吸着冷却システム、自動車冷却用途におけるその使用、および関連する方法
車両の室内に冷却された空気を提供する吸着冷却システム。吸着冷却システムは、蒸発器と、蒸発器と流体連通するようになっている凝縮器と、凝縮器および蒸発器と流体連通するようになっている複数の吸着床とを含む。各吸着床は、流体不浸透性ケーシングと、貫通する開口を有する乾燥剤シートと、乾燥剤シートの第1面のすぐ近くに冷媒を流す冷媒流路と、乾燥剤シートの第2面のすぐ近くにクーラント流体を流すクーラント流路とを含む。開口は、冷媒流路およびクーラント流路の一方の一部分である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型で、軽量な蒸発器および吸着床構造を組み込む吸着冷却システムならびに車両におけるこうした吸着冷却システムの使用に関する。
本出願は、2004年6月8日に出願され、「METHOD AND APPARATUS FOR COOLING THE INTERIOR OF A VEHICLE」という名称の米国仮特許出願第60/578,119号に対する優先権を主張し、また、2005年6月8日に出願され、「MULTIPLE STAGE SORPTION COOLING APPARATUS,SYSTEM AND METHOD」という名称の米国仮出願第60/,号に関しており、両出願はそれぞれ、その全体が、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
車、トラック、または他の電動車両を空調することは、些細でない量のエンジン動力を消費する可能性がある。エアコンディショナ圧縮機の負荷は、燃料効率およびエンジン排出ガス・レベルに影響を及ぼす場合がある。米国自動車工業会(the Society of Automotive Engineers)によって行われる試験が示したところでは、標準的なエアコンディショナの動作は、車両の燃料経済性を、1.913キロメートル/リットル(4.5マイル/ガロン)だけ減少させ、NOx排出ガスを0.373グラム/キロメートル(0.6グラム/マイル)だけ増加させ、CO生成を7.46グラム/キロメートル(12グラム/マイル)だけ増加させる。これらの作用は、周囲温度が増加するにつれて、湿度が増加するにつれて、また、太陽熱負荷が車に課されるときに、より著しくなる。燃料の経済性と排出ガスに加えて、エアコンディショナの動作は、車両性能の明らかに知覚できる低下を与える。
【0003】
標準的なエアコンディショナのサイズは、一般に、要求される冷却レートによって決まる。車両のエアコンディショナが始動すると、空気温度および相対湿度が高くなる場合がある。冷却空気の所望の温度を生成するには、空気(新鮮な空気であれ、循環された室内空気であれ、または、その混合物であれ)を、空気の露点未満まで冷却することを必要とすることが多い。このことは、空気を冷却するのではなく、空気中の水を凝縮させるのに空気中の水は蒸発器にたまる、エアコンディショナの冷却能力の大部分が使用される場合があることを意味する。図1は、この作用を示しており、水の凝縮に起因する全冷却負荷のパーセンテージを、相対湿度と温度の関数として示す。示されるように、入口空気温度および/または湿度が高いことによって、エアコンディショナ電力の50%以上が、水を凝縮するときに使用される場合がある。乾燥した気候でも、凝縮は、冷却を制限する。図2は、35〜40℃(95〜104°F)の屋外周囲温度および15%の湿度の状態での、1日に関する車両のサイクル動作を示す。車両の内部の湿度のサイクルは、さらに乾燥した気候における、水凝縮が内部冷却に及ぼす作用を示す。この作用は、高い太陽熱負荷を生成する気候において、なお一層悪化する可能性がある。
【0004】
湿気の多い条件および/または温度の高い条件から負荷を冷却するという問題のために、車両製造業者は、一般に、エアコンディショナが、熱く、かつ、湿気の多い気候における始動時に、車両を冷却することができるように、エアコンディショナを設計する。しばしば、これによって、オーバーサイズの空調ユニットが生まれ、投下資本費用および重量が増加し、不必要にエネルギーを消費する。これは、ハイブリッド、電気、および燃料電池などの代替の手段によって電力供給される車両について特に問題となる。オーバーサイズのエアコンディショナの使用はまた、エンジン効率がまだ低いときの始動中に、余分な燃料が必要とされるため、汚染を増大させる。従来の車両のエアコンディショナに関するさらなる問題は、蒸発器内の細菌増殖による匂いである。
【0005】
エアコンディショナの効率を高め、そのサイズを低減する1つの手法は、エアコンディショナによって、空気を冷却する前に、空気を除湿することである。たとえば、Dennistonに対する特許文献1は、車両の内部に空気が入る前の、空気の除湿および/または加湿において使用するための除湿システムを開示する。公開公報は、空気を除湿するのに使用されてもよい種々の層構造を開示し、また、エンジンからの廃熱を使用して、層を再生するのに使用される空気が加熱されることを開示している。
【0006】
Bhatti他に対する特許文献2は、車両の内部に供給される空気流を除湿するために、乾燥剤ホイール内で、ゼオライトなどの乾燥剤を使用することを開示する。新鮮な空気が、ホイールのある部分で除湿され、圧縮ベースの空調システムの蒸発器に送られ、一方、ホイールの他の部分は、エンジンからの廃熱によって加熱された空気を使用して再生される。
【0007】
これらの空気乾燥技術は、コスト、重量に関する考慮事項、および、非効率が、必ずしも、エアコンディショナのサイズの低減をもたらさないことのために、市販車両で現在使用されていない。
【0008】
車両冷却システムの効率を高める別の手法は、車両によって生成された廃熱を使用して、圧縮ベースのエアコンディショナを補助するシステムを動作させること、または、状況によっては、圧縮ベースのエアコンディショナについての必要性を完全に取り除くことである。車両燃料値の約60%が、排気(33%)およびエンジン冷却(27%)に対して失われる。冷却システムの動作時にエンジン排熱を使用することによって、燃料効率を大幅に改善し、排出を減らすことができる。こうした廃熱を使用する1つの手法は、熱電子素子を使用して、エンジン廃熱から電力を生成し、その電力を使用して、エアコンディショナに電力供給することである。しかし、こうした発電技術のコスト、重量、および寿命は、一般に、許容可能でない。他の冷却技術は、熱音響冷却、エジェクタ冷却、およびペルチエ・クーラを含むが、こうした技術は、一般に、立証されていない。
【0009】
廃熱を使用する別の方法は、吸収器および水のリザーバを備えるシステムを利用することであり、吸収器において、新鮮な空気または再循環された空気が除湿され、除湿された空気が、その後、水のリザーバ上を通過し、水が、乾燥空気中に蒸発して、乾燥空気を冷却し、湿らせる。廃熱は、吸収器内に含まれる吸収剤を連続して再生するのに利用されてもよい。たとえば、Khelifaに対する特許文献3は、車両の内部に冷却された空気を提供するときに、ゼオライトなどの吸収剤を使用して、除湿し、その後、再加湿する方法を開示する。しかし、こうしたシステムは、一般に、蒸発冷却を達成するために、定期的に補給されなければならない内蔵された(onboard)水貯留タンクを必要とする。
【0010】
車両からの廃熱を利用する別の手法は、吸着冷却方法の使用である。吸着冷却方法は、一般に、冷却を行うために、冷媒の、一連の蒸発、吸収、再生、および凝縮を使用する。動作時、作動冷媒は、蒸発器において蒸発し、それによって、冷媒を蒸発させるのにエネルギーが必要とされるため、蒸発器の表面が冷却される。流体(たとえば、空気)が、冷却された蒸発器表面上を通過して、流体が冷却される。他の所で、蒸発した冷媒が、吸収剤(たとえば、乾燥剤)によって吸収される。吸収は、一般に、熱を生成し、熱は、通常、周囲空気に廃棄される。吸収容量に達した後、吸収剤は、加熱することなどによって、再生され、吸収された冷媒が放出されてもよい。吸収された冷媒は、その後、凝縮器に渡されて、冷媒が液化される。こうして、冷却サイクルは、繰り返されてもよい。
【0011】
吸着冷却方法は、多くの理由で望ましい。標準的な圧縮ベースの空調システムと対照的に、凝縮工程は、冷媒をその液相に戻すのに、小さな機械的仕事量を必要とするだけである。そのため、吸着冷却システムの使用は、車両を冷却するのに必要とされる仕事量を減少させることになる。さらに、吸着冷却は、エンジンが動作していないときでも、冷却を行うことができる。同様に、吸着冷却方法は、水などの環境にやさしい冷媒を利用することができる。そのため、吸着冷却の使用は、従来の車両空調方法に対する望ましい代替法である。
【0012】
液相吸収剤を使用した車両の冷却において吸着冷却方法を利用するために、種々の試みが行われてきた。たとえば、Antohiに対する特許文献4は、エンジンクーラントを熱源として使用した、吸収剤ベースの空調システムの使用を開示する。しかし、Antohiは、液体ベースの吸収剤の使用を開示しており、多くの理由で好ましくない。第1に、液体−液体ベース吸着システムは、分離し、浄化するのが難しい。とりわけ、共沸混合物および伴出によって、吸収材料の純度が徐々に下がる可能性があり、方法の効率を低下させる。さらに、複雑な圧力および/または温度変化システムが、一般に、こうした溶液を分離するのに必要とされ、システムの複雑さを増やす。最後に、表面積の制限のために、液体吸収剤の使用によって、必要な動特性を達成することが難しいことがある。
【0013】
固相吸収剤を使用した吸着冷却方法も知られている。これらの方法は、気相材料(たとえば、熱い排出空気)を利用する方法、液相材料(たとえば、エンジン/ラジエータからの熱い液体)を利用する方法、および、吸収剤を再生するために電気供給源を利用する方法に分類されることができる。
【0014】
Maier−Laxhuber他に対する特許文献5、Malikに対する特許文献6、Yamadaに対する特許文献7、およびMaier−Laxhuberに対する特許文献8は全て、吸収剤を加熱する/再生するための、気相材料の使用を開示する。吸収剤を再生するために、気相材料を使用するときに、(a)再生を行うために必要な熱伝達を達成するための高い再生温度、(b)燃料経済性および/または排気ガスにとって有害である、排気多岐管における排気圧降下の増大、(c)腐食の増加、(d)大きな熱交換器の使用、(e)高く、かつ、広範囲の気相温度に関連する制御の困難さ、(f)熱交換器内での水および酸性ガスの凝縮、および(g)特に、始動時の触媒変換機性能の低下を含む、多くの欠点が存在する。同様に、高温のため、使用してもよい吸収剤のタイプを含む制限が、構成材料に加わる。同様に、ゼオライトなどの多くの従来の吸収剤は、効果的に利用されるために、非常に低い動作圧を必要とする。
【0015】
Kirol他に対する特許文献9およびTanaka他に対する特許文献10は、吸収剤を再生するために、電気加熱要素の使用を開示する。こうしたシステムは、再生には有効である場合があるが、吸収剤を再生するための、必要な熱伝達を行うために、十分な量のワイヤが、吸着床全体を通して設置されなければならない点で、電気再生システムは、吸収システムに余分な複雑さを付加する。電気的システムは車両の配線の複雑さも付加する。
【0016】
液相再生システムもまた知られており、車両吸着冷却システムにおいて、これらの材料を利用するために、種々の試みが行われてきた。Duranに対する特許文献11は、車両エアコンディショナとして使用するための化学吸着装置を開示する。Duranが、開示していることには、高温入力が、ハウジングのあるセクタ内の一連の要素の下側部分に加えられ、反応物が、固相吸収剤から脱着され、要素の上側部分に移動し、熱は、流体媒体によって外部ヒートシンクに取り除かれる。一連の要素は、ハウジングの別のセクタまで回転するため、熱は、熱交換によって、要素の下側部分からヒートシンクへ取り除かれる。化学平衡を求めて、反応物は、下方に移動して、吸収材料に再吸収され、要素の上側部分における蒸発が、冷却出力を生成し、冷却出力を利用して、出力流体媒体が冷却される。
【0017】
Sato他に対する特許文献12は、車両に対する冷却を行うための、多段吸着冷却システムを開示する。Sato他が開示するところでは、2つ以上の吸収器は、吸収/加熱動作において機能し、一方、2つ以上の他の吸収器は、脱着動作において機能する。Sato他が説明するところでは、蒸発器からの水の蒸発は、吸収システムを冷却する冷却パイプと共に冷却を行い、一方、加熱パイプが脱着システムを加熱する。
【0018】
吸着冷却方法によって補助されたハイブリッド圧縮ベース・エアコンディショナもまた知られている。Inagaki他に対する特許文献13は、内部を冷却し、空調を補助し、エンジンを加熱するために、車両において使用されてもよい吸収冷却システムを開示する。Inagaki他は、水などの吸収質を吸収する、吸収媒、好ましくは、フェロアルミノフォスフェイトを含む吸収チャンバを有する冷却システムを開示する。Inagaki他が、開示するところでは、従来の圧縮ベース・エアコンディショナは、吸収方法と共に使用されてもよい。
【0019】
従来の蒸気圧縮冷却の代わりに吸着冷却を使用するための、燃料効率および排出ガス低減についての多くの理由が存在するが、吸着冷却方法は、少なくとも3つの理由で、車両冷却方法において現在使用されていないと信じられている。第1に、多くの吸収剤は、高い再生温度を必要とする。高い再生温度は、上述したように、吸収剤を再生するために、車両からの廃熱の使用を必要とする。
【0020】
第2に、ほとんどの吸収剤は、比較的低い吸収容量(たとえば、ゼオライトは、ゼオライトの1グラム当たり水の〜0.2グラムを吸収する)を有しており、所望の冷却レート(冷却速度)を達成するために、大量の吸収剤の使用を必要とする。質量の大きな吸収剤が使用されると、吸収剤から熱を抽出することが難しく、冷却サイクル・タイムをさらに低下させ、それによって、さらに大きな吸収剤質量を必要とする。高温パッケージングについての要件と組み合わせた大きな乾燥剤質量によって、全体システムの高い熱質量がもたらされる。高い熱質量は、吸収システムの高い寄生エネルギー損失をもたらす場合がある。この作用は、通常、水の蒸発熱の2倍に達する水の吸収熱を有する、ゼオライトなどの従来の吸収剤の使用によって倍加される場合がある。こうした高温質量および吸収熱の正味の作用によって、生成される冷却の2倍の熱を排除しなければならないシステムがもたらされる。これは、冷却工程についての要求されるブロワー電力を増加させ、COP(成績係数)をさらに減少させる。
【0021】
第3に、容積の大きい吸収剤が一般に必要とされるため、数が増えた吸着床が、一般に使用され、それによって、システムを動作させるのに使用されなければならない、高温構成材料の量の増加、大面積の蒸発器および凝縮器、ならびに、大きなブロワーが必要になる。こうした大きな吸収冷却システムは、実際的でなく、費用がかかり過ぎて、車両空調システムとして利用できない。そのため、車両空調のための吸着冷却方法の見込みはあるが、技術は、商業的成功を達成していない。
【0022】
廃熱の別の用途は、建物に冷却された流体を提供することである。今日、多くの標準的な工業的方法は、加熱および発電方法の効率を上げるために、エネルギー・コジェネレーションを使用する。コジェネレーションは、化石燃料などの、ある主要な燃料からの、電力、および、通常、熱水か、熱蒸気のいずれかの形態の有用な熱の同時生成である。コジェネレーションが役立つ一方で、発電技法および/または熱生成技法によって生成された熱の多くは、使用されなくなる。さらに、多くの工業用途は、建物の空調などの冷却用途で利用するための冷却された流体の生成も望む。したがって、コジェネレーション廃熱を利用して、冷却された流体も生成するための努力が存在してきた。このエネルギーの考え方は、トリジェネレーションと呼ばれる。魅力的であるが、コジェネレーション・システムの廃熱から冷却された流体を生成することができる効率的な吸収システムの生産を含む、効率的なトリジェネレーション冷却システムを生産するための多くの障害物が存在する。
【特許文献1】国際公開第WO96/25636号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5,509,275号明細書
【特許文献3】米国特許第5,388,423号明細書
【特許文献4】米国特許第5,896,747号明細書
【特許文献5】米国特許第4,924,676号明細書
【特許文献6】米国特許第5,298,054号明細書
【特許文献7】米国特許第5,333,471号明細書
【特許文献8】米国特許第5,404,728号明細書
【特許文献9】米国特許第5,477,706号明細書
【特許文献10】米国特許第5,768,908号明細書
【特許文献11】米国特許第4,574,874号明細書
【特許文献12】米国特許第5,619,866号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2004/0093876号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
従来の圧縮ベースのエアコンディショナを使用することなく、車両の室内に提供される空気を十分に冷却することができる軽量でコンパクトな吸着冷却システムを提供することが、本発明の目的である。吸着冷却システムの吸着床を再生するために、必要な熱エネルギーを提供するため、車両の内燃機関からの低等級の廃熱を使用することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0024】
これらの目的および他の目的は、吸着冷却システム内で、独特の、新しい吸着床吸着床構造および/または蒸発器を使用することによって実現される。高い吸収レート、高い熱除去レート、および高い再生レートが可能な吸着床は、吸着冷却システム内で十分な冷却レートを達成するのに必要な容積を減少させる。好ましくは、吸着床は、比較的低い温度で再生することができる大容量乾燥剤を利用し、再生のための排ガスの使用を回避する。好ましくは、乾燥剤は、低い吸収熱、高速な熱および物質の移動動特性、長い寿命、および比較的に低いコストを有する。
【0025】
本発明の一実施形態では、車両の室内に冷却された空気を提供する閉ループ吸着冷却システムが提供される。吸着冷却システムは、蒸発器と、蒸発器と連通する凝縮器などの冷媒源と、凝縮器および蒸発器と連通する複数の吸着床とを含む。特定の実施形態では、吸着冷却システムは、多段吸着冷却システムの1要素部分である。特定の実施形態では、吸着冷却システムの冷媒流体は、本質的に水からなる。
【0026】
複数の吸着床はそれぞれ、冷媒入口、冷媒出口、クーラント入口、およびクーラント出口を有する流体不浸透性ケーシングを有する。吸着床はまた、第1および第2乾燥剤シートなどの複数の乾燥剤シートを含む。乾燥剤シートは、一般に、第1面に吸収剤を有し、第2面において、流体不浸透性障壁で覆われる。乾燥剤シートはそれぞれ、乾燥剤シートを貫通して延びる、少なくとも2つの開口などの、少なくとも1つの開口を含む。乾燥剤シートの開口は、冷媒流路およびクーラント流路の一方の一部分である。特定の実施形態では、冷媒流路および前クーラント流路の少なくとも一方は、非直線である。一実施形態では、冷媒流路と前クーラント流路は共に、非直線である。
【0027】
冷媒入口と冷媒出口の間に冷媒流体を流す冷媒流路は、それぞれの吸着床を貫通して延びる。冷媒流路は、乾燥剤シートの第1(吸収剤)面によって、少なくとも部分的に画定される。好ましくは、対向する乾燥剤シートの吸収剤面は、互いに面して、冷媒流路の少なくとも一部分を画定するのに役立つ。一実施形態では、乾燥剤シートは、実質的に互いに平行であり、長くて5mmしか離れていない。一実施形態では、開口は、冷媒流路の一部分であり、冷媒流路は、非直線である。
【0028】
クーラント入口とクーラント出口の間にクーラント流体を流すクーラント流路はまた、それぞれの吸着床を貫通して延びる。クーラント流路は、冷媒流路から流体的に分離されるが、乾燥剤シートの少なくとも一方に隣接する。一実施形態では、開口は、クーラント流路の一部分であり、クーラント流路は、非直線である。クーラント流体は、好ましくは、液相である。一実施形態では、クーラント流体は、内燃機関の冷却で使用される液相流体である。
【0029】
吸着冷却システムの主要部品内の圧力は、一般に、比較的に低い(たとえば、周囲圧に近い)。一実施形態では、蒸発器、凝縮器、および複数の吸着床のいずれかの中の圧力は、101.3kPa(14.7psig)を超えない。
【0030】
一実施形態では、吸着床は、少なくとも3つの乾燥剤シートを含み、乾燥剤シートはそれぞれ、貫通して延びる少なくとも1つの開口を有し、開口は、冷媒流路とクーラント流路の一方の少なくとも一部分を画定する。好ましくは、クーラント流路は、第1および第2乾燥剤シートの両方に隣接する。
【0031】
一実施形態では、乾燥剤シートの少なくとも1つは、金属塩によって含浸された炭素材を含む。特定の実施形態では、金属塩は、塩化リチウム、塩化カルシウム、およびその混合物からなる群から選択される。
【0032】
一実施形態では、蒸発器は、冷媒源に流体接続された薄膜蒸発器である。薄膜蒸発器は、蒸気浸透性で、かつ、液体不浸透性の膜材料のシートと、膜材料の第1面に近接した空気流チャネルと、膜材料の第2面に近接した冷媒流チャネルと、冷媒流チャネルに近接した熱伝導性側壁と含む。
【0033】
本発明は、車両の内部に冷却された空気を提供する方法も意図する。方法は、一般に、熱伝導性側壁を有する蒸発器において、水ベースの冷媒を蒸発させる工程と、熱伝導性側壁に近接して(たとえば、隣接し、接触して)空気を流す工程と、水ベースの冷媒を吸収器において吸収する工程と、車両の内部に冷却された空気を提供する工程とを含む。方法はまた、吸収器のクーラント流路を通して熱い液相クーラントを循環させる工程と、水ベースの冷媒を凝縮させる工程と、凝縮させた水ベースの冷媒を蒸発器に供給する工程とを含んでもよい。冷たいクーラントは、吸収器のクーラント流路を通して循環されてもよい。一実施形態では、冷たいクーラントは、液相である。一実施形態では、冷たいクーラントを循環させる工程および熱い液相クーラントを循環させる工程は、重ならない。
【0034】
一実施形態では、吸収器は、第1吸収器であり、クーラント流路は、第1クーラント流路であり、方法は、吸収する工程の間に、冷たいクーラントを、第1吸収器の第1クーラント流路を通して循環させる工程と、熱い液相クーラントを、第2吸収器の第2クーラント流路を通して循環させる工程とをさらに含む。一実施形態では、冷たいクーラントを、第1クーラント流路を通して循環させる工程、および、熱い液相クーラントを、第2流路を通して循環させる工程は、少なくとも部分的に重なる。方法は、冷たいクーラントを、第3吸収器の第3クーラント流路を通して循環させる工程をさらに含んでもよい。冷たいクーラントを、第3クーラント流路を通して循環させるこの工程は、吸収工程中に起こる。
【0035】
一実施形態では、蒸発器は、第1蒸発器であり、方法は、車両の内部に冷却された空気を提供する前に、第2蒸発器のすぐ近くに空気を流す工程をさらに含み、第1蒸発器は、第1吸着冷却システムの要素であり、第2蒸発器は、第2吸着冷却システムの要素であり、第1および第2吸着冷却システムは、多段吸着冷却システムの一部分である。
【0036】
別の実施形態では、本発明の吸着冷却システムは、トリジェネレーション・エネルギー・システムを作るために、コジェネレーション・エネルギー・システムと共に利用される。トリジェネレーション・エネルギー・システムは、建物の内部に冷却された流体を提供するのに使用されてもよい。
【0037】
理解されるように、先に説明した、注目される態様、実施形態、および特徴の多くは、任意所望の組合せで実施される。本発明のさらなる態様および対応する利点は、以下のさらなる説明と関連して当業者に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明は、比較的大量の冷媒を吸収することができる、改良された軽量な吸着床構造を含むことができる改良型吸着冷却システムを提供する。吸着冷却システムはまた、冷却動作を維持するのに十分なレートで冷媒を蒸発させることができる改良された、軽量でコンパクトな蒸発器を含んでもよい。吸着冷却システムは、車両または建物に、空気または水などの冷却された流体を提供するのに使用されてもよい。
【0039】
吸着冷却システムの動作は、当技術分野ではよく知られている。一般に、吸着冷却システム300は、図3に示すように、蒸発器302、吸収器306、および冷媒源304を備える。冷媒源304から蒸発器302に供給される冷媒は、蒸発器302で蒸発し、それによって、蒸発器302の一部分を冷却する。蒸発した冷媒は、次に、吸収器306で吸収されて、蒸発器302からの蒸気状冷媒を除去し、それによって、冷却容量が増加する。蒸気通路305は、蒸発した流体が、蒸発器302から吸収器306へ流れることを可能にする。
【0040】
本発明は、有意な量の蒸気相冷媒を吸収することができ、同様に、再生動作中に高くても120℃の温度の、ほとんど、または、全ての吸収された冷媒を脱着させることができる、固相の大容量乾燥剤を使用して、冷却を行う吸収技法の使用を可能にする。
【0041】
大容量乾燥剤が機能するメカニズムは、吸着、吸収、または、吸着と吸収の組合せであることができ、本明細書で使用されるように、用語、吸着する、吸着性の、吸着などは、流体が保持される実際のメカニズムに関係なく、流体の保持のことを言う。同様に、吸着性冷媒が、大容量乾燥剤から放出されるメカニズムは、脱着、脱離、または脱着と脱離の組合せであることができ、本明細書で使用されるように、用語、脱着する、脱着性の、脱着など、ならびに、用語、再生する、再生可能な、再生した、などは、乾燥材料に関連して使用されるとき、流体が放出される実際のメカニズムに関係なく、吸着剤からの流体の放出のことを言う。
(現場で再生可能な吸着冷却システムおよび非現場で再生可能な吸着冷却システムの適用)
吸着冷却システムは、一般に、2つのタイプ、すなわち、現場で再生可能なタイプと非現場で再生可能なタイプに分類されることができる。現場で再生可能な吸着冷却システムは、一般に、吸着冷却システムの動作中に吸着床から吸収された冷媒を再生することができ、したがって、一般に、吸収された冷媒を再生し、その後、こうした冷媒を液化する手段を含む。一般に、これらの手段は、吸着床材料を加熱する熱源および再生された冷媒を冷却して、液体にする冷却源を含む。しばしば、冷却源は、凝縮器である。
【0042】
非現場で再生可能な吸着冷却システムは、一般に、吸着冷却システムの動作中に吸着床から吸着された冷媒を再生することができない。したがって、非現場で再生可能な吸着冷却システムは、一般に、車両冷却用途で使用されない。
【0043】
本発明の1態様によれば、吸着冷却システムは、車両の室内に冷却された空気を提供するときに利用される現場での吸着冷却システムである。こうした吸着冷却システムの一実施形態は、図4〜5に示される。この実施形態によれば、吸着冷却システム400は、蒸発器402と、蒸発器402と流体連通する凝縮器404と、蒸発器402および凝縮器404と流体連通する複数の吸着床406、408と、吸着床にクーラントを提供するクーラント源416を含む。動作中に、液体冷媒は、凝縮器404から、蒸発器供給ライン410を介して、蒸発器402に流れ、蒸発器402で、冷媒が蒸発する。当技術分野でよく知られているように、この蒸発は、蒸発器402を冷却する。蒸発器402は、少なくとも1つの表面が、車両の内部に供給される空気420と熱的につながるように位置し、それによって、こうした空気を冷却する。
【0044】
吸着床406、408は、一般に、並列で、かつ、2つの動作位相で働いて、連続冷却動作を可能にする。動作の第1位相では、図4に示すように、第1吸着床406は、熱い(相対的に)クーラント流体を、以下でさらに説明されるクーラント流路を介して第1吸着床406を通して循環させることによって加熱される。熱いクーラント流体は、第1吸着床406を通して循環され、クーラント供給ライン412を介してクーラント源416から供給される。熱いクーラントは、クーラント戻りライン414を介してクーラント源に戻る。加熱された第1吸着床406は、吸収した冷媒を脱着し、冷媒は、次に、凝縮器供給ライン422を介して凝縮器404に供給され、凝縮器404で、冷媒が液化される。冷却動作を維持するために、液体冷媒は、次に、蒸発器供給ライン410を介して蒸発器402に提供されることができる。同様に、動作の第1位相中に、第2吸着床408は、ファン(図示せず)などによって、空気供給ライン424を介して蒸発器402に「乾燥空気」を供給する。乾燥空気のストリームは、冷媒を蒸発させるのに役立ち、また、「湿った空気」ストリームとして蒸発器402を出て、「湿った空気」ストリームは、空気戻りライン426を介して第2吸着床408に戻る。戻される湿った空気ストリームは、以下でさらに説明される冷媒流路を介して、第2吸着床408を通して流れ、湿った空気ストリームに含まれる冷媒は、乾燥剤などによって、第2吸着床408内で吸収される。パイプ、配管、弁などを使用して、システム内の流体の流量が制御されてもよい。
【0045】
本明細書で使用されるように、用語「乾燥空気」は、比較的少量の冷媒を含むか、または、冷媒を全く含まない空気ストリームまたは他のガス・ストリームのことを言う。本明細書で使用されるように、用語「湿った空気」は、比較的大量の、または、さらに飽和した量の冷媒を含む空気ストリームまたは他のガス・ストリームのことを言う。以下で述べるように、水を含む種々の冷媒が、本発明の吸着冷却システム内で使用することができる。しかし、用語「乾燥空気」も、用語「湿った空気」も、冷媒が水を含まなければ、こうした空気内に水が存在するか、または、存在しないことを示唆することを意味しない。
【0046】
動作の第1位相は、第2吸着床408による吸収の効率が、吸収の閾レベルに達する、かつ/または、第1吸着床406が、十分に再生される(すなわち、第1吸着床から、所定の量の冷媒が除去される)まで続き、その後、動作の第1位相は終わり、弁を切り換えること、および/または、システム内の他のメカニズムなどによって、動作の第2位相が始まる。動作の第2位相では、第1および第2の吸着床406、408の役割が切り換えられ、図5に示すように、第1吸着床406は、乾燥空気を蒸発器に供給し、第2吸着床408は再生され、冷媒を凝縮器404に供給する。これは、吸着冷却システム400の連続動作を可能にする。
【0047】
一般に、吸着床は、以下でさらに詳細に説明するように、別個の冷媒流路とクーラント流路を含むように構築される。一般に、冷媒流路とクーラント流路は流体的に分離される。冷媒流路は、一般に、流体(たとえば、ガス)が、吸着床を通って流れ、乾燥材料に接触することを可能にする。クーラント流路は、吸着床の乾燥材料および冷媒流路から流体的に分離されるが、以下でさらに詳細に説明するように、こうした乾燥材料と熱的につながりを持つために乾燥材料に隣接する。
【0048】
便宜上、用語「乾燥剤」、「乾燥材料」などは、吸収器で使用される吸収材料を述べるために本明細書で使用されるが、こうした用語は、吸収材料を乾燥剤だけに限定することを意図されない。吸収剤は、蒸気状冷媒を吸収することができ、同様に、高くても120℃の温度で冷媒を再生する(すなわち、脱着させる)ことができる任意の材料であることができる。
【0049】
吸着冷却システムは、好ましくは、閉ループ・システムである。好ましくは、吸着冷却システムは、密閉システム内に収容されて、冷媒と吸収剤との比を維持し、所望の冷却を行い、ならびに、大容量吸収剤の汚染を防止する。たとえば、大容量乾燥剤が、吸収器において使用される場合、大容量乾燥剤を、水蒸気および汚染物質が存在する大気条件に暴露することができない。大気への暴露は、大容量乾燥剤を汚染する、かつ/または、殺菌する可能性がある。
【0050】
先に述べたように、吸着床内に含まれる冷媒を再生するために、熱いクーラントを、吸着床に供給することができる。1つの好ましい実施形態では、熱いクーラントは、液相クーラントである。特に好ましい実施形態では、熱いクーラントは、ラジエータ冷却剤流体(たとえば、エチレングリコール)などの、内燃機関の冷却動作で使用される液相クーラントであり、クーラント源は、車両のラジエータまたは同様の構造体である。液体クーラントを介してエンジンからの廃熱を使用することは、2次熱源を供給することなく、吸着床の再生を可能にし、エンジンならびに吸着冷却システムを動作させるときの所定の効率を提供する。さらに、ガス相クーラントと対照的に、熱い液相クーラントの使用は、熱い液相クーラントが、一般に、より急速に熱を層に伝達するため、吸着床を再生するときにより効率的である。
【0051】
本発明の別の態様によれば、吸着冷却システムは、吸着床を冷却するときに使用するための第2クーラント源を含む。こうした第2クーラント源を利用する1つの実施形態は、図6に示される。この実施形態によれば、冷却オフ位相中に吸着床406、408、409を冷却するのに役立つように、かつ/または、吸収活動中に乾燥剤の吸収容量を増加させるのに役立つように、(第1クーラント源の熱いクーラントと対照的に)冷たいクーラントを提供するために、第2クーラント源418は、吸着床406、408、409に配管されてもよい。
【0052】
先に述べたように、吸着床は、一般に、吸着床内に含まれる吸収材料を加熱することによって再生される。再生後、乾燥材料は、一般に、吸収活動を始める前に、ある温度に戻ることを許されるべきである。再生活動と、乾燥剤がある温度に戻ってしまう時刻との間に、有意な時間が経過する可能性がある。この時間経過は、吸着冷却システムの動作効率に影響を及ぼす可能性がある。そのため、冷たいクーラントが、その再生動作後に吸着床に供給されて、より迅速に、その温度を許容可能なレベルまで下げるような、第3動作位相を設けることが望ましいことが多い。したがって、本発明の一実施形態によれば、第2クーラント源418が設けられ、第2クーラント源418は、第3動作位相(冷却オフ)中に、吸着床に冷たい(相対的に)クーラントを提供することができる。図6に示すように、第1吸着床406は、再生位相時に動作し、上述したように、第1クーラント源416からの熱いクーラントによって加熱されている。第2吸着床408は、上述したように、吸収位相時に動作する。冷たいクーラントは、クーラント供給ラインおよび戻りライン428、430を介して第3吸着床409を通って循環して、第3吸着床409を冷却する。
【0053】
冷たいクーラントはまた、吸収動作を行う吸着床に供給されてもよい。一般に、乾燥剤の吸収容量は、その温度の関数であり、低温では、乾燥剤は、より多くの冷媒を吸収することができる。図6に示すように、冷たいクーラントは、クーラント供給ラインおよび戻りライン432、434を介して第2吸着床408を通って循環して、第2吸着床408の吸収容量、したがって、吸着冷却システムの効率が増加する。
【0054】
本明細書で使用されるように、用語「熱いクーラント」および「冷たいクーラント」は、吸着床の温度に対する、特に、こうした層内の乾燥剤シートの温度に対するクーラントの温度のことを言う。そのため、熱いクーラントは、一般に、乾燥材料の温度より高い温度にあり、冷たいクーラントは、乾燥材料の温度より低い温度にある。
【0055】
冷たいクーラントは、吸着床のクーラント流路を通って流れるようになっている任意の流体であってよい。一実施形態では、冷たいクーラントは、周囲空気などのガスである。別の実施形態によれば、冷たいクーラントは、液体冷却剤である。一実施形態では、第2冷却源は、(エンジン・ブロックの冷却のために車両によって通常使用されるラジエータ以外に)第2ラジエータを含み、第2ラジエータは、冷たい液体クーラントを含む。第2冷却源のサイズは、取り除かれなければならない熱量に依存し、熱量は、吸収器の熱質量に依存する。理解されるように、大容量乾燥剤が、一般に、本発明に従って使用されるため、吸収器の熱質量は、大幅に低減されることになり、必要な冷却レートを達成するために、比較的小さな第2クーラント源を使用することができる。別の実施形態では、第2クーラント源は、凝縮器であり、冷たいクーラントは、凝縮器内に含まれる冷媒である。同様に、図6は、熱いクーラント経路と冷たいクーラント経路についての、別個の供給および戻りラインを示すが、冷たいクーラントは、一般に、熱いクーラントによって使用される同じクーラント配管を使用し、一連の弁およびT字管は、適切な流量をもたらすために使用される。
【0056】
本発明の別の実施形態では、吸着冷却システムは、車両冷却要件を補うために、従来の(すなわち、圧縮ベースの)エアコンディショナと共に動作する。本発明の一実施形態では、標準的な使用のために、比較的小さいサイズのエアコンディショナが、車両内に設けられる。高温および/または高湿度に遭遇すると、車両の内部の冷却を達成するための、必要な付加的な冷却容量を提供するために、本発明の吸着冷却システムを使用することができる。この実施形態によれば、大容量乾燥剤を使用する吸着床は、任意選択で、冷却負荷を減少させるために、到来する空気を除湿するのに使用されてもよい。
【0057】
別の実施形態では、2つ以上の吸着冷却システムは、必要な冷却容量を提供するために並列に動作する。各吸着冷却システムは、他のシステムから流体的に分離され、独立に動作することができる。
【0058】
さらに別の実施形態によれば、吸着床は、吸着冷却システムに対する冷却負荷を減らすために、到来する室内空気を乾燥するのに使用される。図7に示すように、吸収器740、742は、本発明の吸着冷却システムによって冷却される到来する空気の連続乾燥を達成するために、並列に動作する。到来する空気744は、第1吸着床740を通して流れ、第1吸着床740で、空気が、(たとえば、大容量乾燥剤によって)乾燥させられ、除湿された空気746として出て、除湿された空気746は、その後、本発明の蒸発器702のすぐ近くに、かつ/または、蒸発器702に接触して流れる。同時に、上述したクーラント源716を使用するなどによって層を加熱し、脱着された水を層742から除去するために、第2吸着床742を通してガス756を流すことによって、第2吸着床742が再生される。第1吸着床740が、吸収の閾レベルに達すると、かつ/または、第2吸着床742が、十分に再生されると、吸着床740、742は、除湿動作と再生動作とを切り換える。吸着床740、742は、任意選択で、動作中に、こうした吸収器を冷却するために、上述したように、第2クーラント源718の使用を採用してもよく、それによってその吸収容量が増加する。吸収器を通して適切な流量をもたらすために、弁、配管、および他の材料(図示せず)が使用されてもよい。
【0059】
本発明の別の実施形態によれば、現場で再生可能な吸着冷却システムは、冷却された流体を建物に提供するのに使用される。コジェネレーション・プラントまたは他の熱源からの廃熱を使用して、本発明の吸着冷却システムの吸着床に熱が提供される。車両の室内に冷却された空気を提供することに関して、まさに先に説明したように、吸着冷却システムが連続冷却を行うことができるように、一連の吸着床が並列に動作する。しかし、車両からの熱いクーラントを使用する代わりに、コジェネレーション・システムからの熱水または熱ストリームなどの、熱い流体またはガスは、種々の吸着床を通って循環して、こうした層を再生するのに必要な熱が提供されてもよい。以下に説明する冷媒、吸着床、および蒸発器が、この実施形態に従って使用されてもよい。同様に、「SORPTION COOLING SYSTEMS,THEIR USE IN PERSONAL COOLING APPLICATIONS AND METHODS RELATING TO SAME」という名称で、2005年6月8日に出願され、参照によりその全体が援用される、同一譲受人に譲渡された米国仮特許出願第60/,号に記載される複数チャンバ蒸発器などの、複数チャンバ蒸発器が、冷却された流体を建物に提供するのに使用されてもよい。
(吸着冷却システムの冷媒源)
上述したように、冷媒源は、冷却を行うために、蒸発器に必要な冷媒を供給する。一般に、非現場の再生可能な吸着冷却システムは、任意のタイプの冷媒源を使用することができるが、軽量で柔軟なプラスチック・ハウジングなどの簡単な液体リザーバがあれば、一般に、システムのサイズ、重量、および複雑さを最小にするのに十分であることになる。本発明に従って有用な他のタイプの液体リザーバは、同一譲受人に譲渡された、Smith他に対する米国特許第6,701,724号およびSmith他に対する米国特許第6,858,068号に開示され、特許はそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0060】
現場で再生可能な吸着冷却システムは、一般に、吸着床と冷媒源との間で流体連通を可能にするさらなる配管、および、蒸気状冷媒を液化する手段を必要とするため、より複雑である。車両冷却用途の場合、比較的小さいサイズと重量のために、空冷式凝縮器が適するが、水冷式または蒸発凝縮器が、使用されてもよい。
(吸着冷却システムの冷媒)
本発明の吸着冷却システムにおいて、任意の適した冷媒が使用されてもよい。一実施形態では、冷媒は周囲温度で高い蒸気圧を有し、それによって、圧力低下は高い蒸気生成レート(vapor production rate)を生じることになる。適した液体は、アンモニア、メチル・アルコールまたはエチル・アルコールなどの種々のアルコール、ケトン(たとえば、アセトン)、またはアルデヒド(たとえば、アセトアルデヒド)を含む。他の有用な液体は、FREON(E.I.デュポン・ドゥ・ヌムール(E.I.Dupont de Nemours)、デラウェア州ウィルミングトン(Wilmington,DE))などのクロロフルオロカーボン(CFC)またはハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、FREON C318、FREON 114、FREON 21、FREON 11、FREON 114B2、FREON 113、およびFREON 112などの一連のフルオロカーボン製品を含むことができる。
【0061】
1つの好ましい実施形態では、冷媒は水ベースの液体であり、特に好ましい実施形態では、液体は本質的に水を含む。水が環境、コストおよび安全性の利点に加えて、非常に高い物質蒸発熱について好ましい。周囲温度で、蒸発した水1グラム当たり約2,500Jの冷却を達成することができる。
(吸着冷却システムの吸着床)
本発明の吸着冷却システムの吸着床は、蒸発器から冷媒を吸収する任意のタイプの吸収器であってよい。たとえば、吸収器は、(固定した、または、回転する)ホイール、充填層、シート、螺旋状に巻かれた接触器、または、中間チャネル平行板接触器の形態であってよい。好ましい実施形態では、吸収器は軽量、コンパクトで、比較的高い吸収容量を有する吸着床である。吸着床は、好ましくは、それぞれ吸収動作および再生動作中に、冷媒を急速に吸収し、また、脱着することもできる。こうした吸着床の一実施形態は図8に示される。
【0062】
この実施形態では、吸着床800は、冷媒入口804、冷媒出口806、クーラント入口808、およびクーラント出口810を含む流体不浸透性ケーシング801を含む。複数の乾燥剤シート812は、ケーシング内に配設され、乾燥剤シートはそれぞれ、貫通して延びる少なくとも1つの開口814を有する。乾燥剤シート812の第1面は、好ましくは、大容量乾燥剤を含む。乾燥剤シート812の第2面は、好ましくは、流体不浸透性障壁816によって覆われる。冷媒流路818は、冷媒入口804と冷媒出口806との間にあり、クーラント流路820は、クーラント入口808とクーラント出口810との間にある。間隔保持材料822は、乾燥剤シート812を互いから分離し、冷媒流路とクーラント流路を画定するのに役立つ。乾燥剤シートの間隔保持材料822および開口814は、冷媒流路818とクーラント流路820が、互いから流体的に分離されるように配置される。一般に、開口814は、冷媒流路か、クーラント流路のいずれかの一部分であり、かつ、それを画定するのに役立つが、開口の第1のセットは、冷媒流路を画定するのに使用することができ、一方、開口の第2のセットは、クーラント流路を画定するのに使用することができる。図9に示すように、クーラント入口および出口を、冷媒入口および出口と切り換え、乾燥剤シートを反転することによって、図8に示す流路が切り換えられるように、吸着床を設計することができることが理解されるであろう。
【0063】
吸収動作中、蒸発器からの蒸気状冷媒は、冷媒が吸収される乾燥剤シート812の吸収セクションに接する冷媒流路818を通って流れる。先に説明したように、吸収動作中、乾燥剤シートを冷却し、乾燥剤シートの吸収容量を増加させるために、冷たいクーラントをクーラント流路820を通して循環してもよい。乾燥剤シートの第2面上の流体不浸透性障壁816は、冷たいクーラントと乾燥剤との好ましくない相互作用(たとえば、化学反応)を防止する。
【0064】
再生動作中、内燃機関の冷却で使用される液体クーラントなどの熱いクーラントは、乾燥剤を加熱するために、クーラント流路820を通して流れ、乾燥剤上に吸収された冷媒の蒸気圧を増加させ、最終的に、乾燥剤から冷媒の全てでない場合、少なくとも一部分を脱着させる。乾燥剤シート812の第2面上の流体不浸透性障壁816は、熱いクーラントと乾燥剤シートとの間の好ましくない相互作用を防止する。凝縮器または他の冷媒源からの乾燥空気は、脱着された冷媒を除去するために、冷媒流路818を通して流れる。湿った空気は吸着床800を出て、現場で再生可能な吸着冷却システムの場合、凝縮器に戻り、凝縮器で湿った空気が液化される。
【0065】
本発明によれば、単一の冷媒流路および/またはクーラント流路が使用されてもよいが、一般に、吸着床は、複数の冷媒流路およびクーラント流路を画定するために、乾燥剤シート当たり複数の開口、ならびに、複数のスペーサ、クーラント入口および出口および/または冷媒入口および出口を含むことになる。こうした吸着床の一実施形態は、図10A〜10Eで提供される。流体不浸透性ケーシング1001は、吸着床800は、複数の冷媒入口1004、冷媒出口1006、クーラント入口1008、およびクーラント出口1010を含む。複数の乾燥剤シート1012はケーシング内に配設され、乾燥剤シートはそれぞれ、貫通して延びる少なくとも1つの開口1014を有する。乾燥剤シートの第1面は、好ましくは、大容量乾燥剤を含む。乾燥剤シートの第2面は、好ましくは、流体不浸透性障壁1016によって覆われる。複数の冷媒流路1018は冷媒入口1004と冷媒出口1006との間にあり、複数のクーラント流路1020は、クーラント入口1008とクーラント出口1010との間にある。間隔保持材料1022は、乾燥剤シート1012を互いから分離し、複数の冷媒流路1018と複数のクーラント流路1020を画定するのに役立つ。乾燥剤シート1012の間隔保持材料1022および開口1014は、冷媒流路1018とクーラント流路1020が、互いから流体的に分離されるように配置される。一般に、開口1014は、冷媒流路か、クーラント流路のいずれかの流路の一部分であり、かつ、それを画定するのに役立つが、開口の第1のセットは、冷媒流路を画定するのに使用することができ、開口の第2のセットは、クーラント流路を画定するのに使用することができる。クーラント入口および出口を冷媒入口および出口と切り換え、乾燥剤シートをひっくり返すことによって、図10Aに示す流路が切り換えられるように、吸着床を設計することができることが理解されるであろう。
【0066】
冷媒流路は、一般に、吸着動作および再生動作中に、冷媒の物質移動レートを最大にするように設計されるべきである。以下でさらに詳細に説明されるように、とりわけ、乾燥剤シートの吸収セクションの表面積(すなわち、乾燥剤シートの第1吸収面の表面積から開口が占める面積を引いた面積)および乾燥剤シートの吸収面間の隙間を最適化することによって、物質移動レートを最大にすることができる。
【0067】
クーラント流路は、一般に、乾燥剤シートとクーラント流体との間の熱伝達レートを最大にするように設計されるべきである。以下でさらに詳細に説明されるように、とりわけ、熱伝達のために利用可能な表面積および乾燥剤シートの流体不浸透性面間の隙間を最適化することによって、クーラントレートを最大にすることができる。
【0068】
先に述べたように、吸着冷却システムはまた、吸着床が、冷媒を吸収も再生もしない冷却サイクル/位相を使用してもよい。冷却動作中、冷たいクーラントは、乾燥剤シートをより急速に冷却するために、クーラント流路を通って流されてもよい。乾燥剤シートの第2面上の流体不浸透性障壁は、冷たいクーラントと乾燥剤シートとの間の好ましくない化学相互作用を防止する。理解されるように、吸着冷却システムの弁および配管は、上記冷却動作を可能にするように構成されて配置されるべきである。
【0069】
床の質量を最小にし、床との大気相互作用を防止し、床を構造的に防護するのに役立つために、吸着床のケーシングは、好ましくは、剛性のある、軽量の、流体不浸透性材料でできている。一部の例では、非剛性の流体不浸透性材料も使用することができる。適したケーシング材料は、ポリエチレン、ナイロン、PVCなどの単純なプラスチック膜、トーヨー・アルミニウム(Toyo Aluminum)(日本)によって販売されているものなどの、プラスチック熱シール層を有する金属箔、E.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.Du Pont de Nemours and Co.)(米国、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,Delaware))から入手可能なものなどの金属化プラスチック障壁、レクサム(Rexam)(米国、インディアナ州エバンスビル(Evansville,Indiana))から入手可能なものなどの、成型されたポリエチレンまたはポリプロピレン、ウィパック(Wipak)(フィンランド)からのCOVEXX、多層プラスチック、金属、熱可塑性物質、熱硬化性プラスチック、およびその組合せを含む。
【0070】
吸着床で使用される間隔保持材料は、好ましくは、軽量でかつ剛性があり、流体不浸透性の外周を含む。間隔保持材料は、冷媒流路とクーラント流路の少なくとも一方を、しばしば、流路の両方を画定するのに役立つように使用されるため、間隔保持材料はまた、好ましくは、吸着冷却システムで使用される冷媒とクーラントの両方に対して不活性である。好ましい間隔保持材料は、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリオキシメチレン(polyoxymethlene)(たとえば、E.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.Du Pont de Nemours and Co.)から入手可能なDELRIN)、塩化ポリビニル、塩化ポリビニル塩化物、エポキシ、熱硬化性ポリエステルエラストマー(たとえば、E.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.Du Pont de Nemours and Co.)から入手可能なHYTREL)、ポリフェニル・エーテル(たとえば、ジェネラル・エレクトリック・コーポレーション(General Electric Corp.)(米国、コネチカット州フェアフィールド(Fairfield.Connecticut))から入手可能なNORYL)、ポリアミド(たとえば、E.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.Du Pont de Nemours and Co.)から入手可能なNYLON)、ポリフェニレン・サルファイド(たとえば、シェブロン・フィリップス・ケミカル・カンパニー(Chevron Phillips Chemical Company)(米国、テキサス州ウッドランド(Woodlands Texas))から入手可能なRYTON)、ポリテトラフルオロエチレン(たとえば、E.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.Du Pont de Nemours and Co.)から入手可能なTEFLON)、ポリフッ化ビニリデン、およびその組合せを含む。これらの中で、ポリエチレンおよびポリプロピレンは、特に好ましいスペーサ材料である。一部の例では、乾燥剤シート材料は、所望の間隔保持材料のサイズに切断され、間隔保持材料として利用されることもできる。
【0071】
吸着床の乾燥剤シートは、好ましくは、軽量で薄く、高い吸収容量を有し、比較的低い温度で再生されるようになっている。本発明による1つの好ましい乾燥剤シートは、Smith他に対する、参照によりその全体が援用される、同一譲受人に譲渡された米国特許第6,559,096号に記載される乾燥剤などの、高い孔容積、制御された孔サイズを有する多孔性支持材料および多孔性支持材料上に分散した吸収剤を含む複合乾燥剤などの、低コストの大容量乾燥材料を含む。
【0072】
大容量乾燥剤は、好ましくは、乾燥剤1グラム当たり液体冷媒の少なくとも約0.2グラム、好ましくは乾燥剤1グラム当たり液体冷媒の少なくとも約0.5グラム、より好ましくは、乾燥剤1グラム当たり液体冷媒の少なくとも約1.0グラム、さらにより好ましくは、乾燥剤1グラム当たり液体冷媒の少なくとも約2.0グラムを吸収することができる。図11は、他の吸収剤と比較した場合の、大容量乾燥剤の典型的な吸収容量を示す。大容量乾燥剤はまた、好ましくは、1:1.5未満、好ましくは、1:1.4未満、より好ましくは、1:1.3未満などの、蒸発熱と吸収熱の比較的低い比を有する。たとえば、典型的なゼオライトは、約1:1.8の蒸発熱と吸収熱の比を有する。図12は、改質炭を含む大容量乾燥剤の、水の蒸発熱と比較したときの吸収熱を示す。
【0073】
一実施形態によれば、冷媒が、本質的に水からなるとき、好ましい大容量乾燥剤は、周囲温度(たとえば、25℃)で10%相対湿度において、水の状態のその重量の少なくとも約20%を、また、周囲温度で50%相対湿度において、水の状態のその重量の少なくとも約40%を吸収することができる。より好ましくは、大容量乾燥剤は、周囲温度で10%相対湿度において、その重量の少なくとも約40%を、また、周囲温度で50%相対湿度において、その重量の少なくとも約60%を吸収することになる。さらにより好ましくは、大容量乾燥剤は、周囲温度で10%相対湿度において、その重量の少なくとも約60%を、また、周囲温度で50%相対湿度において、その重量の少なくとも約80%を吸収することになる。
【0074】
適した乾燥剤は、ゼオライト、酸化バリウム、過塩素酸マグネシウム、硫酸カルシウム、酸化カルシウム、活性炭、改質炭、塩化カルシウム、グリセリン、シリカ・ゲル、アルミナ・ゲル、水酸化カルシウム、無水リン酸、リン酸、水酸化カリウム、硫酸ナトリウム、およびその組合せを含む。特に好ましい大容量乾燥剤は、表面改質した多孔性支持材料である。多孔性支持材料は、活性炭、カーボン・ブラック、またはシリカのような材料であることができる。好ましくは、多孔性支持材料は、少なくとも約0.8cm3/gの孔容積、および、約1nm〜約20nmの平均孔サイズを有する。表面改質は、多孔性支持材料を、塩化カルシウム、塩化リチウム、臭化リチウム、塩化マグネシウム、硝酸カルシウム、フッ化カリウム、およびその組合せのうちの任意の1つなどの、1つまたは複数の金属塩によって含浸させることを含む可能性がある。多孔性支持材料は、好ましくは、金属塩の約20〜約80重量%、より好ましくは、金属塩の約40〜約60重量%が充填される。
【0075】
大容量乾燥剤はまた、好ましくは、再生位相中に吸収されたほとんどの液体を脱着するような性質と量を備えている。一実施形態では、大容量乾燥剤は、高くても120℃の温度で、吸収された冷媒の少なくとも90%を、好ましくは高くても120℃の温度で、吸収された冷媒の少なくとも95%を、より好ましくは高くても120℃の温度で、吸収された冷媒の少なくとも98%を脱着することができる。図13は、大容量乾燥剤の吸収容量を温度の関数として示す。
【0076】
大容量乾燥剤は、高くても120℃の温度で再生する能力以外の理由で有用である。たとえば、冷却システムで使用される吸着床は、一般に、ガス排出と比較して、液体クーラントの高い熱伝達係数のために、排出タイプの冷却システムより小さいことになる。乾燥剤の高い吸収容量は、その吸着性能のために、必要な床容積の低減を可能にする。寄生(回収不能)損失もまた、低減することができる。さらに、自動車用途の場合、乾燥剤の再生は、等級の低い廃熱を使用して行われるため、吸着冷却システムを動作させるのに必要とされる唯一の動力は、1つまたは複数の電気ファンおよび1つまたは複数のクーラントポンプであり、以下でさらに詳細に説明するように、効率の高いCOPをもたらす。燃料経済性の改善および排出ガスの減少が示される場合がある。
【0077】
1つの特に好ましい乾燥剤シートは、金属塩を含浸されている多孔性炭素シートを含む。好ましい実施形態では、乾燥剤シートは、とりわけ、塩化リチウムおよび塩化カルシウムからなる群から選択された金属塩によって含浸された、少なくとも約50%重量の炭素を含む炭素シートでできている。好ましくは、乾燥剤シートは、少なくとも0.01グラムの炭素/吸収面表面積1cm2、より好ましくは少なくとも約0.015グラムの炭素/cm2、より好ましくは少なくとも約0.02グラムの炭素/cm2を含む。好ましくは、乾燥剤シートは、少なくとも約0.01グラムの金属塩/吸収面表面積1cm2、より好ましくは少なくとも約0.02グラムの金属塩/cm2、より好ましくは少なくとも約0.04グラムの金属塩/cm2を含む。
【0078】
乾燥剤シートは、好ましくは、炭素用紙を金属塩によって含浸させることによって作られる。一般に、処理は、炭素用紙を、50%脱イオン水と50%メタノールの混合物などの、界面活性剤で前処理すること、表面がちょうど湿るまで、用紙表面上に混合物を均一に噴霧すること、および、湿った炭素シートを、金属塩を含む溶液に接触させることを含む。炭素シートの孔容積が充填されると、塩/水/アルコール混合物は、もはや表面内にウィッキングされないであろう。1回のウィッキング工程で得られたよりも、多くの塩の充填が望まれる場合、用紙シートは、数時間の間、50℃で炉内に設置されて、大量の液体が孔から乾燥させられてもよく、前処理工程およびウィッキング工程が繰り返される。所望の充填が達成されると、シートは、乾燥を完了するために、一晩の間、真空下において70℃で炉内に設置されてもよい。シートは、真空下で乾燥された後、密閉容器内に保たれるか、または、窒素環境で処理されて、大気の水を吸収するのを防止される。上述した炭素シートは、ミード・ウェストバコ(Mead−Westvaco)(マサチューセッツ州サウス・リー(South Lee,Mass))によって生産されたものなどの、大表面積炭素材料(たとえば、活性炭またはカーボン・ブラック)を含む任意のシートであることができる。
【0079】
吸着床に含まれる乾燥剤シートは、乾燥剤シートが、冷媒流路と流体連通し、クーラント流路と熱的につながる限り、任意の適した形態であってよい。乾燥剤シートの断面積は、いずれの大きさであることもできるが、一般に、吸着床ケーシングの対応する断面積よりわずかに小さい。先に述べたように、乾燥剤シートの断面積は、吸着床の物質移動能力および熱伝達能力を最大にするために、最大にされるべきである。
【0080】
乾燥剤シートは、一般に、クーラントと乾燥剤シートとの間での効率的な熱伝達を可能にするために、厚さが比較的薄い。好ましくは、乾燥剤シートは、厚くても約5mm、好ましくは厚くても約2mm、より好ましくは厚くても約1mmの厚さを有する。構造的な完全性を維持するために、乾燥剤シートは、少なくとも約0.1mm、より好ましくは少なくとも約0.5mmの厚さを有するべきである。
【0081】
乾燥剤シートはまた、吸着床の重量を最小にするために、できる限り軽量であるべきである。乾燥剤シートはまた、冷媒流路およびクーラント流路からの力に耐えるために、構造的に強固であるべきである。上述した炭素シートは、軽い重量と丈夫な性質のために特に好ましい。
【0082】
先に述べたように、流体不浸透性層は、乾燥剤シートとクーラントとの間の好ましくない相互作用を防止するために、乾燥剤シートの一方の面を覆うべきである。流体不浸透性層はまた、クーラントと乾燥剤シートとの間の効率的な加熱レートおよび/または冷却レートを可能にするために、比較的熱伝導性があるべきである。流体不浸透性層はまた、吸着床の重量を最小にするのに役立つために、軽量であるべきである。この点で、好ましい流体不浸透性層材料は、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリエステル、COVEXX(ウィパック(Wipak)(フィンランド)から入手可能)、および金属箔を含む。流体不浸透性層は、張り合わせ、超音波溶接、溶剤溶接、およびヒート・シーリングなどの任意の知られている方法によって、乾燥剤シートに固着されてもよい。
【0083】
乾燥剤シートはそれぞれ、一般に、少なくとも1つの開口を有する。先に述べたように、開口は、冷媒流路か、クーラント流路のいずれかの一部分を画定する。一実施形態では、開口は、クーラント流路のみの一部分を画定する。別の実施形態では、開口は、冷媒流路のみの一部分を画定する。さらに別の実施形態では、開口の第1のセットは、クーラント流路の一部分を画定し、開口の第2のセットは、冷媒流路の一部分を画定する。
【0084】
乾燥剤シートは、1シート当たり1つの開口を有するが、一般に、1シート当たり複数の開口を有する。開口の数が増加するにつれて、吸着床を通る流体経路の数が、それに対応して増加し、流体が利用可能な全摩擦表面積が減少する。これは、相応して、吸着床を通る摩擦要因を減少させ、吸着床を通る圧力低下を減少させるのに役立つ。さらに、開口が、冷媒流路の一部分であるとき、冷媒流路の数の増加が示され、それによって、乾燥材料のよりよい利用状態をもたらすことができる。
【0085】
本発明の一実施形態によれば、乾燥剤シートの少なくとも1つは、各シートの断面積の258cm2(40インチ2)当たり、少なくとも2つ、少なくとも4つ、少なくとも6つ、少なくとも8つ、さらに、少なくとも16などの、複数の開口を含む。しかし、開口の数はまた、吸着床を通る流路を流体的に分離するために行われなければならない配管の複雑さを増加させることが理解されるであろう。そのため、本発明の一実施形態によれば、乾燥剤シートは、好ましくは、各シートの断面積の258cm2(40インチ2)当たり、多くても128開口、場合によっては、多くても64開口など、多くても256開口を含む。
【0086】
システム内の所望の流体流路および圧力低下に応じて、吸着床の乾燥剤シートは、1シート当たり同じ数の開口を有する可能性があり、または、乾燥剤シートは、1シート当たり異なる数の開口を有する可能性がある。本発明の一実施形態では、乾燥剤の大多数、または、さらに全ては、1シート当たり同じ数の開口を有する。
【0087】
乾燥剤シートを貫通する開口の向きは、デバイスを通る効率的な流体の流れを可能にする任意の向きであることができる。好ましい実施形態では、開口は、シートにほぼ垂直である。乾燥剤シートの開口は、レーザ切断およびダイ切断を含む、任意の知られている手段によって作ることができる。
【0088】
開口は、吸着床を通る効率的な流体の流れを可能にする任意の形状であることができる。たとえば、開口は、ほぼ円柱、円錐、または直方体の立体であることができる。好ましい実施形態では、開口は、吸着床を通る流体流路の数を最大にしながら、吸収に利用可能な表面積を最大にするために円柱である。
【0089】
開口は、乾燥剤シートと、それぞれ、冷媒およびクーラントとの間の物質移動および熱伝達を最大にするのに役立ちながら、層を通る効率的な流体の流れを可能にする任意の幅であることができる。開口の幅/径は、ほぼ同じである可能性があり、または、開口のサイズは、変わる可能性がある。本発明の一実施形態では、開口は全て、ほぼ同じ幅を有する。本発明の別の実施形態では、開口の幅は、システムを通る流体流路の数を最大にしながら、最小限の圧力低下を容易にするのに役立つために吸着床を通して変わる。特に好ましい実施形態では、開口の幅は、乾燥剤シートの少なくとも1つの平面を横切る、好ましい実施形態では、乾燥剤シートの大多数、または、さらに全てを横切る第1の方向に増加する。
【0090】
図14に示すような特に好ましい実施形態では、第1乾燥剤シート1412および第2乾燥剤シート1412’はそれぞれ、少なくとも、第1、第2、および第3開口1401、1401’、1402、1402’、1403、および1403’を含む。第1開口1401、1401’は、第1の径を有し、第2開口1402、1402’は、第2の径を有し、第3開口1403、1403’は、第3の径を有し、第1の径は第2の径より小さく、第2の径は第3の径より小さい。第1開口1401、1401’はまた、吸着床の第1流れ平面1401−FP内に位置合わせされる。相応して、第2開口1402、1402’および第3開口1403、1403’はまた、それぞれ、第2および第3流れ面1402−FPおよび1403−FP内に位置合わせされる。好ましくは、これらの流れ平面は、互いにほぼ平行である。この配置構成は乾燥剤シートとの流体接触を増加させ、同時に、吸着床を通る圧力低下を減少させながら、吸着床を通る複数の流体流路を提供する。
【0091】
乾燥剤シートは、効率よく冷媒流路とクーラント流路が設けられる限り、吸収ケーシング内に任意の適した方法で配置されることができる。好ましい実施形態では、乾燥剤シートは、互いにほぼ平行である。一実施形態では、乾燥剤シートの大多数の開口は、図14に示すように、互いの中で位置合わせされる。一実施形態では、ほぼ平行なシートは、冷媒入口、冷媒出口、または、両方にほぼ垂直である。相応して、ほぼ平行なシートは、クーラント入口、クーラント出口、または、両方にほぼ平行であってもよい。代替の実施形態では、ほぼ平行なシートはクーラント入口、クーラント出口、または、両方にほぼ垂直である。相応して、ほぼ平行なシートはまた、冷媒入口、冷媒出口、または、両方にほぼ平行であってもよい。
【0092】
隣接する乾燥剤シートの長さおよび/または幅は、システム内の流れの不均衡を最小にするのに役立つために変えられてもよい。図15Aに示す一実施形態では、乾燥剤シート1512Aの幅は、層の上部から底部へ減少して、吸着床を通る流体経路(たとえば、クーラント経路)の流れの不均衡を減らすのに役立つ。クーラントがクーラント入口1508Aを介してケーシング1501Aに、この例では、底部から入るとき、クーラントが吸着床の上部に入るのに必要とされる力の大きさは、クーラントが吸着床の中央部分または下側部分に入るのに必要とされる力の大きさより大きいことになる。その理由は、クーラントが最も抵抗の少ない経路をたどろうとするためである。しかし、クーラントを流すための原動力(たとえば、ファンまたはポンプ(図示せず))は、吸着床のクーラント出口1510Aより上にあるため、クーラントに作用する最大の原動力は、吸着床の上部にあることになる。したがって、このテーパ付き層構造は、層の種々のレベルにおいて、流体に作用する力を均衡させるのに役立つ。
【0093】
流れの不均衡を減少させるのに役立つように設計された構造の別の実施形態は、図15Bに提供される。クーラントは、クーラント入口1508Bを通って流れ、クーラント出口1510Bを介して出る。やはり、クーラントを流すための原動力(図示せず)は、クーラント出口1510Bの上に配設され、それによって、吸着床の上部で最も大きな原動力が提供される。しかし、この実施形態では、吸着床ケーシング1501Bは、乾燥剤シート1512Bの両側に対してテーパが付けられ、乾燥剤シート1512Bは、全て相対的に同じサイズである。先の実施形態と同様に、このテーパ付き層構造は、層の種々のレベルにおいて作用する力を均衡させるのに役立つ。先のテーパ付き層の実施形態は、クーラント流体に関連して述べられたが、冷媒流体もまた、こうした実施形態において使用することができることが理解されるであろう。さらに、乾燥剤シートの長さ/幅およびケーシング・サイズは共に、所望の流れを達成するために変えることができる。
【0094】
乾燥剤シートの吸収面間の空間は、吸着床性能における重要な因子であることがわかっており、吸着床を通る冷媒の、物質移動効率および圧力低下に関連する。好ましくは、2つの乾燥剤シートの第1の吸収面間の空間(「第1隙間サイズ」)は、冷媒が、圧力低下が小さい状態で、大量の乾燥剤に接触するほどのものである。一実施形態では、第1隙間サイズは、多くても5mm、好ましくは多くても2mm、より好ましくは多くても1mmである。しかし、好ましくは、第1隙間サイズは、層を通る冷媒圧力低下量を減少させ、製造の複雑さを最小にするのに役立つために、少なくとも0.05mm、好ましくは少なくとも0.1mm、より好ましくは少なくとも0.25mm、さらにより好ましくは少なくとも0.5mmである。先に述べたように、乾燥剤シート間の空間は、上述した間隔保持材料によって提供される。
【0095】
乾燥剤シートの第2面(すなわち、流体不浸透性面)間の空間の場合、これらの空間は、クーラントの量および層を通してクーラントを流すのに必要とされる圧力に関連する。好ましくは、乾燥剤シートの第2面と第2材料(たとえば、乾燥剤シートの別の第2面または流体ケーシング)との間の空間(「第2隙間サイズ」)は、クーラントが、クーラント容積が小さく、かつ、クーラント圧力低下が小さい状態で、クーラントが、大量の流体不浸透性層表面積に接触するほどのものである。この点で、クーラントの容積は、第2隙間サイズと使用されるクーラントの相(たとえば気相または液相)に直接関連することが理解されるであろう。ガス状クーラントの場合、液体クーラントと比較して、同じ量の冷却を達成するのに、より大きな流体容積が必要とされることになる。したがって、本発明の吸着床を冷却し、かつ/または、加熱するために、液体クーラントが、一般に好ましい。クーラントのタイプ、加熱される、かつ/または、冷却される表面積、クーラントの入口および出口の温度、再生温度、冷却オフ温度、ならびに、流体不浸透性障壁および乾燥材料の熱伝導率は全て、適切な第2隙間サイズを評価するときの考慮事項であることが理解されるであろう。
【0096】
吸着床は、一般に、複数の乾燥剤シートを備える。必要とされる乾燥剤シートの数は、蒸発器の蒸発レートに関連する所望の冷却レート、冷媒のタイプ、乾燥剤の吸収容量、システムで利用される吸着床の量とサイズを含むいくつかの因子の関数である。この情報によって、シートの数を計算することができる。たとえば、先に述べたように、7.2kW−Hrの冷却容量が、多くの車両製造業者によって望まれている。1つの蒸発器と3つの動作位相(すなわち、再生、吸収、および冷却オフ)で動作する3つの層とを有する吸着冷却システムと、定常状態(水蒸気を冷却された室内空気に変換するときの蒸発器の90%効率に匹敵する)の蒸発器において、3.2グラム/秒の水が蒸発すること、大容量乾燥剤が、1グラムの乾燥剤当たり1グラムの水を吸収するようになっていること、および、5分のサイクル・タイムとを仮定すると、各吸着床は、960グラムの大容量乾燥剤を含まなければならない。乾燥剤シートが約0.035グラム/cm2の乾燥材料を含むと仮定すると、(厚さは、吸収容量に対して無視できると仮定すると)1層当たり約27,450cm2の乾燥剤シートが必要とされる。乾燥剤シートの長さおよび幅は、250cm2を超えることができない場合、110シートが必要とされるはずである。
【0097】
先に述べたように、吸着床の冷媒流路は、層のそれぞれの動作位相に応じて、吸着床と蒸発器と凝縮器との間での流体連通を提供する。先に述べたように、再生動作中に、流体連通は、乾燥剤からキャリア・ガスへの冷媒の蒸発/脱着を含む。吸収動作中に、流体連通は、乾燥剤上への冷媒の吸収を含む。一般に、冷媒流路は、低い圧力低下において、層内での高い物質移動レートを可能にするように画定されるべきである。先に述べたように、冷媒流路の数の多さが、吸収剤のよりよい利用状態のために利用されるべきである。
【0098】
好ましくは、吸着床を通る圧力低下は、吸着床を通して冷媒および/またはクーラントを循環させるのに必要とされるファン、ポンプ、または他の原動力のサイズを最小にするのに役立つためにできる限り小さい。本発明の一実施形態では、吸着床を通る冷媒流の圧力低下は、大きくてもH2Oの7.5mmHg(4インチ)、好ましくは大きくてもH2Oの3.7mmHg(2インチ)、より好ましくは大きくてもH2Oの1.87mmHg(1インチ)、さらにより好ましくは大きくてもH2Oの0.93mmHg(0.5インチ)である。
【0099】
冷媒流路はケーシング内の冷媒入口(複数可)および出口(複数可)、ならびに、(a)乾燥剤シート内の開口と(b)間隔保持材料の少なくとも一方によって画定される。一実施形態では、複数の冷媒流路が、複数の冷媒入口、出口、および開口によって画定される。図10Aを参照すると、複数の冷媒入口1004は、冷媒が吸着床ケーシング1001に入るために設けられる。間隔保持材料1022および開口1014は、冷媒流が流れることができる経路を画定する。流体は冷媒出口1006を通して層を出る。
【0100】
冷媒流路は吸着床を通ってほぼ直線または非直線であってよい。ほぼ直線の流路は、一般に、低い圧力低下をもたらすが、吸収剤の低利用状態を示す場合もある。乾燥剤シートに対してクーラントを配管することがより難しい場合もある。ほぼ直線の冷媒流路を有する吸着床の一実施形態は、図16に提供される。湿った空気は冷媒入口から吸着床ケーシング内に流れる。種々のほぼ直線流路が乾燥剤シートに対する冷媒の流体連通を提供する。乾燥した空気は冷媒出口を介してケーシングを出る。こうしたシートを加熱し、かつ/または、冷却するために、クーラントがシートに提供されてもよい。
【0101】
先に述べたように、冷媒流路は非直線であってもよい。非直線流路は、一般に、高い圧力低下を有するが、吸収剤の利用状態の向上を示す。クーラントの配管の容易さも示されることができる。複数の非直線(すなわち、曲がりくねった)流路を有する吸着床の一実施形態は、上述した図10Aに提供される。湿った空気は、冷媒入口1004を通って、吸着床ケーシング1001内に流れる。乾燥剤シート1012内の開口814および間隔保持材料822は、冷媒流体が乾燥剤シートの第1(吸収)面とつながるための非直線流路を画定するのに役立つ。乾燥空気は冷媒出口1006を介してケーシングを出る。ファン(図示せず)は、一般に、冷媒流路を通して空気を循環させるのに使用される。
【0102】
クーラント流路は容積、圧力低下、および配管の複雑さを最小にした状態で、クーラントと乾燥剤シートとの間の高い熱交換を提供するように設計される。冷媒経路と同様に、クーラント経路はクーラント入口(複数可)および出口(複数可)、ならびに、(a)乾燥剤シート内の開口と(b)間隔保持材料の少なくとも一方によって画定される。冷媒流路と同様に、クーラント流路は、直線か、または、非直線であってよく、クーラント流路に関して、同様な問題(たとえば、圧力低下、熱伝達率、配管の複雑さなど)が存在する。クーラント流路は、2つのストリーム間での相互作用を防止するために、冷媒流路から流体的に分離される。流体分離は、一般に、乾燥剤シートの第2面上に間隔保持材料および流体不浸透性障壁を使用して行われる。クーラント流路は、一般に、両者を熱的につなぐために、乾燥剤シートの吸収セクションに隣接する。先に述べたように、乾燥剤シートと接触するクーラント流路の表面積は、高い熱伝達のために最大にされるべきである。先に述べたように、クーラント流体は、一般に、再生動作についての内燃機関からの熱いクーラントや、冷却動作についての別個のラジエータからの冷たいクーラントなどの、熱伝達を可能にする液体である。
【0103】
クーラント流路は、複数の開口、または、間隔保持材料によって作られた吸着床内の空間を通って流れることができ、クーラントは、一般に、冷媒が流れないいずれかの経路を通って流れる。したがって、開口が、冷媒流路の一部分である場合、クーラント流路は、開口によって画定されないことになり、また、その逆である。
【0104】
一般に、吸着床を通るクーラントの流量は、所望の、乾燥剤冷却レート/加熱レートの関数である。一般に、温度変化は、2つの物体の温度差に指数関数的に関連する。したがって、クーラントの温度に関連する流量、および、冷却される/加熱される乾燥剤の所望の温度および質量が評価されて、吸着床を通る適切なクーラント流量が決定されなければならない。本発明の一実施形態では、乾燥剤シートの質量と冷却容量の比は、<4.536g/ワット−時間(<0.01ポンド/ワット−時間)である。好ましくは、再生動作中に、907.2g(2ポンド)未満の乾燥剤シート質量によって、5分で、1kWの空気乾燥が達成される。
【0105】
吸着床のある実施形態が、ある向き、形状、サイズ、数などを参照して述べられたが、開口、乾燥剤シート、間隔保持材料、および流体入口と出口の任意の数、サイズ、形状、および向きが、吸着床において使用されて、種々の向きと能力を有する無限の数の冷媒流路およびクーラント流路を作ることができることが理解されるであろう。
(吸着冷却システムの蒸発器)
本発明の吸着冷却システムの蒸発器は、蒸発器の少なくとも一部分と接触した流体ストリームを冷却する任意の蒸発冷却タイプの蒸発器であってよい。1つの好ましい実施形態では、熱伝導性プラスチック壁を備える湿った壁を持つ蒸発器などの、蒸発器は、蒸発器に近接した流体ストリームに熱エネルギーを伝達する少なくとも1つの熱伝導性側壁を含む。
【0106】
本発明に従って有用な蒸発器の一実施形態は図17に示される。蒸発器1702は、熱伝導性側壁1770、熱伝導性側壁1770に接触する冷媒1760、凝縮器などの冷媒源(図示せず)から冷媒1760を受け取る液体供給ライン1710、ならびに、空気入口1724および出口1726を含む。乾燥空気1780は空気入口1724に入り、乾燥空気1780が蒸発器を通過するときに、冷媒(たとえば、水)が乾燥空気中に蒸発することになり、それによって、冷媒1760、および、対応する熱伝導性側壁1770が冷却される。室内空気1720は熱伝導性側壁1770のすぐ近くを流れ、そこで冷却される。湿った空気1790は空気出口1726を介して蒸発器を出る。乾燥空気と液体冷媒は、蒸発器による連続冷却を可能にするために、上述した吸着冷却システムを使用して連続して供給されてもよい。
【0107】
熱伝導性側壁は、金属、金属化膜、および熱伝導性プラスチックなどの軽量で、流体不浸透性で、高い熱伝導率を有する任意の材料であることができる。特に好ましい側壁材料は、レクサム(Rexam)(米国インディアナ州エバンスビル(Evansville,Indiana))、トーヨー・アルミニウム(Toyo Aluminum)(日本)、およびウィパック(Wipak)(フィンランド)によって製造されるものなどの薄い金属化プラスチックを含む。
【0108】
本発明に従って有用な特に好ましい蒸発器は、本明細書では薄膜蒸発器と呼ばれ、液体冷媒と蒸発器を通る空気流路との間に配設される膜材料を含む。こうした蒸発器の一実施形態は、図18に示される。蒸発器1802は、熱伝導性側壁1870、熱伝導性側壁1870に接触する冷媒1860、液体供給ライン(図示せず)、膜材料1895、ならびに、空気入口および出口(図示せず)を含む。空気1880は、膜材料のすぐ近くを流れ、膜の前後に圧力および濃度勾配を作り、それによって、冷媒1880が、空気ストリーム内に蒸発する。上述したように、これは、冷媒1880および対応する熱伝導性側壁1870を冷却する。室内空気1820は、熱伝導性側壁1870のすぐ近くを流れ、そこで冷却される。
【0109】
膜材料を使用して、蒸発器内での所望量の冷却を達成するために、蒸発レートが調整される。一般に、膜材料は、高い蒸気浸透性を有し、液体浸透性を全くまたはほとんど有さない。一実施液体では、膜材料は、蒸気浸透性材料/流体不浸透性材料である。蒸気浸透性材料の2つの一般的な種類が存在する。第1の種類は、液体が、ある圧力未満で孔を通して浸透しないように、延伸PTFEから作られるなど、多孔性で、かつ、親水性であり、浸透は、孔サイズおよび接触角度に依存する。第2の種類は、置換ポリウレタンから通常生産される密な膜を備える。これらは、動作圧が高いが、蒸気流束が低いという利点を有する。
【0110】
本発明による特に好ましい膜材料は、PORVAIR P3 SB75を含む、ポルベアPLC(Porvair PLC)(英国、ノーフォーク(Norflolk))によって生産されるものなどの、密な置換ポリウレタンを含む。ドナルドソン・カンパニー(Donaldson Company)(米国、ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis,Minnesota))によって生産されるTETRATEXなどの、延伸PTFE膜が使用されてもよい。
【0111】
好ましくは、膜材料は、冷媒と空気との間での効率的な物質移動を達成するために調整される。自動車用途で通常必要とされる蒸発レートの場合、膜材料は、一般に、20.7kPa(3.0psi)〜34.5kPa(5.0psi)の液体圧など、液体クロスオーバがない状態で、約10.3kPa(1.5psi)〜約103.4kPa(15psi)の液体圧に耐えるのに十分な厚さを有する。
【0112】
車両製造業者によって要求される冷却容量の典型的な量は、7.2kW−Hrである。この冷却容量を達成するのに利用される1つの変数は、吸着冷却システム内で利用される蒸発器のサイズおよび量である。本発明の一実施形態では、到来する空気に対する冷却を行うのに、単一の蒸発器が使用される。しかし、こうした蒸発器のサイズは、実際の使用には大き過ぎる。そのため、好ましい実施形態では、多段吸着冷却システムを使用して、所望の冷却が達成され、多段冷却システムは、到来する室内空気を冷却するために、一連の蒸発クーラを利用する。多段吸着冷却システムを使用することによって、複数の吸着床と、複数の蒸発器と、それらに接触する室内空気との間で実現される効率によって、蒸発器サイズ全体の低減が可能になる場合がある。
【0113】
ここで図19を参照すると、多段吸着冷却システムが提供され、このような多段吸着冷却システムからの複数の蒸発器は、直列に動作して、室内空気が所定の閾レベルまで冷却される。室内空気はT1で第1ステージの蒸発器に入り、温度T2で出る。ここでT1>T2である。室内空気は、この点で、吸着床からの乾燥空気は、周囲温度で入り、湿った空気は、T2で第1ステージの蒸発器を出る。室内空気は、T2で第2ステージの蒸発器に入り、温度T3で出る。ここで、T2>T3である。吸着床からの乾燥空気は、周囲温度で第2ステージの蒸発器に入り、湿った空気は、T3で出る。理解されるように、さらなる冷却が起こらないことになる、所望レベルの冷却が達成されるまで、かつ/または、蒸発器の数が閾レベルに達するまで、室内空気は、後続の蒸発器に供給されることができる。室内空気は、TVで最終ステージの蒸発器に入り、温度TXで出る。ここで、TV>TXである。蒸発ステージの数は、単一ステージの冷却容量に関連して全体を冷却するのに必要とされる冷却容量を計算することによって決定することができる。先に述べたように、各ステージの冷却容量は、利用される冷媒、冷媒の蒸発レート、および蒸発器の所望のサイズの関数である。
【0114】
たとえば、200リットル/秒(LPS)の空気を40℃から4℃まで冷却することが望まれる場合、水が冷媒であり、この温度範囲にわたって、熱容量および密度が、比較的一定であると仮定すると、約7.2kWの冷却が必要とされることになる。1秒当たり水の8.9グラムが、蒸発する場合(32%蒸発器冷却効率に匹敵する)、蒸発器当たり400ワットの冷却が生成され、所望の冷却容量を達成するために、18の蒸発器が必要となる。しかし、冷却システム全体の全冷却容量は、蒸発器の達成可能な冷却温度によって制限される。吸着床を出て、蒸発器に入る乾燥空気は、約45℃の温度と約0%相対湿度を有する場合がある。吸着床からの入口空気は、各ステージについて、常に同じであるため、冷却温度は、この例については、約11.7℃である、その空気の露点によって制限される。この冷却温度はまた、出口室内空気を、約12℃の温度に制限する。各蒸発器段が、約2℃だけ空気を冷却すると仮定すると、この実施形態では、全部で14ステージだけが必要とされる((40℃−12℃)/2℃)。
【0115】
本発明に従って有用な別の多段吸着冷却システムは、図20に示すものなどのエネルギー回収多段システムである。この実施形態では、湿った冷たい空気が各ステージを出て、他のストリームと相互作用することなく、吸収のために吸着床に戻るのではなく、各ステージからの湿った冷たい空気を利用して、到来する乾燥空気の温度および対応する露点を下げるために、到来する乾燥空気が冷却される。図20に示すように、室内空気はT1で第1ステージの蒸発器に入り、T2で(定常状態で)出る。T環境の吸着床からの乾燥空気は空気−空気熱交換器に入り、熱交換器において、乾燥空気はその熱を第1蒸発器ステージを出る湿った空気(温度T2で)と交換する。熱交換された乾燥空気は、T1で空気−空気熱交換器を出て、乾燥空気は蒸発動作において使用される。T1はT環境より低いため、熱交換された乾燥空気の露点は先に述べた多段吸着冷却システムより低いことになり、冷却ポテンシャルはそれに応じて、各ステージに関して増加することになる。たとえば、室内空気は、T2で第2ステージの蒸発器に入り、T3で出る。第1ステージと同様に、乾燥空気は、T環境で空気−空気熱交換器に入り、入ってくる(T3の)湿った空気と熱エネルギーを交換し、T2で第2ステージの蒸発器に入る。T1>T2であるため、熱交換された乾燥空気の露点は、第1ステージの露点より低いことになり、冷却ポテンシャルはそれに応じて高くなる。理解されるように、さらなる冷却が起こらないことになる所望レベルの冷却が達成されるまで、かつ/または、蒸発器の数が閾レベルに達するまで、室内空気は後続の蒸発器に供給されることができる。室内空気はTyで最終蒸発器ステージに入り、温度Tzで出る。ここで、Ty>Tzである。
【0116】
このエネルギー回収多段吸着冷却システムの性能は、一般に、エネルギー非回収多段システムの性能より優れている。表1は、200LPSの到来空気と40℃の温度を使用したエネルギー回収システムと比較したエネルギー非回収システムの一般的な性能を示す。
【0117】
【表1】
エネルギー回収多段システムの1つの他の可能性のある利益は、到来する空気が低温であるため、所望の冷却を達成するために蒸発される必要がある水が少ないため、各対応するステージにおいて、蒸発器のサイズが低減される場合があることである。
【0118】
本発明による好ましい多段蒸発器は、上記エネルギー回収多段蒸発システムを実施するマルチチャネルの中間チャネル幅熱交換器である。こうした複数状態吸着冷却システムはまた、「MULTIPLE STAGE SORPTION COOLING APPARATUS,SYSTEM AND METHOD」という名称の、2005年6月8に出願された、参照によりその全体が本明細書に援用される、同一譲受人に譲渡された米国特許仮出願第60/,号に開示される。
(吸着冷却システムの性能)
本発明の車両吸着冷却システムの有効COPは比較的高い。一般に、必要とされる唯一の動力は、クーラント循環ポンプ、任意の必要なファンおよび任意の必要な弁を動作させるのに必要な動力である。そのため、本発明の一実施形態によれば、吸着冷却システムは、少なくとも約8、好ましくは少なくとも約10、より好ましくは少なくとも約12、さらにより好ましくは少なくとも約14の有効COPを有する。この場合、COPは、実現される冷却エネルギーを電力で割ったもの(すなわち、「ウォール・プラグ」効率)として規定される。
【0119】
吸着冷却システムの、蒸発器、吸収器、および冷媒源内の圧力もまた、従来の圧縮ベース・エアコンディショナについて一般に必要とされるよりずっと小さい。通常、こうした部品内の圧力は、好ましくは、大きくても101.3kPa(14.7psig)、好ましくは大きくても68.9kPa(10psig)、より好ましくは大きくても34.5kPa(5psig)、さらにより好ましくは大きくても17.2kPa(2.5psig)である。
【実施例】
【0120】
例1 乾燥材料についての水吸収等温線
水吸収等温線が、CaCl2ベースおよびLiClベース乾燥材料について、25℃で測定された。結果が図21に示される。乾燥材料は共に、約10%相対湿度(RH)未満において同じように働くが、より高い湿度では、LiClベース材料がより吸着性があった。
例2 64個の吸収セクションを有する第1吸着床の性能
64個の吸収セクションを有する吸着床が作製された(吸収セクションは、1シート当たりの開口と間隔保持材料の数および互いに対する物理的関係によって画定される)。35℃および95%RHの空気ストリームが吸着床を通して流され、出口温度および湿度が所定期間にわたって測定された。測定された冷却レートおよび冷却容量が、図22に示される。
例3 64個の吸収セクションを有する第2の吸着床の性能
64個の吸収セクションを有する吸着床が作製された(吸収セクションは、1シート当たりの開口と間隔保持材料の数および互いに対する物理的関係によって画定される)。35℃および95%RHの空気ストリームが、CaCl2乾燥材料を含んだ吸着床を通して流され、出口温度および湿度が所定期間にわたって測定された。全部で6回行われた。表2はその結果を要約する。
【0121】
【表2】
1回の試験についての測定された入口および出口温度ならびに測定された入口および出口相対湿度が図23に示される。この試験についての測定された冷却レートおよび冷却容量は図24に示される。吸着冷却システムは平均して30分にわたって約320ワットの冷却になり、157W−Hrの冷却容量であった。
例4 乾燥剤シート間の間隔保持の測定された作用
上記例3において、吸着床は乾燥剤シートの吸収面間の0.5mmの空間および乾燥剤シートの冷却面間の1mmの空間を使用した。吸収シートの吸収面間の1.0mm隙間空間およびクーラント(すなわち、流体不浸透性)面間の1.25mm空間を有する吸着床が作製された。4LPSの湿った空気が冷媒経路を通して流され、23LPSの空気がクーラント経路を通して流された。冷媒経路を通る測定された圧力低下は、以前の層についての2.54cm(1インチ)H2O(1.87mmHg)と比べて、0.889cm(0.35インチ)H2O(0.65mmHg)であった。冷媒の4LPSにおいて、この1.0mm吸収面隙間の間隔保持を使用した冷却レートおよび冷却容量は、図25に示される(試験は、30分後に停止された)。冷媒の8LPSにおいて、この1.0mm吸収面隙間の間隔保持を使用した冷却レートおよび冷却容量は、図26に示され、約180W−Hrの冷却容量を立証した。
【0122】
別の吸着床が上記1.25mmの代わりに、1.5mmの吸収隙間サイズを使用して作られた。この吸着床を通る圧力低下は0.762cm(0.30インチ)H2O(0.56mmHg)であった。この吸着床の性能は図27に示すように、1.25mm吸収面隙間の間隔保持を有する吸着床とほぼ同様に良好であった。
【0123】
先に述べたように、シートのクーラント面間の隙間の間隔保持もまた重要である。図28は乾燥剤シートと空気クーラント流体との間の計算された熱伝達効率、および、吸着床内の対応する圧力低下を、クーラント面隙間の間隔保持の関数として示す。
例5 スペーサ材料として乾燥剤シートを使用した吸着床
0.5mm厚のポリカーボネート・間隔保持材料を使用する代わりに、間隔保持材料として、0.5mmの厚さを有するCaCl2を含浸したシートとレーザ切断された乾燥剤シートとを使用して、吸着床が作製された。ポリカーボネート・間隔保持材料より小さい重量の乾燥剤シートは、より高い吸収容量を有し、隣接する乾燥剤シートにより容易に固着する。この例の場合、全重量低減は35グラムであった。35℃および100%RHの空気ストリームが吸着床に送られ、出口温度および湿度が所定期間にわたって測定され、その結果が図29に示される。測定された冷却レートおよび冷却容量は図30に示される。吸着冷却システムは平均して260ワットの冷却になり、440ワットにピークを持ち、130ワット−時間の冷却容量であった。
例6 薄膜蒸発器についての膜浸透性の試験
一方の面上に水が流れ、他の面上に空気が流れる2.54cm×5.08cm(1’’×2’’)の膜材料の試験を可能にする単一膜試験セルが構築された。試験セルは図31に示される。空気ストリームと水ストリームの両方の入口および出口温度、ならびに、空気ストリームの入口および出口湿度が測定された。水入口温度は20℃であり、流量は水温度が実質的に一定になるように維持された。〜28℃および20%RHの圧縮空気が試験セル内に送られ、流量は1〜30リットル/分の範囲にわたって制御された。結果は表3に要約される。
【0124】
【表3】
例7−蒸発器試験
0.05m2の利用可能蒸発表面積を有する蒸発器モジュールが製造された。膜材料として、ポリウレタン・コーティングした延伸PTFE膜が使用された。入口空気は23.7℃および11%相対湿度(RH)を測定した。出口空気は16.8℃および40%相対湿度(RH)を測定した。空気流量は30LPMであった。水入口温度は19.3℃であった。水出口温度は16.3℃であった。水流量は2.62g/s(9.4LPH)であった。32.9Wの冷却レートが達成された。
例8 密なポリウレタン膜を使用した蒸発器性能
蒸発器モジュールは密なポリウレタン膜を使用して組み立てられた。約26℃の水が蒸発器の水流れチャネルを通して、3グラム/秒(〜2.8ガル/時間)で流された。約7〜9%RHの圧縮空気が種々の流量(0.33、0.50、0.67、および0.83LPS)で空気流れチャネルを通して流された。入口および出口の空気温度および相対湿度が所定期間にわたって測定され、0.33LPS空気流量について、その結果が図32に示される。入口空気ストリームは約7%RHのみを有するだけでも、出口空気ストリームは約70%RHを有し、約70%RHは、1時間の試験の間、一定のままであった。図33に示すように、より高い空気流量で冷却性能の向上も示された。
【0125】
本発明の種々の実施形態が、詳細に述べられたが、これらの実施形態の変更形態および適応形態を、当業者が思い付くことになることが明らかである。しかし、こうした変更形態および適応形態は、本発明の精神および範囲内にあることが明白に理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】冷却負荷、到来する空気の相対湿度、及び温度の間の関係を示すグラフ。
【図2】車両の従来の蒸気圧縮ベース・エアコンディショナのサイクル動作を示すグラフ。
【図3】典型的な吸着冷却システムの断面図。
【図4】本発明の吸着冷却システムの一実施形態を示すフロー図。
【図5】本発明の吸着冷却システムの一実施形態を示すフロー図。
【図6】本発明の吸着冷却システムの一実施形態を示すフロー図。
【図7】本発明の除湿システムの一実施形態を示すフロー図。
【図8】本発明の吸着床の一実施形態の断面斜視図。
【図9】本発明の吸着床の一実施形態の断面斜視図。
【図10A】本発明の吸着床の一実施形態の断面斜視図。
【図10B】本発明の吸着床の流体ケーシングの一部分の一実施形態の平面図。
【図10C】本発明の吸着床の乾燥剤シートの一実施形態の平面図。
【図10D】本発明の吸着床の間隔保持材料の一実施形態の平面図。
【図10E】本発明の吸着床の流体ケーシングの一部分の一実施形態の平面図。
【図11】種々の材料の吸収容量を示すグラフ。
【図12】大容量乾燥剤の、水蒸発熱と比較した吸収熱を示すグラフ。
【図13】大容量乾燥剤の吸収容量を温度の関数として示すグラフ。
【図14】本発明の吸着床の一実施形態の断面斜視図。
【図15A】本発明の吸着床の一実施形態の側面図。
【図15B】本発明の吸着床の一実施形態の側面図。
【図16】本発明の吸着床の一実施形態の断面図。
【図17】典型的な吸着冷却システム蒸発器の断面図。
【図18】本発明の吸着冷却システムで使用するための蒸発器の一実施形態の断面図。
【図19】本発明に従って有用な多段吸着冷却システムの一実施形態を示すフロー図。
【図20】本発明に従って有用な多段吸着冷却システムの一実施形態を示すフロー図。
【図21】CaCl2ベースおよびLiClベース乾燥材料についての水吸収等温線を示すグラフ。
【図22】本発明の吸着冷却システムの一実施形態について、冷却レートと冷却容量を時間の関数として示すグラフ。
【図23】本発明の吸着冷却システムの一実施形態について、時間に対する、相対湿度と温度測定値を示すグラフ。
【図24】本発明の吸着冷却システムの一実施形態について、冷却レートと冷却容量を時間の関数として示すグラフ。
【図25】本発明の吸着冷却システムの一実施形態について、冷却レートと冷却容量を時間の関数として示すグラフ。
【図26】本発明の吸着冷却システムの一実施形態について、冷却レートと冷却容量を時間の関数として示すグラフ。
【図27】本発明の吸着冷却システムの一実施形態について、冷却レートと冷却容量を時間の関数として示すグラフ。
【図28】本発明の吸着床の一実施形態について、熱伝達効率と圧力低下を隙間サイズの関数として示すグラフ。
【図29】本発明の吸着冷却システムの一実施形態について、時間に対する、相対湿度と温度測定値を示すグラフ。
【図30】本発明の吸着冷却システムの一実施形態について、冷却レートと冷却容量を時間の関数として示すグラフ。
【図31】単一膜材料試験セル装置の斜視図。
【図32】本発明の吸着冷却システムの一実施形態について、時間に対する、相対湿度と温度測定値を示すグラフ。
【図33】本発明の一実施形態による、蒸発器を通した空気流量に対する水冷却レートを示すグラフ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型で、軽量な蒸発器および吸着床構造を組み込む吸着冷却システムならびに車両におけるこうした吸着冷却システムの使用に関する。
本出願は、2004年6月8日に出願され、「METHOD AND APPARATUS FOR COOLING THE INTERIOR OF A VEHICLE」という名称の米国仮特許出願第60/578,119号に対する優先権を主張し、また、2005年6月8日に出願され、「MULTIPLE STAGE SORPTION COOLING APPARATUS,SYSTEM AND METHOD」という名称の米国仮出願第60/,号に関しており、両出願はそれぞれ、その全体が、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
車、トラック、または他の電動車両を空調することは、些細でない量のエンジン動力を消費する可能性がある。エアコンディショナ圧縮機の負荷は、燃料効率およびエンジン排出ガス・レベルに影響を及ぼす場合がある。米国自動車工業会(the Society of Automotive Engineers)によって行われる試験が示したところでは、標準的なエアコンディショナの動作は、車両の燃料経済性を、1.913キロメートル/リットル(4.5マイル/ガロン)だけ減少させ、NOx排出ガスを0.373グラム/キロメートル(0.6グラム/マイル)だけ増加させ、CO生成を7.46グラム/キロメートル(12グラム/マイル)だけ増加させる。これらの作用は、周囲温度が増加するにつれて、湿度が増加するにつれて、また、太陽熱負荷が車に課されるときに、より著しくなる。燃料の経済性と排出ガスに加えて、エアコンディショナの動作は、車両性能の明らかに知覚できる低下を与える。
【0003】
標準的なエアコンディショナのサイズは、一般に、要求される冷却レートによって決まる。車両のエアコンディショナが始動すると、空気温度および相対湿度が高くなる場合がある。冷却空気の所望の温度を生成するには、空気(新鮮な空気であれ、循環された室内空気であれ、または、その混合物であれ)を、空気の露点未満まで冷却することを必要とすることが多い。このことは、空気を冷却するのではなく、空気中の水を凝縮させるのに空気中の水は蒸発器にたまる、エアコンディショナの冷却能力の大部分が使用される場合があることを意味する。図1は、この作用を示しており、水の凝縮に起因する全冷却負荷のパーセンテージを、相対湿度と温度の関数として示す。示されるように、入口空気温度および/または湿度が高いことによって、エアコンディショナ電力の50%以上が、水を凝縮するときに使用される場合がある。乾燥した気候でも、凝縮は、冷却を制限する。図2は、35〜40℃(95〜104°F)の屋外周囲温度および15%の湿度の状態での、1日に関する車両のサイクル動作を示す。車両の内部の湿度のサイクルは、さらに乾燥した気候における、水凝縮が内部冷却に及ぼす作用を示す。この作用は、高い太陽熱負荷を生成する気候において、なお一層悪化する可能性がある。
【0004】
湿気の多い条件および/または温度の高い条件から負荷を冷却するという問題のために、車両製造業者は、一般に、エアコンディショナが、熱く、かつ、湿気の多い気候における始動時に、車両を冷却することができるように、エアコンディショナを設計する。しばしば、これによって、オーバーサイズの空調ユニットが生まれ、投下資本費用および重量が増加し、不必要にエネルギーを消費する。これは、ハイブリッド、電気、および燃料電池などの代替の手段によって電力供給される車両について特に問題となる。オーバーサイズのエアコンディショナの使用はまた、エンジン効率がまだ低いときの始動中に、余分な燃料が必要とされるため、汚染を増大させる。従来の車両のエアコンディショナに関するさらなる問題は、蒸発器内の細菌増殖による匂いである。
【0005】
エアコンディショナの効率を高め、そのサイズを低減する1つの手法は、エアコンディショナによって、空気を冷却する前に、空気を除湿することである。たとえば、Dennistonに対する特許文献1は、車両の内部に空気が入る前の、空気の除湿および/または加湿において使用するための除湿システムを開示する。公開公報は、空気を除湿するのに使用されてもよい種々の層構造を開示し、また、エンジンからの廃熱を使用して、層を再生するのに使用される空気が加熱されることを開示している。
【0006】
Bhatti他に対する特許文献2は、車両の内部に供給される空気流を除湿するために、乾燥剤ホイール内で、ゼオライトなどの乾燥剤を使用することを開示する。新鮮な空気が、ホイールのある部分で除湿され、圧縮ベースの空調システムの蒸発器に送られ、一方、ホイールの他の部分は、エンジンからの廃熱によって加熱された空気を使用して再生される。
【0007】
これらの空気乾燥技術は、コスト、重量に関する考慮事項、および、非効率が、必ずしも、エアコンディショナのサイズの低減をもたらさないことのために、市販車両で現在使用されていない。
【0008】
車両冷却システムの効率を高める別の手法は、車両によって生成された廃熱を使用して、圧縮ベースのエアコンディショナを補助するシステムを動作させること、または、状況によっては、圧縮ベースのエアコンディショナについての必要性を完全に取り除くことである。車両燃料値の約60%が、排気(33%)およびエンジン冷却(27%)に対して失われる。冷却システムの動作時にエンジン排熱を使用することによって、燃料効率を大幅に改善し、排出を減らすことができる。こうした廃熱を使用する1つの手法は、熱電子素子を使用して、エンジン廃熱から電力を生成し、その電力を使用して、エアコンディショナに電力供給することである。しかし、こうした発電技術のコスト、重量、および寿命は、一般に、許容可能でない。他の冷却技術は、熱音響冷却、エジェクタ冷却、およびペルチエ・クーラを含むが、こうした技術は、一般に、立証されていない。
【0009】
廃熱を使用する別の方法は、吸収器および水のリザーバを備えるシステムを利用することであり、吸収器において、新鮮な空気または再循環された空気が除湿され、除湿された空気が、その後、水のリザーバ上を通過し、水が、乾燥空気中に蒸発して、乾燥空気を冷却し、湿らせる。廃熱は、吸収器内に含まれる吸収剤を連続して再生するのに利用されてもよい。たとえば、Khelifaに対する特許文献3は、車両の内部に冷却された空気を提供するときに、ゼオライトなどの吸収剤を使用して、除湿し、その後、再加湿する方法を開示する。しかし、こうしたシステムは、一般に、蒸発冷却を達成するために、定期的に補給されなければならない内蔵された(onboard)水貯留タンクを必要とする。
【0010】
車両からの廃熱を利用する別の手法は、吸着冷却方法の使用である。吸着冷却方法は、一般に、冷却を行うために、冷媒の、一連の蒸発、吸収、再生、および凝縮を使用する。動作時、作動冷媒は、蒸発器において蒸発し、それによって、冷媒を蒸発させるのにエネルギーが必要とされるため、蒸発器の表面が冷却される。流体(たとえば、空気)が、冷却された蒸発器表面上を通過して、流体が冷却される。他の所で、蒸発した冷媒が、吸収剤(たとえば、乾燥剤)によって吸収される。吸収は、一般に、熱を生成し、熱は、通常、周囲空気に廃棄される。吸収容量に達した後、吸収剤は、加熱することなどによって、再生され、吸収された冷媒が放出されてもよい。吸収された冷媒は、その後、凝縮器に渡されて、冷媒が液化される。こうして、冷却サイクルは、繰り返されてもよい。
【0011】
吸着冷却方法は、多くの理由で望ましい。標準的な圧縮ベースの空調システムと対照的に、凝縮工程は、冷媒をその液相に戻すのに、小さな機械的仕事量を必要とするだけである。そのため、吸着冷却システムの使用は、車両を冷却するのに必要とされる仕事量を減少させることになる。さらに、吸着冷却は、エンジンが動作していないときでも、冷却を行うことができる。同様に、吸着冷却方法は、水などの環境にやさしい冷媒を利用することができる。そのため、吸着冷却の使用は、従来の車両空調方法に対する望ましい代替法である。
【0012】
液相吸収剤を使用した車両の冷却において吸着冷却方法を利用するために、種々の試みが行われてきた。たとえば、Antohiに対する特許文献4は、エンジンクーラントを熱源として使用した、吸収剤ベースの空調システムの使用を開示する。しかし、Antohiは、液体ベースの吸収剤の使用を開示しており、多くの理由で好ましくない。第1に、液体−液体ベース吸着システムは、分離し、浄化するのが難しい。とりわけ、共沸混合物および伴出によって、吸収材料の純度が徐々に下がる可能性があり、方法の効率を低下させる。さらに、複雑な圧力および/または温度変化システムが、一般に、こうした溶液を分離するのに必要とされ、システムの複雑さを増やす。最後に、表面積の制限のために、液体吸収剤の使用によって、必要な動特性を達成することが難しいことがある。
【0013】
固相吸収剤を使用した吸着冷却方法も知られている。これらの方法は、気相材料(たとえば、熱い排出空気)を利用する方法、液相材料(たとえば、エンジン/ラジエータからの熱い液体)を利用する方法、および、吸収剤を再生するために電気供給源を利用する方法に分類されることができる。
【0014】
Maier−Laxhuber他に対する特許文献5、Malikに対する特許文献6、Yamadaに対する特許文献7、およびMaier−Laxhuberに対する特許文献8は全て、吸収剤を加熱する/再生するための、気相材料の使用を開示する。吸収剤を再生するために、気相材料を使用するときに、(a)再生を行うために必要な熱伝達を達成するための高い再生温度、(b)燃料経済性および/または排気ガスにとって有害である、排気多岐管における排気圧降下の増大、(c)腐食の増加、(d)大きな熱交換器の使用、(e)高く、かつ、広範囲の気相温度に関連する制御の困難さ、(f)熱交換器内での水および酸性ガスの凝縮、および(g)特に、始動時の触媒変換機性能の低下を含む、多くの欠点が存在する。同様に、高温のため、使用してもよい吸収剤のタイプを含む制限が、構成材料に加わる。同様に、ゼオライトなどの多くの従来の吸収剤は、効果的に利用されるために、非常に低い動作圧を必要とする。
【0015】
Kirol他に対する特許文献9およびTanaka他に対する特許文献10は、吸収剤を再生するために、電気加熱要素の使用を開示する。こうしたシステムは、再生には有効である場合があるが、吸収剤を再生するための、必要な熱伝達を行うために、十分な量のワイヤが、吸着床全体を通して設置されなければならない点で、電気再生システムは、吸収システムに余分な複雑さを付加する。電気的システムは車両の配線の複雑さも付加する。
【0016】
液相再生システムもまた知られており、車両吸着冷却システムにおいて、これらの材料を利用するために、種々の試みが行われてきた。Duranに対する特許文献11は、車両エアコンディショナとして使用するための化学吸着装置を開示する。Duranが、開示していることには、高温入力が、ハウジングのあるセクタ内の一連の要素の下側部分に加えられ、反応物が、固相吸収剤から脱着され、要素の上側部分に移動し、熱は、流体媒体によって外部ヒートシンクに取り除かれる。一連の要素は、ハウジングの別のセクタまで回転するため、熱は、熱交換によって、要素の下側部分からヒートシンクへ取り除かれる。化学平衡を求めて、反応物は、下方に移動して、吸収材料に再吸収され、要素の上側部分における蒸発が、冷却出力を生成し、冷却出力を利用して、出力流体媒体が冷却される。
【0017】
Sato他に対する特許文献12は、車両に対する冷却を行うための、多段吸着冷却システムを開示する。Sato他が開示するところでは、2つ以上の吸収器は、吸収/加熱動作において機能し、一方、2つ以上の他の吸収器は、脱着動作において機能する。Sato他が説明するところでは、蒸発器からの水の蒸発は、吸収システムを冷却する冷却パイプと共に冷却を行い、一方、加熱パイプが脱着システムを加熱する。
【0018】
吸着冷却方法によって補助されたハイブリッド圧縮ベース・エアコンディショナもまた知られている。Inagaki他に対する特許文献13は、内部を冷却し、空調を補助し、エンジンを加熱するために、車両において使用されてもよい吸収冷却システムを開示する。Inagaki他は、水などの吸収質を吸収する、吸収媒、好ましくは、フェロアルミノフォスフェイトを含む吸収チャンバを有する冷却システムを開示する。Inagaki他が、開示するところでは、従来の圧縮ベース・エアコンディショナは、吸収方法と共に使用されてもよい。
【0019】
従来の蒸気圧縮冷却の代わりに吸着冷却を使用するための、燃料効率および排出ガス低減についての多くの理由が存在するが、吸着冷却方法は、少なくとも3つの理由で、車両冷却方法において現在使用されていないと信じられている。第1に、多くの吸収剤は、高い再生温度を必要とする。高い再生温度は、上述したように、吸収剤を再生するために、車両からの廃熱の使用を必要とする。
【0020】
第2に、ほとんどの吸収剤は、比較的低い吸収容量(たとえば、ゼオライトは、ゼオライトの1グラム当たり水の〜0.2グラムを吸収する)を有しており、所望の冷却レート(冷却速度)を達成するために、大量の吸収剤の使用を必要とする。質量の大きな吸収剤が使用されると、吸収剤から熱を抽出することが難しく、冷却サイクル・タイムをさらに低下させ、それによって、さらに大きな吸収剤質量を必要とする。高温パッケージングについての要件と組み合わせた大きな乾燥剤質量によって、全体システムの高い熱質量がもたらされる。高い熱質量は、吸収システムの高い寄生エネルギー損失をもたらす場合がある。この作用は、通常、水の蒸発熱の2倍に達する水の吸収熱を有する、ゼオライトなどの従来の吸収剤の使用によって倍加される場合がある。こうした高温質量および吸収熱の正味の作用によって、生成される冷却の2倍の熱を排除しなければならないシステムがもたらされる。これは、冷却工程についての要求されるブロワー電力を増加させ、COP(成績係数)をさらに減少させる。
【0021】
第3に、容積の大きい吸収剤が一般に必要とされるため、数が増えた吸着床が、一般に使用され、それによって、システムを動作させるのに使用されなければならない、高温構成材料の量の増加、大面積の蒸発器および凝縮器、ならびに、大きなブロワーが必要になる。こうした大きな吸収冷却システムは、実際的でなく、費用がかかり過ぎて、車両空調システムとして利用できない。そのため、車両空調のための吸着冷却方法の見込みはあるが、技術は、商業的成功を達成していない。
【0022】
廃熱の別の用途は、建物に冷却された流体を提供することである。今日、多くの標準的な工業的方法は、加熱および発電方法の効率を上げるために、エネルギー・コジェネレーションを使用する。コジェネレーションは、化石燃料などの、ある主要な燃料からの、電力、および、通常、熱水か、熱蒸気のいずれかの形態の有用な熱の同時生成である。コジェネレーションが役立つ一方で、発電技法および/または熱生成技法によって生成された熱の多くは、使用されなくなる。さらに、多くの工業用途は、建物の空調などの冷却用途で利用するための冷却された流体の生成も望む。したがって、コジェネレーション廃熱を利用して、冷却された流体も生成するための努力が存在してきた。このエネルギーの考え方は、トリジェネレーションと呼ばれる。魅力的であるが、コジェネレーション・システムの廃熱から冷却された流体を生成することができる効率的な吸収システムの生産を含む、効率的なトリジェネレーション冷却システムを生産するための多くの障害物が存在する。
【特許文献1】国際公開第WO96/25636号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5,509,275号明細書
【特許文献3】米国特許第5,388,423号明細書
【特許文献4】米国特許第5,896,747号明細書
【特許文献5】米国特許第4,924,676号明細書
【特許文献6】米国特許第5,298,054号明細書
【特許文献7】米国特許第5,333,471号明細書
【特許文献8】米国特許第5,404,728号明細書
【特許文献9】米国特許第5,477,706号明細書
【特許文献10】米国特許第5,768,908号明細書
【特許文献11】米国特許第4,574,874号明細書
【特許文献12】米国特許第5,619,866号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2004/0093876号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
従来の圧縮ベースのエアコンディショナを使用することなく、車両の室内に提供される空気を十分に冷却することができる軽量でコンパクトな吸着冷却システムを提供することが、本発明の目的である。吸着冷却システムの吸着床を再生するために、必要な熱エネルギーを提供するため、車両の内燃機関からの低等級の廃熱を使用することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0024】
これらの目的および他の目的は、吸着冷却システム内で、独特の、新しい吸着床吸着床構造および/または蒸発器を使用することによって実現される。高い吸収レート、高い熱除去レート、および高い再生レートが可能な吸着床は、吸着冷却システム内で十分な冷却レートを達成するのに必要な容積を減少させる。好ましくは、吸着床は、比較的低い温度で再生することができる大容量乾燥剤を利用し、再生のための排ガスの使用を回避する。好ましくは、乾燥剤は、低い吸収熱、高速な熱および物質の移動動特性、長い寿命、および比較的に低いコストを有する。
【0025】
本発明の一実施形態では、車両の室内に冷却された空気を提供する閉ループ吸着冷却システムが提供される。吸着冷却システムは、蒸発器と、蒸発器と連通する凝縮器などの冷媒源と、凝縮器および蒸発器と連通する複数の吸着床とを含む。特定の実施形態では、吸着冷却システムは、多段吸着冷却システムの1要素部分である。特定の実施形態では、吸着冷却システムの冷媒流体は、本質的に水からなる。
【0026】
複数の吸着床はそれぞれ、冷媒入口、冷媒出口、クーラント入口、およびクーラント出口を有する流体不浸透性ケーシングを有する。吸着床はまた、第1および第2乾燥剤シートなどの複数の乾燥剤シートを含む。乾燥剤シートは、一般に、第1面に吸収剤を有し、第2面において、流体不浸透性障壁で覆われる。乾燥剤シートはそれぞれ、乾燥剤シートを貫通して延びる、少なくとも2つの開口などの、少なくとも1つの開口を含む。乾燥剤シートの開口は、冷媒流路およびクーラント流路の一方の一部分である。特定の実施形態では、冷媒流路および前クーラント流路の少なくとも一方は、非直線である。一実施形態では、冷媒流路と前クーラント流路は共に、非直線である。
【0027】
冷媒入口と冷媒出口の間に冷媒流体を流す冷媒流路は、それぞれの吸着床を貫通して延びる。冷媒流路は、乾燥剤シートの第1(吸収剤)面によって、少なくとも部分的に画定される。好ましくは、対向する乾燥剤シートの吸収剤面は、互いに面して、冷媒流路の少なくとも一部分を画定するのに役立つ。一実施形態では、乾燥剤シートは、実質的に互いに平行であり、長くて5mmしか離れていない。一実施形態では、開口は、冷媒流路の一部分であり、冷媒流路は、非直線である。
【0028】
クーラント入口とクーラント出口の間にクーラント流体を流すクーラント流路はまた、それぞれの吸着床を貫通して延びる。クーラント流路は、冷媒流路から流体的に分離されるが、乾燥剤シートの少なくとも一方に隣接する。一実施形態では、開口は、クーラント流路の一部分であり、クーラント流路は、非直線である。クーラント流体は、好ましくは、液相である。一実施形態では、クーラント流体は、内燃機関の冷却で使用される液相流体である。
【0029】
吸着冷却システムの主要部品内の圧力は、一般に、比較的に低い(たとえば、周囲圧に近い)。一実施形態では、蒸発器、凝縮器、および複数の吸着床のいずれかの中の圧力は、101.3kPa(14.7psig)を超えない。
【0030】
一実施形態では、吸着床は、少なくとも3つの乾燥剤シートを含み、乾燥剤シートはそれぞれ、貫通して延びる少なくとも1つの開口を有し、開口は、冷媒流路とクーラント流路の一方の少なくとも一部分を画定する。好ましくは、クーラント流路は、第1および第2乾燥剤シートの両方に隣接する。
【0031】
一実施形態では、乾燥剤シートの少なくとも1つは、金属塩によって含浸された炭素材を含む。特定の実施形態では、金属塩は、塩化リチウム、塩化カルシウム、およびその混合物からなる群から選択される。
【0032】
一実施形態では、蒸発器は、冷媒源に流体接続された薄膜蒸発器である。薄膜蒸発器は、蒸気浸透性で、かつ、液体不浸透性の膜材料のシートと、膜材料の第1面に近接した空気流チャネルと、膜材料の第2面に近接した冷媒流チャネルと、冷媒流チャネルに近接した熱伝導性側壁と含む。
【0033】
本発明は、車両の内部に冷却された空気を提供する方法も意図する。方法は、一般に、熱伝導性側壁を有する蒸発器において、水ベースの冷媒を蒸発させる工程と、熱伝導性側壁に近接して(たとえば、隣接し、接触して)空気を流す工程と、水ベースの冷媒を吸収器において吸収する工程と、車両の内部に冷却された空気を提供する工程とを含む。方法はまた、吸収器のクーラント流路を通して熱い液相クーラントを循環させる工程と、水ベースの冷媒を凝縮させる工程と、凝縮させた水ベースの冷媒を蒸発器に供給する工程とを含んでもよい。冷たいクーラントは、吸収器のクーラント流路を通して循環されてもよい。一実施形態では、冷たいクーラントは、液相である。一実施形態では、冷たいクーラントを循環させる工程および熱い液相クーラントを循環させる工程は、重ならない。
【0034】
一実施形態では、吸収器は、第1吸収器であり、クーラント流路は、第1クーラント流路であり、方法は、吸収する工程の間に、冷たいクーラントを、第1吸収器の第1クーラント流路を通して循環させる工程と、熱い液相クーラントを、第2吸収器の第2クーラント流路を通して循環させる工程とをさらに含む。一実施形態では、冷たいクーラントを、第1クーラント流路を通して循環させる工程、および、熱い液相クーラントを、第2流路を通して循環させる工程は、少なくとも部分的に重なる。方法は、冷たいクーラントを、第3吸収器の第3クーラント流路を通して循環させる工程をさらに含んでもよい。冷たいクーラントを、第3クーラント流路を通して循環させるこの工程は、吸収工程中に起こる。
【0035】
一実施形態では、蒸発器は、第1蒸発器であり、方法は、車両の内部に冷却された空気を提供する前に、第2蒸発器のすぐ近くに空気を流す工程をさらに含み、第1蒸発器は、第1吸着冷却システムの要素であり、第2蒸発器は、第2吸着冷却システムの要素であり、第1および第2吸着冷却システムは、多段吸着冷却システムの一部分である。
【0036】
別の実施形態では、本発明の吸着冷却システムは、トリジェネレーション・エネルギー・システムを作るために、コジェネレーション・エネルギー・システムと共に利用される。トリジェネレーション・エネルギー・システムは、建物の内部に冷却された流体を提供するのに使用されてもよい。
【0037】
理解されるように、先に説明した、注目される態様、実施形態、および特徴の多くは、任意所望の組合せで実施される。本発明のさらなる態様および対応する利点は、以下のさらなる説明と関連して当業者に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明は、比較的大量の冷媒を吸収することができる、改良された軽量な吸着床構造を含むことができる改良型吸着冷却システムを提供する。吸着冷却システムはまた、冷却動作を維持するのに十分なレートで冷媒を蒸発させることができる改良された、軽量でコンパクトな蒸発器を含んでもよい。吸着冷却システムは、車両または建物に、空気または水などの冷却された流体を提供するのに使用されてもよい。
【0039】
吸着冷却システムの動作は、当技術分野ではよく知られている。一般に、吸着冷却システム300は、図3に示すように、蒸発器302、吸収器306、および冷媒源304を備える。冷媒源304から蒸発器302に供給される冷媒は、蒸発器302で蒸発し、それによって、蒸発器302の一部分を冷却する。蒸発した冷媒は、次に、吸収器306で吸収されて、蒸発器302からの蒸気状冷媒を除去し、それによって、冷却容量が増加する。蒸気通路305は、蒸発した流体が、蒸発器302から吸収器306へ流れることを可能にする。
【0040】
本発明は、有意な量の蒸気相冷媒を吸収することができ、同様に、再生動作中に高くても120℃の温度の、ほとんど、または、全ての吸収された冷媒を脱着させることができる、固相の大容量乾燥剤を使用して、冷却を行う吸収技法の使用を可能にする。
【0041】
大容量乾燥剤が機能するメカニズムは、吸着、吸収、または、吸着と吸収の組合せであることができ、本明細書で使用されるように、用語、吸着する、吸着性の、吸着などは、流体が保持される実際のメカニズムに関係なく、流体の保持のことを言う。同様に、吸着性冷媒が、大容量乾燥剤から放出されるメカニズムは、脱着、脱離、または脱着と脱離の組合せであることができ、本明細書で使用されるように、用語、脱着する、脱着性の、脱着など、ならびに、用語、再生する、再生可能な、再生した、などは、乾燥材料に関連して使用されるとき、流体が放出される実際のメカニズムに関係なく、吸着剤からの流体の放出のことを言う。
(現場で再生可能な吸着冷却システムおよび非現場で再生可能な吸着冷却システムの適用)
吸着冷却システムは、一般に、2つのタイプ、すなわち、現場で再生可能なタイプと非現場で再生可能なタイプに分類されることができる。現場で再生可能な吸着冷却システムは、一般に、吸着冷却システムの動作中に吸着床から吸収された冷媒を再生することができ、したがって、一般に、吸収された冷媒を再生し、その後、こうした冷媒を液化する手段を含む。一般に、これらの手段は、吸着床材料を加熱する熱源および再生された冷媒を冷却して、液体にする冷却源を含む。しばしば、冷却源は、凝縮器である。
【0042】
非現場で再生可能な吸着冷却システムは、一般に、吸着冷却システムの動作中に吸着床から吸着された冷媒を再生することができない。したがって、非現場で再生可能な吸着冷却システムは、一般に、車両冷却用途で使用されない。
【0043】
本発明の1態様によれば、吸着冷却システムは、車両の室内に冷却された空気を提供するときに利用される現場での吸着冷却システムである。こうした吸着冷却システムの一実施形態は、図4〜5に示される。この実施形態によれば、吸着冷却システム400は、蒸発器402と、蒸発器402と流体連通する凝縮器404と、蒸発器402および凝縮器404と流体連通する複数の吸着床406、408と、吸着床にクーラントを提供するクーラント源416を含む。動作中に、液体冷媒は、凝縮器404から、蒸発器供給ライン410を介して、蒸発器402に流れ、蒸発器402で、冷媒が蒸発する。当技術分野でよく知られているように、この蒸発は、蒸発器402を冷却する。蒸発器402は、少なくとも1つの表面が、車両の内部に供給される空気420と熱的につながるように位置し、それによって、こうした空気を冷却する。
【0044】
吸着床406、408は、一般に、並列で、かつ、2つの動作位相で働いて、連続冷却動作を可能にする。動作の第1位相では、図4に示すように、第1吸着床406は、熱い(相対的に)クーラント流体を、以下でさらに説明されるクーラント流路を介して第1吸着床406を通して循環させることによって加熱される。熱いクーラント流体は、第1吸着床406を通して循環され、クーラント供給ライン412を介してクーラント源416から供給される。熱いクーラントは、クーラント戻りライン414を介してクーラント源に戻る。加熱された第1吸着床406は、吸収した冷媒を脱着し、冷媒は、次に、凝縮器供給ライン422を介して凝縮器404に供給され、凝縮器404で、冷媒が液化される。冷却動作を維持するために、液体冷媒は、次に、蒸発器供給ライン410を介して蒸発器402に提供されることができる。同様に、動作の第1位相中に、第2吸着床408は、ファン(図示せず)などによって、空気供給ライン424を介して蒸発器402に「乾燥空気」を供給する。乾燥空気のストリームは、冷媒を蒸発させるのに役立ち、また、「湿った空気」ストリームとして蒸発器402を出て、「湿った空気」ストリームは、空気戻りライン426を介して第2吸着床408に戻る。戻される湿った空気ストリームは、以下でさらに説明される冷媒流路を介して、第2吸着床408を通して流れ、湿った空気ストリームに含まれる冷媒は、乾燥剤などによって、第2吸着床408内で吸収される。パイプ、配管、弁などを使用して、システム内の流体の流量が制御されてもよい。
【0045】
本明細書で使用されるように、用語「乾燥空気」は、比較的少量の冷媒を含むか、または、冷媒を全く含まない空気ストリームまたは他のガス・ストリームのことを言う。本明細書で使用されるように、用語「湿った空気」は、比較的大量の、または、さらに飽和した量の冷媒を含む空気ストリームまたは他のガス・ストリームのことを言う。以下で述べるように、水を含む種々の冷媒が、本発明の吸着冷却システム内で使用することができる。しかし、用語「乾燥空気」も、用語「湿った空気」も、冷媒が水を含まなければ、こうした空気内に水が存在するか、または、存在しないことを示唆することを意味しない。
【0046】
動作の第1位相は、第2吸着床408による吸収の効率が、吸収の閾レベルに達する、かつ/または、第1吸着床406が、十分に再生される(すなわち、第1吸着床から、所定の量の冷媒が除去される)まで続き、その後、動作の第1位相は終わり、弁を切り換えること、および/または、システム内の他のメカニズムなどによって、動作の第2位相が始まる。動作の第2位相では、第1および第2の吸着床406、408の役割が切り換えられ、図5に示すように、第1吸着床406は、乾燥空気を蒸発器に供給し、第2吸着床408は再生され、冷媒を凝縮器404に供給する。これは、吸着冷却システム400の連続動作を可能にする。
【0047】
一般に、吸着床は、以下でさらに詳細に説明するように、別個の冷媒流路とクーラント流路を含むように構築される。一般に、冷媒流路とクーラント流路は流体的に分離される。冷媒流路は、一般に、流体(たとえば、ガス)が、吸着床を通って流れ、乾燥材料に接触することを可能にする。クーラント流路は、吸着床の乾燥材料および冷媒流路から流体的に分離されるが、以下でさらに詳細に説明するように、こうした乾燥材料と熱的につながりを持つために乾燥材料に隣接する。
【0048】
便宜上、用語「乾燥剤」、「乾燥材料」などは、吸収器で使用される吸収材料を述べるために本明細書で使用されるが、こうした用語は、吸収材料を乾燥剤だけに限定することを意図されない。吸収剤は、蒸気状冷媒を吸収することができ、同様に、高くても120℃の温度で冷媒を再生する(すなわち、脱着させる)ことができる任意の材料であることができる。
【0049】
吸着冷却システムは、好ましくは、閉ループ・システムである。好ましくは、吸着冷却システムは、密閉システム内に収容されて、冷媒と吸収剤との比を維持し、所望の冷却を行い、ならびに、大容量吸収剤の汚染を防止する。たとえば、大容量乾燥剤が、吸収器において使用される場合、大容量乾燥剤を、水蒸気および汚染物質が存在する大気条件に暴露することができない。大気への暴露は、大容量乾燥剤を汚染する、かつ/または、殺菌する可能性がある。
【0050】
先に述べたように、吸着床内に含まれる冷媒を再生するために、熱いクーラントを、吸着床に供給することができる。1つの好ましい実施形態では、熱いクーラントは、液相クーラントである。特に好ましい実施形態では、熱いクーラントは、ラジエータ冷却剤流体(たとえば、エチレングリコール)などの、内燃機関の冷却動作で使用される液相クーラントであり、クーラント源は、車両のラジエータまたは同様の構造体である。液体クーラントを介してエンジンからの廃熱を使用することは、2次熱源を供給することなく、吸着床の再生を可能にし、エンジンならびに吸着冷却システムを動作させるときの所定の効率を提供する。さらに、ガス相クーラントと対照的に、熱い液相クーラントの使用は、熱い液相クーラントが、一般に、より急速に熱を層に伝達するため、吸着床を再生するときにより効率的である。
【0051】
本発明の別の態様によれば、吸着冷却システムは、吸着床を冷却するときに使用するための第2クーラント源を含む。こうした第2クーラント源を利用する1つの実施形態は、図6に示される。この実施形態によれば、冷却オフ位相中に吸着床406、408、409を冷却するのに役立つように、かつ/または、吸収活動中に乾燥剤の吸収容量を増加させるのに役立つように、(第1クーラント源の熱いクーラントと対照的に)冷たいクーラントを提供するために、第2クーラント源418は、吸着床406、408、409に配管されてもよい。
【0052】
先に述べたように、吸着床は、一般に、吸着床内に含まれる吸収材料を加熱することによって再生される。再生後、乾燥材料は、一般に、吸収活動を始める前に、ある温度に戻ることを許されるべきである。再生活動と、乾燥剤がある温度に戻ってしまう時刻との間に、有意な時間が経過する可能性がある。この時間経過は、吸着冷却システムの動作効率に影響を及ぼす可能性がある。そのため、冷たいクーラントが、その再生動作後に吸着床に供給されて、より迅速に、その温度を許容可能なレベルまで下げるような、第3動作位相を設けることが望ましいことが多い。したがって、本発明の一実施形態によれば、第2クーラント源418が設けられ、第2クーラント源418は、第3動作位相(冷却オフ)中に、吸着床に冷たい(相対的に)クーラントを提供することができる。図6に示すように、第1吸着床406は、再生位相時に動作し、上述したように、第1クーラント源416からの熱いクーラントによって加熱されている。第2吸着床408は、上述したように、吸収位相時に動作する。冷たいクーラントは、クーラント供給ラインおよび戻りライン428、430を介して第3吸着床409を通って循環して、第3吸着床409を冷却する。
【0053】
冷たいクーラントはまた、吸収動作を行う吸着床に供給されてもよい。一般に、乾燥剤の吸収容量は、その温度の関数であり、低温では、乾燥剤は、より多くの冷媒を吸収することができる。図6に示すように、冷たいクーラントは、クーラント供給ラインおよび戻りライン432、434を介して第2吸着床408を通って循環して、第2吸着床408の吸収容量、したがって、吸着冷却システムの効率が増加する。
【0054】
本明細書で使用されるように、用語「熱いクーラント」および「冷たいクーラント」は、吸着床の温度に対する、特に、こうした層内の乾燥剤シートの温度に対するクーラントの温度のことを言う。そのため、熱いクーラントは、一般に、乾燥材料の温度より高い温度にあり、冷たいクーラントは、乾燥材料の温度より低い温度にある。
【0055】
冷たいクーラントは、吸着床のクーラント流路を通って流れるようになっている任意の流体であってよい。一実施形態では、冷たいクーラントは、周囲空気などのガスである。別の実施形態によれば、冷たいクーラントは、液体冷却剤である。一実施形態では、第2冷却源は、(エンジン・ブロックの冷却のために車両によって通常使用されるラジエータ以外に)第2ラジエータを含み、第2ラジエータは、冷たい液体クーラントを含む。第2冷却源のサイズは、取り除かれなければならない熱量に依存し、熱量は、吸収器の熱質量に依存する。理解されるように、大容量乾燥剤が、一般に、本発明に従って使用されるため、吸収器の熱質量は、大幅に低減されることになり、必要な冷却レートを達成するために、比較的小さな第2クーラント源を使用することができる。別の実施形態では、第2クーラント源は、凝縮器であり、冷たいクーラントは、凝縮器内に含まれる冷媒である。同様に、図6は、熱いクーラント経路と冷たいクーラント経路についての、別個の供給および戻りラインを示すが、冷たいクーラントは、一般に、熱いクーラントによって使用される同じクーラント配管を使用し、一連の弁およびT字管は、適切な流量をもたらすために使用される。
【0056】
本発明の別の実施形態では、吸着冷却システムは、車両冷却要件を補うために、従来の(すなわち、圧縮ベースの)エアコンディショナと共に動作する。本発明の一実施形態では、標準的な使用のために、比較的小さいサイズのエアコンディショナが、車両内に設けられる。高温および/または高湿度に遭遇すると、車両の内部の冷却を達成するための、必要な付加的な冷却容量を提供するために、本発明の吸着冷却システムを使用することができる。この実施形態によれば、大容量乾燥剤を使用する吸着床は、任意選択で、冷却負荷を減少させるために、到来する空気を除湿するのに使用されてもよい。
【0057】
別の実施形態では、2つ以上の吸着冷却システムは、必要な冷却容量を提供するために並列に動作する。各吸着冷却システムは、他のシステムから流体的に分離され、独立に動作することができる。
【0058】
さらに別の実施形態によれば、吸着床は、吸着冷却システムに対する冷却負荷を減らすために、到来する室内空気を乾燥するのに使用される。図7に示すように、吸収器740、742は、本発明の吸着冷却システムによって冷却される到来する空気の連続乾燥を達成するために、並列に動作する。到来する空気744は、第1吸着床740を通して流れ、第1吸着床740で、空気が、(たとえば、大容量乾燥剤によって)乾燥させられ、除湿された空気746として出て、除湿された空気746は、その後、本発明の蒸発器702のすぐ近くに、かつ/または、蒸発器702に接触して流れる。同時に、上述したクーラント源716を使用するなどによって層を加熱し、脱着された水を層742から除去するために、第2吸着床742を通してガス756を流すことによって、第2吸着床742が再生される。第1吸着床740が、吸収の閾レベルに達すると、かつ/または、第2吸着床742が、十分に再生されると、吸着床740、742は、除湿動作と再生動作とを切り換える。吸着床740、742は、任意選択で、動作中に、こうした吸収器を冷却するために、上述したように、第2クーラント源718の使用を採用してもよく、それによってその吸収容量が増加する。吸収器を通して適切な流量をもたらすために、弁、配管、および他の材料(図示せず)が使用されてもよい。
【0059】
本発明の別の実施形態によれば、現場で再生可能な吸着冷却システムは、冷却された流体を建物に提供するのに使用される。コジェネレーション・プラントまたは他の熱源からの廃熱を使用して、本発明の吸着冷却システムの吸着床に熱が提供される。車両の室内に冷却された空気を提供することに関して、まさに先に説明したように、吸着冷却システムが連続冷却を行うことができるように、一連の吸着床が並列に動作する。しかし、車両からの熱いクーラントを使用する代わりに、コジェネレーション・システムからの熱水または熱ストリームなどの、熱い流体またはガスは、種々の吸着床を通って循環して、こうした層を再生するのに必要な熱が提供されてもよい。以下に説明する冷媒、吸着床、および蒸発器が、この実施形態に従って使用されてもよい。同様に、「SORPTION COOLING SYSTEMS,THEIR USE IN PERSONAL COOLING APPLICATIONS AND METHODS RELATING TO SAME」という名称で、2005年6月8日に出願され、参照によりその全体が援用される、同一譲受人に譲渡された米国仮特許出願第60/,号に記載される複数チャンバ蒸発器などの、複数チャンバ蒸発器が、冷却された流体を建物に提供するのに使用されてもよい。
(吸着冷却システムの冷媒源)
上述したように、冷媒源は、冷却を行うために、蒸発器に必要な冷媒を供給する。一般に、非現場の再生可能な吸着冷却システムは、任意のタイプの冷媒源を使用することができるが、軽量で柔軟なプラスチック・ハウジングなどの簡単な液体リザーバがあれば、一般に、システムのサイズ、重量、および複雑さを最小にするのに十分であることになる。本発明に従って有用な他のタイプの液体リザーバは、同一譲受人に譲渡された、Smith他に対する米国特許第6,701,724号およびSmith他に対する米国特許第6,858,068号に開示され、特許はそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0060】
現場で再生可能な吸着冷却システムは、一般に、吸着床と冷媒源との間で流体連通を可能にするさらなる配管、および、蒸気状冷媒を液化する手段を必要とするため、より複雑である。車両冷却用途の場合、比較的小さいサイズと重量のために、空冷式凝縮器が適するが、水冷式または蒸発凝縮器が、使用されてもよい。
(吸着冷却システムの冷媒)
本発明の吸着冷却システムにおいて、任意の適した冷媒が使用されてもよい。一実施形態では、冷媒は周囲温度で高い蒸気圧を有し、それによって、圧力低下は高い蒸気生成レート(vapor production rate)を生じることになる。適した液体は、アンモニア、メチル・アルコールまたはエチル・アルコールなどの種々のアルコール、ケトン(たとえば、アセトン)、またはアルデヒド(たとえば、アセトアルデヒド)を含む。他の有用な液体は、FREON(E.I.デュポン・ドゥ・ヌムール(E.I.Dupont de Nemours)、デラウェア州ウィルミングトン(Wilmington,DE))などのクロロフルオロカーボン(CFC)またはハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、FREON C318、FREON 114、FREON 21、FREON 11、FREON 114B2、FREON 113、およびFREON 112などの一連のフルオロカーボン製品を含むことができる。
【0061】
1つの好ましい実施形態では、冷媒は水ベースの液体であり、特に好ましい実施形態では、液体は本質的に水を含む。水が環境、コストおよび安全性の利点に加えて、非常に高い物質蒸発熱について好ましい。周囲温度で、蒸発した水1グラム当たり約2,500Jの冷却を達成することができる。
(吸着冷却システムの吸着床)
本発明の吸着冷却システムの吸着床は、蒸発器から冷媒を吸収する任意のタイプの吸収器であってよい。たとえば、吸収器は、(固定した、または、回転する)ホイール、充填層、シート、螺旋状に巻かれた接触器、または、中間チャネル平行板接触器の形態であってよい。好ましい実施形態では、吸収器は軽量、コンパクトで、比較的高い吸収容量を有する吸着床である。吸着床は、好ましくは、それぞれ吸収動作および再生動作中に、冷媒を急速に吸収し、また、脱着することもできる。こうした吸着床の一実施形態は図8に示される。
【0062】
この実施形態では、吸着床800は、冷媒入口804、冷媒出口806、クーラント入口808、およびクーラント出口810を含む流体不浸透性ケーシング801を含む。複数の乾燥剤シート812は、ケーシング内に配設され、乾燥剤シートはそれぞれ、貫通して延びる少なくとも1つの開口814を有する。乾燥剤シート812の第1面は、好ましくは、大容量乾燥剤を含む。乾燥剤シート812の第2面は、好ましくは、流体不浸透性障壁816によって覆われる。冷媒流路818は、冷媒入口804と冷媒出口806との間にあり、クーラント流路820は、クーラント入口808とクーラント出口810との間にある。間隔保持材料822は、乾燥剤シート812を互いから分離し、冷媒流路とクーラント流路を画定するのに役立つ。乾燥剤シートの間隔保持材料822および開口814は、冷媒流路818とクーラント流路820が、互いから流体的に分離されるように配置される。一般に、開口814は、冷媒流路か、クーラント流路のいずれかの一部分であり、かつ、それを画定するのに役立つが、開口の第1のセットは、冷媒流路を画定するのに使用することができ、一方、開口の第2のセットは、クーラント流路を画定するのに使用することができる。図9に示すように、クーラント入口および出口を、冷媒入口および出口と切り換え、乾燥剤シートを反転することによって、図8に示す流路が切り換えられるように、吸着床を設計することができることが理解されるであろう。
【0063】
吸収動作中、蒸発器からの蒸気状冷媒は、冷媒が吸収される乾燥剤シート812の吸収セクションに接する冷媒流路818を通って流れる。先に説明したように、吸収動作中、乾燥剤シートを冷却し、乾燥剤シートの吸収容量を増加させるために、冷たいクーラントをクーラント流路820を通して循環してもよい。乾燥剤シートの第2面上の流体不浸透性障壁816は、冷たいクーラントと乾燥剤との好ましくない相互作用(たとえば、化学反応)を防止する。
【0064】
再生動作中、内燃機関の冷却で使用される液体クーラントなどの熱いクーラントは、乾燥剤を加熱するために、クーラント流路820を通して流れ、乾燥剤上に吸収された冷媒の蒸気圧を増加させ、最終的に、乾燥剤から冷媒の全てでない場合、少なくとも一部分を脱着させる。乾燥剤シート812の第2面上の流体不浸透性障壁816は、熱いクーラントと乾燥剤シートとの間の好ましくない相互作用を防止する。凝縮器または他の冷媒源からの乾燥空気は、脱着された冷媒を除去するために、冷媒流路818を通して流れる。湿った空気は吸着床800を出て、現場で再生可能な吸着冷却システムの場合、凝縮器に戻り、凝縮器で湿った空気が液化される。
【0065】
本発明によれば、単一の冷媒流路および/またはクーラント流路が使用されてもよいが、一般に、吸着床は、複数の冷媒流路およびクーラント流路を画定するために、乾燥剤シート当たり複数の開口、ならびに、複数のスペーサ、クーラント入口および出口および/または冷媒入口および出口を含むことになる。こうした吸着床の一実施形態は、図10A〜10Eで提供される。流体不浸透性ケーシング1001は、吸着床800は、複数の冷媒入口1004、冷媒出口1006、クーラント入口1008、およびクーラント出口1010を含む。複数の乾燥剤シート1012はケーシング内に配設され、乾燥剤シートはそれぞれ、貫通して延びる少なくとも1つの開口1014を有する。乾燥剤シートの第1面は、好ましくは、大容量乾燥剤を含む。乾燥剤シートの第2面は、好ましくは、流体不浸透性障壁1016によって覆われる。複数の冷媒流路1018は冷媒入口1004と冷媒出口1006との間にあり、複数のクーラント流路1020は、クーラント入口1008とクーラント出口1010との間にある。間隔保持材料1022は、乾燥剤シート1012を互いから分離し、複数の冷媒流路1018と複数のクーラント流路1020を画定するのに役立つ。乾燥剤シート1012の間隔保持材料1022および開口1014は、冷媒流路1018とクーラント流路1020が、互いから流体的に分離されるように配置される。一般に、開口1014は、冷媒流路か、クーラント流路のいずれかの流路の一部分であり、かつ、それを画定するのに役立つが、開口の第1のセットは、冷媒流路を画定するのに使用することができ、開口の第2のセットは、クーラント流路を画定するのに使用することができる。クーラント入口および出口を冷媒入口および出口と切り換え、乾燥剤シートをひっくり返すことによって、図10Aに示す流路が切り換えられるように、吸着床を設計することができることが理解されるであろう。
【0066】
冷媒流路は、一般に、吸着動作および再生動作中に、冷媒の物質移動レートを最大にするように設計されるべきである。以下でさらに詳細に説明されるように、とりわけ、乾燥剤シートの吸収セクションの表面積(すなわち、乾燥剤シートの第1吸収面の表面積から開口が占める面積を引いた面積)および乾燥剤シートの吸収面間の隙間を最適化することによって、物質移動レートを最大にすることができる。
【0067】
クーラント流路は、一般に、乾燥剤シートとクーラント流体との間の熱伝達レートを最大にするように設計されるべきである。以下でさらに詳細に説明されるように、とりわけ、熱伝達のために利用可能な表面積および乾燥剤シートの流体不浸透性面間の隙間を最適化することによって、クーラントレートを最大にすることができる。
【0068】
先に述べたように、吸着冷却システムはまた、吸着床が、冷媒を吸収も再生もしない冷却サイクル/位相を使用してもよい。冷却動作中、冷たいクーラントは、乾燥剤シートをより急速に冷却するために、クーラント流路を通って流されてもよい。乾燥剤シートの第2面上の流体不浸透性障壁は、冷たいクーラントと乾燥剤シートとの間の好ましくない化学相互作用を防止する。理解されるように、吸着冷却システムの弁および配管は、上記冷却動作を可能にするように構成されて配置されるべきである。
【0069】
床の質量を最小にし、床との大気相互作用を防止し、床を構造的に防護するのに役立つために、吸着床のケーシングは、好ましくは、剛性のある、軽量の、流体不浸透性材料でできている。一部の例では、非剛性の流体不浸透性材料も使用することができる。適したケーシング材料は、ポリエチレン、ナイロン、PVCなどの単純なプラスチック膜、トーヨー・アルミニウム(Toyo Aluminum)(日本)によって販売されているものなどの、プラスチック熱シール層を有する金属箔、E.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.Du Pont de Nemours and Co.)(米国、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,Delaware))から入手可能なものなどの金属化プラスチック障壁、レクサム(Rexam)(米国、インディアナ州エバンスビル(Evansville,Indiana))から入手可能なものなどの、成型されたポリエチレンまたはポリプロピレン、ウィパック(Wipak)(フィンランド)からのCOVEXX、多層プラスチック、金属、熱可塑性物質、熱硬化性プラスチック、およびその組合せを含む。
【0070】
吸着床で使用される間隔保持材料は、好ましくは、軽量でかつ剛性があり、流体不浸透性の外周を含む。間隔保持材料は、冷媒流路とクーラント流路の少なくとも一方を、しばしば、流路の両方を画定するのに役立つように使用されるため、間隔保持材料はまた、好ましくは、吸着冷却システムで使用される冷媒とクーラントの両方に対して不活性である。好ましい間隔保持材料は、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリオキシメチレン(polyoxymethlene)(たとえば、E.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.Du Pont de Nemours and Co.)から入手可能なDELRIN)、塩化ポリビニル、塩化ポリビニル塩化物、エポキシ、熱硬化性ポリエステルエラストマー(たとえば、E.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.Du Pont de Nemours and Co.)から入手可能なHYTREL)、ポリフェニル・エーテル(たとえば、ジェネラル・エレクトリック・コーポレーション(General Electric Corp.)(米国、コネチカット州フェアフィールド(Fairfield.Connecticut))から入手可能なNORYL)、ポリアミド(たとえば、E.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.Du Pont de Nemours and Co.)から入手可能なNYLON)、ポリフェニレン・サルファイド(たとえば、シェブロン・フィリップス・ケミカル・カンパニー(Chevron Phillips Chemical Company)(米国、テキサス州ウッドランド(Woodlands Texas))から入手可能なRYTON)、ポリテトラフルオロエチレン(たとえば、E.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.Du Pont de Nemours and Co.)から入手可能なTEFLON)、ポリフッ化ビニリデン、およびその組合せを含む。これらの中で、ポリエチレンおよびポリプロピレンは、特に好ましいスペーサ材料である。一部の例では、乾燥剤シート材料は、所望の間隔保持材料のサイズに切断され、間隔保持材料として利用されることもできる。
【0071】
吸着床の乾燥剤シートは、好ましくは、軽量で薄く、高い吸収容量を有し、比較的低い温度で再生されるようになっている。本発明による1つの好ましい乾燥剤シートは、Smith他に対する、参照によりその全体が援用される、同一譲受人に譲渡された米国特許第6,559,096号に記載される乾燥剤などの、高い孔容積、制御された孔サイズを有する多孔性支持材料および多孔性支持材料上に分散した吸収剤を含む複合乾燥剤などの、低コストの大容量乾燥材料を含む。
【0072】
大容量乾燥剤は、好ましくは、乾燥剤1グラム当たり液体冷媒の少なくとも約0.2グラム、好ましくは乾燥剤1グラム当たり液体冷媒の少なくとも約0.5グラム、より好ましくは、乾燥剤1グラム当たり液体冷媒の少なくとも約1.0グラム、さらにより好ましくは、乾燥剤1グラム当たり液体冷媒の少なくとも約2.0グラムを吸収することができる。図11は、他の吸収剤と比較した場合の、大容量乾燥剤の典型的な吸収容量を示す。大容量乾燥剤はまた、好ましくは、1:1.5未満、好ましくは、1:1.4未満、より好ましくは、1:1.3未満などの、蒸発熱と吸収熱の比較的低い比を有する。たとえば、典型的なゼオライトは、約1:1.8の蒸発熱と吸収熱の比を有する。図12は、改質炭を含む大容量乾燥剤の、水の蒸発熱と比較したときの吸収熱を示す。
【0073】
一実施形態によれば、冷媒が、本質的に水からなるとき、好ましい大容量乾燥剤は、周囲温度(たとえば、25℃)で10%相対湿度において、水の状態のその重量の少なくとも約20%を、また、周囲温度で50%相対湿度において、水の状態のその重量の少なくとも約40%を吸収することができる。より好ましくは、大容量乾燥剤は、周囲温度で10%相対湿度において、その重量の少なくとも約40%を、また、周囲温度で50%相対湿度において、その重量の少なくとも約60%を吸収することになる。さらにより好ましくは、大容量乾燥剤は、周囲温度で10%相対湿度において、その重量の少なくとも約60%を、また、周囲温度で50%相対湿度において、その重量の少なくとも約80%を吸収することになる。
【0074】
適した乾燥剤は、ゼオライト、酸化バリウム、過塩素酸マグネシウム、硫酸カルシウム、酸化カルシウム、活性炭、改質炭、塩化カルシウム、グリセリン、シリカ・ゲル、アルミナ・ゲル、水酸化カルシウム、無水リン酸、リン酸、水酸化カリウム、硫酸ナトリウム、およびその組合せを含む。特に好ましい大容量乾燥剤は、表面改質した多孔性支持材料である。多孔性支持材料は、活性炭、カーボン・ブラック、またはシリカのような材料であることができる。好ましくは、多孔性支持材料は、少なくとも約0.8cm3/gの孔容積、および、約1nm〜約20nmの平均孔サイズを有する。表面改質は、多孔性支持材料を、塩化カルシウム、塩化リチウム、臭化リチウム、塩化マグネシウム、硝酸カルシウム、フッ化カリウム、およびその組合せのうちの任意の1つなどの、1つまたは複数の金属塩によって含浸させることを含む可能性がある。多孔性支持材料は、好ましくは、金属塩の約20〜約80重量%、より好ましくは、金属塩の約40〜約60重量%が充填される。
【0075】
大容量乾燥剤はまた、好ましくは、再生位相中に吸収されたほとんどの液体を脱着するような性質と量を備えている。一実施形態では、大容量乾燥剤は、高くても120℃の温度で、吸収された冷媒の少なくとも90%を、好ましくは高くても120℃の温度で、吸収された冷媒の少なくとも95%を、より好ましくは高くても120℃の温度で、吸収された冷媒の少なくとも98%を脱着することができる。図13は、大容量乾燥剤の吸収容量を温度の関数として示す。
【0076】
大容量乾燥剤は、高くても120℃の温度で再生する能力以外の理由で有用である。たとえば、冷却システムで使用される吸着床は、一般に、ガス排出と比較して、液体クーラントの高い熱伝達係数のために、排出タイプの冷却システムより小さいことになる。乾燥剤の高い吸収容量は、その吸着性能のために、必要な床容積の低減を可能にする。寄生(回収不能)損失もまた、低減することができる。さらに、自動車用途の場合、乾燥剤の再生は、等級の低い廃熱を使用して行われるため、吸着冷却システムを動作させるのに必要とされる唯一の動力は、1つまたは複数の電気ファンおよび1つまたは複数のクーラントポンプであり、以下でさらに詳細に説明するように、効率の高いCOPをもたらす。燃料経済性の改善および排出ガスの減少が示される場合がある。
【0077】
1つの特に好ましい乾燥剤シートは、金属塩を含浸されている多孔性炭素シートを含む。好ましい実施形態では、乾燥剤シートは、とりわけ、塩化リチウムおよび塩化カルシウムからなる群から選択された金属塩によって含浸された、少なくとも約50%重量の炭素を含む炭素シートでできている。好ましくは、乾燥剤シートは、少なくとも0.01グラムの炭素/吸収面表面積1cm2、より好ましくは少なくとも約0.015グラムの炭素/cm2、より好ましくは少なくとも約0.02グラムの炭素/cm2を含む。好ましくは、乾燥剤シートは、少なくとも約0.01グラムの金属塩/吸収面表面積1cm2、より好ましくは少なくとも約0.02グラムの金属塩/cm2、より好ましくは少なくとも約0.04グラムの金属塩/cm2を含む。
【0078】
乾燥剤シートは、好ましくは、炭素用紙を金属塩によって含浸させることによって作られる。一般に、処理は、炭素用紙を、50%脱イオン水と50%メタノールの混合物などの、界面活性剤で前処理すること、表面がちょうど湿るまで、用紙表面上に混合物を均一に噴霧すること、および、湿った炭素シートを、金属塩を含む溶液に接触させることを含む。炭素シートの孔容積が充填されると、塩/水/アルコール混合物は、もはや表面内にウィッキングされないであろう。1回のウィッキング工程で得られたよりも、多くの塩の充填が望まれる場合、用紙シートは、数時間の間、50℃で炉内に設置されて、大量の液体が孔から乾燥させられてもよく、前処理工程およびウィッキング工程が繰り返される。所望の充填が達成されると、シートは、乾燥を完了するために、一晩の間、真空下において70℃で炉内に設置されてもよい。シートは、真空下で乾燥された後、密閉容器内に保たれるか、または、窒素環境で処理されて、大気の水を吸収するのを防止される。上述した炭素シートは、ミード・ウェストバコ(Mead−Westvaco)(マサチューセッツ州サウス・リー(South Lee,Mass))によって生産されたものなどの、大表面積炭素材料(たとえば、活性炭またはカーボン・ブラック)を含む任意のシートであることができる。
【0079】
吸着床に含まれる乾燥剤シートは、乾燥剤シートが、冷媒流路と流体連通し、クーラント流路と熱的につながる限り、任意の適した形態であってよい。乾燥剤シートの断面積は、いずれの大きさであることもできるが、一般に、吸着床ケーシングの対応する断面積よりわずかに小さい。先に述べたように、乾燥剤シートの断面積は、吸着床の物質移動能力および熱伝達能力を最大にするために、最大にされるべきである。
【0080】
乾燥剤シートは、一般に、クーラントと乾燥剤シートとの間での効率的な熱伝達を可能にするために、厚さが比較的薄い。好ましくは、乾燥剤シートは、厚くても約5mm、好ましくは厚くても約2mm、より好ましくは厚くても約1mmの厚さを有する。構造的な完全性を維持するために、乾燥剤シートは、少なくとも約0.1mm、より好ましくは少なくとも約0.5mmの厚さを有するべきである。
【0081】
乾燥剤シートはまた、吸着床の重量を最小にするために、できる限り軽量であるべきである。乾燥剤シートはまた、冷媒流路およびクーラント流路からの力に耐えるために、構造的に強固であるべきである。上述した炭素シートは、軽い重量と丈夫な性質のために特に好ましい。
【0082】
先に述べたように、流体不浸透性層は、乾燥剤シートとクーラントとの間の好ましくない相互作用を防止するために、乾燥剤シートの一方の面を覆うべきである。流体不浸透性層はまた、クーラントと乾燥剤シートとの間の効率的な加熱レートおよび/または冷却レートを可能にするために、比較的熱伝導性があるべきである。流体不浸透性層はまた、吸着床の重量を最小にするのに役立つために、軽量であるべきである。この点で、好ましい流体不浸透性層材料は、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリエステル、COVEXX(ウィパック(Wipak)(フィンランド)から入手可能)、および金属箔を含む。流体不浸透性層は、張り合わせ、超音波溶接、溶剤溶接、およびヒート・シーリングなどの任意の知られている方法によって、乾燥剤シートに固着されてもよい。
【0083】
乾燥剤シートはそれぞれ、一般に、少なくとも1つの開口を有する。先に述べたように、開口は、冷媒流路か、クーラント流路のいずれかの一部分を画定する。一実施形態では、開口は、クーラント流路のみの一部分を画定する。別の実施形態では、開口は、冷媒流路のみの一部分を画定する。さらに別の実施形態では、開口の第1のセットは、クーラント流路の一部分を画定し、開口の第2のセットは、冷媒流路の一部分を画定する。
【0084】
乾燥剤シートは、1シート当たり1つの開口を有するが、一般に、1シート当たり複数の開口を有する。開口の数が増加するにつれて、吸着床を通る流体経路の数が、それに対応して増加し、流体が利用可能な全摩擦表面積が減少する。これは、相応して、吸着床を通る摩擦要因を減少させ、吸着床を通る圧力低下を減少させるのに役立つ。さらに、開口が、冷媒流路の一部分であるとき、冷媒流路の数の増加が示され、それによって、乾燥材料のよりよい利用状態をもたらすことができる。
【0085】
本発明の一実施形態によれば、乾燥剤シートの少なくとも1つは、各シートの断面積の258cm2(40インチ2)当たり、少なくとも2つ、少なくとも4つ、少なくとも6つ、少なくとも8つ、さらに、少なくとも16などの、複数の開口を含む。しかし、開口の数はまた、吸着床を通る流路を流体的に分離するために行われなければならない配管の複雑さを増加させることが理解されるであろう。そのため、本発明の一実施形態によれば、乾燥剤シートは、好ましくは、各シートの断面積の258cm2(40インチ2)当たり、多くても128開口、場合によっては、多くても64開口など、多くても256開口を含む。
【0086】
システム内の所望の流体流路および圧力低下に応じて、吸着床の乾燥剤シートは、1シート当たり同じ数の開口を有する可能性があり、または、乾燥剤シートは、1シート当たり異なる数の開口を有する可能性がある。本発明の一実施形態では、乾燥剤の大多数、または、さらに全ては、1シート当たり同じ数の開口を有する。
【0087】
乾燥剤シートを貫通する開口の向きは、デバイスを通る効率的な流体の流れを可能にする任意の向きであることができる。好ましい実施形態では、開口は、シートにほぼ垂直である。乾燥剤シートの開口は、レーザ切断およびダイ切断を含む、任意の知られている手段によって作ることができる。
【0088】
開口は、吸着床を通る効率的な流体の流れを可能にする任意の形状であることができる。たとえば、開口は、ほぼ円柱、円錐、または直方体の立体であることができる。好ましい実施形態では、開口は、吸着床を通る流体流路の数を最大にしながら、吸収に利用可能な表面積を最大にするために円柱である。
【0089】
開口は、乾燥剤シートと、それぞれ、冷媒およびクーラントとの間の物質移動および熱伝達を最大にするのに役立ちながら、層を通る効率的な流体の流れを可能にする任意の幅であることができる。開口の幅/径は、ほぼ同じである可能性があり、または、開口のサイズは、変わる可能性がある。本発明の一実施形態では、開口は全て、ほぼ同じ幅を有する。本発明の別の実施形態では、開口の幅は、システムを通る流体流路の数を最大にしながら、最小限の圧力低下を容易にするのに役立つために吸着床を通して変わる。特に好ましい実施形態では、開口の幅は、乾燥剤シートの少なくとも1つの平面を横切る、好ましい実施形態では、乾燥剤シートの大多数、または、さらに全てを横切る第1の方向に増加する。
【0090】
図14に示すような特に好ましい実施形態では、第1乾燥剤シート1412および第2乾燥剤シート1412’はそれぞれ、少なくとも、第1、第2、および第3開口1401、1401’、1402、1402’、1403、および1403’を含む。第1開口1401、1401’は、第1の径を有し、第2開口1402、1402’は、第2の径を有し、第3開口1403、1403’は、第3の径を有し、第1の径は第2の径より小さく、第2の径は第3の径より小さい。第1開口1401、1401’はまた、吸着床の第1流れ平面1401−FP内に位置合わせされる。相応して、第2開口1402、1402’および第3開口1403、1403’はまた、それぞれ、第2および第3流れ面1402−FPおよび1403−FP内に位置合わせされる。好ましくは、これらの流れ平面は、互いにほぼ平行である。この配置構成は乾燥剤シートとの流体接触を増加させ、同時に、吸着床を通る圧力低下を減少させながら、吸着床を通る複数の流体流路を提供する。
【0091】
乾燥剤シートは、効率よく冷媒流路とクーラント流路が設けられる限り、吸収ケーシング内に任意の適した方法で配置されることができる。好ましい実施形態では、乾燥剤シートは、互いにほぼ平行である。一実施形態では、乾燥剤シートの大多数の開口は、図14に示すように、互いの中で位置合わせされる。一実施形態では、ほぼ平行なシートは、冷媒入口、冷媒出口、または、両方にほぼ垂直である。相応して、ほぼ平行なシートは、クーラント入口、クーラント出口、または、両方にほぼ平行であってもよい。代替の実施形態では、ほぼ平行なシートはクーラント入口、クーラント出口、または、両方にほぼ垂直である。相応して、ほぼ平行なシートはまた、冷媒入口、冷媒出口、または、両方にほぼ平行であってもよい。
【0092】
隣接する乾燥剤シートの長さおよび/または幅は、システム内の流れの不均衡を最小にするのに役立つために変えられてもよい。図15Aに示す一実施形態では、乾燥剤シート1512Aの幅は、層の上部から底部へ減少して、吸着床を通る流体経路(たとえば、クーラント経路)の流れの不均衡を減らすのに役立つ。クーラントがクーラント入口1508Aを介してケーシング1501Aに、この例では、底部から入るとき、クーラントが吸着床の上部に入るのに必要とされる力の大きさは、クーラントが吸着床の中央部分または下側部分に入るのに必要とされる力の大きさより大きいことになる。その理由は、クーラントが最も抵抗の少ない経路をたどろうとするためである。しかし、クーラントを流すための原動力(たとえば、ファンまたはポンプ(図示せず))は、吸着床のクーラント出口1510Aより上にあるため、クーラントに作用する最大の原動力は、吸着床の上部にあることになる。したがって、このテーパ付き層構造は、層の種々のレベルにおいて、流体に作用する力を均衡させるのに役立つ。
【0093】
流れの不均衡を減少させるのに役立つように設計された構造の別の実施形態は、図15Bに提供される。クーラントは、クーラント入口1508Bを通って流れ、クーラント出口1510Bを介して出る。やはり、クーラントを流すための原動力(図示せず)は、クーラント出口1510Bの上に配設され、それによって、吸着床の上部で最も大きな原動力が提供される。しかし、この実施形態では、吸着床ケーシング1501Bは、乾燥剤シート1512Bの両側に対してテーパが付けられ、乾燥剤シート1512Bは、全て相対的に同じサイズである。先の実施形態と同様に、このテーパ付き層構造は、層の種々のレベルにおいて作用する力を均衡させるのに役立つ。先のテーパ付き層の実施形態は、クーラント流体に関連して述べられたが、冷媒流体もまた、こうした実施形態において使用することができることが理解されるであろう。さらに、乾燥剤シートの長さ/幅およびケーシング・サイズは共に、所望の流れを達成するために変えることができる。
【0094】
乾燥剤シートの吸収面間の空間は、吸着床性能における重要な因子であることがわかっており、吸着床を通る冷媒の、物質移動効率および圧力低下に関連する。好ましくは、2つの乾燥剤シートの第1の吸収面間の空間(「第1隙間サイズ」)は、冷媒が、圧力低下が小さい状態で、大量の乾燥剤に接触するほどのものである。一実施形態では、第1隙間サイズは、多くても5mm、好ましくは多くても2mm、より好ましくは多くても1mmである。しかし、好ましくは、第1隙間サイズは、層を通る冷媒圧力低下量を減少させ、製造の複雑さを最小にするのに役立つために、少なくとも0.05mm、好ましくは少なくとも0.1mm、より好ましくは少なくとも0.25mm、さらにより好ましくは少なくとも0.5mmである。先に述べたように、乾燥剤シート間の空間は、上述した間隔保持材料によって提供される。
【0095】
乾燥剤シートの第2面(すなわち、流体不浸透性面)間の空間の場合、これらの空間は、クーラントの量および層を通してクーラントを流すのに必要とされる圧力に関連する。好ましくは、乾燥剤シートの第2面と第2材料(たとえば、乾燥剤シートの別の第2面または流体ケーシング)との間の空間(「第2隙間サイズ」)は、クーラントが、クーラント容積が小さく、かつ、クーラント圧力低下が小さい状態で、クーラントが、大量の流体不浸透性層表面積に接触するほどのものである。この点で、クーラントの容積は、第2隙間サイズと使用されるクーラントの相(たとえば気相または液相)に直接関連することが理解されるであろう。ガス状クーラントの場合、液体クーラントと比較して、同じ量の冷却を達成するのに、より大きな流体容積が必要とされることになる。したがって、本発明の吸着床を冷却し、かつ/または、加熱するために、液体クーラントが、一般に好ましい。クーラントのタイプ、加熱される、かつ/または、冷却される表面積、クーラントの入口および出口の温度、再生温度、冷却オフ温度、ならびに、流体不浸透性障壁および乾燥材料の熱伝導率は全て、適切な第2隙間サイズを評価するときの考慮事項であることが理解されるであろう。
【0096】
吸着床は、一般に、複数の乾燥剤シートを備える。必要とされる乾燥剤シートの数は、蒸発器の蒸発レートに関連する所望の冷却レート、冷媒のタイプ、乾燥剤の吸収容量、システムで利用される吸着床の量とサイズを含むいくつかの因子の関数である。この情報によって、シートの数を計算することができる。たとえば、先に述べたように、7.2kW−Hrの冷却容量が、多くの車両製造業者によって望まれている。1つの蒸発器と3つの動作位相(すなわち、再生、吸収、および冷却オフ)で動作する3つの層とを有する吸着冷却システムと、定常状態(水蒸気を冷却された室内空気に変換するときの蒸発器の90%効率に匹敵する)の蒸発器において、3.2グラム/秒の水が蒸発すること、大容量乾燥剤が、1グラムの乾燥剤当たり1グラムの水を吸収するようになっていること、および、5分のサイクル・タイムとを仮定すると、各吸着床は、960グラムの大容量乾燥剤を含まなければならない。乾燥剤シートが約0.035グラム/cm2の乾燥材料を含むと仮定すると、(厚さは、吸収容量に対して無視できると仮定すると)1層当たり約27,450cm2の乾燥剤シートが必要とされる。乾燥剤シートの長さおよび幅は、250cm2を超えることができない場合、110シートが必要とされるはずである。
【0097】
先に述べたように、吸着床の冷媒流路は、層のそれぞれの動作位相に応じて、吸着床と蒸発器と凝縮器との間での流体連通を提供する。先に述べたように、再生動作中に、流体連通は、乾燥剤からキャリア・ガスへの冷媒の蒸発/脱着を含む。吸収動作中に、流体連通は、乾燥剤上への冷媒の吸収を含む。一般に、冷媒流路は、低い圧力低下において、層内での高い物質移動レートを可能にするように画定されるべきである。先に述べたように、冷媒流路の数の多さが、吸収剤のよりよい利用状態のために利用されるべきである。
【0098】
好ましくは、吸着床を通る圧力低下は、吸着床を通して冷媒および/またはクーラントを循環させるのに必要とされるファン、ポンプ、または他の原動力のサイズを最小にするのに役立つためにできる限り小さい。本発明の一実施形態では、吸着床を通る冷媒流の圧力低下は、大きくてもH2Oの7.5mmHg(4インチ)、好ましくは大きくてもH2Oの3.7mmHg(2インチ)、より好ましくは大きくてもH2Oの1.87mmHg(1インチ)、さらにより好ましくは大きくてもH2Oの0.93mmHg(0.5インチ)である。
【0099】
冷媒流路はケーシング内の冷媒入口(複数可)および出口(複数可)、ならびに、(a)乾燥剤シート内の開口と(b)間隔保持材料の少なくとも一方によって画定される。一実施形態では、複数の冷媒流路が、複数の冷媒入口、出口、および開口によって画定される。図10Aを参照すると、複数の冷媒入口1004は、冷媒が吸着床ケーシング1001に入るために設けられる。間隔保持材料1022および開口1014は、冷媒流が流れることができる経路を画定する。流体は冷媒出口1006を通して層を出る。
【0100】
冷媒流路は吸着床を通ってほぼ直線または非直線であってよい。ほぼ直線の流路は、一般に、低い圧力低下をもたらすが、吸収剤の低利用状態を示す場合もある。乾燥剤シートに対してクーラントを配管することがより難しい場合もある。ほぼ直線の冷媒流路を有する吸着床の一実施形態は、図16に提供される。湿った空気は冷媒入口から吸着床ケーシング内に流れる。種々のほぼ直線流路が乾燥剤シートに対する冷媒の流体連通を提供する。乾燥した空気は冷媒出口を介してケーシングを出る。こうしたシートを加熱し、かつ/または、冷却するために、クーラントがシートに提供されてもよい。
【0101】
先に述べたように、冷媒流路は非直線であってもよい。非直線流路は、一般に、高い圧力低下を有するが、吸収剤の利用状態の向上を示す。クーラントの配管の容易さも示されることができる。複数の非直線(すなわち、曲がりくねった)流路を有する吸着床の一実施形態は、上述した図10Aに提供される。湿った空気は、冷媒入口1004を通って、吸着床ケーシング1001内に流れる。乾燥剤シート1012内の開口814および間隔保持材料822は、冷媒流体が乾燥剤シートの第1(吸収)面とつながるための非直線流路を画定するのに役立つ。乾燥空気は冷媒出口1006を介してケーシングを出る。ファン(図示せず)は、一般に、冷媒流路を通して空気を循環させるのに使用される。
【0102】
クーラント流路は容積、圧力低下、および配管の複雑さを最小にした状態で、クーラントと乾燥剤シートとの間の高い熱交換を提供するように設計される。冷媒経路と同様に、クーラント経路はクーラント入口(複数可)および出口(複数可)、ならびに、(a)乾燥剤シート内の開口と(b)間隔保持材料の少なくとも一方によって画定される。冷媒流路と同様に、クーラント流路は、直線か、または、非直線であってよく、クーラント流路に関して、同様な問題(たとえば、圧力低下、熱伝達率、配管の複雑さなど)が存在する。クーラント流路は、2つのストリーム間での相互作用を防止するために、冷媒流路から流体的に分離される。流体分離は、一般に、乾燥剤シートの第2面上に間隔保持材料および流体不浸透性障壁を使用して行われる。クーラント流路は、一般に、両者を熱的につなぐために、乾燥剤シートの吸収セクションに隣接する。先に述べたように、乾燥剤シートと接触するクーラント流路の表面積は、高い熱伝達のために最大にされるべきである。先に述べたように、クーラント流体は、一般に、再生動作についての内燃機関からの熱いクーラントや、冷却動作についての別個のラジエータからの冷たいクーラントなどの、熱伝達を可能にする液体である。
【0103】
クーラント流路は、複数の開口、または、間隔保持材料によって作られた吸着床内の空間を通って流れることができ、クーラントは、一般に、冷媒が流れないいずれかの経路を通って流れる。したがって、開口が、冷媒流路の一部分である場合、クーラント流路は、開口によって画定されないことになり、また、その逆である。
【0104】
一般に、吸着床を通るクーラントの流量は、所望の、乾燥剤冷却レート/加熱レートの関数である。一般に、温度変化は、2つの物体の温度差に指数関数的に関連する。したがって、クーラントの温度に関連する流量、および、冷却される/加熱される乾燥剤の所望の温度および質量が評価されて、吸着床を通る適切なクーラント流量が決定されなければならない。本発明の一実施形態では、乾燥剤シートの質量と冷却容量の比は、<4.536g/ワット−時間(<0.01ポンド/ワット−時間)である。好ましくは、再生動作中に、907.2g(2ポンド)未満の乾燥剤シート質量によって、5分で、1kWの空気乾燥が達成される。
【0105】
吸着床のある実施形態が、ある向き、形状、サイズ、数などを参照して述べられたが、開口、乾燥剤シート、間隔保持材料、および流体入口と出口の任意の数、サイズ、形状、および向きが、吸着床において使用されて、種々の向きと能力を有する無限の数の冷媒流路およびクーラント流路を作ることができることが理解されるであろう。
(吸着冷却システムの蒸発器)
本発明の吸着冷却システムの蒸発器は、蒸発器の少なくとも一部分と接触した流体ストリームを冷却する任意の蒸発冷却タイプの蒸発器であってよい。1つの好ましい実施形態では、熱伝導性プラスチック壁を備える湿った壁を持つ蒸発器などの、蒸発器は、蒸発器に近接した流体ストリームに熱エネルギーを伝達する少なくとも1つの熱伝導性側壁を含む。
【0106】
本発明に従って有用な蒸発器の一実施形態は図17に示される。蒸発器1702は、熱伝導性側壁1770、熱伝導性側壁1770に接触する冷媒1760、凝縮器などの冷媒源(図示せず)から冷媒1760を受け取る液体供給ライン1710、ならびに、空気入口1724および出口1726を含む。乾燥空気1780は空気入口1724に入り、乾燥空気1780が蒸発器を通過するときに、冷媒(たとえば、水)が乾燥空気中に蒸発することになり、それによって、冷媒1760、および、対応する熱伝導性側壁1770が冷却される。室内空気1720は熱伝導性側壁1770のすぐ近くを流れ、そこで冷却される。湿った空気1790は空気出口1726を介して蒸発器を出る。乾燥空気と液体冷媒は、蒸発器による連続冷却を可能にするために、上述した吸着冷却システムを使用して連続して供給されてもよい。
【0107】
熱伝導性側壁は、金属、金属化膜、および熱伝導性プラスチックなどの軽量で、流体不浸透性で、高い熱伝導率を有する任意の材料であることができる。特に好ましい側壁材料は、レクサム(Rexam)(米国インディアナ州エバンスビル(Evansville,Indiana))、トーヨー・アルミニウム(Toyo Aluminum)(日本)、およびウィパック(Wipak)(フィンランド)によって製造されるものなどの薄い金属化プラスチックを含む。
【0108】
本発明に従って有用な特に好ましい蒸発器は、本明細書では薄膜蒸発器と呼ばれ、液体冷媒と蒸発器を通る空気流路との間に配設される膜材料を含む。こうした蒸発器の一実施形態は、図18に示される。蒸発器1802は、熱伝導性側壁1870、熱伝導性側壁1870に接触する冷媒1860、液体供給ライン(図示せず)、膜材料1895、ならびに、空気入口および出口(図示せず)を含む。空気1880は、膜材料のすぐ近くを流れ、膜の前後に圧力および濃度勾配を作り、それによって、冷媒1880が、空気ストリーム内に蒸発する。上述したように、これは、冷媒1880および対応する熱伝導性側壁1870を冷却する。室内空気1820は、熱伝導性側壁1870のすぐ近くを流れ、そこで冷却される。
【0109】
膜材料を使用して、蒸発器内での所望量の冷却を達成するために、蒸発レートが調整される。一般に、膜材料は、高い蒸気浸透性を有し、液体浸透性を全くまたはほとんど有さない。一実施液体では、膜材料は、蒸気浸透性材料/流体不浸透性材料である。蒸気浸透性材料の2つの一般的な種類が存在する。第1の種類は、液体が、ある圧力未満で孔を通して浸透しないように、延伸PTFEから作られるなど、多孔性で、かつ、親水性であり、浸透は、孔サイズおよび接触角度に依存する。第2の種類は、置換ポリウレタンから通常生産される密な膜を備える。これらは、動作圧が高いが、蒸気流束が低いという利点を有する。
【0110】
本発明による特に好ましい膜材料は、PORVAIR P3 SB75を含む、ポルベアPLC(Porvair PLC)(英国、ノーフォーク(Norflolk))によって生産されるものなどの、密な置換ポリウレタンを含む。ドナルドソン・カンパニー(Donaldson Company)(米国、ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis,Minnesota))によって生産されるTETRATEXなどの、延伸PTFE膜が使用されてもよい。
【0111】
好ましくは、膜材料は、冷媒と空気との間での効率的な物質移動を達成するために調整される。自動車用途で通常必要とされる蒸発レートの場合、膜材料は、一般に、20.7kPa(3.0psi)〜34.5kPa(5.0psi)の液体圧など、液体クロスオーバがない状態で、約10.3kPa(1.5psi)〜約103.4kPa(15psi)の液体圧に耐えるのに十分な厚さを有する。
【0112】
車両製造業者によって要求される冷却容量の典型的な量は、7.2kW−Hrである。この冷却容量を達成するのに利用される1つの変数は、吸着冷却システム内で利用される蒸発器のサイズおよび量である。本発明の一実施形態では、到来する空気に対する冷却を行うのに、単一の蒸発器が使用される。しかし、こうした蒸発器のサイズは、実際の使用には大き過ぎる。そのため、好ましい実施形態では、多段吸着冷却システムを使用して、所望の冷却が達成され、多段冷却システムは、到来する室内空気を冷却するために、一連の蒸発クーラを利用する。多段吸着冷却システムを使用することによって、複数の吸着床と、複数の蒸発器と、それらに接触する室内空気との間で実現される効率によって、蒸発器サイズ全体の低減が可能になる場合がある。
【0113】
ここで図19を参照すると、多段吸着冷却システムが提供され、このような多段吸着冷却システムからの複数の蒸発器は、直列に動作して、室内空気が所定の閾レベルまで冷却される。室内空気はT1で第1ステージの蒸発器に入り、温度T2で出る。ここでT1>T2である。室内空気は、この点で、吸着床からの乾燥空気は、周囲温度で入り、湿った空気は、T2で第1ステージの蒸発器を出る。室内空気は、T2で第2ステージの蒸発器に入り、温度T3で出る。ここで、T2>T3である。吸着床からの乾燥空気は、周囲温度で第2ステージの蒸発器に入り、湿った空気は、T3で出る。理解されるように、さらなる冷却が起こらないことになる、所望レベルの冷却が達成されるまで、かつ/または、蒸発器の数が閾レベルに達するまで、室内空気は、後続の蒸発器に供給されることができる。室内空気は、TVで最終ステージの蒸発器に入り、温度TXで出る。ここで、TV>TXである。蒸発ステージの数は、単一ステージの冷却容量に関連して全体を冷却するのに必要とされる冷却容量を計算することによって決定することができる。先に述べたように、各ステージの冷却容量は、利用される冷媒、冷媒の蒸発レート、および蒸発器の所望のサイズの関数である。
【0114】
たとえば、200リットル/秒(LPS)の空気を40℃から4℃まで冷却することが望まれる場合、水が冷媒であり、この温度範囲にわたって、熱容量および密度が、比較的一定であると仮定すると、約7.2kWの冷却が必要とされることになる。1秒当たり水の8.9グラムが、蒸発する場合(32%蒸発器冷却効率に匹敵する)、蒸発器当たり400ワットの冷却が生成され、所望の冷却容量を達成するために、18の蒸発器が必要となる。しかし、冷却システム全体の全冷却容量は、蒸発器の達成可能な冷却温度によって制限される。吸着床を出て、蒸発器に入る乾燥空気は、約45℃の温度と約0%相対湿度を有する場合がある。吸着床からの入口空気は、各ステージについて、常に同じであるため、冷却温度は、この例については、約11.7℃である、その空気の露点によって制限される。この冷却温度はまた、出口室内空気を、約12℃の温度に制限する。各蒸発器段が、約2℃だけ空気を冷却すると仮定すると、この実施形態では、全部で14ステージだけが必要とされる((40℃−12℃)/2℃)。
【0115】
本発明に従って有用な別の多段吸着冷却システムは、図20に示すものなどのエネルギー回収多段システムである。この実施形態では、湿った冷たい空気が各ステージを出て、他のストリームと相互作用することなく、吸収のために吸着床に戻るのではなく、各ステージからの湿った冷たい空気を利用して、到来する乾燥空気の温度および対応する露点を下げるために、到来する乾燥空気が冷却される。図20に示すように、室内空気はT1で第1ステージの蒸発器に入り、T2で(定常状態で)出る。T環境の吸着床からの乾燥空気は空気−空気熱交換器に入り、熱交換器において、乾燥空気はその熱を第1蒸発器ステージを出る湿った空気(温度T2で)と交換する。熱交換された乾燥空気は、T1で空気−空気熱交換器を出て、乾燥空気は蒸発動作において使用される。T1はT環境より低いため、熱交換された乾燥空気の露点は先に述べた多段吸着冷却システムより低いことになり、冷却ポテンシャルはそれに応じて、各ステージに関して増加することになる。たとえば、室内空気は、T2で第2ステージの蒸発器に入り、T3で出る。第1ステージと同様に、乾燥空気は、T環境で空気−空気熱交換器に入り、入ってくる(T3の)湿った空気と熱エネルギーを交換し、T2で第2ステージの蒸発器に入る。T1>T2であるため、熱交換された乾燥空気の露点は、第1ステージの露点より低いことになり、冷却ポテンシャルはそれに応じて高くなる。理解されるように、さらなる冷却が起こらないことになる所望レベルの冷却が達成されるまで、かつ/または、蒸発器の数が閾レベルに達するまで、室内空気は後続の蒸発器に供給されることができる。室内空気はTyで最終蒸発器ステージに入り、温度Tzで出る。ここで、Ty>Tzである。
【0116】
このエネルギー回収多段吸着冷却システムの性能は、一般に、エネルギー非回収多段システムの性能より優れている。表1は、200LPSの到来空気と40℃の温度を使用したエネルギー回収システムと比較したエネルギー非回収システムの一般的な性能を示す。
【0117】
【表1】
エネルギー回収多段システムの1つの他の可能性のある利益は、到来する空気が低温であるため、所望の冷却を達成するために蒸発される必要がある水が少ないため、各対応するステージにおいて、蒸発器のサイズが低減される場合があることである。
【0118】
本発明による好ましい多段蒸発器は、上記エネルギー回収多段蒸発システムを実施するマルチチャネルの中間チャネル幅熱交換器である。こうした複数状態吸着冷却システムはまた、「MULTIPLE STAGE SORPTION COOLING APPARATUS,SYSTEM AND METHOD」という名称の、2005年6月8に出願された、参照によりその全体が本明細書に援用される、同一譲受人に譲渡された米国特許仮出願第60/,号に開示される。
(吸着冷却システムの性能)
本発明の車両吸着冷却システムの有効COPは比較的高い。一般に、必要とされる唯一の動力は、クーラント循環ポンプ、任意の必要なファンおよび任意の必要な弁を動作させるのに必要な動力である。そのため、本発明の一実施形態によれば、吸着冷却システムは、少なくとも約8、好ましくは少なくとも約10、より好ましくは少なくとも約12、さらにより好ましくは少なくとも約14の有効COPを有する。この場合、COPは、実現される冷却エネルギーを電力で割ったもの(すなわち、「ウォール・プラグ」効率)として規定される。
【0119】
吸着冷却システムの、蒸発器、吸収器、および冷媒源内の圧力もまた、従来の圧縮ベース・エアコンディショナについて一般に必要とされるよりずっと小さい。通常、こうした部品内の圧力は、好ましくは、大きくても101.3kPa(14.7psig)、好ましくは大きくても68.9kPa(10psig)、より好ましくは大きくても34.5kPa(5psig)、さらにより好ましくは大きくても17.2kPa(2.5psig)である。
【実施例】
【0120】
例1 乾燥材料についての水吸収等温線
水吸収等温線が、CaCl2ベースおよびLiClベース乾燥材料について、25℃で測定された。結果が図21に示される。乾燥材料は共に、約10%相対湿度(RH)未満において同じように働くが、より高い湿度では、LiClベース材料がより吸着性があった。
例2 64個の吸収セクションを有する第1吸着床の性能
64個の吸収セクションを有する吸着床が作製された(吸収セクションは、1シート当たりの開口と間隔保持材料の数および互いに対する物理的関係によって画定される)。35℃および95%RHの空気ストリームが吸着床を通して流され、出口温度および湿度が所定期間にわたって測定された。測定された冷却レートおよび冷却容量が、図22に示される。
例3 64個の吸収セクションを有する第2の吸着床の性能
64個の吸収セクションを有する吸着床が作製された(吸収セクションは、1シート当たりの開口と間隔保持材料の数および互いに対する物理的関係によって画定される)。35℃および95%RHの空気ストリームが、CaCl2乾燥材料を含んだ吸着床を通して流され、出口温度および湿度が所定期間にわたって測定された。全部で6回行われた。表2はその結果を要約する。
【0121】
【表2】
1回の試験についての測定された入口および出口温度ならびに測定された入口および出口相対湿度が図23に示される。この試験についての測定された冷却レートおよび冷却容量は図24に示される。吸着冷却システムは平均して30分にわたって約320ワットの冷却になり、157W−Hrの冷却容量であった。
例4 乾燥剤シート間の間隔保持の測定された作用
上記例3において、吸着床は乾燥剤シートの吸収面間の0.5mmの空間および乾燥剤シートの冷却面間の1mmの空間を使用した。吸収シートの吸収面間の1.0mm隙間空間およびクーラント(すなわち、流体不浸透性)面間の1.25mm空間を有する吸着床が作製された。4LPSの湿った空気が冷媒経路を通して流され、23LPSの空気がクーラント経路を通して流された。冷媒経路を通る測定された圧力低下は、以前の層についての2.54cm(1インチ)H2O(1.87mmHg)と比べて、0.889cm(0.35インチ)H2O(0.65mmHg)であった。冷媒の4LPSにおいて、この1.0mm吸収面隙間の間隔保持を使用した冷却レートおよび冷却容量は、図25に示される(試験は、30分後に停止された)。冷媒の8LPSにおいて、この1.0mm吸収面隙間の間隔保持を使用した冷却レートおよび冷却容量は、図26に示され、約180W−Hrの冷却容量を立証した。
【0122】
別の吸着床が上記1.25mmの代わりに、1.5mmの吸収隙間サイズを使用して作られた。この吸着床を通る圧力低下は0.762cm(0.30インチ)H2O(0.56mmHg)であった。この吸着床の性能は図27に示すように、1.25mm吸収面隙間の間隔保持を有する吸着床とほぼ同様に良好であった。
【0123】
先に述べたように、シートのクーラント面間の隙間の間隔保持もまた重要である。図28は乾燥剤シートと空気クーラント流体との間の計算された熱伝達効率、および、吸着床内の対応する圧力低下を、クーラント面隙間の間隔保持の関数として示す。
例5 スペーサ材料として乾燥剤シートを使用した吸着床
0.5mm厚のポリカーボネート・間隔保持材料を使用する代わりに、間隔保持材料として、0.5mmの厚さを有するCaCl2を含浸したシートとレーザ切断された乾燥剤シートとを使用して、吸着床が作製された。ポリカーボネート・間隔保持材料より小さい重量の乾燥剤シートは、より高い吸収容量を有し、隣接する乾燥剤シートにより容易に固着する。この例の場合、全重量低減は35グラムであった。35℃および100%RHの空気ストリームが吸着床に送られ、出口温度および湿度が所定期間にわたって測定され、その結果が図29に示される。測定された冷却レートおよび冷却容量は図30に示される。吸着冷却システムは平均して260ワットの冷却になり、440ワットにピークを持ち、130ワット−時間の冷却容量であった。
例6 薄膜蒸発器についての膜浸透性の試験
一方の面上に水が流れ、他の面上に空気が流れる2.54cm×5.08cm(1’’×2’’)の膜材料の試験を可能にする単一膜試験セルが構築された。試験セルは図31に示される。空気ストリームと水ストリームの両方の入口および出口温度、ならびに、空気ストリームの入口および出口湿度が測定された。水入口温度は20℃であり、流量は水温度が実質的に一定になるように維持された。〜28℃および20%RHの圧縮空気が試験セル内に送られ、流量は1〜30リットル/分の範囲にわたって制御された。結果は表3に要約される。
【0124】
【表3】
例7−蒸発器試験
0.05m2の利用可能蒸発表面積を有する蒸発器モジュールが製造された。膜材料として、ポリウレタン・コーティングした延伸PTFE膜が使用された。入口空気は23.7℃および11%相対湿度(RH)を測定した。出口空気は16.8℃および40%相対湿度(RH)を測定した。空気流量は30LPMであった。水入口温度は19.3℃であった。水出口温度は16.3℃であった。水流量は2.62g/s(9.4LPH)であった。32.9Wの冷却レートが達成された。
例8 密なポリウレタン膜を使用した蒸発器性能
蒸発器モジュールは密なポリウレタン膜を使用して組み立てられた。約26℃の水が蒸発器の水流れチャネルを通して、3グラム/秒(〜2.8ガル/時間)で流された。約7〜9%RHの圧縮空気が種々の流量(0.33、0.50、0.67、および0.83LPS)で空気流れチャネルを通して流された。入口および出口の空気温度および相対湿度が所定期間にわたって測定され、0.33LPS空気流量について、その結果が図32に示される。入口空気ストリームは約7%RHのみを有するだけでも、出口空気ストリームは約70%RHを有し、約70%RHは、1時間の試験の間、一定のままであった。図33に示すように、より高い空気流量で冷却性能の向上も示された。
【0125】
本発明の種々の実施形態が、詳細に述べられたが、これらの実施形態の変更形態および適応形態を、当業者が思い付くことになることが明らかである。しかし、こうした変更形態および適応形態は、本発明の精神および範囲内にあることが明白に理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】冷却負荷、到来する空気の相対湿度、及び温度の間の関係を示すグラフ。
【図2】車両の従来の蒸気圧縮ベース・エアコンディショナのサイクル動作を示すグラフ。
【図3】典型的な吸着冷却システムの断面図。
【図4】本発明の吸着冷却システムの一実施形態を示すフロー図。
【図5】本発明の吸着冷却システムの一実施形態を示すフロー図。
【図6】本発明の吸着冷却システムの一実施形態を示すフロー図。
【図7】本発明の除湿システムの一実施形態を示すフロー図。
【図8】本発明の吸着床の一実施形態の断面斜視図。
【図9】本発明の吸着床の一実施形態の断面斜視図。
【図10A】本発明の吸着床の一実施形態の断面斜視図。
【図10B】本発明の吸着床の流体ケーシングの一部分の一実施形態の平面図。
【図10C】本発明の吸着床の乾燥剤シートの一実施形態の平面図。
【図10D】本発明の吸着床の間隔保持材料の一実施形態の平面図。
【図10E】本発明の吸着床の流体ケーシングの一部分の一実施形態の平面図。
【図11】種々の材料の吸収容量を示すグラフ。
【図12】大容量乾燥剤の、水蒸発熱と比較した吸収熱を示すグラフ。
【図13】大容量乾燥剤の吸収容量を温度の関数として示すグラフ。
【図14】本発明の吸着床の一実施形態の断面斜視図。
【図15A】本発明の吸着床の一実施形態の側面図。
【図15B】本発明の吸着床の一実施形態の側面図。
【図16】本発明の吸着床の一実施形態の断面図。
【図17】典型的な吸着冷却システム蒸発器の断面図。
【図18】本発明の吸着冷却システムで使用するための蒸発器の一実施形態の断面図。
【図19】本発明に従って有用な多段吸着冷却システムの一実施形態を示すフロー図。
【図20】本発明に従って有用な多段吸着冷却システムの一実施形態を示すフロー図。
【図21】CaCl2ベースおよびLiClベース乾燥材料についての水吸収等温線を示すグラフ。
【図22】本発明の吸着冷却システムの一実施形態について、冷却レートと冷却容量を時間の関数として示すグラフ。
【図23】本発明の吸着冷却システムの一実施形態について、時間に対する、相対湿度と温度測定値を示すグラフ。
【図24】本発明の吸着冷却システムの一実施形態について、冷却レートと冷却容量を時間の関数として示すグラフ。
【図25】本発明の吸着冷却システムの一実施形態について、冷却レートと冷却容量を時間の関数として示すグラフ。
【図26】本発明の吸着冷却システムの一実施形態について、冷却レートと冷却容量を時間の関数として示すグラフ。
【図27】本発明の吸着冷却システムの一実施形態について、冷却レートと冷却容量を時間の関数として示すグラフ。
【図28】本発明の吸着床の一実施形態について、熱伝達効率と圧力低下を隙間サイズの関数として示すグラフ。
【図29】本発明の吸着冷却システムの一実施形態について、時間に対する、相対湿度と温度測定値を示すグラフ。
【図30】本発明の吸着冷却システムの一実施形態について、冷却レートと冷却容量を時間の関数として示すグラフ。
【図31】単一膜材料試験セル装置の斜視図。
【図32】本発明の吸着冷却システムの一実施形態について、時間に対する、相対湿度と温度測定値を示すグラフ。
【図33】本発明の一実施形態による、蒸発器を通した空気流量に対する水冷却レートを示すグラフ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の室内に冷却された空気を提供する閉ループ吸着冷却システムであって、
蒸発器と、
前記蒸発器と連通する凝縮器と、
前記凝縮器および前記蒸発器と連通する複数の吸着床とを備え、各吸着床は、
i.冷媒入口、冷媒出口、クーラント入口、およびクーラント出口を備える流体不浸透性ケーシングと、
ii.貫通する第1開口および第1吸収面を備える第1乾燥剤シートと、
iii.貫通する第2開口および第2吸収面を備える第1乾燥剤シートと、
iv.前記冷媒入口と前記冷媒出口の間に冷媒流体を流す冷媒流路とを備え、前記冷媒流路は前記第1および第2吸収面によって少なくとも部分的に画定され、
v.前記クーラント入口と前記クーラント出口の間にクーラント流体を流すクーラント流路を備え、前記クーラント流路は前記冷媒流路から流体的に分離され、前記第1および第2乾燥剤シートの少なくとも一方に隣接し、
前記第1および第2開口は前記冷媒流路および前記クーラント流路の一方の一部分である閉ループ吸着冷却システム。
【請求項2】
前記冷媒流体は本質的に水からなり、前記クーラント流体は液相である請求項1に記載の閉ループ吸着冷却システム。
【請求項3】
前記クーラントは内燃機関の冷却で使用される液体である請求項2に記載の閉ループ吸着冷却システム。
【請求項4】
前記第1および第2吸収面は実質的に互いに平行であり、長くて5ミリメートルしか離れていない請求項1乃至3のいずれかに記載の閉ループ吸着冷却システム。
【請求項5】
前記冷媒流路および前記クーラント流路の少なくとも一方は非直線である請求項1乃至4のいずれかに記載の閉ループ吸着冷却システム。
【請求項6】
前記開口は前記冷媒流路の一部分であり、前記冷媒流路は非直線である請求項1乃至4のいずれかに記載の閉ループ吸着冷却システム。
【請求項7】
前記開口は前記クーラント流路の一部分であり、前記クーラント流路は非直線である請求項1乃至4のいずれかに記載の閉ループ吸着冷却システム。
【請求項8】
前記第1および第2乾燥剤シートの少なくとも一方は複数の開口を備え、前記複数の開口は前記冷媒流路および前記クーラント流路の一方の一部分である請求項1乃至5のいずれかに記載の閉ループ吸着冷却システム。
【請求項9】
前記蒸発器、前記凝縮器、および前記複数の吸着床のうちのいずれの中の圧力も、101.3kPa(14.7psig)を超えない請求項1乃至8のいずれかに記載の閉ループ吸着冷却システム。
【請求項10】
前記第1乾燥剤シートと前記第2乾燥剤シートとの間に配設された第3乾燥剤シートをさらに備え、前記第3乾燥剤シートは第3開口を備え、前記第3開口は、前記冷媒流路および前記クーラント流路の一方の一部分である請求項1乃至9のいずれかに記載の閉ループ吸着冷却システム。
【請求項11】
前記クーラント流路の少なくとも一部分は前記第1乾燥剤シートと前記第3乾燥剤シートとの両方に隣接する請求項10に記載の閉ループ吸着冷却システム。
【請求項12】
前記第1乾燥剤シートは、塩化リチウム、塩化カルシウム、およびその混合物からなる群から選択された金属塩によって含浸された炭素を含む請求項1乃至11のいずれかに記載の閉ループ吸着冷却システム。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載の閉ループ吸着冷却システムを備える多段吸着冷却システム。
【請求項14】
車両の内部に冷却された空気を提供する方法であって、
熱伝導性側壁を備える蒸発器において、水ベースの冷媒を蒸発させる工程と、
前記熱伝導性側壁のすぐ近くに空気を流す工程であって、それによって、冷却された空気を生成する流す工程とを含み、
前記水ベースの冷媒を吸収器において吸収する工程であって、前記吸収器は、
i.金属塩によって含浸された炭素を含む複数の乾燥剤シートを備え、前記複数の乾燥剤シートのそれぞれは少なくとも1つの開口を備え、
ii.冷媒流路から流体的に分離されたクーラント流路を備え、前記少なくとも1つの開口は前記クーラント流路および前記冷媒流路の一方の一部分である、吸収する工程と、
前記車両の内部に前記冷却された空気を提供する工程とを含む方法。
【請求項15】
前記クーラント流路を通して熱い液相クーラントを循環させる工程と、
前記水ベースの冷媒を凝縮させる工程と、
前記凝縮させた水ベースの冷媒を前記蒸発器に供給する工程とをさらに含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記クーラント流路を通して冷たいクーラントを循環させる工程をさらに含む請求項14及び15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記冷たいクーラントを循環させる工程および前記吸収する工程は少なくとも部分的に重なる請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記冷たいクーラントは液相にある請求項16及び17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
熱い液相クーラントを、前記クーラント流路を通して循環させる工程をさらに含み、前記冷たいクーラントを循環させる工程および前記熱い液相クーラントを循環させる工程は、重ならない請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記吸収器は第1吸収器であり、前記クーラント流路は第1クーラント流路であり、
前記吸収する工程の間に冷たいクーラントを、前記第1吸収器の前記第1クーラント流路を通して循環させる工程と、
熱い液相クーラントを第2吸収器の第2クーラント流路を通して循環させる工程とをさらに含み、前記熱い液相クーラントを循環させる工程および前記冷たいクーラントを循環させる工程は、少なくとも部分的に重なる請求項14乃至19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記冷たいクーラントを第3吸収器の第3クーラント流路を通して循環させる工程をさらに含む請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記吸収する工程の間に、前記冷たいクーラントを、第3吸収器の第3クーラント流路を通して循環させる工程をさらに含む請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記蒸発器は第1蒸発器であり、
前記車両の内部に前記冷却された空気を提供する工程の前に、第2蒸発器に近接して前記空気を流す工程をさらに含み、前記第1蒸発器は第1吸着冷却システムの要素であり、前記第2蒸発器は第2吸着冷却システムの要素であり、前記第1および第2吸着冷却システムは、多段吸着冷却システムの一部分である請求項14乃至22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
車両の室内に冷却された空気を提供する吸着冷却システムであって、
冷媒源と、
吸収器と、
前記冷媒源に流体接続された薄膜蒸発器であって、
i.蒸気浸透性で、かつ、液体不浸透性の膜材料のシートと、
ii.前記膜材料の第1面に近接した空気流チャネルと、
iii.前記膜材料の第2面に近接した冷媒流チャネルと、
iv.前記冷媒流チャネルに近接した熱伝導性側壁とを備える、薄膜蒸発器と、
前記車両の前記室内に流体接続された室内空気流路とを備え、前記室内空気流路の一部分は、前記熱伝導性側壁に近接している吸着冷却システム。
【請求項1】
車両の室内に冷却された空気を提供する閉ループ吸着冷却システムであって、
蒸発器と、
前記蒸発器と連通する凝縮器と、
前記凝縮器および前記蒸発器と連通する複数の吸着床とを備え、各吸着床は、
i.冷媒入口、冷媒出口、クーラント入口、およびクーラント出口を備える流体不浸透性ケーシングと、
ii.貫通する第1開口および第1吸収面を備える第1乾燥剤シートと、
iii.貫通する第2開口および第2吸収面を備える第1乾燥剤シートと、
iv.前記冷媒入口と前記冷媒出口の間に冷媒流体を流す冷媒流路とを備え、前記冷媒流路は前記第1および第2吸収面によって少なくとも部分的に画定され、
v.前記クーラント入口と前記クーラント出口の間にクーラント流体を流すクーラント流路を備え、前記クーラント流路は前記冷媒流路から流体的に分離され、前記第1および第2乾燥剤シートの少なくとも一方に隣接し、
前記第1および第2開口は前記冷媒流路および前記クーラント流路の一方の一部分である閉ループ吸着冷却システム。
【請求項2】
前記冷媒流体は本質的に水からなり、前記クーラント流体は液相である請求項1に記載の閉ループ吸着冷却システム。
【請求項3】
前記クーラントは内燃機関の冷却で使用される液体である請求項2に記載の閉ループ吸着冷却システム。
【請求項4】
前記第1および第2吸収面は実質的に互いに平行であり、長くて5ミリメートルしか離れていない請求項1乃至3のいずれかに記載の閉ループ吸着冷却システム。
【請求項5】
前記冷媒流路および前記クーラント流路の少なくとも一方は非直線である請求項1乃至4のいずれかに記載の閉ループ吸着冷却システム。
【請求項6】
前記開口は前記冷媒流路の一部分であり、前記冷媒流路は非直線である請求項1乃至4のいずれかに記載の閉ループ吸着冷却システム。
【請求項7】
前記開口は前記クーラント流路の一部分であり、前記クーラント流路は非直線である請求項1乃至4のいずれかに記載の閉ループ吸着冷却システム。
【請求項8】
前記第1および第2乾燥剤シートの少なくとも一方は複数の開口を備え、前記複数の開口は前記冷媒流路および前記クーラント流路の一方の一部分である請求項1乃至5のいずれかに記載の閉ループ吸着冷却システム。
【請求項9】
前記蒸発器、前記凝縮器、および前記複数の吸着床のうちのいずれの中の圧力も、101.3kPa(14.7psig)を超えない請求項1乃至8のいずれかに記載の閉ループ吸着冷却システム。
【請求項10】
前記第1乾燥剤シートと前記第2乾燥剤シートとの間に配設された第3乾燥剤シートをさらに備え、前記第3乾燥剤シートは第3開口を備え、前記第3開口は、前記冷媒流路および前記クーラント流路の一方の一部分である請求項1乃至9のいずれかに記載の閉ループ吸着冷却システム。
【請求項11】
前記クーラント流路の少なくとも一部分は前記第1乾燥剤シートと前記第3乾燥剤シートとの両方に隣接する請求項10に記載の閉ループ吸着冷却システム。
【請求項12】
前記第1乾燥剤シートは、塩化リチウム、塩化カルシウム、およびその混合物からなる群から選択された金属塩によって含浸された炭素を含む請求項1乃至11のいずれかに記載の閉ループ吸着冷却システム。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載の閉ループ吸着冷却システムを備える多段吸着冷却システム。
【請求項14】
車両の内部に冷却された空気を提供する方法であって、
熱伝導性側壁を備える蒸発器において、水ベースの冷媒を蒸発させる工程と、
前記熱伝導性側壁のすぐ近くに空気を流す工程であって、それによって、冷却された空気を生成する流す工程とを含み、
前記水ベースの冷媒を吸収器において吸収する工程であって、前記吸収器は、
i.金属塩によって含浸された炭素を含む複数の乾燥剤シートを備え、前記複数の乾燥剤シートのそれぞれは少なくとも1つの開口を備え、
ii.冷媒流路から流体的に分離されたクーラント流路を備え、前記少なくとも1つの開口は前記クーラント流路および前記冷媒流路の一方の一部分である、吸収する工程と、
前記車両の内部に前記冷却された空気を提供する工程とを含む方法。
【請求項15】
前記クーラント流路を通して熱い液相クーラントを循環させる工程と、
前記水ベースの冷媒を凝縮させる工程と、
前記凝縮させた水ベースの冷媒を前記蒸発器に供給する工程とをさらに含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記クーラント流路を通して冷たいクーラントを循環させる工程をさらに含む請求項14及び15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記冷たいクーラントを循環させる工程および前記吸収する工程は少なくとも部分的に重なる請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記冷たいクーラントは液相にある請求項16及び17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
熱い液相クーラントを、前記クーラント流路を通して循環させる工程をさらに含み、前記冷たいクーラントを循環させる工程および前記熱い液相クーラントを循環させる工程は、重ならない請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記吸収器は第1吸収器であり、前記クーラント流路は第1クーラント流路であり、
前記吸収する工程の間に冷たいクーラントを、前記第1吸収器の前記第1クーラント流路を通して循環させる工程と、
熱い液相クーラントを第2吸収器の第2クーラント流路を通して循環させる工程とをさらに含み、前記熱い液相クーラントを循環させる工程および前記冷たいクーラントを循環させる工程は、少なくとも部分的に重なる請求項14乃至19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記冷たいクーラントを第3吸収器の第3クーラント流路を通して循環させる工程をさらに含む請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記吸収する工程の間に、前記冷たいクーラントを、第3吸収器の第3クーラント流路を通して循環させる工程をさらに含む請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記蒸発器は第1蒸発器であり、
前記車両の内部に前記冷却された空気を提供する工程の前に、第2蒸発器に近接して前記空気を流す工程をさらに含み、前記第1蒸発器は第1吸着冷却システムの要素であり、前記第2蒸発器は第2吸着冷却システムの要素であり、前記第1および第2吸着冷却システムは、多段吸着冷却システムの一部分である請求項14乃至22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
車両の室内に冷却された空気を提供する吸着冷却システムであって、
冷媒源と、
吸収器と、
前記冷媒源に流体接続された薄膜蒸発器であって、
i.蒸気浸透性で、かつ、液体不浸透性の膜材料のシートと、
ii.前記膜材料の第1面に近接した空気流チャネルと、
iii.前記膜材料の第2面に近接した冷媒流チャネルと、
iv.前記冷媒流チャネルに近接した熱伝導性側壁とを備える、薄膜蒸発器と、
前記車両の前記室内に流体接続された室内空気流路とを備え、前記室内空気流路の一部分は、前記熱伝導性側壁に近接している吸着冷却システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【公表番号】特表2008−501580(P2008−501580A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527710(P2007−527710)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/020236
【国際公開番号】WO2005/121660
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(502066395)ナノポーア インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】Nanopore Inc.
【住所又は居所原語表記】2501 Alamo Avenue, SE, Albuquerque, New Mexico 87106 U.S.A.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/020236
【国際公開番号】WO2005/121660
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(502066395)ナノポーア インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】Nanopore Inc.
【住所又は居所原語表記】2501 Alamo Avenue, SE, Albuquerque, New Mexico 87106 U.S.A.
【Fターム(参考)】
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