説明

呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法およびそれに用いられるコンピュータプログラム

【課題】呼吸トリガMR検査時に運動アーチファクタを減らし、測定準備を簡素化し、MR検査の総時間を極力短いものに抑える。
【解決手段】a)検査対象の生理的呼吸信号を呼吸信号検出ユニットで検出する、b)検出した呼吸信号を評価ユニット内で評価する、c)評価した呼吸信号を基に、磁気共鳴による測定データの取得プロセスに影響する少なくとも1つのパラメータを演算ユニット内で算出する、d)実際の生理的呼吸信号を前記呼吸信号検出ユニットで検出する、e)最後に検出した前記呼吸信号を少なくとも1つのトリガ条件と比較する、f)前記ステップe)の前記トリガ条件の充足時、前記算出したパラメータを用いて制御ユニットによって測定データの取得をトリガさせる、g)所望の全ての測定データが取得されるまでステップd)〜f)を繰り返す、というステップを含む方法およびコンピュータプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法およびそれに用いられるコンピュータプログラムであって、特に、検査対象の呼吸がいわゆる外乱として働いて測定データに悪影響が及ぶことを回避しつつ、その呼吸する検査対象の測定データを、磁気共鳴技術によって、正確に取得することを支援するための方法、およびその方法をコンピュータシステムにおいて実施する際に用いられるようなコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴技術(以下ではMRと略記する)は、例えば検査対象内部の画像を生成することのできる公知の技術である。それを簡単に述べると、MR検査、すなわち1回もしくは複数回のMR測定において、検査対象は検査対象の核スピンが基本磁場に沿って整列するように、MR機器内で比較的強い、大抵は均一な、基本静磁場(磁場強度0.2テスラ〜7テスラ以上)内で、まず位置決めが行われる。核スピン共鳴を生じせしめるために、高周波励起パルスが検査対象に照射され、発生した核スピン共鳴が測定され、この測定に基づいて、例えばMR画像が再構成される。測定データを空間符号化するために、基本磁場に高速切換傾斜磁場が重畳される。記録された測定データは、デジタルデータ化され、複素数の値としてk空間マトリックスに格納される。そのような複素数の値を割り当てられたk空間マトリックスから、多次元フーリエ変換によって、そのMR画像が再構成できるようになっている。
【0003】
MRによって検査すべき患者の呼吸運動は、磁気共鳴イメージング("magnetic resonance imaging"‐MRI)において、殊に胸郭や腹部の器官の検査時に、つまり患者の呼吸運動によって影響を受ける検査領域を検査する場合に、得られた画像中にいわゆるゴースト("ghosting")や、ぼやけ("blurring")、強度損失等をもたらし、また、得られた複数の画像同士の間での記録エラーをもたらすことがある。このような種々のアーチファクトは、これらの画像を例えば医師が臨床的な判断や所見等を行う際の資料として利用する場合などに、その正確な判断や所見を困難なものとしてしまう虞がある。例えば、外傷が見過ごされるといった不都合な事態が生じることがある。
【0004】
そのような検査対象の呼吸運動に起因したアーチファクトを減らす技術は、既に数多く存在する。これらの技術の2つの群のうちの一方は、いわゆる呼吸ゲーティングであり、他方は、いわゆる呼吸トリガリングであるが、両方の概念は、必ずしも明確には区別されていない。
【0005】
呼吸ゲーティングとは、測定中に患者の呼吸が検出され、取得した測定データに割り当てられる、MR測定のことである。しかし、MR測定の繰返し率(特にそのTR、つまり1つの層の逐次的励起の間の時間インターバル)は、患者の呼吸に左右されない。むしろ、繰返し率は1つのパラメータによって制御され、または他の別の生理的信号、例えばECGによっても制御される。呼吸情報は、次に、例えば強い呼吸運動中に取得した個々の測定データ(パケット)が、例えば定常呼吸相内で検出されるまで、これらの測定データを繰返し取得するのに利用される。呼吸情報の別の利用は、安定的(定常)呼吸相またはそれに対応した横隔膜位置において殊に運動に対して敏感であることが見込まれる、もしくは画像印象を決定するための、k空間ライン(いわゆる"ROPE-respiratory ordered phase encoding")を取得することにある。
【0006】
呼吸トリガリングとは、例えばイメージングMR測定を、自由に呼吸する患者の呼吸と同期化し、確定された測定データパケットを安定的呼吸サイクル相中にのみ取得しようと努める技術のことである。安定的相とは、終末呼気("end expiration")付近の比較的落ち着いた呼吸サイクル相のことである。つまり、測定データの受容は、そのような呼吸サイクル相に基づいて、トリガ(作動開始)される。その際、検査(測定)対象を多層に分割して測定する場合には、その一つ一つの特定層に着目すると、それらはそれぞれ1トリガ当たり単に1回励起される。また、測定シーケンスの有効繰返し率(TR)は、患者の平均的呼吸サイクルの整数倍(v=1…k)となる。
【0007】
上記のような呼吸ゲーティングおよび呼吸トリガリングは、例えば非特許文献1に述べられている。
【0008】
さらに、いわゆる呼吸一時停止技術があり、そこでは運動アーチファクトを防止するために、測定データ取得プロセスが実行されている間、患者は自己の呼吸を一時停止しなければならない。左様な呼吸一時停止技術として、多重呼吸一時停止技術の一例が、非特許文献2に開示されている。
【0009】
以下では、呼吸トリガリングについて詳しく言及することとする。既に述べたように、呼吸トリガリング(あるいは単にトリガとも称される)は、MR測定を自由に呼吸する患者の呼吸サイクルと同期化し、終末呼気の比較的落ち着いた呼吸サイクル相にMR測定を限定するようにしている。このため、患者の呼吸を、生理的信号として、例えば空気圧センサによって検出するようにしている。そのトリガリングのアルゴリズムの初期学習段階後、さらにそのトリガアルゴリズムによって所定の事象が検出されると、そのトリガアルゴリズムによって、“Trigger”信号が生成される。このような“Trigger”信号によってトリガ(作動開始)されて、単数または複数の層の測定データの所定部分を取得するMRシーケンスが実施される。そしてその所定の測定データパケットが取得された後、トリガアルゴリズムが次のトリガを発生するまで、測定データの取得が自動的に停止される。その後、第1測定のときと同様の手順で、第2測定データパケットが取得され、測定データの取得プロセスが実行される。
【0010】
上記のような一連の測定データの取得プロセスは、全ての層の全ての測定データが取得されるまで、反復的に継続される。トリガを発動するための契機となる所定の事象としては、例えば、最後に測定された生理的信号が、最大吸気期間中の(複数の呼吸サイクルに亘って平均化した)生理的信号と最大呼気期間中の平均化した生理的信号との間で、MR設備の操作員によって確定された閾値を通過するときに生じるものと規定することなどが可能である。左様なトリガは一般に、検査対象の例えば患者が息を吐いている間に限って発動される。測定データの取得を、比較的落ち着いた終末呼気の呼吸サイクル相に限定できるようにするためには、一方では、好適な閾値が選択されなければならず、かつ他方では、所定の測定データパケットの取得時間が患者の個人的呼吸サイクルに比べて短くなければならない。
【0011】
患者の呼吸サイクルは、代表的には3〜6秒であるが、しかし強い個人的な偏差の存在や、病気に起因した変動などに起因して、種々に変化する。測定データパケットの取得時間は、その取得に利用したパルスシーケンスにおける種々のパラメータに依存する。特に、1つの測定データパケットの内部で複数層から測定データが取得される、いわゆる多層測定では、トリガ後に測定データが取得される層の数に、大幅に依存する。測定データパケット当たりの取得時間が患者の呼吸サイクルに対して相対的に短ければ短いほど、検査の効率が低下する。つまり、総検査時間が長くなる。というのも、1つの呼吸サイクル当たりの測定データ量の減少に伴って、もしくは1つの呼吸サイクル毎にそれから測定データが取得される層の数の減少に伴って、全ての層の全ての測定データパケットを取得するために必要とされる呼吸サイクルの総数が増加せざるを得なくなるからである。
【0012】
これに対して、測定データパケット当たりの取得時間が終末呼気の比較的落ち着いた相の時間を上まわると、1回の測定データの取得は、引き続く吸気期間中にも継続して行われることとなる。このため、やはり隣接する各層間の呼吸アーチファクトもしくは誤記録を生じる虞が大きくなる。さらに、測定データパケット当たりの取得時間が呼吸サイクル時間に達する、もしくはそれを上まわると、各呼吸インターバル内ではなく、例えば第2の(つまり次回の)呼吸インターバル内でトリガが生成されることとなる。従って、次回のトリガによって作動開始されるデータ取得は、実質的に、第3の呼吸インターバル中もしくはさらにそれ以降の呼吸インターバル中にまでずれ込むこととなる。このようなことに起因して、やはり総検査時間が長くなって、測定の効率が低下する。
【0013】
上記のような先行技術においては、MR設備の操作員の役割は、一方で検査のイメージングMRシーケンスのパラメータを検査患者の個人的呼吸サイクルに適合させ、かつ他方でトリガ(作動開始)する事象を規定する他のパラメータを入力することである。
【0014】
例えば、シーメンス社のMR設備においては、求めた患者呼吸サイクルにまず依存して、操作員がいわゆる取得窓を確定するようにしている。この取得窓とは、トリガ当たりの測定データの取得時間の上限を限定する時間的インターバルである。続いて、使用すべきMRシーケンスのパラメータ値、例えば層の数、繰返し率TR、ターボファクタ等は、トリガ当たりの取得時間が取得窓を上まわらないように限定される。トリガ(作動開始)の発動を決定するための契機とするべき事象としては、例えばシーメンス社のMR設備の場合には、最大吸気期間中の事前に算出した平均信号と最大呼気期間中の、やはり事前に算出した平均信号との間のパーセント閾値である1つのパラメータによって、記述される。すなわち、最後に測定された生理的信号(呼吸信号)が、この値を下まわると、トリガが発動される。取得窓の設定は、例えば非特許文献3の章"Application: Respiratory gating"、110〜113頁に述べられている。ここで付記しておくと、その非特許文献3において“Gating(ゲーティング)”と称されている方法は、上記定義によれば、“Triggering(トリガリング)”である。
【0015】
フィリップス社のMR-システムにおけるトリガリングは、シーメンス社におけるものと極めて類似している。そこではやはり、求めた患者呼吸サイクルに依存して、いわゆる取得窓が、操作員によって確定される。これは、例えば非特許文献4の2.24.2章"Respiratory triggering"、2‐46〜2‐48頁上、などに述べられている。
【0016】
GE社のMRシステムでは、呼吸トリガ測定を実行するためのパラメータとして、殊に取得窓が設定され、またトリガポイントも設定される。例えばGE社の非特許文献5の章"Respiratory Gating and Triggering Parameters"、45‐32〜45‐34頁には、これに関して詳しく述べられている。
【0017】
全ての主導的メーカによって提供されているMRシステムでは、上記課題において、測定された生理的信号に基づいて、患者の平均的呼吸サイクルを算出し、それを時間の関数として可視化して表示することによって、操作員を支援するようにしている。平均的呼吸サイクルは、例えば、最大吸気期間における生理的信号の、2つの隣り合った極値同士の間の時間間隔(時間インターバル)の平均値、と定義されている。
【0018】
患者の生理的呼吸信号に基づいて、例えばMR測定が作動開始されるが、この呼吸信号を検出するために、例えばいわゆる呼吸ベルトまたは呼吸パッドが利用される。これらは、患者に装着されて、呼吸によって引き起こされる胸郭の上下動を、例えば空気圧センサによって検出する。
【0019】
呼吸信号を検出するための、他の可能性としては、いわゆるナビゲータがある。そこで問題とされているMR信号は、所望のMR検査、例えばイメージング検査または分光検査用の、本来のMR信号の他に、使用されるMR機器によって生成され、また検出されることも可能である。ナビゲータとは、一般に、例えば横隔膜からMR信号を取得する短いシーケンスである。このシーケンスから、例えばナビゲータ取得時点の患者の横隔膜位置を抽出し、それと共に、そのナビゲータ取得時点の呼吸運動状態に対応した生理的信号を抽出することができる。ナビゲータシーケンスは、イメージングシーケンスと組み合わされ、そのときのナビゲータ測定で求められた呼吸相または位置は、その直後に取得される解剖学的MRデータに、割り当てられる(関連付けられた一組のデータとして扱われる。以下同様)。このことは、分光検査にも同様に当て嵌まる。
【0020】
しかし、ナビゲータを呼吸トリガリングに利用すると、MR測定中に初めて患者の呼吸が検出されるので、一般に、患者の呼吸サイクルは、測定準備中は未だ把握されていない、という問題が生じる。従って、例えばMRシーケンスのイメージングパラメータを患者の個人的呼吸サイクルに適合したものとすること、もしくは所望のトリガ事象を記述するパラメータをMR測定開始前に最適に設定することは、操作員にとって不可能である。
【0021】
このようなシーメンス社の既存のMRシステムにおいて既存の方法でナビゲータ付き呼吸トリガリングを適用すると、学習段階中に操作員によるトリガ当たりの取得時間を、検出した生理的呼吸信号と一緒に、グラフで可視化する可能性が得られる。これにより、操作員は、パラメータ化が不適切な場合にはMR測定を早期に中断して、相応に適合させる可能性を持つこととなる。このことは、既に挙げた非特許文献3の章"Measurement during normal breathing − Navigator gating with 2-D PACE (I-IV)"、20〜27頁に述べられている。しかしながら、このやり方を正しく実施するには、操作員がパラメータ化と呼吸サイクルとの関連について、十分な知識を有し、かつその知識に基づいて随時に適切な操作および設定を行うことができるように、操作員の十分な教育等を施すことが、そのシステムの整備等とはまた別段に、必要となる。
【0022】
“Scout mode”と呼ばれる純ナビゲータ測定を含んだシーメンス社のMRシステムでは、さらに、検査対象についての測定の開始に先立ってナビゲータシーケンスのみが実行される短いMR測定を行うことができる。この純ナビゲータ測定中に、生理的呼吸信号が可視化される。完全な1呼吸周期が検出されると、呼吸サイクルが算出されて表示される。こうして、“Scout mode”に続く例えばイメージングシーケンスの準備中に、患者の呼吸サイクルが既知となり、その情報は、イメージングシーケンスのパラメータを定めるときに、操作員によって利用されることが可能となる。このことは、既に挙げた非特許文献3の章"Application Navigator Gating - Optional measurement parameters (II)"の例えば108頁に述べられている。
【0023】
しかしながら、MR測定のパラメータ、つまり磁気共鳴による測定データの取得プロセスを確定するためのパラメータを適正化することなくしては、大抵の場合、不十分な結果が得られるに過ぎない。このため、殊に、検査すべき器官をカバーするために多くの層からの測定データが必要とされる患者の場合には、1トリガ当たりのデータ取得時間が、呼吸サイクルよりも明らかに長くなることが多くなる。このため、上述のように、画像がアーチファクトを伴なうこととなり、かつそれは大きくなり、またその検査時間も長くなってしまうこととなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】Lewis et al.:Comparison of Respiratory Triggering and Gating Techniques for the Removal of Respiratory Artifacts in MR Imaging、Radiology 1986;160:803‐310
【非特許文献2】Wang et al.:Navigator-Echo-based Real-Time Respiratory Gating and Triggering for Reduction of Respiratory Effects in Three-dimensional Coronary MR Angiography、Radiology 1996;198:55‐60
【非特許文献3】Application Brochure fur Body Imaging der Siemens AG
【非特許文献4】Application Guide, Volume 2, Intera, Achieva, Panorama 1.0T, Release 1.5
【非特許文献5】MR 1.5 SignaR EXCITETM 11.0 Learning and Reference Guide
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の目的は、上記のような問題を解決するために成されたもので、呼吸トリガMR検査時に、操作者の熟練や学習を必要とすることなしに、検査対象の呼吸に起因して生じていた運動アーチファクタを減らし、測定準備を簡素化し、MR検査の総時間を極力短いものに抑えることを可能とする方法、およびそのような方法の実施に用いられるコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記の課題は、本発明に係る請求項1記載の方法、および請求項20記載のコンピュータプログラムによって、それぞれ解決される。
【0027】
すなわち、本発明に係る、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法は;
a) 検査対象の生理的呼吸信号を呼吸信号検出ユニットで検出する;
b) 検出した呼吸信号を、評価ユニット内で評価する;
c) 評価した呼吸信号を基に、磁気共鳴による測定データの取得プロセスに影響する少なくとも1つのパラメータを、演算ユニット内で算出する;
d) 実際の生理的呼吸信号を、呼吸信号検出ユニットで検出する;
e) 最後に検出した呼吸信号を、少なくとも1つのトリガ条件と比較する;
f) ステップe)のトリガ条件の充足時、算出したパラメータを用いて、制御ユニットによって測定データの取得を作動開始させる;
g) 所望の全ての測定データが取得されるまで、ステップd)〜f)を繰り返す;
h) 取得した測定データを、記憶ユニットに記憶する、および/または処理ユニット内で処理する;
というステップを含んでいる。
【0028】
このようにして検出された呼吸信号の評価後、後続の測定データ取得の少なくとも1つのパラメータは、使用したMR機器の利用者または操作員の入力を必要とすることなく、自動的に決定されることができる。上記のステップf)で取得した測定データは一般に、MR検査の結果として得られる分光測定データまたはイメージング測定データである。このようにすることにより、MR検査の準備に必要な準備時間が短縮される。同時に、操作員の入力時に有り得る誤操作が避けられる。少なくとも1つのパラメータは、検査対象である患者等(主に人間、もしくは動物)の個人的(または個体的)な呼吸信号に同調されており、これによって、その患者の呼吸に起因した運動アーチファクトが防止され、MR検査の総時間が最適化される。また、操作員の教育や技能熟練のための訓練等を省くことができる。あるいはさらに、使用したナビゲータシーケンスを点検するための、または平均的呼吸サイクルを求めるための、本来は選択的に個別に実施されるべき上記“Scout mode”を省くことも可能となる。
【0029】
本発明の一実施態様において、磁気共鳴による測定データの取得プロセスおよびその結果に影響を与え得る少なくとも1つのパラメータは、測定データ取得トリガ後の測定データの取得時間に影響するパラメータ、もしくは取得時間を一緒に決定するパラメータである。測定データ取得作動開始後、つまりトリガ後の、測定データの取得時間は、周期的呼吸信号のサイクルとの相対的な関係から、取得した測定データの品質に著しく影響する。
【0030】
一実施態様において、磁気共鳴による測定データの取得プロセスおよびその結果に影響する少なくとも1つのパラメータは、それぞれトリガ後にそこからデータが検出される層の、最大数である。例えば、多層測定において、所定数の被測定層を複数の群に分割して、その個々の群毎の最大層数がトリガ当たりの最大層数を上まわらないようにする。その場合、1回のトリガ後、1つの群に割り当てられた複数層のデータのみが検出される。こうして、1回のトリガ後の測定データの取得時間は、検査すべき複数層の1つの群内にある層の最大数によって、簡潔に制御することができる。各群にほぼ同数の層を割り当てる場合、被測定層を分割した群の数も、磁気共鳴による測定データの取得プロセスおよびその結果に影響する少なくとも1つのパラメータと見做すことができる。
【0031】
一実施態様においては、磁気共鳴による測定データの取得プロセスに影響する、前述の少なくとも1つのパラメータは、測定データ取得用に使用されるエコー列のエコー数である。1つのエコー列内のエコー数は、エコー列の時間に対して、従って1つの測定データ取得トリガ後の1つの測定データの取得時間に対して、直接的な影響を有する。なぜなら、本発明が掲げている上記のような課題を解決するためには、1つの測定データ取得トリガ後の1つの測定データの取得時間内に1つのエコー列が収まるように自動的に(操作者による操作等に依存することなしに)設定することが望ましいからである。
【0032】
一実施態様では、他のステップにおいて評価した呼吸信号に基づいて、前述の少なくとも1つのトリガ条件が算出される。特に、ある呼吸信号値の到達時に、1つのトリガ条件が充足されたことになり得る1つの呼吸信号値が決定されるように、その呼吸信号が評価されるようにすることが望ましい。
【0033】
本発明によれば、上記の方法は、最も典型的にはコンピュータのいわゆる演算ユニットによって実施されることになるが、その際、当該磁気共鳴機器に結合された当該演算ユニットによって、本発明に係るコンピュータプログラムが用いられる。
【0034】
上記のような方法に関して述べた諸利点は、本発明に係るコンピュータプログラムについても同様に当て嵌まる。
【0035】
本発明のその他の利点および詳細は、以下に述べる実施の形態から、およびそれに関連した図1〜6の各図面に基づいて、明らかとなる。なお、その実施の形態として開示した諸態様は、それらのみに本発明を限定するものではないことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本方法を実行することのできるMR機器を模式的に示す概略図である。
【図2】呼吸トリガMR検査の一例の概略の模式図である。
【図3】群への被測定層の分割が、トリガ当たりの取得時間と検査時間とに、どのように作用するのかを説明する図である。
【図4】先行技術によるターボスピンエコーシーケンスにおけるエコー列の概略図である。
【図5】パラメータを個人的呼吸に適合後のターボスピンエコーシーケンスのエコー列の概略図である。
【図6】本発明による方法の概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、本発明の実施の形態に係る方法を実行することのできるMR機器1の主要な構成を模式的に示したものである。MR機器1は、その主磁石1.1と勾配兼HFコイルユニット1.2とに基づいて図示してあり、これらで以て、例えば患者の検査対象内にMR信号を生成し、測定データとして取得することができる。MR機器それ自体の、本発明に係る特徴的な構成以外の、一般的な構成およびその機能(作用)については、公知であるから、その詳細な説明については省略する。また、同様の理由から、それら公知の構成およびその機能については、図1等を見易くする理由から、詳細な図示については省略する。
【0038】
患者Pが、患者支持装置1.3上に仰臥しており、この患者支持装置1.3上で患者はMR機器1の検査領域に移動し、また再び検査領域から外に移動することができる。患者の生理的呼吸信号を検出するために、例えば呼吸ベルトまたは呼吸パッドのような呼吸信号検出装置3が、患者に装着される。選択的に、患者Pの呼吸信号は、いわゆるナビゲータによって、MR機器1で直接検出することもでき、従ってまた他のハードウエアを省くことができ、患者は他の制約的機器なしに自己の身体を患者支持装置1.3上に置くことができる。両方の事例において、患者Pから呼吸信号検出装置3によって検出された生理的呼吸信号は、呼吸信号検出ユニット5に送られ、そこで検出される。検出した呼吸信号はさらに評価ユニット7へと送られ、そこで評価することができる。検出した呼吸信号の評価は、例えば、検出した呼吸信号中の局所極値を求めること、および/または検出した呼吸信号中のサイクル時間を求めることを含む。
【0039】
演算ユニット9は評価した呼吸信号にアクセスし、例えば評価した呼吸信号を基に、測定データ取得プロセスに影響する少なくとも1つのパラメータを算出することができる。
【0040】
呼吸トリガMR測定用に、患者の実際の生理的呼吸信号を呼吸信号検出装置3および呼吸信号検出ユニット5で検出し、例えば、演算ユニット9内で、少なくとも1つのトリガ条件と比較することもできる。少なくとも1つのトリガ条件が充足されると、制御ユニット11によって、算出したパラメータを用いて測定データの取得が実行される(トリガされる)。その際、実際の生理的呼吸信号の検出、実際の生理的呼吸信号と少なくとも1つのトリガ条件との比較、そして少なくとも1つのトリガ条件の充足時の測定データの取得は、所望の全ての測定データ、例えば検査すべき器官を完全に再現する測定データが、全て取得されるまで、繰り返される。
【0041】
取得した測定データは、次に、記憶ユニット13に記憶され、および/または処理ユニット15内で処理されて、例えば画像データへと換算されることができる。
【0042】
その際、呼吸信号検出ユニット5、評価ユニット7、演算ユニット9、制御ユニット11、処理ユニット15は、画像データを記憶ユニット13に記憶し、また再び呼び出すことができる。
【0043】
既述した様々なユニット(主に5〜15)の、ここで選択した分割は、必ずしもその物理的分割でなくて、本実施の形態に係るシステムの記述およびその内容理解をより容易なものとするために、ここで便宜的に、1つのコンピュータシステムの全体を、その主要な機能に分けて、それらを各ユニットとして表現したものであると、理解されるべきである。従って、列挙した全てのユニットは、単一の物理的ユニットに(つまり例えば1つのコンピュータシステムに)纏めることができる。あるいは、その他の任意の仕方でさらに分割する、もしくは分割アクセス可能なように複数のコンピュータ装置に振り分けて準備しておき、それらを例えば構内(病院内)ネットワークのようなデータ伝送手段を介してデータ的に接続して、1つのシステムとして機能せしめるようにすることなども可能であることは勿論である。
【0044】
そして、例えば、検出した呼吸信号、実際の呼吸信号、画像データおよび/またはその他のMR検査に係るデータは、表示ユニット17で表示することができる。
【0045】
演算ユニット9では、その演算ユニット9にて実行されるべき本発明に係る計測方法の手順を含んでなるコンピュータプログラム20が実行される。
【0046】
呼吸する検査対象の測定データをMR機器1で取得するために、本発明による方法を、コンピュータシステムによって実施する場合、例えば、まず複数の呼吸サイクルに亘って生理的呼吸信号が検出され、次にそれが評価され、その後に、別のMR測定データ、例えばイメージング測定データが、もしくはそれに加えてさらに分光測定データも、取得される。この段階では、検査対象の個人的呼吸信号が「学習」されるので、その観点から、学習段階と称することができる。この学習段階は、過度に長く選択することは望ましくない。なぜなら、もしも長くすると、それに相応してMR検査の総時間が長くなってしまうからである。しかし、この学習段階は、個人的呼吸信号を正しく学習できるためには、過度に短く選択すべきでもない。例えば、1呼吸サイクル時間を決定しなければならない場合、この学習段階で、少なくとも1つの完全呼吸サイクル全体に亘ってその生理的呼吸信号を検出することが、大抵は必要となる。しかし、呼吸する検査対象の呼吸信号は、厳密に周期的ではなく、一定の変動を受けるので、左様な変動を考慮できるようにするために、複数の呼吸サイクルに亘って生理的呼吸信号を検出することが、より有利である。このことが該当する理由は、殊に、患者はしばしば検査の開始時に興奮し、その結果、一時的に呼吸が早まるからである。それゆえに、例えば5呼吸サイクルに亘る時間を、この学習段階の時間とすることは、望ましい一態様である。但し、このような数値のみには限定されないことは言うまでもない。
【0047】
図2は、本発明の実施の形態に係る呼吸トリガ方式のMR検査における、測定データ取得プロセスの一例を模式的に示した概略図であって、特に、そのデータ取得に利用したシーケンスの時間的推移を示している。この図2に示した一例では、呼吸信号は、ナビゲータ(“Navigators”)によって検出される。そのシーケンスの初端で、ナビゲータシーケンスは、イメージングシーケンスまたは分光シーケンスによる中断なしに一定した時間間隔で、十分な個数の生理的データ点が検出されるまで、繰り返される。この段階が、既に述べた学習段階(“LP”)である。なお、この“Navigators”およびそれに関連した“Scout‐TR”のプロセスの詳細については、以下の説明でも例えば図6に関連して述べることとする。
【0048】
学習段階“LP”後、MR検査の例えばイメージング段階が始まる。この段階では、ナビゲータシーケンスが、まずやはり一定した時間間隔(“Scout‐TR”)で繰り返される(“Navigators”)。このようにして、実際の生理的呼吸信号が検出される。ナビゲータによる各測定の結果は、それぞれ1つの生理的データ点、例えば横隔膜位置である。最後に検出された複数の生理的データ点の列から、実際の呼吸相の逆推定が可能となる。図2では、検出した複数のデータ点の列を、より直感的に理解しやすいものとして表現するために、多数の点を連続してなる実線200として示してある。実際には、“Scout‐TR”の時間間隔において(その時間間隔毎に)、個々のナビゲータにおいてはそれぞれ唯1つずつ、生理的データ点が検出される。従って、そのようなナビゲータシーケンスが実施されない時間には、生理的信号も存在していない。但し、ここでは前述の理由から、検出した複数のデータ点つまり生理的信号は、あたかも連続的な信号200であるかの如く実線で表現してある。与えられたトリガ条件が充足されると(“Resp. Trigger”)、さしあたり次のナビゲータシーケンスは実行されない。而してその代りに、トリガが発動されて、図2に示す一例ではイメージングシーケンスの実行が開始される(“anatomical sequence bloc 1”)。すなわち、その“anatomical sequence bloc 1”なるイメージングシーケンスにて、例えば最も典型的には、イメージング測定データの取得が作動開始され、測定データの第1パケットが取得される。測定データ取得の作動開始の契機となる事象、つまりその作動開始タイミングを決定付けるための条件付けとなる事象を、以下では手短に、トリガ事象とも称することとする。
【0049】
この測定データ取得プロセスは、事前に決定された時間インターバル(「取得時間」;“AD”)に亘って行われる。取得後は、大抵は比較的短い(例えば長さ約400ms程度の)一定の余白時間“R”を挿入することができる。この余白時間“R”は、例えば、検査対象内でイメージングシーケンスによって引き起こされた磁化の乱れを少なくとも部分的に減衰させるために利用することができる。このようにすることが有利なのは、磁化の乱れがナビゲータ測定に否定的に影響することがあるからである。その後、トリガ条件が一般に患者の次の呼吸サイクル中に再び充足されるまで、ナビゲータシーケンスの繰返しが新たに始まる。こうして作動開始(トリガ)された第2トリガ後、イメージングシーケンスは、測定データの第2パケット(“anatomical sequence bloc 2”)を取得する。この経過は、全ての画像データが取得されるまで、繰り返される。
【0050】
トリガ条件が充足されると、1つのトリガが発動される。つまり、測定データの取得が作動開始(トリガ)される。トリガ条件は、その全てが充足されねばならない複数の条件を含むものとすることができる。その1つの条件としては、例えば「患者が息を吐くこと」のように定めることができる。あるいは、図2に模式的に示したように、例えば「測定した生理的呼吸信号(図2では実線200として表現)が、事前に設定してある許容範囲201に入ること」のように定めることができる。初期学習段階LPの終端の許容範囲201の位置設定は、評価した呼吸信号に基づいて、自動的に決定されるようにしてもよく、あるいは例えばメーカまたは操作者によって予め設定されているようにしてもよい。
【0051】
次に、図3を参照しつつ、被測定層の群への分割が、1トリガ当たりの取得時間と検査時間とに、どのように作用するのかを説明する。
【0052】
検査領域全体を2Dシーケンスによってカバーするには、つまり所望の検査領域を描出するのに必要な測定データを全て取得するには、一般に、その検査領域が区分された多数の層の全てから測定データを取得しなければならない。その層の正確な数は、主に、検査領域の大きさ、層厚、個々の層の相互距離に依存して定まる。例えば、腹部の器官をカバーして、それを3次元描出することを可能とするためには、一般に、例えば20〜40の層が必要である。呼吸トリガMR技術では一般に、測定データの取得に使用されるシーケンスの有効繰返し時間(“repetition time”つまり“TR”)が、患者の呼吸サイクル(代表的には約4〜6s)によって予め与えられているので、この有効繰返し時間は、比較的長い繰返し時間を使ったシーケンス技術において利用されることが望ましい。このシーケンス技術において、やはり主に、いわゆるインタリーブ(「分割アクセス」:"interleaved")取得プロセスが利用されることが望ましい。この場合、次の測定データパケットを取得するために、個々の層の励起が繰り返される前に、様々な層についてのデータが、予備データとして、まず取得される。ここで、インタリーブ取得の代りに、次の1つの層の測定データの取得を開始する前に、その前の1つの層の全ての測定データが完全に取得される、いわゆる逐次データ取得プロセスを利用することも可能である。但し、そのような逐次2D法は一般に、呼吸トリガリングに関連して、呼吸トリガ後に1つの層の全てのデータを取得できるほどに取得が迅速であるときにのみ、利用可能である。その場合、呼吸トリガリングは、層間の記録エラーを避けるのに役立つ。
【0053】
図3は、合計9つの層のインタリーブ多層測定の取得時間(“AD”)を患者の個人的呼吸サイクルに適合するようにした場合の一例を、模式的に示したものである。
【0054】
図3の上段には、全部で9つの層の、インタリーブ取得プロセスが示してある。9つの層は、各トリガ後、一つずつ順次に励起され、そのそれぞれについて、測定データが取得される。ここで、各層には、その各空間的位置に相応して、例えば最も深い位置の層には添字1が付され、そこから浅い位置になるにつれて添字2、3、…9のように順番に添字が付けられているものとする。隣接層のクロストーク("cross talk")を減らすために、図示したように、例えば、まず第1サイクルにおいては奇数が添字された全ての層を検出し、続いて、第2サイクルにおいては偶数が添字された全ての層を検出する、というような順序で検出を行うことが望ましい。なお、上記のクロストークとは、各高周波パルスがその有限時間のゆえに、1つの測定タイミングにおいてその測定対象となっている1つの層の外側の領域に存在している他の層も付加的に励起される現象のことを意味している。この隠れた励起は、まずその真に測定対象である1層の直近に隣接した層に最も強く影響し、その影響は連続する2つのサイクルで最も顕著なものとなる。このため、上記のように、偶数番目の層を順次に測定することと、奇数番目の層を順次に測定することとを、分けて実行することで、互いに隣接した層同士における最も顕著なクロストークの発生を回避することが有利なのである。蓋しいずれにしても、1連の層構成全体についてのデータを完全に検出するには、n回の励起が必要となる。こうして、MR検査は、n回のトリガ事象後つまり一般にn個の呼吸サイクル後に、完了する。1つのトリガ事象当たりの取得時間AD1は、アーチファクトを防止するために、例えば1呼吸サイクルよりも著しく短くしなければならない。ここでは、最も単純(簡易)に、1層の励起時間当たりの取得時間ADSの9倍となっている(AD1=9×ADS)。
【0055】
図3の中段には、例えば1呼吸サイクルが取得時間のオーダーAD1=9×ADSと合致している場合に、1トリガ事象当たりの取得時間を減らす可能性を有する手法が示してある。この場合、1連の層構成全体の測定タイミングは、図3の中段に示したように、第1群および第2群なる2つの群に分割される。ここに、第1群は、例えば奇数が添字された層(1、3、5、7、9)を有する各層からなり、第2群は、偶数が添字された層(2、4、6、8)を有する全ての層からなる。第2群の測定データの取得を開始する前に、まず第1群の測定データが完全に取得される。各群の測定データを検出するには(イメージングシーケンスのその他のパラメータが不変の場合)、やはりn個の励起、つまりn個のトリガ事象が必要である。従って、1呼吸インターバル当たり1つのトリガ事象を仮定すると、上段に図示した手法の場合に比べて、総測定時間は2倍になる。しかし、1トリガ事象当たりの取得時間AD2は、1つの層の励起当たりの取得時間の5倍(第1群の場合)、または4倍(第2群の場合)であり、著しく短縮している。つまり、AD2=5×ADS、もしくはAD2’=4×ADSである。従って、ここでは群当たりの最大層数は、5であるものと判定される。複数の層を独立した個々の群に分割するこの方式は、隣接層の間でクロストークを減らすという、既に指摘した利点を有し、またさらには、隣接層の間で異なるクロストークの結果として発生する虞のあるコントラスト差を防止することができるという利点をも有している。蓋し、必要に応じて、他の分割方式を選択することも可能であることは勿論である。
【0056】
計測データの取得時間を制限する呼吸サイクルが、さらに短い場合には、図3の下段に示したように、1連の層構成全体を、例えば3つの群に分割して取り扱うようにすることは、望ましい一態様である。この場合、計測データの取得時間AD3は、1層の励起時間当たりの取得時間ADSの3倍となる(AD3=3×ADS)。従って、ここでは1つの群当たりの最大層数は、3である。これと同様に、第3層は第3群に割り当てられ、第4層は第4群に割り当てられ、…第C層は第C群に割り当てられる、というように、一般にC個の群への各層の分割が、簡便に行われる。なお、群の数に伴って、1トリガ当たりの取得時間は短縮し、それとは裏腹に(いわゆるトレードオフで)、全ての層の全ての測定データを検出するためのトリガ事象の総数は増加する。
【0057】
このように、群の数が大きい場合には、一般に残存する運動アーチファクトが少なくなる。というのも、データ取得のタイミングを、より落ち着いた呼吸サイクル相に限定しやすくなるからである。但し、これはトリガ時点を最適に選択した場合である(なお、これについては、図3では図示省略)。あるいは、1トリガ当たりの測定データの取得時間が1呼吸サイクルよりもさらに著しく短い場合には、左様な少ない数の群は一般に、検査時間(つまり測定データ取得時間)をさらに短縮することとなる。このような群の最適数は一般に、患者の個人的な呼吸の態様にも左右される。先行技術では、最適数は操作員によって患者の呼吸サイクルに適合されるように人的に設定されるが、既述のような諸々の欠点を有している。本発明に係るこの実施の形態では、最適数は、例えば学習段階の最後に、このシステム自体によって自動的に決定されることができる。
【0058】
測定データ取得プロセスに影響するパラメータである「群数(群の総数、以下同様)」は、基礎となるシーケンス技術に左右されることなく1トリガ当たりの取得時間(AD)を変更できる、という利点を有する。このパラメータは一般に、画像コントラストに対する影響もごく僅かに過ぎない。こうして得られる測定データに否定的影響を及ぼすこともなく、この「群数」なるパラメータは、斯くして自動的に選択されることができる。つまり、本発明に係るこの実施の形態にて開示している方法およびコンピュータプログラムによれば、「群数」を自動的に探索するようにしたので、パラメータである操作者が確認することさえ省略することが可能となる。
【0059】
一般に、イメージングシーケンスまたは分光シーケンスのパラメータのうち、1層励起当たりの測定データの取得時間に影響するパラメータ、つまり1つまたは複数の群当たりの層数Cが一定の場合の、1トリガ当たりの取得時間に影響するパラメータは、他にも数多くある。1画素当たりの読取帯幅、ターボスピンエコーシーケンス(TSE)におけるエコー列長さ、またはエコープラナーシーケンス(EPI)のエコー列長さなどが、その典型的な例である。しかし、これらのパラメータは一般に、再構成画像のコントラストを直接または間接的にも決定することとなる。多くの場合、例えばシングルショットシーケンスにおけるパラメータである「エコー列長さ」が、再構成画像の分解能に影響を及ぼし得る。しかし、コントラストおよび分解能は、測定データから再構成された画像の診断値にとって、決定的である。それゆえ、一般に、コンピュータシステムまた操作者による任意の変更は受け入れられない。従って、コントラストまたは分解能の不都合な変化を防止するためには、各シーケンス毎に特別に調整した他の措置を施すことが必要である。このことを、以下に、図4および図5を参照しつつ、ターボスピンエコーシーケンスのエコー列長さの変化を例として挙げて、説明することにする。
【0060】
図4は、先行技術の例えばT2重み付け腹部イメージングにおいて使用されるようなターボスピンエコーシーケンスにおける、単一エコー列の一例の概略を模式的に示したものである。
【0061】
1つのエコー列は、上段“RF”に示したように、1つの高周波励起パルス(ここでは90°)と、それに続く複数の高周波再集束パルス(ここでは180°)の列とから成る。各パルス再集束後、第3行目のエコー(“Echo”)に示したように、“ES”なる時間間隔毎にスピンエコーが発せられる。そのタイミングに従って、各1つのk空間ライン(kX)が読み出され、測定データとして取得される。それに加えて、磁気共鳴技術において一般的である通り、選択的に層を特定して励起し、その励起によって取得された測定信号を空間符号化する。そしてそれと共に、望ましくない信号成分を抑制するために、勾配磁場が適用される。図4においては、図示を見易いものとするために、第2行目の“PE”に当該する位相符号化勾配と位相再集束勾配との概略を示すだけに止めている。
【0062】
図4の下側領域(ほぼ下側半分)には、測定データが仮想的に割り当てられる(以下、これを「充填される」とも記載する)k空間を示してある。この図4に示した例では、35個のk空間ラインkX(垂直な実線と垂直な一点鎖線)が充填されなければならない。1つのエコー列の各エコーを以て、k空間ラインが読み取られる。従って、1つのエコー列当たり♯1〜7なる合計7つのエコーを有するこの図4に示した一例では、各エコー列当たり7ラインの測定データが取得されることとなる。つまり、所望のk空間を35のk空間ラインから完全に読み取るためには、この図4に示したように、1エコー列に含まれるラインが、35÷7=5で、5つ必要である。これは、1つのトリガ事象後に、各1つのエコー列が作動開始されるから、5つのトリガ事象が必要であることを意味している。各位相符号化勾配と位相再集束勾配との対の振幅および符号に基づいてエコーとk空間ラインとの関係付けが定まる。この関係付けは、一連の境界条件に支配される。いわゆるギブスのリンギングアーチファクト("Ringing artifact")とゴーストアーチファクトを防止するために、k空間内の振幅と位相は、最小にされるべきである。エコー列に沿ったT2が終束することにより、同じエコー添字Echo#1〜#7を付して示されている様々なエコー列のエコーは、隣接k空間ラインに分類される。このようにして、エコー列当たり各1つのラインが、つまりセグメント当たり5つのラインを有するk空間内に7つのセグメントSegment#1〜#7が得られる。この図4では、各セグメントを明確にするために、1つのセグメントの第1ライン(作動開始(トリガ)タイミングに対応)を実線で、かつ同じセグメントにおける、他の4つのラインを一点鎖線で、それぞれ示してある。
【0063】
隣接セグメントを、エコー列内部の継続的エコーで充填することによって、セグメント間の振幅急変を最小にすることができる。この割当てに則して、k空間内での位相の階段状化および振幅変調が得られる。
【0064】
k空間中心付近の複数のk空間ラインが、コントラストおよび画像印象を決定する。これらのk空間ラインは、この例においては、5つのエコー列の第4エコーから、それぞれ取得される。つまり、第4エコーのエコー時間によって、シーケンスのコントラストおよび画像印象が決定される。それは有効エコー時間TEeffと呼ばれる。この有効エコー時間は一般に、利用者によって調整可能である。
【0065】
既に述べたように、1トリガ当たりの取得時間は、1つのエコー列長さとも称される1つのエコー列のエコー数を変更することによって、制御することができる。エコー列の短縮、つまり1つのエコー列当たりのエコー数をより少ないものとすることは、測定データの完全取得に要する、エコー列全体もしくはトリガ事象の回数の、増加を伴う。エコー列長さの延長(1エコー列当たりさらに多くのエコーの追加)は、測定データが取得されるk空間ラインの総数が一定に保たれるとき、測定データの完全取得に必要なエコー列もしくはトリガ事象の数の減少を伴うこととなる。測定データが取得されるk空間ラインの総数は、達成される測定データ分解能を劣化させないために、少なくとも減少しないように努めることが望ましい。
【0066】
さらに、k空間の中心は、コントラストと画像印象を維持するために、引き続き同じエコー添字(この例ではエコー添字#4)を付されたエコーで符号化されねばならない。アーチファクトを防止するためには、付加的に極力平滑な振幅推移および位相推移をk空間内で維持することが望ましい。
【0067】
図5は、「エコー列当たりのエコー数」なるパラメータを、個々の呼吸に適合させた後の、ターボスピンエコーシーケンスの1つのエコー列の概略を示したものである。この図5には、エコー列の各エコーに対するk空間ラインの割当てが図示してある。この割当ては、図4に示したものと同様に、やはり35のk空間ライン全体をカバーし、上記に既に指摘した全ての条件を充足するが、より短縮したエコー列長さで、つまり図4に示したような1エコー列当たり7つのエコーの代りに、ここでは1エコー列当たり5つのエコーであるEcho#1〜#5が充填される。
【0068】
よって、35のk空間ラインを満たすためには7つのエコー列が必要である。従って、7つのトリガ事象が必要である。そして、k空間は、Segment#1〜#10なる全10個のセグメントに区分されている。Segment#2〜#6なるセグメントは、それぞれ4つのk空間ラインから成る。これらのセグメントにおいては、1つのエコー列は、例えば4つのエコーが充填される。より詳細には、セグメント#2の1ラインは、添字Echo#1のエコーが充填され、セグメント#3の1ラインは、添字Echo#2のエコーが充填される、等々となっている。
【0069】
セグメント#5は、k空間中心を含み、有効エコー時間TEeffをそのまま維持するために、添字Echo#4のエコーが充填される。残りのSegment#1およびSegment#7〜#10なるセグメントは、合計7つのエコー列のうちの残り3つのエコー列が充填される。その際、添字Echo#1が付されたエコー(4つの第1エコー列の添字Echo#1のエコーと一層容易に区別するために、敢えて若干上方にずらして記載してある)は、添字Segment#1のセグメントを満たす。ここに、各セグメントに対するエコー添字のさらなる割当てはk空間の周辺から内へと向かう順番(つまりそれまでとは逆向きの順序)になっている。このようにして、添字Echo#2のエコーはセグメント#10を満たし、添字Echo#3のエコーはセグメント#9を満たし…等々となる。この割当て方法によって、セグメント#6とセグメント#7との間での振幅急変が防止され、これら両方のセグメントは、図5におけるエコー列における遅めの順番のエコーが充填される。同様に、セグメント#1、セグメント#2には、その両方とも、エコー列における早めの順番のエコーが充填される。こうして、隣接セグメントは、それぞれ、同じエコー添字または1だけ異なるエコー添字のエコーが充填され、これにより、振幅急変が防止される。
【0070】
図6は、本発明の実施の形態に係る方法が含んでいる主要なプロセスを概略フローチャートで示したものである。
【0071】
本発明の実施の形態に係る方法が開始されると(ステップ100)、呼吸する検査対象の生理的呼吸信号の検出が開始される(ステップ101)。例えば、ナビゲータシーケンスの実施が開始され、例えば呼吸信号検出装置3の具体的な構成要素として検査対象である患者Pに予め装着されている呼吸ベルトまたは呼吸パッド(どちらも図示省略)から出力される信号が検出される。
【0072】
処理性をさらに改善するために、ステップ102では、最初に検出した信号を、生理的呼吸信号値と付属する時刻スタンプとから成る値対(データ対)に変換する。このステップ102では、例えば、1つのナビゲータシーケンスから取得した生データから、生理的データ点、例えば横隔膜の位置が、データ取得時点の時刻データと一緒に、ナビゲータシーケンスによって抽出される。前述のような呼吸ベルトまたは呼吸パッドを使用した場合には、例えば、特定時点に圧力センサによって読み取られる呼吸ベルトもしくは呼吸パッドの圧縮に比例した電圧が、ディジタル処理可能な生理的信号に変換される。上記のように生理的信号に割り当てられる時刻スタンプの時刻の値は、従って、電圧読取時刻の値と一致している。
【0073】
抽出された複数のデータ(生理的呼吸信号と時刻スタンプとの値対)点の列は、例えば総合記憶装置103に記憶される。ここで、「総合」とは、フローチャート中の様々なプロセス(ステップ)で利用される様々なデータ処理ユニット(例えば図1に示した各ユニット5〜11など)が、その総合記憶装置103に随時アクセス可能であることを意味している。
【0074】
質問(分岐判断)のステップ104では、学習段階が既に終了したか否か、すなわち生理的呼吸信号の十分な数のデータ点が既に総合記憶装置103に記憶されたか否かが質問される。十分な数のデータ点は、例えば、さらに以下で詳しく述べるように、検出すべき最小数の呼吸サイクルの所定値Mを用いて決定することができる。本方法の開始時(ステップ100)には、このブール変数は「偽」となっている。すなわち、生理的呼吸信号の第1データ点の検出後、質問104は「否」つまり“N”で返答される。
【0075】
質問のステップ104に対する返答が「否」(“N”)であるとき(ステップ104のN)、例えば検出された呼吸信号の評価が開始される(ステップ105)。そして、例えば評価ユニット7は、総合記憶装置103にアクセスし、既に検出した複数のデータ点の列を読み取り、例えばその列中の局所極値(極小と極大)を求める。これは、例えば公知の仕方で、例えば時間に対する列の少なくとも1つの導関数を算出することによって、いわゆる解析学的な「極小値」や「極大値」として求めることができる。一般性を制限するものではないが、ここでは符号の意味を次のように定めておく。すなわち、局所極小は、最大吸気状態に相当し、局所極大は、最大呼気状態に相当するものとする。
【0076】
ステップ104のNに続いて、ステップ105では、検出した呼吸信号内の少なくとも1つの呼吸サイクル時間(呼吸サイクル、呼吸インターバルとも称される)を求めることもできる。その際、1つの呼吸サイクルは、例えばある1つの最大吸気状態から次の最大吸気状態までの時間インターバルと規定されている。従って、検出した時間インターバルつまり呼吸サイクルの個数は、局所極小の数から1を引いたものに等しいこととなる。このステップ105に続いて、他の質問のステップ106が実行される。この質問の内容は、例えば、既に検出した複数の生理的データ点の列中の、例えば局所極小において、所定値Mが既に求められたか否かを質問するものとすることができる。検出した呼吸インターバルの数が、所定値Mよりも小さい場合には(ステップ106のN)、質問106は「否」(“N”)で返答され、生理的呼吸信号のさらなる(新たな)検出、例えば次回のナビゲータシーケンスによる測定データ取得の検出が継続される(ステップ101、102)。
【0077】
特に、ナビゲータによって生理的呼吸信号を検出する場合、検査対象内の磁化が動的定常状態("Steady State")に到達できるように、順次発生するナビゲータシーケンスの時間間隔は、等しくなければならないこととなる。その際、図2の“Scout‐TR”に相当するナビゲータシーケンスの時間間隔は、少なくとも、その間に1つのナビゲータシーケンスを実行できるとともに、このナビゲータシーケンスで取得した測定データも処理できるように、十分に長く選択しておくことが望ましい。
【0078】
第(M+1)番目の局所極小、つまり第(M+1)最大吸気状態が求められると、質問のステップ106においては、「是(肯定)」(“Y”)なる返答が為される。それを受けて、検出した生理的信号を、評価することができる(ステップ107)。例えば、検出された呼吸信号内の様々なサイクルからステップ105によって得られた複数の時刻の値の中央値を、ここで求めることができる。これは、例えば次のようにして行われる。すなわち、生理的データ点の列中で局所極小として識別された、検出した生理的データ点の時刻スタンプの列を、列(T1、…、TM+1)とする。これによって、まず列A=(a1、…、aM)が算出される。列Aの第n要素は、検出した呼吸信号の第nサイクルの時間である。すなわち、an=(Tn+1−Tn)、n=1、…、Mである。列Aは、引き続いて、呼吸サイクルの長さ別に分類される。この新規な列は、ここでB=(b1、…、bM)で表される。つまり、Bは、Aと同じ要素を有する。但し、ここに、bn≦bn+1が成り立っている(つまり、左記のような不等式で表現される序列が規定されている)。次に、呼吸サイクルBの時間の中央値b〜は、次式によって得られる:
【0079】
【数1】

ここに、Nが奇数の場合には、上記の「数1」の上段に記載の式が該当し、Nが偶数の場合には、上記の「数1」の下段に記載の式が該当する。
【0080】
あるいは、上記のようなプロセスの代りに、1呼吸サイクルの「平均」時間(これは単に数学的な平均ということを意味しているのではなくて、むしろ「正則な」時間と理解すべきである)を再現する、別の統計値として、例えば算出した呼吸サイクル時間の平均値等を、算出することも可能である。その際、列Aを列Bに再分類することは省くことが可能である。しかし、中央値が平均値に比べて有利な点としては、中央値は「異常値」に対して影響を受けにくいということである。ここで「異常値」とは、残りの呼吸インターバルよりも遥かに長い、または遥かに短い、個々の呼吸サイクル時間のことである。それゆえに、以下では、常に呼吸サイクル時間の中央値に言及するが、これは本発明に係る方法が呼吸サイクル時間としてその測定データの中央値を用いることのみに限定することを意味するものではないことは勿論である。
【0081】
そして、評価した呼吸信号を基に、磁気共鳴による測定データの取得プロセスに影響する少なくとも1つのパラメータを、算出することができる(ステップ108)。そのために、例えば、生理的呼吸信号の評価時に求めた呼吸サイクル時間の中央値が演算ユニット9に引き渡され、その演算ユニット9によって、例えば図3に関連して既に説明したように、パラメータとして検査用に必要な層数を分割する群の数Cが算出される。
【0082】
これは、例えば、群の最小数Cを選択することによって行われる。この最小数には、1トリガ当たりの取得時間ADが検出した呼吸サイクル時間の中央値b〜のパーセント割合よりも小さいことが妥当する:
AD≦(D/100)×b〜 (2)。
すなわち、パラメータCは、求めた個人的呼吸サイクルの規定されたパーセント割合を1トリガ当たりの取得時間ADが上まわることのないように、選択されなければならない。
【0083】
このように、磁気共鳴による測定データの取得プロセスに影響するパラメータの算出は、検出した呼吸信号の評価時に求めた検出呼吸信号のサイクル時間のパーセント割合(D/100)×b〜の算出をも含む。
【0084】
こうして、(D/100)×b〜が、1トリガ当たりの最大取得時間ADに制限を与える。その際、所定値Dは、一般に患者に左右されない、すなわち患者の個人的呼吸には左右されずに、1〜100の数値範囲内において、予め定められる値である。その実用上好適な具体的数値としては、典型的には、25〜50である。なお、このようにパーセント割合をD/100で表現することは、問題としているのがパーセント割合であることを具体的に示すのに役立つに過ぎないのであって、当然、値dとして、d=(D/100)と設定することもできる。
【0085】
この所定値Dは、例えば操作者のような、磁気共鳴による測定データの取得を処理する者によって、例えば手動で(つまり人的に)設定されることができる。しかし、この所定値Dは、測定データの取得用に選択された取得プロセスに依存するものでもあるから、例えば選択したシーケンスに依存して設定される経験値とすることなども可能である。
【0086】
この値Dを、測定データの取得を行う者によって設定する場合には、例えば短い検査時間(値Dをより大きくしたとき)と僅かな残留運動アーチファクト(値Dをより小さくしたとき)という、トレードオフの関係にあって相矛盾する利点同士の間で、適宜に選択することができる。あるいは、操作者によって修正することのできない経験値を利用する場合には、この経験値は、望ましくは、基礎となるイメージングシーケンスまたは分光シーケンスに依存して選択される。例えば、相対運動に敏感でないPROPELLERシーケンスでは、同じシーケンスの運動に敏感なデカルト変数の場合よりも大きな値を選択することができる。
【0087】
求めた呼吸サイクル時間の、このように設定してなるパーセント割合によって、1トリガ当たりの最大取得時間ADを制限する代りに、その1トリガ当たりの最大取得時間ADを、検出した生理的呼吸信号から、例えば最大時間インターバルを決定し、それに対応して決定することもできる。この最大時間インターバル内では、生理的呼吸信号の最大変動または平均変動が、検出した呼吸信号中の少なくとも1つの吸気の値と少なくとも1つの呼気の値との間の、最大変動、または平均変動の固定選択値、もしくはパーセント割合を、上まわらない(換言すれば、そのように最大時間インターバルが設定される)。つまり、絶対変動、または生理的呼吸信号の変動に対して相対的な変動が設定され、その変動を所定の変動が上まわらないような、最大時間インターバルが探索される。その時間インターバルが長くなればなるほど、時間インターバル内の変動は一層大きくなる。その場合、ここで探索する最大時間インターバルは、1トリガ当たりの最大取得時間ADを示している。
【0088】
そしてまた、1トリガ当たりの最大取得時間ADは、1つの群当たりの最大層数に比例している。こうして、図3に関連して述べたように、複数の被測定層を各群に割り当てると、ADは群の数Cに依存することとなる。その場合、ADの最大値は、測定データを取得すべき層の数Sを群の数Cで割って、次の整数に切り上げて層励起当たりの取得時間ADSを掛けたものとなる。つまり、AD≦[S/C]×ADSである。ここに、[・]は、ガウス関数的な切り上げ関数である。つまり、磁気共鳴による測定データの取得プロセスに影響する少なくとも1つのパラメータ、ここでは群の数Cは、患者に左右されない値Dと、患者に依存した呼吸サイクル時間の中央値とに、依存していることとなる。
【0089】
所要の層数Sが分割される群の数Cの具体的な値は、不等式(2)により、1群内の全ての層の測定データの取得時間と、検出した呼吸信号の評価時に求めた統計的な呼吸サイクル時間との、比較を含んだ演算プロセスによって、算出することができる。
【0090】
ここで、不等式(2)が、可能な全てのCなる数値について満足することができない場合には、次善の策として、群の数Cを層数Sに等しく設定すればよい。
【0091】
次に、測定データ取得プロセスにおいては、制御ユニット11を介して、測定データ取得のために使用したシーケンスが新たな群数C用に準備され、もしくは既に行われた準備が新たな群数に適合されるように、制御が行われる。その際、「準備」は、本来のシーケンス開始前に行うことのできる全ての算出を含む。殊に、層励起順序の算出、余白時間(充填時間)の算出などを含む。
【0092】
図4と図5に関連して述べたように、選択的パラメータ、または測定データ取得プロセスに影響する他のパラメータとして、使用されるエコー列のエコー数を用いることも可能である。その場合、不等式(2)がやはり当てはまるが、但しここでは1層励起当たりの取得時間ADSは、使用されるエコー列当たりのエコー数Eに依存することとなる。すなわち、ADS=E*ES+K である。ここに、ESは、エコー間隔である。Kは、シーケンスに依存して生じる時間、例えば使用される励起パルスの時間、励起パルスと第1再集束パルスとの間の時間ES/2、もしくは場合によっては他の時間、例えば可能なスポイラ勾配の時間等である。さらに、AD≦[S/C]×ADSが成り立つ。
【0093】
このように、群数Cも、エコー列当たりのエコー数Eも、それぞれ上記の取得プロセスに影響する具体的なパラメータとして、算出し、利用することができる。
【0094】
あるいは、そのパラメータとしては、「1エコー列当たりのエコー数」のみを算出し用いるようにすることも可能である。その場合には特に、S=1と設定される。S=1は、例えば、一般に(但し、「必ず」ではないが)、検査領域が単一の励起ボリュームによって完全にカバーされる3Dシーケンスにおいて典型的である。この場合、単一の層を群に分割することはできないので、当然、図3に関連して述べた方法は、S=1には利用できない。S=1を有するMR検査に妥当するのは、ADがE*ESに概ね等しい場合である。
【0095】
不等式(2)と測定データ取得プロセスに影響するパラメータとに基づいて、トリガ当たりの取得時間ADが個人的呼吸信号に自動的に調整して選択された後、その検出された個人的呼吸信号に基づいて、少なくとも1つのトリガ条件を算出することができる(ステップ109)。
【0096】
例えば、トリガ条件として、いわゆるトリガポイント(TP)を算出することができる。トリガポイント(TP)は、生理的呼吸信号と同じディメンジョン(物理的単位)を有する数量である。例えば、「最後に測定された実際の生理的呼吸信号のデータ点とトリガポイント(TP)との偏差が所定の許容範囲[TP−δ、…、TP+δ]に等しいか、もしくはこれよりも小さい場合にのみ、トリガが発動される」というような、明確に定義可能なトリガ条件を設定することが可能である。
【0097】
トリガポイントの算出は、例えば次のようにして行うことができる。すなわち、測定した生理的データ点の列をP=(p1、…、pL)とする。さらに、ステップ105において、この列PのM+1個の要素が最大吸気状態として識別されたとする。ここに、最大吸気状態をアドレス指定する添字の列をI=(i1、…、iM+1)とする。換言するならば、pik(1≦k≦M+1)は時点Tkに検出された、第k番目の最大吸気状態中の生理的呼吸信号のデータ点の値である。人間もしくは肺呼吸する生物においては、その解剖学的な身体構造もしくは組織構造から、通常、連続して隣り合った2つの最大吸気状態(最大吸気タイミング)同士の間に、常に1つの最大呼気状態が必ず存在している筈である。そこで、このような生物学的な事実に基づいて、検出された生理的呼吸信号における当該トリガポイントの算出等に寄与し得るデータ点の候補全体は、第2添字列E=(e1、…、eN)によってアドレス指定されるようなものとなる。そしてその場合、関数tは、1つの信号点にその時刻スタンプを割り当てることができる。すなわち、次式が成り立つ:
【0098】
【数2】

【0099】
ところで、検出された呼吸信号のM個の呼吸インターバルの、それぞれについて、トリガポイントTPkは、以下のようにして決定されることが可能である:
【0100】
本発明に係る一実施の形態では、1トリガ当たりの取得時間ADに基づいて、従って測定データ取得プロセスに影響するパラメータに依存して、そして検出した呼吸信号に基づいて、トリガポイントTPを算出する。そのためには、ステップ108で算出したトリガ当たりの取得時間ADを用いる。
【0101】
すなわち、ADを構成しているデータ点の総個数(整数)の最小値をadとすると、ad≧AD/Scout‐TRが成り立つ。Scout‐TRは、2つの連続する生理的データ点の間の、一定した時間間隔である:Scout‐TR=t(pi+1)−t(pi)。従って、adは、検出した生理的呼吸信号の連続的データ点の個数であり、これらのデータ点は、1トリガ当たりの取得時間ADをカバーする時間内に検出されたものである。
【0102】
つまり、ikとekとの間のインターバルik≦j≦ekにおいてjなる添字を付されたデータ点は、最大吸気と最大呼気との間、従って呼気相内にあり、このデータ点について、検出した呼吸信号の当該データ点の推移の「平坦性」の尺度である、下記の合計を算出することができる:
【0103】
【数3】

【0104】
ここに、合計Sum(j)を最小にする添字、すなわち後続のadデータ点を介して「最も平坦な」推移が続くことになるデータ点の添字をjminとする:
【0105】
【数4】

【0106】
斯くして、第k呼吸インターバルのトリガポイントTPkにおける生理的信号値は、添字jminを有するデータ点の信号値に相当することとなる。
【0107】
一層安定したトリガポイントTPを得るために、M個のトリガポイントTPkの中央値を、実際のトリガポイントTPとして設定することが可能である。その中央値の算出方法は、既に上記で呼吸サイクル時間の中央値を一例として説明した通りである。つまり、それと同様の手法で以て、このトリガポイントについての中央値も算出可能である。
【0108】
このように、トリガポイントTPは、その到達時に所定偏差(許容範囲)の枠内でトリガ条件が充足されている呼吸信号値に相当するものである。
【0109】
少なくとも1つのトリガ条件の算出(ステップ109)を以て、遅くともそれまでには学習段階が終了しており(ステップ110)、それに伴って、質問のステップ104のブール変数が「真」に設定される(ステップ104のY)。そして、イメージング段階もしくは分光段階に進む。まず、1つのトリガユニットを含む制御ユニット11は、最後に検出した呼吸信号をトリガ条件と比較する(ステップ111)。
【0110】
ナビゲータシーケンスを一定した時間間隔Scout‐TRで実行し(ステップ101)、それに付属して、検出信号を生理的データ点に変換する(ステップ102)。これは、ステップ111でトリガ条件の最初の充足が確認されるまで(質問のステップ112の結果が“Y”になるまで)、継続される。トリガ事象が発動されるためには、本発明に係る一実施の形態においては、少なくとも下記のような2つの条件が充足されていなければならない:
1) 最後に検出した生理的データ点の列が、上昇的でなければならない。これは、呼気相に相当する。
2) 最後に測定した生理的信号点とトリガポイントTPとの偏差Δは、事前に確定した
許容範囲[TP−δ、…、TP+δ]に等しいか、またはそれ以下でなければならない。すなわち、|Δ|≦δである。
【0111】
トリガ条件が充足されたならば(ステップ112のY)、トリガユニットによって、測定データの取得が実行される(ステップ113)。すなわち、トリガ事象が発動され、イメージング測定データもしくは分光測定データのパケットが、測定データ取得に影響する算出パラメータを考慮して、1トリガ当たりの取得時間ADの間に取得される。その際に、第1パケットとして扱われるものは、その基礎となるイメージングシーケンスもしくは分光シーケンスに依存する。例えば、一般的なT2重み付けターボスピンエコーシーケンスでは、1つのパケットを、第1群の層当たり各1つのエコー列で構成することができる。
【0112】
第1の測定データパケットの取得後、測定データの取得は、このトリガ条件が二度目に充足されるまで、次のナビゲータシーケンスの実行によって継続される。こうして発動された第2のトリガ事象後、イメージングシーケンスもしくは分光シーケンスの第2測定データパケットが取得される。このプロセスは、検査すべき所望の検査領域の全測定データが取得される(質問のステップ114のY)まで、継続される。データの取得後、一連の測定プロセスが完了する(ステップ115)。
【0113】
特に、実際の呼吸信号をナビゲータで検出する場合、トリガ事象によるナビゲータ列の中断(図2の“Navigators”も参照)が、磁化の動的定常状態("steady state")を乱すことがある。この乱れは、ナビゲータシーケンスの再投入直後にナビゲータ信号から抽出される生理的呼吸信号に対して、否定的に影響する(いわゆる悪影響を生じる)ことがある。例えば、このようなナビゲータ信号内に、信号変化が現れることがあるが、その原因は主に、定常状態に再到達する期間中の磁化過渡状態にある。このような信号変化は、生理的呼吸運動の結果としての信号変化から区別することができない。従ってこれは、検出した実際の呼吸信号を歪め、斯くして誤ったタイミングでトリガを発動させてしまうことがある。
【0114】
しかし、これらの不都合な事態の発生は、例えば下記のような措置によって、抑制ないしは解消することができる。
【0115】
例えば、1つのトリガ事象後、そして測定データ取得後、生理的データ点を検出するために次のナビゲータシーケンスが実施される前に、呼吸サイクル時間に対して相対的に短い余白時間“R”を挿入することができる。この余白時間“R”の期間中、検査対象内で、磁化の部分的な緩和が進む。このような余白時間の一例を、図2では、符号“R”を付して示してある。
【0116】
さらに、質問のステップ116において、例えばカウンタ素子によって、ステップ102において1つのトリガ事象後に実際の呼吸信号のデータ点が幾つ検出されるのかを、質問(判別)することができる。1つのデータ点の、このようなカウンタ値が、所定値Zよりも小さければ、そのデータ点を廃棄することができ、従ってそのデータは総合記憶装置103には記憶されない。もしくは所定値Zよりも大きければ、そのデータは総合記憶装置103に記憶される。ここで、その所定値Zは整数であり、例えば一方で、定常状態が既に少なくとも近似的に再び到達でき、他方で、後続の呼吸インターバル内で1つのトリガ事象を発生するべく、過度に多くのデータ点が廃棄されないように選択されることが望ましい。例えば、Z=2であると、ナビゲータの再利用後、1つのトリガ事象後に検出される2つの第1データ点がその都度廃棄されるようにすることなどが可能である。
【0117】
但し、このような措置は、呼吸パッドまたは呼吸ベルト等の外部センサで呼吸信号を検出する場合には一般に、必要ではない。というのも、これらのセンサの信号は一般に、イメージングシーケンスもしくは分光シーケンスによって乱されることが、殆どないからである。
【0118】
本発明に係る一実施の形態では、さらに、質問のステップ112における判定が“Y”となった後にトリガ事象を発動するためには、下記のトリガ条件が充足されていなければならないことがある:
3) 第1トリガ事象が既に現れている場合、設定可能な時間幅Ttが、最終トリガ事象以降に経過していなければならない。その際、この時間幅Ttは、例えば、ステップ107で算出した呼吸サイクル中央値の約60%よりも大きい。
【0119】
1つのトリガ事象は一般に、1呼吸サイクル毎に唯1回発生するだけであり、少なくとも1つの呼吸サイクル時間は一般に、2つのトリガ事象の間にある。従って、2つのトリガ事象は、算出した呼吸サイクル時間の中央値のパーセント割合よりも近づけるべきではないと考えられる。この中央値は、呼吸サイクル時間の正常変動の範囲内にある。
【0120】
上記の他の一実施の形態において、トリガポイントの算出は、場合によっては、初期学習段階の終了後に新たなトリガポイントTP’として再計算することも可能であり、ステップ111での実際の呼吸信号の次の比較のために、初期学習段階で算出したトリガポイントTPの代りに用いることができる。
【0121】
これは、例えば次のようにして行われる。すなわち、質問のステップ117では、最後に検出された連続して隣り合う2つの最大吸気状態の同士の間に、1つのトリガが発せられたか否かを監視する。あるいは、その代りに、質問のステップ117では、例えば最終トリガ事象後に経過した時間を監視することなども可能である。1呼吸サイクル時間内に、場合によってはその正常変動を考慮して、つまり例えば時間bmax内に次なるトリガ事象が現れない場合、質問のステップ117を経由して、ステップ109内でトリガポイントの再計算が開始される。その際、学習段階の最後と同様に、但し例えば最後に完全に検出されたM個の呼吸サイクルに基づいて、上で述べたように新たなトリガポイントTP’が算出される。再計算の最初の開始後、再計算は、例えば学習段階の最後のM−1個の呼吸サイクルとトリガが発生されなかった間の呼吸サイクルとに基づいて行われる。このようにして、与えられた条件のもとで、トリガ条件「トリガポイント」は、開始された学習段階の間の第1回目の計算後に、少なくともさらに1回再計算される。
【0122】
有利な一実施の形態において、測定データ取得に影響するパラメータは、トリガポイントと一緒には適合されない。すなわち、上記の例において1トリガ当たりの取得時間は再計算されない。このことから、一般に、既に取得した例えばイメージング測定データの一部が廃棄されねばならないということにもなり得る。というのも、測定データ取得に影響するパラメータがデータ取得中に変化すると、アーチファクトまたはコントラスト差を生じることがあるからである。
【0123】
選択的な質問のステップ117において、bmaxは、例えば、呼吸サイクルの算出した中央値b〜の、呼吸サイクルが正常変動だけ延長された時間、すなわちbmax=(1+k)b〜であり、またkは、呼吸信号の正常変動のもとで許容される延長であることを意味する。
【0124】
トリガポイントの、このような再計算は、検査中に患者の呼吸が変化する場合に有利である。例えば、多くの患者は、MR検査の開始時には、例えば興奮などによって、より迅速に、および/または、より深く呼吸する。そして、そのように呼吸が速くなると、呼吸サイクルは短くなる。従って、トリガ当たりの所定取得時間ADにおいて、ADが呼吸サイクルと比べて相対的に長くなるので、トリガポイントは後方にずれ込むこととなる。あるいは、例えば検査中に患者が眠り込んだ場合などには、呼吸が通常の場合とは異なり大幅にもしくは不規則的に変化することもある。斯様な変化は、トリガポイントの再計算によって、MR検査実行中にも考慮することができる。
以上のようにして、本発明の実施の形態に係る方法およびコンピュータプログラムによれば、MR検査の結果を改善すること、およびMR検査の総時間を短縮することが、可能となる。
【符号の説明】
【0125】
1 MR機器
1.1 主磁石
1.2 コイルユニット
1.3 患者支持装置
3 呼吸信号検出装置
5 呼吸信号検出ユニット
7 評価ユニット
9 演算ユニット
11 制御ユニット
13 記憶ユニット
15 処理ユニット
17 表示ユニット
20 コンピュータプログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法であって、
a) 前記検査対象の呼吸に対応した生理的呼吸信号を検出するステップと、
b) 前記検出した呼吸信号を評価するステップと、
c) 前記評価した呼吸信号を基に、磁気共鳴による測定データの取得プロセスに影響する少なくとも1つのパラメータとして、前記検査対象の呼吸サイクル時間またはそれに代替する物理量を算出するステップと、
d) 実際の生理的呼吸信号を検出するステップと、
e) 最後に検出した前記呼吸信号を少なくとも1つのトリガ条件と比較するステップと、
f) 前記ステップe)にて前記トリガ条件が充足されたとき、前記算出したパラメータを用いて、測定データの取得プロセスを作動開始(トリガ)するステップと、
g) 所望の全ての測定データが取得されるまで、前記ステップd)、前記ステップe)、前記ステップf)を繰り返すステップと
を含むことを特徴とする、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法。
【請求項2】
請求項1記載の、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法において、
前記磁気共鳴による前記測定データの取得プロセスに影響する前記少なくとも1つのパラメータに基づいて、前記測定データの取得プロセスをトリガ(作動開始)した後の、当該測定データの取得時間を決定する、または当該測定データの取得時間を決定するための設定を変更する
ことを特徴とする、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法。
【請求項3】
請求項2記載の、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法において、
前記磁気共鳴による前記測定データの取得プロセスに影響する前記少なくとも1つのパラメータの算出には、当該パラメータの算出と共に、前記検出した呼吸信号の前記評価を行った際に統計的に求めた呼吸サイクル時間のパーセント割合の算出も含まれる
ことを特徴とする、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法。
【請求項4】
請求項2または3記載の、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法において、
前記測定データは、所定数の被測定層からなる層構造を複数有するものであり、
前記磁気共鳴による前記測定データの取得プロセスに影響する前記少なくとも1つのパラメータに基づいて、前記層構造の持つ層数のうちの最大値を算出し、
かつ前記トリガ条件の充足後に、各前記被測定層からそれぞれ前記測定データを取得する
ことを特徴とする、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法。
【請求項5】
請求項4記載の、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法において、
前記所定数の被測定層からなる層構造の層数の最大値を算出するプロセスには、前記トリガ条件の充足後に、当該最大値のデータ取得時間と、前記検出した呼吸信号の前記評価の際に求めた統計的サイクル時間とを、比較するプロセスが含まれる
ことを特徴とする、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法。
【請求項6】
請求項2から5のうちいずれか1項に記載の、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法において、
前記磁気共鳴による前記測定データの取得プロセスに影響する前記少なくとも1つのパラメータとして、前記磁気共鳴による前記測定データ取得の際に使用されるエコー列のエコー数を用いる
ことを特徴とする、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法。
【請求項7】
請求項1から6のうちいずれか1項に記載の、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法において、
前記磁気共鳴による前記測定データの取得プロセスに影響する少なくとも1つのパラメータを算出するための所定値Dであって前記検査対象の呼吸サイクル時間またはそれに代替する物理量に対するパーセント割合として予め定められる所定値Dを用いて、当該所定値Dを前記呼吸サイクル時間の中央値または平均値に乗算してなる値以下に、1つのトリガから発動した前記測定データの取得時間がなるように、前記少なくとも1つのパラメータを算出する
ことを特徴とする、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法。
【請求項8】
請求項7記載の、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法において、
前記所定値Dは、前記磁気共鳴による前記測定データの取得を行う者によって人的に設定される
ことを特徴とする、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法。
【請求項9】
請求項7記載の、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法において、
前記所定値Dは、前記測定データの取得の際に選択された取得プロセスに依存して設定される
ことを特徴とする、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法。
【請求項10】
請求項1から6のうちいずれか1項に記載の、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法において、
前記磁気共鳴による前記測定データの取得プロセスに影響する前記少なくとも1つのパラメータは、前記検出した生理的呼吸信号の最大の時間インターバルに依存しており、当該時間インターバル内では、前記生理的呼吸信号の最大変動または平均変動が、前記検出した呼吸信号内における、少なくとも1つの吸気の値と他の少なくとも1つの呼気の値との間での最大変動または平均変動の固定選択された値またはそのパーセント割合の値を、上まわらないように設定される
ことを特徴とする、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法。
【請求項11】
請求項1から10のうちいずれか1項に記載の、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法において、
前記評価した呼吸信号を基に、少なくとも1つの前記トリガ条件が、前記a)、前記b)、前記c)、前記d)、前記e)、前記f)、前記g)のうちの少なくともいずれか1つのステップにおいて算出される
ことを特徴とする、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法。
【請求項12】
請求項11記載の、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法において、
前記呼吸信号の評価の際に、逐次に検出される呼吸信号のレベルがそれに到達した時点で前記トリガ条件が充足されることになるような呼吸信号値のレベルを、前記トリガ条件として算出する
ことを特徴とする、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法。
【請求項13】
請求項12記載の、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法において、
前記呼吸信号値を算出するプロセスは、前記呼吸信号の平坦な曲線推移を探索するプロセスを含む
ことを特徴とする、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法。
【請求項14】
請求項13記載の、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法において、
前記平坦な曲線推移は、少なくとも前記測定データ取得トリガ後の測定データの取得時間に亘って継続するものである
ことを特徴とする、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法。
【請求項15】
請求項13または14記載の、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法において、
前記平坦な曲線推移の初端は、前記呼吸する検査対象の呼気相内にある
ことを特徴とする、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法。
【請求項16】
請求項11から15のうちいずれか1項に記載の、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法において、
前記少なくとも1つのトリガ条件は、前記磁気共鳴による測定データの取得プロセスに影響する前記少なくとも1つのパラメータに依存して定められるものである
ことを特徴とする、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法。
【請求項17】
請求項11から16のうちいずれか1項に記載の、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法において、
前記少なくとも1つのトリガ条件は、第1回目の算出後に、少なくともさらに1回、再計算される
ことを特徴とする、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法。
【請求項18】
請求項1から17のうちいずれか1項に記載の、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法において、
前記検出した呼吸信号の評価ステップには、前記検出した呼吸信号内の局所極値を求め、および/または前記検出した呼吸信号内の1サイクル時間を求め、および/または前記検出した呼吸信号内にある複数のサイクル時間の中央値もしくは平均値もしくは統計値を求めるプロセスが含まれる
ことを特徴とする、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法。
【請求項19】
請求項1から18のうちいずれか1項に記載の、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法において、
前記算出したパラメータを用いて前記測定データ取得トリガ用に充足すべきトリガ条件が、前記呼吸する検査対象の呼気相内に前記実際の検出した呼吸信号があること、および/または前記実際の検出した呼吸信号が所定の許容範囲内にあること、および/または最後の測定データ取得トリガ以降に前記算出したパラメータを用いて統計的に求めた前記呼吸サイクル時間に依存してその長さが選択される少なくとも1つの時間インターバルが経過すること、のうちの少なくともいずれか一つである
ことを特徴とする、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法。
【請求項20】
請求項1から19のうちいずれか1項に記載の、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法において、
前記検出した生理的呼吸信号を、一連のデータ点の集合として記憶するステップをさらに含んでおり、
かつ前記データ点の集合として記憶されるべきか否かを判定するための条件が、予め定められていて、当該条件に適合するもののみを記憶する
ことを特徴とする、呼吸する検査対象の測定データを磁気共鳴技術によって取得するための方法。
【請求項21】
請求項1から15のうちいずれか1項に記載の方法を演算ユニットにて実施する際に用いられる、磁気共鳴機器に結合された前記演算ユニットによって前記方法を処理するための、コンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−110433(P2011−110433A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265477(P2010−265477)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】