説明

周波数ホッピングを有する無線通信装置と受信方法

【課題】シンボル毎に周波数ホッピングをしながらパケット送受を行い、パケット先頭のキャリアセンスから復調開始する事を特徴とする受信ダイレクトコンバージョン方式による無線通信装置において、高速キャリアセンス及び受信ホッピング同期を実現し、ホッピング時にベースバンドに発生するDCオフセットジャンプを除去しつつ、MIMOによる空間分割多重を併せて実現する受信機構成を提供する。
【解決手段】パケット先頭で高速キャリアセンス、ホッピング同期を確実に実行し、DCオフセットジャンプを除去すべく、各受信系LO13、14、15はホッピングさせずに復調するが、ペイロード時はLOをホッピングさせMIMOへの移行を可能とする。更に全LOを中心LO周波数で固定しつつ、複素バンドパスフィルタ23等を併用することにより、パケット全長に及ぶDCオフセットジャンプの完全除去とMIMOを同時に実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数ホッピングを有する無線通信装置と受信方法に関し、特に、シンボル毎に周波数ホッピングをしながらパケット送受を行い受信側ではパケット先頭でキャリアセンスを行うことにより復調を開始する受信ダイレクトコンバージョン方式に用いて好適な受信機構成の無線通信装置と受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シンボル毎に周波数ホッピングをしながらパケット送受を行い、且つ受信側ではパケット先頭でキャリアセンスを行うことにより復調を開始する受信ダイレクトコンバージョン方式を採用した無線通信装置の受信機においては(例えばWireless USBのPHY(物理層)として用いられているWiMedia規格によるMulti Band OFDM(Orthogonal Fequency Division Multiplexing) UWB(Ultra Wide Band)方式等)、周波数ホッピングを伴った受信パケット先頭プリアンブル(プリアンブル)部の相関検出(CCA:Clear Channel Assessment検出)、即ち、キャリアセンスからホッピング同期・開始へ至る動作、更には、AGC(Auto Gain Control)/AFC(Auto Frequency Control)/同期確立迄を、如何に安定で高速に行えるかが、重要な技術的課題となっている。かかる高速相関検出技術としては、例えば特許文献1等の記載が参照される。
【0003】
更に、周波数ホッピングを伴う受信ダイレクトコンバージョン時の受信固定劣化要因としては、自己ミキシング等により受信ベースバンドに発生するDC(直流)オフセットがあげられる。受信ベースバンドに発生するDCオフセットに対して適正な抑圧対処を行わない場合、アナログベースバンド部の高利得により、受信信号共々飽和してしまうことが懸念される。
【0004】
周波数ホッピング毎にDCオフセットレベルが異なる場合、アナログベースバンド後段へのDC信号の増大化を防止するための直流カット用容量素子Ccutにより(OFDM時、DC信号のヌル(Null)化に伴い、DC最近傍のサブキャリア以遠をハイパスフィルタする)、ホッピング直後に、DCオフセット・ジャンプが発生する。
【0005】
DCオフセット・ジャンプの過渡応答の時定数が、無信号区間であるゼロ・パディング(Zero Padding)+ガード・インターバル(Guard Interval)(70.1nsec)を超える場合、ISI(Inter−Symbol Interference;シンボル間干渉)を引き起こすと共に、当該無信号区間を汚してしまう。この結果、サイクリック・プレフィックス(Cyclic Prefix)によるマルチパス遅延波処理も単純には行なえないことになり、顕著な受信固定劣化(固定化された受信特性の劣化)を生じさせる。更に、DCオフセット・ジャンプが過渡応答的であるため、一旦、DCオフセット・ジャンプが発生した場合、受信特性の劣化の改善や解決が困難となる。かかるDCオフセット・ジャンプ問題に対する解決策が、例えば特許文献2や特許文献3に開示されている。
【0006】
なお、無線パケット通信方式を始め、今後一層の高速化・大容量化がユビキタス・ブロードバンド・ワイヤレス化の潮流の中で望まれており、前記各問題を解決し、高速化を堅牢性高く実現できる技術的踏襲が重要視されている。その一躍を担うのがMIMO(Multi Input Multi Output)による空間分割多重方式である。なお、後の説明からも明らかとされるように、本発明は、前記した問題を解消し、併せてMIMO構成もとれる受信機の構成を提案するものであり、これにより、前記問題を回避しながら、性能の向上と付加価値を与えている。
【0007】
以下に本発明による関連技術の分析を与える。
【0008】
特許文献1は、周波数ホッピング・キャリアセンスを伴う無線通信方式において、キャリアセンスの判定精度が高く、キャリアセンスに要する時間が短い周波数ホッピング無線通信装置およびキャリアセンス装置として、図6に示す構成が開示されている。図6(A)は、特許文献1の図1の周波数ホッピング無線通信装置の構成に対応し、図6(B)は、特許文献1の図2のキャリアセンス部の構成に対応する。その構成・動作概要は以下の通りである。
【0009】
LNA(低雑音増幅器)102出力のRF(Radio Frequency)を分岐し、キャリアセンス部106としてはエネルギー検波及びRF相関検出でキャリアセンスを行う。キャリアセンス部106は、各周波数ホッピングしたRF信号を通過させられる複数のバンドパスフィルタ(RF BPF)201を備えホッピング周波数毎のRF BPF201の出力にエネルギー検波(電力検波部)及びRF相関検出器(自己相関部)を配置することで、ホッピングにて一旦時間軸上に分散されたキャリアセンス検出出力をまずそのまま検出し、その検出器の出力にはホッピング・パターンに応じた遅延を引き戻すための遅延部203を挿入し、最終的には加算部204でそれら遅延で時間軸上を併せた各ホッピング・シンボル毎の検出値を積分・加算し、早期相関値Upで高速キャリアセンスを図る。
【0010】
周波数ホッピングを伴なう高速キャリアセンスを図る場合、RF分岐でRF周波数でのエネルギー検波もしくは自己相関検出を考えているため、各周波数ホッピング毎のRF検出が必要となり、それに伴うバンドパスフィルタ(RF BPF)201の個数の増大、及び各RFでの検出回路構成による回路規模増大・コスト増大・消費電力増大を招く。
【0011】
次に周波数ホッピングを行うMulti Band OFDM UWBのダイレクトコンバージョン方式において、受信ベースバンドでのDCオフセット・ジャンプ除去を図る特許文献2の構成を、図7に示す。図7(A)は、特許文献2の図5のマルチバンドOFDM UWB受信機の構成に対応し、図7(B)は、特許文献2の図9の(ローカル信号の自己ミキシングを説明する図)に対応し、図7(C)は特許文献2の図2(バンド#1の入力電圧と出力電圧の関係を示した図)に対応し、図7(D)は特許文献2の図10(自己ミキシングによって生じるDCオフセットを説明するための図)に対応し、図12(DCオフセットのステップ応答の収束時間を説明する図)に対応する。なお、図7(C)、図7(D)中に付加した説明文は、特許文献2には無く、本発明者が説明のために付加したものである。図7の受信機の構成・動作概要は以下の通りである。
【0012】
周波数ホッピングする周波数帯#1、#2、#3毎に、受信ダイレクトコンバージョン方式の受信機ベースバンド信号I/Q(In−Phase/Quadrature)ラインには、シリーズにキャパシタC#1、C#2、C#3がパス選択のシリーズスイッチSW#1、SW#2、SW3と共に用意されており、その出力には、共通の出力負荷として、抵抗Rが対GND間にシャントについた構成とされる。すなわち1次のRC HPF(High Pass Filter)回路構成がベースバンド部に挿入されている。HPFのカットオフ周波数は、DC最近傍のサブキャリアを通せる程度に設定しているため、時定数的としては数シンボルかかる。
【0013】
図7の回路によれば、周波数ホッピングに同期してキャパシタを切り換え、例えば周波数帯#1から他の周波数帯#2に周波数ホッピングする直前でキャパシタC#1がDCオフセットのステップ電圧状の電荷を保持しておき、再び、周波数帯#1にホッピングしたときに、キャパシタC#1で先のステップ電圧応答を継続させるように、パス接続・動作させている。この動作により、数ホッピングサイクル後、キャパシタC#1の充放電はやがてなくなる方向で推移し、これに伴い、周波数ホッピング毎に選択された各RC回路の出力は定常状態=DCオフセット無しに、落ち着くと説明されている。
【0014】
高速周波数ホッピングを伴ないながら受信DCオフセット・ジャンプの除去を図る場合、特に、マルチバンドOFDM UWB(Multi Band OFDM UWB)のように、かなりのスピードで高速ホッピングを行う場合には、アナログRC回路の充放電をスイッチで切り替える手法は、純アナログ的手法であり、かなり綿密なパスのオン・オフ制御が必要となる。パスの切り替え点での誤動作または素子/動作/温度ばらつき時を含め、量産時を想定した完全、且つ安定したキャンセル効果が保証できない懸念がある。
【0015】
また当該ダイレクトコンバージョン方式によるOFDM受信機においては、一般的に、OFDM信号波には中心周波数のサブキャリア信号は配置されていない。即ち、受信ベースバンドでのDC成分はNull(ゼロ)となっているため、直流カット用容量素子Ccutにより、DCオフセットの増幅を断ち切ることが可能である。
【0016】
特許文献2においても、直流カット用容量素子Ccutを挿入した構成を基本としている。但し、この場合、DC Null最近傍のサブキャリアを抑圧しないように、直流カット用容量素子Ccutと負荷Rによる、一次RC HPFのカットオフ周波数を低めに設定する必要がある。その帰結としてRC時定数が数シンボルに跨る長さで大きくなってしまう。このため、DCオフセット・ジャンプが発生した場合、OFDMの数シンボルに亘り、長時間のDCオフセット・ジャンプを引き起こす結果となる。
【0017】
各ホッピング毎に受信ベースバンドI/Qの直流カット用容量素子Ccutパスを切り替え、ホッピング毎の直流カット用容量素子Ccut部の電荷移動を無くすことで、DCオフセット・ジャンプを収束させる場合、直流カット用容量素子Ccut出力でのDCオフセット・ジャンプの収束は、RC時定数で決まり、OFDM数シンボルの時間長を要し、受信パケットの先頭で即時にDCオフセット・ジャンプを解消できない。
【0018】
特許文献3には、マルチバンドOFDM_UWB送受信機をLow−IF(Intermediate Freqency:中間周波数)構成にし、ダイレクト・コンバージョン構成の送受信機における問題点を解決するため、図8(特許文献3の図1に対応)の構成が開示される。Low−IF受信機において、FFT(高速フーリエ変換)後に、サブキャリアを回転させる並び替えを行なうことで、第2ローカル信号による周波数変換を不要にするとともに、ダイレクト・コンバージョン受信機と同じAD変換クロックを用いる。一方、FFTをかけないプリアンブル部分については、元のプリアンブル・パターンにあらかじめIF周波数を乗算して得たシーケンスを用いることで、プリアンブル検出できるようにする。
【0019】
また、特許文献4には、図9の構成が開示される。図9(A)は、特許文献4の図1(送信装置のブロック構成図)、図9(B)は特許文献4の図2(受信装置のブロック構成図)、図9(C)は特許文献4の図3(復調回路のブロック構成図)、図9(D)は特許文献4の図12(従来例装置受信装置のブロック構成図)に対応する。これは、CDMA(Code Division Multiple Access)/SS方式の一種である周波数拡散・相関検出を、高速周波数ホッピング(Fast Frequency Hopping)方式で行う変復調方式の場合の(1/0 シンボルを複数周波数を組み合わせた周波数ホッピング・パターンで表現する無線伝送方式)受信側相関検出器の構成を説明したものである。受信側での相関検出を、従来は、ノンコヒーレント検波(送信のK個の異なるホッピングキャリア周波数はホッピング前後で位相連続性が無く、受信側でも位相同期がとられておらず、即ち受信のLO周波数は送信キャリア周波数に位相同期されていない方式)により行ってきたが、特許文献4では、送信側のホッピングキャリアの位相連続性を確保しつつ、受信側相関検出をコヒーレント検波とする周波数ホッピング方式を提案することで、理論的に受信感度性能を6dB改善させる事を目的としている(所要C/Nを6dB改善するのと同等)。
【0020】
この受信機の構成としては、シングルコンバージョン方式を採用しており、受信第1LOをf1+fIF・f2+fIF・・・fK+fIFといった周波数で、送信同様のK個の周波数パターンでホッピングさせ、これを合成(MIX)に注入する。IF帯に落ちた受信信号は、送受ホッピング同期が完全に得られた場合、全て同一のIF周波数を呈する。これを、準同期検波器で複素(I/Q)包絡線検波を行った後、時系列スイッチでK系統に分割し、それぞれに、K個の複素係数を乗算した後で、K個の複素包絡線から最小二乗法により、一つの複素包絡線を演算・合成して、判定回路でシンボル判定する。その際、判定回路の入出力誤差をゼロとするように、K個の複素係数を、自動制御することにより、適応的に最適受信状況を維持する。即ち、継続的に位相同期を伴うコヒーレント検波が行えているのと等価となる。
【0021】
この受信機の構成は、ホッピングした到来受信波の周波数ホッピング・パターンを抽出するため、各ホッピング周波数を固定したLO(局部発振器)とMIX(ミキサ)群の構成をとっていることが記載されている。ダイレクトコンバージョンを基調とするものでは無く、合成出力(ミキサ出力)はIF周波数であり、シングルコンバージョン方式を前提としている。
【0022】
特許文献5には、Multi Band OFDM UWB方式における周波数ホッピングに際し、従来は、各ホッピングシンボル(有効FFT(Fast Fourier Transform)長:128クロック=242.4nsec)の間に存在するZero区間中(計37クロック=70.1nsec)、更にその区間中の2種のゼロ・パディング区間(計32クロック=60.6nsec)の間に挟まれたGuard Interval区間(5クロック=9.5nsec)内でLO部が周波数ホッピングを完結させることが所望されてきたが、この様な短期間中にLO周波数を切り替える事は難易度が高く、たとえ高周波切り替えスイッチがあったとしても、その浮遊容量や伝送線路の影響により、9.5nsec以内の時間内に周波数切り替えを行う事は、一般的には困難と考えられてきた。特許文献5では、これを解決すべく、高速な周波数切り替えスイッチを用いる事無く、周波数ホッピングを実現できるMulti Band OFDM UWB用無線受信装置を提供する。図10(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)は、特許文献5の図1、図2、図3、図4、図5、図6をそのまま掲載したものである。
【0023】
基本的な受信機の構成としては、ダイレクトコンバージョンのQDEM以前のスイッチ・BPF・LNAについては、3サブバンド共用で、1系統を装備し、QDEMを含めたQDEM以降のアナログベースバンド部分からAD変換器までのチェインを周波数ホッピングの数分つまり3系統実装し、予め各ホッピングバンド毎に固定したLO周波数で待ち受けることで完全にホッピングレスとした構成をとるか、その他の構成としては同2系統のQDEM以降ブロックを実装し(図10(C)、(D)、(F):特許文献5の図3、図4、図6)、残る今ひとつのBandホッピングに対応すべく、次シンボル直前のシンボル区間を利用し、使用していない方の片側のQDEM/LO系を、次なるホッピング周波数に向けて十分な時間的余裕を持った上で周波数切り替えを行い、順次受信ホッピングを行う。また各実施例共に各QDEM以降の受信チェイン毎に設けられたI/Qベースバンド用AD変換器(特許文献5の実施例1、3はI/Q3対、特許文献5の実施例2、4はI/Q2対)の後段にはスイッチを設け、各ホッピングに伴ってAD変換器から出力されたI/Q 2系統のシンボル列(AD変換器により量子化した165個もしくは192個の量子化固片)をFFT前に、一旦、I/Q毎に、1個もしくは複数のシフトレジスタに格納し(特許文献5の実施例1、2ではI/Q1個ずつ、特許文献5の実施例3、4ではI/Q毎に3個ずつのシフトレジスタ装備)、マルチパスフェーディングによる遅延波対応のためのサイクリック・プレフィックス処理を与えた上で順次ホッピングシンボル順にFFTにかける。
【0024】
特許文献5についての高速ホッピング代替手段の提供以外の副次的効果は以下の通りである。各種伝播環境に応じて発生するマルチパスフェーディングによる遅延スプレッドが、ゼロ・パディング(Zero Padding)区間とガードインタバル(Guard Interval)区間を合計した隣り合う有効シンボル間のインターフレーム(Interframe)以上(70.1nsec)となってしまう場合、シンボル間干渉が発生し顕著な受信特性の劣化を招くことになる。
【0025】
特許文献5の構成では、前述したようにAD変換後の各ホッピング周波数に対応したI/Qシンボル列の量子化固片(AD変換器により量子化したサンプリング固片)をFFT前のディジタル・ベースバンド空間に設けたシフトレジスタに一旦格納した上で、遅延欠損部再生のためのサイクリック・プレフィックス処理については当該ホッピング周波数毎の飛び飛びのシンボル間隔でゆっくり処理が行えることから、特許文献5の実施例3、4では、通常(通常:ゼロ・パディング区間計32クロック/60.6nsec+ガード・インターバル5クロック/9.5nsecで計37クロック/70.1nsec)補償可能な許容値より長いマルチパス遅延波(最大許容遅延64クロック/121.2nsec)で、サイクリック・プレフィックス処理にてフェーディング補償を行える効能がある。
【0026】
特許文献5の実施例3、4を改良し、各シフトレジスタ毎にFFTを設けることができれば、3Bandホッピング時、特許文献5の実施例3の改良では、最大695.1nsecのマルチパス遅延を、特許文献5の実施例4の改良では、最大382.6nsecのマルチパス遅延を一旦取り込んだ上で、有効FFT長242.4nsecの枠の中でサイクリック・プレフィックス補償ができる可能性も有する。
【0027】
【特許文献1】特開2005−210170号公報
【特許文献2】特開2006−203686号公報
【特許文献3】特開2006−121546号公報
【特許文献4】特許第2700746号公報
【特許文献5】特開2006−20072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
上記した関連技術の問題点を以下に掲げる。
【0029】
シンボル毎に周波数ホッピングをしながらパケット送受を行い、且つ受信側ではパケット先頭でキャリアセンスを行うことにより復調を開始する、受信ダイレクトコンバージョン方式を採用した無線通信装置の受信機においては(例:WirelessUSBのPHYとして用いられているWiMedia規格によるMulti Band OFDM UWB方式等)、周波数ホッピングを伴った受信パケット先頭プリアンブル部の相関検出(CCA:Clear Channel Assessment検出)、即ち、キャリアセンスからホッピング同期・開始へ至る動作、更には、AGC/AFC/同期確立迄を如何に安定で高速に行えるかが重要な課題となっているが、特許文献1においては、周波数ホッピングを伴なう高速キャリアセンスを図る場合、RF分岐でRF周波数でのエネルギー検波もしくは自己相関検出を考えているため、各周波数ホッピング毎のRF検出が必要となり、それに伴うRF BPF数の増大、及び各RFでの検出回路構成による回路規模増大・コスト増大・消費電力増大を招く。
【0030】
より単純且つ確実に、複数の受信系の受信ディジタルベースバンド部以降で高速相関検出とホッピング・パターン・タイミング認知を行えることが要求されている。
【0031】
更に、周波数ホッピングを伴う受信ダイレクトコンバージョン時の受信固定劣化要因としては、自己ミキシング等により受信ベースバンドに発生するDCオフセットがあげられる。適正な抑圧対処を行わない場合、アナログベースバンド部の高利得により、受信信号共々飽和してしまうことが懸念されると共に、周波数ホッピング毎にこのDCオフセットレベルが異なる場合は、アナログベースバンド後段へのDC増大化を防止するためのカットにより(OFDM時、DC Null化に伴い、DC最近傍のサブキャリア以遠をハイパスフィルタリング(HPF)する)、ホッピング直後にDCオフセット・ジャンプが発生する。本ジャンプが過渡応答的であるため、一旦発生した場合、劣化改善・解決が困難となってしまう。
【0032】
かかるDCオフセット・ジャンプ問題に対しては、その解決策として従特許文献2と特許文献3が提案されている。
【0033】
特許文献2においては、高速周波数ホッピングを伴ないながら受信DCオフセット・ジャンプの除去を図る場合、Multi Band OFDM UWBのように、かなりのスピードで高速ホッピングを行う場合、アナログRC回路の充放電をスイッチで切り替える手法は、純アナログ的手法であり、綿密なパスOn/Off制御が必要となる。このため、パス切り替え点での誤動作または素子/動作/温度ばらつき時を含め、量産時を想定した完全且つ安定したキャンセル効果が保証できない懸念がある。
【0034】
また当該ダイレクトコンバージョン方式によるOFDM受信機においては、一般的にOFDM信号波には中心周波数のサブキャリア信号は配置されておらず、即ち受信ベースバンドでのDC成分はNull(ゼロ)となっているため、直流カット用容量素子Ccutにより、DCオフセットの増幅を断ち切ることが可能であり、特許文献2でも、Ccutを挿入した構成を基本としている。但し、この場合、DC Null最近傍のサブキャリアを抑圧しないように、直流カット用容量素子Ccutと負荷Rによる一次RC HPFのカットオフ周波数を低めに設定する必要がある。その帰結として、RC時定数が数シンボルに跨る長さとなる。このため、DCオフセット・ジャンプが発生した場合、OFDM数シンボルに亘り、長時間のジャンプを引き起こすことになる。そのため、特許文献2の実施例では、各ホッピング毎に、受信ベースバンドI/Qの直流カット用容量素子Ccutパスを切り替え、ホッピング毎の直流カット用容量素子Ccut部の電荷移動を無くすことで、DCオフセット・ジャンプを収束させている。やはり、直流カット用容量素子Ccut出力でのジャンプ収束には、RC時定数で決定されるOFDM数シンボルの時間長を要する。この場合、受信パケット先頭で即時にジャンプを解消できない。すなわち、より単純且つ完全に受信パケット先頭からDCオフセット/DCオフセット・ジャンプを排除し、最高受信性能を引き出すことが要望されている。
【0035】
また、受信ベースバンドでのDCオフセット・ジャンプ除去を目的とした特許文献3としては、送受PHY アーキテクチャ並びに主要システム構成を”Near−Zero IF方式”固定へ変えた上で、受信DCオフセット・ジャンプその他の改善を与えるべく提案されたものである。
【0036】
LO(局発信号)のホッピング周波数を受信ホッピング変調波間の丁度真ん中(境界周波数)に設定することで、アナログベースバンドへ落とした受信変調波を0からマイナス周波数方向のNear−Zero IFに存在させる。この周波数配置により、アナログベースバンドに挿入するDCオフセット防備用Ccutの時定数を低減できるため、DCオフセット・ジャンプの過渡応答時間を極小化し(約30nsec)、受信ホッピング時においてもDCオフセット・ジャンプによる受信特性の劣化を極力与えないように工面できる点が最大の特徴となっている。但し、この手法でも、DCオフセット・ジャンプが皆無にできる訳では無く、過渡応答時間は低減できるとしても、そもそもLSI等の製造プロセス及び回路設計上に起因する形で受信ホッピング周波数毎にDCオフセット量が大幅に異なる場合は、受信ホッピング時における直流カット用容量素子Ccut入力での電圧ステップ応答は大きく、直流カット用容量素子Ccut出力に現れるDCオフセット・ジャンプ時のインパルス応答波高値が高止まりとなる懸念がある。それに応えられるだけの過渡応答垂下特性を確保できていない場合は、やはり甚大なDCオフセット・ジャンプによる受信特性の劣化を招いてしまう。また、DCオフセット・ジャンプの過渡応答を高速化できたとしても、ゼロ・パディング+ガード・インターバル上には、依然ジャンプが存在しているため、無信号区間へ漏れ込んだマルチパス遅延波を切り出して、有効FFTシンボル区間に足し込む操作を行なうサイクリック・プレフィックスを、単純には行なえないことになる。この観点からも、受信特性の劣化を招くこととなる。
【0037】
なお、AD変換器のサンプリング周波数を受信変調波帯域幅のままとすることにより、0Hzを対称とした周波数重畳を発生させ、丁度0Hzを境に正負SSB(Single Side Band)帯域が逆転して現れることから、特許文献3では、FFT後にサブキャリアの並び替えを行い、Zero−IFベースバンドに落とす操作を行っている。この周波数重畳とサブキャリア並び替えによって、ディジタル・ベースバンドでの2nd LOによる周波数シフトが不必要となる利点がある。
【0038】
しかし、プラス側ベースバンド周波数方向への周波数重畳をAD変換で行う前に、アナログベースバンド部にて0からマイナス周波数方向のNear−Zero IFに存在する受信ベースバンド波に対するプラス周波数側のイメージ帯域をクリーンアップすべく、アナログベースバンド部で予め十分抑圧しておく必要がある。
【0039】
このプラス側ベースバンド周波数帯域の隣接受信チャネル(Ch)干渉波等を十分除去するには、アナログベースバンド部分に正負ベースベンド周波数を弁別抑圧できるアナログベースでの複素BPF(ヒルベルトBPF)を挿入する必要がある。
【0040】
ここが構成上の大きな特徴であると共に、送信を含めた送受無線機としての構成を複雑化・大型化させる要因ともなっている。
【0041】
例えば特許文献3の実施例では、受信側を前記周波数構成とした波及として送信側構成の複雑化を招いており、ディジタル・ベースバンド領域で、0Hz〜マイナス周波数側に変調波を形成すべく受信側Near−Zero IF同等の周波数ローテーションをかけた後DAC(ディジタルアナログ変換器)で、アナログIF化するが、アナログベースバンドにはDACのアパチャー効果を伴いながら上下IF周波数帯域に、Sinc関数の包絡線を以て数個の折り返しスペクトラムが非対称に出現してしまう。この0Hzを中心に非対称に折り返す不要スペクトラムは、QMODでのアップコンバート(Up Convert)前に抑圧する必要があるため、アナログベースバンドに受信同様のヒルベルトBPFをI/Q軸共に挿入しなければならず、送信側の回路や消費電力の増大化も招いてしまう点で旨く無い。
【0042】
以上、特許文献3の問題点と共に特許文献2の問題点とを併せ、より単純且つ完全なDCオフセット/DCオフセット・ジャンプを補償する技術の実現が望まれてきた。
【0043】
なお、前記問題点の解消とは別に、当該無線パケット通信方式を始め、今後一層の高速化・大容量化がユビキタス・ブロードバンド・ワイヤレス化の潮流の中で望まれていることから、前記諸課題を解決しながらも、新たな高速化を堅牢性高く実現できる技術的踏襲が重要視されており、前述したように、その一躍を担うのがMIMOによる空間分割多重方式である。
【0044】
本発明は、上記問題点に鑑みて創案されたものであり、その目的は、シンボル毎に周波数ホッピングをしながらパケット送受を行い、且つ受信側ではパケット先頭でキャリアセンスを行うことにより復調を開始する、受信ダイレクトコンバージョン方式を採用した無線通信装置の受信機において、周波数ホッピングを伴った受信パケット先頭プリアンブル部の相関検出(CCA:Clear Channel Assessment検出)、即ちキャリアセンスからホッピング同期・開始へ至る動作、更にはAGC(自動利得制御)/AFC(自動周波数制御)/同期確立迄を安定且つ高速に行なうとともに、周波数ホッピング直後にDCオフセット・ジャンプの発生を抑止する受信方法と無線通信装置を提供することにある。さらに、本発明は、上記目的を達成するとともに、MIMOによる空間分割多重方式で更なる高速化・大容量化を図れる受信機を提供することもその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0045】
本願で開示される発明は、前記課題を解決するため、概略以下の構成とされる。
【0046】
本発明の1つの側面によれば、シンボル毎に周波数ホッピングをしながらパケット送受を行い、且つ受信側ではパケット先頭でキャリアセンスを行うことにより復調を開始する受信ダイレクトコンバージョン方式の無線通信装置において、周波数ホッピング数に準拠した複数の受信系のそれぞれの局発周波数を、各ホッピング周波数で固定した設定とし、周波数ホッピングを伴った受信パケット先頭プリアンブル部の予め定められた個数のシンボルを用いてディジタル・ベースバンド部にてキャリアセンスし、ホッピングパターンの検出から受信ホッピング同期の後、ペイロード(Payload)/データ部の復調を行う。本発明において、プリアンブルからヘッダー部の処理、復調中の受信系のベースバンドにそれぞれ具備された可変帯域低域通過フィルタの遮断帯域は狭帯域設定とする。
【0047】
本発明の別の側面によれば、シンボル毎に周波数ホッピングをしながらパケット送受を行い、且つ受信側ではパケット先頭でキャリアセンスを行うことにより復調を開始する受信ダイレクトコンバージョン方式の無線通信装置において、パケット先頭のプリアンブルからヘッダー復調までは、複数の受信系の局発信号を周波数ホッピングさせないが、ペイロード/データ復調時には複数の受信系の局発信号を周波数ホッピングさせ、MIMO(Multiple Input Multiple Output)による空間分割多重復調動作へ移行させる、無線通信装置が提供される。本発明においては、プリアンブルからヘッダー部処理に引き続き、ペイロード/データ部の復調時の受信系ベースバンドにそれぞれ具備された可変帯域低域通過フィルタの遮断帯域は狭帯域設定とする。
【0048】
本発明のさらに別の側面によれば、シンボル毎に周波数ホッピングをしながらパケット送受を行い、且つ受信側ではパケット先頭でキャリアセンスを行うことにより復調を開始する受信ダイレクトコンバージョン方式の無線通信装置において、パケット先頭のプリアンブルからヘッダーの復調では、複数の受信系の局発信号を周波数ホッピングさせず、続くペイロード/データの復調時にも複数の受信系局発信号を周波数ホッピングさせずに、前記受信系の局発信号を周波数の内、中心となる周波数を1つ選択し、前記周波数を全ての受信系の局発信号に共通に適用し、MIMOによる空間分割多重復調動作を行わせる無線通信装置が提供される。
【0049】
本発明においては、局発信号の周波数の中で中心に位置する1つの周波数に固定されており、送信ホッピング周波数が局発信号の周波数以外の周波数となっている時間帯のシンボルを復調する場合は、複数の受信系ベースバンドにそれぞれ具備された可変帯域低域通過フィルタの遮断帯域を広狭帯域化し、送信ホッピング周波数と局発信号周波数の差に応じたNear Zero IFベースバンド信号をAD変換器以降に取り込めるようにし、前記AD変換器の後段のディジタル・ベースバンド部分に複素バンドパスフィルタ、並びにディジタル周波数変換器を備え、ゼロ周波数及び正負ベースバンド周波数に対応する変調シンボルを抽出し復調する。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、シンボル毎に周波数ホッピングをしながらパケット送受を行い、且つ受信側ではパケット先頭でキャリアセンスを行うことにより復調を開始する、受信ダイレクトコンバージョン方式を採用した無線通信装置の受信機において、周波数ホッピングを伴った受信パケット先頭プリアンブル部の相関検出(CCA:Clear Channel Assessment検出)、即ちキャリアセンスからホッピング同期・開始へ至る動作、更にはAGC(自動利得制御)/AFC(自動周波数制御)/同期確立迄を安定且つ高速に行ない、周波数ホッピング直後にDCオフセット・ジャンプが発生してしまう問題点を解消することができる。
【0051】
さらに、本発明によれば、MIMOによる空間分割多重方式で更なる高速化・大容量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
前記した本発明についてさらに詳細に説明すべく以下では、本発明の原理、関連技術(特許文献)との対比、具体的な実施例について説明する。
【0053】
本発明は、シンボル毎に周波数ホッピングをしながらパケット送受を行い、且つ受信側ではパケット先頭でキャリアセンスを行うことにより復調を開始する受信ダイレクトコンバージョン方式を採用した無線通信装置(例:Wireless USBのPHYとして用いられているWiMedia規格によるMultiBand OFDM UWB方式等)において、周波数ホッピング数に準拠した複数個の受信系のLO周波数を各ホッピング周波数で固定待ち受けとした設定で、周波数ホッピングを伴った受信パケット先頭プリアンブル部を相関検出(CCA:Clear Channel Assessment検出)することで、
・安定、且つ、高速なキャリアセンス、及び、受信側ホッピング同期・開始を実現し、
・相関検出(CCA:Clear Channel Assessment検出)後のAGC/AFC/同期確立/復調動作に至っても、複数の受信系LOを固定のままで運用することにより、自己ミキシング等により受信ベースバンドに発生するDCオフセット、周波数ホッピング毎にDCオフセットレベルが異なる場合、ベースバンド後段へのDC増大化を防止するための直流カット容量素子Ccut挿入により(OFDM時DC Null化に伴い、DC最近傍のサブキャリア以遠をHPF)、周波数ホッピング直後に現れるDCオフセット・ジャンプを除去する。
【0054】
DCオフセット、DCオフセット・ジャンプは、前述したように、周波数ホッピングを伴う受信ダイレクトコンバージョン時の受信特性の固定劣化の要因として懸念されるものであり、本発明によれば、DCオフセット、DCオフセット・ジャンプをAD変換器前で完全に除去する。
【0055】
本発明において、パケット先頭のプリアンブル〜ヘッダー復調までは、先頭処理を安定且つ確実に実行すべく、複数個の各受信系LOをホッピングさせないが、ペイロード/データ復調時は、複数個の各受信系LOをホッピングさせ、MIMOによる、空間分割多重復調動作へ移行させる。
【0056】
また、本発明においては、パケット先頭のプリアンブル〜ヘッダー復調以降、引き続きペイロード/データ復調時も、複数個の各受信系LOをホッピングさせず、その各受信系LO周波数の内、最も中心となるLO周波数を1つ選択、設定するようにしてもよい。この周波数構成で復調を行う場合は、送信ホッピング周波数と受信固定周波数が異なる復調シンボルについては、Near−Zeroベースバンドとなってアナログベースバンド以降に現れるため、AD変換器以降のディジタル・ベースバンド部分に設けた複素バンドパスフィルタで周波数軸上から抽出した上でMIMO復調処理・空間分割多重を行なうことで、前記周波数ホッピングを伴う受信ダイレクトコンバージョン時の受信固定劣化要因として懸念されるDCオフセット、並びに周波数ホッピング時、アナログベースバンドへのCcut挿入で発生するホッピング直後のDCオフセット・ジャンプをも完全に除去しつつ、MIMOによる空間分割多重復調動作を併せて行わせることができる。
【0057】
特許文献1では周波数ホッピングを伴なう高速キャリアセンスを図る場合、RF分岐でRF周波数でのエネルギー検波もしくは自己相関検出を考えている為、各周波数ホッピング毎のRF検出が必要となり、それに伴うRF BPF数の増大、及び各RFでの検出回路構成による回路規模増大・コスト増大・消費電力増大を招く。本発明は、特許文献1とは全く構成が相違している。本発明によれば、より単純且つ確実に、複数の受信系の受信ディジタルベースバンド部分で相関検出とホッピング・パターン・タイミング認知を行えるため、各要因の増大化を招かない。
【0058】
特許文献2では、直流カット容量素子Ccutの出力でのDCジャンプの収束にはRC時定数で決まってしまうOFDM数シンボルの時間長を要する。受信パケット先頭で即時にジャンプを解消できない。本発明の場合、単純且つ確実であり、複数の受信系のLO(局発)周波数を固定にしたまま、ディジタルベースバンド部でホッピング・シンボルの抽出〜復調動作を行う。このため、完全に受信パケットの先頭からDCオフセット/DCオフセット・ジャンプを排除することが可能であり、受信性能を引き出すことができる。
【0059】
更に、周波数ホッピングを行うMulti Band OFDM UWB方式において、受信ベースバンドでのDCオフセット・ジャンプ除去を目的とした特許文献3には、図8の構成が開示される。Multi Band OFDM UWBでの周波数ホッピング時、受信DCオフセット・ジャンプによる受信特性の劣化を抑制する。
【0060】
特許文献2は、受信ダイレクトコンバージョン方式の元で各種回路的改善を図るものである。
【0061】
また、特許文献3は、送受PHYアーキテクチャ並びに主要システム構成を”Near−Zero IF方式”固定へ変えた上で、受信DCオフセット・ジャンプその他の改善を図っている。いずれも、本発明の受信側とは構成が相違している。また、特許文献3と本発明との相違点としては、パケット先頭のキャリアセンス以降のLO周波数をホッピングさせている点にある。
【0062】
特許文献3の発明においては、LOホッピング周波数を受信ホッピング変調波間の丁度真ん中(境界周波数)に設定することで、アナログベースバンドへ落とした受信変調波を0からマイナス周波数方向のNear−Zero IFに存在させる。そして、このような周波数構成とすることにより、受信アナログベースバンドに落ちるNear−Zero IF変調波の周波数下端(最下端サブキャリア周波数)と0Hz周波数との間に、ダイレクトコンバージョン方式に比して、約10倍程度の大きな周波数離隔を確保できるようになる。
【0063】
特許文献3の発明によれば、アナログベースバンド部に挿入される、DCオフセットを切るための直流カット容量素子Ccutで決まるHPFカットオフ周波数を10倍程度に増大することができ、前記と同一メカニズムで、DCオフセット・ジャンプが生じたとしても、時定数的には、約1/10となる。
【0064】
また、特許文献3の発明によれば、DCオフセット・ジャンプの時間応答をMulti Band OFDM UWB時のOFDMシンボルの1/10程度(約30nsec)に圧縮でき、その過渡応答(約30nsec)を有効OFDMシンボル間のゼロ・パディング+ガード・インターバルの70.1nsec内に封じ込めた上で、ディジタル・ベースバンド部にて、DCオフセット・ジャンプの除去が可能となる。
【0065】
特許文献3の発明によれば、ホッピング復調時のDCオフセット・ジャンプによる受信特性の劣化を最小限に留めることができる。
【0066】
その上、特許文献3の発明によれば、AD変換器のサンプリング周波数を敢えて通常サンプリング定理で折り返し(すなわち、ナイキスト周波数を超える周波数成分はサンプリング時に折り返される現象)を考慮した場合の最大変調周波数帯域の2倍をサンプリング周波数とするのでは無く、その1/2で受信変調波帯域幅のままとし、0Hzを対称として周波数重畳(周波数フォールディング(Folding)=AD変換器での折り返し)が発生することを利用している。
【0067】
この場合、丁度、0Hzを境に、正負SSB(Single Side Band)帯域が逆転して現れる。このため、FFT(高速フーリエ変換)後に、サブキャリアの並び替えを行い、Zero−IFベースバンドに落とす操作を行っている。
【0068】
特許文献3の発明によれば、この周波数重畳とサブキャリア並び替えによって、ディジタル・ベースバンドでの2nd LOによる周波数シフトが不必要となる利点がある。
【0069】
プラス側ベースバンド周波数方向への周波数重畳を、AD変換で行う前に、アナログベースバンド部にて、0からマイナス周波数方向のNear−Zero IFに存在する受信ベースバンド波に対するイメージ帯域(プラス側ベースバンド周波数帯域で隣接受信Ch干渉波他が存在)を、周波数重畳後を考えアナログベースバンド部で予め十分抑圧しておく必要がある。これらプラス側ベースバンド周波数帯域の隣接受信チャネル干渉波等を、十分除去する必要がある。
【0070】
アナログベースバンド部分には、正負ベースベンド周波数を弁別抑圧できる複素BPF(ヒルベルトBPF)を挿入し、復調処理を行う必要がある。
【0071】
なお本発明によれば、前記諸問題を回避するための手法と併せて、MIMO構成もとれる受信機構成を提案することにより、前記諸問題を回避しながら、新たな性能向上と付加価値を与えている。
【0072】
特許文献5と本発明との構成上の相違点としては、特許文献5では、ダイレクトコンバージョンのQDEM(直交復調)以前のスイッチ、BPF(BandPass Filter:バンドパスフィルタ)、LNA(Low Noize Amplifier:低雑音増幅器)が3サブバンド共用で1系統で装備されているのに対して、本発明では、MIMOによる空間多重へ向けた性能拡張も同時に可能とすべく、QDEM(直交復調)前段の回路ブロックであるアンテナ、LNA等も全て完全3系統を装備している点が異なっている。SISO(Single Input Single Output)に比して、本発明では、プリアンブル部での確実・安定な相関検出に引き続き、ペイロード部ではMIMO送受信を行えるメリットがあるため、空間多重による更なる高速/大容量化及びRate Upが行える点、もしくは低Rate送受の空間多重化により、SISOによる同一合計Rate送受に比して到達距離性能を大幅に改善できる点で相違且つ有効と考える。
【0073】
本発明によれば、シンボル毎に周波数ホッピングをしながらパケット送受を行い、且つ受信側ではパケット先頭でキャリアセンスを行うことにより復調を開始する、受信ダイレクトコンバージョン方式を採用した無線通信装置において、周波数ホッピング数に準拠した複数個の受信系の各々のLO周波数を各ホッピング周波数で固定した設定とすることで、周波数ホッピングを伴った受信パケット先頭プリアンブル部の数シンボルを用いてディジタルベースバンド部で高速キャリアセンスし、且つホッピング・パターンの検出から受信ホッピング同期の後、ペイロード/データ部の復調を行うことを特徴としており、本プリアンブル〜ヘッダー部処理・復調中の各受信系ベースバンドにそれぞれ具備された可変帯域LPF(チャネル・フィルタリング)のカットオフ帯域は狭帯域設定とする。
【0074】
更に、本発明によれば、CCA後のAGC(自動利得制御)/AFC(自動周波数制御)/同期確立/復調動作に至っても、複数個の各受信系LOを固定のままで運用することにより、周波数ホッピングを伴う受信ダイレクトコンバージョン時の受信固定劣化要因として懸念される、自己ミキシング等により受信ベースバンドに発生するDCオフセット、並びに周波数ホッピング毎にDCオフセットレベルが異なる場合、ベースバンド後段へのDC増大化を防止するための直流カット用容量素子Ccutにより(OFDM時DC Null化に伴い、DC最近傍のサブキャリア以遠をHPF)ホッピング直後に現れるDCオフセット・ジャンプを、AD変換器の前で完全に除去する。
【0075】
なお、本発明において、パケット先頭のプリアンブル〜ヘッダー復調までは、先頭高速キャリアセンス判定・ホッピング同期を安定且つ確実に実行すべく複数個の各受信系LOをホッピングさせないが、ペイロード/データ復調時は複数個の各受信系LOをホッピングさせることで、MIMOによる空間分割多重復調動作へ移行できる。この場合、プリアンブル〜ヘッダー部処理に引き続き、ペイロード/データ部の各復調時に、各受信系ベースバンドにそれぞれ具備された可変帯域LPF(チャネル・フィルタリング)のカットオフ帯域は、狭帯域設定とする。
【0076】
また、本発明においては、パケット先頭のプリアンブル〜ヘッダー復調では、先頭高速キャリアセンス判定・ホッピング同期を安定且つ確実に実行すべく、複数個の各受信系LOをホッピングさせずに運用し、続くペイロード/データ復調時も、複数個の各受信系LOをホッピングさせずに、その各受信系LO周波数の内、最も中心となるLO周波数を1つ選択し、全ての受信系LOに同一適用しながら動作させることで、前記周波数ホッピングを伴う受信ダイレクトコンバージョン時の受信固定劣化要因として懸念される、DCオフセット並びにアナログベースバンドへのCcut挿入で発生する周波数ホッピング直後のDCオフセット・ジャンプも完全に除去しつつ、MIMOによる空間分割多重復調動作を併せて行わせることができる。
【0077】
なお、本発明においては、かかる構成を採用して受信DCオフセット・ジャンプ完全回避による更なる受信特性向上を確保しつつ、MIMO復調を行う場合は、各受信系のLOは全て前記決定方法に基づき全周波数帯域中心近傍の1つの周波数に固定されているため、送信ホッピング周波数がLO周波数以外の周波数となっている時間帯のシンボルを復調する場合はNear Zero IF復調方式となり、各受信系ベースバンドにそれぞれ具備された可変帯域LPF(チャネル・フィルタリング)のカットオフ帯域を広狭帯域化することにより、送信ホッピング周波数とLO周波数の差に応じたNear Zero IFベースバンド信号を十分AD変換器以降に取り込めるようにし、更にAD変換器以降のディジタル・ベースバンド部分に複素バンドパスフィルタとディジタル周波数変換器を実装することにより、正負ベースバンド周波数方向に離散した変調シンボルを抽出・集約の上、復調できる構成としている。
【0078】
本発明によれば、高速キャリアセンスとホッピング・パターン検出を確実に実現するに当たっては、周波数ホッピング数に準拠した複数個の受信系を設け、各々の受信系のLO周波数を各ホッピング周波数で固定した設定で受信待ち受けすることで、任意の周波数ホッピング・パターンを伴った受信パケット先頭プリアンブル部であっても、いずれかのLO周波数を持つ受信系で、まずは、相関検出(CCA:Clear Channel Assessment検出)が可能となり受信動作を開始することができる。更に、予め周波数ホッピング数に準拠した複数の受信系は、全てレディ(Ready)状態で待ち受けていることから、如何なる複数周波数間のホッピング・パターンであっても、次々にいずれかのLO周波数を持つ受信系から相関検出が出力され、これら相関検出がなされたLO周波数の偏移をディジタル・ベースバンド部が追跡することで、最小限のホッピングシンボル数にて、ホッピング・パターンを同定することが可能となる。例えば、ホッピングレス及び2バンド・ホッピングを含む3バンド・ホッピングモードの場合は、最低3シンボル目で相関検出/CCAと、ホッピング・パターンの特徴の完全認知が可能となり、高速且つ安定したキャリアセンス動作・復調開始が可能となる。
【0079】
更に、本発明によれば、周波数ホッピングを伴う受信ダイレクトコンバージョン時の受信固定劣化要因として懸念されるDCオフセット・ジャンプの完全除去に当たっては、CCA後のAGC/AFC/同期確立/復調動作に至っても、引き続き複数個の各受信系LOをホッピングレスで固定のまま復調することにより、各受信系のアナログベースバンドに異なるDCオフセットが現れたとしても、その値自身はホッピングで変動せず、アナログベースバンド部に挿入された各々のCcutで安定した形でDC的増幅を抑制することができるため、ホッピング毎のDCオフセット・ジャンプを根絶することができる。
【0080】
更にまた、本発明によれば、安定した高速キャリアセンスとDCオフセット・ジャンプを抑止することができる。
【0081】
本発明においては、完全分離且つホッピング周波数分複数実装された受信系を用い、プリアンブル〜ヘッダー復調後のPayload部における高性能化にも貢献できる要素を兼ね備えており、アンテナから受信機ディジタル・ベースバンドにかけて完全分離で複数完備した受信系の存在から、MIMO復調による空間分割多重が可能となり、前記問題点克服と共に更なる高速化・大容量化をも行なうことができる点で有効である。以下具体的な実施例に即して説明する。
【実施例】
【0082】
図1は、本発明の一実施例を説明するための図である。図1(A)は、本発明の一実施例の無線通信装置を説明する図である。図1(B)と図1(E)は、受信パケット先頭のプリアンブル部〜ヘッダー部での周波数ホッピングオフ状態の受信ベースバンド出力と相関検出を説明する図である。図1(C)は、受信パケット後方のペイロード部での周波数ホッピングオン状態の受信ベースバンド出力(MIMO受信を実施する場合)、図1(D)は伝播路行列をそれぞれ例示する図である。
【0083】
図1(A)を参照すると、送信アンテナ1、2、3のそれぞれの個別送信機からは、WiMedia準拠の3バンド・ホッピングを伴う送信シンボル信号列か、或いは、各送信機毎にいずれかのホッピング周波数で固定した送信波が空間に放射される。
【0084】
図1(A)に示すように、送信アンテナ1からは、Af1/Af2/Af3の3ホッピング波もしくはAf1のみ(Af1送信/Af2送信断/Af3送信断)の放射を可能としている。送信アンテナ2からは、Bf1/Bf2/Bf3の3ホッピング波もしくはBf2のみ(Bf1送信断/Bf2送信/Bf3送信断)の放射を可能としている。送信アンテナ3からは、Cf1/Cf2/Cf3の3ホッピング波もしくはCf3のみ(Cf1送信断/Cf2送信断/Cf3送信)の放射を可能としている。
【0085】
なお、送信アンテナは、×n系列(nは、ホッピング周波数と同一)への拡張も可能である。
【0086】
受信側において、送信アンテナから、計3×3の伝播経路を経て伝播してきた各受信波は、送信ホッピング周波数の数と同数の受信アンテナ4、5、6で受信され、その後段の受信系としては、各々独立した低雑音増幅器7、8、9、直交復調部(QDEM)10、11、12、可変帯域LPF(チャネル・フィルタリング)16、17、18、及び、可変利得アナログベースバンドアンプ19、20、21を備えている。なお、送信アンテナは、拡張時m×n(ここで、mは受信ホッピング周波数と同一)とされる。受信アンテナは、×m系列のアンテナ数に拡張可能である。
【0087】
QDEM10、11、12には、各3種のホッピング周波数を出力することが可能なLO(Local Oscilator;局部発振器)13、14、15がそれぞれ接続されている。
【0088】
後述の各動作モード(プリアンンブル相関検出〜ヘッダー部復調、ペイロード/データ復調部でのMIMOモード)によって、3つのホッピング周波数の中からそれぞれの受信系に対して、3種別々のLO周波数となるようにLO13、14、15を周波数固定して設定する。
【0089】
MIMOモード(後に説明される図5の第2の実施例の記載参照)に移行する場合は、受信波のホッピング周期に同期して、LO13、14、15を周波数ホッピングさせる。各々の3受信系のアナログベースバンド後段には、AD変換器(ADC)22が接続され、ディジタル・ベースバンドに各復調シンボルを変換した上で、ディジタル領域で各種必要な復調処理を行なう。
【0090】
シンボル毎に周波数ホッピングをしながらパケット送受を行い、且つ受信側では、パケット先頭でキャリアセンスを行うことにより復調を開始する受信ダイレクトコンバージョン方式を採用した無線通信装置においては(例:WirelessUSBのPHYとして用いられているWiMedia規格によるMulti Band OFDM UWB方式等)、周波数ホッピング数に準拠した複数個(図1では、3周波数ホッピング=3受信系a/b/cを想定)の受信系を設け、受信系a/b/cのLO周波数を各ホッピング周波数f1/f2/f3で固定した設定で受信待ち受けする。
【0091】
任意の周波数ホッピング・パターンを伴った受信パケット先頭プリアンブル部であっても、いずかのLO周波数を持つ受信系で、まずは、相関検出(CCA:クリアチャネル・アセスメント検出)が可能となり、受信動作を開始することができる機能を有している。
【0092】
更に、予め周波数ホッピング数に準拠した複数の受信系は、全てレディ(Ready)状態で待ち受けていることから、WiMedia規格によるMulti Band OFDM UWB方式を一例にとった場合のホッピングレスや、2バンド・ホッピングを含む如何なる3周波数間のホッピング・パターンであっても、次々に、いずれかのLO周波数を持つ受信系から相関検出が出力され、これら相関検出がなされたLO周波数の偏移をディジタル・ベースバンド部が追跡することにより、最小限のホッピング・シンボル数にてホッピング・パターンを同定することが可能となる。
【0093】
例えば、ホッピング・レス及び2バンド・ホッピングを伴う3バンド・ホッピング・モードの場合、最低3シンボル目で相関検出/CCAとホッピング・パターンの特徴の完全認知が可能となり、高速且つ安定したキャリアセンス動作・復調開始が可能となる。すなわち、ホッピング・レス及び2バンド・ホッピングを伴う3バンド・ホッピング・モードの場合、f1、f2、f3をホッピング周波数とした場合、
f1/f2/f3・・・と、f1/f2/f1/f2・・・等の判別や、
f1/f3/f2・・・と、f1/f3/f1/f3・・・等の判別、或いは、
f1/f1/f1・・・と、f1/f1/f2/f2/f3/f3・・・等の判別
を、最低3シンボル目で判別可能である。
【0094】
ちなみに、パケット先頭のプリアンブル〜ヘッダー復調までは、先頭高速キャリアセンス判定・ホッピング同期を安定且つ確実に実行すべく、複数の各受信系LO13、14、15を周波数ホッピングさせない。その際のパケット先頭プリアンブル〜ヘッダー迄の各送信アンテナ1、2、3、及び、送信系から送出されるべきシンボル遷移と周波数ホッピング設定としては、送信側ホッピング有無にて、以下(A)、(B)の2通りの多重化レスモードでの送出が可能である(図2(A)、(B)参照)。なお、図2(A)、(C)は、受信系LO13、14、15を周波数ホッピングさせない場合の送信アンテナ(x3)と受信アンテナ(x3)の関係とその伝播路行列、図2(B)、(D)は、受信系LO13、14、15を周波数ホッピングさせた場合の送信アンテナ(x3)と受信アンテナ(x3)の関係とその伝播路行列を例示している。
【0095】
(A)、(B)のいずれかの送信モードでプリアンブル〜ヘッダー迄を送出することによって、それぞれの受信系a/b/cにて、送信Af1/Bf2/Cf3のホッピング・シンボル遷移、及び、Af1/Af2/Af3のホッピング・シンボル遷移に相当する受信シンボルaf1/bf2/cf3が受信できることになる。この点は、動作の説明で詳述する。
【0096】
以下、各シンボルスロット毎に、Af*:送信アンテナ1送出/Bf*:送信アンテナ2送出/Cf*:送信アンテナ3送出を示す。なおf*は、ホッピング周波数を表す。
【0097】
(A)送信側プリアンブル〜ヘッダー部 周波数ホッピング無しモード(3系統送信の送信AのLOはf1固定、送信BのLOはf2固定、送信CのLOはf3固定で擬似送信周波数ホッピングを実行):
第1シンボルスロット:Af1送信/Bf1送信断/Cf1送信断→第2シンボルスロット:Af2送信断/Bf2送信/Cf2送信断→第3シンボルスロット:Af3送信断/Bf3送信断/Cf3送信→ ・・・
【0098】
(B)送信側プリアンブル〜ヘッダー部 周波数ホッピング有りモード(3系統送信のうち何れか1系統のみを用いて周波数ホッピング実行、以下は送信Aのみを用いた場合):
第1シンボルスロット:Af1送信/Bf1送信断/Cf1送信断→第2シンボルスロット:Af2送信/Bf2送信断/Cf2送信断→第3シンボルスロット:Af3送信/Bf3送信断/Cf3送信断→ ・・・
【0099】
なお、以降、受信側ホッピング同期が取れた後は、同様に、3LO固定条件のままで各受信系のヘッダー・ペイロード部の復調を進めることが可能である。
【0100】
本実施例の受信機においては、受信系のアナログベースバンド〜AD変換器〜ディジタルベースバンドに現れる受信シンボルは、各受信系毎に設定した固定LO周波数を中心周波数とするサブバンドのみが、Zero−IF周波数にて、ベースバンド時間軸上に現れることとなる。これら各ホッピング周波数毎に受信系に現れる受信シンボルをAD変換後、ディジタル・ベースバンドで、時間的に再整列させることにより、あたかも、受信系で周波数ホッピングを伴いながら受信ダイレクトコンバージョンしたかのように、準同期検波を行なうことができる。
【0101】
この場合の効果としては、周波数ホッピングを伴う受信ダイレクトコンバージョン時に固定劣化として懸念される、自己ミキシング等による受信ベースバンドに発生するDCオフセットは、静的、且つ、安定な状態で、各受信系アナログベースバンドに挿入されたCcutにより、後段へのDC増大化、伝達を防止することができる。
【0102】
更に、従来の単一ベースバンド系ダイレクトコンバージョン時、周波数ホッピング毎にAGCによるアナログベースバンド利得可変が行われた場合、周波数ホッピング毎に、DCオフセットが異なる場合は、Ccut入力にステップ状のDCオフセット差異ができ、Ccut出力に過渡応答、即ち、DCオフセット・ジャンプが現れる問題点があった。
【0103】
本実施例のように、パケット先頭からヘッダー迄を、各ホッピング周波数で、LO固定した複数の受信系で受信することにより、前述したように、DCオフセット・ジャンプはそもそも発生せず、各アナログベースバンドに現れた静的DCオフセットのみが、Ccutにより、AD変換器の前段にて、完全に除去されることとなる。
【0104】
なお、本実施例において、プリアンブル〜ヘッダー部並びにペイロード部に至るまでLO周波数を固定とし、受信周波数ホッピングを擬似捕捉していく場合、処理、復調中の各受信系ベースバンド部にそれぞれ具備された可変帯域LPF(チャネル・フィルタリング)16、17、18のカットオフ帯域は、1サブバンドあたりのベースバンド帯域を通過させるに必要十分な狭帯域設定とすることで各受信系の自チャネル以外のホッピング周波数時に受信される隣接受信チャネル干渉波や、各種不要干渉波、ブロッキンッグ波を極力排除できるように設定する。
【0105】
また、本実施例において、パケット先頭のプリアンブル〜ヘッダーの復調までは、先頭高速キャリアセンス判定、ホッピング同期を安定且つ確実に実行すべく、複数個の各受信系LO13、14、15をホッピングさせないが、ペイロード/データ復調時は、複数個の各受信系LO13、14、15をホッピングさせることで、
特徴(3):各受信系のQDEM10、11、12以降のアナログ〜ディジタル・ベースバンドには、各送信側ホッピング・パターンと周波数を有する時系列シンボル遷移:Af1/Bf1/Cf1→Af2/Bf2/Cf2→Af3/Bf3/Cf3→・・・に対応した受信系シンボル群が、af1/bf1/cf1→af2/bf2/cf2→af3/bf3/cf3→・・・といった時系列となって現れる。これを、MIMO復調処理(後述)することによって、空間分割多重へ移行できる。
【0106】
なお、MIMOモードに移行する場合には、プリアンブル〜ヘッダー部処理に引き続き、ペイロード/データ部の復調時の各受信系ベースバンドにそれぞれ具備された可変帯域LPF(チャネル・フィルタリング)16、17、18のカットオフ帯域は、1サブバンドあたりのベースバンド帯域を通過させるに必要十分な狭帯域設定とすることで、前述と同様、各受信系の自チャネル以外のホッピング周波数時に受信される隣接受信チャネル干渉波や、各種不要干渉波・ブロッキンッグ波を極力排除できるように設定している。
【0107】
また、本実施例において、別モードでのペイロード/データ復調時のMIMOの実施例(後述の第2の実施例(図5)参照)では、パケット先頭のプリアンブル〜ヘッダー復調では、先頭高速キャリアセンス判定、ホッピング同期を安定且つ確実に実行すべく、複数個の各受信系LO13、14、15をホッピングさせずに運用するが、続くペイロード/データ復調時にも、複数個の各受信系LO13、14、15をホッピングさせずに、各受信系LO13、14、15の周波数の内、最も中心となるLO14の周波数を1つ選択し、全ての受信系LO13、14、15に同一適用しながら動作させる。
【0108】
本実施例において、周波数ホッピングを伴う受信ダイレクトコンバージョン時における受信特性の固定的劣化の要因として懸念されるDCオフセット、並びに、アナログベースバンドへの直流カット容量素子Ccutの挿入で発生する周波数ホッピング直後のDCオフセット・ジャンプを、パケット全長に及ぶ形で完全に除去し、MIMOによる空間分割多重復調動作を併せて行わせることができる。
【0109】
次に、図1に示す本実施例の動作を更に詳細に説明すべく、図3及び図4にて、受信パケット先頭プリアンブル〜ヘッダー部の相関検出部分以降、並びにペイロード/データ部においてMIMO復調へ移行させた場合における、
・各受信系のAD変換器22以降ディジタル・ベースバンドに現れる復調シンボルの時系列的遷移と、
・n×m MIMO動作に絡めた送受間伝播路行列H(ここでは、3×3MIMOを想定)と、
・送信3系統を示す送信行列との乗算により求まる、各受信3系統に現れる復調シンボル行列(AD変換器22以降ディジタル・ベースバンドに現れる復調シンボルの時系列的遷移)と
の関係を示す。
【0110】
なお、図3(A)は、ADCへの入力、図3(B)、図3(C)は、受信パケット先頭のプリアンブル〜ヘッダー部における周波数ホッピングオフ、受信パケット後方のペイロード部における周波数ホッピングオフ時のベースバンド出力系列(各スロットにおけるシンボル)をそれぞれ例示しており、図2(A)に対応している。図3(F)、(E)、(D)は、f1、f2、f3受信系LO固定の場合における伝播路行列と送信信号列ベクトルとの演算による受信信号列ベクトルの関係(図3(B)における各シンボルスロットのaf1、bf2、cf3受信にそれぞれ対応)、図3(I)、(H)、(G)は、受信系LO周波数ホッピングにおける伝播路行列と送信信号列ベクトルとの演算による受信信号列ベクトルの関係((図3(C)における各シンボルスロットの((af1、bf1、cf1)、(af2、bf2、cf2)、(af3、bf3、cf3)受信にそれぞれ対応)を示している。図4(D)〜(F)は、図3において、送信周波数ホッピング有りの場合(図2(B))に対応している。
【0111】
受信パケット先頭プリアンブル〜ヘッダー部の相関検出部分以降、ないし、ペイロード/データ部についても、受信LO13、14、15の周波数を固定とした場合の送受動作を表す行列式を、図3ないしは図4の左側に示す。
【0112】
伝播路特性(H行列、送受n×m MIMOを想定、ここでは、3×3 MIMO)を含めた送受行列式の受信側表現としては、各シンボル復調時刻に当たっては、夫々の受信系a/b/cでのLO13、14、15の周波数設定がf1/f2/f3と固定であり、且つ、図1に示した各受信系ベースバンドにそれぞれ具備された可変帯域LPF(チャネル・フィルタリング)16、17、18の帯域を1ホッピングあたりのチャネル(Ch)周波数帯域に見合う狭帯域に設定していることで、各受信系ベースバンドに現れる受信波としては、各受信系a/b/c毎に固定LO周波数のチャネル:af1、bf2、cf3のみが順次抽出される。後続のAD変換器以降、相関検出器にてキャリアセンスが、ヘッダー以降は、16QAM(Quatrature Amplitude Modulation)/QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)復調器にて復調されていくこととなる。
【0113】
ちなみに、前記したように、パケット先頭のプリアンブル〜ヘッダー復調までは、先頭高速キャリアセンス判定、ホッピング同期を安定且つ確実に実現すべく、複数個の受信系LO13、14、15を周波数ホッピングさせない。その際、パケット先頭プリアンブル〜ヘッダー迄の送信アンテナ1、2、3、及び、送信系から送出されるべきシンボル遷移と周波数ホッピングの設定としては、送信側ホッピング有無にて、以下(A)、(B)2通りの多重化レスモードでの送出が可能となる(図2も参照)。(A)、(B)のモードに分けて送受行列式を説明し、いずれのモードとも受信系a/b/cに受信シンボルaf1/bf2/cf3が時系列的且つ固定的(受信a系にはaf1のみ、受信b系にはbf2のみ、受信c系にはcf3のみが出現)に現れる事を説明する。
【0114】
(A)送信側プリアンブル〜ヘッダー部
周波数ホッピング無しモードの場合の送受行列式から求まる各受信系a/b/cに現れる受信シンボルは、図3(B)に示すように、af1、bf2、cf3となる。
【0115】
3系統送信の送信AのLOはf1固定であり、送信BのLOはf2固定であり、送信CのLOはf3固定であり、擬似送信周波数ホッピングを実行する。
【0116】
図2(A)に示すように、
送信側の第1シンボルスロットは、
Af1送信/Bf1送信断/Cf1送信断、
第2シンボルスロットは、
Af2送信断/Bf2送信/Cf2送信断、
第三シンボルスロットは、
Af3送信断/Bf3送信断/Cf3送信、
・・・となる。
【0117】
図3に示すように、
受信側の第1シンボルスロットでは、
af1は受信系aのLO13がfl固定のため受信系aに出現し、受信系aに受信シンボルaf1=h11×Af1が出現する。bf1は受信系bのLO14がf2固定のため、受信不能である。cf1は受信系cのLO15がf3固定のため受信不能である。
【0118】
第2シンボルスロットでは、
af2は受信系aのLO13がf1固定のため受信不能である。bf2は受信系bのLO14がf2固定のため受信系bに出現する。受信系bに受信シンボルbf2=h22×Bf2が出現する。cf2は受信系cのLO15がf3固定のため受信不能である。
【0119】
第3シンボルスロットでは、
Af3は受信系aのLO13がfl固定のため受信不能である。Bf3は受信系bのLO14がf2固定のため受信不能である。Cf3は受信系cのLO15がf3固定のため受信系cに出現し、受信系cに受信シンボルcf3=h33×Cf3が出現する。
【0120】
(B)送信側プリアンブル〜ヘッダー部
周波数ホッピング有りモードの場合の送受行列式から求まる各受信系a/b/cに現れる受信シンボルを説明する(図2(B)参照)。
【0121】
3系統送信のうち何れか1系統のみを用いて周波数ホッピング実行、以下は送信Aのみを用いた場合、
送信側では、図2(B)に示すように、
第1シンボルスロットでAf1送信/Bf1送信断/Cf1送信断、
第2シンボルスロットでAf2送信/Bf2送信断/Cf2送信断、
第3シンボルスロットでAf3送信/Bf3送信断/Cf3送信断、
・・・となる。
【0122】
受信側では、図4に示すように、
第1シンボルスロットでは、
af1は受信系aのLO13がfl固定のため受信系aに出現し、受信系aに受信シンボルaf1=h11×Af1が出現する。
bf1は受信系bのLO14がf2固定のため受信不能である。
cf1は受信系cのLO15がf3固定のため受信不能である。
【0123】
第2シンボルスロットでは、
af2は受信系aのLO13がf1固定のため受信不能である。
bf2は受信系bのLO14がf2固定のため受信系bに出現し、受信系bに受信シンボルbf2=h21×Af2が出現する。
cf2は受信系cのLO15がf3固定のため受信不能である。
【0124】
第3シンボルスロットでは、
Af3は受信系aのLO13がfl固定のため、受信不能である。
Bf3は受信系bのLO14がf2固定のため、受信不能である。
Cf3は受信系cのLO15がf3固定のため、受信系cに出現する。受信系cに受信シンボルCf3=h31×Af3が出現する。
【0125】
更にパケット先頭のプリアンブル〜ヘッダー復調までは、先頭処理を安定且つ確実に実行すべく、複数個の各受信系LO13、14、15をホッピングさせない。ペイロード/データ復調時には、複数個の各受信系LO13、14、15をホッピングさせ、MIMOによる空間分割多重復調動作へ移行させる。全体の伝送速度の更なる増大化、高速化、低所要C/Nで所望のエラーレートを実現できる、低Rate送受を複数ストリーム化、大束化することで到達距離特性の改善を図る。更に、伝播行列からの特異値分解によるストリーム分割処理により、セル内収容能力向上を重視した、マルチユーザMIMO、SDMA(空間分割多重)への拡張も可能となる。
【0126】
なお、MIMOモードを適用する場合は、送信アンテナ1、2、3のそれぞれの個別送信機からは、WiMedia準拠の3バンド・ホッピングを伴う送信シンボル波列が空間に放射されなければならない。
【0127】
即ち、送信アンテナ1(送信A)からは、Af1/Af2/Af3の3ホッピング波が放射される。送信アンテナ2(送信B)からは、Bf1/Bf2/Bf3の3ホッピング波が放射される。送信アンテナ3(送信C)からは、Cf1/Cf2/Cf3の3ホッピング波が放射される。
【0128】
ちなみに、受信LO13、14、15の周波数を、前述したDEMOによるプリアンブル部でのキャリアセンス〜ホッピング周期・同期確定後(各受信系LO固定)、既にプリアンブル部で認知・確定したホッピング・パターンと時刻にて、各受信系のLOを同期ホッピングさせた場合の送受動作を表す行列式を、図3及び図4の右側に示す(図3、図4の(C)、行列演算式(G)、(H)、(I)は同一)。
【0129】
これら行列式によれば、伝播路特性(H行列・送受n×m MIMOを想定、ここでは3×3 MIMO)を含めた送受行列式の受信側表現、すなわち、各受信系ベースバンドに現れる受信波としては、各受信系毎に送受アンテナ間で異なる3×3の伝播ストリーム毎の伝播路特性が、送信3系統波に乗算ブレンドされた形で、空間多重されながら(af1/bf1/cf1→af2/bf2/cf2→af3/bf3/cf3・・・)受信シンボルとして現れる。なお、図1に示した各受信系ベースバンドにそれぞれ具備された可変帯域LPF(チャネル・フィルタリング)16、17、18の帯域は、1ホッピングあたりのチャネル周波数帯域に見合う狭帯域に設定される。
【0130】
各シンボル毎の3系統多重信号に対して、MIMO復調処理による伝播行列の逆行列乗算を行うことで、送信側ストリーム(Af1/Bf1/Cf1→Af2/Bf2/Cf2→Af3/Bf3/Cf3・・・)が再現され、その後、伝送容量的に多重合成していく処理となる。
【0131】
ちなみに、送信3系統の各ホッピング周波数(f1/f2/f3)は、送信3系統(A/B/C)間で同期しており、3系統送信シンボルであるAf1/Bf1/Cf1、Af2/Bf2/Cf2、Af3/Bf3/Cf3、・・・のそれぞれの同一周波数シンボルAf*/Bf*/Cf*には、MIMOの空間分割多重により、それぞれ同一周波数ながらも異なった情報・データを格納することができる。
【0132】
このため、SISOの従来例に比して、約3倍の大容量化、高速化が図れる。ちなみに、WiMedia策定のMulti Band OFDM UWB方式によれば、53.3Mbps〜480MbpsがSISO時の情報レート(Rate)のため、本発明の3×3 MIMOを講じることによりその3倍の160Mbps〜1.44Gbpsが実現できることとなる。
【0133】
なお、MIMO復調の他の例としては、各受信系LO13、14、15の周波数ホッピングを固定にしても可能である。
【0134】
図5は、本発明の第2の実施例の構成を示す図である。図5(A)は、本発明の一実施例の無線通信装置を説明する図である。図5(B)は、3x3の伝播路行列をそれぞれ例示する図である。図5(C)はADCの各各受信系の出力信号を周波数領域で示した図である。図5(D)は、ディジタルベースバンド複素バンドパスフィルタの各受信系の出力信号を周波数領域で示した図である。図5(E)は、ディジタル周波数変換器の各受信系の出力信号を周波数領域で示した図である。
【0135】
本実施例においては、MIMO復調の効能と共に、受信DCオフセット・ジャンプの回避による、受信特性のさらなる向上を図ることが可能となる。このように設定とする場合、受信系のLO13、14、15は、一つの周波数(例えば全てf2)に固定とするため、QDEM10、11、12の後段の各受信系ベースバンドに現れる受信信号は、受信ホッピング周波数以外のLO周波数となっている場合は、ニアゼロIF(Near Zero IF)となる。
【0136】
図5の構成に示した各受信系ベースバンドにそれぞれ具備された可変帯域LPF(チャネル・フィルタリング)16、17、18の帯域を、受信ダイレクトコンバージョン、即ちゼロIF(Zero−IF)時のベースバンドチャネル帯域の3倍以上(RFチャネル帯域で言えば1.5倍以上)の低域通過フィルタ・カットオフとなるように、広狭帯域化する。受信ホッピング時のRF周波数と固定LO周波数(例えば全てf2)の差に応じたNear Zero IF信号を、十分、AD変換器22以降に取り込めるようになり、MIMO復調が実現可能となる。
【0137】
なお、MIMOモードを適用する場合、第1実施例のMIMOモード(受信ホッピング有り)と同様に、送信アンテナ1、2、3のそれぞれの個別送信機からはWiMedia準拠の3バンド・ホッピングを伴う送信シンボル波列が空間に放射されなければならない。
【0138】
即ち、送信アンテナ1からは、Af1/Af2/Af3の3ホッピング波が放射される。送信アンテナ2からは、Bf1/Bf2/Bf3の3ホッピング波が放射される。送信アンテナ3からは、Cf1/Cf2/Cf3の3ホッピング波が放射される。
【0139】
前記構成を採用して、受信DCオフセット・ジャンプの回避による更なる受信特性向上を確保し、MIMO復調を行う場合には、受信系のLO13、14、15の各々は、全て前記した決定手法に基づき、全周波数帯域中心近傍の1つの周波数(LO14の周波数)に固定されている。このため、送信ホッピング周波数がLO14の周波数以外の周波数となっている時間帯のシンボルを復調する場合は、Near Zero IF復調方式となる。各受信系ベースバンドにそれぞれ具備された可変帯域LPF(チャネル・フィルタリング)16、17、18のカットオフ帯域を広狭帯域化することにより、送信ホッピング周波数とLO14の周波数の差に応じたNear Zero IFベースバンド信号を十分AD変換器22以降に取り込めるようにする。
【0140】
なお、AD変換器22においては、AD変換後のエイリアシング(周波数重畳)を防ぐため、アナログベースバンド部に現れるNear−Zero IF信号の最外郭周波数の2倍に相当するサンプリング周波数、即ち受信ダイレクトコンバージョン時のベースバンドCh帯域の6倍のサンプリング周波数で量子化を行なうことになる。
【0141】
例えば528MHz/サブバンドを3周波数ホッピングするシステムの場合、サンプリング周波数は、ベースバンドチャネル帯域の264MHzの6倍、最外郭周波数=792MHzの2倍に当たる1584MHzとなる。
【0142】
更にその上でAD変換器22以降のディジタル・ベースバンド部分に複素バンドパスフィルタ23を実装することにより、正負及びZeroベースバンド周波数に対応する変調シンボルを抽出した上で、最終的にはその後段にディジタル周波数変換器24を挿入し、正負及びZeroベースバンドとして抽出されたディジタル・ベースバンド信号に対して周波数デ・ローテーション(De−Rotation)(正側ディジタル・ベースバンド信号には−528MHzを、負側ディジタル・ベースバンド信号には+528MHzを、Zero−IFディジタル・ベースバンド信号は周波数シフト無し)をかけることによって、各受信系の周波数ホッピングを伴った受信信号を全てZero−IFベースバンド上に置換することができ、その後のMIMO復調ができることとなる。
【0143】
本実施例におけるMIMOモード動作を別途LO周波数とシンボルを示す符号(Af*及びaf*等)で表すと、QDEM10、11、12以降のアナログ〜ディジタル・ベースバンドには、各送信側ホッピング・パターンと周波数を有する時系列シンボル遷移
Af1/Bf1/Cf1→Af2/Bf2/Cf2→Af3/Bf3/Cf3→・・・は同様としながら、これに対応する受信系シンボル群としては、
(1)送信af1の受信f2受け/送信bf1の受信f2受け/送信cf1の受信f2受けで、−(f2−f1)周波数だけマイナス側にシフトしたベースバンド帯域へ落ちるシンボル群(図5の下図のベースバンド周波数スペクトラム1)→(2)送信af2の受信f2受け/送信bf2の受信f2受け/送信cf2の受信f2受けで0Hzベースバンドへ落ちるシンボル群(図5の下図のベースバンド周波数スペクトラム2)→(3)送信af3の受信f2受け/送信bf3の受信f2受け/送信cf3の受信f2受けで+(f3−f2)周波数だけプラス側にシフトしたベースバンド帯域へ落ちるシンボル群(図5の下図のベースバンド周波数スペクトラム3)→・・・
といった受信ベースバンドシンボル群の時系列が現れることとなる。
【0144】
そして、送信と受信周波数が異なりNear−Zeroベースバンドとなって現れるシンボル(前記(1)と(3))と、送受周波数がf2で合致しているシンボル(前記(2))については、アナログベースバンド部に現れるNear−Zero IF信号の最外郭周波数の2倍に相当するサンプリング周波数で量子化を行なうAD変換器22でAD変換後、その後段のディジタル・ベースバンド部分に設けた複素バンドパスフィルタ23で周波数軸上から抽出した上で、ディジタル周波数変換器24にて、周波数De−Rotationをかける。その後のMIMO復調処理・空間分割多重を行なうことができる。
【0145】
本実施例の構成を採用することにより、高速且つ安定なキャリアセンス、パケット全長に及ぶ受信DCオフセット・ジャンプ回避、MIMO復調といった全ての本発明特徴を具備することができる。
【0146】
上記実施例の作用効果を以下に説明する。
【0147】
シンボル毎に周波数ホッピングをしながらパケット送受を行い、且つ受信側ではパケット先頭でキャリアセンスを行うことにより復調を開始する、受信ダイレクトコンバージョン方式を採用した無線通信装置に(例:Wireless USBのPHYとして用いられているWiMedia規格によるMulti Band OFDM UWB方式等)、本発明を適用することで以下の作用効果を奏する。
【0148】
周波数ホッピング数に準拠した複数個の受信系のLO周波数を、各ホッピング周波数で固定待ち受け設定とすることにより、周波数ホッピングを伴った受信パケット先頭プリアンブル部を安定且つ高速に相関検出・キャリアセンスし、且つ確実に受信側ホッピング同期を開始することができる。
【0149】
周波数ホッピング数に準拠した複数個の受信系のLO周波数を、キャリアセンス後プリアンブル部でのAGC/AFC/同期確立/復調動作においても固定のままとすることにより、DCオフセット、DCオフセット・ジャンプをAD変換器前で完全に除去できる効果を有する。
【0150】
DCオフセットは、周波数ホッピングを伴う受信ダイレクトコンバージョン時の受信固定劣化要因として懸念され、自己ミキシング等により受信ベースバンドに発生する。DCオフセットジャンプは、周波数ホッピング毎にDCオフセットレベルが異なる場合、ベースバンド後段へのDC増大化を防止するためのCcut挿入により(OFDM時DC Null化に伴い、DC最近傍のサブキャリア以遠をHPF)ホッピング直後に現れる。
【0151】
更にパケット先頭のプリアンブル〜ヘッダー復調までは、先頭処理を安定且つ確実に実行すべく、複数個の各受信系LOをホッピングさせないが、ペイロード/データ復調時には複数個の各受信系LOをホッピングさせ、MIMOによる空間分割多重復調動作へ移行させる。全体の伝送速度の更なる増大化、並びにこの増大化を、低所要C/Nで所望のエラーレートを実現できる低Rate送受の複数ストリーム化、大束化で実現する事による到達距離特性の改善を図る。更には、伝播行列からの特異値分解によるストリーム分割処理により、セル内収容能力向上を重んじたマルチユーザ(Multiuser)MIMO・SDMA(空間分割多重)への拡張も可能となる。特に、既に超広帯域化済みのUWB等の高速化を、更なる帯域拡張では無く、周波数利用効率を上げて実現していく上で有効な手段となり得る。
【0152】
またパケット先頭のプリアンブル〜ヘッダー復調以降も、引き続きペイロード/データ復調時も複数個の各受信系LOをホッピングさせず、その各受信系LO周波数の内、最も中心となるLO周波数を1つ選択・設定するようにしてもよい。この周波数構成で復調を行う場合は、送信ホッピング周波数と受信固定周波数が異なる復調シンボルについては、Near−Zeroベースバンドとなって、アナログベースバンド以降に現れるため、AD変換器以降のディジタル・ベースバンド部分に設けた複素バンドパスフィルタで周波数軸上から抽出した上で、更に、ディジタル周波数変換器で、Zero−IFベースバンドへ周波数変換することで、MIMO復調処理・空間分割多重を行なうことが可能となる。本発明によれば、周波数ホッピングを伴う受信ダイレクトコンバージョン時の受信固定劣化要因として懸念されるDCオフセット、並びに、周波数ホッピング時、アナログベースバンドへのCcut挿入で発生するホッピング直後のDCオフセット・ジャンプを、パケット全長に及ぶ形で完全に除去しつつ、前記MIMOによる空間分割多重に代表される諸特徴を実現することができる点で有効である。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明は、シンボル毎に周波数ホッピングをしながらパケット送受を行い、且つ受信側ではパケット先頭でキャリアセンスを行うことにより復調を開始する受信ダイレクトコンバージョン方式を採用した無線通信装置に対して利用可能であり、より具体的には、WiMedia規格によるMulti Band OFDM UWB方式のPHY/MAC層を共通プラットフォームでとして採用する、WirelessUSB、Bluetooth v3.0、Wireless1394、WLP/WiNETといった上位Protocol Adaptation Layer(PAL)仕様に準拠した装置や各種携帯端末、AV機器、及びPCホスト・デバイス等のPHY部に適用可能である。
【0154】
なお、上記の特許文献の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】本発明の第1の実施例の構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施例におけるパケット先頭のプリアンブル〜ヘッダー迄の送信側シンボル遷移とホッピング設定を示す図である。
【図3】図1の動作を説明するための図である。
【図4】図1の動作を説明するための図である。
【図5】本発明の第2の実施例の構成と動作を説明する図である。
【図6】関連技術(特許文献1に開示された構成と動作)を説明する図である。
【図7】関連技術(特許文献2に開示された構成と動作)を説明する図である。
【図8】関連技術(特許文献3に開示された構成と動作)を説明する図である。
【図9】関連技術(特許文献4に開示された構成と動作)を説明する図である。
【図10】関連技術(特許文献5に開示された構成と動作)を説明する図である。
【符号の説明】
【0156】
1、2、3 送信アンテナ
4、5、6 受信アンテナ
7、8、9 低雑音増幅器
10、11、12 QDEM
13、14、15 LO
16、17、18 可変帯域LPF
19、20、21 可変利得アナログベースバンドアンプ
22 AD変換器
23 ディジタル・ベースバンド複素バンドパスフィルタ
24 ディジタル周波数変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンボル毎に周波数ホッピングをしながらパケット送受を行い、且つ受信側ではパケット先頭でキャリアセンスを行うことにより復調を開始する受信ダイレクトコンバージョン方式の無線通信装置であって、
周波数ホッピング数に準拠した複数の受信系のそれぞれの局発周波数を各ホッピング周波数で固定した設定とし、
周波数ホッピングを伴った受信パケット先頭プリアンブル部の予め定められた個数のシンボルを用いてキャリアセンスするディジタルベースバンド部を備え、
ホッピングパターンの検出から受信ホッピング同期の後ペイロード/データ部の復調を行う、ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
プリアンブルからヘッダー部の処理、復調中の受信系のベースバンドにそれぞれ具備された可変帯域低域通過フィルタの遮断帯域は狭帯域設定とする、ことを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項3】
シンボル毎に周波数ホッピングをしながらパケット送受を行い、且つ受信側ではパケット先頭でキャリアセンスを行うことにより復調を開始する受信ダイレクトコンバージョン方式の無線通信装置であって、
パケット先頭のプリアンブルからヘッダー復調までは複数の受信系における局発信号を周波数ホッピングさせず、ペイロード/データ復調時には、複数の受信系の局発信号を周波数ホッピングさせる手段を備え、MIMO(Multiple Input Multiple Output)による空間分割多重復調動作へ移行させる、ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項4】
プリアンブルからヘッダー部処理に引き続き、ペイロード/データ部の復調時の受信系ベースバンドにそれぞれ具備された可変帯域低域通過フィルタの遮断帯域を狭帯域設定とする、ことを特徴とする請求項3記載の無線通信装置。
【請求項5】
シンボル毎に周波数ホッピングをしながらパケット送受を行い、且つ受信側ではパケット先頭でキャリアセンスを行うことにより復調を開始する受信ダイレクトコンバージョン方式の無線通信装置であって、
パケット先頭のプリアンブルからヘッダーの復調では、複数の受信系の局発信号を周波数ホッピングさせず、
続くペイロード/データの復調時にも複数の受信系の局発信号を周波数ホッピングさせずに、
前記受信系の局発信号を周波数のうち中心となる周波数を1つ選択し、前記周波数を全ての受信系の局発信号に共通に適用し、MIMO(Multiple Input Multiple Output)による空間分割多重復調動作を行わせる、ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項6】
局発信号の周波数の中で中心に位置する1つの周波数に固定されており、送信ホッピング周波数が局発信号の周波数以外の周波数となっている時間帯のシンボルを復調する場合は、複数の受信系ベースバンドにそれぞれ具備された可変帯域低域通過フィルタの遮断帯域を広狭帯域化し、送信ホッピング周波数と局発信号周波数の差に応じたニア・ゼロ中間周波数(Near Zero IF)ベースバンド信号をアナログディジタル変換器以降に取り込めるようにし、
前記アナログディジタル変換器以降のディジタルベースバンド部分に複素バンドパスフィルタ、並びにディジタル周波数変換器を備え、ゼロ周波数及び正負ベースバンド周波数に対応する変調シンボルを抽出し、復調する、ことを特徴とする請求項5記載の無線通信装置。
【請求項7】
シンボル毎に周波数ホッピングをしながらパケット送受を行い、且つ受信側ではパケット先頭でキャリアセンスを行うことにより復調を開始する受信ダイレクトコンバージョン方式による無線通信の受信方法であって、
周波数ホッピング数に準拠した複数の受信系のそれぞれの局発周波数を、各ホッピング周波数で固定した設定とし、
周波数ホッピングを伴った受信パケット先頭プリアンブル部の予め定められた個数のシンボルを用いてディジタルベースバンドでキャリアセンスし、
ホッピングパターンの検出から受信ホッピング同期の後、ペイロード/データ部の復調を行う、ことを特徴とする受信方法。
【請求項8】
プリアンブルからヘッダー部の処理、復調中の受信系のベースバンドにそれぞれ具備された可変帯域低域通過フィルタの遮断帯域は狭帯域設定とする、ことを特徴とする請求項7記載の受信方法。
【請求項9】
シンボル毎に周波数ホッピングをしながらパケット送受を行い、且つ受信側ではパケット先頭でキャリアセンスを行うことにより復調を開始する受信ダイレクトコンバージョン方式による無線通信の受信方法であって、
パケット先頭のプリアンブルからヘッダー復調までは、複数の受信系の局発信号を周波数ホッピングさせず、
ペイロード/データ復調時には複数の受信系の局発信号を周波数ホッピングさせ、
MIMO(Multiple Input Multiple Output)による空間分割多重復調動作へ移行させる、ことを特徴とする受信方法。
【請求項10】
プリアンブルからヘッダー部処理に引き続き、ペイロード/データ部の復調時の受信系ベースバンドにそれぞれ具備された可変帯域低域通過フィルタの遮断帯域は狭帯域設定とすることを特徴とする請求項9記載の受信方法。
【請求項11】
シンボル毎に周波数ホッピングをしながらパケット送受を行い、且つ受信側ではパケット先頭でキャリアセンスを行うことにより復調を開始する受信ダイレクトコンバージョン方式による無線通信の受信方法であって、
パケット先頭のプリアンブルからヘッダーの復調では、複数の受信系の局発信号を周波数ホッピングさせず、
続くペイロード/データの復調時にも複数の受信系局発信号を周波数ホッピングさせずに、前記受信系の局発信号を周波数の内、中心となる周波数を1つ選択し、前記周波数を全ての受信系の局発信号に共通に適用し、MIMO(Multiple Input Multiple Output)による空間分割多重復調動作を行わせる、ことを特徴とする受信方法。
【請求項12】
局発信号の周波数の中で中心に位置する1つの周波数に固定されており、送信ホッピング周波数が局発信号の周波数以外の周波数となっている時間帯のシンボルを復調する場合は、複数の受信系ベースバンドにそれぞれ具備された可変帯域低域通過フィルタの遮断帯域を広狭帯域化し、送信ホッピング周波数と局発信号周波数の差に応じたニア・ゼロ中間周波数(Near Zero IF)ベースバンド信号をアナログディジタル変換器以降に取り込めるようにし、
前記アナログディジタル変換器以降のディジタルベースバンド部分に複素バンドパスフィルタ、並びにディジタル周波数変換器を備え、ゼロ周波数及び正負ベースバンド周波数に対応する変調シンボルを抽出し、復調する、ことを特徴とする請求項11記載の受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−273021(P2009−273021A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123513(P2008−123513)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】