説明

呼吸交換率センサ

【課題】人の呼吸交換率(RER)を直接測定するためのデバイスを提供すること。
【解決手段】デバイスが、呼気から酸素を引き込むことができるOポンプとして、亜鉛空気電池セルと定電流負荷回路とを利用する。流れ経路内に位置されたサーミスタがブリッジ回路の脚部を形成し、ブリッジ回路の出力は呼気中の酸素濃度、したがって、酸素摂取に比例する。サーミスタ流量計回路がOとCOとの熱伝導率の差を利用して、存在する2つの気体の相対比率での尺度を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、脂肪を減少させる、又は心臓血管機能を高めるといった所望の目標を最適化するために、適切な個人化された運動法を決定するための装置及び方法に関し、より詳細には、対象者が目標を達成するのを手助けするためにリアルタイム監視を提供するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願の譲受人に譲渡され、その内容を参照によって援用されるSnow他の米国特許第6554776号に記載されているように、運動の増加と共に、筋肉は、機械的な作業を行うために代謝基質を燃焼する必要があることがよく認識されている。ここで、炭水化物及び脂肪が典型的な燃料源であり、エネルギーを提供するためにこれらを代謝させなければならない。この代謝により、エネルギーを提供するために酸素が消費され、副生成物として二酸化炭素が生成される。運動に対する典型的な応答は、血流を増加させることによって、働いている筋肉への酸素の送達を増やすことであり、これはまた、排出のために肺へ送達することによって二酸化炭素を除去することを容易にする。好気性代謝として知られているこの酸化プロセスは、酸素消費と二酸化炭素生成の比例的な増加をもたらし、これは、実施される作業のレベルと密接に結び付いている。好気性代謝は、脂肪基質と炭水化物基質の混合を使用する。ときとして呼吸商(RQ)と呼ばれることもある呼吸交換率(RER)が、生成される二酸化炭素(CO)の量を消費される酸素(VO)の量で割った値を表す。静止時、及び軽い運動では、RERは通常0.7〜0.85の範囲であり、細胞代謝に使用される支配的な燃料に部分的に依存する。
【0003】
作業のレベルが上がり続け、働いている筋肉への酸素の送達を高める能力がその最大限界に近づくと、好気性プロセスによって生成されるエネルギーを補足するために代替方法が活性化される。嫌気性代謝と呼ばれるこの代替方法は、主に炭水化物基質を使用し、これは、酸素消費に対する二酸化炭素生成を不均衡に増加させる。この不均衡な増加は、0.9〜1.3、又はそれよりも高い値へのRERの上昇によって反映される。
【0004】
RER測定の値の1つは、嫌気しきい値(AT)の識別を可能にする、したがって好気性プロセスがもはや適切でない作業率を識別するものである。用語「嫌気しきい値」は、所与の作業率で、運動している筋肉に供給される酸素が酸素要件に合わないという仮説に基づく。この不均衡は、エネルギー生成のための嫌気グリコリシスを高め、代謝副生成物として乳酸塩を生み出す。ATは、作業率及び酸素摂取の線形増加にも関わらず換気が突然増大する運動中の点である。Acorn他の特許第5297558号に記載されているように、健康改善及び減量のための運動処方及びプロトコルは、このしきい値を知る、又は仮定することに基づいている。典型的には、測定がベースライン試験中になされ、運動処方は、RERから求められるしきい値に基づく。しかし、心肺系がより効率良くなるにつれて、トレーニング期間中に嫌気しきい値が変化し、トレーニング効果に関して処方を調節するために後続の試験が必要であることが理解される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、RERの測定は、典型的には、Anderson他の米国特許第4462764号、並びにHoward他の米国特許第5060656号及び第5117674号に記載されているものなどコンピュータ化された運動試験システムを使用して、実験環境でのみ可能であった。これらのデバイスは、別個の分析器を使用して、空気流、酸素、及び二酸化炭素のレベルを使用して換気を測定し、コンピュータを採用して、酸素摂取及び二酸化炭素生成を求めるための計算を行う。RERの計算は二次計算である。RERを測定するためのこの手法の欠点は、3つのセンサをコンピュータと一体化すること、信号を時間的に整列させること、及びすべての3つのセンサに関する較正を維持することが高価で複雑であることである。換気気体測定の技法は、その広範な適用可能性を妨げるいくつかの潜在的な制限を有する。気体交換測定システムは、費用がかかり、最適な使用のために細心の保守及び較正を必要とする。試験を施して結果を解釈する人員は、この技法の訓練を受けており、熟達していなければならない。最後に、この試験は、追加の費用及び時間、並びに患者の協力を必要とする。したがって、訓練を受けていない対象者が自分自身のRERを監視するために運動の過程中に直接採用することができる単純で安価なセンサ又はモニタの必要性がある。ここで、対象者は、検出されたATでの自分の心拍数を求めることができ、次いで、目標が脂肪を燃焼することである場合には、ATでの心拍数を下回る所定のパーセンテージで、目標が心臓血管機能の向上である場合には、ATでの心拍数を上回る所定のパーセンテージで心拍数を維持することによって、自分の運動をペース調整することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、人のRERを直接測定するためのデバイスが、中を通って延在する内腔を有する管状ハウジングであって、吸気及び呼気が内腔を通って流れるようにされた管状ハウジングを備える。内腔内に、呼気の源に面する空気入口を有する亜鉛空気電池などの酸素燃料セル電池が位置される。亜鉛空気電池に、定電流負荷回路が結合される。呼気の源と亜鉛空気電池の空気入口との間の位置で管状ハウジングの内腔内に位置されたサーミスタ要素を有するサーミスタ流量計回路が、アセンブリを完成させる。サーミスタ流量計回路は、対象者によって吐き出される空気中に存在する酸素に対する二酸化炭素の相対比率に比例する出力信号を生成するように動作する。また、呼気入口とサーミスタ要素との間の経路内に、水に対して選択的な透過性を示す合成イオノマーからなる管が位置される。このようにすると、サーミスタ及び亜鉛空気セルに達する気流から水蒸気が除去される。さらに、管状ハウジングを通って流れてサーミスタ要素に当たる呼気がないときに所定の値で周囲温度を維持するために、加熱器要素をセンサ・ハウジング内に含むことができる。
【0007】
本発明の前述の特徴、目的、及び利点は、特に添付図面に関連付けて考察したときに、以下の好ましい実施例の詳細な説明から当業者に明らかになろう。
【実施例】
【0008】
本発明は、RERに比例する出力信号を生成する単一のセンサを使用して酸素と二酸化炭素との相対変化を監視することによって、対象者のRERを直接測定するためのシステムを提供する。亜鉛空気電池及びサーミスタが新規の組合せで採用されて、極めて小さいセンサ・サイズ、低い材料費、較正処置の不要、及びコモンモード誤差相殺を含めた重要な利点を有する自己調整システムを形成する。
【0009】
亜鉛/空気電池は、酸素を消費して電力を提供し、酸素燃料セル電池とみなされる。そのような電池にわたる負荷が十分に高いとき、その負荷が、公称で1.4ボルトである電池の電圧の崩壊をもたらす。0.15ボルト以下で、電池にわたる負荷が電池の内部抵抗を負荷抵抗未満に降下させるので、電子伝導率がイオン伝導率を超え、内部伝導性の破壊を生じる。過剰の電流が、電池の定電流要求による酸素還元欠損に比例して、カソードで水素ガスを生成させる。したがって、水素が放出するときに酸素欠乏が実際に測定され、水素は、流れのようなものとして現れる。酸素欠乏が大きければ大きいほど、即ち酸素レベルが周囲空気中の酸素濃度レベル未満へ大きく降下すればするほど、生成される水素の量が大きくなる。
【0010】
水素は、非常に高い熱伝導率をもつ気体であり、サーミスタに対して二酸化炭素伝導率と完全に反対に働く。これは、二酸化炭素生成とは反対に、酸素欠損又は消費の測定をもたらす。この二次効果は、水素が蓄積して二酸化炭素信号を妨害するのを防止するために若干の設計上の創造性を必要とするが、デバイスの本質的な性能を損なわない。水素を整然と呼気流中に逃がすことができることが、正確な分析に必要とされる信号の線形性を提供する。
【0011】
はじめに、セルは、大気中で見出される濃度に等しいO及びCO濃度で、定常状態条件下で作動される。即ち、大気中のOの濃度は約21%であり、大気中のCOの濃度は約0.03%である。これらの条件の下で、亜鉛空気セルは、Oが容易に入手可能である限り定常電流を生成する。しかし、酸素濃度が低下する場合、酸素の流入がないと既存の電流を維持することができない。これらの条件を満たす唯一の方法は、より多くのOをシステムに追加することである。このようにすると、セルは、それ自体のために「酸素ポンプ」又は調整器として機能するように強いられる。セルは、十分なOが欠如しているときはいつも、それ自体の流れを調整して、Oの小さな流れを内部に引き込むことを開始しなければならない。この流れは、利用可能な酸素濃度に比例する。
【0012】
本発明のセンサ・システムの第2の部分は、流れを測定するために使用されるサーミスタ回路である。サーミスタは、酸素流と、二酸化炭素の逆の効果との両方を測定する。現実には、4ミリアンペアでの実際の酸素の流れは、0.1〜0.2ml/分程度である。この流れはサーミスタの検出限界未満であるが、二次効果がその流れをサーミスタが測定できるようにする。亜鉛/空気電池がその定格容量を超える電流引込みを受けるとき、電池電圧が降下し、デバイスは分極される。この状態において、「ポンピング」が生じる。電気化学デバイスがこのように分極されるとき、カソードに過剰な水素イオンが存在して酸素還元を行う。過剰な水素の量は、電池の酸素消費に比例する。呼吸分析の場合など、酸素分圧が空気の酸素分圧未満に降下するとき、デバイスの定電流要求を満足するために、1つ又は複数の水素のさらなる解放によって、見掛けの酸素流の増加が引き起こされる。換言すると、電池がより大きく分極される。したがって、放出される水素は、電池の酸素消費に比例する。水素は、酸素の約7倍の熱伝導率を有し、サーミスタによって簡単に検出される。電池から解放された後に水素がサーミスタの上を流れ、変化する制約を受けることなく測定システムから出ることができるようにサーミスタの上の流れが導かれる場合、サーミスタ出力は、酸素の変化と共に安定である。流れが生じる自由経路の重要性は、正確な分析に非常に必要なものである。背圧の変化が、圧力が増加するときの水素ガスの増加、又はより低い圧力での水素の減少をもたらす場合がある。これが起こると、水素濃度は、所与の酸素レベルに関して一定である酸素流にもはや比例しない。流れを正確に測定することが、このシステムに関する有効な測定値を得るための要点である。サーミスタは、セルに入る空気流経路内に直接配置され、したがって流れの微小変化さえも検知される。センサを通る流れが存在しないとき、サーミスタを取り囲む気体混合物、この場合は周囲空気の熱伝導性により熱が損失される。ここで、この気体混合物は、サーミスタを取り囲むハウジングの壁に熱を渡す。これが平衡をもたらし、ゼロ状態となる。空気の主な成分である酸素及び窒素は、実質的に同一の熱伝導率を有し、したがってサーミスタは、OとNを区別することはできない。
【0013】
吐き出される息中の酸素濃度が、空気中の通常のOの量である20.9%よりも低くなるとき、このより低い酸素分圧を補償するために、定電流で動作する亜鉛空気セルによる、より多くの酸素流を求める要求が高まる。酸素濃度が低ければ低いほど、流れが大きくなる。
【0014】
吐き出される息の他の成分はCO及び水蒸気である。これらは、空気とは異なる熱伝導率を有し、COはより低く、水蒸気はより高い。吐き出される息が水蒸気を含むとき、息中の水蒸気を周囲空気と平衡させる必要がある。水蒸気は、より高い熱伝導率を有し、見掛けの流れの増加を引き起こす。水蒸気成分は、水に対して選択的な透過性を示す合成イオノマーの管にサンプル気体を通すことによって釣合わされる。NAFION(登録商標)管がそのようなイオノマーである。サンプル気体をNAFION管に通すことによって、試料中の過剰の水蒸気が、周囲空気の水蒸気まで低下される。
【0015】
これもまた吐き出される息中に存在するCOは、その熱伝導率が空気の熱伝導率よりも低いので、見掛けの流れを低減する。この特性を利用することが、本発明の重要な側面である。理想的な状況では、生成されたCOのあらゆる体積が、消費された酸素のあらゆる体積に等しかった場合に、流れの変化はなく、これは1.0のRERを表す。しかし、COの「キャリア・ガス」効果を考慮しなければならない。この効果は、COによる吐出気体の粘性変化の作用である。非常に粘性のある気体であるCOは、亜鉛空気セルへのより簡単な酸素通過を促進し、それにより酸素要求による流れ効果を低減する。したがって、CO濃度が大きい場合の高いRER数値で、1.0のRERを上回る著しい信号線形性の低下を伴う流れの減衰が存在する。
【0016】
サーミスタを通って流れる空気の温度が変化するとき、サーミスタの抵抗も変化する。サーミスタの変化する抵抗は、ブリッジ回路によって精密に測定される。サーミスタ上の流れによる電力の損失は、ホイートストン・ブリッジによって補償される。結果として得られる出力電圧は、サーミスタの両端の電圧を流れの速度に関係付ける以下の式によって特徴付けることができる。
V〜((e×ΔT)/R1.87
ここで、Vは流量であり、eはサーミスタの両端の電圧であり、Rは、ホイートストン・ブリッジによって測定されるサーミスタの抵抗であり、ΔTは、空気流によって引き起こされる温度勾配である。
【0017】
ここで、この空気流は、亜鉛空気セルと相互作用するのと同じ流れである。CO及びOが、この空気流中に存在する主要な気体を構成する。両気体は、熱伝導率、又は固有熱損失率が異なる。COは、Oが有する0.027W/mKよりもはるかに低い熱伝導率、約0.017W/mKを有する。サーミスタ流量計回路が、OとCOによる流れの間の熱伝導率の差を利用して、存在する2つの気体の相対比率の尺度を提供する。換言すると、上の式における電圧量が、気体流によって引き起こされる熱損失を補償するのに必要とされる電力の相対量を実際に示す。COは、サーミスタ上を通るときに覆いのように振る舞い、熱損失が遅くなり、流れ出力の低減という最終的な効果をもたらす。流量に対するOとCOの効果の組合せが、サーミスタを通る流れの重ね合わせをもたらす。したがって、熱伝導率の差が、流量の差を生み出す。重要な利点は、流れ測定において存在するコモンモード誤差の低減である。流れを調整するために亜鉛空気セルを使用し、且つ結果として得られるセル内への流れを測定するためにサーミスタを使用することによって、全体の流量が得られ、これはRER測定値に比例する。
【0018】
本発明のRERセンサの動作の基本的な理論を述べてきたが、次に、RERを監視するための試作センサの機械的及び電気的な構成に注目する。
【0019】
図1を参照すると、取付けサドル14に装着された円筒形の管状シェル12を備えるセンサ・モジュールが参照番号10によって概ね示されている。取付けサドルは、管状マウスピース16を取り囲み、マウスピース16にクランプされている。マウスピース16は、中央内腔18を有し、好ましくはアクリルなど適切なプラスチックからなっている。マウスピース16の外径は、マウスピース16を対象者の口内に快適に嵌めることができ、対象者のRERが監視される運動法の段階中に対象者の唇によって口内に保持されるようなものである。マウスピース部材16の内腔18内部には、吸気及び呼気をセンサ・モジュール10へ、且つモジュール10から方向付けるための一連の内部経路を有するサンプリング管20が同心円状に配設されている。サンプリング管20は、管状隔離スペーサ24及び26によってマウスピース16の内腔18内部で中央に維持されている。スペーサ管24の内腔を通って、好ましくは水蒸気に対する選択的な透過性を示す合成イオノマーから形成された細い毛細管28が延在している。1つのそのような材料は、デュポン社からNAFION(登録商標)という商標の下で入手可能である。
【0020】
図2の拡大断面図は、サンプリング管20が、その向かい合う端部に弾丸状の鼻部を有することを示す。鼻部30は、直角穴34につながる円錐形状開口32を有し、直角穴34の垂直部分は、管状ストラット24の内腔内に位置されたNAFION管28の内腔36と位置合わせされる。NAFION管の性質により、対象者の肺から吐き出された水分含有空気は、NAFION管28の壁を通過することによってその水分成分を引き抜かれ、次いで、乾燥した空気が、取付けサドル14のベース40に形成されたサンプリング・チャンバ38に入る。乾燥した呼気は、穴42によってチャンバ38から出て、穴42は、管状ストラット26を通って延在し、サンプル管20を通して形成されたさらなる穴44と流体連絡している。対象者が息を吸うとき、吸気は、鼻部48に形成された円錐形状開口46を通して、且つ管状ストラット26の内部に形成された穴50を通して引き込まれる。穴50は、ベース部材40に形成された流体通路52と流体連絡する。この通路は、管状ストラット24の内腔54につながり、NAFION管28の壁を通って出た水分を取り上げ、その水分を、サンプリング管20を通して直径方向に形成された穴56を通して、さらにサンプリング管に形成されたカウンタボア60内に嵌合されたピトー管58を通して外に運ぶ。
【0021】
サンプリング管20は、61で、細長いねじによって取付けサドル14のベース40に固定され、したがって管状隔離体24及び26が、サンプリング管20と取付けサドルのベース40との間にクランプされ、それにより、管状ストラット内の複数の内腔がサンプリング管部材20内の対応する内腔と適切に位置合わせされることを保証する。
【0022】
次に図3を見ると、本発明の好ましい実施例を備えるセンサ・モジュール10の拡大断面図が示されている。このモジュール10は、好ましくは真鍮又はアルミニウムなど適切な金属から形成された本体62を備え、この本体62は、略円筒形であり、絶縁カバー・スリーブ64内部に収容されている。一体形成された環状ハブ66が、本体部材62の上面68から突出し、補聴器に電力供給するために一般に使用されるタイプの亜鉛空気セル70を含むように寸法を決められたカップ状ポケットを形成している。環状突出部66は、その外径にねじ山72を含み、突出部66にキャップ部材(図示せず)をねじ留めできるようにして、セルのカソード70を金属センサ本体62と接触させて保持し、セルのアノード74を、図5を用いて本明細書に以下でより詳細に説明する定電流負荷回路にセルを接続する導体と接触させている。
【0023】
長手方向穴76が、亜鉛空気セル70の底部の中心に形成されたアパーチャ78と位置合わせされている。限定せずに、穴76は、その長さの大部分にわたって直径が約0.132mm(約0.0052インチ)であり、しかしその長さに沿った途中で、チョーク80を形成するように約0.635mm(約0.025インチ)に狭めることができる。2つの追加の半径方向延在穴82及び84が、円筒形本体部材62の側壁を通して穴開けされて、穴76と交差し、その後、穴入口が、図3の86及び88でエポキシ又は他の適切な材料で栓をされる。
【0024】
さらなる長手方向穴90が、カウンタボア92と同様に、本体部材62の底端部から内方向に形成されている。穴90内部に、サーミスタ94など温度感受性抵抗が配置されている。サーミスタ構成要素のベース96は、センサ・ハウジングから外方向に延在するリード端子98を有してカウンタボア92内に嵌合し、図6の概略図によって例示される熱線流量計回路への接続を可能にする。
【0025】
センサ本体62の表面100に抵抗加熱器102が結合され、これは、Type DN−505超小型比例制御加熱器であってよく、その温度は、単一の外部抵抗器を用いてプログラムすることができる。このデバイスは、センサ・モジュール10内部の周囲温度を調整するのに良く適している。
【0026】
亜鉛空気セル70は、その空気入口78が内腔76と位置合わせされるように配置されたカソードを有し、したがってセルの空気入口78が、マウスピース16内へ吸引された呼気と流体連絡し、この呼気が、サンプリング管20の漏斗状内腔32に当たる。次いで、吸引された呼気は、水分に対して選択的に透過性をもつイオノマー管28を通って進み、それにより、対象者の呼気の比較的乾燥した試料がサンプリング・チャンバ38に最終的に到達する。
【0027】
本出願人によって構成された試作モジュールは、特に、システム内部の漏れをなくすように設計された。亜鉛空気セルによって調整される流れは極めて小さい(100cc/分未満)ので、意図されない空気流を最小限にすることが適切な動作に不可欠である。モジュールの中央を通る空気入口チャンバは、システムへの単なる空気の入口である。Oがセル70付近で欠乏する場合、センサを備える穴72、82、84、及び90によって画定されるチャンバ内部の圧力降下が生じ、定電流要件を満足するように、亜鉛空気セル70内へのOの流れを必然的に生成する。
【0028】
穴76内のチョーク80の存在により、セル70によって引き込まれる酸素は、分岐を通過し、熱線流量計回路の一構成要素として構成されたサーミスタ94上を通る。
【0029】
次に図4を参照すると、呼吸交換率監視デバイスの電気ブロック図が図式的に示されている。このデバイスは、センサ・モジュール10と、亜鉛空気電池70に接続された定電流負荷制御回路106と、サーミスタ・ビード94に接続されたサーミスタ流量計回路108とを含む。サーミスタ流量計回路108が、アナログ出力信号をアナログ/デジタル変換器110に供給し、次いで変換器110の出力が、マイクロプロセッサ・ベースの制御装置又はマイクロコントローラ112のデータ入力端子に接続される。ここで、マイクロコントローラ112は、定電流負荷制御回路106を制御し、情報をヒューマン・インターフェース・デバイス114に供給する。電源回路116が、センサ10内に位置された加熱器要素102に、及びマイクロコントローラ112、アナログ/デジタル変換器110、及び流量計回路108に必要な動作電位を提供する。システムは、フィードバック制御によって、自動的に亜鉛空気電池回路電流を一定に維持し、サーミスタ流れ回路からのRERに比例する出力信号を監視する。
【0030】
次に図5を参照すると、図5で点線のボックスによって囲まれた定電流負荷制御回路106に結合された亜鉛空気電池70の電気回路図が示されている。定電流負荷制御回路の特定の設計が例示されているが、当業者は代替構成を容易に考案することができ、したがって、図5に特に例示されているものに本発明を限定することは意図されていない。図5で、亜鉛空気電池70は、約20オームなど比較的小さいオーム値の感知抵抗器118と接続されている。デジタル/アナログ変換器110の出力が、感知抵抗器前後の電圧降下を変えるように働く。マイクロコントローラ112は、入力120を介してセル電圧を監視し、さらに感知抵抗器118からの増幅された電圧を監視し、したがって、適用されるフィードバック制御によって、デジタル/アナログ変換器110の出力を調節して、セルからの電流排流を一定に保つ。
【0031】
動作時、定電流が、感知抵抗器118を通って、DAC110の出力に流れる。DACの電圧出力は、マイクロコントローラ112によって動的に調節される。マイクロコントローラ112は、100ms間隔でセル電圧をサンプリングし、DAC出力で必要な電圧を計算し、それに応じてDAC出力を変更する。この工程は、粗い同調と呼ばれてよい。回路が安定化することができる50ms遅延の後、マイクロコントローラは、感知抵抗器を横切って取られた増幅器122からの増幅電圧出力をサンプリングし、DAC出力を調節して、理想的な値からの差を補償する。アルゴリズムのこの部分は、「精密な同調」と呼ばれてよく、所定の間隔で繰り返される場合がある。説明した試作品に対する実際の試験では、この特定の粗い/精密な同調のアルゴリズムが、高い精度で、わずか約0.3%の変動をもつ定電流をもたらした。
【0032】
図6は、好ましい実施例で採用されるサーミスタ流れ制御回路の概略電気図を例示する。ここでも、当業者は、サーミスタを採用する流れ関連情報を導出するための代替の回路構成を考案することができ、すべてのそのような回路構成を、本明細書で具体的に開示される回路構成と等価とみなすべきである。この回路は、サーミスタ・ビード94を一方のアームに有するホイートストン・ブリッジ124と、ブリッジの出力端子128及び130を横切って接続された演算増幅器126とを含む。
【0033】
呼気がサーミスタ要素の上を流れるとき、その温度は、加熱器102によって維持される本体62内の周囲温度から変化し、ブリッジに、流れと共に変化する信号を出力させる。演算増幅器126は、この信号を増幅し、結合抵抗器134を介してさらなる演算増幅器132に信号を出力する。演算増幅器132の正の入力端子が、電位差計136のワイパ・アームに接続し、演算増幅器132に印加される基準電圧を調節できるようにする。フィードバック抵抗器138が、演算増幅器132の出力と、その負の入力端子との間に接続される。回路構成要素は、感知増幅器126から来る信号からDCベースラインを除去するように演算増幅器132が機能するように選択される。ここで、結果として得られるAC成分が、演算増幅器140によって増幅され、それらがアナログ/デジタル変換器110によってデジタル化され、マイクロコントローラ・モジュール112内のマイクロプロセッサによって波形を処理できるようにする。
【0034】
図4に示されるヒューマン・インターフェース114は、様々な形態を取ることができる。本発明の目的が、嫌気しきい値に達した際に運動中に表示を提供することである場合、インターフェースは、第1及び第2のLEDインジケータを備えることができ、第1のLEDインジケータは、嫌気しきい値未満で点灯され、第2のインジケータは、嫌気しきい値を超えたときに光るようにされる。運動を行う対象者の目標が減量(脂肪燃焼)である場合、運動レベルは、心拍数がATでの心拍数未満の所定値であるように維持されるべきである。他方、運動の目標が心肺機能を高めることである場合、運動のレベルは、ATでの心拍数を超えるようなものにすべきである。単純なインジケータ・ランプを使用する代わりに、ヒューマン・インターフェースを聴覚的又は触覚的なものにすることも考えられる。
【0035】
図7で、上側のプロットは、前記したAnderson他の‘764特許に記載されているような一組の機器を使用して実験環境で測定されたときのRERの変動を示す。下側のプロットは、本発明の試作品から得られる直接的なRER測定方法を使用したときの、運動に伴うRERの変動を示す。2つのデータ・セット間の相関は、RERを測定するために、本発明のデバイスを較正して、信頼して使用することができることを示す。
【0036】
また、本発明が、対象者のRER、したがって運動強度のレベルを直接測定するための小型で携帯型の比較的安価な計器を提供することが分かる。運動を行う間に計器を通して単に呼吸することによって、消費されたエネルギー基質が主に脂肪であるか炭水化物であるかの表示を与えることができる。
【0037】
特許法令に準拠するように、且つ、新規の原理を適用し、必要とされるそのような特化された構成要素を構成及び使用するために必要とされる情報を当業者に提供するために、本明細書では本発明をかなり詳細に説明してきた。しかし、本発明は、明確に異なる機器及びデバイスによって実施することもでき、機器と操作手順との両方に対する様々な修正を、本発明自体の範囲から逸脱することなく達成することができることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のRERセンサを取り付けられたマウスピースの側断面図である。
【図2】RER空気サンプリング・モジュールの断面図である。
【図3】RER検知デバイスの断面図である。
【図4】RERセンサ・アセンブリの電気ブロック図である。
【図5】定電流負荷制御回路に結合された亜鉛空気電池を例示する図である。
【図6】図3のアセンブリで使用されるサーミスタ流量計回路の電気概略図である。
【図7】本発明のセンサを用いて測定されたRERと、O摂取及びCO生成を得るための実験機器を使用して測定されたRERとの相関を示すプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の呼吸交換率を直接測定するためのデバイスであって、
(a)中を通って延在する内腔を有するハウジングであって、吸気及び呼気が前記内腔を通って流れるようにされたハウジングと、
(b)前記内腔内に位置決めされた酸素燃料セル電池であって、前記電池の空気入口が前記呼気の源に面する酸素燃料セル電池と、
(c)前記酸素燃料セル電池に結合された定電流負荷回路と、
(d)呼気の前記源と前記電池の前記空気入口との間の位置に配設されたセンサ要素を有する流量計回路であって、人によって吐き出された空気中に存在する酸素に対する二酸化炭素の相対比率に比例する出力信号を生成するように動作する流量計回路と
を組み合わせて備えるデバイス。
【請求項2】
前記センサ要素に当たる前記呼気から水蒸気を除去するための、呼気の源と連絡する流れ経路内に配設された手段をさらに含む請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記手段が水に対して選択的な透過性を示す合成イオノマーからなる管である請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記酸素燃料セル電池が亜鉛/空気電池である請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記要素がサーミスタである請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記サーミスタに呼気が当たらないときに、前記サーミスタの近傍での前記管状ハウジングの内部を所定の周囲温度で維持するための加熱器要素をさらに含む請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記定電流負荷回路が亜鉛/空気電池と並列に接続された感知抵抗器及び可変抵抗を含む請求項4に記載のデバイス。
【請求項8】
前記流量計回路がホイートストン・ブリッジ回路を備え、前記ホイートストン・ブリッジ回路の1つの脚部にサーミスタ要素を有する請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
運動中に、人の換気しきい値を超えているかどうかを示すための前記出力信号を受け取るように結合されたインジケータをさらに含む請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記サーミスタに呼気が当たらないときに、前記サーミスタの近傍での前記管状ハウジングの内部を所定の周囲温度で維持するための加熱器要素をさらに含む請求項5に記載のデバイス。
【請求項11】
前記定電流負荷回路が前記酸素燃料セルと並列に接続された感知抵抗器及び可変抵抗を含む請求項3に記載のデバイス。
【請求項12】
前記流量計回路がホイートストン・ブリッジ回路を備え、前記ホイートストン・ブリッジ回路の1つの脚部にサーミスタ要素を有する請求項3に記載のデバイス。
【請求項13】
運動中に、前記人の換気しきい値を超えているかどうかを示すための前記出力信号を受け取るように結合されたインジケータをさらに含む請求項3に記載のデバイス。
【請求項14】
人の呼吸交換率を直接測定するためのデバイスであって、
(a)管状マウスピース部材と、
(b)前記管状マウスピース部材の内腔内に中心を合わせて配設されたサンプリング管であって、呼気入口、吸気入口、呼気出口、及び吸気出口を有するサンプリング管と、
(c)イオノマー管を通ってサンプリング・チャンバに進む呼気を乾燥させるための、前記呼気入口とサンプル・チャンバとの間に結合された、水蒸気に対する選択的な透過性を示すイオノマー管と、
(d)前記吸気入口から前記吸気出口へ進む際に、前記イオノマー管の外部にわたって呼気を運ぶための通路と、
(e)前記マウスピースに固定され、前記サンプル・チャンバ内の空気から酸素を引き込むように構成されたセンサ・モジュールであって、酸素の流れが前記サンプル・チャンバ内の空気の酸素濃度に比例するセンサ・モジュールと
を組み合わせて備えるデバイス。
【請求項15】
前記センサ・モジュール内に配設され、前記サンプル・チャンバから引き込まれた空気中のOに対するCOの相対比率に比例する電気信号を生成する熱線流量計をさらに含む請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記熱線流量計がホイートストン・ブリッジ回路の少なくとも1つのアームに配設されたサーミスタを含む請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記センサ・モジュール内部の周囲温度を調整するための加熱手段をさらに含む請求項13に記載のデバイス。
【請求項18】
前記センサ・モジュールが前記サンプル・チャンバ内の空気から酸素を引き込むための酸素ポンプを含む請求項13に記載のデバイス。
【請求項19】
前記酸素ポンプが定電流負荷回路に結合された亜鉛空気セルを備える請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記定電流負荷回路が、亜鉛空気セルのカソード電極に対する第1の端子及び調節可能な電源に接続された第2の端子を有して接続された感知抵抗器と、前記感知抵抗器を横切って結合され、前記調節可能な電源からの出力電圧を制御するフィードバック制御回路とを含む請求項19に記載のデバイス。
【請求項21】
前記フィードバック制御回路が、前記感知抵抗器を通って流れる電流に比例する入力信号を受け取るように接続された演算増幅器と、前記演算増幅器から出力信号を受け取るように結合されたマイクロプロセッサ・ベースの制御装置と、前記マイクロプロセッサ・ベースの制御装置からデジタル・データを受け取るように接続され、前記感知抵抗器の前記第2の端子にアナログ出力を印加するデジタル/アナログ変換器とを備える請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
脂肪燃焼及び心臓血管機能の一方を最適化するために、人に適切な運動法を決定する方法であって、
(a)請求項9に記載のデバイスを提供する工程と、
(b)請求項9に記載のデバイスをマウスピースに結合する工程と、
(c)前記人の口に前記マウスピースを挿入する工程と、
(d)前記人に、高い作業率で運動を行わせる工程と、
(e)前記インジケータを観察し、前記人の換気しきい値を超えるときを指摘する工程と、
(f)前記換気しきい値に達したときに、人の心拍数を測定する工程と、
(g)行われる作業のレベルが、前記測定された心拍数の所定のパーセンテージに達するようなものである運動法を処方する工程と
を含む方法。
【請求項23】
脂肪燃焼を最適化すべきときに、前記人の換気しきい値に達したときに測定された心拍数を人の心拍数が下回るレベルで運動するように人に助言し、心臓血管機能を最適化すべきときに、人の換気しきい値に達したときに測定された心拍数を人の心拍数が上回るレベルで運動するように人に助言する工程をさらに含む請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−280937(P2006−280937A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−92800(P2006−92800)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(591125717)メディカル グラフィックス コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】