説明

吸着式ガス処理装置

【課題】吸着式ガス処理装置において水分吸着に原因する性能低下を防止する。
【解決手段】被処理ガスGを吸着剤Xと接触させて被処理ガスG中におけるガス状の除去対象物vを吸着剤Xにより被処理ガスGから吸着除去する吸着式ガス処理装置において、被処理ガスG中におけるガス状の除去対象物vを吸着剤Xに吸着させる吸着工程において吸着剤Xに吸着水分加熱用のマイクロ波mwを照射するマイクロ波照射手段7を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば工場排ガスに含まれる揮発性有機物質(いわゆるVOC)の除去などに用いる吸着式ガス処理装置に関し、
詳しくは、被処理ガスを吸着剤と接触させて被処理ガス中におけるガス状の除去対象物を前記吸着剤により被処理ガスから吸着除去する吸着式ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の吸着式ガス処理装置では、被処理ガス中におけるガス状の除去対象物を吸着剤に吸着させる吸着工程において、被処理ガスが水分(水蒸気)を含む場合、被処理ガス中における水分もガス状除去対象物とともに吸着剤に吸着されてしまい、この水分吸着に原因して本来のガス状除去対象物を吸着除去する除去性能(換言すれば、被処理ガスに対する浄化性能)が大きく低下してしまう。
【0003】
そして、この水分吸着に原因する性能低下を防止するため、吸着工程に先立ち被処理ガスに除湿処理を施すことも行なわれている(特許文献1の第3頁右上欄参照)。
【0004】
なお、特許文献1に示される吸着式ガス処理装置では、吸着工程で吸着したガス状の除去対象物を吸着剤から脱着させる脱着工程(換言すれば、吸着剤の再生工程)において吸着剤に対し電磁マイクロ波を照射することで吸着剤を効率的に加熱し、このマイクロ波照射による吸着剤の加熱により吸着剤が先の吸着工程で吸着したガス状除去対象物(有機溶剤)を吸着剤から脱着させて吸着剤を再生するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−6924号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の如く被処理ガスを吸着工程に先立ち除湿処理するにしても、現実的にはその除湿度に限界があるため、除湿処理後の被処理ガス中に水分が未だかなり残存し、このため、上記の如き水分吸着に原因する性能低下を十分に防止することができず、その分、被処理ガス中のガス状除去対象物について所要の除去率を得るのに必要な吸着剤量が多くなって装置が大型化するとともに装置コストが増大する、また、必要吸着剤量の増大のために更には吸着水分の脱着のために脱着工程での必要加熱量なども増大して消費エネルギが嵩むといった問題が依然としてあった。
【0007】
また、吸着工程に先立ち被処理ガスを除湿処理するのに、例えば冷却除湿の場合では除湿装置としてガス冷却用の熱交換器及び冷熱源機を要し、この点からも装置の全体が大型化するとともに、全体としての装置コスト及び消費エネルギが増大する問題もあった。
【0008】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、合理的な装置構成を採ることにより上記の如き問題を効果的に解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1特徴構成は吸着式ガス処理装置に係り、その特徴は、
被処理ガスを吸着剤と接触させて被処理ガス中におけるガス状の除去対象物を前記吸着剤により被処理ガスから吸着除去する吸着式ガス処理装置であって、
被処理ガス中におけるガス状の除去対象物を前記吸着剤に吸着させる吸着工程において前記吸着剤に吸着水分加熱用のマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段を設けてある点にある。
【0010】
一般に、特定の周波数範囲(2.45GHz前後)のマイクロ波は液体状態の水のみを選択的に効率良く加熱することができる。
【0011】
したがって、そのような周波数範囲のマイクロ波を吸着水分加熱用のマイクロ波として上記マイクロ波照射手段により吸着工程にある吸着剤に照射すれば、吸着工程において被処理ガス中の水分がガス状除去対象物とともに吸着剤に吸着されるとしても、その吸着後において直ちに吸着水分(凝縮水分)のみを選択的に効率良く加熱して気化させる形態で、その吸着水分を吸着工程の段階で吸着剤から被処理ガス中へ脱着させることができ、これにより、吸着工程においてガス状除去対象物のみを吸着剤に吸着させるのに近い状態にすることができる。
【0012】
即ち、このことにより、先述の如き水分吸着に原因する性能低下を効果的に防止することができて、被処理ガス中のガス状除去対象物を吸着除去する除去性能(被処理ガスに対する浄化性能)を吸着工程において水分吸着がない場合に近い程度まで高めることができる。
【0013】
そして、このように装置性能を効果的に向上し得ることで、被処理ガス中のガス状除去対象物について所要の除去率を得るのに必要な吸着剤量を効果的に低減することができて装置を小型化し得るとともに装置コストも低減することができ、また、必要吸着剤量の低減により、また更には脱着工程で脱着させる吸着水分量が大巾に低減することも相俟って脱着工程での必要加熱量なども低減することができ、消費エネルギも効果的に低減することができる。
【0014】
そしてまた、水分吸着を抑止するために吸着工程に先立ち被処理ガスに除湿処理を施すことも不要になり、ないしは、除湿処理を施すにしても除湿装置を小能力のもので済ませることができ、この点からも装置全体の小型化及び全体としての装置コストや消費エネルギの低減を効果的に達成することができる。
【0015】
なお、上記構成の実施において吸着水分加熱用マイクロ波は、必ずしも2.45GHz近傍の周波数のマイクロ波に限られるものではなく、吸着剤に吸着されたガス状除去対象物と水分とのうち吸着水分の方を優先的に吸着工程の段階で加熱気化させ得る周波数範囲のマイクロ波(即ち、水分吸着による性能低下を抑止し得る周波数範囲のマイクロ波)であればよい。
【0016】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記吸着剤をロータ回転方向に分散させた状態で保持する通気性の吸着ロータを設け、
この吸着ロータのロータ回転方向における各部を吸着ロータの回転により被処理ガスの通風域である吸着域と脱着用ガスの通風域である脱着域とに交互に位置させる構成にし、
前記マイクロ波照射手段を前記吸着ロータのうち前記吸着域にあるロータ部分の吸着剤に対してマイクロ波照射する状態に配備してある点にある。
【0017】
つまり、この構成では基本的に、上記吸着域において吸着ロータの域内ロータ部分に被処理ガスを通過させることで、そのロータ部分における吸着剤により被処理ガス中のガス状除去対象物を吸着除去する吸着工程を実施する。
【0018】
また、上記脱着域において吸着ロータの域内ロータ部分に脱着用ガスを通過させることで、そのロータ部分の吸着剤が先の吸着工程において吸着したガス状除去対象物を脱着用ガスに脱着させる脱着工程を実施し、そのロータ部分の吸着剤を次の吸着工程に備えて再生する。
【0019】
即ち、吸着ロータの回転によりロータ各部を吸着域と脱着域とに交互に位置させることで、上記吸着工程と上記脱着工程との連続的な併行実施を可能にし、これにより、被処理ガスからガス状除去対象物を吸着除去する被処理ガスの浄化処理を連続的に行えるようにする。
【0020】
そして、この構成において上記の如くマイクロ波照射手段を吸着ロータのうち吸着域にあるロータ部分の吸着剤に対してマイクロ波照射する状態に配備することで、吸着域において被処理ガス中の水分がガス状除去対象物とともに域内ロータ部分の吸着剤に吸着されるとしても、その吸着水分(凝縮水分)のみを上記マイクロ波照射により選択的に効率良く加熱して気化させる形態で、その吸着水分を被処理ガスの通風域である吸着域の段階で吸着剤から被処理ガス中へ脱着させることができる。
【0021】
即ち、このことにより、吸着ロータの回転に伴い吸着工程と脱着工程とを連続的に併行実施する装置構成において前述第1特徴構成による効果を得ることができ、被処理ガス中のガス状除去対象物を吸着除去する装置性能を吸着工程において水分吸着がない場合に近い程度まで高めることができる。
【0022】
本発明の第3特徴構成は、第2特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記吸着ロータを金属製仕切壁によりロータ回転方向において複数の吸着剤保持区画に内部区画してある点にある。
【0023】
つまり、この構成によれば、吸着域において吸着ロータにおける域内ロータ部分の吸着剤(即ち、吸着域にある吸着剤保持区画の吸着剤)に対してマイクロ波照射手段により照射した吸着水分加熱用のマイクロ波が吸着ロータの内部を通じて吸着域から漏出することを上記金属製仕切壁によるマイクロ波の反射により防止することができて、吸着域にあるロータ部分(吸着剤保持区画)の吸着剤に対し金属製仕切壁による反射波も含めた状態でマイクロ波照射手段による照射マイクロ波を効率良く照射することができる。
【0024】
また、吸着域にある吸着剤保持区画に対してマイクロ波照射手段により照射したマイクロ波が隣の吸着剤保持区画に漏出するのを上記金属製仕切壁により防止して、その照射対象の吸着剤保持区画における吸着剤から吸着水分を集中的に加熱気化させて脱着させる効果も一層高めることができる。
【0025】
即ち、これらのことにより、被処理ガス中のガス状除去対象物を吸着除去する装置性能をさらに効果的に高めることができる。
【0026】
本発明の第4特徴構成は、第1〜第3特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記マイクロ波照射手段を前記吸着剤に対して被処理ガスの流れ方向における上流側からマイクロ波照射する状態に配備してある点にある。
【0027】
つまり、この構成によれば、被処理ガスの流れ方向における上流側(前述第2特徴構成で言えば吸着域における被処理ガスの流入側)から吸着剤に吸着水分加熱用のマイクロ波を照射するから、これとは逆に被処理ガスの流れ方向における下流側から吸着剤にマイクロ波照射するのに比べ、吸着工程の工程期間の内でも吸着剤における吸着水分の蓄積が進行する前の早い段階で吸着剤における吸着水分をマイクロ波照射により加熱気化させて吸着剤から被処理ガス中へ脱着させることができる。
【0028】
即ち、このことにより、吸着工程においてガス状除去対象物のみを吸着剤に吸着させるのに近い状態を一層効果的かつ確実に現出することができて、被処理ガス中のガス状除去対象物を吸着除去する装置性能をさらに効果的に高めることができる。
【0029】
本発明の第5特徴構成は、第1〜第4特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記吸着剤に対する前記マイクロ波照射手段のマイクロ波照射領域を金属製壁体により囲んだ状態にしてある点にある。
【0030】
一般に、金属はマイクロ波を反射するから、上記の如く吸着剤に対するマイクロ波照射手段のマイクロ波照射領域を金属製壁体により囲んだ状態に形成すれば、吸着剤に対し金属製壁体による反射波も含めた状態でマイクロ波照射手段による照射マイクロ波を効率良く照射することができ、これにより、被処理ガス中のガス状除去対象物を吸着除去する装置性能をさらに効果的に高めることができる。
【0031】
本発明の第6特徴構成は、第1〜第5特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記吸着工程で吸着したガス状の除去対象物を前記吸着剤から脱着させる脱着工程において前記吸着水分加熱用マイクロ波とは周波数の異なる脱着用のマイクロ波を前記吸着剤に照射する脱着用マイクロ波照射手段を設けてある点にある。
【0032】
つまり、被処理ガスに含まれるガス状除去対象物や使用する吸着剤に応じて周波数範囲を選択すれば、マイクロ波は吸着剤に吸着された除去対象物や吸着剤を効率良く加熱することができる。
【0033】
したがって、そのような周波数範囲のマイクロ波を脱着用のマイクロ波として上記脱着用マイクロ波照射手段により脱着工程にある吸着剤に照射すれば、そのマイクロ波照射により脱着工程で吸着除去対象物や吸着剤を効率良く加熱して先の吸着工程で吸着剤が吸着したガス状除去対象物を吸着剤から脱着用ガス中へ効率的に脱着させることができる。
【0034】
即ち、このことにより、前述した必要吸着剤量の低減や脱着工程で脱着させる吸着水分量の大巾な低減とも相俟って脱着工程での消費エネルギ(換言すれば、吸着剤の再生に要するエネルギ)を更に効果的の低減することができる。
【0035】
なお、上記構成の実施にあたり脱着用マイクロ波として、吸着剤に吸着された除去対象物や吸着剤のみを選択的に加熱し得る周波数範囲のマイクロ波を採用すれば、加熱が不要な装置部材を不必要に加熱することを回避して脱着工程での消費エネルギを一層効果的に低減することができる。
【0036】
また、吸着剤に対する脱着用マイクロ波照射手段のマイクロ波照射領域を金属製壁体により囲んだ状態にすれば、脱着工程にある吸着剤に対し金属製壁体による反射波も含めた状態で脱着用マイクロ波照射手段による照射マイクロ波を効率良く照射することができて、脱着工程での消費エネルギを一層効果的に低減することができる。
【0037】
そしてまた、上記構成の実施において、同一域を吸着工程実施の吸着域と脱着工程実施の脱着域とに交互使用する装置形式を採る場合、吸着水分加熱用マイクロ波を照射するマイクロ波照射手段とそれとは別の上記脱着用マイクロ波照射手段との両方を同一域に配備するのに代え、共通のマイクロ波照射手段を同一域に配備して、その共通マイクロ波照射手段による照射マイクロ波を吸着水分加熱用マイクロ波とそれとは周波数範囲の異なる脱着用マイクロ波とに切り換えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】装置構成を示す縦断面図
【図2】装置構成を示す横断面部
【図3】吸着ロータを示す斜視図
【図4】吸着工程及び脱着工程を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1〜図3は工場排気などの被処理ガスGからそれに含まれる有機溶剤などのガス状除去対象物vを除去して被処理ガスGを浄化する吸着式ガス処理装置を示し、1は疎水性ゼオライトなどの吸着剤Xをロータ回転方向の全周にわたらせて保持させた吸着ロータであり、この吸着ロータ1はハニカム構造のロータ構成材1xに吸着剤Xを保持させた構造にしてロータ回転軸芯Pの方向に通気可能にしてある。
【0040】
吸着ロータ1の外周面部には周壁1nを設けてあり、また、この吸着ロータ1は仕切壁1mによりロータ回転方向において多数の吸着剤保持区画1aに内部区画してある。
【0041】
2は装置ケースであり、その内部は内部壁体2aにより被処理ガスGの通風域である吸着域3と脱着用ガスHの通風域である脱着域4とに区画してある。
【0042】
吸着ロータ1は吸着域3と脱着域4とに跨らせた状態で装置ケース2に収容してあり、吸着ロータ1の回転に伴い吸着ロータ1の回転方向における各部(即ち、吸着剤保持区画1aの夫々)を吸着域3と脱着域4とに交互に通過位置させるようにしてある。
【0043】
つまり、吸着ロータ1の回転に伴い、吸着域3では域内にある吸着剤保持区画1aに対し被処理ガスGを通過させ、これにより、吸着域3にある吸着剤保持区画1aの吸着剤Xにより被処理ガスG中のガス状除去対象物vを吸着除去する吸着工程を実施する。
【0044】
また、吸着ロータ1の回転に伴い、脱着域4では域内にある吸着剤保持区画1aに対し高温の脱着用ガスHを通過させ、これにより、脱着域4にある吸着剤保持区画1aの吸着剤Xが先の吸着工程で吸着したガス状除去対象物vを吸着剤Xから脱着用ガスHに脱着させる脱着工程を実施し、その吸着剤保持区画1aにおける吸着剤Xを次の吸着工程に備えて再生する。
【0045】
即ち、このように吸着ロータ1における吸着剤保持区画1aの夫々をロータ回転に伴い吸着域3と脱着域4とに交互に通過位置させることで、上記吸着工程と脱着工程との連続的な併行実施を可能にして、被処理ガスGからガス状除去対象物vを吸着除去する被処理ガスGの浄化処理を連続的に行う。
【0046】
なお、装置ケース2の内部壁体2a及び外部壁体2bと吸着ロータ1との間の隙間は吸着ロータ1の回転を許容するシール手段によりシールしてある。
【0047】
5aは生産室などから排出される被処理ガスGを吸着域3のガス流入室3aに送給する被処理ガス路、5bは吸着域3において吸着ロータ1を通過することでガス状除去対象物vが吸着除去された被処理ガスG′(即ち、浄化された処理済ガス)を吸着域3のガス流出室3bから送出する処理済ガス路である。
【0048】
また、6aは脱着用ガスHを脱着域4のガス流入室4aに送給する脱着用ガス路、6bは脱着域4において吸着ロータ1を通過することでガス状除去対象物vを含む状態になった使用済の脱着用ガスH′を脱着域4のガス流出室4bから送出する使用済脱着用ガス路である。
【0049】
脱着用ガスHの風量は被処理ガスGの風量よりも小風量に制限してあり、これにより、被処理ガスGにおけるガス状除去対象物vの濃度よりも使用済の脱着用ガスH′におけるガス状除去対象物vの濃度を高くする濃縮処理を被処理ガスGの浄化処理とともに上記吸着工程及び脱着工程の併行実施により行なう。
【0050】
そして、濃縮状態のガス状除去対象物vを含む使用済の脱着用ガスH′は使用済脱着用ガス路6bを通じて触媒燃焼式や直接燃焼式の後段ガス処理装置に送り、この後段ガス処理装置での燃焼処理により使用済脱着用ガスH′中のガス状除去対象物vを酸化分解して無害化する。
【0051】
一方、吸着域3のガス流入室3a(即ち、吸着域3における被処理ガス流れ方向の上流側部)には、マイクロ波照射手段として、吸着域3にある吸着剤保持区画1aの吸着剤Xに対して周波数が2.45GHz前後の吸着水分加熱用マイクロ波mwを照射するマグネトロン7を設けてあり、このマグネトロン7により吸着工程にある吸着剤Xに上記吸着水分加熱用マイクロ波mwを照射することで、吸着剤Xがガス状除去対象物vとともに被処理ガスG中の水分sを吸着してしまうことに原因する装置性能の低下を防止する。
【0052】
つまり、吸着域3では前述の如く被処理ガスGを吸着ロータ1における吸着域3内の吸着剤保持区画1aに通過させることで、その吸着剤保持区画1aの吸着剤Xにより被処理ガスG中のガス状除去対象物vを吸着除去するが、この吸着工程の際、図4(a)に模式的に示す如く被処理ガスG中の水分s(水蒸気)もともに吸着剤Xに吸着される水分吸着が生じる。
【0053】
これに対し、本例の吸着式ガス処理装置では、上記マグネトロン7により吸着工程の吸着剤Xに吸着水分加熱用マイクロ波mwを照射することで、図4(b)に模式的に示す如く吸着剤Xに吸着されたガス状除去対象物vと水分sとのうち吸着水分s(凝縮水分)のみを選択的に効率良く加熱して気化させる形態で、その吸着水分sを吸着後において直ちに吸着工程の段階で吸着剤Xから被処理ガスG中へ脱着させる。
【0054】
即ち、この吸着水分sの吸着工程での脱着により吸着工程において被処理ガスG中のガス状除去対象物vのみが吸着剤Xに吸着されるのに近い状態を現出し、これにより、水分吸着に原因する性能低下を効果的に防止して、被処理ガスG中のガス状除去対象物vを被処理ガスGから吸着除去する装置性能を向上させるようにしてある。
【0055】
なお、上記の如く吸着工程の段階で吸着剤Xから脱着した水分sはガス状除去対象物vが吸着除去された浄化済の被処理ガスG′(処理済ガス)とともに処理済ガス路5bへ送出される。
【0056】
また、このように吸着水分sが吸着工程の段階で吸着剤Xから脱着されることにより、脱着域4で域内の吸着剤保持区画1aに脱着用ガスHを通過させる脱着工程では、吸着剤Xから脱着させる吸着水分量が大巾に削減された状態になって図4(c)に示す如く概ねガス状除去対象物vのみが吸着剤Xから脱着される状態になり、使用済脱着用ガスH′への水分持ち込み量も大巾に低減される。
【0057】
吸着ロータ1の周壁1n及び内部仕切壁1mは金属材により形成してあり、また、装置ケース2の内部壁体2a及び外部壁体2bも金属材で形成してあり、このように吸着ロータ1の外周部に金属製周壁1nを設けるとともに、金属製仕切壁1mにより吸着ロータ1の内部をロータ回転方向において多数の吸着剤保持区画1aに区画することで、また、マグネトロン7による吸着水分加熱用マイクロ波mwの照射領域である吸着域3のガス流入室3aを金属製壁体2a,2bにより囲む状態にすることで、上記の如きマグネトロン7によるマイクロ波照射では、吸着域3にある吸着剤保持区画1aの吸着剤Xに対して上記金属製壁類1n,1m,2a,2bによる反射波も含めた状態でマグネトロン7による照射マイクロ波mwを効率良く照射し得るように、また、照射対象の吸着剤保持区画1aから隣の吸着剤保持区画1aに照射マイクロ波mwが漏出するのも防止して照射対象の吸着剤保持区画1aに対し照射マイクロ波を集中的に作用させ得るようにしてある。
【0058】
そしてまた、吸着域3にある吸着剤保持区画1aの吸着剤Xに対し上記の如く被処理ガスGの流れ方向における上流側からマイクロ波照射を行なうことで、吸着工程の工程期間の内でも吸着剤Xにおける吸着水分sの蓄積が進行する前の極力早い段階で吸着剤Xにおける吸着水分sを吸着剤Xから脱着させるようにしてある。
【0059】
〔別実施形態〕
次に本発明の別の実施形態を列記する。
前述の実施形態では吸着域3及び脱着域4の夫々でロータ回転軸芯Pの方向に被処理ガスG及び脱着用ガスHを通過させる円盤状の吸着ロータ1を示したが、これに代え、吸着ロータ1を筒状にして、吸着域3及び脱着域4の夫々でロータ半径方向に被処理ガスG及び脱着用ガスHを通過させるようにしてもよい。
【0060】
また、吸着ロータ1を用いず、吸着剤Xを収容した吸着剤収容室に対し被処理ガスGを通過させて、その吸着剤収容室を吸着域とする形態で吸着工程を実施する状態と、吸着剤収容室に対し脱着用ガスHを通過させて、その吸着剤収容室を脱着域とする形態で脱着工程を実施する状態とを交互に繰り返す形式の装置構成にしてもよい。
【0061】
あるいはまた、吸着工程を実施する吸着室と脱着工程を実施する脱着室とに流動性の吸着剤Xを交互移動させる形式の装置構成や、吸着剤Xを保持させた無端帯状体を吸着域と脱着域とにわたって循環移動させる形式の装置構成を採用してもよい。
【0062】
図1において破線で示す如く、脱着用マイクロ波照射手段として、脱着工程で吸着水分加熱用マイクロ波mwとは周波数の異なる脱着用のマイクロ波mw′を吸着剤Xに照射する脱着用マグネトロン8を設け、この脱着用マグネトロン8による脱着用マイクロ波mw′の照射により脱着工程において吸着除去対象物vや吸着剤Xを効率良く加熱することで、先の吸着工程で吸着剤Xが吸着したガス状除去対象物vを吸着剤Xから効率的に脱着させるようにしてもよい。
【0063】
即ち、このような脱着用マイクロ波照射手段によるマイクロ波照射により脱着を行なうことで脱着用ガスHの必要温度を大巾に低減することができる。
【0064】
脱着用マイクロ波は吸着剤Xに吸着されたガス状除去対象物vや吸着剤Xを効率的に加熱し得る周波数範囲のマイクロ波であればよいが、特に吸着剤Xに吸着された除去対象物vや吸着剤Xのみを選択的に加熱し得る周波数範囲のマイクロ波を採用すれば、加熱が不要な装置部材を不必要に加熱することを回避して脱着工程での消費エネルギを一層効果的に低減することができる。
【0065】
前述の実施形態では、吸着ロータ1の回転域を吸着域3と脱着域4との2域にのみ区画する例を示したが、脱着域4から吸着域3へ移行する途中のロータ部分に対してパージ用気体を通風するパージ域を設けるなど、適宜目的の通風域を付加して吸着ロータ1の回転域を3域以上に区画する構成を採用してもよい。
【0066】
また、前述の実施形態では、吸着剤Xに対して被処理ガスGの流れ方向における上流側から吸着水分加熱用マイクロ波mwを照射する例を示したが、被処理ガスGにおける水分sの濃度やガス除去対象物vの濃度、あるいは、ガス除去対象物vの種類等によっては、被処理ガスGの流れ方向における下流側から吸着水分加熱用マイクロ波mwを照射したり、上流側と下流側との両方から吸着水分加熱用マイクロ波mwを照射するなど、装置性能の一層の向上を目的として、種々のマイクロ波照射形態を採ることができる。
【0067】
その他、吸着工程の吸着剤Xに吸着水分加熱用マイクロ波mwを照射するマイクロ波照射手段の細部構造など、本発明による吸着式ガス処理装置の具体的な装置構成は種々の改変が可能である。
【0068】
また、ガス状除去対象物vは吸着剤Xによる吸着除去が可能なものであれば、どのようなガス状物であってもよく、さらに、ガス状除去対象物vを含む被処理ガスGも工場排ガスに限られるものではなく、ガス状除去対象物vを含むガスであれば各種分野において取り扱われるどのようなガスであってもよい。
【0069】
本発明の吸着式ガス処理装置において使用する吸着剤Xはゼオライトや活性炭を初め、種々の材質のものを使用でき、ガス状除去対象物vの種類などに応じて適当な材質の吸着剤を選択すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明による吸着式ガス処理装置は各種分野において種々のガスからそれに含まれるガス状除去対象物を除去するのに利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
G 被処理ガス
X 吸着剤
v ガス状除去対象物
mw 吸着水分加熱用マイクロ波
7 マイクロ波照射手段
1 吸着ロータ
3 吸着域
H 脱着用ガス
4 脱着域
1m 金属製仕切壁
1a 吸着剤保持区画
2a,2b 金属製壁体
mw′ 脱着用マイクロ波
8 脱着用マイクロ波照射手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理ガスを吸着剤と接触させて被処理ガス中におけるガス状の除去対象物を前記吸着剤により被処理ガスから吸着除去する吸着式ガス処理装置であって、
被処理ガス中におけるガス状の除去対象物を前記吸着剤に吸着させる吸着工程において前記吸着剤に吸着水分加熱用のマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段を設けてある吸着式ガス処理装置。
【請求項2】
前記吸着剤をロータ回転方向に分散させた状態で保持する通気性の吸着ロータを設け、
この吸着ロータのロータ回転方向における各部を吸着ロータの回転により被処理ガスの通風域である吸着域と脱着用ガスの通風域である脱着域とに交互に位置させる構成にし、
前記マイクロ波照射手段を前記吸着ロータのうち前記吸着域にあるロータ部分の吸着剤に対してマイクロ波照射する状態に配備してある請求項1記載の吸着式ガス処理装置。
【請求項3】
前記吸着ロータを金属製仕切壁によりロータ回転方向において複数の吸着剤保持区画に内部区画してある請求項2記載の吸着式ガス処理装置。
【請求項4】
前記マイクロ波照射手段を前記吸着剤に対して被処理ガスの流れ方向における上流側からマイクロ波照射する状態に配備してある請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸着式ガス処理装置。
【請求項5】
前記吸着剤に対する前記マイクロ波照射手段のマイクロ波照射領域を金属製壁体により囲んだ状態にしてある請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸着式ガス処理装置。
【請求項6】
前記吸着工程で吸着したガス状の除去対象物を前記吸着剤から脱着させる脱着工程において前記吸着水分加熱用マイクロ波とは周波数の異なる脱着用のマイクロ波を前記吸着剤に照射する脱着用マイクロ波照射手段を設けてある請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸着式ガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−221140(P2010−221140A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71795(P2009−71795)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000149790)株式会社大気社 (136)
【Fターム(参考)】