説明

吸着剤含有止血デバイス

本発明は、哺乳動物における創傷を処置するのにより効率的な止血デバイスを製造するための多孔質キャリアとモレキュラーシーブなどの吸着剤との組み合わせを使用する。これらの止血デバイスは、止血を阻害しない添加剤を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、出血を止めるための吸着剤の使用に関する。特に本発明は、従来技術よりも改良された配合による、不織材料又はフィルムなどの吸着媒体に含まれる吸着剤に関する。これらの配合は、吸着剤の止血機能を妨げるかもしれない他の成分を含むことなく、血液の損失を止めるために十分な量の前記吸着剤を含む。
【背景技術】
【0002】
創傷は一般に、その治癒傾向に従って急性又は慢性に分類される。外傷又は手術に由来する急性創傷としては、活動性出血創傷部位(例えば検出可能な、凝固していない血液をもつ創傷)が挙げられる。活動性出血創傷部位の局所的出血を迅速に制御することは、外傷管理、特に軍事訓練又は手術の結果としての外傷の創傷管理において非常に重要である。
【0003】
手作業による圧迫、焼灼又は縫合などの慣用のアプローチは時間がかかることがあり、出血を制御するのに必ずしも効果的とは限らない。米国の軍隊は、かなりの血液の損失を伴う創傷をもたらす戦闘状態に日常的に直面するため、外傷治療は近年非常に注目されてきた。多くの場合、兵士は最初の負傷を乗り切ることができたとしても、失血によって死に至る。外傷治療における止血の中心的な役割を考慮して、迅速に凝固を誘導し、出血を止め、外傷面に強い結合を形成し、かさぶたの形成を促進し、宿主組織と適合できるようにする商品を開発することに多大な配慮が払われてきた。現在では、作用機序によって区別され得る数種のカテゴリーの製品がある。第一のカテゴリーでは、血液から水分を吸収することによって凝固プロセスを促進させる材料が挙げられる。このカテゴリーの商品としては、基本的な綿ガーゼが挙げられる。またこのカテゴリーには、種々の形態のSurgicelTM再生セルロース製品ラインを販売するJohnson&JohnsonのEthicon部門の製品がある。市場には他のセルロースタイプの製品がある。第二のカテゴリーの製品は、凝固酵素活性を増加させ得る特徴を加えることによって、凝固を促進しようとしている。そのような製品としては、トロンビン、フィブリノゲン、没食子酸プロピル、硫酸アルミニウム、完全アセチル化グルコサミン及びε-アミノカプロン酸などのような成分を含むことができる。他の止血剤は、湿潤組織に付着するのが難しく、血餅(clot)が付着することが可能な構造を欠いている。
【0004】
これら従来の製品はそれぞれ、少なくとも一つの側面において不完全である。血液から水分を単に吸収するだけの作用を示す製品は、血小板、赤血球及び血漿などの凝固において有用な血液成分を濃縮するのに特に選択的ではない傾向があるので、凝固を促進する他の製品のようには効果的ではない。第二のカテゴリーの製品は、凝固酵素活性を高めるトロンビン、フィブリノゲン、没食子酸プロピル、硫酸アルミニウム、完全アセチル化グルコサミン及びε-アミノカプロン酸などの成分を添加することによって凝固を促進する。これらの製品は出血を止めるには非常に効果的ではあるが、これらはまた非常に高価であり、貯蔵寿命に制限があり、動物若しくはヒトに由来する成分は病原体を媒介したり、アレルギー反応を起こすメカニズムを示す場合もある。第三の製品カテゴリーにおいて、HemCon社製品は、潜在的にアレルギー副作用があり、貯蔵寿命が短く、高コストである。Z-Medica’s QuikClot社製品には、吸収熱が高いためにユーザーに顕著な不快症状を引き起こすという問題があり、身体の熱に敏感な部分での使用が制限されている。QuikClot社製品の一つは最適ではない。というのも、該製品を文字通り創傷部に注ぎ、そしてその部分から注意深く洗い流さなければならないからである。さらに、従来製品の製剤の中には、製品の全体的な止血能力に逆効果となる可能性がある一種以上の成分を含むものがあり、個別に試験すると、実際には出血を助長するかもしれないことが知見されている。
【0005】
生体適合性であり、優れた止血作用を提供し、且つ様々な創傷からの出血を制御するのに使用するのに適した、種々の形態に成形可能な止血材料がいまだに求められている。この種の止血材料は、外科並びに外傷処置の分野のいずれにおいても求められている。血管手術においては、血管が関与するため、出血は特に問題である。心臓外科手術では、体外バイパスにより誘発された凝血障害により複雑化した複数の血管吻合及びカニューレ挿入部位は出血を引き起こすことがあるが、局所的な止血鉗子により制御できるだけである。骨、硬膜外、及び/又は硬膜内出血や脊髄からの出血の制御が縫合も焼灼もできない場合、脊髄手術の間に迅速且つ有効に止血すると、神経根への損傷の可能性を最少化し、且つ手術時間を短縮することができる。例えば生体肝移植手術や、癌性腫瘍の除去などの肝臓手術においては、持続性出血の相当なリスクがある。有効な止血材料があれば、そのような手術で患者予後を著しく高める。例えば抜歯などの歯科処置及び口腔外科手術、並びに擦過傷、火傷などの処置など、大量の出血が起こらないような状況でさえも、有効な止血材料は望ましいことがある。
【0006】
使用し易い形状で供給し得る効果的な止血製品に対する需要が依然として存在する。近年まで、多孔質キャリア又は多孔質物品、例えばモレキュラーシーブ及び親水性オキシドを含有する不織繊維物品を、止血デバイスとして使用することは開示されていなかった。モレキュラーシーブを含む該止血物品は、適用容易性、効果的な止血、及び高い吸着熱による患者の高い温度上昇への暴露の軽減をもたらすことが見出された。これらの製品は、粉末化モレキュラーシーブや親水性オキシド製品を使用できなかった外科用途にも有用である。米国特許出願公開第2007/0154509号(特許文献1)に開示されているような従来の配合は、止血製品として使用するための不織材料の製造時における微粒子の損失を減少させるための二種類の歩留向上剤(retention aids)の使用を教示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0154509号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
吸着剤と多孔質キャリア(該キャリアは、不織繊維質製品、シート又はキャストフィルムである。)とを含む止血品を使用することにより、本発明は、上記製品の実質的に全ての欠点に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
使用される配合の変更により、より有効な止血製品となる。従来の配合では、特定の成分が包含されると、凝固時間に抗凝血作用があったが、本発明では、使用される全ての成分は、止血メカニズムの進行を促進する。特定の高分子電解質は、止血応答を促進しつつ、歩留向上剤として有効であることが見出された。これらの例としては、カチオン及びアニオン性高分子電解質が挙げられる。例えば15〜40%の間の帯電率(帯電されている全モノマーの百分率として)及び2〜20Mg/molの分子量(ここでMgはメガグラムである)を有する四級アンモニウムカチオン基をもつカチオン性ポリアクリルアミドなどのカチオン性高分子電解質が好ましい。20%〜50%の間の帯電率及び15〜40Mg/molの分子量を有するアクリル酸基をもつアニオン性ポリアクリルアミドなどのアニオン性高分子電解質も有効であることが見出された。
【0010】
活性成分は、多孔質キャリア中に完全に含有されて、創傷部から製品を除去するための最小限の洗浄を許容する。
多孔質キャリアが、フィブリル化された(fibrillated)、高い表面積の繊維と接触性止血メカニズムを顕著に促進する材料を含むシート(及び吸着剤)である場合、他の製品中に見出される凝固作用を上回るより効率的な凝固作用の促進がもたらされ得る。不規則な表面に適応する多孔質シートを含む吸着剤は、創傷及び外傷に接近しにくい場合でも容易に使用することができる。殺菌活性などの創傷被覆材に望ましい他の特徴は、直接シートに又は、そのようなシートを含む被覆材に含ませることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
止血とは、正常な血管収縮、異常な閉塞又は凝固や外科的手段によるものであるか否かにかかわらず、出血を阻止することである。凝固による止血(本発明の製品の目的である)は、血漿凝固及び線維素溶解性タンパク質との相互作用、血小板及び血管系に依存する。本発明は、出血を処置又は防止するための止血システムと物理的に相互作用する組成物及び材料を提供する。特に好ましい態様の組成物及び材料は、血液を凝固させる。
【0012】
創傷へ止血剤を有効に送達することは、動脈又は静脈出血を特徴とする外傷の処置、並びに広い表面積、激しい動脈又は静脈出血、滲出性外傷など、出血の制御が問題となる外科手術、及び臓器裂創又は切除において特に望ましい。好ましい態様の組成物及び材料は、適用及び除去し易い、生体吸着能、縫合可能性、抗原性及び組織反応性などを含むが、これらに限定されない、創傷に止血剤を送達するのに多くの好都合な点を有することができる。
【0013】
創傷の性質及び使用する処置法に応じて、本発明のデバイスは、湿式堆積法(wet laid processing)により製造し得る種々の形態を使用することができる。例えばパフ、ボール、フリース又はスポンジ形状は、動脈又は静脈からの活動性出血又は、腹腔鏡手術の間の体内出血の制御に好ましい場合がある。滲出性脳損傷に日常的に直面する神経外科手術では、シート状止血製品が好ましい場合がある。同様に、特に肝臓の腫瘍外科手術では、腫瘍床内又はその上において滲出を制御するシート状又はスポンジ状の止血製品を使用するのが好ましい場合がある。皮膚科用途では、シート状が好ましい場合がある。血管の刺し傷をふさぐ場合には、パフ状が通常好ましい。種々の形状の送達及び取り扱い上の特性の違いにもかかわらず、止血剤を患部に効果的に配置し、血小板粘着、血小板活性化及び血液凝固により止血栓形成を迅速に開始するのにデバイスは効果的である。
【0014】
吸着剤用の多孔質キャリアとして使用し得る材料は、有効量の吸着剤−シート複合体を支持することができ、且つ処置されている特定の創傷に適用し得る物品である。多孔質キャリアは天然又は合成材料から構成されていてもよく、織繊維製品又は不織繊維物品であってよい。吸着剤を含有する不織物品は、テキスタイル型プロセス、紙型プロセス又は押出型プロセス、及びプロセスの組み合わせ又はハイブリッドにより製造することができる。製品は、セルロース、アラミド、アクリル、ポリエステル、ポリオレフィン、例えばフィブリル化ポリエチレン及びポリプロピレン、SpectraTMポリエチレン(Honeywell製品)、化学的に変性したセルロース繊維、例えばリヨセル(lyocell)及びレーヨン、並びに合成ポリマー、例えばZylonTM(Zylonはその化学構造であるポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール)にちなんでPBOとも呼ばれる)及びVectran(登録商標)(液晶ポリマー(LCP))などの種々の繊維を使用して製造することができる。種々のバインダーもシート製造に使用することができ、その一部は凝固促進剤の放出を促進することができる官能基を有し得る。
【0015】
本止血製品を形成するために使用し得る吸着剤は、血液凝固において有効である吸着剤のいずれかである。これらの吸着剤の非限定的な例は、ゼオライトモレキュラーシーブ及び非ゼオライトモレキュラーシーブである。ゼオライトは、微結晶質であり、且つ頂点を共有するAlO2及びSiO2四面体から形成された三次元オキシドフレームワークをもつ結晶質アルミノケイ酸塩組成物である。天然及び合成ゼオライトの両方を使用することができる。使用し得るゼオライトの非限定的な例としては、構造型X、Y、A、ベータのゼオライト族がある。これらのゼオライトには、合成ゼオライト及び、Caなどの他のカチオンと交換したものが含まれる。非ゼオライトモレキュラーシーブは、本質的なフレームワーク構成成分としてAlO2及びSiO2四面体を両方とも含むわけではないが、ゼオライトのイオン交換及び/又は吸着特性を示すものがある。他の無機材料も使用してよい。非限定的な例としては、モンモリロナイト及びカオリンクレー、合成及び天然の多孔質及び非多孔質シリカ、合成及び天然ケイ酸塩、ケイ酸塩及びリン酸塩ガラス粉末、繊維又は粒体、並びに特定の金属酸化物、例えば酸化鉄又は酸化ゲルマニウムが挙げられる。
【0016】
本発明の幾つかの態様において、選択された吸着剤は、効果的ではあるが、使用時に高い吸収熱をもたらすかもしれない他の吸着剤よりも吸着熱が低い。吸着剤は、1重量%〜95重量%の範囲の広範囲の濃度でシートに充填することができる。シートを製造するのに使用される繊維及び吸着剤のサイズは、ナノスケール材料と同程度から出発して、形成されたビーズ及び破砕押出物まで広範囲を変動し得る。
【0017】
好ましくは、本発明で使用する繊維は、高充填量の吸着剤及び他の添加剤を保持する能力並びに表面積を増加させるためにフィブリル化されている。好適なフィブリル形成性熱可塑性ポリマーとしては、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、ブタジエン、塩化ビニリデン、エチレン及びプロピレンなるポリマー及びコポリマー、並びに縮合ポリマー[例えばポリアミド及びポリエステル類(例えばグリコールと芳香族ジカルボン酸のポリエステル)の縮合ポリマー]を挙げることができる。繊維形成性熱可塑性ポリマー材料のブレンドも使用することができる。天然繊維又は、セルロース、レーヨン及びリヨセルなどの天然繊維から化学的に誘導した繊維もフィブリル化することができる。
【0018】
本発明の多孔質キャリアを含む単一の止血基材又は止血基材の組み合わせを使用することができる。パフ、フリース、繊維又はシートなどの種々の基材形が好ましい。本明細書において、「フリース」なる用語は、通常の意味のとおり幅広い意味を有する用語として使用され、柔軟性、可鍛性などを示すように処理された繊維状材料のいずれをも含む。フリースは、不織形状又はシート形状で提供することができる。繊維状フリースは、その止血特性を促進するいずれかの好適な方法で処置又はコーティングできることは理解すべきである。「パフ」なる用語も、その通常の意味のとおりに幅広い意味を有する用語として使用され、柔軟なボール又はパッドに配列された繊維材料のいずれも含む。パフはシートを使用して構築することができる。「スポンジ」なる用語は、その通常の意味のとおり幅広い意味を有する用語として使用され、血液などの流体を吸収するように形成された材料を包含する。スポンジは、フリース、パフ、繊維、シートなどを単独で又は別の材料と組み合わせて使用して構成することができるが、これらに限定されない。種々の基材形成材料の均質混合物を使用することができ、あるいはまた、二種以上の種々に形成された基材から複合基材を製造することができる。特定の態様において、本発明の吸着性止血剤に補助的な止血剤を添加することも望ましい。好ましい態様の基材上には、いずれの好適な止血剤を付着させてもよい。使用し得る止血剤の中には、生体吸収性微孔質多糖ミクロスフィア、凝固因子濃縮物、組み換え因子VIIa(NOVOSEVEN:登録商標);アルファナート(alphanate)FVIII濃縮物;バイオクレート(bioclate)FVIII濃縮物;モノクレート(monoclate-)P FVIII濃縮物;ヘマーテ(haemate)P FVIII;フォン・ヴィレブランド因子濃縮物;ヘリキセート(helixate)FVIII濃縮物;ヘモフィル(hemophil)-M FVIII濃縮物;フメート(humate)-P FVIII濃縮物;ハイエート(hyate)-C.RTM;ブタFVIII濃縮物;カオーテ(kaote)HP FVIII濃縮物;コゲネート(kogenate)FVIII濃縮物;組み換えFVIII濃縮物;モノニン(mononine)FIX濃縮物及びフィブロガンミン(fibrogammin)P FXIII濃縮物がある。そのような止血剤は、いずれの好適な形状(粉末、液体、純粋形、好適な賦形剤で、好適な支持体上でなど)で基材に適用することができる。
【0019】
単一の止血剤又は止血剤の組み合わせを使用することができる。基材上の止血剤の好ましい充填レベルは、基材及び止血剤の性質、基材の形状、並びに処置すべき創傷の性質に依存して変動し得る。
【0020】
止血性布帛はシートからも製造することができる。布帛の一面は滑面であり、布帛のもう一面は粗面であるのが通常好ましい。しかしながら特定の態様において、不規則な創傷又は深い創傷、例えば潜在的に致命的な鼠径部の外傷などとの関連で使用する場合などは、二つの粗面をもつ布帛が好ましい。好ましい態様では、粗面を創傷に露出させて、創傷と繊維との接触を最大化して、改善された止血効果をもたらし、創傷部によく接触させ、並びに創傷部から流れる血液と吸着剤とを接触させることができる。吸着剤を充填した繊維を含む止血性繊維の製造において、得られた布帛は、1〜95重量%の吸着剤、好ましくは5〜90重量%の吸着剤、最も好ましくは50〜80重量%の吸着剤を含むのが通常、好ましい場合がある。しかしながら特定の態様では、より高レベル、又はより低レベルの吸着剤も好ましい。追加の止血剤を使用したり、他の成分を繊維又は他の基材に添加する場合には、異なる充填レベルが好ましいかもしれない。
【0021】
止血布帛は、事前に選択したサイズのシート形状で提供することができる。あるいは、より大きなシートの止血布帛をカット、トリミング又は折りたたんで、創傷に適したサイズ及び形状にすることができる。あるいは、トリミングしたシートを多層又はラミネートに積み重ねることができる。止血布帛は、皮膚又は局所適用の場合、生体適合性を示すが、十分な止血が達成されたら創傷部から除去することができるか、又は創傷部が治癒するまでそこに置いておくことができる。止血布帛は、人工皮膚としても有用であり、及び/又は抗生物質的特性を提供することができる。止血スポンジは、生体適合性材料又は生体吸収性材料から、多孔質スポンジを製造するための当業界で公知の方法によって製造することができる。そのような方法は通常、ポリマー材料、架橋剤及び発泡剤の溶液の調製を包含する。スポンジは、スポンジを形成する間、吸着性止血剤を充填することができる。
【0022】
創傷部に止血剤を直接適用することが通常好ましく、止血材料は多くのタイプの創傷部に十分に付着性を示すものの、特定の態様では、多孔質織物、不織物又はフィルムなどの他の成分を含む創傷被覆材に止血材料を配合することが好ましい。
【0023】
止血材料を確実に創傷部に貼り付けておくために、例えば止血構造体の一方の面の端部に沿って、好適な接着剤を使用し得る。皮膚と結合を形成するのに適したいずれの接着剤を使用してもよいが、通常、感圧接着剤を使用するのが好ましい。感圧接着剤は通常、軽く圧力を適用したときに基材に接着するが、剥がしたときに残渣が残らない接着剤として定義される。感圧接着剤としては、溶剤に溶解させた液状接着剤(solvent in solution adhesive)、ホットメルト接着剤、水性エマルション接着剤、カレンダー加工性(calenderable)接着剤、及び放射線硬化性接着剤が挙げられるが、これらに限定されない。溶液接着剤は、その適用容易性及び多様性のため、大半の用途において好ましい。ホットメルト接着剤は通常、樹脂粘着ブロックコポリマーをベースとする。水性エマルション接着剤としては、アクリルコポリマー、ブタジエンスチレンコポリマー及び天然ゴムラテックスを使用して製造したものが挙げられる。放射線硬化性接着剤は通常、アクリルオリゴマー及びモノマーからなり、紫外線に暴露されると硬化して感圧性接着剤を形成する。
【0024】
感圧接着剤に最も使用されるエラストマーとしては、天然ゴム、スチレン-ブタジエンラテックス、ポリイソブチレン、ブチルゴム、アクリル及びシリコーンが挙げられる。好ましい態様では、アクリルポリマー又はシリコーンベースの感圧接着剤を使用する。アクリルポリマーは通常、アレルギー誘発性が低レベルで、皮膚からきれいに剥がすことができ、匂いが少なく、機械的及び化学的刺激の度合いが低い。医薬グレードのシリコーン感圧接着剤は、生体適合性を有することからより好ましい。
【0025】
好ましい態様の創傷被覆材で使用するための感圧接着剤としての適性に影響を与える因子の中でも、皮膚に刺激を与える成分が存在しないこと、接着剤が皮膚からきれいに剥がせるような十分な粘着強度、過剰に機械的に皮膚に刺激を与えること無く皮膚の動きに適応し得る能力及び、体液に対する優れた耐性が挙げられる。好ましい態様では、感圧接着剤はブチルアクリレートである。ブチルアクリレート感圧接着剤は通常、多くの用途で好ましいが、皮膚との結合に適した任意の感圧接着剤を使用し得る。そのような感圧接着剤は当業界で公知である。
【0026】
上記のとおり、好ましい態様の止血材料は、通常、接着剤(例えば、感圧接着剤)が必要でないような創傷に対して優れた粘着性を示す。しかしながら、使用を容易にするため、及び、創傷部に適用後、固定された位置に止血材料が確実に残ったままであるように、感圧接着剤を使用することが好ましい。
【0027】
好ましい態様の止血布帛及び他の止血材料は、通常、優れた機械的強度及び創傷保護を示すが、特定の態様において、止血材料の一方の側に裏打ち材又は他の材料を使用するのが好ましい。例えば、二層以上を含む複合体を使用することができ、ここで層の一方は止血材料であり、もう一方は例えばエラストマー層、ガーゼ、水蒸気透過性フィルム、防水フィルム、織布又は不織布、メッシュなどである。次いで層は、接着剤(例えば感圧接着剤、ホットメルト接着剤、硬化性接着剤などの接着剤)、並びにラミネート化などの熱又は圧力の適用、縫い合わせ、鋲、他のファスナーなどの物理的結合など、いずれの好適な方法を使用して結合することもできる。
【0028】
凝固を促進するために、Ca++などの追加的な機能性イオンをイオン交換することにより、繊維及びフィラーの表面帯電特性について利点を得ることができる。アニオン高分子電解質を添加すると、イオン交換能を加えることができる。繊維組成物及びそのフィブリル化率は、凝固を促進且つ最適化するために変動させることができる。追加的な生体活性フィラー、例えばCa、Agイオンを放出する活性ガラスもシートに配合することができる。
【0029】
本発明のより効果的な態様の一つでは、製紙プロセスを使用して製造した不織シートに5Aゼオライト粉末とミクロフィブリル化アラミド繊維を含めることがある。シートのゼオライト充填量は、65〜75重量%の範囲である。シートは、窒素雰囲気下、所定温度で活性化され、密封気密容器に貯蔵される。場合により、シートは、所定温度で活性化することなく水和形で使用することができる。次いでシートを容器から取り出し、出血を止めるために創傷部に直接適用する。いったん出血が止まり、患者が安定したら、創傷部をさらにきれいにする。
【0030】
本発明の止血デバイスは、出血(例えば、実質器官の出血)を効果的に制御するように機能するために、追加的な止血剤を必要としない。その結果、止血剤をさらに含まない本発明の止血デバイスは優れた熱安定性を持ち、冷蔵及び有効性の損失なく数ヶ月〜数年間貯蔵することができる。本発明のそのような態様は種々の医学的状況に有用であり、特に戦場及び救急での使用に有用である。というのも、冷蔵の必要すらなく、長期間、すぐに使える状態でそれぞれを貯蔵することができるからである。本発明のそのようなデバイスは、匹敵し得るレベルの止血活性を達成するための更なる止血剤を含む止血デバイスと比較して、製造及び/又は使用にかかる費用も安い。特定の態様において、本発明の止血デバイスはさらに、治療的有効量の一種以上の治療薬(例えば創傷治癒を促進する薬剤)を含む。創傷治癒を促進する薬剤としては、抗炎症薬、例えば外科的損傷領域に白血球遊走を阻止する薬剤、抗ヒスタミン;フリーラジカル形成を阻害する薬剤;及び静菌剤又は殺菌剤を含む。通常、治療的有効量とは、処置される特定の状態の開始を遅延させる、進行を阻害する、又は完全に停止させるのに必要な量を意味する。通常、治療的有効量は、患者の年齢、症状、性別並びに患者の症状の性質及び程度により変動するが、これらは全て当業者により決定することができる。本発明の止血デバイスに含まれる治療薬の用量は、処置される特定の患者及び症状に適合するように調整することができる。本明細書中で使用される「創傷治癒を促進する薬剤」なる用語は、薬剤を投与することによって創傷の自然な治癒プロセスを促進する薬剤を指す。創傷治癒を促進する薬剤としては、抗炎症薬、フリーラジカル形成を阻害する薬剤及び、静菌剤又は殺菌剤を含む。
【0031】
抗炎症薬はin-vivoで免疫応答を阻害又は予防する薬剤であり、(i)外科的損傷領域に白血球遊走を抑制する薬剤(白血球遊走防止薬)、及び抗ヒスタミンが挙げられる。代表的な白血球遊走防止薬としては、スルファジアジン銀、アセチルサリチル酸、インドメタシン及びナファザトロムが挙げられる。代表的な抗ヒスタミンとしては、ピリラミン、クロロフェニラミン、テトラヒドロゾリン、アンタゾリン及び他の抗炎症薬、例えばコルチゾン、ヒドロコルチゾン、ベータ-メタゾン、デキサメタゾン、フルオコルトロン、プレニドソロン、トリアムシノロン、インドメタシン、スリンダク、その塩、及びその対応するスルフィドなどが挙げられる。
【0032】
フリーラジカル形成を阻害する代表的な薬としては、酸化生成物の形成及び/又は作用を阻害する抗酸化物質、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、b-カロテン、アスコルビン酸、トランスフェリン、フェリチン、セルロプラスミン及びデスフェリオキサミンα-トコフェノールが挙げられる。
【0033】
代表的な静菌剤又は殺菌剤としては、抗菌物質、例えばβ-ラクタム抗生物質、例えばセフォキシチン、n-ホルムアミドイルチエナマイシン及び他のチエナマイシン誘導体、テトラサイクリン類、クロラムフェニコール、ネオマイシン、グラミシジン、バシトラシン、スルホンアミド類;アミノグリコシド抗生物質、例えばゲンタマイシン、カナマイシン、アミカシン、シスコマイシン及びトブラマイシン;ナリジクス酸及び類似体、例えばノルフロキシカン及びフルオロアラニン/ペンチジドンの抗菌性組み合わせ;ニトロフラゾンなどが挙げられる。
【0034】
本発明の止血デバイスは、一種以上の治療薬を単独で、又は一種以上の止血剤と組み合わせて含有することができる。
場合により、種々の添加剤を、これらのデバイスの止血活性を実質的に減少させることなく本発明の止血デバイスに配合することができる。本明細書において使用される「医薬的に許容可能なキャリア」なる用語は、ヒトに投与するのに好適な一種以上の適合性の固体又は液体フィラー、希釈剤又はカプゼル形成性物質を意味する。「キャリア」なる用語は、活性成分と組み合わさって投与し易くする天然又は合成の有機又は無機成分を指す。医薬組成物の成分は、所望の止血活性を実質的に低下させるような相互作用が全くないような状態で、本発明の織物シート内で、及び互いに混ざり合うようにすることも可能である。
【0035】
特殊紙製造業界で、公知の添加剤(例えば歩留向上剤)及びバインダーをモレキュラーシーブに一緒に又は連続して添加して、繊維マトリックス内でモレキュラーシーブの保持を促進し、紙の強度を改善する。そのような添加剤としては、スターチ、ポリ-ビニルアルコール(PVA)、アクリルエマルション、ポリエチレンオキシド、フェノール樹脂及び微結晶質セルロース(例えばカルボキシメチルセルロース)が挙げられる。有機添加剤は、通常、200℃ベースで繊維+モレキュラーシーブの5重量%未満の量で添加する。これらの添加剤は、精製繊維と一緒に補給タンク(makeup tank)に添加するか、及び/又はヘッドボックスに添加することができる。好ましい軟凝集系は、15〜40%の帯電率(帯電されている全モノマーの百分率)と、2〜20Mg/mol(ここでMgはメガグラムである)の間の分子量をもつ四級アンモニウムカチオン基をもつカチオン性ポリアクリルアミドなどのカチオン高分子電解質を含む。本明細書の実施例で使用する具体的なカチオン性高分子電解質は、Percol 292(21.4%カチオン帯電率、及び5〜7Mg/molの分子量を有する)と、Percol 175(21.6%カチオン帯電率、及び9〜11Mg.molの分子量を有する)である。さらに、帯電率20〜50%及び分子量15〜40Mg/molを有するアクリル酸基をもつアニオン性ポリアクリルアミドなどのアニオン性高分子電解質を使用することができる。本発明で有用な具体的なアニオン性ポリアクリルアミドは、Percol E38であり、これは30%のアニオン帯電率を有し、分子量は28〜30Mg/molである。これら三種類の全てのPercolポリアクリルアミドは、Ciba Specialty Chemical Productsから入手可能である。
【実施例】
【0036】
二成分歩留向上剤系を有する止血紙の製造:
以下の重量は、実際の試薬の重量である(水を含む)。
Twaron 1094(31.4%固体) 3g
CaAゼオライト(82.31%固体) 4.68g
Alcofix 269(4%溶液) 0.45g
Percol 38(0.325%溶液) 1.67g
Twaronを、Adirondack Tappi粉砕機、30,000回転で粉砕し、ゼオライトを添加し、続いて10,000回転させ、Alcofix 269(ポリ-DADMAC;ポリ-ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)を添加し、2リットル容積中で10,000回転した。この2リットルを3リットルに希釈し、Techpap滞留試験機に注いだ。Percol 38(アニオン性ポリアクリルアミド、又はC-PAM)を低剪断200〜300rpmで攪拌下で添加し、真鍮で形成したワイヤ上にシートをキャスティングし、ポリエステル吸い取り紙上に広げ、ロール圧縮で脱水した。このシートをシートドライヤー中、〜80℃/30分乾燥した。
【0037】
単一成分歩留向上剤系を有する止血紙の製造:
以下の重量は、8”の丸いハンドシートを製造するための実際の試薬重量である(水を含む)。
Twaron 1094(31.4%固体) 2.49g
CaAゼオライト(82.31%固体) 3.41g
Percol 292(0.05%溶液) 11.86g
Twaronアラミドパルプは、Adirondack Tappi粉砕機、30,000回転で粉砕し、次いでゼオライトを添加し、続いて2リットル容積中で10,000回転させた。この2リットルを3リットルに希釈し、Techpap滞留試験機に注いだ。Percol 292(カチオン性ポリアクリルアミド、又はC-PAM)を低剪断200〜300rpmで攪拌下で添加し、ポリエステルワイヤ[Albany Internaional JS29(1442)]上にシートをキャスティングし、ポリエステル吸い取り紙上に広げ、圧力ロールで脱水した。このシートをシートドライヤー中、〜80℃/30分乾燥した。
【0038】
単一成分歩留向上剤系をもつ止血紙の製造:
以下の重量は、8”の丸いハンドシートを製造するための実際の試薬重量である(水を含む)。
Twaron 1094(31.4%固体) 3.12g
CaAゼオライト(82.31%固体) 4.24g
Percol 175(0.05%溶液) 19.66g
Twaronアラミドパルプは、Adirondack Tappi粉砕機、30,000回転で粉砕し、次いでゼオライトを添加し、続いて2リットル容積で10,000回転させた。この2リットルを3リットルに希釈し、Techpap滞留試験機機に注いだ。Percol 175(カチオン性ポリアクリルアミド、又はC-PAM)を低剪断200〜300rpmで攪拌下で添加し、ポリエステルワイヤ[Albany Internaional PB577(1405)]上にシートをキャスティングし、ポリエステル吸い取り紙上に広げ、圧力ロールで脱水した。このシートをシートドライヤー中、〜80℃/30分乾燥した。
【0039】
以下のプロトコルを使用して血液サンプルを試験した。
使用した装置はHaemoscope Corp.(イリノイ州モートングローブ)製TEG(登録商標)アナライザーであった。この装置は、最初のフィブリン塊が形成するまでの時間及び最大強度に到達するまでの速度、及びフィブリン塊の安定性を測定し、止血作業をするその能力−不適当な血栓を形成させることなく機械的に出血を遅らせるための能力を測定する。
【0040】
非活性化サンプル:
i.ピペットで360uLを赤い蓋付き試験管からカップにとり、TEG試験を開始する。
活性化サンプル:
i.最初に研究室から試験用のゼオライト含有紙サンプルを入手する。これらは実験前に秤量し、瓶詰めし、オーブンで活性化し(必要に応じて)、そして蓋をかぶせるべきである。以下のゼオライト含有紙実験に関しては、紙サンプルは、活性化も、TEG試験前のオーブン乾燥も行われなかった。ゼオライト含有紙サンプルは、試験しなければならない量の二倍で瓶に詰めた。例えばチャネル2がゼオライト含有紙5mgと血液を試験する場合、チャネル2で瓶に秤量した量は10mgである。10mgサンプルに関しては、20mgを秤量した。以下の理由を参照された。
【0041】
ii.活性化実験に関しては、三つのゼオライト含有紙サンプルを一度に試験した。添加剤を全く含まない非活性化血液サンプルは第一のチャネルでの実験である。チャネル2、3及び4は、ゼオライト含有紙と接触させた血液サンプルである。
【0042】
iii.試験の準備ができたら、ピペットの一つ720uLに設定し、もう一つを360uLに設定する。赤い蓋付き試験管3つ(ポリプロピレンライニング平滑管、添加物質なし)を準備して採血し、追加の三つの赤い蓋付き試験管を準備して、その中にゼオライト含有紙を入れる。
【0043】
iv.ボランティアから採血し、TEGアナライザーに戻す。血液サンプルの組織因子による汚染を最小化するために集めた最初の試験管を廃棄する。血液サンプルをゼオライト含有紙材料と接触させ、ドナーから集めて4〜5分の経過時間前にTEG試験にかけた。
【0044】
v.瓶1を開け、ゼオライト含有紙を赤い蓋付き試験管に入れる。
vi.直ちに血液720uLを試験管内のゼオライト含有紙に加える。
vii.5回反転させる。
【0045】
viii.血液とゼオライト含有紙混合物360uLをピペットで取りカップに入れる。
ix.TEG試験を開始する。
注釈:血液とゼオライト含有紙との初期混合では比率は二倍である。というのも血液の容積が幾らかバイアル側面で失われ、サンプルが血液を吸収するからである。二倍量を使用することにより、カップ内には血液は少なくとも360uLの血液が確実にある。我々が注目しているゼオライト含有紙と血液との割合は、通常5mg/360ul、10mg/360uL及び30mg/360uLである。
【0046】
以下の表に報告されているR(分)は、TEGアナライザーにより報告される実験開始から血餅の初期形成までの時間である。TEG(登録商標)アナライザーは、4°45’の弧をかいて設定速度で一定に前後に振動させるサンプルカップをもつ。それぞれの回転は10秒間続く。全血サンプル360uLをカップに入れ、ねじり針金につけた固定ピンを血液に浸漬する。最初のフィブリンが形成したら、カップとピンが結合し始め、ピンを血餅と同調させる。ピンの動きの加速は、血餅発生の速度論に応じて変化する係がある。回転しているカップのトルクは、フィブリン-血小板結合がカップとピンとを一緒に結合した後でのみ浸漬されたピンに伝わる。これらのフィブリン-血小板結合の強度は、強い血餅がカップの動きと直接同調してピンを動かすように、ピンの動きの大きさに影響する。従って、出力の大きさは、形成した血餅の強度に直接関連する。血餅が縮むか溶解するにつれて、これらの結合は破壊されて、カップの運動の移動量は小さくなる。ピンの回転運動は、電気シグナルへ機械的-電気的変換器により変換され、これはコンピューターによりモニターすることができる。
【0047】
得られた止血プロフィールは、形成すべき最初のフィブリン鎖形成にかかる時間、血餅形成の速度論、血餅の強度(ずり弾性単位、dyn/cm2)及び血餅の溶解の尺度である。第一のTEG実験は、他の紙成分を使用しなかったことを除き、第一の実施例で概説したように、仕上げDADMAC含有紙5、10、及び30mgに存在する材料を示すポリ-DADMAC(Alcofix 269)の希釈溶液である。第二の実験は、別の歩留向上剤、アニオンPAM(Percol E38)の溶液を使用する同一実験である。これらの二つの実験から、DADMACは、ヘパリンへの作用の点が類似している血液凝固システムに顕著な負の効果を持つのに対して、A-PAMは凝固をやや促進される。第三の実験は、カチオンPAM、Percol 292の溶液を使用する同様のTEG実験であり、凝固がやや促進されたことを示す。次の二つの実験は、Percol 292とPercol 175で製造したCaAアラミド紙であり、いずれも効果的な凝固を示す。最後の二つの実験は、カチオンPAM Pecol175の溶液で実施し、凝固がやや促進されたことを示す。従ってデータは、DADMAC/アニオンPAM歩留向上剤システムを単一成分の歩留向上剤、カチオンPAMと置き換えると、逆の凝固反応を導くかもしれないDADMACなどの添加剤を使用しなくても効果的な止血を提供することを示す。
【0048】
【表1】

【0049】
本発明の止血品は、顕著な止血効果をもたらす。不織シートの形の吸着剤を配合すると、外科手術の間に出血を効果的に止める製品の使用が可能になり、外科医は、出血のコントロールに相当の時間を割くことなく、外科手術に集中できる。
【0050】
止血作用、低い吸着熱、及び生体適合性の望ましい組み合わせを提供する種々の吸着剤を使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質キャリアと吸着剤組成物とを含む止血品であって、ここで前記多孔質キャリアはカチオン性高分子電解質、アニオン性高分子電解質又はこの二つの組み合わせを含み、ここで前記高分子電解質は、血液凝固メカニズムを阻害しない、前記止血品。
【請求項2】
前記カチオン性高分子電解質が、四級アンモニウムカチオン基を含むカチオン性高分子ポリアクリルアミドである、請求項1に記載の止血品。
【請求項3】
前記カチオン性ポリアクリルアミドが15%〜40%の間の帯電率、及び、2〜20Mg/molの分子量を有する、請求項2に記載の止血品。
【請求項4】
前記アニオン性高分子電解質がアクリル酸基をもつアニオン性ポリアクリルアミドである、請求項1に記載の止血品。
【請求項5】
前記アクリル酸基が20%〜50%の間の帯電率を有し、且つ前記アニオン性ポリアクリルアミドが15〜40Mg/molの分子量を有する、請求項4に記載の止血品。
【請求項6】
前記多孔質キャリアは、織繊維品又は不織繊維品であり、前記繊維はアラミド類、アクリル類、セルロース、ポリエステル、化学的に変性されたセルロース繊維及びその混合物から選択される、請求項1に記載の止血品。
【請求項7】
前記吸着剤は、ゼオライト及び非ゼオライトモレキュラーシーブ、天然及び合成シリカ、天然及び合成ケイ酸塩、ケイ酸塩及びリン酸塩ガラス粉末、繊維又は粒体、並びにモンモリロナイト及びカオリンクレーからなる群から選択される、請求項1に記載の止血品。
【請求項8】
前記止血品が、バンデージ、創傷被覆材、ガーゼ、ウェブ、フィルム、テープ又はパッチからなる群から選択される形状である、請求項1に記載の止血品。
【請求項9】
前記止血品を使用して、前記創傷部上に止血品を置くことによって哺乳動物の創傷を処置する、請求項1〜8に記載の止血品。
【請求項10】
前記創傷が、動脈穿刺創傷、静脈穿刺創傷、動脈裂傷創傷及び静脈裂傷創傷からなる群から選択される、請求項9に記載の止血品。

【公表番号】特表2011−502635(P2011−502635A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533138(P2010−533138)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/079061
【国際公開番号】WO2009/061575
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】