説明

吸込み式漏れ検出器

【解決手段】本発明は、吸込みライン(11)と、真空ポンプ(16)に繋がる搬送ライン(33)とを備えた吸込み式漏れ検出器に関する。搬送ライン(33)に分配ポイント(24)が設けられており、分岐ライン(25)が分配ポイント(24)から試験ガスセンサ(15)に繋がっている。分配ポイント(24)での中間圧力(P2)を真空ポンプ(16)の搬送変動とは無関係とすべく、超臨界的に作動する環状オリフィス(20)を有する絞り(D2)が分配ポイント(24)と真空ポンプ(16)との間に設けられている。環状オリフィス(20)での圧力低下が、分配ポイント(24)での中間圧力(P2)の半分より大きい。このようにして環状オリフィス(20)で流れが阻止され、流量(Q) はポンプ圧(P3)の変化に関わらず一定のままである。従って、中間圧力(P2)の変化が防止され、それにより、試験ガスセンサ(15)の感度と信号の安定性とがポンプ圧の変化によって影響されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸込みラインと、絞りを介して吸込みラインに接続された真空ポンプと、試験ガスセンサとを備えており、分配ポイント(24)が、絞りの上流側に形成されており、分配ポイントから試験ガスセンサに繋がる分岐ラインを有している吸込み式漏れ検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のタイプの吸込み式漏れ検出器が、独国特許出願公開第102006047856号明細書(インフィコン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング(INFICON GmbH))に述べられている。前記吸込み式漏れ検出器は吸込みラインを備えており、吸込みラインの端部に吸込みプローブが設けられている。吸込みラインの入口に、上記の吸込み式漏れ検出器は絞りを備えており、それにより、吸込みラインが外されたときに全大気圧が分配ポイントで生成されることが防止される。前記分配ポイントから、絞りを含むラインが真空ポンプの入口に繋がっている。前記絞りにより、通常の動作モードの吸込速度が定められる。絞りはバルブを含むバイパスラインによって迂回される。試験ガス発生器が、独国特許出願公開第10031882号明細書に述べられているような分圧センサである。この分圧センサは、試験ガス(ヘリウム)に対して選択的な浸透性を有する膜によって閉じられたチャンバを備えている。圧力を示す電気信号を生成するペニング(Penning )圧力センサ又は別の圧力センサが、前記チャンバ内に配置されている。この圧力から、検出された試験ガスの量に関する信号が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第102006047856号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
更に、試験ガスセンサとして使用される質量分析計を備えた吸込み式漏れ検出器が知られている。質量分析計を作動させるためには、高真空が必要である。このために、複雑な高真空ポンプを使用する必要がある。上記のタイプの試験ガスセンサの両方で、検出感度が、試験ガスセンサの入口領域における中間圧力(全圧力)に左右される。このため、吸込み式漏れ検出器の検出限界は制限され、分配ポイント及び検出入口における全圧力の安定性に左右される。
【0005】
ヘリウム吸込み式漏れ検出器では、測定信号が、大気中のヘリウムに起因してシステムの基本信号によって既に変動しているので、全圧力の変動が直接的に顕著になる。冷媒が漏れ試験ガスとして使用される冷媒タイプの漏れ検出器では、通常空気には冷媒が含まれていないので、漏れ速度を測定するときにのみ、全圧力の安定性の影響が顕著になる。
【0006】
分配ポイントにおける全圧力(中間圧力)は、搬送ラインを通過する流量と搬送する真空ポンプの吸引量とにより与えられる。特定の真空ポンプの作動中に達する全圧力を、正確に予め決定することができず、一定とすることもできない。真空ポンプの作動中に、この全圧力は急激に変化する場合がある。特に膜ポンプが真空ポンプとして使用されている場合に、このような圧力変化が生じ得る。全圧力のこのような変動は、吸込み式漏れ検出器の検出感度に悪影響を与える。全圧力が比較的高い場合、試験ガスの分圧も高い。このため、検出感度が高くなる。全圧力が低い場合、検出感度も対応して低くなる。
【0007】
本発明は、真空ポンプの吸引量の変動によって検出感度が損なわれない吸込み式漏れ検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る吸込み式漏れ検出器は、請求項1によって定義される。前記吸込み式漏れ検出器は、吸込みラインと分配ポイントの後方の真空ポンプとの間に設けられた絞りが環状のオリフィス(orifice )であり、オリフィスは、オリフィスでの圧力低下がP2/2より大きい通流値を有しており、P2は分配ポイントでの中間圧力であることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、吸込みラインから真空ポンプへの途中でガス流がオリフィスによって阻止される。阻止された流れでは、流量が、オリフィスの出口側での低圧とは無関係である。これは、真空ポンプの入口でポンプ圧が変動した場合に、オリフィスを通る流量が変化しないことを意味する。従って、真空ポンプの入口側での圧力も変化しない。その結果、真空ポンプの上流側で生じる圧力変動は、感度及び信号の安定性に対して影響を及ぼさず、システムの感度は、真空ポンプの上流側での圧力とは無関係である。
【0010】
本発明によれば、前記絞りはオリフィスであり、オリフィスの長さL は孔の直径D より小さい。細い管状のチャネルを有する絞りとは異なり、オリフィスは、流量が低圧とは無関係であるという効果を有する。このような効果は他のタイプの絞りにはもたらされない。
【0011】
オリフィスでの圧力低下がP2/2より大きいという上記に示された関係は、異なる方法で表現すると、オリフィスの通流値LBが真空ポンプの吸引量S の2分の1より小さいということである。高い流れ抵抗(=低い通流値)を有するオリフィスを用いることにより、ポンプ圧に対する流量の依存関係を示す曲線が、低いポンプ圧に対して水平部分を有する。この水平部分の領域で、発明性がある吸込み式漏れ検出器が作動する。
【0012】
吸込み式漏れ検出器の試験ガスセンサは、分圧センサ又は質量分析計であり得る。例えば、インフィコン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング(Inficon GmbH)のワイズテクノロジー(Wise Technology )によって提供されるような分圧センサの場合には、試験ガスの分圧が高真空条件無しで検出され得る。このような構成の代案として、質量分析計が試験ガスセンサとして使用されることが可能であり、質量分析計では、真空ポンプによって搬送されるガスのごく一部が高真空領域に分岐されて分析部に導かれる。この場合にも、オリフィスは、分析部の入口での全圧力を一定のレベルに維持する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る分圧センサを備えた吸込み式漏れ検出器を示す部分概略図である。
【図2】本発明に係る質量分析計を備えた吸込み式漏れ検出器を示す部分概略図である。
【図3】圧力パラメータを表示する吸込み式漏れ検出器を示す部分概略図である。
【図4】オリフィスを示す縦断面図である。
【図5】中間圧力P2が300mbarであるときに真空ポンプの入口におけるポンプ圧が増加するにつれて流量が減少する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の例示的な実施形態を、図面を参照して更に詳細に以下に説明する。
【0015】
吸込みプローブ10に、細い管状のラインとして形成された吸込みライン11が接続されている。吸込みプローブ10の入口12に、約1000mbarの大気圧が存在する。吸込みライン11を通過する流量Q が、例えば100 sccm(標準状態における1分間当たりの立方センチメートル)である。前記吸込みライン11は試験ガスセンサ15に繋がっており、試験ガスセンサ15は、ここでは独国特許出願公開第10031882号明細書に従った分圧センサとして設計されている。試験ガスセンサ15の入口に、約250 mbarの圧力p が存在する。試験ガスセンサ15と真空ポンプ16との間に、絞りD2を含む搬送ライン17が延びている。絞りD2の入口側が、圧力測定部18に接続されている。真空ポンプ16は、例えば2段膜ポンプを備えている。
【0016】
絞りD2の構成が図4に図示されている。絞りD2は、搬送ライン17に横断して配置された平面壁から構成されたオリフィス20を備えている。オリフィス20は、例えば環状の孔21を有している。オリフィス20の流れ方向の長さL 、つまり壁の厚さは、孔21の直径D より小さい。
【0017】
図2は、質量分析計を備えた吸込み式漏れ検出器を示している。吸込みプローブ10は、吸込みライン11を介して吸込み式漏れ検出器のケーシング13に接続されており、このような接続は、プラグタイプの接続部14の形態で実現されている。ケーシング13内に、吸込開口部の形態の絞りD1が配置されており、絞りD1により、前記プラグタイプの接続部14が外された際に、吸込みライン11の圧力が大気圧に増加することが防止される。
【0018】
吸込みライン11が分配ポイント24に繋がっている。分配ポイント24から、絞りを含む分岐ライン25が質量分析計26に繋がっている。質量分析計26は、作動のために高真空を必要とする。この高真空は、ターボ分子ポンプ27によって生成される。該ターボ分子ポンプ27は、絞りを含むライン28を介して分配ポイント24に接続された中間入口を備えている。ターボ分子ポンプ27の圧力出口が、本件の場合には2段設計の前真空ポンプ30に接続されている。圧力出口31が大気に繋がっている。前真空ポンプ30の2段30a,30b 間の中間入口32が、搬送ライン33の分配ポイント24に接続されている。本実施形態では、質量分析計26及びターボ分子ポンプ27が試験ガスセンサ15を構成している。
【0019】
分配ポイント24に、中間圧力P2が存在する。前真空ポンプ30の中間入口32に、ポンプ圧P3が存在する。
【0020】
図3は、図1及び図2に基づく装置を簡略化して示す図である。吸込みライン11は絞りD1に続く。絞りD1は搬送ライン33に続く。搬送ライン33の分配ポイント24に、引出しライン及び戻りラインを有する分岐ライン25が試験ガスセンサ15に分岐している。分配ポイント24に存在する圧力が中間圧力P2又は全圧力である。
【0021】
搬送ライン33は、分配ポイント24から絞りD2に繋がっており、絞りD2から真空ポンプ16又は前真空ポンプ30に繋がっている。
【0022】
本発明の目的は、真空ポンプのポンプ圧P3すなわち吸引量の起こり得る変動に関係なく、分配ポイント24での中間圧力P2を可能な限り一定に維持することにある。これは、オリフィス20として形成された絞りD2によって達成される。
【0023】
図5には、搬送ラインのオリフィスの作用に基づき生じる流量が、ポンプ圧P3に応じて表されている。ポンプ圧P3が50乃至150バールの範囲内に亘る阻止領域B 内では、流量Q 、従って中間圧力P2は、ポンプ圧P3の変動に関係なく一定であることが分かる。より高いポンプ圧P3では、流量Q は、表された曲線に対応して減少する。その圧力低下がP2/2より大きいオリフィスの効果によって、阻止領域B のみでの作動が達成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込みライン(11)と、該吸込みライン(11)に絞り(D2)を介して接続された真空ポンプ(16; 30)と、試験ガスセンサ(15)とを備えており、分配ポイント(24)が、前記絞り(D2)の上流側に形成されており、前記分配ポイント(24)から前記試験ガスセンサ(15)に繋がる分岐ライン(25)を有している吸込み式漏れ検出器において、
前記絞り(D2)はオリフィス(20)であり、該オリフィス(20)は、該オリフィス(20)での圧力低下がP2/2より大きい通流値を有しており、P2は、前記分配ポイント(24)での中間圧力であることを特徴とする吸込み式漏れ検出器。
【請求項2】
前記オリフィス(20)の通流値LBは、前記真空ポンプ(16; 30)の吸引量(S) の半分より小さいことを特徴とする請求項1に記載の吸込み式漏れ検出器。
【請求項3】
前記オリフィス(20)の長さ(L)が、前記オリフィスの直径(D) より小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の吸込み式漏れ検出器。
【請求項4】
前記試験ガスセンサ(15)は分圧センサであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の吸込み式漏れ検出器。
【請求項5】
前記試験ガスセンサは質量分析計であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の吸込み式漏れ検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−518780(P2012−518780A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550511(P2011−550511)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051427
【国際公開番号】WO2010/094582
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(500469855)インフィコン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (43)
【氏名又は名称原語表記】Inficon GmbH
【住所又は居所原語表記】Bonner Strasse 498, D−50968 Koeln, Germany
【Fターム(参考)】