物を形成する繊維、糸、織糸、単繊維等に混合され又は永久的に結合される。繊維、糸、織糸、単繊維等の化学的性質によれば、触媒活性成分の混合は、いろいろな方法、例えば紡績、押出成形、浸漬、化学的処理工程(例えば、それに続く酸化還元での含浸による)、プラズマ化学処理工程(例えば、スパッタリング)等によって達成される。当業者は、従来技術からこれについて十分に知っている。
【0041】
原則として、前記第1及び/若しくは第2の外側支持層、特に使用状態において有害物と対面する支持層もまた、親水性又は疎水性仕上げがなされることが好ましい。一般的に、前記第1及び/若しくは第2の外側支持層は、0.05〜5mmの範囲内、好ましくは0.1〜1mmの範囲内、さらには0.2〜0.5mmの範囲内の断面厚さを有する。さらに、前記第1及び/若しくは第2の外側支持層は、一般的に、127パスカルの流抵抗で、少なくとも1000リットル・m-2・s-1、特に少なくとも2000リットル・m-2・s-1、好ましくは3000リットル・m-2・s-1、より好ましくは3500リットル・m-2・s-1、最も好ましくは3500リットル・m-2・s-1の良好なガス又は空気透過率を有する。
【0042】
触媒活性成分を有する織物の永続的な仕上げ又は付与及び対応する製造に関して、製造方法等については、WO01/74166A1又は結果としてのEP1272037B1、同様にWO98/06508A1、WO98/06509A1、US2005/0049370A1、US2003/0198945A1、US2005/0048131A1、WO00/75415A1、WO01/81671A2及びWO03/086478A1に開示されている。
【0043】
本願発明の工程に有益であり、制生又は殺菌触媒活性成分を含有し、本願発明の領域の外側支持層として有益である織物は、例えば、キュプロン株式会社、ニューヨーク(USA)、フォスマニュファクチャリング株式会社、ハンプトン、ニューハンプシャー(USA),ノーブルテクノロジー株式会社、クラークサミット、ペンシルバニア(USA)から購入することが可能である。
【0044】
上述したように、本願発明の吸着フィルタ材料は、ガス透過性、特に空気透過性、及び/若しくは、水分透過性、及び/若しくは、水蒸気透過性である。これは、NBC防護服に処理される快適な着心地性を提供する。
【0045】
一般的に、本願発明の吸着フィルタ材料は、127パスカルの流抵抗で、少なくとも50リットル・m-2・s-1、特には少なくとも100リットル・m-2・s-1、好ましくは少なくとも200リットル・m-2・s-1、より好ましくは500リットル・m-2・s-1、もっとも好ましくは600リットル・m-2・s-1であり、最大10000リットル・m-2・s-1までのガス又は空気透過率を有するものである。
【0046】
一般的に、本願発明の吸着フィルタ材料は、特に、吸着フィルタ材料の断面厚さが、0.1から10mmの範囲内、特に0.2〜5mm、好ましくは0.5〜1.0mmの範囲内に有るとき、150〜1000g/m2の範囲内、特には200〜800g/m2の範囲内、好ましくは250〜600g/m2の範囲内、より好ましくは300〜500g/m2の範囲内の全体にわたる基礎重量を有するものである。
【0047】
NBC防護衣服に処理される着心地性を向上させるために、本願発明の吸着フィルタ材料は、少なくとも24時間当たり5リットル/m2、特に少なくとも24時間当たり10リットル/m2、好ましくは少なくとも24時間当たり15リットル/m2、より好ましくは少なくとも20少なくとも24時間当たり5リットル/m2、最も好ましくは少なくとも24時間当たり25リットル/m2の水蒸気透過率を有するものである。
【0048】
良好な防護効果を確保するために、本願発明の吸着フィルタ材料は、CRDEC−SP−84010の方法2.2によって測定され、24時間当たり4μg/cm2以下、特に3.5μg/cm2以下、好ましくは3.0μg/cm2以下、より好ましくは2.5μg/cm2以下の浸透を許容する化学兵器、特に、ビス[2−クロロエチル]硫化物(マスタードガス、Hd、イエロークロス)に関するバリヤ効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
図1(a),(b)は、実施例の対応する本願発明の吸着フィルタ材料1の層構造2を示す概略断面図である。生物学的だけでなく化学的防護機能を有し、且つ特に化学兵器大日生物兵器のような化学的及び/若しくは生物学的有毒物及び有害物の両方に関する防護機能を有する本願発明に係る吸着フィルタ材料1は、第1の外側支持層3及び/若しくは第2の外側支持層4、及び/若しくは2つの外側支持層3,4の間に配される吸着層5を具備する多層構造2を有するものである。前記第1の外側支持層3及び/若しくは第2の外側支持層4、好ましくは第2の外側支持層4は、図示しない触媒活性成分を含有するものである。第2の外側支持層4もまたそれを付加された上部層6を有する。上述した層の機械的、物理的及び/若しくは化学的特性は、上記に示されるように、この特定の実施例に関して必要な変更を加えて適用される。
【0050】
第1及び第2の外側支持層3,4は、生物学的有害物(例えば、バクテリア、ウィルス、又は細菌等の微生物)に関して触媒活性成分を介して効果的であるだけでなく、化学的有害物又は毒物の一部を触媒的に無害化し又は分解するものであり、前記吸着層5は、化学的毒物又は有害物を吸着又は無害化し、生物学的有害物の一部も無害化するものである。
【0051】
図1(a)は、本願発明の実施例を示すものであり、前記吸着層5は、吸着材、特に活性炭の独立した粒子(例えば、活性炭の小球)から形成される。図1(b)は、本願発明の別の実施例を示すものであり、前記吸着層5が、吸着繊維、特に活性炭繊維織物から形成される。
【0052】
さらに、本願発明は、上述したような、特に防護衣類、防護服、防護手袋、防護履物、防護靴下、防護帽子等のような軍事部門又は民間部門用のある種の防護製品及びある種の防護カバーの製造のための吸着フィルタ材料の使用に提供され、上述した防護製品の全てはNBC配備されることが好ましい。
【0053】
さらにまた、本願発明は、NBC防護マスク、臭気フィルタ、シート状フィルタ、空気フィルタ、特に室内空気浄化フィルタ、吸着可能な支持構造及び医療部門用フィルタのような、特にある種の有害物、臭気及び有毒物を、空気及び/若しくはガス流から排除するためのある種のフィルタ及びフィルタ材料の製造のための上述したような本願発明の吸着フィルタ材料の使用に提供される。
【0054】
また、本願発明は、本願発明の吸着フィルタ材料を使用して製造され、本願発明の吸着フィルタ材料を具備する上述したある種の防護材料自体、特に民間用又は軍事用、特に防護服、防護手袋、防護履物、防護靴下、防護帽子等の防護衣類、及び防護カバーを提供し、全ての上述した防護材料は、NBC配備されることが好ましい。
【0055】
最後に、本願発明はまた、本発明に材料を使用して製造されるか、本願発明に吸着フィルタ材料を具備するNBC防護マスクフィルタ、臭気フィルタ、シートフィルタ、空気フィルタ、特に室内空気浄化用フィルタ、吸着可能支持構造及び医療部門用フィルタのような、特に空気及び/若しくはガス流からある種の有害物、臭気成分及び有毒物を排除するためのある種のフィルタ及びフィルタ材料を提供する。
【0056】
本願発明に係る上述した使用及び本願発明に係る上述した実体に関する詳細については、本願発明に係る使用及び本願発明に係る実体に関して変形可能に適用される本願発明の吸着フィルタ材料に関する上述した所見を参照することが好ましい。また、本願発明の改良、変形及び変化は、それらが本願発明の領域から外れることなしに、明細書を読むことで、当業者には容易に明白であり理解することができるものである。
【実施例】
【0057】
本願発明に係る吸着フィルタ材料1が製造される。この目的のために、キュップロン株式会社、ニューヨーク(USA)から購入され、25g/m2(厚さ0.3mm)の基礎重量を有し、銅として計算される3重量%の銅化合物を含有し、且つ127パスカルの流抵抗で4240リットル・m-2・s-1の空気透過率を有する第1の外側支持層3と、接着剤接着によって180g/m2の追加量で活性炭小球が設けられ、吸着層5と、吸着層5の第1の外側支持層3から離れた側に位置する第2の外側支持層4とが設けられる。この結果として、355g/m2の基礎重量及び全体的厚さ(断面厚さ)0.9mm及び127パスカルの流抵抗で、680リットル・m-2・s-1の空気透過率を有する本願発明の吸着フィルタ材料1が得られる。全体的な吸着フィルタ材料1に基づく銅の部分は、銅として計算して0.002重量%である。CuO及びCuOは、銅化合物として使用される。
【0058】
比較される吸着フィルタ材料は、第1の外側支持層が触媒活性成分を含有しないという相違を有する同一の構造を有する吸着フィルタ材料であるが、同化合物で浸漬された活性炭が使用される代わりに、銅として演算される銅の量は、本願発明の吸着フィルタ材料の銅の量の約2倍、全体的に比較される吸着フィルタ材料全体を基礎として約0.004重量%である。
【0059】
本発明の吸着フィルタ材料と比較される吸着フィルタ材料は、対流テストにおいてCRDEC−SP−84010の方法2.2にしたがって、マスタードガス及びソマンに関してそれらのバリヤ効果がテストされた。この目的のために、マスタードガス又はソマンを含有する空気流が、秒速0.45cmの流速度及び一定の流抵抗で、吸着フィルタ材料に対して流され、16時間後の単位面積当たりの通過量が測定された(相対湿度80%、32℃、10・1μリットルHD/12.56cm2又は12・1μリットルHD/12.56cm2)。
【0060】
本発明の吸着フィルタ材料は、1.11μg/cm2のマスタードガス透過量及び1.91μg/cm2のソマン透過量を有することが見出され、これに対して比較される吸着フィルタ材料について見出された値は、マスタードガス及びソマンの両方についてより高く5μg/cm2を超えるものであり、これは受け入れられるものではない。
【0061】
同様に、微生物に対するその防護効果に関する本願発明の吸着フィルタ材料のテストは、優れた結果を与えた。肺炎桿菌及び黄色ブドウ球菌(各々が1.5−3.0×105CFU/ml)でのASTME2149−01に対する制生特性をチェックするためのテストにおいて、24時間後のこれら病原体に関する減少パーセンテージは、両方の場合において、本願発明の吸着フィルタ材料について99%以上であり、これに対して比較される吸着フィルタ材料のついては、単に63%〜71%を達成しただけであった。これは、本願発明の吸着フィルタ材料の生物学的防護機能が同様に改善されていることを示すものである。
【0062】
上記テストは、触媒活性成分が吸着層に存在する、言い換えると活性炭が触媒で浸漬された比較される吸着フィルタ材料に対して、支持層に触媒活性成分を具備する本願発明の吸着フィルタ材料の改善された実施能力を立証するものである。
【0063】
同様の結果は、銅化合物の代わりに銀又は銀酸化物を使用した本願発明の吸着フィルタ材料についても得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】(a)は、本発明の実施例に係る吸着フィルタ材料の層構造を介して、前記吸着層が吸着材、特に活性炭の個々の粒子の形であることを示す概略断面図であり、(b)は、本発明の実施例に係る吸着フィルタ材料の層構造を介して、前記吸着層が吸着繊維、特に活性炭繊維の形であることを示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 吸着フィルタ材料
2 層構造
3 第1の外側支持層
4 第2の外側支持層
5 吸着層
6 上部層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の外側支持層と、第2の外側支持層と、前記第1の外側支持層及び第2の外側支持層の間の吸着層を具備する複数層構造を有すると共に、少なくとも一つの触媒活性成分を有する生物学的且つ化学的防護機能を有する吸着フィルタ材料において、
前記第1及び第2の外側支持層の少なくとも一つが、触媒活性成分を有することを特徴とする吸着フィルタ材料。
【請求項2】
前記吸着層は、活性炭に基づくものであり、前記活性炭は、活性炭粒子及び/若しくは活性炭繊維の形で存在することを特徴とする請求項1記載の吸着フィルタ材料。
【請求項3】
前記吸着層から離れた側の前記第1又は第2の外側支持層の側面に配される少なくとも一つの上部層を具備し、前記上部層は、疎油性及び/若しくは疎水性含浸物を有することを特徴とする請求項1記載の吸着フィルタ材料。
【請求項4】
前記触媒活性成分は、制生又は殺生効果を有し、前記触媒活性成分は、金属又は金属化合物に基づくものであることを請求項1記載の吸着フィルタ材料。
【請求項5】
前記触媒活性成分は、銅、銀、カドミウム、プラチナ、パラジウム、ロジウム、亜鉛、水銀、チタン、ジルコニウム、アルミニウム及びそれらの混合物、さらに、イオン及び/若しくはこれら金属の塩からなる群から選択されることを特徴とする請求項4記載の吸着フィルタ材料。
【請求項6】
前記触媒活性成分は、Ag、AgO、Cu、CuO、CuO及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項4記載の吸着フィルタ材料。
【請求項7】
第1及び/若しくは第2の外側支持層に基づく触媒活性成分の量は、0.001重量%〜20重量%の範囲内であり、吸着フィルタ材料に基づく触媒活性成分の量は、0.0001重量%〜10重量%の範囲内であることを特徴とする請求項1記載の吸着フィルタ材料。
【請求項8】
第1の外側支持層は、シート状であり、二次元織布であり、且つ第2の外側支持層は、シート状であり、二次元織布であり、前記触媒活性成分は、第1及び/若しくは第2の外側支持層の少なくとも一つの織布に具備され、前記触媒活性成分は、織布を形成する繊維、糸、紡ぎ糸、又は単繊維に具備されることを特徴とする請求項1記載の吸着フィルタ材料。
【請求項9】
請求項1記載の吸着フィルタ材料を具備する防護服。
【請求項10】
請求項1記載の吸着フィルタ材料を具備するフィルタ材料。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−130633(P2007−130633A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−306088(P2006−306088)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(505065467)ブリュッヒャー ゲーエムベーハー (27)
【Fターム(参考)】