説明

周期的な構造をもつ有機フィルム

【課題】複数のセグメントと複数のリンカーとが共有結合による有機骨格として整列した、規則的な(周期的な)構造をもつ有機フィルムを提供する。
【解決手段】所定の構造をもつ有機フィルム(SOF)であって、複数のセグメントと複数のリンカーとが共有結合による有機骨格(COF)として整列しており、このSOFの少なくとも一部分が周期的である、所定の構造をもつ有機フィルム(SOF)。さらに、所定の構造をもつ有機フィルム(SOF)を調製するプロセス。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0001】
実施形態で、複数のセグメントと複数のリンカーとが共有結合による有機骨格として整列した、規則的な(周期的な)構造をもつ有機フィルムが提供され、ここで、巨視的なレベルで、上述の共有結合による有機骨格は、フィルムである。
【図面の簡単な説明】
【0002】
【図1】コントロール実験における混合物の生成物のフーリエ変換赤外吸収スペクトルを比較した結果をあらわす図である。
【図2】N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミンセグメントと、p−キシリルセグメントと、エーテルリンカーとを含む、自立型SOFのフーリエ変換赤外吸収スペクトルをあらわす図である。
【図3】N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミンセグメントと、n−ヘキシルセグメントと、エーテルリンカーとを含む、自立型SOFのフーリエ変換赤外吸収スペクトルをあらわす図である。
【図4】N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミンセグメントと、4,4’−(シクロヘキサン−1,1−ジイル)ジフェニルと、エーテルリンカーとを含む、自立型SOFのフーリエ変換赤外吸収スペクトルをあらわす図である。
【図5】トリフェニルアミンセグメントと、エーテルリンカーとを含む、自立型SOFのフーリエ変換赤外吸収スペクトルをあらわす図である。
【図6】トリフェニルアミンセグメントと、ベンゼンセグメントと、イミンリンカーとを含む、自立型SOFのフーリエ変換赤外吸収スペクトルをあらわす図である。
【図7】トリフェニルアミンセグメントと、イミンリンカーとを含む、自立型SOFのフーリエ変換赤外吸収スペクトルをあらわす図である。
【図8】実施例7および10で製造したSOFの2次元X線散乱データをあらわす図である。
【発明を実施するための形態】
【0003】
用語「SOF」は、巨視的なレベルでフィルムである、共有結合による有機骨格(COF)を指す。句「巨視的なレベル」は、本願SOFの裸眼での見え方を指す。
【0004】
用語「実質的に欠陥のないSOF」は、1平方センチメートルあたり、2個の隣接するセグメントのコア間の距離よりも大きなピンホール、孔またはギャップを実質的に含まないSOFを指し、例えば、1cmあたり、直径が約250ナノメートルより大きいピンホール、孔またはギャップが10個未満、または、1cmあたり、直径が約100ナノメートルより大きいピンホール、孔またはギャップが5個未満のSOFを指す。用語「欠陥のないSOF」は、1μmあたり、2個の隣接するセグメントのコア間の距離よりも大きなピンホール、孔またはギャップを含まないSOFを指し、例えば、1μmあたり、直径が約100オングストロームより大きいピンホール、孔またはギャップがないSOF、または、1μmあたり、直径が約50オングストロームより大きいピンホール、孔またはギャップがないSOF、または、1μmあたり、直径が約20オングストロームより大きいピンホール、孔またはギャップがないSOFを指す。
【0005】
本開示のSOFは、セグメント(S)と官能基(Fg)とを含むビルディングブロック分子を含む。ビルディングブロック分子は、少なくとも2個の官能基を必要とし(x≧2)、1種類の官能基を含んでいてもよいし、2種類以上の官能基を含んでいてもよい。官能基は、SOF形成プロセス中に、化学反応に関与してセグメントに共に結合する、ビルディングブロック分子の反応性化学部分である。セグメントは、ビルディングブロック分子のうち、官能基をつなぎとめ、官能基には属していないすべての原子を含む部分である。さらに、ビルディングブロック分子のセグメントの組成は、SOFを形成した後にも変化せずに残っている。
【0006】
官能基は、SOF形成プロセス中に、化学反応に関与してセグメントに共に結合する、ビルディングブロック分子の反応性化学部分である。官能基は、1個の原子で構成されていてもよく、または、官能基は、2個以上の原子で構成されていてもよい。官能基の例としては、ハロゲン、アルコール、エーテル、ケトン、カルボン酸、エステル、カーボネート、アミン、アミド、イミン、尿素、アルデヒド、イソシアネート、トシレート、アルケン、アルキンなどが挙げられる。
【0007】
SOF形成プロセスにおいて、官能基の組成は、原子が失われたり、原子が付け加えられたり、または原子が失われかつ付け加えられたりすることで変わる場合があり、または、官能基が完全に失われてもよい。SOFにおいて、官能基に属していた原子が、セグメントをつなぐ化学部分であるリンカー基に属するようになる。
【0008】
セグメントは、ビルディングブロック分子のうち、官能基をつなぎとめ、官能基には属さないすべての原子を含む部分である。さらに、ビルディングブロック分子のセグメントの組成は、SOFを形成した後にも変化せずに残っている。実施形態では、SOFは、第1のセグメントが第2のセグメントと同じ構造をもっていてもよく、または第2のセグメントとは異なる構造をもっていてもよい。他の実施形態では、第1のセグメントおよび/または第2のセグメントの構造は、第3のセグメント、第4のセグメント、第5のセグメントなどと同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0009】
実施形態では、SOFのセグメントは、炭素ではない元素の少なくとも1つの原子、例えば、水素、酸素、窒素、ケイ素、リン、セレン、フッ素、ホウ素、硫黄からなる群から選択される少なくとも1つの原子を含む。
【0010】
SOFは、任意の適切なアスペクト比を有しており、例えば、約30:1より大きいか、約50:1より大きいか、約70:1より大きいか、約100:1より大きく、例えば、約1000:1である。SOFのアスペクト比は、SOFの平均厚み(すなわち、最も短い寸法)を基準とした、幅または直径の平均値(すなわち、厚みに対して2番目に大きな寸法)の比率であると定義される。SOFの最も長い寸法は長さであり、SOFアスペクト比の算出には考慮されない。
【0011】
SOFは、以下の代表的な厚みを有する。約10オングストローム〜約250オングストローム、例えば、セグメント1個の厚みをもつ層なら、約20オングストローム〜約200オングストローム、複数のセグメントの厚みをもつ層なら、約20nm〜約5mm、約50nm〜約10mm。
【0012】
実施形態では、複数層のSOFは、(1)第1の濡れた反応性層から、官能基が表面に存在している(か、または官能基がぶら下がっている)SOF基板層を形成させ、(2)この基板層の上に、SOF基板層の表面にぶら下がっている官能基と反応させることが可能な官能基を有するビルディングブロック分子を含む第2の濡れた反応性層から、第2のSOF層を形成させることによる、複数層のSOFが化学的に結合したものを調製する方法によって作られる。
【0013】
ビルディングブロック分子の対称性は、ビルディングブロック分子のセグメントの周囲にある官能基(Fg)の位置に関係がある。対照的なビルディングブロック分子は、Fgの位置が、棒状の両端に属していてもよく、規則的な幾何学形状の複数の頂点に属していてもよく、または、ひずんだ棒状またはひずんだ幾何学形状の複数の頂点に属していてもよいビルディングブロック分子である。
【0014】
実施形態では、1型、2型、または3型のSOFでは、セグメントは、SOFの縁には位置しておらず、このセグメントが、少なくとも3個の他のセグメントに対し、リンカーによって接続している。例えば、実施形態では、SOFは、理想的な三角形のビルディングブロック、ひずんだ三角形のビルディングブロック、理想的な四面体のビルディングブロック、ひずんだ四面体のビルディングブロック、理想的な四角形のビルディングブロック、ひずんだ四角形のビルディングブロックからなる群から選択される少なくとも1つの対照的なビルディングブロックを含んでいる。
【0015】
分子を接続する化学は、分子を接続する化学によって副生成物が存在することが望ましくない用途に向けたSOFを得るために選択されてもよい。分子を接続する化学反応としては、エステル、イミン、エーテル、カーボネート、ウレタン、アミド、アセタール、シリルエーテルを製造するような縮合反応、付加/脱離反応、付加反応を挙げることができる。
【0016】
分子を接続する化学は、実施形態において、分子を接続する化学による副生成物の存在が、SOFの性質に影響を与えないような用途、または、分子を接続する化学による副生成物の存在が、SOFの性質を変える可能性のある用途に向けたSOFを得るために選択されてもよい。分子を接続する化学反応としては、置換反応、メタセシス反応、金属触媒によるカップリング反応、例えば、炭素−炭素結合を作る反応を挙げることができる。
【0017】
分子を接続するすべての化学について、ビルディングブロックの官能基間の化学を介した、ビルディングブロック間の反応速度および反応度を制御する性能は、本開示の重要な態様のひとつである。反応速度および反応度を制御する理由としては、異なるコーティング方法にフィルム形成プロセスを応用すること、周期的なSOFを得るためにビルディングブロックの微視的な配置を調節することを挙げることができる。SOFは、(1)SOFの約50重量%〜約99重量%が周期的なSOF;(2)周期的なSOFの一部が、SOF中に均一に分散しているようなSOF;(3)周期的なSOFの一部が、SOF中に均一に分散していないようなSOF;(4)SOFが、上側表面と下側表面を有しており、周期的なSOFの一部分である約1重量%〜約5重量%が、SOFの片方の表面に近い位置にあるようなSOF;(5)SOFの縁が、約500nm〜約5mmと測定されるようなSOF;(6)SOFが、約1〜約50セグメントの厚みであるようなSOF;および/または(7)SOFの縁が、約500nm〜約5mmと測定されるようなSOFであってもよい。
【0018】
実施形態では、SOFは、高い熱安定性を有していてもよく(典型的には、大気条件で400℃より高い)、有機溶媒への溶解性が悪くてもよく(化学安定性)、多孔性であってもよい(可逆的にゲスト分子を取り込むことが可能)。
【0019】
付加される機能は、その付加される機能に関与する「かたよった性質」を有するビルディングブロック分子を集合させた時に生じる場合がある。また、付加される機能は、その付加される機能に関与する「かたよった性質」を有さないビルディングブロック分子を集合させた時に、得られたSOFがSOF内の接続セグメント(S)およびリンカーがもたらす結果として付加される機能を有し、生じる場合がある。さらに、付加される機能の発生は、その付加される機能に関与する「かたよった性質」を有するビルディングブロック分子を用いた組み合わせ効果から生じる場合がある。
【0020】
ビルディングブロック分子の「かたよった性質」との用語は、特定の分子組成に存在することが知られている性質、または、セグメントの分子組成を調べることによって当業者が合理的に特定可能な性質を指す。
【0021】
付加される機能としては、水、またはメタノールのような他の極性種をはじく性質を指す疎水性(超疎水性);水または他の極性種、またはこのような種によって簡単に濡れる表面に引きつけられ、吸着するか、または吸収される性質を指す親水性;油または他の非極性種(例えば、アルカン、脂肪、ワックス)をはじく性質を指す疎油性(油をはじく性質);油または他の非極性種(例えば、アルカン、脂肪、ワックス)、または、このような種によって簡単に濡れる表面に引きつけられる性質を指す脂溶性(親油性);電荷(電子および/または正孔)を伝達する性質を指す電気活性を挙げることができる。
【0022】
高度にフッ素化されたセグメントを用いてもよく、高度にフッ素化されたセグメントは、セグメントに存在するフッ素原子の数をセグメントに存在する水素原子の数で割った結果が1より大きいものであると定義される。上述のフッ素化されたセグメントとしては、テトラフルオロヒドロキノン、ペルフルオロアジピン酸水和物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノールなどを挙げることができる。
【0023】
付加される機能が正孔を伝達することであるSOFは、以下の一般的な構造を有するトリアリールアミン、ヒドラゾン(Tokarskiらの米国特許第7,202,002 B2号)、エナミン(Kondohらの米国特許第7,416,824 B2号)のようなセグメントコアを選択することによって得られてもよい。
【化1】



式中、Ar、Ar、Ar、Ar、Arは、それぞれ独立して、置換アリール基または置換されていないアリール基をあらわすか、または、Arは、独立して、置換アリーレン基または置換されていないアリーレン基をあらわし、kは、0または1をあらわし、Ar、Ar、Ar、Ar、Arのうち、少なくとも2つがFg(すでに定義されている)を含む。Arは、さらに、置換フェニル環、置換フェニレンまたは置換されていないフェニレン、置換されているか、または置換されていない一価の接続した芳香族環(例えば、ビフェニル、ターフェニルなど)、または置換されているか、または置換されていない縮合した芳香族環(例えば、ナフチル、アントラニル、フェナントリル)などと定義されてもよい。
【0024】
付加される機能が正孔を伝達することであるアリールアミンを含むセグメントコアとしては、アリールアミン、例えば、トリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[p−ターフェニル]−4,4’’−ジアミン;ヒドラゾン、例えば、N−フェニル−N−メチル−3−(9−エチル)カルバジルヒドラゾン、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,2−ジフェニルヒドラゾン;オキサジアゾール、例えば、2,5−ビス(4−N,N’−ジエチルアミノフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール、スチルベンなどが挙げられる。
【0025】
正孔を伝達する性質にかたよったトリアリールアミンコアセグメントを含むビルディングブロック分子は、以下のものを含む化学構造のリストから誘導されてもよい。
【化2】



【0026】
ヒドラゾンを含むセグメントコアは、以下の一般式であらわされ、
【化3】



式中、Ar、Ar、Arは、それぞれ独立して、場合により1個以上の置換基を含むアリール基をあらわし、Rは、水素原子、アリール基、または場合により置換基を含むアルキル基をあらわし;Ar、Ar、Arのうち、少なくとも2つがFg(すでに定義されている)を含み;関連するオキサジアゾールは、以下の一般式であらわされ、
【化4】



式中、ArおよびArは、それぞれ独立して、Fg(すでに定義されている)を含むアリール基をあらわす。
【0027】
正孔を伝達する性質にかたよったヒドラゾンコアセグメントおよびオキサジアゾールコアセグメントを含むビルディングブロック分子は、以下のものを含む化学構造のリストから誘導されてもよい。
【化5】



【0028】
エナミンを含むセグメントコアは、以下の一般式であらわされ、
【化6】



式中、Ar、Ar、Ar、Arは、それぞれ独立して、場合により1個以上の置換基を含むアリール基、または、場合により1個以上の置換基を含むヘテロ環基をあらわし、Rは、水素原子、アリール基、または場合により置換基を含むアルキル基をあらわし;Ar、Ar、Ar、Arのうち、少なくとも2つがFg(すでに定義されている)を含む。
【0029】
正孔を伝達する性質にかたよったエナミンコアセグメントを含むビルディングブロック分子は、以下のものを含む化学構造のリストから誘導されてもよい。
【化7】



【0030】
SOFは、以下の一般構造を有するニトロフルオレノン、9−フルオレニリデンマロノニトリル、ジフェノキノン、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドを含むセグメントコアを選択することによって得られてもよい。
【化8】



【0031】
SOFは、以下の一般構造を有するアセン、チオフェン/オリゴチオフェン/縮合したチオフェン、ペリレンビスイミド、またはテトラチオフルバレン、これらの誘導体を含むセグメントコアを選択することによって得られてもよい。
【化9】



【0032】
アセンコアセグメントを含むビルディングブロック分子としては、以下のものを挙げることができる。
【化10】



【0033】
チオフェン/オリゴチオフェン/縮合したチオフェンコアセグメントを含むビルディングブロック分子としては、以下のものを挙げることができる。
【化11】



【0034】
ペリレンビスイミドコアセグメントを含むビルディングブロック分子の例としては、以下のものを挙げることができる。
【化12】



【0035】
テトラチオフルバレンコアセグメントを含むビルディングブロック分子としては、以下のものを挙げることができ、
【化13】



式中、Arは、それぞれ独立して、場合により1個以上の置換基を含むアリール基、または、場合により1個以上の置換基を含むヘテロ環基をあらわす。
【0036】
規則的なSOFを製造するプロセスは、典型的には、任意の適切な順序で実施してもよい多くの作業または工程(以下に記載されるもの)を含むか、または、2つ以上の作業を同時に実施してもよく、または、ごく近い時間間隔で実施してもよい。規則的な(周期的な)構造をもつ有機フィルムを調製するプロセスは、
(a)セグメントと多くの官能基をそれぞれ含む複数のビルディングブロック分子とを含んでいる、液体を含有する反応混合物を調製することと;
(b)上述の反応混合物を濡れたフィルムとして堆積させることと;
(c)上述のビルディングブロック分子を含む濡れたフィルムを、複数のセグメントと複数のリンカーとを共有結合による有機骨格として整列させ、この共有結合による有機骨格が巨視的なレベルでフィルムであるような、SOFを含む乾燥フィルムに変化するように促進することと;
(d)場合により、上述のSOFをコーティング基板から取り外し、自立型SOFを得ることと;
(e)場合により、この自立型SOFをロールに加工することと;
(f)場合により、このSOFを切断し、ベルトになるようにつなぎあわせることと;
(g)場合により、SOF(上述のSOF形成プロセスで調製したもの)を次のSOF形成プロセスの基板とし、上述のSOF形成プロセスを実施することとを含んでいてもよい。
【0037】
反応混合物は、液体に溶解しているか、懸濁しているか、または液体中で混合している複数のビルディングブロック分子を含む。複数のビルディングブロック分子は、1種類のビルディングブロック分子を含んでいてもよく、2種類以上のビルディングブロック分子を含んでいてもよい。
【0038】
反応混合物の成分(ビルディングブロック分子、場合により液体、場合により触媒、場合により添加剤)を容器内であわせる。反応混合物の成分を加える順序はさまざまであってもよいが、典型的には、触媒は最後に加える。ビルディングブロック分子を、ビルディングブロック分子の分解を助けるような触媒が存在しない状態で、液体中で加熱してもよい。
【0039】
実施形態では、反応混合物は、堆積させた濡れた層を保持するような粘度を有している必要がある。反応混合物の粘度は、約10〜約50,000cpsの範囲であり、例えば、約25〜約25,000cp、または約50〜約1000cpsである。
【0040】
反応混合物中のビルディングブロック分子保持量または「保持量」は、ビルディングブロック分子と、場合により触媒とをあわせた重量を、反応混合物の合計重量で割ったものであると定義される。液体ビルディングブロック分子が、反応混合物の唯一の液体成分として用いられる場合(すなわち、さらなる液体を用いない場合)、ビルディングブロックの保持量は、約100%であろう。
【0041】
場合により、前SOFを形成させるため、および/または、上述の作業Cの間のSOF形成速度を変えるために、反応混合物に触媒を加えてもよい。用語「前SOF」は、反応し、出発物質のビルディングブロック分子よりも分子量が大きく、他のビルディングブロックまたは前SOFの官能基とさらに反応してSOFを得ることが可能な複数の官能基を含むか、および/またはフィルム形成プロセス用に高められた反応性または改変された反応性を付与するビルディングブロック分子の官能基を「活性化」させることが可能な複数の官能基を含む、少なくとも2個のビルディングブロック分子を指す場合がある。
【0042】
すでに反応したビルディングブロック分子の前SOFに組み込まれるような、反応混合物中のビルディングブロック分子の重量百分率は、20%未満、例えば、約15%〜約1%、または約10%〜約5%であってもよい。実施形態では、95%の前SOF分子の分子量は、5,000ダルトン未満、例えば、2,500ダルトン、または1,000ダルトンである。
【0043】
実施形態では、前SOF形成の2つの方法(ビルディングブロック分子間の反応による前SOF形成、またはビルディングブロック分子の官能基の「活性化」による前SOF形成)を組み合わせて行ってもよく、前SOF構造に組み込まれたビルディングブロック分子は、活性化した官能基を含んでいてもよい。実施形態では、ビルディングブロック分子間の反応による前SOF形成と、ビルディングブロック分子の官能基の「活性化」による前SOF形成とを同時に行ってもよい。反応混合物の粘度は、約10〜約50,000cpsの範囲であり、例えば、約25〜約25,000cps、または約50〜約1000cpsである。ビルディングブロックの保持量は、約3〜100%の範囲であってもよく、例えば、約5〜約50%、または約15〜約40%であってもよい。
【0044】
反応混合物中で用いられる液体は、純粋な液体(例えば溶媒)および/または溶媒混合物であってもよい。適切な液体は、沸点が約30〜約300℃であってもよく、例えば、約65℃〜約250℃、または約100℃〜約180℃であってもよい。
【0045】
液体としては、アルカン;分枝型アルカン;芳香族化合物;エーテル;環状エーテル、エステル;ケトン、環状ケトン、アミン;アミド;アルコール、ハロゲン化芳香族、ハロゲン化アルカン;水のような分子種を挙げることができる。
【0046】
また、第1の溶媒、第2の溶媒、第3の溶媒などを含む混合液体を反応混合物で用いてもよい。実施形態では、第2の溶媒は、沸点または蒸気圧曲線、またはビルディングブロック分子に対するアフィニティが第1の溶媒とは異なる溶媒である。実施形態では、第1の溶媒は、沸点が第2の溶媒よりも高い。実施形態では、第2の溶媒は、沸点が、約130℃以下、例えば、約100℃以下であり、例えば、約30℃〜約100℃、または約40℃〜約90℃、または約50℃〜約80℃の範囲である。
【0047】
実施形態では、第1の溶媒(または沸点が高い方の溶媒)は、沸点が約65℃以上であり、例えば、約80℃〜約300℃、または約100℃〜約250℃、または約100℃〜約180℃の範囲である。
【0048】
二成分系混合液体の液体比率は、容積で約1:1〜約99:1であってもよく、例えば、約1:10〜約10:1、または約1:5〜約5:1であってもよい。n種類の液体を用い、nが約3〜約6の範囲である場合、それぞれの液体の量は、それぞれの液体分布の合計が100%になるように、約1%〜約95%の範囲である。
【0049】
SOFの特徴を操作する目的で、濡れた層をSOFに変換する速度を遅くするか、または速くするために、上述の混合液体を用いてもよい。例えば、縮合および付加/脱離による接続の化学において、水、一級、二級または三級のアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、tert−ブタノール)のような液体を用いてもよい。
【0050】
場合により、濡れた層から乾燥SOFへの促進を補助するために、反応混合物中に触媒が存在してもよい。触媒は、均一(溶解した)状態であってもよく、不均一(溶解していないか、または部分的に溶解した)状態であってもよく、ブレンステッド酸(HCl(水溶液)、酢酸、p−トルエンスルホン酸、アミンが保護されたp−トルエンスルホン酸、例えば、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム、トリフルオロ酢酸);ルイス酸(ホウ素トリフルオロエーテラート、三塩化アルミニウム);ブレンステッド塩基(金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム;一級、二級または三級のアミン、例えば、ブチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン);ルイス塩基(N,N−ジメチル−4−アミノピリジン);金属(青銅);金属塩(FeCl、AuCl);金属錯体(結合したパラジウム錯体、結合したルテニウム触媒)が挙げられる。典型的な触媒保持量は、反応混合物内のビルディングブロック分子の約0.01%〜約25%、例えば、約0.1%〜約5%の範囲である。最終的なSOF組成物中に触媒が存在していてもよく、存在していなくてもよい。
【0051】
場合により、反応混合物および濡れた層に、添加剤または第2の成分が存在していてもよく、または、これらが乾燥SOFに組み込まれていてもよい。添加剤または第2の成分は、反応混合物および濡れた層の中、または乾燥SOF内で均一であってもよく、不均一であってもよい。用語「添加剤」または「第2の成分」は、SOFに共有結合してはおらず、組成物中にランダムに分布している原子または分子を指す。
【0052】
反応混合物を、多くの液体堆積技術を用い、濡れたフィルムとして種々の基板に塗布してもよい。基板としては、ポリマー、紙、金属、金属合金、周期律表III族〜VI族の元素がドープした形態およびドープしていない形態、金属酸化物、金属カルコゲニド、あらかじめ調製しておいたSOFフィルムが挙げられる。
【0053】
反応混合物を、スピンコーティング、ブレードコーティング、ウェブコーティング、浸漬コーティング、カップによるコーティング、ロッドによるコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、スプレーコーティング、スタンピングなどを含む多くの液体堆積技術を用い、基板に塗布してもよい。濡れた層を堆積させるのに使用される方法は、基板の性質、大きさ、形状、濡れた層の望ましい厚みによって変わる。濡れた層の厚みは、約10nm〜約5mmの範囲であってもよく、例えば、約100nm〜約1mm、または約1μm〜約500μmであってもよい。
【0054】
用語「促進」は、ビルディングブロック分子の反応を容易にするのに適した任意の技術を指す。液体を除去して乾燥フィルムを作成することが必要な場合には、「促進」は、液体を除去することも指す。ビルディングブロック分子の反応と、液体の除去とを連続的に実施してもよく、同時に実施してもよい。
【0055】
また、実施形態では、用語「促進」は、ビルディングブロック分子および/または前SOFの反応(例えば、ビルディングブロックおよび/または前SOFの官能基の化学反応)を容易にするのに適した任意の技術を指していてもよい。ビルディングブロック分子および/または前SOFの反応と、液体の除去とを連続的に実施してもよく、同時に実施してもよい。
【0056】
特定の実施形態では、液体は、ビルディングブロック分子の1つでもあり、SOFに組み込まれている。用語「乾燥SOF」は、実質的に乾燥したフィルムを指し、例えば、実質的に乾燥したSOFは、液体含有量が、SOFの約5重量%未満、または約2重量%未満であってもよい。
【0057】
濡れた層からの乾燥SOF形成を促進することは、典型的には、乾燥器による乾燥、赤外線照射(IR)など、40〜350℃、60〜200℃、85〜160℃の温度範囲での熱処理を含む。加熱合計時間は、約4秒〜約24時間の範囲であってもよく、例えば、1分〜120分、または3分〜60分であってもよい。
【0058】
濡れた層からCOFフィルムにするのをIRによって促進することは、ベルト運搬システムに取り付けたIR加熱モジュールを用いて行ってもよい。種々のIR放射体を用いてもよく、例えば、炭素IR放射体または短波長IR放射体(Heraerusから入手可能)を用いてもよい。炭素IR放射体または短波長IR放射体に関するさらなる例示的な情報を以下の表にまとめている。
【表1】



【0059】
実施形態では、自立型SOFが望ましい。濡れた層の堆積物を保持するのに、適切な低接着性基板を用いて、自立型SOFを得てもよい。
【0060】
実施例中のすべての割合は、他の意味であると示されていない限り、重量による。機械的な測定は、TA Instruments DMA Q800動的機械分析機で測定した。示差走査熱量分析は、TA Instruments DSC 2910示差走査熱量計で測定した。熱重量分析は、TA Instruments TGA 2950熱重量分析計で測定した。FT−IRスペクトルは、Nicolet Magna 550分光光度計で測定した。1マイクロメートル未満の厚み測定は、Dektak 6m Surface Profilerで測定した。表面エネルギーは、Fibro DAT 1100(Sweden)接触角装置で測定した。他の意味であると示されていない限り、以下の実施例で製造したSOFは、欠陥のないSOFであるか、または実質的に欠陥のないSOFであった。
【0061】
本開示の一実施形態は、セグメントの微視的な配置がパターン化しているSOFを得ることである。用語「パターン化している」は、セグメントが互いに接続している配列を指す。したがって、パターン化しているSOFは、セグメントAがセグメントBのみにつながっている組成、またはその逆に、セグメントBがセグメントAのみにつながっている組成を具現化したものであろう。さらに、1種類のセグメントのみが存在する系(いわゆるセグメントA)が使用される場合、AはAのみと反応することを意味するので、これもパターン化されているものであろう。
【0062】
以下の実験は、パターン化されているSOFの開発について示している。
【0063】
(実施例1:2型SOF)
(作業A)液体を含む反応混合物の調製。以下のものをあわせた。ビルディングブロックであるベンゼン−1,4−ジメタノール[セグメント=p−キシリル;Fg=ヒドロキシル(−OH);(0.47g、3.4mmol)]、第2のビルディングブロックであるN4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン;Fg=メトキシエーテル(−OCH);(1.12g、1.7mmol)]、1−メトキシ−2−プロパノール17.9g。この混合物を振り混ぜ、均一溶液が得られるまで、60℃まで加熱した。室温まで冷却したら、この溶液を0.45マイクロメートルのPTFE膜で濾過した。この濾過した溶液に、p−トルエンスルホン酸の10重量%1−メトキシ−2−プロパノール溶液として酸触媒0.31gを加え、液体を含有する反応混合物を得た。
【0064】
(作業B)反応混合物を濡れたフィルムとして堆積。金属化した(TiZr)MYLAR(商標)基板の反射側に、8milのギャップを有するバードバーを取り付けたドローダウンコーティング機を用い、一定速度で反応混合物を塗布した。
【0065】
(作業C)濡れたフィルムから乾燥SOFへの変化を促進。濡れた層を保持している、金属化したMYLAR(商標)基板を、あらかじめ130℃に加熱した、能動的に排気している乾燥機にすばやく移動させ、40分間放置して加熱した。これらの作業によって、厚みが約3〜6マイクロメートルの範囲のSOFが得られ、このSOFを、基板から1つの自立型SOFとして剥離することができた。SOFの色は緑色であった。このSOFの一部分のフーリエ変換赤外吸収スペクトルを図1に与えている。
【0066】
実施例1で調製したSOFについて、使用したビルディングブロック分子に由来するセグメントがSOF内でパターン化されていることを示すために、3種類のコントロール実験を実施した。すなわち、実施例1の作業Aに記載したのと同じ手順を用い、3種類の液体反応混合物を調製したが、これらの3種類の配合物は、それぞれ以下のように変更したものであった。
・(コントロール反応混合物1;実施例2)ビルディングブロックであるベンゼン−1,4−ジメタノールは含まれていなかった。
・(コントロール反応混合物2;実施例3)ビルディングブロックであるN4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミンは含まれていなかった。
・(コントロール反応混合物3;実施例4)触媒であるp−トルエンスルホン酸は含まれていなかった。
【0067】
上述のコントロール実験に関するSOF形成プロセスの全容を、以下の実施例2〜4に詳しく記載している。
【0068】
(実施例2:(ビルディングブロックであるベンゼン−1,4−ジメタノールが含まれなかったコントロール実験)
(作業A)液体を含む反応混合物の調製。以下のものをあわせた。ビルディングブロックであるN4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン;Fg=メトキシエーテル(−OCH);(1.12g、1.7mmol)]、1−メトキシ−2−プロパノール17.9g。この混合物を振り混ぜ、均一溶液が得られるまで、60℃まで加熱した。室温まで冷却したら、この溶液を0.45マイクロメートルのPTFE膜で濾過した。この濾過した溶液に、p−トルエンスルホン酸の10重量%1−メトキシ−2−プロパノール溶液として酸触媒0.31gを加え、液体を含有する反応混合物を得た。
【0069】
(作業B)反応混合物を濡れたフィルムとして堆積。金属化した(TiZr)MYLAR(商標)基板の反射側に、8milのギャップを有するバードバーを取り付けたドローダウンコーティング機を用い、一定速度で反応混合物を塗布した。
【0070】
(作業C)濡れたフィルムから乾燥SOFへの変化を促進することを試みた。濡れた層を保持している、金属化したMYLAR(商標)基板を、あらかじめ130℃に加熱した、能動的に排気している乾燥機にすばやく移動させ、40分間放置して加熱した。これらの作業によってフィルムは得られなかった。代わりに、ビルディングブロックの析出した粉末が基板に堆積した。
【0071】
(実施例3:(ビルディングブロックであるN4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミンが含まれなかったコントロール実験)
(作業A)液体を含む反応混合物の調製。以下のものをあわせた。ビルディングブロックであるベンゼン−1,4−ジメタノール[セグメント=p−キシリル;Fg=ヒドロキシル(−OH);(0.47g、3.4mmol)]、1−メトキシ−2−プロパノール17.9g。この混合物を振り混ぜ、均一溶液が得られるまで、60℃まで加熱した。室温まで冷却したら、この溶液を0.45マイクロメートルのPTFE膜で濾過した。この濾過した溶液に、p−トルエンスルホン酸の10重量%1−メトキシ−2−プロパノール溶液として酸触媒0.31gを加え、液体を含有する反応混合物を得た。
【0072】
(作業B)反応混合物を濡れたフィルムとして堆積。金属化した(TiZr)MYLAR(商標)基板の反射側に、8milのギャップを有するバードバーを取り付けたドローダウンコーティング機を用い、一定速度で反応混合物を塗布した。
【0073】
(作業C)濡れたフィルムから乾燥SOFへの変化を促進することを試みた。濡れた層を保持している、金属化したMYLAR(商標)基板を、あらかじめ130℃に加熱した、能動的に排気している乾燥機にすばやく移動させ、40分間放置して加熱した。これらの作業によってフィルムは得られなかった。代わりに、ビルディングブロックの析出した粉末が基板に堆積した。
【0074】
(実施例4:(酸触媒であるp−トルエンスルホン酸が含まれなかったコントロール実験)
(作業A)液体を含む反応混合物の調製。以下のものをあわせた。ビルディングブロックであるベンゼン−1,4−ジメタノール[セグメント=p−キシリル;Fg=ヒドロキシル(−OH);(0.47g、3.4mmol)]、第2のビルディングブロックであるN4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン;Fg=メトキシエーテル(−OCH);(1.12g、1.7mmol)]、1−メトキシ−2−プロパノール17.9g。この混合物を振り混ぜ、均一溶液が得られるまで、60℃まで加熱した。室温まで冷却したら、この溶液を0.45マイクロメートルのPTFE膜で濾過し、液体を含む反応混合物を得た。
【0075】
(作業B)反応混合物を濡れたフィルムとして堆積。金属化した(TiZr)MYLAR(商標)基板の反射側に、8milのギャップを有するバードバーを取り付けたドローダウンコーティング機を用い、一定速度で反応混合物を塗布した。
【0076】
(作業C)濡れたフィルムから乾燥SOFへの変化を促進することを試みた。濡れた層を保持している、金属化したMYLAR(商標)基板を、あらかじめ130℃に加熱した、能動的に排気している乾燥機にすばやく移動させ、40分間放置して加熱した。これらの作業によってフィルムは得られなかった。代わりに、ビルディングブロックの析出した粉末が基板に堆積した。
【0077】
実施例2〜4に記載したように、3種類のコントロール反応混合物に対し、それぞれ実施例1に概説した作業Bおよび作業Cを行った。しかし、すべての場合でSOFは形成されず、単に、基板の上にビルディングブロックが堆積した。これらの結果から、記載した処理条件では、ビルディングブロック自体が反応することはできず、促進剤(p−トルエンスルホン酸)が存在しない状態でもビルディングブロックを反応させることはできないという結論が得られる。したがって、実施例1に記載した活性は、ビルディングブロック(ベンゼン−1,4−ジメタノールと、N4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン)が、互いに反応するように促進された場合にのみ、互いに反応することができるという活性である。セグメントであるp−キシリルと、N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミンとが、お互いとだけ反応する場合に、パターン化されているSOFが得られる。フーリエ変換赤外吸収スペクトルを、SOFのコントロール実験の生成物のスペクトルと比較すると(図2)、出発物質に由来する官能基が存在しないことが示されており(特に、ベンゼン−1,4−ジメタノールに由来するヒドロキシル吸収バンドが存在しない)、さらに、セグメント間の接続が上述のように進んでいることを支持している。また、このSOFのスペクトルで、ヒドロキシル吸収バンドがまったく存在しないことは、パターン化度が非常に高いことを示している。
【0078】
(実施例5:2型SOF)
(作業A)以下のものをあわせた。ビルディングブロックである1,6−n−ヘキサンジオール[セグメント=n−ヘキシル;Fg=ヒドロキシル(−OH);(0.21g、1.8mmol)]、第2のビルディングブロックであるN4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン;Fg=メトキシエーテル(−OCH);(0.58g、0.87mmol)]、1−メトキシ−2−プロパノール8.95g。この混合物を振り混ぜ、均一溶液が得られるまで、60℃まで加熱した。室温まで冷却したら、この溶液を0.45マイクロメートルのPTFE膜で濾過した。この濾過した溶液に、p−トルエンスルホン酸の10重量%1−メトキシ−2−プロパノール溶液として酸触媒0.16gを加え、液体を含有する反応混合物を得た。(作業B)反応混合物を、金属化した(TiZr)MYLAR(商標)基板の反射側に、20milのギャップを有するバードバーを取り付けたドローダウンコーティング機を用い、一定速度で塗布した。(作業C)濡れた層を保持している、金属化したMYLAR(商標)基板を、あらかじめ130℃に加熱した、能動的に排気している乾燥機にすばやく移動させ、40分間放置して加熱した。これらの作業によって、厚みが約4〜5マイクロメートルの範囲のSOFが得られ、このSOFを、基板から1つの自立型SOFとして剥離することができた。SOFの色は緑色であった。このSOFの一部分のフーリエ変換赤外吸収スペクトルを図3に与えている。
【0079】
(実施例6:2型SOF)
(作業A)以下のものをあわせた。ビルディングブロックである4,4’−(シクロヘキサン−1,1−ジイル)ジフェノール[セグメント=4,4’−(シクロヘキサン−1,1−ジイル)ジフェニル;Fg=ヒドロキシル(−OH);(0.97g、6mmol)]、第2のビルディングブロックであるN4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン;Fg=メトキシエーテル(−OCH);(1.21g、1.8mmol)]、1,4−ジオキサン7.51g。この混合物を振り混ぜ、均一溶液が得られるまで、60℃まで加熱した。室温まで冷却したら、この溶液を0.45マイクロメートルのPTFE膜で濾過した。この濾過した溶液に、p−トルエンスルホン酸の10重量%1,4−ジオキサン溶液として酸触媒0.22gを加え、液体を含有する反応混合物を得た。(作業B)反応混合物を、金属化した(TiZr)MYLAR(商標)基板の反射側に、10milのギャップを有するバードバーを取り付けたドローダウンコーティング機を用い、一定速度で塗布した。(作業C)濡れた層を保持している、金属化したMYLAR(商標)基板を、あらかじめ130℃に加熱した、能動的に排気している乾燥機にすばやく移動させ、40分間放置して加熱した。これらの作業によって、厚みが約12〜20マイクロメートルの範囲のSOFが得られ、このSOFを、基板から1つの自立型SOFとして剥離することができた。SOFの色は緑色であった。このSOFのフーリエ変換赤外吸収スペクトルを図4に与えている。
【0080】
(実施例7:1型SOF)
(作業A)以下のものをあわせた。ビルディングである4,4’,4’’−ニトリロトリス(ベンゼン−4,1−ジイル)トリメタノール[セグメント=(4,4’,4’’−ニトリロトリス(ベンゼン−4,1−ジイル)トリメチル);Fg=アルコール(−OH);(1.48g、4.4mmol)]、1,4−ジオキサン8.3g。この混合物を振り混ぜ、均一溶液が得られるまで、60℃まで加熱した。室温まで冷却したら、この溶液を0.45マイクロメートルのPTFE膜で濾過した。この濾過した溶液に、p−トルエンスルホン酸の10重量%1,4−ジオキサン溶液として酸触媒0.15gを加え、液体を含有する反応混合物を得た。(作業B)反応混合物を、金属化した(TiZr)MYLAR(商標)基板の反射側に、15milのギャップを有するバードバーを取り付けたドローダウンコーティング機を用い、一定速度で塗布した。(作業C)濡れた層を保持している、金属化したMYLAR(商標)基板を、あらかじめ130℃に加熱した、能動的に排気している乾燥機にすばやく移動させ、40分間放置して加熱した。これらの作業によって、厚みが約6〜15マイクロメートルの範囲のSOFが得られ、このSOFを、基板から1つの自立型SOFとして剥離することができた。SOFの色は緑色であった。このフィルムのフーリエ変換赤外吸収スペクトルを図5に与えている。2次元X線散乱データを図8に与えている。図8からわかるように、バックグラウンドを超えるシグナルは存在せず、このことは、分子レベルでの任意の検出可能な周期性が存在しないことを示している。
【0081】
(実施例8:2型SOF)
(作業A)以下のものをあわせた。ビルディングブロックであるテレフタルアルデヒド[セグメント=ベンゼン;Fg=アルデヒド(−CHO);(0.18g、1.3mmol)]、第2のビルディングブロックであるトリス(4−アミノフェニル)アミン[セグメント=トリフェニルアミン;Fg=アミン(−NH);(0.26g、0.89mmol)]、テトラヒドロフラン2.5g。均一溶液が得られるまで、この混合物を振り混ぜた。室温まで冷却したら、この溶液を0.45マイクロメートルのPTFE膜で濾過した。この濾過した溶液に、p−トルエンスルホン酸の10重量%1−テトラヒドロフラン溶液として酸触媒0.045gを加え、液体を含有する反応混合物を得た。(作業B)反応混合物を、金属化した(TiZr)MYLAR(商標)基板の反射側に、5milのギャップを有するバードバーを取り付けたドローダウンコーティング機を用い、一定速度で塗布した。(作業C)濡れた層を保持している、金属化したMYLAR(商標)基板を、あらかじめ120℃に加熱した、能動的に排気している乾燥機にすばやく移動させ、40分間放置して加熱した。これらの作業によって、厚みが約6マイクロメートルの範囲のSOFが得られ、このSOFを、基板から1つの自立型SOFとして剥離することができた。SOFの色は赤橙色であった。このフィルムのフーリエ変換赤外吸収スペクトルを図6に与えている。
【0082】
(実施例9:1型SOF)
(作業A)以下のものをあわせた。ビルディングブロックである4,4’,4’’−ニトリロトリベンズアルデヒド[セグメント=トリフェニルアミン;Fg=アルデヒド(−CHO);(0.16g、0.4mmol)]、第2のビルディングブロックであるトリス(4−アミノフェニル)アミン[セグメント=トリフェニルアミン;Fg=アミン(−NH);(0.14g、0.4mmol)]、テトラヒドロフラン1.9g。この混合物を振り混ぜ、均一溶液が得られるまで、60℃まで加熱した。室温まで冷却したら、この溶液を0.45マイクロメートルのPTFE膜で濾過した。(作業B)反応混合物を、金属化した(TiZr)MYLAR(商標)基板の反射側に、5milのギャップを有するバードバーを取り付けたドローダウンコーティング機を用い、一定速度で塗布した。(作業C)濡れた層を保持している、金属化したMYLAR(商標)基板を、あらかじめ120℃に加熱した、能動的に排気している乾燥機にすばやく移動させ、40分間放置して加熱した。これらの作業によって、厚みが約6マイクロメートルの範囲のSOFが得られ、このSOFを、基板から1つの自立型SOFとして剥離することができた。SOFの色は赤色であった。このフィルムのフーリエ変換赤外吸収スペクトルを図7に与えている。
【0083】
(実施例10)
(作業A)以下のものをあわせた。ビルディングである4,4’,4’’−ニトリロトリス(ベンゼン−4,1−ジイル)トリメタノール[セグメント=(4,4’,4’’−ニトリロトリス(ベンゼン−4,1−ジイル)トリメチル);Fg=アルコール(−OH);(1.48g、4.4mmol)]、水0.5g、1,4−ジオキサン7.8g。この混合物を振り混ぜ、均一溶液が得られるまで、60℃まで加熱した。室温まで冷却したら、この溶液を0.45マイクロメートルのPTFE膜で濾過した。この濾過した溶液に、p−トルエンスルホン酸の10重量%1,4−ジオキサン溶液として酸触媒0.15gを加え、液体を含有する反応混合物を得た。(作業B)反応混合物を、金属化した(TiZr)MYLAR(商標)基板の反射側に、15milのギャップを有するバードバーを取り付けたドローダウンコーティング機を用い、一定速度で塗布した。(作業C)濡れた層を保持している、金属化したMYLAR(商標)基板を、あらかじめ130℃に加熱した、能動的に排気している乾燥機にすばやく移動させ、40分間放置して加熱した。これらの作業によって、厚みが約4〜10マイクロメートルの範囲のSOFが得られ、このSOFを、基板から1つの自立型SOFとして剥離することができた。SOFの色は緑色であった。2次元X線散乱データを図8に与えている。図8からわかるように、2θは約17.8であり、dは約4.97オングストロームであり、このことは、このSOFが、分子レベルで約0.5nmの周期性を有していることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の構造をもつ有機フィルム(SOF)であって、複数のセグメントと複数のリンカーとが共有結合による有機骨格(COF)として整列しており、このSOFの少なくとも一部分が周期的である、所定の構造をもつ有機フィルム(SOF)。
【請求項2】
所定の構造をもつ有機フィルム(SOF)を調製するプロセスであって、
(a)
第1の溶媒、
第2の溶媒、および
セグメントと官能基とをそれぞれ含む複数のビルディングブロック分子
を含む、液体を含有する反応混合物を調製することと;
(b)前SOFを作成することと;
(c)前記反応混合物を濡れたフィルムとして堆積させることと;
(d)前記濡れたフィルムの変化を促進し、乾燥SOFを形成させることとを含み、この乾燥SOFの少なくとも一部分が周期的である、プロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−1539(P2012−1539A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124679(P2011−124679)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】