呼吸リズム管理を用いた神経刺激
システムの実施形態は、少なくとも1つの呼吸センサと、神経刺激療法送達モジュールと、コントローラと、を備える。呼吸センサは、患者の呼吸を監視する際に使用するために適合される。神経刺激療法送達モジュールは、慢性的神経刺激療法のために、患者の自律神経標的を刺激する際に使用するための神経刺激信号を生成するように適合される。コントローラは、患者の呼吸を示す少なくとも1つの呼吸センサから呼吸信号を受信するように適合され、呼吸信号を使用して得られる呼吸変動測定値を使用して、神経刺激療法送達モジュールを制御するように適合される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年6月25日に出願された米国特許出願第11/767,901号に対する優先権の利益を主張するものであり、該米国特許出願は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
本願は、概して、医療デバイスに関し、より具体的には、神経刺激を送達するためのシステム、デバイス、および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
自律神経系は、心臓機能および血液動態性能等の種々の生理機能を変調するように刺激されている。心筋は、交感神経および副交感神経で神経支配される。人工的に印加された電気刺激を含む、これらの神経における活性は、心拍および収縮性(心筋収縮の強度)を変調する。副交感神経応答を誘発する神経刺激(例えば、迷走神経の心臓枝等の副交感神経標的における神経連絡を刺激する、および/または交感神経標的における神経連絡を抑制する)は、心拍および収縮性を減少させて、心周期の収縮期を延長し、心周期の拡張期を短縮することが知られている。副交感神経応答を誘発する神経刺激(例えば、交感神経標的における神経連絡を刺激する、および/または副交感神経標的における神経連絡を抑制する)は、本質的に、反対の効果を有することが知られている。心拍および収縮性を変調する際の自律神経の電気刺激の能力は、心不全患者の血行動態性能を改善するために、および心筋梗塞後に心筋リモデリングを制御し、不整脈を予防するために等、異常な心臓の状態を治療するために使用されてもよい。自律神経系は、身体の多くの器官の機能を調整する。迷走神経は、脳幹の呼吸中枢内に絡む多くの肺、気管支、および気管求心性を含むため、迷走神経刺激は、例えば、呼吸に影響を及ぼす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、呼吸を監視し、神経刺激療法の有効性を向上させ、および/または神経刺激療法の副作用を低減または回避するためのシステム、デバイス、方法に関する。睡眠または休息時の呼吸変化、顕著な迷走/副交感神経活性および安定した呼吸を伴う状態は、神経刺激療法を滴定するために使用される。種々の実施形態は、自律神経標的(例えば、迷走神経刺激)の刺激を制御するためのフィードバックとして、睡眠または休息時の呼吸の安定性または不安定性の測定値を使用する。種々の実施形態は、呼吸の安定性または不安定性の指標として、呼吸数(respiratory rate)等の呼吸パラメータの変動の測定値を使用する。呼吸変動の低下は、改善の徴候であり、呼吸変動の上昇は、疾患の進行の徴候である。
【0005】
システムの実施形態は、少なくとも1つの呼吸センサと、神経刺激療法送達モジュールと、コントローラと、を備える。呼吸センサは、患者の呼吸を監視する際に使用するために適合される。神経刺激療法送達モジュールは、慢性的神経刺激療法のために、患者の自律神経標的を刺激する際に使用するための神経刺激信号を生成するように適合される。コントローラは、患者の呼吸を示す少なくとも1つの呼吸センサから呼吸信号を受信するように適合され、呼吸信号を使用して得られる呼吸変動測定値を使用して、神経刺激療法送達モジュールを制御するように適合される。
【0006】
方法の実施形態によると、慢性的神経刺激療法が送達される。療法は、自律神経標的に対する刺激を含む。呼吸は、低活性期間中に監視される。呼吸変動は、監視された呼吸を使用して判定される。自律神経標的に対する刺激の強度は、少なくとも1つの所定の閾値との呼吸変動の比較を使用して調節される。
【0007】
本概要は、本願の教示の一部の概説であり、本主題の排他的または包括的扱いとなることを意図するものではない。本主題についてのさらなる詳細は、詳細な説明および添付の請求項に見られる。他の側面は、以下の詳細な説明を熟読および理解し、その一部を形成する図面を参照することによって、当業者に明白となるであろう(それぞれ、限定的意味でとらえられるものではない)。本発明の範囲は、添付の請求項およびそれらの同等物によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、呼吸リズムフィードバックを用いた神経刺激を送達するための方法の実施形態を示す。
【図2】図2は、療法を滴定し、所定の望ましくない副作用を回避するための呼吸リズムフィードバックを用いた神経刺激を送達するための方法の実施形態を示す。
【図3】図3は、種々の実施形態による、呼吸変動管理を用いた神経刺激システムを示す。
【図4】図4は、種々の実施形態による、呼吸変動管理を用いた神経刺激システムを示す。
【図5】図5は、呼吸数(RRV)足跡(footprint)および関連指数を使用して、神経刺激療法を管理するためのシステムの実施形態を示す。
【図6】図6は、RRV足跡に関連する着目領域のマッピングを示す。
【図7】図7Aは、正常対象のRRV足跡を示す。図7Bは、安定心不全患者のRRV足跡を示す。
【図8】図8Aは、入院時の入院心不全患者のRRV足跡を示す。図8Bは、退院時の同心不全患者のRRV足跡を示し、患者の改善された心不全状態を示唆する。
【図9】図9は、安定心不全患者のRRV足跡に隣接する正常患者のRRV足跡を示す。
【図10】図10は、入院前後の同心不全患者のRRV足跡を示し、入院後の患者の心不全状態の全般的改善を証明する。
【図11】図11は、RRVを判定し、関連指数とともにその足跡を生成するための方法の実施形態を示す。
【図12】図12は、RRVを判定し、関連指数とともにその足跡を生成するための方法の実施形態を示す。
【図13】図13は、RRVを判定し、関連指数とともにその足跡を生成するための方法の実施形態を示す。
【図14】図14は、種々の実施形態による、関連指数を用いたRRV足跡に基づいて行なわれ得る種々の操作を示す、ブロック図である。
【図15】図15は、呼吸サイクル長、吸気期間、呼気期間、非呼吸期間、および換気量を含む、呼吸パラメータを示す、呼吸信号の図である。
【図16】図16は、呼吸器疾患反応性神経刺激システムの実施形態を示す、ブロック図である。
【図17】図17は、呼吸器疾患反応性神経刺激システムの実施形態を示す、ブロック図である。
【図18】図18は、呼吸器疾患に応答して、神経刺激を調節するための方法の実施形態を示す、フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本主題の以下の詳細な説明は、本主題が実践され得る特定の側面および実施形態を示す、添付の図面を参照する。これらの実施形態は、当業者が本主題を実践可能なように、十分詳細に説明される。他の実施形態が利用されてもよく、構造、論理、および電気的変更が、本主題の範囲から逸脱することなく、成されてもよい。本開示における「ある」、「一」、または「種々の」実施形態という言及は、必ずしも、同一実施形態に対するものではなく、そのような言及は、2つ以上の実施形態を想定するものである。したがって、以下の詳細な説明は、限定的意味でとらえられるものではなく、その範囲は、添付の請求項とともに、そのような請求項が享受できる同等物の全範囲によってのみ定義される。
【0010】
種々の実施形態は、自律神経標的(例えば、迷走神経刺激)の刺激を制御するためのフィードバックとして、呼吸の安定性または不安定性の測定値を使用する。種々の実施形態は、呼吸の安定性または不安定性の指標として、呼吸パラメータの変動の測定値を使用する。種々の実施形態は、呼吸の安定性または不安定性の指標として、呼吸数変動(RRV)または換気量変動(TVV)を使用する。呼吸(パターンまたは数)の変化は、潜在的療法の有効性または病理過程を反映する。呼吸変動の低下は、改善の徴候であって、呼吸変動の上昇は、疾患の進行の徴候である。例えば、いくつかの実施形態は、睡眠または休息状態時の呼吸パラメータ(例えば、数、換気量、吸気/呼気の比等)の変動の測定値を使用して、慢性的迷走神経療法を調節する。神経刺激強度は、監視された呼吸パラメータの平均を低下させる、または監視された呼吸パラメータの変動を低下させる、あるいは監視された呼吸パラメータの平均および変動の両方を低下させるように調節可能である。種々の実施形態は、呼吸モニタを提供し、迷走神経刺激の有効性を向上させ、および/または呼吸障害等の望ましくない副作用を低減または回避する。本主題は、睡眠および/または休息時(顕著な迷走/副交感神経活性および安定した呼吸を伴う状態)の呼吸変化を監視する。
【0011】
種々の刺激装置実施形態は、患者の呼吸を監視する際に使用するために適合される、少なくとも1つの呼吸センサと、慢性的神経刺激療法のために、患者の自律神経標的を刺激する際に使用するための神経刺激信号を生成するように適合される、神経刺激療法送達モジュールと、患者の呼吸を示す少なくとも1つの呼吸センサから呼吸信号を受信するように適合され、呼吸信号を使用して得られる呼吸変動測定値を使用して、神経刺激療法送達モジュールを制御するように適合される、コントローラと、を含む。種々の実施形態は、呼吸信号を使用して、呼吸変動測定値を判定するように適合される、呼吸変動分析器と、制御信号を送達し、呼吸変動分析器からの呼吸変動測定値を使用して、療法強度を制御するように適合される、滴定検出器と、呼吸変動分析器からの呼吸変動測定値を閾値と比較し、制御信号を送達し、比較に基づいて、療法強度を制御するように適合される、安全性検出器と、を含む。呼吸センサおよびコントローラは、低活性期間中の呼吸を監視するように適合され、コントローラは、低活性期間に対応する呼吸変動測定値を使用して、神経刺激送達モジュールを制御するように適合される。低活性期間は、活性検出器によって検出され得るような睡眠または休息期間であり得る。所定のスケジュールを使用して、低活性期間を予測可能である。
【0012】
種々の実施形態は、自律神経標的に慢性的神経刺激療法を送達する。慢性的という用語は、日、週、月、または年の順番における期間を示す。慢性的療法は、断続的刺激を伴う療法および定期的刺激を伴う療法を含む。呼吸は、低活性期間中、監視され、呼吸変動が判定される。自律神経標的に対する刺激の強度は、療法のための刺激の有効性を示す滴定閾値および/または刺激の望ましくない副作用を示す副作用閾値等、少なくとも1つの所定の閾値との呼吸変動の比較を使用して調節される。種々の実施形態は、特定の療法を対象とする患者を識別するステップと、心不全療法、高血圧症療法、または心筋梗塞後療法等の療法を送達するステップと、を含む。呼吸変動を表す足跡は、足跡の定量的測定値を表す1つ以上の指数とともに生成可能である。指数の実施例は、足跡の特徴、パターン、形状、または等高線を含む。
【0013】
本主題の実施形態は、心不全、心筋梗塞後、および高血圧症等の患者集団のための心臓、腎臓神経変調、および他の治療デバイスを含む。呼吸は、迷走神経刺激の有効性のための初期マーカー(呼吸)、または患者の自律平衡に影響を及ぼす他の療法(心不全、心筋梗塞後、および高血圧症のための療法等)を提供する。また、呼吸を使用して、所定の呼吸障害等の望ましくない副作用を検出可能である。
【0014】
自律神経系(ANS)は、「不随意」器官を調整する一方、随意(骨格)筋の収縮は、体性運動神経によって制御される。不随意器官の実施例は、呼吸および消化器官を含み、また、血管および心臓を含む。多くの場合、ANSは、不随意かつ反射的に機能し、例えば、腺を調整し、皮膚下の筋肉、眼、胃、腸、および膀胱を調整し、心筋および血管周囲の筋肉を調整する。
【0015】
ANSは、交感神経系および副交感神経系を含む。交感神経系は、緊急事態に対するストレスおよび「闘争または逃走反応」と連携している。他の効果の中でも、「闘争または逃走反応」は、血圧および心拍を上昇させ、骨格筋血流を増加させ、消化を減少させ、「闘争または逃走」のためのエネルギーを提供する。副交感神経系は、弛緩および「休息と消化反応」と連携し、他の効果の中でも、血圧および心拍を低下させ、消化を増加させ、エネルギーを保存する。ANSは、正常な内部機能を維持し、体性神経系と連動する。
【0016】
心拍および収縮力は、交感神経系が刺激されると増加し、交感神経系が抑制されると減少する(副交感神経系が刺激される)。求心性神経は、神経中枢に向かってインパルスを伝達する。遠心性神経は、神経中枢から離れるようにインパルスを伝達する。
【0017】
交感および副交感神経系を刺激することによって、心拍および血圧以外の効果を有し得る。例えば、交感神経系を刺激することは、瞳孔を拡張させ、唾液および粘液産生を減少させ、気管支筋を弛緩させ、胃の不随意収縮(蠕動)の連続波および胃の運動性を低下させ、肝臓によるグリコーゲンのグルコースへの変換を増加させ、腎臓による尿分泌を低減させ、膀胱壁を弛緩させ、括約筋を閉鎖させる。副交感神経系を刺激(交感神経系を抑制)することは、瞳孔を収縮させ、唾液および粘液産生を増大させ、気管支筋を収縮させ、胃および大腸内の分泌および運動性を増加させ、小腸の消化を増加させ、尿分泌を増加させ、膀胱壁を収縮し、括約筋を弛緩させる。交感および副交感神経系に関連する機能は多く、互いに複雑に統合され得る。
【0018】
迷走神経の変調を利用して、心不全、心筋梗塞後リモデリング、および高血圧症等、種々の心臓血管疾患を含む、種々の疾患を治療してもよい。これらの病状は、以下に概略される。
【0019】
心不全とは、心臓機能が、末梢組織の代謝要求を満たすための適切なレベルを下回り得る正常以下の心拍出量を生じさせる、臨床的症候群を指す。心不全は、随伴する静脈および肺うっ血によるうっ血性心不全(CHF)として現れる場合がある。心不全は、虚血性心臓疾患等の種々の病因による可能性がある。
【0020】
高血圧症は、心臓疾患および他の関連心臓併存疾患の原因である。高血圧症は、血管が収縮すると生じる。その結果、より高い血圧に血流を維持するために心臓に負担がかかり、心不全に寄与する可能性がある。高血圧症は、概して、心臓血管の損傷または他の悪影響を誘発する可能性のあるレベルへの全身動脈血圧の一過性または持続的上昇等の高血圧に関連する。高血圧症は、適宜、140mmHgを上回る収縮期血圧または90mmHgを上回る拡張期血圧として定義されている。管理不良高血圧症の結果は、網膜血管障害および発作、左室肥大および不全、心筋梗塞、解離性動脈瘤、ならびに腎血管性疾患を含むが、それらに限定されない。
【0021】
心臓リモデリングとは、心筋梗塞(MI)後に生じ得る構造、生化学、神経ホルモン、および電気生理学的要因、または心拍出量の低下の他の原因を伴う、心室の複雑なリモデリングプロセスを指す。心室リモデリングは、心室の拡張期充満圧を上昇させ、それによって、いわゆる、前負荷(すなわち、心室が、拡張期終了時の心室内の血量によって伸張される程度)を増加させる、いわゆる、後方不全によって、心拍出量を増大させるように作用する生理学的代償機構によって誘起される。前負荷の増加は、収縮期の際の拍出量の上昇を生じさせる(フランク・スターリングの法則として知られる現象)。しかしながら、ある期間にわたって、心室が増加した前負荷より伸張されると、心室は、拡張された状態となる。心室容積の拡大は、所与の収縮期圧において、増大した心室壁応力を生じさせる。心室による増大した圧・容積の仕事量に伴って、これは、心室筋の肥大のための刺激として作用する。膨張の不利点は、肥大のための刺激を表す、正常な残存心筋に課される余剰仕事量および壁張力の増加(ラプラスの法則)である。肥大が増大した張力に整合するために不適切である場合、悪循環が結果として起こり、さらなる漸進的膨張を生じさせる。心臓の膨張開始に伴って、求心性圧受容器および心肺受容器信号は、血管運動神経中枢神経系制御中枢に送信され、ホルモン分泌および交感神経放電によって応答する。血液動態、交感神経系、およびホルモン変調(アンギオテンシン変換酵素(ACE)活性の有無等)の組み合わせは、心室リモデリングに伴う細胞構造の有害な変性をもたらす。肥大を生じさせる持続的応力は、心筋細胞のアポトーシス(すなわち、プログラム細胞死)および結果として生ずる壁薄化を誘発し、心臓機能のさらなる悪化を生じさせる。したがって、心室膨張および肥大は、最初は、代償性であって、心拍出量を増大させ得るが、本プロセスは、最終的には、収縮期および拡張期両方の機能障害をもたらす。心室リモデリングの程度は、心筋梗塞後および心不全患者の死亡率の増加との間に正の相関が認められることが示されている。
【0022】
呼吸は、呼吸数、換気量等を使用して定量化または測定可能であるように、特に、睡眠時、正常な人々の間では変動はほとんどなく、非ランダム性を示す。50%を上回る心不全患者は、中枢性睡眠時無呼吸症または周期性呼吸を経験する。呼吸不安定性は、分時換気量と分時二酸化炭素産生(VE/VCO2)の比等によって測定可能であるように、交感神経の上昇ならびに心機能異常に起因し得る。心不全および呼吸障害は関連することが認められている。例えば、心不全の改善と呼吸数/変動の低下、ならびに心不全の悪化と呼吸数/変動の上昇の間に関連性が観察されている。本観察は、呼吸と心臓は関係しているという長年にわたる直観的信念と一致する。
【0023】
図1は、呼吸リズムフィードバックを用いた神経刺激を送達するための方法の実施形態を示す。101に示されるように、迷走刺激療法(VST)等の神経刺激療法が送達される。VSTは、心不全、心筋梗塞後リモデリング、および高血圧症のための療法等、慢性的刺激療法であることが可能である。また、本主題は、限定ではなく、一例として、癲癇、摂食障害、片頭痛、および疼痛のための療法等、他の慢性的自律神経刺激療法と併用可能である。102では、呼吸は、睡眠または休息期間(顕著な副交感神経活性および安定呼吸の期間)の間、監視される。呼吸は、経胸腔インピーダンスの使用を通して等、種々の技術を使用して監視可能である。監視可能な呼吸パラメータの実施例は、呼吸数(RR)および換気量(TV)を含む。呼吸モニタは、分時換気量、呼吸間隔、換気量等を使用可能である。103で例証されるように、監視された呼吸は、監視された呼吸を使用して呼吸変動を測定するために使用される。例えば、呼吸数変動(RRV)は、監視された呼吸数を使用して計算可能であって、換気量変動(TVV)は、監視された換気量を使用して計算可能である。104では、変動測定値は、所定の閾値と比較される。測定値が閾値を上回る場合、神経刺激療法(例えば、VST)は、105で例証されるように、変動を改善するように調節される。例えば、RRVが閾値よりも大きい場合、神経刺激の強度は、106で例証されるように、所望のRRV減少が観察されるまで、RRVを低下するように調節される。
【0024】
図2は、療法を滴定し、所定の望ましくない副作用を回避または排除するための呼吸リズムフィードバックを用いた神経刺激を送達するための方法の実施形態を示す。図中の201で例証されるように、迷走刺激療法(VST)等の神経刺激療法が送達される。呼吸は、睡眠または休息の状態等、顕著な副交感神経活性および安定呼吸を伴う状態時、202において監視される。クロックおよびプログラムされたスケジュールを使用して、睡眠時間を予測可能である。また、活性/姿勢センサを使用して、休息の状態を判定してもよい。無呼吸が検出されてもよく、平均数および標準偏差が計算可能であって、呼吸変動足跡を生成可能である。207では、望ましくない副作用が検出されたかどうかが判定される。例えば、分時換気量信号を使用して、長期無呼吸、高無呼吸/呼吸低下指数(AHI)または呼吸障害の他の指数、および大標準偏差または呼吸変動足跡によって示される呼吸の大規模な変動を検出可能である。望ましくない副作用が検出される場合、205で例証されるように、VSTのパラメータを調節して、療法の強度を適切に調節可能である。VSTの有効性は、208で判定される。迷走刺激療法の改善される有効性は、変動の低下によって示され得る(例えば、毎時間または毎日)。VSTの有効性が閾値以上ではない場合、VST強度は、205で調節される。刺激パラメータは、閉ループ療法において、埋込型刺激装置によって、自動的に調節可能である。刺激パラメータは、プログラマを使用して、または高性能患者管理システムを使用して、医師によって調節可能である。VST強度を調節するように調節可能な刺激パラメータの実施例は、信号の振幅、周波数、およびパルス幅のうちの1つまたは種々の組み合わせを含む。また、刺激の継続期間、デューティサイクル、およびスケジュールは、VSTを滴定するように調節可能である。
【0025】
図3は、種々の実施形態による、呼吸変動管理を用いた神経刺激システムを示す。例証されるシステム310は、迷走神経刺激装置等の埋込型神経刺激装置311を含み、外部システム312をさらに含む。外部システム312および埋込型刺激装置311は、互いに通信するように適合される。外部システムは、プログラマを含むことが可能である。外部システムは、高性能患者管理システムを形成する1つ以上のデバイスを含むことが可能である。例証される刺激装置311は、コントローラ313と、神経刺激療法送達システム314と、神経刺激療法送達システムを使用して、神経刺激療法を送達する際に使用されるプログラム可能パラメータ315と、を含む。例証されるデバイスは、変換器316を含み、それを通して、例証される刺激装置実施形態は、外部システムと無線通信する。クロック317は、コントローラによって使用され、プログラムされた療法スケジュールを実装可能である。コントローラ313は、神経刺激療法送達システム314を制御し、神経刺激電極318を通して、または超音波、熱、光、および磁気エネルギーを使用して、神経刺激を送達する変換器等の変換器を使用して、神経標的に神経刺激を送達する。電極の実施例は、走神経または他の神経標的を刺激するように適合される、神経カフ電極と、内頸静脈内に固定され、迷走神経を経血管的に刺激するように適合される電極等、神経標的を経血管的に刺激するように適合される、経脈管的に載置される電極と、を含む。
【0026】
また、図3に例証されるように、システム310は、呼吸センサ320からの入力を含む、療法入力319を含む。他の療法入力は、活性センサ321と、例えば、心拍センサ、心電図を検出するセンサ、および血圧センサ等の他の生理学的センサ322と、を含むことが可能である。これらの療法入力は、リード線を通して、または無線で、埋込型刺激装置に接続される内部センサから可能であって、および/または外部センサまたは他の外部源から可能である。呼吸センサ320を使用して、RRVまたはTVV等の呼吸変動パラメータを展開する。いくつかの実施形態は、例えば、埋込型神経刺激装置の内部で、RRVを判定し、いくつかの実施形態は、外部システムを使用して、RRVを判定する。プログラム可能パラメータ315は、コントローラ313およびシステム314を使用して送達される神経刺激療法が、呼吸変動に基づいて調節されるように、判定された呼吸変動を使用して調節可能である。
【0027】
図4は、種々の実施形態による、呼吸変動管理を用いた神経刺激システムを示す。例証されるシステム410は、迷走神経刺激装置等の埋込型神経刺激装置411を含み、外部システム412をさらに含む。外部システム412および埋込型刺激装置411は、互いに通信するように適合される。例証される刺激装置411は、コントローラ413と、神経刺激療法送達システム414と、神経刺激療法送達システムを使用して、神経刺激療法を送達する際に使用されるプログラム可能パラメータ415と、を含む。例証されるデバイスは、変換器416を含み、それを通して、例証される刺激装置実施形態は、外部システムと無線通信する。クロック417は、コントローラによって使用され、プログラムされた療法スケジュールを実装可能である。例証されるシステムでは、コントローラ413は、神経刺激療法送達システム414を制御し、神経刺激電極418を通して、神経標的に神経刺激を送達する。
【0028】
例証される埋込型神経刺激装置411は、内部的に判定される呼吸変動を含む、療法入力を内部的に処理するように適合される。図4に示されるように、刺激装置411は、呼吸パラメータまたは複数のパラメータを示す呼吸センサ420から信号を受信するように適合され、呼吸センサからの信号を使用して、呼吸変動を判定するようにさらに適合される、呼吸変動分析器423を含む。例えば、いくつかの実施形態は、呼吸センサからの信号を使用して、呼吸数情報を導出し、呼吸変動分析器を使用して、RRVを判定する。いくつかの実施形態は、呼吸センサからの信号を使用して、TVVを判定する。変動は、他の呼吸パラメータを使用して判定可能である。コントローラ413は、分析器423からの呼吸変動を表す信号を受信し、プログラム可能パラメータを適切に調節し、療法送達システム414を使用して送達される神経刺激の強度療法を調節可能である。
【0029】
例証される埋込型神経刺激装置411は、神経刺激療法の有効性のための指標を検出する際に使用するために適合される滴定検出器424を含み、神経刺激療法の望ましくない副作用の指標を検出する際に使用するための副作用検出器425をさらに含む。種々の実施形態によると、滴定検出器424は、呼吸変動分析器423からの信号、呼吸センサからの信号、および/または心拍センサ、血圧センサ、化学センサ、心電図センサ等の他の生理学的センサ422からの信号を使用可能である。いくつかの実施形態は、監視された呼吸変動足跡または指数を所定の呼吸変動足跡または指数と比較し、神経刺激療法が効果的であるかどうか、神経刺激の強度療法を調節するかどうかを判定する。
【0030】
種々の実施形態によると、副作用検出器425は、呼吸変動分析器423からの信号、呼吸センサからの信号、および/または心拍センサ、血圧センサ、化学センサ、心電図センサ等の他の生理学的センサ422からの信号を使用可能である。例証される副作用検出器は、長期無呼吸、高無呼吸/呼吸低下指数(AHI)、または呼吸障害の他の指数等、所定の呼吸器疾患の検出器を含む。いくつかの実施形態は、所定の呼吸変動足跡または指数を使用して、所定の副作用を判定する。また、いくつかの実施形態は、心拍および心電図等の他の生理学的センサを使用して、望ましくない副作用を検出する。
【0031】
図5は、RRV足跡および関連指数を使用して、神経刺激療法を管理するためのシステムの実施形態を示す。例証されるシステム510は、迷走刺激療法(VST)を送達するように適合される神経刺激デバイス等、患者埋込型医療デバイス511を含む。デバイス511は、1つ以上の埋込型センサ519を組み込む、またはそれに連結される。センサ519のうちの1つ以上は、患者の呼吸の呼吸パラメータを感知するように構成される。呼吸情報は、埋込型センサ、または患者外部センサ、あるいは埋込型と外部センサの組み合わせ等、1つ以上のセンサを使用して得ることが可能である。呼吸センサの実施例は、分時換気量センサ、経胸腔インピーダンスセンサ、加速度計、あるいは圧力センサ、心臓センサ(例えば、ECGセンサ)、筋電図センサ、および気流センサ(例えば、陽性気道圧デバイスまたは人工呼吸器)等、患者の呼吸を表す呼吸波形を生成可能な他のセンサを含む。また、パルス酸素濃度計センサ、血圧センサ、患者体温センサ、およびEKGセンサ等の他のセンサを使用して、患者の種々の生理学的パラメータを感知してもよい。
【0032】
例証されるシステム510は、いくつかの患者外部デバイスを含む。外部システムインターフェース526は、埋込型デバイス511との通信を有効にするように構成される通信回路網を含む。また、外部システムインターフェース526は、外部センサ527との通信を有効にするように構成されてもよい。外部システムインターフェースは、プログラマ、高性能患者管理システム、ポータブルまたはハンドヘルド型コミュニケータ、あるいは他の患者外部システムのうちの1つ以上に通信可能に連結される、もしくは一体化されてもよい。外部システムインターフェース526は、表示を提供するグラフィカルユーザインターフェースまたは他のインターフェース等のユーザインターフェース528に連結される。ユーザインターフェース528は、キーボード、タッチスクリーンセンサ、マウス、ライトペン等のユーザ作動可能入/出力デバイスを含むことが可能である。ユーザインターフェースを使用して、スケジュールのプログラミング、および神経刺激療法のための強度を有効化可能な刺激パラメータのプログラミング等の療法情報を入力してもよい。システム510は、RRVプロセッサとして例証される、外部システムインターフェースに連結される呼吸変動プロセッサ529を含む。RRVプロセッサは、埋込型デバイス511、コミュニケータ530、プログラマ531、または高性能患者管理(APM)システム532の構成要素として組み込まれてもよい。呼吸変動プロセッサは、呼吸変動(例えば、RRV足跡およびRRV足跡から展開された指数)を判定する。この情報および他の関連情報は、医師、臨床医、および/または患者への表示のための外部システムインターフェース526に通信可能である。
【0033】
図6は、RRV足跡に関連する着目領域のマッピングを示す。これらの領域は、RRV足跡特徴がどのように患者状態または病状と一致するかという臨床的用途に基づいて、患者状態または病状の特性解析を表す。例えば、領域633Aおよび633B内の島の存在は、チェーン・ストークス呼吸の存在を示す。領域634内の足跡領域の増加は、呼吸機能障害の上昇を示す(例えば、安定心不全)。領域635内の足跡領域の増加は、正常呼吸機能の上昇を示す。領域636内の足跡領域の増加は、患者睡眠を示す一方、領域637内の足跡領域の増加は、患者活性の上昇を示す。図6に例証されるマッピングは、RRV足跡の解釈に対する一般化された「ガイド」を提供する。RRV足跡の領域、パターン、特徴、および他の側面は、そのようなガイドまたはマップに基づいて、視覚的に(手動で)、あるいはアルゴリズムで分析され、RRV足跡の手動もしくは自動解釈ならびに定量化を容易にしてもよい。変動マッピングは、他の呼吸パラメータ(例えば、換気量変動のためのマップ)に対しても計算可能である。
【0034】
図7A、7B、8A、8B、9、および10は、RRV足跡を示す。図に示される例証されるRRV足跡は、2次元RRV足跡に加えて、3次元を示すために、色分けされる。等高線のそのような着色は、本願図面の白黒レンダリングには示されないが、図9および10では、色は、括弧内のラベルによって識別される。後述されるように、異なる色は、3次元を画定するパラメータの差異を示す。
【0035】
図7Aは、正常対象のRRV足跡を示す。RRV足跡は、毎分約10呼吸(br/m)に集中し、等高線は、限局され、平滑である。図7Bは、安定心不全患者のRRV足跡を示す。図7BのRRV足跡は、図7Aのものと比較して、右側に推移しており、より高い呼吸数(RR)を示す。また、図7Bの足跡は、より広い範囲のRRおよびΔRRを有する。図7Bの足跡の等高線は、依然として、比較的平滑である。領域の増加および右側への移動(例えば、より高いRR)を示すRRV足跡は、概して、心不全状態の悪化を示す。
【0036】
図8Aは、入院時の入院心不全患者のRRV足跡を示す。図8Bは、退院時の同心不全患者のRRV足跡を示し、患者の改善された心不全状態を示唆する。図8Aに示される入院時の患者のRRV足跡は、右側に大幅に偏流しており、極端に不規則な等高線を伴う大規模な足跡領域を有し、多くの離島は、この場合、周期性呼吸である、異常呼吸パターンを示す。図8Bに示される退院時のRRV足跡は、図8Aよりも右側に推移してはおらず、大規模な足跡ではあるが、限定的離島を有し、周期性呼吸の改善を示唆する。
【0037】
図9は、安定心不全患者のRRV足跡に隣接する正常患者のRRV足跡を示す。図9に例証されるように、足跡の種々の領域は、着色可能であって、注釈を加え(例えば、矢印、楕円、および対応する記述子)、特定の着目足跡の部分を強調してもよい。例証される実施例では、異なる色の等高線は、異なる発生頻度に対応し、赤色は、最高発生回数を表し、緑色は、最低発生回数を表す。例証される実施例では、足跡の赤色領域は、主要RR領域を示し、青色領域は、RRの最頻値(br/m)を示し、緑色領域は、異常RR領域を示す。本図は、患者の心不全状態に応じて、各色で囲まれた領域内の差異を示す。そのような差異は、各色で囲まれた領域の位置、面積、および/または形状を含む。例えば、安定心不全患者のRRV足跡は、正常患者のRRV足跡と比較して、RRの最頻値(青色矢印点)の右側への大幅な推移と、主要RR領域(赤色で囲まれた領域)および異常RR領域(緑色で囲まれた領域)の両方の大幅な拡大を示す。2つの足跡間の差異の規模は、患者の心不全状態の変化を反映する。
【0038】
図10は、入院前後の同心不全患者のRRV足跡を示し、入院後の患者の心不全状態の全般的改善を証明する。点線楕円によって示される黄色領域として強調される異所性「島」は、チェーン・ストークス呼吸等の異常呼吸パターンと関連する。患者入院後に展開されるRRV足跡は、島領域の減少を示し、例えば、チェーン・ストークス呼吸の低下を示唆する。
【0039】
図11は、呼吸数変動(RRV)を判定し、関連指数とともにその足跡を生成するための方法の実施形態を示す。呼吸感知信号は、1138で得られ、呼吸数(RR)は、1139で呼吸感知信号を使用して計算される。1140では、隣接呼吸間の呼吸数(ΔRR)の差異が計算される。1141では、RR足跡が生成され、指数は、足跡から生成される。呼吸数変動の視覚的および/または定量的測定値は、1142で生成される。これらの測定値を使用して、自動的に、または医師介入を通して、達成され得るように、神経刺激の強度療法を調節可能である。
【0040】
図12は、呼吸数変動(RRV)を判定し、関連指数とともにその足跡を生成するための方法の実施形態を示す。呼吸感知信号は、分時換気量センサ等から、1243で得られる。呼吸感知信号に関連する患者の生理学的状態が、1244で検出される。RRV足跡が1245で生成され、RRV指数は、1246で生成される。RRV指数は、自動的またはアルゴリズムで生成可能である。1247で閾値を超えると、1248でアラーム等の出力が生成される、または患者に送達される療法の調節または滴定等のいくつかの介入作用が行なわれる。
【0041】
図13は、呼吸数変動を判定し、関連指数とともにその足跡を生成するための方法の実施形態を示す。呼吸感知信号は、分時換気量センサ等から、1349で得られる。呼吸感知信号に関連する患者の生理学的状態が、1350で検出される。RRV足跡は、1351で生成される。RRV足跡は、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)を介して提示されるRRV足跡の表示またはプロットを使用して、医師等によって、1352において手動で評価される。医師は、GUIを介して、プロセッサによって、種々の着目RRV指数を選択的に生成させてもよい。医師が、手動評価に基づいて、1353で懸念がある場合、医師は、1354において、アラーム等の出力の生成、あるいは患者に送達される療法の調節または滴定等のいくつかの介入措置を行なってもよい。
【0042】
図14は、種々の実施形態による、1455において、関連指数を用いた呼吸数変動足跡に基づいて行なわれ得る種々の操作を示す、ブロック図である。RRV足跡に基づく信号が、1456で生成されてもよい。信号は、例えば、電気または電磁信号、光信号、あるいは音響信号を含む、いくつかの形態をとり得る。本信号は、迷走刺激療法(VST)等の神経刺激療法の滴定を含む、種々の診断および治療目的のために使用されてもよい。信号は、患者内に埋め込まれる医療デバイスによって発生されてもよい。信号は、患者内に埋め込まれる医療デバイスから呼吸センサデータを受信する患者外部デバイスによって発生されてもよい。
【0043】
RRV足跡の変化は、監視された1457で監視されてもよい。心不全状態、心不全状態の変化、異常呼吸状態、および/または異常呼吸状態の変化は、1458で判定および監視されてもよい。種々の統計分析が、1459で行なわれてもよく、RRV足跡および関連指数が計算され得る。神経刺激療法は、RRV足跡および1つ以上の指数に基づいて、1460で監視および滴定されてもよい。療法の有効性は、RRV足跡および関連指数を使用して、1461で定量化されてもよい。
【0044】
臨床医および/または患者への警告は、RRV足跡および関連指数に基づいて、1462で生成され、種々の形態で臨床医および/または患者に通信されてもよい。RRV足跡および関連指数を使用して、1463で代償不全エピソードを予測してもよい。例えば、心不全患者の呼吸パターンの漸進的または突発的変化は、患者のRRV足跡および関連指数の変化から検出可能であって、代償不全エピソードの相対的確率を示し得る。RRV足跡および関連指数を使用して、1464で患者の心不全状態の安定と悪化を区別してもよい。
【0045】
パターンおよび/または特徴認識は、特定の呼吸または患者病状に関連し得る着目領域、位置、形状/等高線を認識あるいは識別するため等、RRV足跡に基づいて、1465で行なわれてもよい。種々の公知のパターンおよび/または特徴認識技術は、神経ネットワークおよび他の統計パターン認識技術を使用すること等によって、採用されてもよい。そのような技術は、主成分分析、フィッシャー、ならびに重量変動計算および特徴選択を含んでもよい。神経ネットワーク法は、誤差逆伝搬神経ネットワークおよび/または放射基底関数神経ネットワークを含んでもよい。統計パターン認識、線形判別分析、二次判別分析、正規化判別分析、クラス類似性のソフト独立モデル化、および/または収縮共分散による判別分析を含んでもよい。
【0046】
RRV足跡は、他のセンサ(例えば、姿勢センサ、運動センサ)によって判定されるような異なる生理学的状態に1466でマッピングされてもよい。条件付き分布は、1467でRRV足跡から生成されてもよい。例えば、呼吸数(RR)ヒストグラムは、RRV足跡の適切な軸に沿って、RRV足跡を統合することによって得られてもよい。呼吸数変動ヒストグラムは、RRV足跡の他の軸に沿って、RRV足跡を統合することによって得られてもよい。
【0047】
RRV足跡は、心拍変動(HRV)足跡と組み合わせて、心肺機能評価の信頼性の向上を提供してもよい。組み合わせられたRRVおよびHRV足跡は、1468で患者の心肺機能の測定値および追跡を提供する。HRV足跡およびRRV足跡の領域比等の種々の指数が、1469で生成され、患者の心肺機能状態を定量化してもよい。
【0048】
3次元が、1470で足跡(例えば、2次元ヒストグラム)に追加または重畳されてもよい。そのような3次元は、例えば、換気量、患者が特定の呼吸パターンにある持続時間、あるいは特定の呼吸パターンまたは数の発生頻度であってもよい。3次元は、カラースキームの使用によって、あるいは足跡の2次元面から本2次元面に直角の面に延在するグラフィカル構図または印によって、1471で示されてもよい。
【0049】
種々のRRV足跡および指数データ、傾向データ、ならびに他の生理学的データは、患者、臨床医、および/または医師による使用のために1472で表示されてもよい。図14は、呼吸数データを使用して展開されるRRV足跡の使用に関わる実施例の非排他的かつ非限定的一覧を提供することを意図する。
【0050】
図15は呼吸サイクル長、吸気期間、呼気期間、非呼吸期間、および換気量を含む呼吸パラメータを示す、呼吸信号の図である。一例として、呼吸変動は、図に例証されるパラメータのうちの1つ以上を使用して判定可能である。グラフの軸は、信号が経時的呼吸量を表す容積および時間である。吸気期間は、呼吸信号の振幅が吸気閾値を上回る、呼気サイクルの吸気相の開始時に開始し、呼吸サイクルの振幅がピークに達する、呼吸サイクルの呼気相の開始時に終了する。呼気期間は、呼気相の開始時に開始し、呼吸信号の振幅が呼気閾値を下回ると終了する。非呼吸期間は、呼気相の終了と次の吸気相の開始との間の時間間隔である。換気量は、呼吸信号の頂点間振幅である。呼吸数は、サイクル長から判定可能である。サイクル長が分単位で提供される場合、(br/min)=1/(サイクル長)。
【0051】
呼吸信号は、呼吸活性を示す生理学的信号である。種々の実施形態では、呼吸信号は、呼吸によって変調される、任意の生理学的信号を含む。一実施形態では、呼吸信号は、埋込型インピーダンスセンサによって感知される、経胸腔インピーダンス信号である。別の実施形態では、呼吸信号は、埋込型圧力センサによって感知される血圧信号から抽出され、呼吸成分を含む。別の実施形態では、呼吸信号は、胸部の動きまたは肺容積を示す信号を感知する、外部センサによって感知される。
【0052】
上述のように、本主題の実施形態は、望ましくない副作用を検出する。望ましくない副作用の実施例の1つは、呼吸器疾患である。
【0053】
図16は、呼吸器疾患反応性神経刺激システムの実施形態を示す、ブロック図である。例証されるシステム1673は、呼吸センサ1674と、センサ処理回路1675と、呼吸制御神経刺激回路1676と、を含む。例証される呼吸制御神経刺激回路1676は、刺激出力回路1677と、コントローラ1678と、を含む。コントローラ1678は、呼吸信号入力1679と、呼吸器疾患検出器1680と、刺激調節モジュール1681と、刺激送達コントローラ1682と、を含む。呼吸器疾患検出器1680は、呼吸信号入力1679によって受信される呼吸信号を使用して、所定の種類の呼吸器疾患を検出する。刺激調節モジュール1681は、呼吸器疾患のそれぞれの検出に応答して、神経刺激パルスの送達を調節する。一実施形態では、刺激調節モジュール1681は、呼吸器疾患の検出に応答して、刺激アルゴリズムの実行を停止する。刺激送達制御器1682は、1つ以上の刺激アルゴリズムを実行することによって、神経刺激パルスの送達を制御する。
【0054】
図17は、呼吸器疾患反応性神経刺激システム1773の実施形態を示す、ブロック図である。システム1773は、呼吸センサ1774と、センサ処理回路1775と、生理学的センサ1783と、別のセンサ処理回路1784と、呼吸制御神経刺激回路1776と、を含む。
【0055】
生理学的センサ1783は、呼吸センサ1774によって感知される生理学的信号に加えて、1つ以上の生理学的信号を感知する。種々の実施形態では、生理学的センサ1783は、心臓信号、心音を示す信号、心臓および/または経胸腔インピーダンス信号、血液酸素レベルを示す信号、ならびに神経連絡を示す信号のうちの1つ以上の種々の組み合わせを感知する。センサ処理回路1784は、神経刺激を制御する際に呼吸制御神経刺激回路1776によって使用するために、生理学的センサ1783によって感知される1つ以上の生理学的信号を処理する。種々の実施形態では、生理学的センサ1783または生理学的センサ1783の一部は、埋込型医療デバイスに含まれるか、あるいは1つ以上のリード線またはテレメトリを介して、埋込型医療デバイスに通信可能に連結される。種々の実施形態では、センサ処理回路1784またはセンサ処理回路1784の一部は、埋込型医療デバイスに含まれるか、1つ以上リード線またはテレメトリを介して、埋込型医療デバイスに通信可能に連結される。
【0056】
例証される呼吸制御神経刺激回路1776は、刺激出力回路1777と、コントローラ1778と、を含む。コントローラ1778は、呼吸信号入力1779と、呼吸器疾患検出器1780と、生理学的信号入力1785と、生理学的事象検出器1786と、刺激調節モジュール1781と、刺激送達コントローラ1782と、を含む。
【0057】
呼吸器疾患検出器1780は、呼吸信号を使用して、1つ以上の呼吸器疾患を検出する。例証される実施形態では、呼吸器疾患検出器は、無呼吸検出器と、呼吸低下検出器と、呼吸困難検出器と、を含む。種々の他の実施形態では、呼吸器疾患検出器は、無呼吸検出器、呼吸低下検出器、および呼吸困難検出器のうちの1つ以上の組み合わせを含む。種々の実施形態では、呼吸器疾患検出器はまた、呼吸数が閾値数を下回る場合の低呼吸数、換気量が検出閾値量を下回る場合の低換気量、および分時換気量が検出閾値を下回る場合の低分時換気量等、1つ以上の呼吸パラメータの異常値を検出する。
【0058】
無呼吸は、異常に長い非呼吸期間によって特徴付けられる。無呼吸検出器は、非呼吸期間を検出閾値期間と比較することによって、無呼吸を検出する。無呼吸は、非呼吸期間が検出閾値期間を超えると検出される。呼吸低下は、異常に浅い呼吸、すなわち、低換気量によって特徴付けられる。呼吸低下検出器は、換気量を検出閾値と比較することによって、呼吸低下を検出する。呼吸低下は、換気量が検出閾値量を下回る場合に検出される。一実施形態では、換気量は、所定の時間間隔または所定数の呼吸サイクルにわたる平均換気量である。呼吸困難は、速く浅い呼吸、すなわち、高呼吸数対換気量比によって特徴付けられる。呼吸困難検出器は、呼吸数対換気量比を検出閾値比と比較することによって、呼吸困難を検出する。呼吸困難は、比率が閾値比を超える場合に検出される。種々の実施形態では、閾値期間、検出閾値量、および/または閾値比は、実験的に確立される。
【0059】
生理学的信号入力は、生理学的センサによって感知され、センサ処理回路によって処理される1つ以上の生理学的信号を受信する。生理学的事象検出器は、1つ以上の生理学的信号から1つ以上の生理学的事象を検出する。種々の実施形態では、生理学的事象検出器は、心臓信号形態の変化、心音波形形態の変化、インピーダンス信号形態の変化、および血中酸素飽和度の変化のうちの1つ以上を検出する。
【0060】
刺激調節モジュールは、少なくとも呼吸器疾患検出器による呼吸器疾患の検出に応答して、神経刺激パルスの送達を調節する。一実施形態では、刺激調節モジュールは、呼吸器疾患検出器による呼吸器疾患の検出、および生理学的事象検出器による生理学的事象の検出に応答して、神経刺激パルスの送達を調節する。刺激送達コントローラは、1つ以上の刺激アルゴリズムを実行することによって、神経刺激パルスの送達を制御する。刺激調節モジュールは、刺激スイッチを含む。刺激スイッチは、無呼吸、呼吸低下、または呼吸困難等の呼吸器疾患の検出に応答して、第1の刺激アルゴリズムの実行を停止する。例えば、第1の刺激アルゴリズムは、迷走神経刺激によって心臓の病状を治療するように実行される。無呼吸、呼吸低下、または呼吸困難が検出される場合、迷走神経刺激は、心臓の病状を治療するために設計される迷走神経刺激による病状の悪化を回避するように停止される。
【0061】
図18は、呼吸器疾患に応答して、神経刺激を調節するための方法の実施形態を示す、フローチャートである。方法1887は、呼吸制御神経刺激回路によって行なわれてもよい。神経刺激は、1888で複数の刺激パラメータを使用することによって制御される。神経刺激は、非呼吸障害を治療するために送達される。一実施形態では、神経刺激は、心不全を治療する、または心臓リモデリングを制御する等、心臓の病状を治療するために送達される。呼吸信号は、1889で受信される。呼吸信号は、呼吸サイクルおよび呼吸パラメータを示す。呼吸パラメータの実施例は、呼吸サイクル長、吸気期間、呼気期間、非呼吸期間、換気量、および分時換気量を含む。種々の実施形態では、呼吸信号は、呼吸サイクルおよび呼吸パラメータを示す生理学的信号であるか、またはそれに由来する。生理学的信号の実施例は、経胸腔インピーダンス信号およびPAP信号等の血圧信号を含む。呼吸器疾患は、1890で検出される。呼吸器疾患の実施例は、低呼吸数、低換気量、および低分時換気量等の異常呼吸パラメータ値、無呼吸、呼吸低下、および呼吸困難を含む。無呼吸は、非呼吸期間が検出閾値期間を超えると検出される。呼吸低下は、換気量が検出閾値量を下回る場合に検出される。呼吸困難は、呼吸数対換気量比が検出閾値比を超えると検出される。1891で、呼吸器疾患が検出される場合、1892で刺激パラメータのうちの1つ以上を調節することによって、神経刺激が調節される。神経刺激は、検出された呼吸器疾患を終結または緩和するように調節される。一実施形態では、神経刺激は、刺激の強度を低減させるように調節される。神経刺激は、所定の期間にわたって、または呼吸器疾患がもはや検出されなくなるまで、一時停止可能である。神経刺激は、検出された呼吸器疾患を治療するように調節可能である。
【0062】
種々の実施形態によると、上記で例証および説明されるデバイスは、所定の位置に位置付けられる1つ以上の刺激電極等を通して、所望の神経標的に対して、電気刺激として、神経刺激を送達するように適合される。神経刺激を送達するための他の要素も使用可能である。例えば、いくつかの実施形態は、変換器を使用して、超音波、光、磁気、または熱エネルギー等の他の種類のエネルギーを利用して、電気刺激を送達する。
【0063】
当業者は、本明細書に図示および説明されるモジュールならびに他の回路網が、ソフトウェア、ハードウェア、およびソフトウェアとハードウェアの組み合わせを使用して、実装可能であることを理解するであろう。したがって、モジュールおよび回路とは、例えば、ソフトウェア実装、ハードウェア実装、およびソフトウェアとハードウェアの実装を包含することを意図される。
【0064】
本開示において例証される方法は、本主題の範囲内の他の方法を排除することを意図するものではない。当業者は、本開示の熟読および理解によって、本主題の範囲内の他の方法も理解するであろう。上述の実施形態および例証される実施形態の一部は、必ずしも、相互に排他的ではない。これらの実施形態またはその一部は、組み合わせることが可能である。種々の実施形態では、方法は、プロセッサによって実行されると、それぞれの方法をプロセッサに行なわせる一連の命令を表す、搬送波または伝播信号として具現化されるコンピュータデータ信号を使用して実装される。種々の実施形態では、方法は、プロセッサにそれぞれの方法を行なわせることが可能なコンピュータアクセス可能媒体に含有される一式の命令として実装される。種々の実施形態では、媒体は、磁気媒体、電子媒体、または光学媒体である。
【0065】
上述の詳細な説明は、例証であって、制限されるものではないことが意図される。他の実施形態は、上述の説明の熟読および理解によって、当業者に明白となるであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の請求項とともに、そのような請求項が享受できる同等物の全範囲を参照することによって、決定されるべきである。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年6月25日に出願された米国特許出願第11/767,901号に対する優先権の利益を主張するものであり、該米国特許出願は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
本願は、概して、医療デバイスに関し、より具体的には、神経刺激を送達するためのシステム、デバイス、および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
自律神経系は、心臓機能および血液動態性能等の種々の生理機能を変調するように刺激されている。心筋は、交感神経および副交感神経で神経支配される。人工的に印加された電気刺激を含む、これらの神経における活性は、心拍および収縮性(心筋収縮の強度)を変調する。副交感神経応答を誘発する神経刺激(例えば、迷走神経の心臓枝等の副交感神経標的における神経連絡を刺激する、および/または交感神経標的における神経連絡を抑制する)は、心拍および収縮性を減少させて、心周期の収縮期を延長し、心周期の拡張期を短縮することが知られている。副交感神経応答を誘発する神経刺激(例えば、交感神経標的における神経連絡を刺激する、および/または副交感神経標的における神経連絡を抑制する)は、本質的に、反対の効果を有することが知られている。心拍および収縮性を変調する際の自律神経の電気刺激の能力は、心不全患者の血行動態性能を改善するために、および心筋梗塞後に心筋リモデリングを制御し、不整脈を予防するために等、異常な心臓の状態を治療するために使用されてもよい。自律神経系は、身体の多くの器官の機能を調整する。迷走神経は、脳幹の呼吸中枢内に絡む多くの肺、気管支、および気管求心性を含むため、迷走神経刺激は、例えば、呼吸に影響を及ぼす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、呼吸を監視し、神経刺激療法の有効性を向上させ、および/または神経刺激療法の副作用を低減または回避するためのシステム、デバイス、方法に関する。睡眠または休息時の呼吸変化、顕著な迷走/副交感神経活性および安定した呼吸を伴う状態は、神経刺激療法を滴定するために使用される。種々の実施形態は、自律神経標的(例えば、迷走神経刺激)の刺激を制御するためのフィードバックとして、睡眠または休息時の呼吸の安定性または不安定性の測定値を使用する。種々の実施形態は、呼吸の安定性または不安定性の指標として、呼吸数(respiratory rate)等の呼吸パラメータの変動の測定値を使用する。呼吸変動の低下は、改善の徴候であり、呼吸変動の上昇は、疾患の進行の徴候である。
【0005】
システムの実施形態は、少なくとも1つの呼吸センサと、神経刺激療法送達モジュールと、コントローラと、を備える。呼吸センサは、患者の呼吸を監視する際に使用するために適合される。神経刺激療法送達モジュールは、慢性的神経刺激療法のために、患者の自律神経標的を刺激する際に使用するための神経刺激信号を生成するように適合される。コントローラは、患者の呼吸を示す少なくとも1つの呼吸センサから呼吸信号を受信するように適合され、呼吸信号を使用して得られる呼吸変動測定値を使用して、神経刺激療法送達モジュールを制御するように適合される。
【0006】
方法の実施形態によると、慢性的神経刺激療法が送達される。療法は、自律神経標的に対する刺激を含む。呼吸は、低活性期間中に監視される。呼吸変動は、監視された呼吸を使用して判定される。自律神経標的に対する刺激の強度は、少なくとも1つの所定の閾値との呼吸変動の比較を使用して調節される。
【0007】
本概要は、本願の教示の一部の概説であり、本主題の排他的または包括的扱いとなることを意図するものではない。本主題についてのさらなる詳細は、詳細な説明および添付の請求項に見られる。他の側面は、以下の詳細な説明を熟読および理解し、その一部を形成する図面を参照することによって、当業者に明白となるであろう(それぞれ、限定的意味でとらえられるものではない)。本発明の範囲は、添付の請求項およびそれらの同等物によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、呼吸リズムフィードバックを用いた神経刺激を送達するための方法の実施形態を示す。
【図2】図2は、療法を滴定し、所定の望ましくない副作用を回避するための呼吸リズムフィードバックを用いた神経刺激を送達するための方法の実施形態を示す。
【図3】図3は、種々の実施形態による、呼吸変動管理を用いた神経刺激システムを示す。
【図4】図4は、種々の実施形態による、呼吸変動管理を用いた神経刺激システムを示す。
【図5】図5は、呼吸数(RRV)足跡(footprint)および関連指数を使用して、神経刺激療法を管理するためのシステムの実施形態を示す。
【図6】図6は、RRV足跡に関連する着目領域のマッピングを示す。
【図7】図7Aは、正常対象のRRV足跡を示す。図7Bは、安定心不全患者のRRV足跡を示す。
【図8】図8Aは、入院時の入院心不全患者のRRV足跡を示す。図8Bは、退院時の同心不全患者のRRV足跡を示し、患者の改善された心不全状態を示唆する。
【図9】図9は、安定心不全患者のRRV足跡に隣接する正常患者のRRV足跡を示す。
【図10】図10は、入院前後の同心不全患者のRRV足跡を示し、入院後の患者の心不全状態の全般的改善を証明する。
【図11】図11は、RRVを判定し、関連指数とともにその足跡を生成するための方法の実施形態を示す。
【図12】図12は、RRVを判定し、関連指数とともにその足跡を生成するための方法の実施形態を示す。
【図13】図13は、RRVを判定し、関連指数とともにその足跡を生成するための方法の実施形態を示す。
【図14】図14は、種々の実施形態による、関連指数を用いたRRV足跡に基づいて行なわれ得る種々の操作を示す、ブロック図である。
【図15】図15は、呼吸サイクル長、吸気期間、呼気期間、非呼吸期間、および換気量を含む、呼吸パラメータを示す、呼吸信号の図である。
【図16】図16は、呼吸器疾患反応性神経刺激システムの実施形態を示す、ブロック図である。
【図17】図17は、呼吸器疾患反応性神経刺激システムの実施形態を示す、ブロック図である。
【図18】図18は、呼吸器疾患に応答して、神経刺激を調節するための方法の実施形態を示す、フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本主題の以下の詳細な説明は、本主題が実践され得る特定の側面および実施形態を示す、添付の図面を参照する。これらの実施形態は、当業者が本主題を実践可能なように、十分詳細に説明される。他の実施形態が利用されてもよく、構造、論理、および電気的変更が、本主題の範囲から逸脱することなく、成されてもよい。本開示における「ある」、「一」、または「種々の」実施形態という言及は、必ずしも、同一実施形態に対するものではなく、そのような言及は、2つ以上の実施形態を想定するものである。したがって、以下の詳細な説明は、限定的意味でとらえられるものではなく、その範囲は、添付の請求項とともに、そのような請求項が享受できる同等物の全範囲によってのみ定義される。
【0010】
種々の実施形態は、自律神経標的(例えば、迷走神経刺激)の刺激を制御するためのフィードバックとして、呼吸の安定性または不安定性の測定値を使用する。種々の実施形態は、呼吸の安定性または不安定性の指標として、呼吸パラメータの変動の測定値を使用する。種々の実施形態は、呼吸の安定性または不安定性の指標として、呼吸数変動(RRV)または換気量変動(TVV)を使用する。呼吸(パターンまたは数)の変化は、潜在的療法の有効性または病理過程を反映する。呼吸変動の低下は、改善の徴候であって、呼吸変動の上昇は、疾患の進行の徴候である。例えば、いくつかの実施形態は、睡眠または休息状態時の呼吸パラメータ(例えば、数、換気量、吸気/呼気の比等)の変動の測定値を使用して、慢性的迷走神経療法を調節する。神経刺激強度は、監視された呼吸パラメータの平均を低下させる、または監視された呼吸パラメータの変動を低下させる、あるいは監視された呼吸パラメータの平均および変動の両方を低下させるように調節可能である。種々の実施形態は、呼吸モニタを提供し、迷走神経刺激の有効性を向上させ、および/または呼吸障害等の望ましくない副作用を低減または回避する。本主題は、睡眠および/または休息時(顕著な迷走/副交感神経活性および安定した呼吸を伴う状態)の呼吸変化を監視する。
【0011】
種々の刺激装置実施形態は、患者の呼吸を監視する際に使用するために適合される、少なくとも1つの呼吸センサと、慢性的神経刺激療法のために、患者の自律神経標的を刺激する際に使用するための神経刺激信号を生成するように適合される、神経刺激療法送達モジュールと、患者の呼吸を示す少なくとも1つの呼吸センサから呼吸信号を受信するように適合され、呼吸信号を使用して得られる呼吸変動測定値を使用して、神経刺激療法送達モジュールを制御するように適合される、コントローラと、を含む。種々の実施形態は、呼吸信号を使用して、呼吸変動測定値を判定するように適合される、呼吸変動分析器と、制御信号を送達し、呼吸変動分析器からの呼吸変動測定値を使用して、療法強度を制御するように適合される、滴定検出器と、呼吸変動分析器からの呼吸変動測定値を閾値と比較し、制御信号を送達し、比較に基づいて、療法強度を制御するように適合される、安全性検出器と、を含む。呼吸センサおよびコントローラは、低活性期間中の呼吸を監視するように適合され、コントローラは、低活性期間に対応する呼吸変動測定値を使用して、神経刺激送達モジュールを制御するように適合される。低活性期間は、活性検出器によって検出され得るような睡眠または休息期間であり得る。所定のスケジュールを使用して、低活性期間を予測可能である。
【0012】
種々の実施形態は、自律神経標的に慢性的神経刺激療法を送達する。慢性的という用語は、日、週、月、または年の順番における期間を示す。慢性的療法は、断続的刺激を伴う療法および定期的刺激を伴う療法を含む。呼吸は、低活性期間中、監視され、呼吸変動が判定される。自律神経標的に対する刺激の強度は、療法のための刺激の有効性を示す滴定閾値および/または刺激の望ましくない副作用を示す副作用閾値等、少なくとも1つの所定の閾値との呼吸変動の比較を使用して調節される。種々の実施形態は、特定の療法を対象とする患者を識別するステップと、心不全療法、高血圧症療法、または心筋梗塞後療法等の療法を送達するステップと、を含む。呼吸変動を表す足跡は、足跡の定量的測定値を表す1つ以上の指数とともに生成可能である。指数の実施例は、足跡の特徴、パターン、形状、または等高線を含む。
【0013】
本主題の実施形態は、心不全、心筋梗塞後、および高血圧症等の患者集団のための心臓、腎臓神経変調、および他の治療デバイスを含む。呼吸は、迷走神経刺激の有効性のための初期マーカー(呼吸)、または患者の自律平衡に影響を及ぼす他の療法(心不全、心筋梗塞後、および高血圧症のための療法等)を提供する。また、呼吸を使用して、所定の呼吸障害等の望ましくない副作用を検出可能である。
【0014】
自律神経系(ANS)は、「不随意」器官を調整する一方、随意(骨格)筋の収縮は、体性運動神経によって制御される。不随意器官の実施例は、呼吸および消化器官を含み、また、血管および心臓を含む。多くの場合、ANSは、不随意かつ反射的に機能し、例えば、腺を調整し、皮膚下の筋肉、眼、胃、腸、および膀胱を調整し、心筋および血管周囲の筋肉を調整する。
【0015】
ANSは、交感神経系および副交感神経系を含む。交感神経系は、緊急事態に対するストレスおよび「闘争または逃走反応」と連携している。他の効果の中でも、「闘争または逃走反応」は、血圧および心拍を上昇させ、骨格筋血流を増加させ、消化を減少させ、「闘争または逃走」のためのエネルギーを提供する。副交感神経系は、弛緩および「休息と消化反応」と連携し、他の効果の中でも、血圧および心拍を低下させ、消化を増加させ、エネルギーを保存する。ANSは、正常な内部機能を維持し、体性神経系と連動する。
【0016】
心拍および収縮力は、交感神経系が刺激されると増加し、交感神経系が抑制されると減少する(副交感神経系が刺激される)。求心性神経は、神経中枢に向かってインパルスを伝達する。遠心性神経は、神経中枢から離れるようにインパルスを伝達する。
【0017】
交感および副交感神経系を刺激することによって、心拍および血圧以外の効果を有し得る。例えば、交感神経系を刺激することは、瞳孔を拡張させ、唾液および粘液産生を減少させ、気管支筋を弛緩させ、胃の不随意収縮(蠕動)の連続波および胃の運動性を低下させ、肝臓によるグリコーゲンのグルコースへの変換を増加させ、腎臓による尿分泌を低減させ、膀胱壁を弛緩させ、括約筋を閉鎖させる。副交感神経系を刺激(交感神経系を抑制)することは、瞳孔を収縮させ、唾液および粘液産生を増大させ、気管支筋を収縮させ、胃および大腸内の分泌および運動性を増加させ、小腸の消化を増加させ、尿分泌を増加させ、膀胱壁を収縮し、括約筋を弛緩させる。交感および副交感神経系に関連する機能は多く、互いに複雑に統合され得る。
【0018】
迷走神経の変調を利用して、心不全、心筋梗塞後リモデリング、および高血圧症等、種々の心臓血管疾患を含む、種々の疾患を治療してもよい。これらの病状は、以下に概略される。
【0019】
心不全とは、心臓機能が、末梢組織の代謝要求を満たすための適切なレベルを下回り得る正常以下の心拍出量を生じさせる、臨床的症候群を指す。心不全は、随伴する静脈および肺うっ血によるうっ血性心不全(CHF)として現れる場合がある。心不全は、虚血性心臓疾患等の種々の病因による可能性がある。
【0020】
高血圧症は、心臓疾患および他の関連心臓併存疾患の原因である。高血圧症は、血管が収縮すると生じる。その結果、より高い血圧に血流を維持するために心臓に負担がかかり、心不全に寄与する可能性がある。高血圧症は、概して、心臓血管の損傷または他の悪影響を誘発する可能性のあるレベルへの全身動脈血圧の一過性または持続的上昇等の高血圧に関連する。高血圧症は、適宜、140mmHgを上回る収縮期血圧または90mmHgを上回る拡張期血圧として定義されている。管理不良高血圧症の結果は、網膜血管障害および発作、左室肥大および不全、心筋梗塞、解離性動脈瘤、ならびに腎血管性疾患を含むが、それらに限定されない。
【0021】
心臓リモデリングとは、心筋梗塞(MI)後に生じ得る構造、生化学、神経ホルモン、および電気生理学的要因、または心拍出量の低下の他の原因を伴う、心室の複雑なリモデリングプロセスを指す。心室リモデリングは、心室の拡張期充満圧を上昇させ、それによって、いわゆる、前負荷(すなわち、心室が、拡張期終了時の心室内の血量によって伸張される程度)を増加させる、いわゆる、後方不全によって、心拍出量を増大させるように作用する生理学的代償機構によって誘起される。前負荷の増加は、収縮期の際の拍出量の上昇を生じさせる(フランク・スターリングの法則として知られる現象)。しかしながら、ある期間にわたって、心室が増加した前負荷より伸張されると、心室は、拡張された状態となる。心室容積の拡大は、所与の収縮期圧において、増大した心室壁応力を生じさせる。心室による増大した圧・容積の仕事量に伴って、これは、心室筋の肥大のための刺激として作用する。膨張の不利点は、肥大のための刺激を表す、正常な残存心筋に課される余剰仕事量および壁張力の増加(ラプラスの法則)である。肥大が増大した張力に整合するために不適切である場合、悪循環が結果として起こり、さらなる漸進的膨張を生じさせる。心臓の膨張開始に伴って、求心性圧受容器および心肺受容器信号は、血管運動神経中枢神経系制御中枢に送信され、ホルモン分泌および交感神経放電によって応答する。血液動態、交感神経系、およびホルモン変調(アンギオテンシン変換酵素(ACE)活性の有無等)の組み合わせは、心室リモデリングに伴う細胞構造の有害な変性をもたらす。肥大を生じさせる持続的応力は、心筋細胞のアポトーシス(すなわち、プログラム細胞死)および結果として生ずる壁薄化を誘発し、心臓機能のさらなる悪化を生じさせる。したがって、心室膨張および肥大は、最初は、代償性であって、心拍出量を増大させ得るが、本プロセスは、最終的には、収縮期および拡張期両方の機能障害をもたらす。心室リモデリングの程度は、心筋梗塞後および心不全患者の死亡率の増加との間に正の相関が認められることが示されている。
【0022】
呼吸は、呼吸数、換気量等を使用して定量化または測定可能であるように、特に、睡眠時、正常な人々の間では変動はほとんどなく、非ランダム性を示す。50%を上回る心不全患者は、中枢性睡眠時無呼吸症または周期性呼吸を経験する。呼吸不安定性は、分時換気量と分時二酸化炭素産生(VE/VCO2)の比等によって測定可能であるように、交感神経の上昇ならびに心機能異常に起因し得る。心不全および呼吸障害は関連することが認められている。例えば、心不全の改善と呼吸数/変動の低下、ならびに心不全の悪化と呼吸数/変動の上昇の間に関連性が観察されている。本観察は、呼吸と心臓は関係しているという長年にわたる直観的信念と一致する。
【0023】
図1は、呼吸リズムフィードバックを用いた神経刺激を送達するための方法の実施形態を示す。101に示されるように、迷走刺激療法(VST)等の神経刺激療法が送達される。VSTは、心不全、心筋梗塞後リモデリング、および高血圧症のための療法等、慢性的刺激療法であることが可能である。また、本主題は、限定ではなく、一例として、癲癇、摂食障害、片頭痛、および疼痛のための療法等、他の慢性的自律神経刺激療法と併用可能である。102では、呼吸は、睡眠または休息期間(顕著な副交感神経活性および安定呼吸の期間)の間、監視される。呼吸は、経胸腔インピーダンスの使用を通して等、種々の技術を使用して監視可能である。監視可能な呼吸パラメータの実施例は、呼吸数(RR)および換気量(TV)を含む。呼吸モニタは、分時換気量、呼吸間隔、換気量等を使用可能である。103で例証されるように、監視された呼吸は、監視された呼吸を使用して呼吸変動を測定するために使用される。例えば、呼吸数変動(RRV)は、監視された呼吸数を使用して計算可能であって、換気量変動(TVV)は、監視された換気量を使用して計算可能である。104では、変動測定値は、所定の閾値と比較される。測定値が閾値を上回る場合、神経刺激療法(例えば、VST)は、105で例証されるように、変動を改善するように調節される。例えば、RRVが閾値よりも大きい場合、神経刺激の強度は、106で例証されるように、所望のRRV減少が観察されるまで、RRVを低下するように調節される。
【0024】
図2は、療法を滴定し、所定の望ましくない副作用を回避または排除するための呼吸リズムフィードバックを用いた神経刺激を送達するための方法の実施形態を示す。図中の201で例証されるように、迷走刺激療法(VST)等の神経刺激療法が送達される。呼吸は、睡眠または休息の状態等、顕著な副交感神経活性および安定呼吸を伴う状態時、202において監視される。クロックおよびプログラムされたスケジュールを使用して、睡眠時間を予測可能である。また、活性/姿勢センサを使用して、休息の状態を判定してもよい。無呼吸が検出されてもよく、平均数および標準偏差が計算可能であって、呼吸変動足跡を生成可能である。207では、望ましくない副作用が検出されたかどうかが判定される。例えば、分時換気量信号を使用して、長期無呼吸、高無呼吸/呼吸低下指数(AHI)または呼吸障害の他の指数、および大標準偏差または呼吸変動足跡によって示される呼吸の大規模な変動を検出可能である。望ましくない副作用が検出される場合、205で例証されるように、VSTのパラメータを調節して、療法の強度を適切に調節可能である。VSTの有効性は、208で判定される。迷走刺激療法の改善される有効性は、変動の低下によって示され得る(例えば、毎時間または毎日)。VSTの有効性が閾値以上ではない場合、VST強度は、205で調節される。刺激パラメータは、閉ループ療法において、埋込型刺激装置によって、自動的に調節可能である。刺激パラメータは、プログラマを使用して、または高性能患者管理システムを使用して、医師によって調節可能である。VST強度を調節するように調節可能な刺激パラメータの実施例は、信号の振幅、周波数、およびパルス幅のうちの1つまたは種々の組み合わせを含む。また、刺激の継続期間、デューティサイクル、およびスケジュールは、VSTを滴定するように調節可能である。
【0025】
図3は、種々の実施形態による、呼吸変動管理を用いた神経刺激システムを示す。例証されるシステム310は、迷走神経刺激装置等の埋込型神経刺激装置311を含み、外部システム312をさらに含む。外部システム312および埋込型刺激装置311は、互いに通信するように適合される。外部システムは、プログラマを含むことが可能である。外部システムは、高性能患者管理システムを形成する1つ以上のデバイスを含むことが可能である。例証される刺激装置311は、コントローラ313と、神経刺激療法送達システム314と、神経刺激療法送達システムを使用して、神経刺激療法を送達する際に使用されるプログラム可能パラメータ315と、を含む。例証されるデバイスは、変換器316を含み、それを通して、例証される刺激装置実施形態は、外部システムと無線通信する。クロック317は、コントローラによって使用され、プログラムされた療法スケジュールを実装可能である。コントローラ313は、神経刺激療法送達システム314を制御し、神経刺激電極318を通して、または超音波、熱、光、および磁気エネルギーを使用して、神経刺激を送達する変換器等の変換器を使用して、神経標的に神経刺激を送達する。電極の実施例は、走神経または他の神経標的を刺激するように適合される、神経カフ電極と、内頸静脈内に固定され、迷走神経を経血管的に刺激するように適合される電極等、神経標的を経血管的に刺激するように適合される、経脈管的に載置される電極と、を含む。
【0026】
また、図3に例証されるように、システム310は、呼吸センサ320からの入力を含む、療法入力319を含む。他の療法入力は、活性センサ321と、例えば、心拍センサ、心電図を検出するセンサ、および血圧センサ等の他の生理学的センサ322と、を含むことが可能である。これらの療法入力は、リード線を通して、または無線で、埋込型刺激装置に接続される内部センサから可能であって、および/または外部センサまたは他の外部源から可能である。呼吸センサ320を使用して、RRVまたはTVV等の呼吸変動パラメータを展開する。いくつかの実施形態は、例えば、埋込型神経刺激装置の内部で、RRVを判定し、いくつかの実施形態は、外部システムを使用して、RRVを判定する。プログラム可能パラメータ315は、コントローラ313およびシステム314を使用して送達される神経刺激療法が、呼吸変動に基づいて調節されるように、判定された呼吸変動を使用して調節可能である。
【0027】
図4は、種々の実施形態による、呼吸変動管理を用いた神経刺激システムを示す。例証されるシステム410は、迷走神経刺激装置等の埋込型神経刺激装置411を含み、外部システム412をさらに含む。外部システム412および埋込型刺激装置411は、互いに通信するように適合される。例証される刺激装置411は、コントローラ413と、神経刺激療法送達システム414と、神経刺激療法送達システムを使用して、神経刺激療法を送達する際に使用されるプログラム可能パラメータ415と、を含む。例証されるデバイスは、変換器416を含み、それを通して、例証される刺激装置実施形態は、外部システムと無線通信する。クロック417は、コントローラによって使用され、プログラムされた療法スケジュールを実装可能である。例証されるシステムでは、コントローラ413は、神経刺激療法送達システム414を制御し、神経刺激電極418を通して、神経標的に神経刺激を送達する。
【0028】
例証される埋込型神経刺激装置411は、内部的に判定される呼吸変動を含む、療法入力を内部的に処理するように適合される。図4に示されるように、刺激装置411は、呼吸パラメータまたは複数のパラメータを示す呼吸センサ420から信号を受信するように適合され、呼吸センサからの信号を使用して、呼吸変動を判定するようにさらに適合される、呼吸変動分析器423を含む。例えば、いくつかの実施形態は、呼吸センサからの信号を使用して、呼吸数情報を導出し、呼吸変動分析器を使用して、RRVを判定する。いくつかの実施形態は、呼吸センサからの信号を使用して、TVVを判定する。変動は、他の呼吸パラメータを使用して判定可能である。コントローラ413は、分析器423からの呼吸変動を表す信号を受信し、プログラム可能パラメータを適切に調節し、療法送達システム414を使用して送達される神経刺激の強度療法を調節可能である。
【0029】
例証される埋込型神経刺激装置411は、神経刺激療法の有効性のための指標を検出する際に使用するために適合される滴定検出器424を含み、神経刺激療法の望ましくない副作用の指標を検出する際に使用するための副作用検出器425をさらに含む。種々の実施形態によると、滴定検出器424は、呼吸変動分析器423からの信号、呼吸センサからの信号、および/または心拍センサ、血圧センサ、化学センサ、心電図センサ等の他の生理学的センサ422からの信号を使用可能である。いくつかの実施形態は、監視された呼吸変動足跡または指数を所定の呼吸変動足跡または指数と比較し、神経刺激療法が効果的であるかどうか、神経刺激の強度療法を調節するかどうかを判定する。
【0030】
種々の実施形態によると、副作用検出器425は、呼吸変動分析器423からの信号、呼吸センサからの信号、および/または心拍センサ、血圧センサ、化学センサ、心電図センサ等の他の生理学的センサ422からの信号を使用可能である。例証される副作用検出器は、長期無呼吸、高無呼吸/呼吸低下指数(AHI)、または呼吸障害の他の指数等、所定の呼吸器疾患の検出器を含む。いくつかの実施形態は、所定の呼吸変動足跡または指数を使用して、所定の副作用を判定する。また、いくつかの実施形態は、心拍および心電図等の他の生理学的センサを使用して、望ましくない副作用を検出する。
【0031】
図5は、RRV足跡および関連指数を使用して、神経刺激療法を管理するためのシステムの実施形態を示す。例証されるシステム510は、迷走刺激療法(VST)を送達するように適合される神経刺激デバイス等、患者埋込型医療デバイス511を含む。デバイス511は、1つ以上の埋込型センサ519を組み込む、またはそれに連結される。センサ519のうちの1つ以上は、患者の呼吸の呼吸パラメータを感知するように構成される。呼吸情報は、埋込型センサ、または患者外部センサ、あるいは埋込型と外部センサの組み合わせ等、1つ以上のセンサを使用して得ることが可能である。呼吸センサの実施例は、分時換気量センサ、経胸腔インピーダンスセンサ、加速度計、あるいは圧力センサ、心臓センサ(例えば、ECGセンサ)、筋電図センサ、および気流センサ(例えば、陽性気道圧デバイスまたは人工呼吸器)等、患者の呼吸を表す呼吸波形を生成可能な他のセンサを含む。また、パルス酸素濃度計センサ、血圧センサ、患者体温センサ、およびEKGセンサ等の他のセンサを使用して、患者の種々の生理学的パラメータを感知してもよい。
【0032】
例証されるシステム510は、いくつかの患者外部デバイスを含む。外部システムインターフェース526は、埋込型デバイス511との通信を有効にするように構成される通信回路網を含む。また、外部システムインターフェース526は、外部センサ527との通信を有効にするように構成されてもよい。外部システムインターフェースは、プログラマ、高性能患者管理システム、ポータブルまたはハンドヘルド型コミュニケータ、あるいは他の患者外部システムのうちの1つ以上に通信可能に連結される、もしくは一体化されてもよい。外部システムインターフェース526は、表示を提供するグラフィカルユーザインターフェースまたは他のインターフェース等のユーザインターフェース528に連結される。ユーザインターフェース528は、キーボード、タッチスクリーンセンサ、マウス、ライトペン等のユーザ作動可能入/出力デバイスを含むことが可能である。ユーザインターフェースを使用して、スケジュールのプログラミング、および神経刺激療法のための強度を有効化可能な刺激パラメータのプログラミング等の療法情報を入力してもよい。システム510は、RRVプロセッサとして例証される、外部システムインターフェースに連結される呼吸変動プロセッサ529を含む。RRVプロセッサは、埋込型デバイス511、コミュニケータ530、プログラマ531、または高性能患者管理(APM)システム532の構成要素として組み込まれてもよい。呼吸変動プロセッサは、呼吸変動(例えば、RRV足跡およびRRV足跡から展開された指数)を判定する。この情報および他の関連情報は、医師、臨床医、および/または患者への表示のための外部システムインターフェース526に通信可能である。
【0033】
図6は、RRV足跡に関連する着目領域のマッピングを示す。これらの領域は、RRV足跡特徴がどのように患者状態または病状と一致するかという臨床的用途に基づいて、患者状態または病状の特性解析を表す。例えば、領域633Aおよび633B内の島の存在は、チェーン・ストークス呼吸の存在を示す。領域634内の足跡領域の増加は、呼吸機能障害の上昇を示す(例えば、安定心不全)。領域635内の足跡領域の増加は、正常呼吸機能の上昇を示す。領域636内の足跡領域の増加は、患者睡眠を示す一方、領域637内の足跡領域の増加は、患者活性の上昇を示す。図6に例証されるマッピングは、RRV足跡の解釈に対する一般化された「ガイド」を提供する。RRV足跡の領域、パターン、特徴、および他の側面は、そのようなガイドまたはマップに基づいて、視覚的に(手動で)、あるいはアルゴリズムで分析され、RRV足跡の手動もしくは自動解釈ならびに定量化を容易にしてもよい。変動マッピングは、他の呼吸パラメータ(例えば、換気量変動のためのマップ)に対しても計算可能である。
【0034】
図7A、7B、8A、8B、9、および10は、RRV足跡を示す。図に示される例証されるRRV足跡は、2次元RRV足跡に加えて、3次元を示すために、色分けされる。等高線のそのような着色は、本願図面の白黒レンダリングには示されないが、図9および10では、色は、括弧内のラベルによって識別される。後述されるように、異なる色は、3次元を画定するパラメータの差異を示す。
【0035】
図7Aは、正常対象のRRV足跡を示す。RRV足跡は、毎分約10呼吸(br/m)に集中し、等高線は、限局され、平滑である。図7Bは、安定心不全患者のRRV足跡を示す。図7BのRRV足跡は、図7Aのものと比較して、右側に推移しており、より高い呼吸数(RR)を示す。また、図7Bの足跡は、より広い範囲のRRおよびΔRRを有する。図7Bの足跡の等高線は、依然として、比較的平滑である。領域の増加および右側への移動(例えば、より高いRR)を示すRRV足跡は、概して、心不全状態の悪化を示す。
【0036】
図8Aは、入院時の入院心不全患者のRRV足跡を示す。図8Bは、退院時の同心不全患者のRRV足跡を示し、患者の改善された心不全状態を示唆する。図8Aに示される入院時の患者のRRV足跡は、右側に大幅に偏流しており、極端に不規則な等高線を伴う大規模な足跡領域を有し、多くの離島は、この場合、周期性呼吸である、異常呼吸パターンを示す。図8Bに示される退院時のRRV足跡は、図8Aよりも右側に推移してはおらず、大規模な足跡ではあるが、限定的離島を有し、周期性呼吸の改善を示唆する。
【0037】
図9は、安定心不全患者のRRV足跡に隣接する正常患者のRRV足跡を示す。図9に例証されるように、足跡の種々の領域は、着色可能であって、注釈を加え(例えば、矢印、楕円、および対応する記述子)、特定の着目足跡の部分を強調してもよい。例証される実施例では、異なる色の等高線は、異なる発生頻度に対応し、赤色は、最高発生回数を表し、緑色は、最低発生回数を表す。例証される実施例では、足跡の赤色領域は、主要RR領域を示し、青色領域は、RRの最頻値(br/m)を示し、緑色領域は、異常RR領域を示す。本図は、患者の心不全状態に応じて、各色で囲まれた領域内の差異を示す。そのような差異は、各色で囲まれた領域の位置、面積、および/または形状を含む。例えば、安定心不全患者のRRV足跡は、正常患者のRRV足跡と比較して、RRの最頻値(青色矢印点)の右側への大幅な推移と、主要RR領域(赤色で囲まれた領域)および異常RR領域(緑色で囲まれた領域)の両方の大幅な拡大を示す。2つの足跡間の差異の規模は、患者の心不全状態の変化を反映する。
【0038】
図10は、入院前後の同心不全患者のRRV足跡を示し、入院後の患者の心不全状態の全般的改善を証明する。点線楕円によって示される黄色領域として強調される異所性「島」は、チェーン・ストークス呼吸等の異常呼吸パターンと関連する。患者入院後に展開されるRRV足跡は、島領域の減少を示し、例えば、チェーン・ストークス呼吸の低下を示唆する。
【0039】
図11は、呼吸数変動(RRV)を判定し、関連指数とともにその足跡を生成するための方法の実施形態を示す。呼吸感知信号は、1138で得られ、呼吸数(RR)は、1139で呼吸感知信号を使用して計算される。1140では、隣接呼吸間の呼吸数(ΔRR)の差異が計算される。1141では、RR足跡が生成され、指数は、足跡から生成される。呼吸数変動の視覚的および/または定量的測定値は、1142で生成される。これらの測定値を使用して、自動的に、または医師介入を通して、達成され得るように、神経刺激の強度療法を調節可能である。
【0040】
図12は、呼吸数変動(RRV)を判定し、関連指数とともにその足跡を生成するための方法の実施形態を示す。呼吸感知信号は、分時換気量センサ等から、1243で得られる。呼吸感知信号に関連する患者の生理学的状態が、1244で検出される。RRV足跡が1245で生成され、RRV指数は、1246で生成される。RRV指数は、自動的またはアルゴリズムで生成可能である。1247で閾値を超えると、1248でアラーム等の出力が生成される、または患者に送達される療法の調節または滴定等のいくつかの介入作用が行なわれる。
【0041】
図13は、呼吸数変動を判定し、関連指数とともにその足跡を生成するための方法の実施形態を示す。呼吸感知信号は、分時換気量センサ等から、1349で得られる。呼吸感知信号に関連する患者の生理学的状態が、1350で検出される。RRV足跡は、1351で生成される。RRV足跡は、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)を介して提示されるRRV足跡の表示またはプロットを使用して、医師等によって、1352において手動で評価される。医師は、GUIを介して、プロセッサによって、種々の着目RRV指数を選択的に生成させてもよい。医師が、手動評価に基づいて、1353で懸念がある場合、医師は、1354において、アラーム等の出力の生成、あるいは患者に送達される療法の調節または滴定等のいくつかの介入措置を行なってもよい。
【0042】
図14は、種々の実施形態による、1455において、関連指数を用いた呼吸数変動足跡に基づいて行なわれ得る種々の操作を示す、ブロック図である。RRV足跡に基づく信号が、1456で生成されてもよい。信号は、例えば、電気または電磁信号、光信号、あるいは音響信号を含む、いくつかの形態をとり得る。本信号は、迷走刺激療法(VST)等の神経刺激療法の滴定を含む、種々の診断および治療目的のために使用されてもよい。信号は、患者内に埋め込まれる医療デバイスによって発生されてもよい。信号は、患者内に埋め込まれる医療デバイスから呼吸センサデータを受信する患者外部デバイスによって発生されてもよい。
【0043】
RRV足跡の変化は、監視された1457で監視されてもよい。心不全状態、心不全状態の変化、異常呼吸状態、および/または異常呼吸状態の変化は、1458で判定および監視されてもよい。種々の統計分析が、1459で行なわれてもよく、RRV足跡および関連指数が計算され得る。神経刺激療法は、RRV足跡および1つ以上の指数に基づいて、1460で監視および滴定されてもよい。療法の有効性は、RRV足跡および関連指数を使用して、1461で定量化されてもよい。
【0044】
臨床医および/または患者への警告は、RRV足跡および関連指数に基づいて、1462で生成され、種々の形態で臨床医および/または患者に通信されてもよい。RRV足跡および関連指数を使用して、1463で代償不全エピソードを予測してもよい。例えば、心不全患者の呼吸パターンの漸進的または突発的変化は、患者のRRV足跡および関連指数の変化から検出可能であって、代償不全エピソードの相対的確率を示し得る。RRV足跡および関連指数を使用して、1464で患者の心不全状態の安定と悪化を区別してもよい。
【0045】
パターンおよび/または特徴認識は、特定の呼吸または患者病状に関連し得る着目領域、位置、形状/等高線を認識あるいは識別するため等、RRV足跡に基づいて、1465で行なわれてもよい。種々の公知のパターンおよび/または特徴認識技術は、神経ネットワークおよび他の統計パターン認識技術を使用すること等によって、採用されてもよい。そのような技術は、主成分分析、フィッシャー、ならびに重量変動計算および特徴選択を含んでもよい。神経ネットワーク法は、誤差逆伝搬神経ネットワークおよび/または放射基底関数神経ネットワークを含んでもよい。統計パターン認識、線形判別分析、二次判別分析、正規化判別分析、クラス類似性のソフト独立モデル化、および/または収縮共分散による判別分析を含んでもよい。
【0046】
RRV足跡は、他のセンサ(例えば、姿勢センサ、運動センサ)によって判定されるような異なる生理学的状態に1466でマッピングされてもよい。条件付き分布は、1467でRRV足跡から生成されてもよい。例えば、呼吸数(RR)ヒストグラムは、RRV足跡の適切な軸に沿って、RRV足跡を統合することによって得られてもよい。呼吸数変動ヒストグラムは、RRV足跡の他の軸に沿って、RRV足跡を統合することによって得られてもよい。
【0047】
RRV足跡は、心拍変動(HRV)足跡と組み合わせて、心肺機能評価の信頼性の向上を提供してもよい。組み合わせられたRRVおよびHRV足跡は、1468で患者の心肺機能の測定値および追跡を提供する。HRV足跡およびRRV足跡の領域比等の種々の指数が、1469で生成され、患者の心肺機能状態を定量化してもよい。
【0048】
3次元が、1470で足跡(例えば、2次元ヒストグラム)に追加または重畳されてもよい。そのような3次元は、例えば、換気量、患者が特定の呼吸パターンにある持続時間、あるいは特定の呼吸パターンまたは数の発生頻度であってもよい。3次元は、カラースキームの使用によって、あるいは足跡の2次元面から本2次元面に直角の面に延在するグラフィカル構図または印によって、1471で示されてもよい。
【0049】
種々のRRV足跡および指数データ、傾向データ、ならびに他の生理学的データは、患者、臨床医、および/または医師による使用のために1472で表示されてもよい。図14は、呼吸数データを使用して展開されるRRV足跡の使用に関わる実施例の非排他的かつ非限定的一覧を提供することを意図する。
【0050】
図15は呼吸サイクル長、吸気期間、呼気期間、非呼吸期間、および換気量を含む呼吸パラメータを示す、呼吸信号の図である。一例として、呼吸変動は、図に例証されるパラメータのうちの1つ以上を使用して判定可能である。グラフの軸は、信号が経時的呼吸量を表す容積および時間である。吸気期間は、呼吸信号の振幅が吸気閾値を上回る、呼気サイクルの吸気相の開始時に開始し、呼吸サイクルの振幅がピークに達する、呼吸サイクルの呼気相の開始時に終了する。呼気期間は、呼気相の開始時に開始し、呼吸信号の振幅が呼気閾値を下回ると終了する。非呼吸期間は、呼気相の終了と次の吸気相の開始との間の時間間隔である。換気量は、呼吸信号の頂点間振幅である。呼吸数は、サイクル長から判定可能である。サイクル長が分単位で提供される場合、(br/min)=1/(サイクル長)。
【0051】
呼吸信号は、呼吸活性を示す生理学的信号である。種々の実施形態では、呼吸信号は、呼吸によって変調される、任意の生理学的信号を含む。一実施形態では、呼吸信号は、埋込型インピーダンスセンサによって感知される、経胸腔インピーダンス信号である。別の実施形態では、呼吸信号は、埋込型圧力センサによって感知される血圧信号から抽出され、呼吸成分を含む。別の実施形態では、呼吸信号は、胸部の動きまたは肺容積を示す信号を感知する、外部センサによって感知される。
【0052】
上述のように、本主題の実施形態は、望ましくない副作用を検出する。望ましくない副作用の実施例の1つは、呼吸器疾患である。
【0053】
図16は、呼吸器疾患反応性神経刺激システムの実施形態を示す、ブロック図である。例証されるシステム1673は、呼吸センサ1674と、センサ処理回路1675と、呼吸制御神経刺激回路1676と、を含む。例証される呼吸制御神経刺激回路1676は、刺激出力回路1677と、コントローラ1678と、を含む。コントローラ1678は、呼吸信号入力1679と、呼吸器疾患検出器1680と、刺激調節モジュール1681と、刺激送達コントローラ1682と、を含む。呼吸器疾患検出器1680は、呼吸信号入力1679によって受信される呼吸信号を使用して、所定の種類の呼吸器疾患を検出する。刺激調節モジュール1681は、呼吸器疾患のそれぞれの検出に応答して、神経刺激パルスの送達を調節する。一実施形態では、刺激調節モジュール1681は、呼吸器疾患の検出に応答して、刺激アルゴリズムの実行を停止する。刺激送達制御器1682は、1つ以上の刺激アルゴリズムを実行することによって、神経刺激パルスの送達を制御する。
【0054】
図17は、呼吸器疾患反応性神経刺激システム1773の実施形態を示す、ブロック図である。システム1773は、呼吸センサ1774と、センサ処理回路1775と、生理学的センサ1783と、別のセンサ処理回路1784と、呼吸制御神経刺激回路1776と、を含む。
【0055】
生理学的センサ1783は、呼吸センサ1774によって感知される生理学的信号に加えて、1つ以上の生理学的信号を感知する。種々の実施形態では、生理学的センサ1783は、心臓信号、心音を示す信号、心臓および/または経胸腔インピーダンス信号、血液酸素レベルを示す信号、ならびに神経連絡を示す信号のうちの1つ以上の種々の組み合わせを感知する。センサ処理回路1784は、神経刺激を制御する際に呼吸制御神経刺激回路1776によって使用するために、生理学的センサ1783によって感知される1つ以上の生理学的信号を処理する。種々の実施形態では、生理学的センサ1783または生理学的センサ1783の一部は、埋込型医療デバイスに含まれるか、あるいは1つ以上のリード線またはテレメトリを介して、埋込型医療デバイスに通信可能に連結される。種々の実施形態では、センサ処理回路1784またはセンサ処理回路1784の一部は、埋込型医療デバイスに含まれるか、1つ以上リード線またはテレメトリを介して、埋込型医療デバイスに通信可能に連結される。
【0056】
例証される呼吸制御神経刺激回路1776は、刺激出力回路1777と、コントローラ1778と、を含む。コントローラ1778は、呼吸信号入力1779と、呼吸器疾患検出器1780と、生理学的信号入力1785と、生理学的事象検出器1786と、刺激調節モジュール1781と、刺激送達コントローラ1782と、を含む。
【0057】
呼吸器疾患検出器1780は、呼吸信号を使用して、1つ以上の呼吸器疾患を検出する。例証される実施形態では、呼吸器疾患検出器は、無呼吸検出器と、呼吸低下検出器と、呼吸困難検出器と、を含む。種々の他の実施形態では、呼吸器疾患検出器は、無呼吸検出器、呼吸低下検出器、および呼吸困難検出器のうちの1つ以上の組み合わせを含む。種々の実施形態では、呼吸器疾患検出器はまた、呼吸数が閾値数を下回る場合の低呼吸数、換気量が検出閾値量を下回る場合の低換気量、および分時換気量が検出閾値を下回る場合の低分時換気量等、1つ以上の呼吸パラメータの異常値を検出する。
【0058】
無呼吸は、異常に長い非呼吸期間によって特徴付けられる。無呼吸検出器は、非呼吸期間を検出閾値期間と比較することによって、無呼吸を検出する。無呼吸は、非呼吸期間が検出閾値期間を超えると検出される。呼吸低下は、異常に浅い呼吸、すなわち、低換気量によって特徴付けられる。呼吸低下検出器は、換気量を検出閾値と比較することによって、呼吸低下を検出する。呼吸低下は、換気量が検出閾値量を下回る場合に検出される。一実施形態では、換気量は、所定の時間間隔または所定数の呼吸サイクルにわたる平均換気量である。呼吸困難は、速く浅い呼吸、すなわち、高呼吸数対換気量比によって特徴付けられる。呼吸困難検出器は、呼吸数対換気量比を検出閾値比と比較することによって、呼吸困難を検出する。呼吸困難は、比率が閾値比を超える場合に検出される。種々の実施形態では、閾値期間、検出閾値量、および/または閾値比は、実験的に確立される。
【0059】
生理学的信号入力は、生理学的センサによって感知され、センサ処理回路によって処理される1つ以上の生理学的信号を受信する。生理学的事象検出器は、1つ以上の生理学的信号から1つ以上の生理学的事象を検出する。種々の実施形態では、生理学的事象検出器は、心臓信号形態の変化、心音波形形態の変化、インピーダンス信号形態の変化、および血中酸素飽和度の変化のうちの1つ以上を検出する。
【0060】
刺激調節モジュールは、少なくとも呼吸器疾患検出器による呼吸器疾患の検出に応答して、神経刺激パルスの送達を調節する。一実施形態では、刺激調節モジュールは、呼吸器疾患検出器による呼吸器疾患の検出、および生理学的事象検出器による生理学的事象の検出に応答して、神経刺激パルスの送達を調節する。刺激送達コントローラは、1つ以上の刺激アルゴリズムを実行することによって、神経刺激パルスの送達を制御する。刺激調節モジュールは、刺激スイッチを含む。刺激スイッチは、無呼吸、呼吸低下、または呼吸困難等の呼吸器疾患の検出に応答して、第1の刺激アルゴリズムの実行を停止する。例えば、第1の刺激アルゴリズムは、迷走神経刺激によって心臓の病状を治療するように実行される。無呼吸、呼吸低下、または呼吸困難が検出される場合、迷走神経刺激は、心臓の病状を治療するために設計される迷走神経刺激による病状の悪化を回避するように停止される。
【0061】
図18は、呼吸器疾患に応答して、神経刺激を調節するための方法の実施形態を示す、フローチャートである。方法1887は、呼吸制御神経刺激回路によって行なわれてもよい。神経刺激は、1888で複数の刺激パラメータを使用することによって制御される。神経刺激は、非呼吸障害を治療するために送達される。一実施形態では、神経刺激は、心不全を治療する、または心臓リモデリングを制御する等、心臓の病状を治療するために送達される。呼吸信号は、1889で受信される。呼吸信号は、呼吸サイクルおよび呼吸パラメータを示す。呼吸パラメータの実施例は、呼吸サイクル長、吸気期間、呼気期間、非呼吸期間、換気量、および分時換気量を含む。種々の実施形態では、呼吸信号は、呼吸サイクルおよび呼吸パラメータを示す生理学的信号であるか、またはそれに由来する。生理学的信号の実施例は、経胸腔インピーダンス信号およびPAP信号等の血圧信号を含む。呼吸器疾患は、1890で検出される。呼吸器疾患の実施例は、低呼吸数、低換気量、および低分時換気量等の異常呼吸パラメータ値、無呼吸、呼吸低下、および呼吸困難を含む。無呼吸は、非呼吸期間が検出閾値期間を超えると検出される。呼吸低下は、換気量が検出閾値量を下回る場合に検出される。呼吸困難は、呼吸数対換気量比が検出閾値比を超えると検出される。1891で、呼吸器疾患が検出される場合、1892で刺激パラメータのうちの1つ以上を調節することによって、神経刺激が調節される。神経刺激は、検出された呼吸器疾患を終結または緩和するように調節される。一実施形態では、神経刺激は、刺激の強度を低減させるように調節される。神経刺激は、所定の期間にわたって、または呼吸器疾患がもはや検出されなくなるまで、一時停止可能である。神経刺激は、検出された呼吸器疾患を治療するように調節可能である。
【0062】
種々の実施形態によると、上記で例証および説明されるデバイスは、所定の位置に位置付けられる1つ以上の刺激電極等を通して、所望の神経標的に対して、電気刺激として、神経刺激を送達するように適合される。神経刺激を送達するための他の要素も使用可能である。例えば、いくつかの実施形態は、変換器を使用して、超音波、光、磁気、または熱エネルギー等の他の種類のエネルギーを利用して、電気刺激を送達する。
【0063】
当業者は、本明細書に図示および説明されるモジュールならびに他の回路網が、ソフトウェア、ハードウェア、およびソフトウェアとハードウェアの組み合わせを使用して、実装可能であることを理解するであろう。したがって、モジュールおよび回路とは、例えば、ソフトウェア実装、ハードウェア実装、およびソフトウェアとハードウェアの実装を包含することを意図される。
【0064】
本開示において例証される方法は、本主題の範囲内の他の方法を排除することを意図するものではない。当業者は、本開示の熟読および理解によって、本主題の範囲内の他の方法も理解するであろう。上述の実施形態および例証される実施形態の一部は、必ずしも、相互に排他的ではない。これらの実施形態またはその一部は、組み合わせることが可能である。種々の実施形態では、方法は、プロセッサによって実行されると、それぞれの方法をプロセッサに行なわせる一連の命令を表す、搬送波または伝播信号として具現化されるコンピュータデータ信号を使用して実装される。種々の実施形態では、方法は、プロセッサにそれぞれの方法を行なわせることが可能なコンピュータアクセス可能媒体に含有される一式の命令として実装される。種々の実施形態では、媒体は、磁気媒体、電子媒体、または光学媒体である。
【0065】
上述の詳細な説明は、例証であって、制限されるものではないことが意図される。他の実施形態は、上述の説明の熟読および理解によって、当業者に明白となるであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の請求項とともに、そのような請求項が享受できる同等物の全範囲を参照することによって、決定されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の自律神経標的の刺激を含む、慢性的神経刺激療法を送達するための埋込型神経刺激装置であって、
前記患者の呼吸を監視する際に使用するように適合される、少なくとも1つの呼吸センサと、
前記慢性的神経刺激療法のために、前記患者の前記自律神経標的を刺激する際に使用するための神経刺激信号を生成するように適合される、神経刺激療法送達モジュールと、
前記患者の呼吸を示す前記少なくとも1つの呼吸センサから呼吸信号を受信するように適合され、前記呼吸信号を使用して得られる呼吸変動測定値を使用して、前記神経刺激療法送達モジュールを制御するように適合される、コントローラと
を備える、刺激装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
プログラム可能パラメータを使用して、前記神経刺激療法送達モジュールを制御することと、
外部デバイスと通信し、前記患者の呼吸を示す呼吸情報を前記外部デバイスに送信し、前記呼吸情報を使用して、前記外部デバイスが前記呼吸変動測定値を判定することを可能にすることと、
前記外部デバイスからプログラミング命令を受信し、前記呼吸変動測定値を使用して判定される前記プログラム可能パラメータのうちの少なくとも1つを調節することと
を行うように適合される、請求項1に記載の刺激装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記呼吸信号を使用して、前記呼吸変動測定値を判定するように適合される、呼吸変動分析器を含む、請求項1に記載の刺激装置。
【請求項4】
前記コントローラは、制御信号を送達し、前記呼吸変動分析器からの前記呼吸変動測定値を使用して、療法強度を制御するように適合される滴定検出器を含む、請求項3に記載の刺激装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記呼吸変動分析器からの前記呼吸変動測定値を閾値と比較し、制御信号を送達し、前記比較に基づいて、療法強度を制御するように適合される、安全性検出器を含む、請求項3に記載の刺激装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの呼吸センサおよび前記コントローラは、低活性期間中の呼吸を監視するように適合され、前記コントローラは、前記低活性期間に対応する呼吸変動測定値を使用して、前記神経刺激送達モジュールを制御するように適合される、請求項3に記載の刺激装置。
【請求項7】
前記低活性期間は、睡眠期間である、請求項6に記載の刺激装置。
【請求項8】
前記コントローラに接続されるクロックをさらに備え、前記コントローラは、低活性期間を予測する所定のスケジュールに従って、前記クロックを使用して、前記患者の呼吸の監視を制御するように適合される、請求項6に記載の刺激装置。
【請求項9】
前記コントローラに接続される活性センサをさらに備え、前記コントローラは、前記活性センサを使用して、低活性期間を感知するように適合される、請求項6に記載の刺激装置。
【請求項10】
前記コントローラは、低活性期間中の呼吸を監視するように適合され、
前記システムは、前記監視された呼吸を使用して、呼吸変動を判定する手段を備え、
前記コントローラは、前記呼吸変動が所定の閾値を超える場合、前記刺激の強度を調節するように適合される、
請求項1に記載の刺激装置を備えるシステム。
【請求項11】
前記コントローラは、低活性期間中の呼吸を監視するように適合され、
前記システムは、前記監視された呼吸を使用して、呼吸変動を判定する手段を備え、
前記コントローラは、少なくとも1つの所定の閾値との前記呼吸変動の比較を使用して、前記刺激の強度を調節するように適合される、
請求項1に記載の刺激装置を備えるシステム。
【請求項12】
前記所定の閾値は、前記療法のための前記刺激の有効性を示す滴定閾値または前記刺激の望ましくない副作用を示す副作用閾値を含む、請求項10または11に記載のシステム。
【請求項13】
前記システムは、呼吸器疾患が前記監視された呼吸によって反映されるかどうかを判定し、前記監視された呼吸が前記呼吸器疾患を反映する場合、前記自律神経標的に対する前記刺激の強度を調節するように適合される、請求項10または11に記載のシステム。
【請求項14】
前記呼吸変動を判定するための手段は、呼吸数変動を判定するための手段または換気量変動を判定するための手段を含む、請求項10または11に記載のシステム。
【請求項15】
前記呼吸変動を判定するための手段は、前記呼吸変動を表す足跡を生成し、前記足跡の定量的測定値を表す1つ以上の指数を生成するための手段を含み、前記1つ以上の指数は、前記足跡の特徴、パターン、形状、または等高線を含む、請求項10または11に記載のシステム。
【請求項1】
患者の自律神経標的の刺激を含む、慢性的神経刺激療法を送達するための埋込型神経刺激装置であって、
前記患者の呼吸を監視する際に使用するように適合される、少なくとも1つの呼吸センサと、
前記慢性的神経刺激療法のために、前記患者の前記自律神経標的を刺激する際に使用するための神経刺激信号を生成するように適合される、神経刺激療法送達モジュールと、
前記患者の呼吸を示す前記少なくとも1つの呼吸センサから呼吸信号を受信するように適合され、前記呼吸信号を使用して得られる呼吸変動測定値を使用して、前記神経刺激療法送達モジュールを制御するように適合される、コントローラと
を備える、刺激装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
プログラム可能パラメータを使用して、前記神経刺激療法送達モジュールを制御することと、
外部デバイスと通信し、前記患者の呼吸を示す呼吸情報を前記外部デバイスに送信し、前記呼吸情報を使用して、前記外部デバイスが前記呼吸変動測定値を判定することを可能にすることと、
前記外部デバイスからプログラミング命令を受信し、前記呼吸変動測定値を使用して判定される前記プログラム可能パラメータのうちの少なくとも1つを調節することと
を行うように適合される、請求項1に記載の刺激装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記呼吸信号を使用して、前記呼吸変動測定値を判定するように適合される、呼吸変動分析器を含む、請求項1に記載の刺激装置。
【請求項4】
前記コントローラは、制御信号を送達し、前記呼吸変動分析器からの前記呼吸変動測定値を使用して、療法強度を制御するように適合される滴定検出器を含む、請求項3に記載の刺激装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記呼吸変動分析器からの前記呼吸変動測定値を閾値と比較し、制御信号を送達し、前記比較に基づいて、療法強度を制御するように適合される、安全性検出器を含む、請求項3に記載の刺激装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの呼吸センサおよび前記コントローラは、低活性期間中の呼吸を監視するように適合され、前記コントローラは、前記低活性期間に対応する呼吸変動測定値を使用して、前記神経刺激送達モジュールを制御するように適合される、請求項3に記載の刺激装置。
【請求項7】
前記低活性期間は、睡眠期間である、請求項6に記載の刺激装置。
【請求項8】
前記コントローラに接続されるクロックをさらに備え、前記コントローラは、低活性期間を予測する所定のスケジュールに従って、前記クロックを使用して、前記患者の呼吸の監視を制御するように適合される、請求項6に記載の刺激装置。
【請求項9】
前記コントローラに接続される活性センサをさらに備え、前記コントローラは、前記活性センサを使用して、低活性期間を感知するように適合される、請求項6に記載の刺激装置。
【請求項10】
前記コントローラは、低活性期間中の呼吸を監視するように適合され、
前記システムは、前記監視された呼吸を使用して、呼吸変動を判定する手段を備え、
前記コントローラは、前記呼吸変動が所定の閾値を超える場合、前記刺激の強度を調節するように適合される、
請求項1に記載の刺激装置を備えるシステム。
【請求項11】
前記コントローラは、低活性期間中の呼吸を監視するように適合され、
前記システムは、前記監視された呼吸を使用して、呼吸変動を判定する手段を備え、
前記コントローラは、少なくとも1つの所定の閾値との前記呼吸変動の比較を使用して、前記刺激の強度を調節するように適合される、
請求項1に記載の刺激装置を備えるシステム。
【請求項12】
前記所定の閾値は、前記療法のための前記刺激の有効性を示す滴定閾値または前記刺激の望ましくない副作用を示す副作用閾値を含む、請求項10または11に記載のシステム。
【請求項13】
前記システムは、呼吸器疾患が前記監視された呼吸によって反映されるかどうかを判定し、前記監視された呼吸が前記呼吸器疾患を反映する場合、前記自律神経標的に対する前記刺激の強度を調節するように適合される、請求項10または11に記載のシステム。
【請求項14】
前記呼吸変動を判定するための手段は、呼吸数変動を判定するための手段または換気量変動を判定するための手段を含む、請求項10または11に記載のシステム。
【請求項15】
前記呼吸変動を判定するための手段は、前記呼吸変動を表す足跡を生成し、前記足跡の定量的測定値を表す1つ以上の指数を生成するための手段を含み、前記1つ以上の指数は、前記足跡の特徴、パターン、形状、または等高線を含む、請求項10または11に記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2010−531164(P2010−531164A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513195(P2010−513195)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/007307
【国際公開番号】WO2009/002402
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/007307
【国際公開番号】WO2009/002402
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】
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