説明

周囲空気中に存在する粒子及び微生物を捕集し、分離するための装置

周囲空気中に存在する粒子及び微生物を捕集し、分離するための、捕集された粒子及び微生物を含有する液体試料を輸送するための容器を形成する脱着可能な遠心分離チャンバ(10)の中に空気を取り込むための取込み手段(36、38)を含む装置であって、このチャンバが、毎分約100リットル〜2000リットルの取込み速度に対応する異なる直径を有するチャンバのセットから選択され、これらの速度が同じ取込み手段によって達成される装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周囲空気中に存在する粒子及び微生物を同定し、カウントするために、そのような粒子及び微生物を捕集し、分離するための装置に関する。
【0002】
製薬産業、食品産業、医療環境、衛生サービス、獣医学的サービス、サイトモニタリングなどのような数多くの分野で、捕集する粒子及び微生物の寸法が0.5マイクロメートル(μm)〜数十マイクロメートルの範囲にある状態で、そのような同定及びカウントを実施することが重要である。
【0003】
特許文献FR−A−2855831は、空気吸引手段と関連した脱着可能な遠心分離エンクロージャを含むこのタイプの装置であって、そのエンクロージャが、空気入口及び空気出口を有し、捕集された粒子及び微生物を含有する液体試料を輸送するための容器を形成するものである装置を開示している。
【0004】
粒子及び微生物に適用される試料採取特性を、そのような試料が採取される場合の条件の関数として、たとえば
・屋内又は屋外、
・連続的である、又は長期に及ぶ、又はアラーム発動時のモニタリングの目的、
・捕集される微生物の特性の関数として、
変化させることができることが望ましい。
【0005】
アラーム発動時には、特に、結果をできるだけ速やかに得るために、高い吸引速度で試料を採取することが望ましい。逆に、モニタリング目的で試料を採取する場合、低めの速度を長めの期間にわたって使用することが可能である。
【0006】
同様に、特定の微生物を保存する場合にも、比較的低い吸引速度がより適している。
【0007】
現在、周囲空気中に存在する粒子及び微生物を捕集し、分離するための装置であって、採取される試料の質及び確実性を維持する条件下、吸引流量を広い範囲で変化させることができる装置は存在しない。
【0008】
本発明の特定の目的は、この必要性を満足させることである。
【0009】
このために、本発明は、周囲空気中に存在する粒子及び微生物を捕集し、分離するための、空気出入り口を有し、捕集された粒子及び微生物を含有する液体試料を輸送するための受け器を形成する脱着可能な遠心分離チャンバの中に空気を吸引するための吸引手段を含む装置であって、前記エンクロージャが、前記吸引手段が毎分約100リットル〜毎分約2000リットルの範囲にある吸引速度で試料を採取することを可能にするのに適した、異なる直径を有するエンクロージャのセットから選択されることを特徴とする装置を提供する。
【0010】
遠心分離エンクロージャの直径を変化させることにより、試料採取の質及び確実性を保証しながらも吸引流量を広い範囲で変化させることが可能である。
【0011】
本発明の実施態様では、エンクロージャの直径は、毎分約100リットル〜毎分約2000リットルの範囲にある吸引速度の場合で、約20mm〜約100mmの範囲にある。
【0012】
各遠心分離エンクロージャは、空気入口に接続された円柱形の上部及び試料採取液が蓄積する円錐形の下部を含む。各エンクロージャ中で多少なりとも同一であり、エンクロージャの寸法にかかわらず同じ分離効率を有する試料採取液の量を保存するためには、少なくとも最大のエンクロージャの円錐形部分の下端が切頭されていることが有利である。
【0013】
本発明の他の特徴にしたがって、
・エンクロージャは、試料採取パイプにより、空気吸引手段を含むチャンバに接続されており、前記チャンバは、おそらくは、その動作位置で水平又は垂直に配置され、
・装置は、エンクロージャ中の液体の量を測定及び/又はモニタリングするための手段及び液体をエンクロージャの中に注入するための脱着可能な手段を含み、
・装置は、前記エンクロージャの中に吸引される空気の流量を計測するための手段を含み、前記手段は、エンクロージャを空気吸引手段に接続する試料採取パイプに取り付けられた圧力センサを含み、
・圧力センサが試料採取パイプに取り付けられる位置は、パイプの、エンクロージャに接続された端部における屈曲部から離れているとともに、吸引手段から離れており、
・装置は、たとえばペルチェ効果熱電素子を備えた冷却コンパートメントの中に配置された試料捕集フラスコを含み、
・エンクロージャは、捕集フラスコの中に排液するための手段をその下端に含み、
・エンクロージャは、脱着可能な空気出入り口要素を備え、空気入口は一方向又は全方向タイプである。
【0014】
添付図面を参照しながら例として記載する以下の詳細な説明を読むことにより、本発明がより良く理解され、他の特徴、詳細及び利点がより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1a】ある寸法の試料採取エンクロージャの立面図である。
【図1b】ある寸法の試料採取エンクロージャの軸方向断面図である。
【図2a】ある寸法の試料採取エンクロージャの立面図である。
【図2b】ある寸法の試料採取エンクロージャの軸方向断面図である。
【図3a】ある寸法の試料採取エンクロージャの立面図である。
【図3b】ある寸法の試料採取エンクロージャの軸方向断面図である。
【図4】異なる寸法のエンクロージャの場合に所与のモータを用いて達成することができる吸引速度を示すグラフである。
【図5】エンクロージャの全体形状をその下端を切頭した状態で示す図である。
【図6】吸引速度を計測するための圧力センサを備えた本発明の装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1a〜3bには、遠心分離エンクロージャ10が空気出入り口要素12とともに示されており、それらは直径が異なり、図1a及び1bのエンクロージャ10は直径30mmであり、図2a及び2bのエンクロージャ10は直径40mmであり、図3a及び3bのエンクロージャ10は直径50mmである。
【0017】
空気出入り口要素12は、エンクロージャの、下端18に向けて断面が縮小する円錐形の下部16に接続されている円柱形の上部14を覆い、その下端は、図1a及び1bならびに2a及び2bの小さめのエンクロージャの場合に示すように閉じられていてもよいし、図3a及び3bのエンクロージャの場合に示すように、エンクロージャから捕集フラスコに排液するために液体を送り出すためのチューブ及び弁20を備えていてもよく、この出口チューブ20は、開閉手段、たとえばクランプ、ソレノイド弁などを有する。
【0018】
各エンクロージャに装着された空気出入り口要素12は、一方向入口を有し、J字形の試料採取パイプ(図6に示す)に接続するための軸方向のエンドピース22が形成されている横断方向の上壁と、部分接触する空気入口24が形成された円柱状壁と、エンクロージャ10の円柱形の上部14の上に嵌り、エンクロージャ10の上部14に解放自在に固着するための円柱形のスカート26を含む開口した下端とを含む。空気出入り口要素12は、適切なやり方で、たとえばクイックねじ固着、差込み固着、弾性スナップ固着などで、エンクロージャ10に固着させることができる。
【0019】
これらのエンクロージャを用いて達成することができる吸引速度が図4に示されており、図中、空気吸引速度が横軸にプロットされ、本質的にエンクロージャの空気入口24で起こる水頭損失(Head loss)が縦軸にプロットされている。
【0020】
到達可能な吸引速度は、使用される吸引手段の関数であり、吸引モータの特性曲線M及びエンクロージャの気流特性から決定することができる。図4では、曲線Aは、直径30mmの図1a及び1bのエンクロージャ10の場合の吸引流量の関数としての水頭損失を表し、矢印F1は、このエンクロージャの場合に到達可能な流量、すなわち毎分約280リットルを示す。
【0021】
同様に、曲線Bは、直径40mmの図2a及び2bのエンクロージャ10の場合の吸引流量の関数としての水頭損失の変化を表し、矢印F2は、このエンクロージャを用いて到達可能な流量が毎分約440リットルであることを示す。曲線Cは、直径約50mmの図3a及び3bのエンクロージャ10の場合の吸引流量の関数としての水頭損失の変化を表し、矢印F3は、毎分約610リットルである、到達可能な流量に対応している。曲線Dは、直径60mmのエンクロージャ10の場合の吸引流量の関数としての水頭損失の変化を表し、矢印F4によって示される、対応する到達可能流量は毎分約750リットルである。
【0022】
一般に、捕集効率は、三つの要因、すなわち、吸引における捕獲効率、エンクロージャ内での分離効率及びエンクロージャに含まれる液体からの回収効率の積である。
【0023】
捕獲効率及び分離効率は、捕獲される粒子の粒度又は吸引流量の変化には比較的依存しない。液体回収効率は、エンクロージャ10の壁が洗浄される際の質、エンクロージャに含まれる液体の量及びエンクロージャ中の気流速度に依存する。特に、前記速度が、直径50mmのエンクロージャの場合で毎分約500リットル及び毎分700リットルの体積流量にそれぞれ対応する下限と上限との間、直径60mmのエンクロージャの場合で毎分約700リットル及び毎分約1000リットルの体積流量にそれぞれ対応する下限と上限との間にとどまることが必要である。
【0024】
エンクロージャに含まれる液体の量及びエンクロージャ中の気流速度は、エンクロージャの壁が正しく洗浄されることを保証するのに十分でなければならず、エンクロージャの外への液滴の飛沫同伴を防止又は少なくとも制限しなければならない。理由は、このようにして失われる液体は、同定し、カウントすることができない粒子及び微生物を含有するからである。
【0025】
大きめのサイズのエンクロージャ、特に直径50mm又は60mmのエンクロージャが多すぎる量の液体を含むことを防ぐため、図5で表すように、その下端を切頭することにより、エンクロージャの円錐形の下部16の高さを減らすことが可能である。これは、試料を採取するときにエンクロージャ10に含まれる液体の量を約10mL〜15mL減らすことを可能にし、それにより、より小さな寸法のエンクロージャ10に含まれる液体の量に近づけることを可能にする。
【0026】
このように、図5のエンクロージャ10で使用される液体の量は、たとえば15mLであるかもしれない所要量に匹敵するようになり、それにより、エンクロージャが変更されても実質的に一定のままである分離及び回収効率を保証する。
【0027】
また、試料採取の終了までに実際に吸引された空気の量を正確に知ることが重要である。カウント結果は、常に、吸引された空気の量に対して相対的である。エンクロージャ10を覆う空気出入り口要素32と、ここでは電気モータ38によって駆動されて回転するプロペラ36によって構成される空気吸引手段を含むチャンバ34とを相互接続する試料採取パイプ30(図6)に接続することができる安価な圧力センサ28によって流量を内部的に計測することが可能である。図6の例では、空気出入り口要素32は全方向空気入口を有し、空気は、エンクロージャ10の円柱形の上部14の周囲からフィルタ40を通して吸引される。
【0028】
センサ28によって計測される水頭損失と吸引空気の流量との間の良好な相関関係があることを試験によって確認した。センサ28は、試料採取パイプ30に対し、その屈曲部よりも下流で接続されることが好ましく、前記屈曲部とセンサ28の接続点との間の距離は、たとえば、試料採取パイプ30の直径の約10倍であり、また、接続点は、チャンバ34の入口に近すぎないことが好ましく、センサ28は、試料採取パイプ30の直径の約3〜4倍に相当する距離だけそこから離間している必要がある。
【0029】
実例として、接続での負圧レベルは、直径40mmのエンクロージャ10を用いて毎分500リットルの流量の場合、約100mbarである。使用されるセンサ28は、差圧計測値を提供するセンサである。すなわち、周囲大気圧に対する圧力降下を計測する。また、試料採取を始める前に周囲大気圧を測定するために使用することもできる絶対圧センサを使用することも可能である。
【0030】
空気吸引手段36、38を含むチャンバ34は、エンクロージャ10の下部に含まれる液体試料を捕集するためのフラスコを含む、たとえばペルチェ効果熱電素子によって冷却されるコンパートメントを含むことができる。これは、液体試料が試料採取後すぐには操作者によって捕集されない場合、液体試料を所定の低温、たとえば8℃で保存することを可能にする。冷却コンパートメントは外部環境から断熱される。
【0031】
チャンバ34内には、試料採取開始前に液体をエンクロージャ10に注入する(その場合、液体注入量は、試料採取終了時に望まれる液体試料の量に相当する)又は、比較的長期間にわたって試料を採取する間に蒸発する液体を補うために、試料採取が起こっている間に液体をエンクロージャ10に注入する手段が設けられることができる。
【0032】
これらの液体注入手段は脱着可能であり、試料採取パイプの中に設置することができる。たとえば、液体注入手段は、試料採取液のフラスコを、エンクロージャ10の中又は試料採取パイプ30の隣接部分に設けられた液体入口に接続するぜん動ポンプを含む。また、エンクロージャ中の液体のレベルを計測又は検出するための手段、たとえば音波手段、カメラなどを設けることもでき、又は、装置のメモリに記録された、液体注入量を試料採取場所の温度及び湿度の関数として指定するチャートを使用することもできる。
【0033】
また、試料を採取する場合、試料採取終了前の、吸引された空気がまだエンクロージャ内で渦を巻いている間に数秒間だけエンクロージャからの出口を開くことが有利である。理由は、試料がエンクロージャから流れ出やすくなるからである。
【0034】
本発明の装置は、採取される試料に関するデータ(たとえば吸引流量、試料採取期間、開始時間、実際に吸引した空気の量、温度及び湿度など)をメモリに記憶し、試料採取前に、装置に対し、その正しい動作に関する一定の自動検証試験を実行する、たとえば、特に
・リアルタイムクロックを読み、現在時間を表示し、
・バックアップメモリに読み書きする能力を検証し、
・周囲温度及び湿度センサを読み、
・試料採取パイプ中に設置された圧力センサを読み、
・液体注入ポンプをオンにし、その動作を検証し、
・ソレノイド弁をオンにし、その動作を検証し、
・実施された試験の結果を数秒間表示し、
・装置の電気バッテリ中の電荷のレベルを検証し、表示する
ように働く、パーソナルコンピュータ(PC)タイプ又はパーソナルデジタルアシスタント(PDA)タイプのコンピュータ手段によって制御される。
【0035】
また、採取される試料のトレーサビリティを保証するために、各試料又は一連の試料を採取する前に、他の情報、たとえば操作者の氏名、装置のシリアル番号、試料採取場所、試料採取場所での活動などが記録される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲空気中に存在する粒子及び微生物を捕集し、分離するための装置であって、該装置は、空気出入り口を有し、捕集された粒子及び微生物を含有する液体試料を輸送するための受け器を形成する脱着可能な遠心分離エンクロージャ(10)の中に空気を吸引するための吸引手段を含み、
前記エンクロージャ(10)が、前記吸引手段が毎分約100リットル〜毎分約2000リットルの範囲にある吸引速度で試料を採取することを可能にするのに適した、異なる直径を有するエンクロージャのセットから選択されることを特徴とする装置。
【請求項2】
エンクロージャの直径が約20mm〜約100mmの範囲にある、請求項1記載の装置。
【請求項3】
エンクロージャが円柱形の上部(14)及び円錐形の下部(16)を含み、前記エンクロージャに含まれる試料採取液の量を減らすために、少なくとも最大のエンクロージャの円錐形の部分の下端が切頭されている、請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
エンクロージャ(10)が、J字形の試料採取パイプ(30)により、空気吸引手段(36、38)を含むチャンバ(34)に接続されており、前記チャンバは、その動作位置で水平又は垂直に配置され得る、請求項1〜3のいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
エンクロージャ(10)中の液体の量を測定及び/又はモニタリングするための手段及び液体をエンクロージャの中に注入するための脱着可能な手段を含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
エンクロージャの中に吸引される空気の流量を計測するための手段を含み、前記手段が、エンクロージャ(10)を空気吸引手段に接続する試料採取パイプ(30)に取り付けられた圧力センサ(28)を含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
圧力センサ(28)が試料採取パイプ(30)に取り付けられる位置が、該パイプの、エンクロージャに接続された端部における屈曲部から離れているとともに、吸引手段から離れている、請求項6記載の装置。
【請求項8】
たとえばペルチェ効果熱電素子を備えた冷却コンパートメントの中に配置された試料捕集フラスコを含む、請求項1〜7のいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
エンクロージャ(10)が、捕集フラスコの中に排液するための手段(20)をその下端に含む、請求項8記載の装置。
【請求項10】
エンクロージャ(10)が脱着可能な空気出入り口要素(12)を備え、空気入口が一方向又は全方向タイプである、請求項1〜9のいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
採取される試料に関するデータをメモリに記憶し、試料採取前に装置を検証するための自動試験を実施することができる制御コンピュータ手段を含む、請求項1〜10のいずれか1項記載の装置。

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2010−502974(P2010−502974A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527174(P2009−527174)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際出願番号】PCT/FR2007/001414
【国際公開番号】WO2008/029014
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(505040202)ベルタン・テクノロジーズ (9)
【氏名又は名称原語表記】BERTIN TECHNOLOGIES
【Fターム(参考)】