説明

呼吸モニタ及び監視方法

呼吸モニタが、呼吸関連の運動を示す呼吸関連運動監視信号72を生成するように構成される第1のセンサ20、70と呼吸関連の音を示すサウンド監視信号84を生成するよう構成される第2のセンサ20、22、80、82と、呼吸関連運動監視信号及び呼吸関連サウンド監視信号に基づき、呼吸モニタ信号46を合成するよう構成される信号シンセサイザ90とを有する。呼吸監視に用いられるセンサは、加速度計30と、呼吸する被験者の呼吸関連の運動に応じてユニットとして移動するよう、上記呼吸する被験者10に取付けられるよう構成される一体的センサ20を共に規定する磁力計32とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、医療分野、情報分野及び関連技術に関する。本願は、患者、実験室被験者等の呼吸監視において適用される。
【背景技術】
【0002】
呼吸は、重要な生理的処理であり、呼吸監視は、多数の用途を持つ。例えば、患者の状態悪化の早期発見;呼吸に敏感である医療撮像、他の医療処置、検査等に関する呼吸ゲート制御信号を与えること;被験者が覚醒又は睡眠しているときを検出すること;呼吸不全の即時的検出等に使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
いくつかの呼吸モニタ及び監視方法は、胸部運動を検出するために加速度計を使用する。胸部運動により生じる地球の重力場に対する個別のセンサ方向の逸脱を測定することにより、加速度計は、間接的に胸部運動を検出する。結果として、被験者のいくつかの位置では、加速度計は、胸部運動をわずかにだけ検出することができるか、又は全く検出することができない。斯かるセンサは、呼吸に無関係な被験者運動が原因のアーチファクトに対しても影響されやすい。
【0004】
他の呼吸モニタ及び監視方法は、呼吸音を検出するために、圧電センサを使用する。これらのセンサでの問題は、浅い呼吸に関しては音の生成が小さいため、これらのセンサが浅い呼吸に対して低い感度を持つということである。
【0005】
本願は、上述した問題その他を克服する新しい及び改良型の呼吸モニタ及び監視方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの開示された側面によれば、呼吸モニタが開示される。このモニタは、呼吸関連の運動を示す呼吸関連運動監視信号を生成するよう構成される第1のセンサと、呼吸関連の音を示すサウンド監視信号を生成するよう構成される第2のセンサと、上記呼吸関連運動監視信号及び上記呼吸関連サウンド監視信号に基づき、呼吸モニタ信号を合成するよう構成される信号シンセサイザとを有する。
【0007】
別の開示された側面によれば、呼吸監視方法が開示される。この方法は、呼吸する被験者の呼吸関連の運動を示す呼吸関連運動監視信号を取得するステップと、上記呼吸する被験者により生成される呼吸関連の音を示すサウンド監視信号を取得するステップと、上記呼吸関連運動監視信号及び上記呼吸関連サウンド監視信号に基づき、呼吸モニタ信号を合成するステップとを有する。
【0008】
別の開示された側面によれば、呼吸監視に用いられるセンサが開示される。このセンサは、加速度計と、呼吸する被験者の呼吸関連の運動に応じてユニットとして移動するよう、上記呼吸する被験者に取付けられるよう構成される一体的センサを共に規定する磁力計とを有する。
【0009】
1つの利点は、運動に対して改良された堅牢性を持つ又は監視される被験者の位置が変化される呼吸監視方法及び呼吸モニタを提供することにある。
【0010】
別の利点は、異なる呼吸モードの改良された監視を用いる呼吸監視方法及び呼吸モニタを提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】呼吸モニタにより監視される被験者を図式的に示す図である。
【図2】呼吸モニタ用に構成されるモノリシック的に一体化された加速度計及び磁力計の実施形態を図式的に示す図である。
【図3】図1の呼吸モニタにより実行される呼吸監視処理により生成される選択された信号の時間の関数としてのプロットを図式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の更に追加的な利点は、以下の詳細な説明を読み及び理解することにより当業者に認識されるだろう。
【0013】
図1を参照すると、被験者10が、支持部12上にある。図示された被験者10は、人間の被験者である。しかしながら、動物の被験者も想定される。支持部12は、被験者10が横になるテーブル又は他の一般に平坦な表面である。しかしながら、椅子といった他の支持部も想定され、更に、被験者は立っている、水に浮いているとすることができ、又は支持部にいないとすることもできる。
【0014】
被験者10は、例えば吸息及び呼息に伴う胸部運動といった少なくとも呼吸に関連する運動を示すセンサ信号を出力するセンサ20により監視される。オプションで、センサ20により出力されるセンサ信号は、例えば上部気道における呼吸に関連する乱気流により生成される音といった呼吸関連の音を示すこともできる。他の実施形態では、呼吸関連の音は、監視されないか、又はオプションの別々のセンサ22により監視される。
【0015】
説明的な例として、いくつかの実施形態において、センサ20は、加速度計、ジャイロスコープ、傾斜センサ又は磁力計からなるグループから選択される少なくとも1つのセンサを含み、オプションの追加的なセンサ22は、加速度計、マイク、水中聴音器、圧電トランスデューサ及び振動トランスデューサからなるグループから選択される少なくとも1つのセンサを含む。例えば加速度計といったいくつかのセンサは、呼吸に関連する運動及び呼吸に関連する音の両方に対する感度を提供する。呼吸関連の音を検出することを目的とするセンサに関しては、センサが被験者10ののど上に又はその近くに配置されることが有利である。しかしながら、図示されるセンサ22の様に、胸部に取り付けられるセンサが適切な場合もある。呼吸関連の運動を検出することを目的とするセンサに関しては、呼吸サイクルと共に移動する胸部、のど又は他の領域上の位置が、有利である。
【0016】
引き続き図1を参照しつつ図2を簡単に参照すると、センサ20の1つの有利な実施形態は、呼吸する被験者10の呼吸関連の運動に応じてユニットとして移動するよう、呼吸する被験者10に取付けられるよう構成される一体的センサ20を共に規定する加速度計30及び磁力計32である。この取り付けは、粘着剤又は接着剤を介して、被験者10に対してセンサ20を保持する一片の粘着テープを介して、被験者10の胸部周りで包まれるストラップを介して等とすることができる。図2に図式的に示されるように、斯かるセンサは、共通の基板上に加速度計30及び磁力計32をモノリシック的に一体化することにより構築されることができる。1つの適切な実施形態において、加速度計30及び磁力計32は共に、共通のシリコン基板34上に作られる。ここで、加速度計30は、微小電気機械システム(MEMS)により実現され、磁力計32は、ホール効果センサとして実現される。両方が共通の基板34上に作られることにより、加速度計30及び磁力計32は、呼吸に関連する運動に応じてユニットとして一緒に移動し、呼吸に関連する音に応じてユニットとして一緒に振動する。
【0017】
センサ20として加速度計30及び磁力計32の組合せを使用する利点は、各センサ単独での方向依存性に起因する。加速度計30は、重力の加速度

を検出し、呼吸関連の運動が検出される。なぜなら加速度計は、重力の加速度ベクトル

に対する個別の加速度計30の方向における変化を一般にもたらすからである。加速度計30は、一定の加速度Gとして重力

を測定する。しかしながら、Gは、A=Gcos(φ)という関係に基づき、重力ベクトル

の角度に対する加速度計30の角度(φ)に依存する。ここで、Aは、加速度計30により測定される加速度であり、Gは、重力ベクトル

の大きさである。例えば呼吸が原因による胸部運動といった呼吸関連の運動は、加速度計30の方向φのゆっくりした及び一般に周期的な変化を引き起こす。これは、測定される加速度Aがゆっくり変化することを生じさせる。
【0018】
しかしながら、被験者10の位置及び被験者10におけるセンサ20の取付けの位置に基づき、呼吸関連の運動は、加速度計30の方向φにおける変化を引き起こさない方向に存在することができるか、又は加速度計30の方向φにおけるわずかな変化を引き起こす方向に存在することができる。斯かる場合において、呼吸関連の運動に対して、加速度計30は、全く又はほとんど感度を持たない。
【0019】
磁力計32を更に含めることは、加速度計30のこの指向性が補償されることを可能にする。磁力計32は、地磁場ベクトル

に対する、個別の磁力計32の方向(又は、より一般に、一体的センサ20の方向)に関して感度が良い。地磁場ベクトル

の方向は、地球の表面上の位置と共に変化するが、(可能性として北又は南磁極の近くを除けば)重力ベクトル

に対して、常に一般に横断方向にある。加速度計30により出力される加速度計信号及び磁力計32により出力される磁力計信号の適切な処理は、一体的センサ20の方向に関係なく有効である呼吸関連の運動を示すセンサ信号の生成を可能にする。
【0020】
図1及び2を引き続き参照すると、呼吸モニタは更に、1つ又は複数のセンサ20、22から信号を受信し、そこから呼吸モニタ信号を計算するよう構成される1つ又は複数の処理要素を含む。図1の実施形態において、斯かる1つ又は複数の処理要素は、個別のワイヤ又はケーブル40、42により1つ又は複数のセンサ20、22と動作可能に接続されるコンピュータ38として実現される。代替的に、無線周波数リンク又は赤外線リンクといった無線接続も想定される。コンピュータ38は、プロセッサ、例えばランダムアクセスメモリ(RAM)といったメモリ、磁気ストレージ、光学ストレージ等、呼吸監視処理44を実現するよう構成されるプロセッサにより実行可能なソフトウェア(メモリ、ストレージ、及びプロセッサ要素は個別には示されない)を含む。呼吸監視処理は、1つ又は複数のセンサ20、22から受信されるセンサ信号を、呼吸監視ユーザインタフェース48(例えばコンピュータ38のディスプレイ50)を介して出力され、データストレージ52(例えばコンピュータ38の磁気又は光学ストレージ媒体)に格納され、又は他の態様で利用されることができる呼吸監視信号46へと変換するものである。図1は、コンピュータ38により実現される処理方法44の全体を示す。追加的に又は代替的に、図2に示されるように、一部又は全部の処理は、加速度計20及び磁力計22と共に基板34上に形成される回路として実現される信号プロセッサ54により実現されることができるか、又は、例えば専用の呼吸モニタ読み出しユニット(図示省略)として、若しくは専用の多目的患者モニタ(図示省略)としてといった他の態様で実現されることができる。
【0021】
図1を参照すると、説明的な呼吸監視処理44は、加速度計信号60及び磁力計信号62を入力として磁力計32から受信する。プリプロセッサ64又は他の信号プロセッサは、加速度計30により出力される加速度計信号60及び磁力計32により出力される磁力計信号62に基づきセンサ信号S(t)66を生成する。センサ信号S(t)66を生成するためのいくつかの適切な手法が、以下に記載される。
【0022】
一体的センサ20の方向又は姿勢は、重力ベクトル

及び地磁場ベクトル

の方向により規定される基準フレームに対して、3つの自由度(DOF)を持つ。センサ20のDOF方向は、地球に固定された基準座標フレームに対して表されることができる。この目的のため、センサ20は、3つの直交軸線を持つ、体に固定された座標フレームとして見られることができる。体座標フレームのx、y及びz軸が、ベクトル

により規定される基準座標フレームの対応する軸に対して並んでいる場合、センサ20が、基準姿勢をとったと言われる。
【0023】
1つの適切な処理手法は、任意の3DOF姿勢が、垂直な軸に関する3つの連続した回転の結果として見られることができるという認識に基づかれる。対応する3つの角度は、オイラー角度として知られ、体に固定又は地球に固定されることができる軸に対して規定され、異なるオーダで配置される(回転は、非交換型の処理である;言い換えると、連続した回転が実行されるオーダは、最終的な方向に影響を及ぼす)。航空業界において一般に使用される1つの既知のオイラー角度の慣例は、ロール−ピッチ−ヨーである。対応する軸は、体に固定される。ここで、ロール軸は、飛行機のノーズ−テール軸であり、ピッチ軸は、翼端から翼端まで延び、ヨー軸は、トップからボトムまで延びる。
【0024】
別の適切な処理手法は、姿勢行列に基づかれる。この行列は、回転行列又は方向コサイン行列とも呼ばれている。これは、3x3行列である。この行列において、個別の列はそれぞれ、基準座標システムに関して、体座標システムの対応する基底ベクトルの方向を与える。行列表現は、計算にとって便利である。第1の姿勢から体を回転させることにより実現される第2の姿勢に対応する行列は、第1の姿勢行列と回転行列との乗算により表されることができる。
【0025】
別の適切な処理手法は、軸−角度手法である。ここで、任意の姿勢は、特定の軸の周りでの特定の角度を介する(基準姿勢から始まる)一回の回転の結果であると考えられる。回転軸の方向は、3つの自由のうちの2つを覆う。一方、回転角度が、残りの1つである。
【0026】
別の適切な処理手法は、4元法手法である。これは、冗長度が1である。結果として、4元法手法は、純粋な回転を表すために、容易に再スケール化される。
【0027】
呼吸関連の運動から生じるセンサ20の方向変化は、選択された軸の周りの前後の小さな回転として考えられることができる。回転角度は通常、2、3度以下である。回転軸の方向は一般に、演繹的に知られるものではない。信号60、62の処理は、時間の関数として一体的センサ20の姿勢を決定し、呼吸が原因による方向変化は、関係

に基づき、瞬間的な姿勢及び時間平均化されたバージョンの姿勢から計算されることができる。ここで、

は、瞬間的な姿勢行列であり(上付きの

は、それが基準座標フレームに関して表されることを示す)、

は、時間平均化された姿勢の行列であり、及び

は、呼吸関連の運動が原因による方向変化である。上付きの

は、転置演算子を表す。これは、ユニタリ行列(回転行列を含むクラス)に関しては逆演算子と同じである。時間平均化された姿勢の行列は、姿勢行列の時間平均ではない。姿勢行列の係数の時間平均化は、もはや純粋な回転行列でない行列をもたらす。回転行列は、ユニタリ行列である。これは、その列が単位長を持ち、相互に直交することを意味する(これは、冗長度6をもたらす)。
【0028】
時間平均化された姿勢の行列を確立するため、姿勢行列の時間平均が、直交化される。ある実施形態において、グラム−シュミット正規直交化法といった標準的な数値処理が使用される。時間平均化された姿勢の行列を得るための別の手法は、例えば3列にわたりとられる平方二乗平均ベクトル差といった適切なエラー基準の最小又は低減された値に姿勢行列の時間平均を整合させるよう、(連続した補正回転を回転行列に適用することにより)回転行列を反復的に最適化することである。時間平均化された姿勢の行列を得るための別の手法において、磁気及び重力場ベクトル

が、時間平均化され、時間平均化された姿勢は、時間平均化された場ベクトルから決定される。この手法は、瞬間的な姿勢が瞬間的な場ベクトルから決定される方法に類似する。例えばWO/2006117731A1号を参照されたい。
【0029】
更に別の説明的な手法は、4元法表現と連動して適切に使用される。4元法の冗長度はわずか1であるので、時間平均化された4元法係数から時間平均化された姿勢の4元法への移行は直接的である。冗長度は、4つの4元法係数の平方二乗平均和(即ち、4元法長)が1であるという条件により表される。こうして、時間平均化された姿勢

の4元法は、時間平均化された4元法

をその長さで割ることにより見つけられることができ、

となる。呼吸関連の運動が原因による方向変化に対応する4元法

は、

から見つけられる。ここで、

は、瞬間的な姿勢を表す4元法であり、

は、4元法積演算子であり、

は、共役演算子である(単位長の4元法に関して、これは、逆演算子を置換することができる)。
【0030】
これらの手法は、呼吸関連の運動が原因による方向変化を得ることを解決する。この方向変化は、3DOFの回転である。呼吸検出に対して、例えば呼吸関連の運動が原因による瞬間的な回転角度を与えるセンサ信号S(t)といった一つの信号を持つことが望ましい。方向変化の回転軸は、あまり重要ではない。回転角度を得ることは形式的に、行列又は4元法表現から軸−角度表現へと方向変化を変換することを含む。しかしながら、方向変化は比較的小さい(通常は2、3度以下)であるので、最後の3つの4元法要素の平方二乗平均和を取ることができる(これは、回転角度の半分の正弦に等しい)。4元法表現の特性は、任意の4元法

及びその補数

(係数の否定)が同じ回転を表すということである。これは、連続したサンプリング瞬間にわたり4元法の不連続性を生じさせることができる。これらの不連続性を回避するため、4元法の符号を適切に変化させることができる。即ち、4元法

の第1の要素が負である場合、

とすることができる。そうでない場合、

とすることができる。こうして得られる信号は、その平均方向に対するセンサ20の瞬間的な回転角度を表わす。呼吸関連の運動に関しては、時間の関数として多かれ少なかれ周期的角度が予想される。
【0031】
図1を引き続き参照すると、加速度計及び磁力計要素を含む説明的なセンサ20に関して、センサ信号S(t)66は、呼吸関連の運動及び呼吸関連の音を示す。これは、加速度計だけを使用するセンサに関して、又は磁力計だけを使用するセンサにもあてはまる。従って、呼吸関連の運動及び呼吸関連の音を示すセンサ信号S(t)66が、呼吸関連の運動を示す低周波信号及び呼吸関連の音を示す高周波信号に分解されることができることが本書において理解される。
【0032】
呼吸関連の運動を示す低周波信号は、呼吸関連の運動を示す低周波信号Slow(t)72を抽出するための第1のフィルタ70を用いてセンサ信号S(t)66を処理することにより、適切に抽出される。典型的な人間の被験者に対して、呼吸関連の運動の周波数は通常、約0.1Hz〜約2Hzの範囲にある。例えば、人間の大人に関しては、1分につき約12回の呼吸が典型的である。これは0.2Hzの周波数に対応する。呼吸関連の運動の周波数は、いくつかの成人被験者に対して、幼児又は高齢者の被験者に対して、動物の被験者に対して等にとっては、この範囲外にある場合がある。第1のフィルタ70の1つの適切な実施形態において、センサ信号S(t)66は、0.4秒の幅を持つ三角形の移動平均ウィンドウによりフィルタリングされる。他の低域通過又は帯域フィルタが、使用されることもできる。例えば、第1のフィルタ70は、呼吸関連の運動の周波数を選択するため、高速フーリエ変換(FFT)及び適切なスペクトル・ウィンドウ化により実現されることもできる。
【0033】
呼吸関連の音を示す高周波信号は、呼吸関連の音を示す高周波信号Shigh(t)84を抽出するため、第2のフィルタ80を用いて、続いてオプションでエンベロープフィルタ又はエンベロープ抽出器82を用いて、センサ信号S(t)66を処理することにより適切に抽出される。第2のフィルタ80のいくつかの実施形態において、センサ信号S(t)66は、バターワース有限インパルス応答(FIR)フィルタを用いて帯域通過フィルタリングされる。これは、下位の帯域通過限界として約60Hz〜80Hzを持ち、上位の帯域通過限界として約1000Hz〜1100Hzを持つ。いくつかの斯かる実施形態において、バターワースFIRフィルタは、阻止帯域において約60dB及び通過帯域において約1dBの減衰を持つ。他の実施形態では、第2のフィルタ80は、呼吸関連の音の周波数を選択するため、FFT(オプションで、第1のフィルタ70において使用されたのと同じFFT)及び適切なスペクトル・ウィンドウ化により実現されることができる。エンベロープフィルタ又はエンベロープ抽出器82の1つの適切な実施形態において、第2のフィルタ80によるフィルタリング後、センサ信号S(t)66が二乗され、0.1秒の幅を持つ三角形の移動するウィンドウが、高周波信号Shigh(t)84を抽出するために適用される。例えばピーク検出器ベースのエンベロープフィルタといった他のエンベロープフィルタ又は抽出器が使用されることもできる。
【0034】
図1を引き続き参照しつつ、更に図3を参照すると、信号シンセサイザ90は、呼吸関連の運動を示す低周波信号Slow(t)72及び呼吸関連の音を示す高周波信号Shigh(t)84から呼吸モニタ信号46を合成する。浅い呼吸では、呼吸関連の運動は通常は検出可能であるが、呼吸関連の音は、検出するにはあまりに弱い場合がある。この場合、信号シンセサイザ90は、呼吸モニタ信号46として、選択された信号処理によりオプションで処理される、呼吸関連の運動を示す低周波信号Slow(t)72だけを適切に使用する。他方、図3は、深い呼吸に関する信号を説明する。これは、センサ信号S(t)66(センサとして加速度計を用いる)、呼吸関連の運動を示す低周波信号Slow(t)72、第2のフィルタ80による処理の後のセンサ信号S(t)66、及び呼吸関連の音を示す高周波信号Shigh(t)84を含む。ここで、呼吸関連の運動を示す低周波信号Slow(t)72及び呼吸関連の音を示す高い周波数信号Shigh(t)84は共に、呼吸を表す周期性を示す。気流は、吸気及び呼気時の音をもたらす。従って、音信号、即ち高周波信号Shigh(t)84のエンベロープは、図3において垂直のラインにより示されるように、呼吸関連の運動を示す低周波信号Slow(t)72の呼吸関連の周期性の周波数の2倍で呼吸関連の周期性を持つ。図3の例において、2つの信号72、82は、実質的に同相である。しかしながら、詳細な信号処理に基づき、これらの信号の間に位相シフトがあるようにすることができる。
【0035】
信号シンセサイザ90は、様々な方法で呼吸モニタ信号46を合成することができる。いくつかの実施形態において、呼吸モニタ信号46は、呼吸期を示す呼吸レート値を出力する。この手法に関して、低周波信号Slow(t)72及び高周波信号Shigh(t)84は、呼吸レートを特定するため、FFTによりそれぞれ適切に処理され、より強い信号から得られる呼吸レート値を考慮して、合成は2つの値を平均化することを伴う等とすることができる。別の手法は、Slow(t)72及びShigh(t)84の相互相関を計算し、この相互相関の周期性を決定することである。
【0036】
他の実施形態では、呼吸モニタ信号46は、相互相関又は他の結合的手法を用いて低周波信号Slow(t)72及び高周波信号Shigh(t)84を結合することにより構築される、又は、選択された時間間隔にわたりより強い信号を選択することにより構築される、又は選択された時間間隔にわたり約0.1〜2.0Hzの呼吸範囲において最大の周波数要素を持つ信号を選択することにより構築される等の連続的な信号である。別の手法では、信号Slow(t)72及びShigh(t)84が共に、コンピュータ38のディスプレイ50上に表示されることができる。その結果、医師又は他の医療関係者は、最も強い呼吸関連の特徴を視覚的に提供する信号72、82をどちらでも利用することができる。
【0037】
呼吸信号又は呼吸レートを視覚的に追跡する代わりに、又はそれに加えて、呼吸監視ユーザインタフェース48は、警報を含むこともできる。例えば、呼吸レートは、両方の信号72、82から得られることができ、両方の信号でだけ鳴る警報は、致命的な特徴(例えば、呼吸関連の特徴が低い又は存在しないこと)を表す。
【0038】
図1において説明される呼吸監視処理44は、1つのセンサ20から取得される1つのセンサ信号S(t)66を使用する。他の実施形態では、複数のセンサ20、22が使用されることができる。例えば、センサ20は、呼吸関連の運動を示す低周波信号Slow(t)72を得るため、第1のフィルタ70に対する入力として機能することができ、別々のセンサ22は、呼吸関連の音を示す高周波信号Shigh(t)84を得るため、第2のフィルタ80に対する入力として機能することができる。斯かる実施形態において、各センサ20、22は、その個別の作業を効果的に実行するために適切に選択される。例えば、センサ20は、図示される協調する加速度計30及び磁力計32として選択されることができるか、又は、3軸加速度計(即ち、方向独立性を提供するために3つの直交する空間方向における加速度を監視するよう構成される3つの加速度計)等として選択されることができる。一方、センサ22は、呼吸関連の音を測定するよう構成される圧電素子として選択されることができる。
【0039】
本発明が、好ましい実施形態を参照して説明されてきた。上記の詳細な説明を読み及び理解すると、第三者は、修正及び変更を思いつくことができる。それらの修正及び変更が添付の特許請求の範囲又はその均等物の範囲内にある限り、本発明は、すべての斯かる修正及び変更を含むものとして構築されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸モニタであって、
呼吸関連の運動を示す呼吸関連運動監視信号を生成するように構成される第1のセンサと、
呼吸関連の音を示すサウンド監視信号を生成するよう構成される第2のセンサと、
前記呼吸関連運動監視信号及び前記呼吸関連サウンド監視信号に基づき、呼吸モニタ信号を合成するよう構成される信号シンセサイザとを有する、呼吸モニタ。
【請求項2】
前記第1のセンサ及び前記第2のセンサが、
呼吸関連の運動及び呼吸関連の音を示すセンサ信号を生成するよう構成されるセンサと、
呼吸関連の運動の周波数を含む低周波信号を前記センサ信号から抽出するよう構成される第1のフィルタであって、前記呼吸関連運動監視信号が、前記低周波信号に基づかれる、第1のフィルタと、
呼吸関連の音の周波数を含む高周波信号を前記センサ信号から抽出するよう構成される第2のフィルタであって、前記呼吸関連のサウンド監視信号が、前記高周波信号に基づかれる、第2のフィルタとを有する、請求項1に記載の呼吸モニタ。
【請求項3】
前記第2のセンサが更に、前記高周波信号のエンベロープに対応するエンベロープ信号を生成するよう構成されるエンベロープフィルタ又は抽出器を有し、
前記呼吸関連のサウンド監視信号が、前記エンベロープ信号に基づかれる、請求項2に記載の呼吸モニタ。
【請求項4】
前記センサが、呼吸する被験者に取付けられるよう構成される少なくとも1つの加速度計を有する、請求項2に記載の呼吸モニタ。
【請求項5】
前記少なくとも1つの加速度計が、1つの加速度計であり、
前記センサは更に、
前記加速度計及び前記磁力計が共通の方向を持つよう、前記加速度計に結合される磁力計と、
前記加速度計により出力される加速度計信号及び前記磁力計により出力される磁力計信号に基づき、前記センサ信号を生成するよう構成される信号プロセッサとを有する、請求項4に記載の呼吸モニタ。
【請求項6】
前記加速度計及び前記磁力計が、共通の基板上にモノリシック的に一体化される、請求項5に記載の呼吸モニタ。
【請求項7】
前記第1のセンサが、
加速度計と、
呼吸関連の運動に応じて前記加速度計と共に移動するよう構成される磁力計と、
前記加速度計により出力される加速度計信号及び前記磁力計により出力される磁力計信号に基づき、前記呼吸関連運動監視信号を生成するよう構成される信号プロセッサとを有する、請求項1に記載の呼吸モニタ。
【請求項8】
前記第1のセンサが、少なくとも1つの加速度計を有する、請求項1に記載の呼吸モニタ。
【請求項9】
前記第1のセンサが、加速度計、ジャイロスコープ、傾斜センサ及び磁力計からなるグループから選択される少なくとも1つのセンサを含み、
前記第2のセンサは、加速度計、マイク、水中聴音器、圧電トランスデューサ及び振動トランスデューサからなるグループから選択される少なくとも1つのセンサを含む、請求項1に記載の呼吸モニタ。
【請求項10】
呼吸監視方法において、
呼吸する被験者の呼吸関連の運動を示す呼吸関連運動監視信号を取得するステップと、
前記呼吸する被験者により生成される呼吸関連の音を示すサウンド監視信号を取得するステップと、
前記呼吸関連運動監視信号及び前記呼吸関連サウンド監視信号に基づき、呼吸モニタ信号を合成するステップとを有する、呼吸監視方法。
【請求項11】
前記取得ステップが、
呼吸関連の運動及び呼吸関連の音を示すセンサ信号を取得するステップと、
呼吸関連の運動の周波数を含む前記センサ信号の周波数要素から前記呼吸関連運動監視信号を得るステップと、
呼吸関連の音の周波数を含む前記センサ信号の周波数要素から前記呼吸関連サウンド監視信号を得るステップとを有する、請求項10に記載の呼吸監視方法。
【請求項12】
前記呼吸関連のサウンド監視信号を得るステップが、
呼吸関連の音の周波数を含むフィルタリングされた信号を生成するため、前記センサ信号をフィルタリングするステップと、
前記フィルタリングされた信号のエンベロープを抽出するステップとを有する、請求項11に記載の呼吸監視方法。
【請求項13】
前記前記センサ信号を取得するステップが、加速度計信号を取得するステップを有する、請求項11に記載の呼吸監視方法。
【請求項14】
呼吸監視に用いられるセンサであって、
加速度計と、
呼吸する被験者の呼吸関連の運動に応じてユニットとして移動するよう、前記呼吸する被験者に取付けられるよう構成される一体的センサを、前記加速度計と共に規定する磁力計とを有する、センサ。
【請求項15】
前記加速度計により出力される加速度計信号及び前記磁力計により出力される磁力計信号に基づき、呼吸関連の信号を生成するよう構成される信号プロセッサを更に有する、請求項14に記載のセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−520495(P2011−520495A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509045(P2011−509045)
【出願日】平成21年5月4日(2009.5.4)
【国際出願番号】PCT/IB2009/051823
【国際公開番号】WO2009/138896
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】