説明

吹出口装置

【課題】吹出口が矩形開口断面形状となる場合でも矩形開口各部に問題なく適切に調和空気を到達させて、吹出口から各方向に均等に調和空気の気流を吹出すことができ、また吹出風量や吹出方向の調整も行いやすい吹出口装置を提供する。
【解決手段】矩形開口断面の吹出口本体12に対し、ネック部11を略楕円形の開口断面形状の筒状体として、吹出口本体12の開口部12aの範囲にネック部11の開口部分が外れることなく重なる状態でネック部11と吹出口本体12を連通させると共に、シャッター14を設けて吹出口本体開口部12aへの調和空気の進入状態を調整可能とすることから、調和空気の気流をスムーズに吹出口本体12の開口部12a各部へ到達させられ、偏流を防ぐことができると共に、ネック部11と吹出口本体12との連結部分を簡略な構造とすることができ、吹出口全体の製造コストを抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和対象空間に調和空気を吹出して空気調和を行う吹出口装置に関し、特に吹出側の開口断面形状が矩形となる吹出口装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和設備において、ダクトを通じて送られる調和空気を空気調和対象の室内空間に吹出す吹出口装置は、室内空間への調和空気の到達しやすさ等を考慮して天井に配設されることが多い。近年、こうした吹出口装置を天井に配設する場合、天井が、天井パネルや照明器具等を一つのシステムとして共通の線状に連続する支持枠で支持して構成される、いわゆるシステム天井の構造を採っているのに対応して、吹出口装置も支持枠に取付けてシステム天井の一部をなす構造としたものが利用されている。このような従来のシステム天井用の吹出口装置の例として、登録実用新案第3048702号公報に開示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第3048702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のシステム天井用の吹出口装置は前記特許文献に示される構成となっているが、線状に配置された支持枠に沿って天井材や吹出口を配設する関係上、吹出口その他の取付け、取外しは支持枠に沿った一列分で取扱う必要があり、対象物である吹出口のみ取扱って着脱等行うような簡略な対応で済ませることができないという問題があった。
【0005】
このため、近年は、天井における吹出口を含む各種天井ユニットをより細かい単位でレイアウト可能にするグリッド天井の使用頻度が増大している。
【0006】
このグリッド天井の場合、照明器具等他の天井配設機器との組合わせの関係で、吹出口の天井開口部分は矩形(長方形)となる場合が一般的である。こうした矩形開口断面形状の吹出口に対し、ダクト接続用のネック部としては、容易に製造でき、コストの点で有利である点などから、他の方形や円形の吹出口と同様に、一般的な円形開口断面形状のネック部が採用されていた。
【0007】
しかしながら、吹出口の矩形開口断面形状に対し、ネック部の開口形状に円形のものを採用する場合、ネック部で十分な空気流通性能を得るために、ある程度開口径を確保しようにすると、ネック部の開口径が吹出口本体部分の矩形短辺寸法より大きくなることもあり、吹出口本体とネック部を連結するにあたり、吹出口本体のネック部との連結部分を、ネック部の大きさに合わせて拡張した複雑な形状を採らざるを得ないという課題を有していた。また、吹出口本体部分の矩形開口各部と円形開口断面形状として小さくまとまっているネック部との距離が、ネック部から見た各方向ごとに著しく異なる状態となり、ネック部との距離が大きくなる開口部位のある向き、特に矩形の短辺部分のある向きには調和空気の気流が吹出しにくくなるなど、偏流が極めて生じやすいという課題を有していた。
【0008】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、吹出口が矩形開口断面形状となる場合でも矩形開口各部に問題なく適切に調和空気を到達させて、吹出口から各方向に均等に調和空気の気流を吹出すことができ、また吹出風量や吹出方向の調整も行いやすい吹出
口装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る吹出口装置は、ダクトと接続されて調和空気を供給される略筒状のネック部と、前記調和空気が通過する矩形開口断面の開口部を取囲んだ略箱状体として形成され、前記ネック部を経由した調和空気を空気調和の対象空間へ吹出す吹出口本体と、当該吹出口本体内側の前記開口部に配設されて調和空気の吹出す方向を所定の向きに案内する一又は複数の気流案内手段とを有する吹出口装置において、前記ネック部の内側開口部分を閉塞する大きさの略板状体で形成され、ネック部内側又は吹出口本体の開口部におけるネック部近傍位置に配設され、複数の切欠きで区画されて他部分に対し傾動可能な複数の部分遮蔽部を有し、一又は複数の部分遮蔽部の傾動で生じる調和空気の通る開放部分の状態を変化させ、調和空気の進行状態を調整可能とするシャッターを備え、前記ネック部が、吹出口本体の矩形開口断面における矩形の範囲内に収る略楕円形の開口断面形状とされ、且つ当該略楕円形の長軸方向と吹出口本体の矩形開口断面の長辺方向とが、また前記略楕円形の短軸方向と吹出口本体の矩形開口断面の短辺方向とがそれぞれ一致する向きとして吹出口本体と連結され、前記シャッターが、前記部分遮蔽部を、当該部分遮蔽部が傾動されるとネック部の内側開口部分の少なくとも一部が開放状態となるレイアウトとして切欠き形成されるものである。
【0010】
このように本発明によれば、矩形開口断面の吹出口本体に対し、ダクト接続用のネック部を略楕円形の開口断面形状の筒状体として、開口面積を確保しつつ、吹出口本体の開口部の範囲にネック部の開口部分が外れることなく重なる状態でネック部と吹出口本体を連通させると共に、ネック部を閉塞できるシャッターを設けてネック部から吹出口本体開口部への調和空気の進入状態を調整可能とすることにより、シャッターの開放状態で調和空気の気流をダクトからネック部を通じてスムーズに吹出口本体の開口部各部へ到達させられ、偏流を防いで各方向への吹出状態を均一にすることができると共に、ネック部と吹出口本体との連結部分を簡略な構造とすることができ、吹出口全体の製造コストを抑えられる。また、シャッターを各部分遮蔽部ごとに傾動させる角度を変えて閉塞又は開放の度合を調節することで、調和空気の進行状態を変化させて吹出風量の調整や気流吹出方向の調整が行え、空気調和状況に応じた多様な吹出状態を得ることができ、効率よく空気調和が行える。
【0011】
また、本発明に係る吹出口装置は必要に応じて、前記シャッターが、前記ネック部の開口断面形状に対応する略楕円形とされ、切欠き形成される各部分遮蔽部の傾動中心軸をそれぞれネック部の内周面近傍に位置させる配置とされてなり、シャッターのうち、長軸方向端部の略半円形の領域を他部分から分離して独立した一又は複数の略扇状の部分遮蔽部とする一方で、長軸方向端部を除いた中間部分を、少なくとも短軸方向で分割した二つ以上の部分遮蔽部とするものである。
【0012】
このように本発明によれば、シャッターを略楕円形とし、少なくともその長軸方向端部の略半円形の領域と残りの中間部分とを分割してそれぞれ部分遮蔽部として独立して傾動の角度を調整可能とし、各部分遮蔽部をネック部寄り側又は吹出口本体開口部寄り側に傾動させて、ネック部の吹出口本体開口部に対する閉塞又は開放の度合を変化させることにより、調和空気の進行状態を各部分遮蔽部の位置ごとに変化させられ、特に、各部分遮蔽部を吹出口本体開口部寄り側に傾動させれば、部分遮蔽部に気流の案内板としての役割も与えられ、傾動で開放状態としたその部分遮蔽部の位置からの吹出口本体開口部及び気流案内手段側への調和空気のスムーズな進行を促して、部分遮蔽部でその下流側における調和空気の吹出状態に確実に影響を及すことができ、例えば、シャッターの中間部分の部分遮蔽部を、吹出口本体の矩形開口断面形状の開口部における矩形長辺部分からの吹出状態調整に対応させられ、またシャッターの長軸方向端部の部分遮蔽部を、開口部の矩形短辺
部分からの吹出状態調整に対応させられることとなり、それぞれの部分遮蔽部の開放と閉塞の組合わせによって吹出方向の限定等の調整を適切に行えるなど、吹出口を所望の吹出状態に設定できる。
【0013】
また、本発明に係る吹出口装置は必要に応じて、前記ネック部の開口断面形状及びシャッターの外形状が、長軸方向端部の半円形部分に挟まれた中間部分の外縁を直線状とする長円形とされ、前記シャッターが、各部分遮蔽部をシャッターの中心位置に対し対称となる配置として切欠き形成され、シャッターのうち、長軸方向端部の半円形の領域を除いた中間部分が、長軸方向でも複数分割されてそれぞれ略矩形又は略方形の部分遮蔽部とされるものである。
【0014】
このように本発明によれば、ネック部の開口断面形状を長円形とし、同じく外形状を長円形とされるシャッターの各部分遮蔽部をシャッターの中心について対称をなす配置とすると共に、シャッターの長軸方向端部を除く中間部分に複数の部分遮蔽部を長軸方向に並んだ状態とすることにより、吹出口本体がアスペクト比の大きい矩形開口断面を有する形状の場合でも、長円形の開口断面形状とされるネック部をその開口面積を確保しつつ無理なく吹出口本体に連通状態として、調和空気を吹出口本体の開口部に問題なく導入でき、シャッターの対称配置とされた各部分遮蔽部で吹出状態を適切にバランスよく調整しながら、調和空気をスムーズに吹出口本体から吹出せる。また、シャッターの中間部分を長軸方向に細かく分割することで、それぞれの部分遮蔽部の開放と閉塞の組合わせで吹出方向の限定等の調整をより柔軟に行え、例えば吹出口本体がアスペクト比の大きい矩形開口断面を有する形状の場合には、吹出口本体の開口部の実際に調和空気を吹出す領域を開口部長手方向に一又は複数限定して部分的に吹出す状態を得られるなど、吹出状態の調整をさらに細かく実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る吹出口装置の概略斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る吹出口装置の天井取付状態底面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る吹出口装置の平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る吹出口装置の縦断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る吹出口装置におけるシャッター上向き傾動状態の概略平面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る吹出口装置におけるシャッター起立状態の概略平面図である。
【図7】図6のA−A断面図である。
【図8】図6のB−B断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る吹出口装置におけるシャッター下向き傾動状態の第一例の概略平面図である。
【図10】図9のC−C断面図である。
【図11】図9のD−D断面図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る吹出口装置におけるシャッター下向き傾動状態の第一例の調和空気吹出状態説明図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る吹出口装置におけるシャッター下向き傾動状態の第二例の概略平面図である。
【図14】本発明の一実施形態に係る吹出口装置におけるシャッター下向き傾動状態の第二例の調和空気吹出状態説明図である。
【図15】本発明の一実施形態に係る吹出口装置におけるシャッター下向き傾動状態の第三例の概略平面図である。
【図16】本発明の一実施形態に係る吹出口装置におけるシャッター下向き傾動状態の第三例の調和空気吹出状態説明図である。
【図17】本発明の一実施形態に係る吹出口装置におけるシャッター下向き傾動状態の第四例の概略平面図である。
【図18】本発明の一実施形態に係る吹出口装置におけるシャッター下向き傾動状態の第四例の調和空気吹出状態説明図である。
【図19】本発明の一実施形態に係る吹出口装置におけるシャッター下向き傾動状態の第五例の概略平面図である。
【図20】本発明の一実施形態に係る吹出口装置におけるシャッター下向き傾動状態の第五例の調和空気吹出状態説明図である。
【図21】本発明の一実施形態に係る吹出口装置におけるシャッター下向き傾動状態の第六例の概略平面図である。
【図22】本発明の一実施形態に係る吹出口装置におけるシャッター下向き傾動状態の第六例の調和空気吹出状態説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る吹出口装置を前記図1ないし図22に基づいて説明する。
【0017】
前記各図において本実施形態に係る吹出口装置1は、天井50内でダクト51と接続されて調和空気を供給される筒状のネック部11と、矩形開口断面の開口部12aを取囲んだ略箱状体として形成され、ネック部11と連結して空気調和対象の室内空間における天井50に配設される吹出口本体12と、この吹出口本体12内側の開口部12aに配設されて調和空気の吹出す方向を所定の向きに案内する前記気流案内手段としての中コーン13と、ネック部11の内側開口部分を閉塞する大きさの略板状体で形成され、ネック部11内側における吹出口本体12とネック部11との連結部分近傍となる箇所に配設されるシャッター14とを備える構成である。
【0018】
前記ネック部11は、略楕円形、より厳密には長軸方向端部の半円形部分に挟まれた中間部分の外縁を直線状とする長円形の開口断面形状とされる筒体であり、吹出口本体12上側に一体に連結されて吹出口本体と共に天井50に配設され、調和空気供給用のダクト51と接続される構成である。
【0019】
このネック部11における長円形の開口断面形状は、吹出口本体12の矩形開口断面における矩形の範囲内に収る形状とされる。そしてネック部11は、その長円形開口断面の長軸方向と吹出口本体12の矩形開口断面の長辺方向とが一致し、また長円形開口断面の短軸方向と吹出口本体12の短辺方向とが一致する向きとして吹出口本体12に連結されることで、吹出口本体12の矩形開口断面の範囲内で最大限の開口面積を確保できるようにしている。
【0020】
前記吹出口本体12は、調和空気の通過する矩形開口断面の開口部12aを取囲む、金属等の強度の高い材質製で上下端部の開口した略箱状体として形成され、天井50に格子状に組立配設されたグリッド天井用の公知の支持枠52に同じく公知の取付用プレート53等を介して他の照明器具54などと共に支持される構成である(図2参照)。この吹出口本体12は、上部に一体に連結するネック部11を通じてダクト51からの調和空気を開口部12aに導入し、空気調和対象の室内空間に面する下部から、調和空気を中コーン13に沿わせつつ室内空間に吹出す仕組みである。
【0021】
この吹出口本体12と連結するネック部11を、長円形の開口断面形状を有する筒状体とし、ネック部11の開口面積を確保しつつ、その開口断面形状を吹出口本体12の矩形開口断面の矩形の範囲内に収るものとしていることで、吹出口本体12とネック部11との連結構造を、従来のネック部が吹出口本体開口部の本来の幅より大きい円形開口断面形
状である場合のように、吹出口本体に対しその側方へはみ出すネック部の接続を成立させるために、ネック部に合わせて吹出口本体入口側を拡張するなど、複雑で無駄の多いものとする必要はなく、吹出口全体で簡略な構造にでき、製造コストを抑えられる。
【0022】
加えて、ネック部11が長円形の開口断面形状を有することに伴い、従来の円形開口断面形状であるネック部の場合と比べて、吹出口本体12の矩形開口断面における短辺部分、すなわち吹出口本体開口部12aの長手方向端部にもネック部11の開口を十分に近付けることができ、こうした従来はネック部から離れて調和空気の気流が到達しにくかった箇所にも、調和空気を到達させやすい仕組みである。
【0023】
一方、略箱状をなす吹出口本体12の室内空間側の端部には、矩形開口断面形状を保ちつつ室内空間側に向けて拡開形状となる外コーン部12bが形成されると共に、この外コーン部12bの下端部から開口部12aに対する外側方向に突出する額縁部12cが形成される構成である。この額縁部12cは、外コーン部12b下端部から開口部12aとは反対側となる外方へ所定幅突出する部分を周方向へ連続させて略鍔状とし、さらにその最外周部分を上方へ起立状態とした形状とされる構成である。この額縁部12cが、前記公知の取付用プレート53等に支持されることで、吹出口本体12は天井50に固定される仕組みである。
【0024】
前記中コーン13は、角錐台状の拡開形状となる羽根体を複数組合わせて形成され、最外周部分の傾斜面を吹出口本体12の外コーン部12b内側面に対向させて、いずれの羽根体も室内空間側に向けて拡開状となる配置として、吹出口本体12内側の開口部12aにおける室内空間寄り位置に配設される構成である。この中コーン13は、従来の多層コーン型吹出口に用いられる公知の中コーンと同様のものであり、詳細な説明を省略する。
【0025】
前記シャッター14は、ネック部11の内側開口部分を閉塞する大きさとされる、ネック部11開口断面形状同様の長円形をなす、金属等の塑性変形可能な材質製の略板状体、及びその表面を覆う不織布等の吸音性素材製のシートで形成され、吹出口本体12とネック部11との連結部分近傍となるネック部11内側に配設される構成である。このシャッター14は、前記略板状体の各部に複数の切欠きを設けられ、この切欠きで区画される複数の所定部分を、シャッター14の他部分に対し所望の角度に傾動させられる部分遮蔽部14a、14b、14c、14d、14e、14f、14g、14hとされてなり、この複数の部分遮蔽部14a、…、14hを傾動させて生じる開放部分が気流通過部位となる。これにより、部分遮蔽部14a、…、14hの傾動させる角度を変化させれば気流の通過が影響を受けることとなり、調和空気の下流側への進行状態、すなわち、開口部12aにおける外コーン部12bと中コーン13との間を通って室内空間に吹出す調和空気の気流の進行状態、を調整できる仕組みである。
【0026】
シャッター14の部分遮蔽部14a、…、14hは、所望の傾斜角度に傾動されてネック部11から吹出口本体12の開口部12aに向う調和空気の気流通路の開口面積を調整するだけでなく、下向きに傾動させた場合、部分遮蔽部14aは気流の案内板としても機能することとなり、気流の拡散を防いで部分遮蔽部14a、…、14hの傾斜方向に気流を直進させることができ、部分遮蔽部14a、…、14hの傾斜角度による開放状態変化に伴って調整された、その部分遮蔽部14a、…、14h位置から下流側に向う気流の通過量の、各部分遮蔽部ごとにそれぞれ異なる調整結果が、下流側の中コーン13付近の開口部12aにおける各部分遮蔽部に対応する各位置でも明確に反映されるようにしている。
【0027】
すなわち、部分遮蔽部を傾動させず閉じた部分と、部分遮蔽部を下向きに傾動させて開いた部分とのそれぞれの下流側における気流の差異が明確に生じることとなる。
【0028】
シャッター14における各部分遮蔽部14a、…、14hは、その傾動の中心軸がネック部11の内周面近傍に位置する配置となるようにしてそれぞれ形成され、下向き又は上向きの傾動でネック部11の内側開口部分の中央寄りが大きく開放状態となる仕組みとされる。このシャッター14の長軸方向端部の半円形の領域は、他部分から切欠きで分離されて独立した複数の略扇状の部分遮蔽部14a、14b、14g、14hとされる。一方、シャッター14の長軸方向端部の半円形の領域を除いた中間部分は、短軸方向中央位置の切欠きで分割されると共に、長軸方向でも複数に分割されて、それぞれ略矩形の部分遮蔽部14c、14d、14e、14fとされる構成である。これら各部分遮蔽部14a、…、14hは、シャッター14の中心位置に対し対称となる配置で形成されている。
【0029】
このシャッター14は、切欠き部分を含む略板状体の両面全体に吸音性素材製のシートを貼設し、切欠きの幅方向中間位置でシートを切断して、切欠きで区画される複数の部分遮蔽部14a、…、14hを傾動可能としつつ、略板状体における部分遮蔽部14a、…、14hの周囲を含む各縁部をシートで覆われた状態とされる仕組みである。略板状体の縁部を吸音性素材製のシートが覆っていることで、風切り音や上流側から伝播する騒音を抑えることができる。
【0030】
また、シートが略板状体の縁部をはみ出して切欠きの幅方向中間位置まで達していることで、部分遮蔽部14a、…、14hを傾動させていない場合には、シートが切欠きを塞ぐこととなる。この場合、調和空気の気流が部分遮蔽部間の切欠きを通過するようなことはなく、シートによって、部分遮蔽部を傾動させず閉じた状態と、部分遮蔽部を下向きに傾動させて開いた状態との気流の差異がより顕著に生じるようにしている。
【0031】
なお、シャッター14のシートについては、図3の平面図を除いて、切欠きで区画された各部分遮蔽部14a、…、14hの傾動状態が明瞭にあらわれるように、その記載を省略している。
【0032】
次に、前記構成に基づく吹出口装置における吹出風量及び吹出方向調整状態について説明する。吹出口装置1を実際に使用する前の段階で、吹出口本体12に近いネック部11の内側に設けられたシャッター14に対し、シャッター14の各部分遮蔽部14a、…、14hを傾動させて、調和空気の吹出風量や吹出方向の調整された状態を得る。
【0033】
調和空気が各方向に制限なく吹出される通常の吹出状態を維持しつつ、全体の吹出風量を調整する場合は、シャッター14の各部分遮蔽部14a、…、14hの傾動状態を一様にネック部11寄り、すなわち上向きに起した状態とする(図5参照)。ここで、傾動による傾斜で生じたネック部11の内側開口部分における中央寄りの開放部分の大きさが大きいほど、すなわち各部分遮蔽部14a、…、14hの傾動していない状態からの傾斜角度が大きいほど、この開放部分を通過する調和空気の流量は大きくなり、最終的な吹出風量も大きくなる。特に、各部分遮蔽部14a、…、14hを垂直に起立させた状態(図6参照)では、シャッター14はほぼ全開となって、最大の吹出風量が得られることとなり、この場合、調和空気の気流にほとんど抵抗を与えずにシャッター14位置を通過させて、吹出口本体12の開口部12aに進入させられる。
【0034】
このようにシャッター14の各部分遮蔽部14a、…、14hの傾動状態が一様で、シャッター14による調和空気の気流の偏りが生じない場合、矩形開口断面の吹出口本体12に対して、ネック部11を長円形の開口断面としており、吹出口本体12の開口部12aの矩形の範囲にネック部11の開口部分が外れることなく適切に広く重なる状態でネック部11と吹出口本体12が連通すると共に、ネック部11に十分な開口面積を確保させられる構造であることから、調和空気の気流をネック部11を通じてスムーズに吹出口本
体12の開口部12a各部へ到達させられ、偏流を防止でき、調和空気の気流は、開口部12aにおける外コーン部12bと中コーン13との間を通ってまんべんなく室内空間に吹出すこととなり、シャッター14で吹出風量を調整されつつも、各方向への吹出状態を均一にすることができる。
【0035】
一方、吹出口から所望の方向への調和空気吹出を実行する吹出方向調整の場合、シャッター14の各部分遮蔽部14a、…、14hのうち、吹出させたい向きに対応する位置の部分遮蔽部のみを吹出口本体12の開口部12a寄り、すなわち下向きに傾動させた状態とする。このとき、傾動による傾斜で開放部分を生じさせた部分遮蔽部位置では、調和空気が通過する一方、傾動させていない部分遮蔽部位置では、調和空気の通過が阻止される。
【0036】
調和空気は、傾動させた部分遮蔽部位置で下向きの部分遮蔽部に沿って下流側に向い、こうした部分遮蔽部を下向きに傾動させた部分の下流側にのみ調和空気の気流が到達することから、気流案内手段である中コーン13による気流案内の効果も、部分遮蔽部を下向きに傾動させて開放した部分の下流側でのみ生じる。よって、調和空気の気流は、傾動させた部分遮蔽部に対応する開口部12a所定位置における、外コーン部12bと中コーン13との間を通って室内空間に吹出すこととなり、吹出方向が限定された状態となる。
【0037】
ここで、複数の部分遮蔽部14a、…、14hのうちの一部のみを下向きに傾動させて開放部分を生じさせた場合の、調和空気の吹出方向調整状態について具体的に説明する。まず第一例として、シャッター14の長軸方向両端部のうち一方の端部の部分遮蔽部14a、14bのみ傾動させ、他方の端部の部分遮蔽部14g、14hはそのまま傾動させない状態とし、さらに、中間部分の部分遮蔽部14c、14d、14e、14fのうち、長軸方向の前記一方の端部寄りの部分遮蔽部14c、14dは傾動させ、他方の端部寄りの部分遮蔽部14e、14fは傾動させない状態とする(図9参照)と、調和空気の気流は、シャッター14の部分遮蔽部14a、14b、14c、14dを傾斜させて生じた開放部分を通過し、吹出口本体開口部12aの矩形開口断面における、前記長軸方向の一方の端部がある側の一の短辺部分に達することに加え、二つの長辺部分の前記一の短辺近傍部位にも達することとなる。こうして、調和空気の気流が前記一の短辺部分から外向きに吹出すことに加え、二つの長辺部分の前記一の短辺近傍からも外向きに吹出す、三方向への吹出状態が得られる(図12参照)。
【0038】
この場合、シャッター14の長軸方向中間部分を複数分割して複数の部分遮蔽部14c、14d、14e、14fとした上で、一方の部分遮蔽部14c、14dと他方の部分遮蔽部14e、14fの傾斜状態を異ならせていることで、吹出口本体開口部12aの矩形開口断面における長辺部分での実際に調和空気が吹出される範囲を、長辺部分全体でなく前記一の短辺近傍の一部に限定でき、室内空間での限られた空気調和要求に対しても柔軟な対応が図れることとなる。
【0039】
続いて、第二例として、シャッター14の長軸方向両端部の各部分遮蔽部14a、14b、14g、14hを傾動させ、また、中間部分の部分遮蔽部14c、14d、14e、14fのうち、ネック部11の一方の内周面平面部分に沿う部分遮蔽部14c、14eは傾動させ、他方の内周面平面部分に沿う部分遮蔽部14d、14fは傾動させない状態とする(図13参照)と、調和空気の気流は、シャッター14の部分遮蔽部14a、14b、14c、14e、14g、14hを傾動させて生じた開放部分を通過し、吹出口本体開口部12aの矩形開口断面における、前記ネック部11の一方の内周面平面部分のある側の一の長辺部分に達することに加え、二つの短辺部分にも達することとなる。こうして、調和空気の気流が前記一の長辺部分から外向きに吹出すことに加え、二つの短辺部分からも外向きに吹出す、三方向への吹出状態が得られる(図14参照)。
【0040】
また、第三例として、シャッター14の長軸方向両端部の各部分遮蔽部14a、14b、14g、14hのみを傾動させ、中間部分の部分遮蔽部14c、14d、14e、14fはそのまま傾動させない状態とする(図15参照)と、調和空気の気流は、シャッター14の部分遮蔽部14a、14b、14g、14hを傾動させて生じた開放部分を通過し、吹出口本体開口部12aの矩形開口断面における二つの短辺部分に達することとなる。こうして、調和空気の気流が二つの短辺部分から外向きに吹出す、二方向への吹出状態が得られる(図16参照)。
【0041】
また、第四例として、シャッター14の長軸方向両端部の各部分遮蔽部14a、14b、14g、14hは全て傾動させない一方で、中間部分の部分遮蔽部14c、14d、14e、14fはいずれも傾動させた状態とする(図17参照)と、調和空気の気流は、シャッター14の部分遮蔽部14c、14d、14e、14fを傾動させて生じた開放部分を通過し、吹出口本体開口部12aの矩形開口断面における二つの長辺部分に達することとなる。こうして、調和空気の気流が二つの長辺部分から外向きに吹出す、二方向への吹出状態が得られる(図18参照)。
【0042】
また、第五例として、シャッター14の長軸方向両端部のうち一方の端部の部分遮蔽部14a、14bのみ傾動させ、他方の端部の部分遮蔽部14g、14hはそのまま傾動させない状態とすると共に、中間部分の部分遮蔽部14c、14d、14e、14fも全て傾動させない状態とする(図19参照)と、調和空気の気流は、シャッター14の部分遮蔽部14a、14bを傾動させて生じた開放部分を通過し、吹出口本体開口部12aの矩形開口断面における、前記長軸方向の一方の端部がある側の一の短辺部分に達することとなる。こうして、調和空気の気流が前記一の短辺部分からのみ外向きに吹出す、一方向への吹出状態が得られる(図20参照)。
【0043】
さらに、第六例として、シャッター14の長軸方向両端部の各部分遮蔽部14a、14b、14g、14hは全て傾動させず、また、中間部分の部分遮蔽部14c、14d、14e、14fのうち、ネック部11の一方の内周面平面部分に沿う部分遮蔽部14c、14eは傾動させ、他方の内周面平面部分に沿う部分遮蔽部14d、14fは傾動させない状態とする(図21参照)と、調和空気の気流は、シャッター14の部分遮蔽部14c、14eを傾動させて生じた開放部分を通過し、吹出口本体開口部12aの矩形開口断面における、前記ネック部の一方の内周面平面部分のある側の一の長辺部分に達することとなる。こうして、調和空気の気流が前記一の長辺部分から外向きに吹出す、一方向への吹出状態が得られる(図22参照)。
【0044】
このように、本実施形態に係る吹出口装置においては、矩形開口断面の吹出口本体12に対し、ダクト接続用のネック部11を長円形の開口断面形状の筒状体として、開口面積を確保しつつ、吹出口本体12の開口部12aの範囲にネック部11の開口部分が外れることなく重なる状態でネック部11と吹出口本体12を連通させると共に、ネック部11を閉塞できるシャッター14を設けてネック部11から吹出口本体開口部12aへの調和空気の進入状態を調整可能とすることから、シャッター14の開放状態で調和空気の気流をダクト51からネック部11を通じてスムーズに吹出口本体12の開口部12a各部へ到達させられ、偏流を防いで各方向への吹出状態を均一にすることができると共に、ネック部11と吹出口本体12との連結部分を簡略な構造とすることができ、吹出口全体の製造コストを抑えられる。また、シャッター14を各部分遮蔽部14a、…、14hごとに傾動させて傾斜角度を変えて閉塞又は開放の度合を調節することで、調和空気の進行状態を変化させて吹出風量の調整や気流吹出方向の調整が行え、空気調和状況に応じた多様な吹出状態を得ることができ、効率よく空気調和が行える。
【0045】
なお、前記実施形態に係る吹出口装置においては、シャッター14における長軸方向一端部の略半円形の領域を二つの部分遮蔽部14a、14bに分割し、また長軸方向他端部の略半円形の領域も二つの部分遮蔽部14g、14hに分割する構成としているが、これに限らず、吹出口装置の大きさや矩形開口の長辺寸法と短辺寸法の比、ネック部の略楕円形開口断面の長軸寸法と短軸寸法の比等の条件に応じて、シャッター14の長軸方向両端部の各略半円形領域をそれぞれ分割しない一つの部分遮蔽部としたり、それぞれ三つ以上の部分遮蔽部に分割する構成としてもかまわない。また、シャッター14の長軸方向両端部の半円形の領域を除いた中間部分を、短軸方向中央位置の切欠きで分割するだけでなく、長軸方向でも分割して、略矩形となる四つの部分遮蔽部14c、14d、14e、14fを設ける構成としているが、この他、シャッターの長軸寸法と短軸寸法の比がより大きくなる場合は、シャッターの前記中間部分を長軸方向に三つ以上の分割数となるように分割して六つ以上の部分遮蔽部を設けるようにする一方、シャッターの長軸寸法と短軸寸法の比が小さくなる場合には、シャッターの前記中間部分を長軸方向には分割せず、短軸方向にのみ分割して二つの部分遮蔽部を得る構成とすることもでき、シャッターの形に対応した長軸方向分割数とすることで、吹出口開口部の矩形開口断面における長辺部分から吹出す調和空気の気流を適切に調整できることとなる。
【0046】
また、前記実施形態に係る吹出口装置において、シャッター14における各部分遮蔽部14a、…、14hは、その傾動の中心軸がネック部11の内周面近傍に位置する配置となるようにしてそれぞれ形成され、部分遮蔽部の下向き又は上向きの傾動で、ネック部11の内側開口部分の中央寄りが大きく開放状態となる構成としているが、これに限らず、各部分遮蔽部の傾動中心軸位置を、シャッターにおける各部分遮蔽部の配置形態や配置数、傾動した部分遮蔽部に沿わせて調和空気の気流を進行させたい向き等に応じて、シャッターの任意の箇所に適宜設定することもでき、この場合、シャッターの傾動で開放するのが、ネック部の内側開口部分の少なくとも一部であれば、開口部分中央以外の部位、例えば開口部分端部寄りとなってもかまわない。
【0047】
また、前記実施形態に係る吹出口装置においては、吹出口本体12をグリッド天井の一部として設けるのに適した構成としているが、これに限らず、いわゆるシステム天井や在来型の天井への取付けに対応した構成とすることもできる。
【0048】
さらに、前記実施形態に係る吹出口装置においては、気流案内手段として中コーン13を配設した多層コーン型の吹出口構成としているが、これに限らず、中パン等他の気流案内手段を設けて、別タイプの吹出口とすることもできる。
【符号の説明】
【0049】
1 吹出口装置
11 ネック部
12 吹出口本体
12a 開口部
12b 外コーン部
12c 額縁部
13 中コーン
14 シャッター
14a、14b、14c、14d 部分遮蔽部
14e、14f、14g、14h 部分遮蔽部
50 天井
51 ダクト
52 支持枠
53 取付用プレート
54 照明器具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダクトと接続されて調和空気を供給される略筒状のネック部と、前記調和空気が通過する矩形開口断面の開口部を取囲んだ略箱状体として形成され、前記ネック部を経由した調和空気を空気調和の対象空間へ吹出す吹出口本体と、当該吹出口本体内側の前記開口部に配設されて調和空気の吹出す方向を所定の向きに案内する一又は複数の気流案内手段とを有する吹出口装置において、
前記ネック部の内側開口部分を閉塞する大きさの略板状体で形成され、ネック部内側又は吹出口本体の開口部におけるネック部近傍位置に配設され、複数の切欠きで区画されて他部分に対し傾動可能な複数の部分遮蔽部を有し、一又は複数の部分遮蔽部の傾動で生じる調和空気の通る開放部分の状態を変化させ、調和空気の進行状態を調整可能とするシャッターを備え、
前記ネック部が、吹出口本体の矩形開口断面における矩形の範囲内に収る略楕円形の開口断面形状とされ、且つ当該略楕円形の長軸方向と吹出口本体の矩形開口断面の長辺方向とが、また前記略楕円形の短軸方向と吹出口本体の矩形開口断面の短辺方向とがそれぞれ一致する向きとして吹出口本体と連結され、
前記シャッターが、前記部分遮蔽部を、当該部分遮蔽部が傾動されるとネック部の内側開口部分の少なくとも一部が開放状態となるレイアウトとして切欠き形成されることを
特徴とする吹出口装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の吹出口装置において、
前記シャッターが、前記ネック部の開口断面形状に対応する略楕円形とされ、切欠き形成される各部分遮蔽部の傾動中心軸をそれぞれネック部の内周面近傍に位置させる配置とされてなり、
シャッターのうち、長軸方向端部の略半円形の領域を他部分から分離して独立した一又は複数の略扇状の部分遮蔽部とする一方で、長軸方向端部を除いた中間部分を、少なくとも短軸方向で分割した二つ以上の部分遮蔽部とすることを
特徴とする吹出口装置。
【請求項3】
前記請求項2に記載の吹出口装置において、
前記ネック部の開口断面形状及びシャッターの外形状が、長軸方向端部の半円形部分に挟まれた中間部分の外縁を直線状とする長円形とされ、
前記シャッターが、各部分遮蔽部をシャッターの中心位置に対し対称となる配置として切欠き形成され、
シャッターのうち、長軸方向端部の半円形の領域を除いた中間部分が、長軸方向でも複数分割されてそれぞれ略矩形又は略方形の部分遮蔽部とされることを
特徴とする吹出口装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−57846(P2012−57846A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200180(P2010−200180)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000164553)空研工業株式会社 (28)
【出願人】(591219429)空調技研工業株式会社 (22)
【Fターム(参考)】