呼吸装置
呼吸装置(10)は、一方の端部(54)が大気に開放されている気体貯蔵器(50)を有する呼吸回路を、備えている。貯蔵器は、実質的に剛体構造を有し、膨張可能な袋によって補われても良い。使用時に回路は、酸素供給容器(60)に接続され、前記呼吸装置は、回路内の検出された気体レベルに応じて回路内の酸素の流れを調節する手段(62)を備えている。好適な装置は、携帯可能であり、酸素の効率的な利用が可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は呼吸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の呼吸装置は二種類ある:開回路型及び閉回路型である。開回路型呼吸装置を使用する場合、ユーザーは1つの又は複数の貯蔵シリンダから呼吸に適した混合気を吸入し、大気中に吐出する。閉回路型呼吸装置の場合ユーザーは、一部は1つの貯蔵シリンダ(又は複数の貯蔵シリンダ)から、一部はユーザーがその前に吐出した気体の蓄積から呼吸に適した混合気を吸入する。このように、閉回路においてはユーザーから吐出された気体はリサイクルされる。
【0003】
ユーザーから吐出された気体をリサイクルすること、すなわち未使用の酸素を再び呼吸することによって、酸素の浪費を低減でき、ユーザーが貯蔵シリンダで携行することが必要な呼吸可能気体の量を少なくすることが可能となる。このように、閉回路型呼吸装置はより効率的であり、ある環境下ではより運搬に適したものとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の閉回路型呼吸装置では、吐出された気体は、例えば二酸化炭素など不要な気体のレベルをまず減少させ、次いで吐出された気体を柔軟性のある袋のような密封された貯蔵器に保存することによって、リサイクルされる。従来の閉回路型呼吸装置に起こり得る問題としては、吐出された気体の量が貯蔵器の容量より大きくなると、貯蔵器が裂ける恐れがあること、通気路の圧力が危険なレベルまで増大することがあり減圧バルブを必要とすること、ユーザーが適切に吸入するには不十分な量の気体しか貯蔵器が保持していない場合があり得ること、そして低温下では貯蔵器が凍結する恐れがあり、その結果呼吸装置が作動しなくなることが挙げられる。
【0005】
上記の諸問題を軽減するための装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって本発明は、気体がユーザーによってその中に吐出され、そこからユーザーが気体を吸入する呼吸回路を備えており、前記回路は、吐出された気体の少なくとも一部がそこに導かれ、また吸入された気体の少なくとも一部がそこから取り出される気体貯蔵器を備えており、前記気体貯蔵器の一部は外部環境と流体連通しており、前記回路が使用時に呼吸可能気体を供給するための装置に接続されている、呼吸装置を提供する。
【0007】
前記貯蔵器は、1つ以上の開口を介して、及び/又は前記貯蔵器の一部を気体透過性の材料で形成することによって、前記環境に対して開放できる。
【0008】
前記呼吸装置は、吐出された気体から気体を吸収する又は取り除く手段を、有するのが有益である。好ましくは、前記吸収手段は、吐出された気体が前記貯蔵器に入る前に前記吸収手段を通過するように、前記呼吸回路内に配置されている。典型的には、前記吸収手段は、二酸化炭素吸収装置を備えている。
【0009】
典型的には、前記呼吸装置は、呼吸可能気体、典型的には酸素、最も典型的には圧縮酸素を保存する容器を、備えているか、又は取り付け可能に構成されている。前記保存容器は、前記呼吸可能気体の一定量が呼吸回路内へ、好適には前記呼吸可能気体中へ導入されるよう、前記呼吸回路に接続できる。
【0010】
好適な構成において、前記貯蔵器は、前記吐出された気体のための第1吸入口と、気体を前記外部環境から前記貯蔵器内に導入可能とする第2吸入口又はポートとを有している。前記第1及び第2吸入口は、前記貯蔵器において遠い位置に配置されている。好ましくは、前記貯蔵器は更に、ユーザーが吸入するために前記貯蔵器から気体を取り出すことが可能な吐出口を有している。前記吐出口は前記第1吸入口に近い位置に配置されている。
【0011】
好ましくは、前記貯蔵器の容積は、ユーザーの最大呼吸気量(典型的には少なくとも4リットル)に少なくとも等しく、より好ましくはユーザーの呼吸気量の少なくとも2倍である。好適な実施形態においては、貯蔵器の容積は、約12リットルである。
【0012】
前記貯蔵器は、剛体又は半剛体であるのが好ましく、もしくは少なくとも通常の使用中に型崩れしない程度に形状保持可能であることが好ましい。
【0013】
特に好適な実施形態においては、前記呼吸装置は、マスクを備えている。前記マスクは使用中に、ユーザーの口及び/又は鼻を覆う区画を形成する。前記マスクには吐出された気体を前記マスクから前記気体吸収装置へと導く手段が取り付け可能である。前記気体吸収装置には前記貯蔵器が取り付け可能である。更に、前記貯蔵器には気体を前記貯蔵器から前記マスクに導く手段が取り付け可能である。また前記呼吸装置は、非吐出気体の供給源を備えている。前記非吐出気体の供給源は、典型的には可変調整弁と、前記非吐出気体の供給源を(直接又は間接に)マスクに導く手段と、を備えている。前記貯蔵器は実質的に型崩れせず、ユーザーから吐出された気体の体積と同量又はそれを超える気体を保持可能な寸法を有し、大気に対し部分的に開放されているか、又は流体連通している。
【0014】
前記気体の二酸化炭素含有量を減少させる手段は、二酸化炭素吸収装置又は集塵器を備えたチャンバーであってもよい。例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、又は水酸化カルシウムなど、さまざまな二酸化炭素を吸収する手段が採用可能である。前記チャンバーはまた、二酸化炭素の吸収装置との反応によって、及びユーザーから吐出された気体の凝縮によって、生じた水分を、排出する栓を備えるのが好ましい。
【0015】
より好適な実施形態において、前記呼吸装置は電子モニターを備えてもよい。例えば電子酸素モニターは、前記貯蔵器中の酸素レベルをモニターし、前記貯蔵シリンダから放出される気体の量を自動的に調節する。回路中の二酸化炭素の蓄積量をモニターし、二酸化炭素が蓄積により危険な高レベルに達するのを防止するために、気体の流れを調節する二酸化炭素モニターを備えてもよい。
【0016】
好適な半閉回路型呼吸装置はどんな環境下でも、そこに存在する大気の0からほぼ100%に相当するどのようなレベルでも、呼吸可能気体、特に酸素を供給するのに用いることができる:前記呼吸装置は自然の大気が不適切な環境、例えば酸素レベルが低い高地などで呼吸可能気体を供給することができ、あるいは海面レベルの場所で低酸素状態を模擬的に実現できる。前記呼吸装置はしたがって、登山のようなスポーツ中に、あるいはトレーニング、特に平地における低酸素トレーニングに使用することができる。前記呼吸装置はまた、呼吸可能気体を鎮静中や麻酔中に供給するなど医療用途にも用いることができる。前記呼吸装置を携帯可能とすることは特に有用で、この場合前記呼吸装置は例えば救急車、患者の搬送、酸素療法からの復帰、救急的な酸素療法、あるいは災害救助などに用いることができる。前記貯蔵器の開口に又は開口に隣接して、適切なフィルター、例えば核物質用、生物学的及び/又は化学的フィルターを取り付ければ、前記呼吸装置はフィルター無しでは危険な環境下でも使用することが可能となる。好適な使用法では、前記呼吸装置はその装備者に、大気から摂取可能なレベルより高い、又は少なくとも異なったレベルの酸素を供給する補助酸素供給器として機能する。
【0017】
本発明の利点として、貯蔵された供給用の気体をより効率よく利用できること、ユーザーはより少ない量の呼吸可能気体を貯蔵シリンダに保持することができること、これにより半閉回路型呼吸装置がより携帯に適したものとなること、及び調整された混合気体を供給するために、呼吸可能気体の酸素レベルを低下させる場合に酸素と置換するため必要な第2気体の備蓄として、酸素以外の大気中の気体、特に窒素を装填したガスシリンダを備える必要がないこと、が挙げられる。
【0018】
酸素の供給源は加圧容器である必要はなく、他の供給源、例えば化学的に貯蔵された酸素や冷却された液体酸素でもよく、又は供給源から配管を通じて酸素を供給してもよい。
【0019】
追加の気体、例えばヘリウムを、循環する気体の粘度及び濃度を低下させて呼吸に関わる動作が楽になるよう、回路に加えてもよい。
【0020】
本発明のさらなる有益な側面は、以下の具体的な実施形態の説明及び添付の図面の参照により、当業者に対しより明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施形態を、例示的に添付の図面を参照しつつ述べる。図面において、同様の符号は同様の要素を指すのに用いられている。
【0022】
図面の図1Aを参照すると、概して10で示されている、本発明を実施した半閉回路型呼吸装置がある。
【0023】
呼吸装置10は、ユーザーの口及び/又は鼻(不図示)を覆って装着するように構成されたマスク20を備える。典型的には、マスク20は例えばプラスティックやゴムのような空気を透過させない材料から製作される。マスク20には少なくとも2つの導管もしくはチューブ30が取り付け可能である。チューブ30は、気体がマスク20に向かってその内部へと流れ、またマスク20から出て離れるように流れることを可能とする手段を構成する。チューブ30はいずれも両端が開いており、各チューブ30の一端は、各開口22で又は各開口に隣接して、マスク20に取り付け可能である。好ましくは、チューブ30は、例えばプラスティックのような気体を透過させない材料から製作され、各開口22で又は各開口に隣接しての各チューブ30の端部の接続は、実質的に気密である。
【0024】
チューブ30はそれぞれ、少なくとも1つの1方向バルブ32を備えている。各1方向バルブ32は、各チューブ30を通じて1方向だけに気体を流通させ、気体の反対方向への流れを制限又は実質的に防止する手段を構成する。図1A、図1B及び図2Aに示す好適な構成において、1方向バルブ32はそれぞれ、チューブ30のマスク20に隣接する位置に取り付けられている。チューブ30の1つでは、1方向バルブ32は使用時に気体がマスク20に流入するように調整されている。このチューブ30は、以下、吸入側チューブ36と呼ぶ。もう一方のチューブ30では1方向バルブ32が、使用時に気体がマスク20から流出するように調整されている。このチューブ30は以下、吐出側チューブ34と呼ぶ。
【0025】
マスク20から遠い側の吐出側チューブ34の端部は、吸入口42でチャンバー40と接続されている。典型的には、チャンバー40は例えばプラスティックなどの気体を透過させない材料から製作されている。吐出側チューブ34に対する吸入口42の接続は、実質的に気密である。チャンバー40は気体から二酸化炭素を吸収する手段を備え、使用時には二酸化炭素吸収装置として機能する。例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、又は水酸化カルシウムなど、従来のさまざまの二酸化炭素吸収手段を採用することができる。チャンバー40はまた、二酸化炭素の吸収装置の作用により、及びユーザーから吐出された呼気の凝縮により生じた水分を排出する栓(不図示)を備えている。
【0026】
チャンバー40は、二酸化炭素吸収装置40を通過した気体が貯蔵器50に流入するように、貯蔵器50と流体連通している。図1A及び図1Bに示す実施形態では、吸入口もしくは通路である52が、チャンバー40と貯蔵器50の間に設けられている。好ましくは、吸入口52は吸入口42と実質的に対向して配置されており、そうでない場合に比べて、チャンバー40から貯蔵器50に流入する気体が二酸化炭素吸収装置とより効率的に接触するようになっている。
【0027】
図示された実施形態では、二酸化炭素吸収装置40は呼吸回路の吐出側に配置されている。二酸化炭素吸収装置40は、代替的に回路の吸入側、すなわち貯蔵器50とマスク20との間に配置されていてもよい。
【0028】
貯蔵器50は、ユーザーから吐出された気体、及び後に詳述する外部環境から採取された気体など、気体を貯蔵する手段を構成する。好適な実施形態において、貯蔵器50は、実質的に剛体又は半剛体の構造を有する。好適な貯蔵器50は、標準的なユーザーの呼吸気量(吸入量又は吐出量)と少なくとも同量、好ましくはそれより大きい、また好ましくは少なくともその2倍の体積の気体を保持できる寸法を有するのが好ましい。貯蔵器50は、貯蔵器と外部環境との間で気体の流通が可能なように、外部環境に対して開放されている。そのため、図1及び図2に示す実施形態では、流体ポート54すなわち吸入口/吐出口が、貯蔵器に設けられている。ポート54は例えば、チューブ51に形成された1つ以上の開口という形をとってもよく、及び/又は、貯蔵器50の一部を、外部環境もしくは大気との間で気体の拡散を可能とする材料、例えば気体透過可能な材料から形成することで設けてもよい。典型的には、貯蔵器ポート54は貯蔵器50の、吸入口52に実質的に対向する端部に、又は貯蔵器50が吸入口52との間により大きな容積(例えば少なくともユーザーの呼吸気量と同等の容積)を確保できるように、少なくとも吸入口52から離間して配置されている。
【0029】
図1及び図2に示す実施形態では、貯蔵器50は、少なくとも2つの折り返し湾曲部53を有する、内部に曲がりくねった通路を画定する曲がりくねった容器もしくはチューブ51を備えている。貯蔵器50への吸入口52はチューブ51の一方の端部に配置され、ポート54はチューブ51の他方の端部に配置されている。チューブ51は、少なくとも通常の使用において例えば自重で型崩れしないように、形状保持可能な構造を有する。チューブ51は例えば、部分的に又は全体を例えばプラスティックなど剛体又は半剛体の材料から形成されていてもよく、又はそれ自体は剛体又は半剛体である必要のない材料を支持するフレーム(不図示)を備えてもよい。好ましくは、隣接する湾曲部53は、貯蔵器の構造をより安定させるために互いに結合されている。チューブ51の一方の端部、例えば吸入口52付近に存在する気体は、使用時に、他方の端部54にある気体と限定的に混合される。混合される度合いは、とりわけチューブ51の長さに依存し、一部はその形状に依存する。
【0030】
マスク20から遠い側の吸入側チューブ36の端部は、貯蔵器50の吐出口56と接続可能であり、気密に接続するのが有益である。吐出口56は、吸入口52に非常に近い位置に、すなわち実質的に隣接して配置するのが、好ましい。
【0031】
呼吸装置10はまた、例えば、気体貯蔵シリンダ60という形態の少なくとも1つの気体供給源を備えている、又は、前記気体供給源に接続可能となっている。気体貯蔵シリンダ60は、加圧下にある酸素を代表とする呼吸可能気体を貯蔵することが典型的用途である。貯蔵シリンダ60は、呼吸可能気体を放出可能に収容している。貯蔵シリンダ60は、放出される気体の量を調節するための調整弁62を備えているのが好ましい。気体は、調整弁62からノズル64を介して放出される。チューブ70の一方の端部はノズル64に取り付け可能であり、チューブ70の他方の端部はマスク20に直接又は間接に接続可能である。例えば、チューブ70の他方の端部は吸入側チューブ36に、もしくは開口22で又はそれに隣接する位置でマスク20に接続してもよい。チューブ70によって、貯蔵シリンダ60から放出された気体は、吸入側チューブ36及び/又はマスク20の空洞内へ流入が可能である。チューブ70、及びそのノズル64と吸入側チューブ36及び/又はマスク20への接続は、実質的に気密である。
【0032】
代替的な実施形態(不図示)においては、酸素、又は他の呼吸可能気体は、必ずしも加圧容器から供給する必要はない。例えば、酸素又は他の呼吸可能気体は、化学的に又は液状で貯蔵されていてもよい。また、前記呼吸装置は、気体の供給源に配管を通じて接続してもよい。一般に前記呼吸装置10は、代表的には酸素であるか又は少なくとも酸素を含む呼吸可能気体の供給源を内蔵する槽又は容器を備えるか、前記槽又は容器に接続可能となっている。典型的な実施形態では、気体供給源から供給される酸素レベルは、大気から得られるレベルよりも高い。好ましくは、気体供給源は実質的に純粋な酸素、すなわち実質的に汚染物質を含まない100%の酸素を供給する。
【0033】
呼吸装置10は、図1A及び図1Bに示すごとく組み立てられてもよい。ここではチャンバー40と貯蔵器50とが、コンパクトなユニットを構成しており、貯蔵シリンダ60がそのユニットに取り付け可能となっている。このユニットの代替的な実施形態が、図2及び図3に示されている。ここでは、貯蔵器50とチャンバー40の外表面は、滑らかである。図1及び図2に示す実施形態では、シリンダ60は、好適には楔型又は輪止め型をした固定ブロック44を用いて、上記ユニットの使用時に最上部となる位置に、保持可能である。
【0034】
ユーザー(不図示)は、前記呼吸装置10を背中に負うことができる。そのために、固定可能な肩ストラップ(不図示)を備えてもよい。吸入及び吐出側チューブ36、34は、その場合、マスク20がユーザーの口及び/又は鼻の周囲に装着できるように、ユーザーの肩越しに配される。マスク20は、着脱可能なストラップ(不図示)を備えていてもよく、前記ストラップは、マスク20をユーザーの口及び/又は鼻に固定するように、ユーザーの頭にぴったりと合っている。
【0035】
使用中は、ユーザーが息を吸うと、その吸入により気体が吸入側チューブ36を経てマスク20に流入し、吸入圧力により1方向バルブ32が開く。吸入している間は、気体は、吐出側チューブ34内のバルブ32によって、吐出側チューブ34を通ってマスク20に流入することを実質的に阻止されている。
【0036】
通常、吸入の間は、調整弁62は、貯蔵シリンダ60から一定量の気体を放出するように作動する。好適な実施形態において、貯蔵シリンダ60に蓄えられていて放出される気体は、酸素であるか、少なくとも酸素を含有している。調整弁60から放出された酸素は、チューブ70を通って、吸入側チューブ36及び/又はマスク20に流入するように、導かれる。
【0037】
吸入の間は、一定量の気体が、貯蔵器50から吐出口56を介して、マスク20に流入する。気体が貯蔵器50から持ち出されるとき、持ち出されるのは吐出口56付近に存在する気体である。貯蔵器50から吐出口56を介して取り出された気体の量の入れ替わりとして、一定量の気体が外部環境もしくは大気からポート54を介して貯蔵器50に流入する。大気から貯蔵器50に流入した気体の量は、吐出口56を通って持ち出された量と実質的に等しい。それゆえ、貯蔵器50内の気体は、特に貯蔵器50内のポート54付近の部位の気体は、典型的には、窒素、二酸化炭素、酸素及び微量の他の気体など大気を含んでいる。
【0038】
ユーザーが息を吐くと、吐出側チューブ34の1方向バルブ32が開いて、吐出された気体が吐出側チューブ34を通って流れるのが可能となる。吐出された気体は、吸入口42を介してチャンバー40に流入する。二酸化炭素吸収装置は、チャンバー40内の気体の二酸化炭素含有量を減少させる。吐出の間は、吸入側チューブ36の1方向バルブ32は閉じられているので、気体がマスク20から吸入側チューブ34を通って流れることが、実質的に阻止されている。
【0039】
吐出の圧力によって、チャンバー40内の気体は吸入口52を介して貯蔵器50に流入する。貯蔵器50に流入する気体はチューブ51内の気体を移動させ、それにより気体は、吸入口52から実質的に遠ざかり、実質的にポート54に向かう方向へと向かう。これにより、同量の気体が、ポート54を介して貯蔵器から移動する。このような動作の間、気体が吐出口56を介して貯蔵器50から流出することが、本実施形態では吸入側チューブ36のバルブ32によって、実質的に阻止されている。
【0040】
吸入及び吐出のサイクルにおいて、吐出された気体は、吸入口52を介して貯蔵器50に導入されるが、貯蔵器内の吸入口52及び吐出口56付近の部位に滞留する傾向がある。一方、ポート54を介して貯蔵器50に流入した気体は、貯蔵器内のポート54付近の部位に滞留する傾向がある。しかし、吐出された気体と導入された気体との混合は、時間の経過とともに必ず起こり、そのため吐出された気体は大気ガスによって補充される。特に、大気ガスとりわけ窒素の呼吸回路への拡散が起こる。貯蔵器50の性能は、その寸法、特に容積、及びユーザーの呼吸気量によって決まる。好ましくは、貯蔵器50の容積は、少なくとも5リットル、より好ましくは少なくとも10リットル、もっとも好ましくは約12リットルがよい。
【0041】
吸入の間、貯蔵器50から持ち出される気体は、吐出口56付近に存在する気体を含んでいる。貯蔵器50の構造から、及び貯蔵器50内での気体の混合が限定的であることから、吸入時に貯蔵器50から持ち出される気体は、主として、吐出時に貯蔵器に流入した気体を含んでいる。したがって、吐出された気体は、リサイクル、言い換えれば「再呼吸」される。吐出された気体をリサイクルすなわち再呼吸することによって、未消費の酸素は再吸入され、それゆえ酸素の浪費が抑制される。加えて、再呼吸された気体は最初の吸入の結果暖められており、そのため供給される気体は部分的に暖かく、このことはユーザーにとって有益である。
【0042】
使用法の一例において、調整弁62を介して貯蔵シリンダ60から放出される酸素レベルは、吸入ごとの所望の量を設定できる。貯蔵シリンダ60からの、設定された量の酸素が、貯蔵器50から持ち出された気体と混合する場合、全体の酸素レベルは、貯蔵器50から持ち出された気体の酸素含有量によって決まる。全体の酸素含有量は、貯蔵器50内の酸素レベルが可変であれば、変動する。
【0043】
好適な使用法において、呼吸回路中の酸素レベルは、例えば貯蔵器50内、好ましくは吐出口56もしくはそれに隣接して取り付けられた、又は吸入側チューブ内、好ましくは吐出口56もしくはそれに隣接して取り付けられた、例えば酸素センサーである酸素モニター90(図5Aのみに示す)によって、測定可能である。回路中の酸素レベルを測定することにより、貯蔵シリンダ60から放出される酸素量は、しかるべく調節が可能となる。これは例えば、センサー90及び調整弁62に連結され、センサー90が検出した酸素レベルに応じて調整弁62の動作を制御するように構成された適切な電子回路を典型的に含む制御モジュール92(図5Aのみに示す)を備えることにより、好適な態様で実現できる。センサー90と制御モジュール92とは、例えば有線又は無線通信により、好適な態様で交信可能である。呼吸回路中の酸素量が減少した場合、貯蔵シリンダ60から放出される酸素量を増加させることができる。回路中の酸素量が増加した場合、貯蔵シリンダ60から放出される酸素量を減少させることができる。このようにして、実質的に一定の酸素レベルを吸入時に供給することができる。
【0044】
呼吸装置10はまた、段階的に変動する酸素レベルを、吸入時に供給するのに用いてもよい。酸素レベルを増加させたい場合は、貯蔵シリンダ60から放出される酸素量を段階的に増加させるとよい。この条件下では、吸入される気体の大部分は貯蔵シリンダ60からの酸素であり、吸入される気体のわずかな量が貯蔵器50からのものである。酸素レベルを減少させたい場合は、シリンダ60から放出される酸素量を減少させるとよい。この条件下では、吸入される気体の大部分は貯蔵器50からの気体からなる。従来の閉回路では、酸素レベルを減少させたときに酸素と入れ替わる気体は追加の貯蔵シリンダから供給される。しかし、呼吸装置10においては、置き換わる気体は貯蔵器50のポート54を介して、周囲の大気から供給される。この点は、酸素含有量を低下させ、呼吸可能気体の窒素含有量を増加させる場合に、特に有利である。
【0045】
より概略的には、吸入時にシリンダ60から持ち出される気体の量を調節することによって、吸入時に貯蔵器50から持ち出される気体の量もそれに応じて調整され、更にそれにより吐出された気体が貯蔵器50に導入された気体と混合する割合が変動し、同様に貯蔵器50から持ち出される気体の成分比も変動する。
【0046】
ここで図5A〜図5Dを参照すると、本発明を具体化した呼吸装置に好適に用いられる呼吸回路が模式的に示されている。同様の符号は同様の要素を指す。図5Aに示す回路10は、図1〜図4を参照して上記で説明した回路に対応する。回路110、210、310は、それぞれ、ユーザーが吐出及び吸入をおこなうたびに膨張及び収縮が可能なように、例えばプラスティックやゴムなど柔軟な材料から形成された折り畳み可能な、すなわち膨張可能なチャンバー180、280、380を備えている。膨張可能なチャンバー180、280、380は呼吸回路の実質的に剛体又は半剛体の部位182、282、382を覆って又はその周囲に取り付けられており、それゆえチャンバー180、280、380が収縮しているときも回路を流れる空気流は収縮したチャンバーによって妨げられることはない、言い換えれば回路の部位182、282、382はチャンバーが収縮した状態にあるときでも通路を維持している。部位182、282、382には、気体がチャンバー180、280、380と呼吸回路との間を流通できるように、1つ以上の開口が形成されている。別の態様として、部位182、282、382の一部が、気体がチャンバー180、280、380に出入りできるように、気体が透過可能な材料で形成されていてもよい。
【0047】
図5Bに示す回路110において、膨張可能なチャンバー180は、吐出側チューブ134の周囲に、マスク120と二酸化炭素吸収装置140との間に、設けられている。図5Cに示す回路210では、膨張可能なチャンバー280は、吸入側チューブ136の周囲に設けられている。図5Dに示す回路310では、膨張可能なチャンバー380は貯蔵器350の一部の周囲に設けられている。
【0048】
膨張可能なチャンバー180、280、380は、貯蔵器150、150、350で利用可能な容積を補充する追加の容積を提供し、貯蔵器が持つべきサイズを小さくすることができる。
【0049】
回路110、210、310は、回路内での気体の流通を抑制するため、抑制又は抵抗装置184、284、384を選択的に備えてもよい。184、284、384の目的は、吐出時に、気体が貯蔵器150、250、350に入るか通り抜ける前に、膨張可能なチャンバー180、280、380が気体で満たされる、又は少なくとも気体がそこに流入するべく促すように、回路を通じての気体の流れに付勢することである。この目的のため、抵抗装置184、284、384はチャンバー180、280、380と貯蔵器150、250、350との間、又は少なくともチャンバー180、280、380と貯蔵器のポート154、254、354との間に配置されている。抵抗装置は貯蔵器の吸入口152、252、352に、又は隣接する位置に配置されているのが好ましく、チャンバー180、280、380が貯蔵器に組み込まれている場合は、チャンバー180、280、380と貯蔵器のポートの間で、好ましくはチャンバー180、280、380の吐出口に隣接する位置に配置されるのが好ましい。
【0050】
抵抗装置は、例えば各チューブ30、51に設けられた縮径部や、気体の流れを抑制する挿入物など、好適な形態で設けることができる。
【0051】
上記の説明から、呼吸装置10、110、210、310は、吐出された気体の再呼吸が可能な呼吸回路(吸入側及び吐出側チューブ、吸収装置及び貯蔵器を含む)を提供することが明らかである。呼吸回路は、外部環境から回路内へ導入される気体の量が制限可能でありながら、なお吐出された気体が再利用可能であることから、半開放型と呼ぶことができる。貯蔵器は開放されているので、吸入/吐出サイクル中に膨張や収縮をさせる必要はなく、外部環境からの気体は供給容器を別途も受ける必要なく、回路に導入することが可能である。
【0052】
貯蔵器(好ましくはチューブ30も)の直径あるいは断面積は、気流に対する抵抗を低減し、乱流でなく層流の形で流通できるよう、できるだけ大きいことが望ましい。直径を大きくすることによって、低温下での使用時に貯蔵器50/チューブ30が凍結する恐れも少なくなる。好適な実施形態では、貯蔵器及び/又はチューブ30の直径又は幅は約35mmである。しかし、呼吸装置10、110、210、310が高地のみで使用される場合は、貯蔵器50及び/又はチューブ30の好適な直径は約11mmである。
【0053】
好適な実施形態において、呼吸装置10、110、210、310は、例えば貯蔵器50内の酸素レベルをモニターし、それに応じて典型的には調整弁62を用いて貯蔵シリンダ60から放出される酸素量を、例えば呼吸可能気体の所望の酸素含有量レベルに合わせるように自動的に調節する電子モニター・制御システムを備えている。
【0054】
使用法の一例では、呼吸装置10、110、210、310は、大気中から得られるよりも高いレベルの酸素を着用者に供給するため、補助的酸素供給装置として機能する。
【0055】
好適な呼吸装置10、110、210、310は、吐出側チューブ34が呼吸回路から切り離された(例えばマスク20及び/又はチャンバー40から切り離された)開回路モードで操作可能である。呼吸装置10、110、210、310はまた、次の装置のうち1つ以上を備えてもよい:気流モニター、流量モニター、回路周辺の各部位の1つ以上の温度センサー、気圧モニター、二酸化炭素レベルモニター、上記センサーの較正手段、及び/又はGPSシステム。呼吸装置10、110、210、310はまた、呼吸データを保存できるよう、データ保存システムを備えてもよい。二酸化炭素モニター(不図示)は、二酸化炭素が危険な高レベルまで蓄積されるのを防止するため、回路内の二酸化炭素レベルをモニターし、容器60から調整弁62を通って流れる気体を調節する。
【0056】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、上記実施形態は本発明の範囲を逸脱することなく修正又は改変が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1A】本発明の実施形態による半閉回路型呼吸装置の斜視図である。
【図1B】図1Aに示す半閉回路型呼吸装置の正面図である。
【図1C】図1A及び図1Bに示す呼吸装置に含まれる二酸化炭素吸収装置及び貯蔵器の側面図である。
【図2A】本発明の別の実施形態による半閉回路型呼吸装置の正面図である。
【図2B】図2Aに示す呼吸装置に含まれる二酸化炭素吸収装置及び貯蔵シリンダの側面図である。
【図3A】二酸化炭素吸収装置及び貯蔵器の正面図を示す。
【図3B】二酸化炭素吸収装置及び貯蔵器の上面図を示す。
【図3C】二酸化炭素吸収装置及び貯蔵器の底面図を示す。
【図3D】二酸化炭素吸収装置及び貯蔵器の側面図を示す。
【図3E】二酸化炭素吸収装置及び貯蔵器のシリンダ把持部を除いた状態を示す。
【図4A】図2Aに示す呼吸装置のシリンダ把持部の上面図を示す。
【図4B】図2Aに示す呼吸装置のシリンダ把持部の側面図を示す。
【図4C】図2Aに示す呼吸装置のシリンダ把持部の側面図を示す。
【図5A】本発明の実施形態による呼吸装置に好適に使用できる呼吸回路の代替例を示す模式図である。
【図5B】本発明の実施形態による呼吸装置に好適に使用できる呼吸回路の代替例を示す模式図である。
【図5C】本発明の実施形態による呼吸装置に好適に使用できる呼吸回路の代替例を示す模式図である。
【図5D】本発明の実施形態による呼吸装置に好適に使用できる呼吸回路の代替例を示す模式図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は呼吸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の呼吸装置は二種類ある:開回路型及び閉回路型である。開回路型呼吸装置を使用する場合、ユーザーは1つの又は複数の貯蔵シリンダから呼吸に適した混合気を吸入し、大気中に吐出する。閉回路型呼吸装置の場合ユーザーは、一部は1つの貯蔵シリンダ(又は複数の貯蔵シリンダ)から、一部はユーザーがその前に吐出した気体の蓄積から呼吸に適した混合気を吸入する。このように、閉回路においてはユーザーから吐出された気体はリサイクルされる。
【0003】
ユーザーから吐出された気体をリサイクルすること、すなわち未使用の酸素を再び呼吸することによって、酸素の浪費を低減でき、ユーザーが貯蔵シリンダで携行することが必要な呼吸可能気体の量を少なくすることが可能となる。このように、閉回路型呼吸装置はより効率的であり、ある環境下ではより運搬に適したものとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の閉回路型呼吸装置では、吐出された気体は、例えば二酸化炭素など不要な気体のレベルをまず減少させ、次いで吐出された気体を柔軟性のある袋のような密封された貯蔵器に保存することによって、リサイクルされる。従来の閉回路型呼吸装置に起こり得る問題としては、吐出された気体の量が貯蔵器の容量より大きくなると、貯蔵器が裂ける恐れがあること、通気路の圧力が危険なレベルまで増大することがあり減圧バルブを必要とすること、ユーザーが適切に吸入するには不十分な量の気体しか貯蔵器が保持していない場合があり得ること、そして低温下では貯蔵器が凍結する恐れがあり、その結果呼吸装置が作動しなくなることが挙げられる。
【0005】
上記の諸問題を軽減するための装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって本発明は、気体がユーザーによってその中に吐出され、そこからユーザーが気体を吸入する呼吸回路を備えており、前記回路は、吐出された気体の少なくとも一部がそこに導かれ、また吸入された気体の少なくとも一部がそこから取り出される気体貯蔵器を備えており、前記気体貯蔵器の一部は外部環境と流体連通しており、前記回路が使用時に呼吸可能気体を供給するための装置に接続されている、呼吸装置を提供する。
【0007】
前記貯蔵器は、1つ以上の開口を介して、及び/又は前記貯蔵器の一部を気体透過性の材料で形成することによって、前記環境に対して開放できる。
【0008】
前記呼吸装置は、吐出された気体から気体を吸収する又は取り除く手段を、有するのが有益である。好ましくは、前記吸収手段は、吐出された気体が前記貯蔵器に入る前に前記吸収手段を通過するように、前記呼吸回路内に配置されている。典型的には、前記吸収手段は、二酸化炭素吸収装置を備えている。
【0009】
典型的には、前記呼吸装置は、呼吸可能気体、典型的には酸素、最も典型的には圧縮酸素を保存する容器を、備えているか、又は取り付け可能に構成されている。前記保存容器は、前記呼吸可能気体の一定量が呼吸回路内へ、好適には前記呼吸可能気体中へ導入されるよう、前記呼吸回路に接続できる。
【0010】
好適な構成において、前記貯蔵器は、前記吐出された気体のための第1吸入口と、気体を前記外部環境から前記貯蔵器内に導入可能とする第2吸入口又はポートとを有している。前記第1及び第2吸入口は、前記貯蔵器において遠い位置に配置されている。好ましくは、前記貯蔵器は更に、ユーザーが吸入するために前記貯蔵器から気体を取り出すことが可能な吐出口を有している。前記吐出口は前記第1吸入口に近い位置に配置されている。
【0011】
好ましくは、前記貯蔵器の容積は、ユーザーの最大呼吸気量(典型的には少なくとも4リットル)に少なくとも等しく、より好ましくはユーザーの呼吸気量の少なくとも2倍である。好適な実施形態においては、貯蔵器の容積は、約12リットルである。
【0012】
前記貯蔵器は、剛体又は半剛体であるのが好ましく、もしくは少なくとも通常の使用中に型崩れしない程度に形状保持可能であることが好ましい。
【0013】
特に好適な実施形態においては、前記呼吸装置は、マスクを備えている。前記マスクは使用中に、ユーザーの口及び/又は鼻を覆う区画を形成する。前記マスクには吐出された気体を前記マスクから前記気体吸収装置へと導く手段が取り付け可能である。前記気体吸収装置には前記貯蔵器が取り付け可能である。更に、前記貯蔵器には気体を前記貯蔵器から前記マスクに導く手段が取り付け可能である。また前記呼吸装置は、非吐出気体の供給源を備えている。前記非吐出気体の供給源は、典型的には可変調整弁と、前記非吐出気体の供給源を(直接又は間接に)マスクに導く手段と、を備えている。前記貯蔵器は実質的に型崩れせず、ユーザーから吐出された気体の体積と同量又はそれを超える気体を保持可能な寸法を有し、大気に対し部分的に開放されているか、又は流体連通している。
【0014】
前記気体の二酸化炭素含有量を減少させる手段は、二酸化炭素吸収装置又は集塵器を備えたチャンバーであってもよい。例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、又は水酸化カルシウムなど、さまざまな二酸化炭素を吸収する手段が採用可能である。前記チャンバーはまた、二酸化炭素の吸収装置との反応によって、及びユーザーから吐出された気体の凝縮によって、生じた水分を、排出する栓を備えるのが好ましい。
【0015】
より好適な実施形態において、前記呼吸装置は電子モニターを備えてもよい。例えば電子酸素モニターは、前記貯蔵器中の酸素レベルをモニターし、前記貯蔵シリンダから放出される気体の量を自動的に調節する。回路中の二酸化炭素の蓄積量をモニターし、二酸化炭素が蓄積により危険な高レベルに達するのを防止するために、気体の流れを調節する二酸化炭素モニターを備えてもよい。
【0016】
好適な半閉回路型呼吸装置はどんな環境下でも、そこに存在する大気の0からほぼ100%に相当するどのようなレベルでも、呼吸可能気体、特に酸素を供給するのに用いることができる:前記呼吸装置は自然の大気が不適切な環境、例えば酸素レベルが低い高地などで呼吸可能気体を供給することができ、あるいは海面レベルの場所で低酸素状態を模擬的に実現できる。前記呼吸装置はしたがって、登山のようなスポーツ中に、あるいはトレーニング、特に平地における低酸素トレーニングに使用することができる。前記呼吸装置はまた、呼吸可能気体を鎮静中や麻酔中に供給するなど医療用途にも用いることができる。前記呼吸装置を携帯可能とすることは特に有用で、この場合前記呼吸装置は例えば救急車、患者の搬送、酸素療法からの復帰、救急的な酸素療法、あるいは災害救助などに用いることができる。前記貯蔵器の開口に又は開口に隣接して、適切なフィルター、例えば核物質用、生物学的及び/又は化学的フィルターを取り付ければ、前記呼吸装置はフィルター無しでは危険な環境下でも使用することが可能となる。好適な使用法では、前記呼吸装置はその装備者に、大気から摂取可能なレベルより高い、又は少なくとも異なったレベルの酸素を供給する補助酸素供給器として機能する。
【0017】
本発明の利点として、貯蔵された供給用の気体をより効率よく利用できること、ユーザーはより少ない量の呼吸可能気体を貯蔵シリンダに保持することができること、これにより半閉回路型呼吸装置がより携帯に適したものとなること、及び調整された混合気体を供給するために、呼吸可能気体の酸素レベルを低下させる場合に酸素と置換するため必要な第2気体の備蓄として、酸素以外の大気中の気体、特に窒素を装填したガスシリンダを備える必要がないこと、が挙げられる。
【0018】
酸素の供給源は加圧容器である必要はなく、他の供給源、例えば化学的に貯蔵された酸素や冷却された液体酸素でもよく、又は供給源から配管を通じて酸素を供給してもよい。
【0019】
追加の気体、例えばヘリウムを、循環する気体の粘度及び濃度を低下させて呼吸に関わる動作が楽になるよう、回路に加えてもよい。
【0020】
本発明のさらなる有益な側面は、以下の具体的な実施形態の説明及び添付の図面の参照により、当業者に対しより明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施形態を、例示的に添付の図面を参照しつつ述べる。図面において、同様の符号は同様の要素を指すのに用いられている。
【0022】
図面の図1Aを参照すると、概して10で示されている、本発明を実施した半閉回路型呼吸装置がある。
【0023】
呼吸装置10は、ユーザーの口及び/又は鼻(不図示)を覆って装着するように構成されたマスク20を備える。典型的には、マスク20は例えばプラスティックやゴムのような空気を透過させない材料から製作される。マスク20には少なくとも2つの導管もしくはチューブ30が取り付け可能である。チューブ30は、気体がマスク20に向かってその内部へと流れ、またマスク20から出て離れるように流れることを可能とする手段を構成する。チューブ30はいずれも両端が開いており、各チューブ30の一端は、各開口22で又は各開口に隣接して、マスク20に取り付け可能である。好ましくは、チューブ30は、例えばプラスティックのような気体を透過させない材料から製作され、各開口22で又は各開口に隣接しての各チューブ30の端部の接続は、実質的に気密である。
【0024】
チューブ30はそれぞれ、少なくとも1つの1方向バルブ32を備えている。各1方向バルブ32は、各チューブ30を通じて1方向だけに気体を流通させ、気体の反対方向への流れを制限又は実質的に防止する手段を構成する。図1A、図1B及び図2Aに示す好適な構成において、1方向バルブ32はそれぞれ、チューブ30のマスク20に隣接する位置に取り付けられている。チューブ30の1つでは、1方向バルブ32は使用時に気体がマスク20に流入するように調整されている。このチューブ30は、以下、吸入側チューブ36と呼ぶ。もう一方のチューブ30では1方向バルブ32が、使用時に気体がマスク20から流出するように調整されている。このチューブ30は以下、吐出側チューブ34と呼ぶ。
【0025】
マスク20から遠い側の吐出側チューブ34の端部は、吸入口42でチャンバー40と接続されている。典型的には、チャンバー40は例えばプラスティックなどの気体を透過させない材料から製作されている。吐出側チューブ34に対する吸入口42の接続は、実質的に気密である。チャンバー40は気体から二酸化炭素を吸収する手段を備え、使用時には二酸化炭素吸収装置として機能する。例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、又は水酸化カルシウムなど、従来のさまざまの二酸化炭素吸収手段を採用することができる。チャンバー40はまた、二酸化炭素の吸収装置の作用により、及びユーザーから吐出された呼気の凝縮により生じた水分を排出する栓(不図示)を備えている。
【0026】
チャンバー40は、二酸化炭素吸収装置40を通過した気体が貯蔵器50に流入するように、貯蔵器50と流体連通している。図1A及び図1Bに示す実施形態では、吸入口もしくは通路である52が、チャンバー40と貯蔵器50の間に設けられている。好ましくは、吸入口52は吸入口42と実質的に対向して配置されており、そうでない場合に比べて、チャンバー40から貯蔵器50に流入する気体が二酸化炭素吸収装置とより効率的に接触するようになっている。
【0027】
図示された実施形態では、二酸化炭素吸収装置40は呼吸回路の吐出側に配置されている。二酸化炭素吸収装置40は、代替的に回路の吸入側、すなわち貯蔵器50とマスク20との間に配置されていてもよい。
【0028】
貯蔵器50は、ユーザーから吐出された気体、及び後に詳述する外部環境から採取された気体など、気体を貯蔵する手段を構成する。好適な実施形態において、貯蔵器50は、実質的に剛体又は半剛体の構造を有する。好適な貯蔵器50は、標準的なユーザーの呼吸気量(吸入量又は吐出量)と少なくとも同量、好ましくはそれより大きい、また好ましくは少なくともその2倍の体積の気体を保持できる寸法を有するのが好ましい。貯蔵器50は、貯蔵器と外部環境との間で気体の流通が可能なように、外部環境に対して開放されている。そのため、図1及び図2に示す実施形態では、流体ポート54すなわち吸入口/吐出口が、貯蔵器に設けられている。ポート54は例えば、チューブ51に形成された1つ以上の開口という形をとってもよく、及び/又は、貯蔵器50の一部を、外部環境もしくは大気との間で気体の拡散を可能とする材料、例えば気体透過可能な材料から形成することで設けてもよい。典型的には、貯蔵器ポート54は貯蔵器50の、吸入口52に実質的に対向する端部に、又は貯蔵器50が吸入口52との間により大きな容積(例えば少なくともユーザーの呼吸気量と同等の容積)を確保できるように、少なくとも吸入口52から離間して配置されている。
【0029】
図1及び図2に示す実施形態では、貯蔵器50は、少なくとも2つの折り返し湾曲部53を有する、内部に曲がりくねった通路を画定する曲がりくねった容器もしくはチューブ51を備えている。貯蔵器50への吸入口52はチューブ51の一方の端部に配置され、ポート54はチューブ51の他方の端部に配置されている。チューブ51は、少なくとも通常の使用において例えば自重で型崩れしないように、形状保持可能な構造を有する。チューブ51は例えば、部分的に又は全体を例えばプラスティックなど剛体又は半剛体の材料から形成されていてもよく、又はそれ自体は剛体又は半剛体である必要のない材料を支持するフレーム(不図示)を備えてもよい。好ましくは、隣接する湾曲部53は、貯蔵器の構造をより安定させるために互いに結合されている。チューブ51の一方の端部、例えば吸入口52付近に存在する気体は、使用時に、他方の端部54にある気体と限定的に混合される。混合される度合いは、とりわけチューブ51の長さに依存し、一部はその形状に依存する。
【0030】
マスク20から遠い側の吸入側チューブ36の端部は、貯蔵器50の吐出口56と接続可能であり、気密に接続するのが有益である。吐出口56は、吸入口52に非常に近い位置に、すなわち実質的に隣接して配置するのが、好ましい。
【0031】
呼吸装置10はまた、例えば、気体貯蔵シリンダ60という形態の少なくとも1つの気体供給源を備えている、又は、前記気体供給源に接続可能となっている。気体貯蔵シリンダ60は、加圧下にある酸素を代表とする呼吸可能気体を貯蔵することが典型的用途である。貯蔵シリンダ60は、呼吸可能気体を放出可能に収容している。貯蔵シリンダ60は、放出される気体の量を調節するための調整弁62を備えているのが好ましい。気体は、調整弁62からノズル64を介して放出される。チューブ70の一方の端部はノズル64に取り付け可能であり、チューブ70の他方の端部はマスク20に直接又は間接に接続可能である。例えば、チューブ70の他方の端部は吸入側チューブ36に、もしくは開口22で又はそれに隣接する位置でマスク20に接続してもよい。チューブ70によって、貯蔵シリンダ60から放出された気体は、吸入側チューブ36及び/又はマスク20の空洞内へ流入が可能である。チューブ70、及びそのノズル64と吸入側チューブ36及び/又はマスク20への接続は、実質的に気密である。
【0032】
代替的な実施形態(不図示)においては、酸素、又は他の呼吸可能気体は、必ずしも加圧容器から供給する必要はない。例えば、酸素又は他の呼吸可能気体は、化学的に又は液状で貯蔵されていてもよい。また、前記呼吸装置は、気体の供給源に配管を通じて接続してもよい。一般に前記呼吸装置10は、代表的には酸素であるか又は少なくとも酸素を含む呼吸可能気体の供給源を内蔵する槽又は容器を備えるか、前記槽又は容器に接続可能となっている。典型的な実施形態では、気体供給源から供給される酸素レベルは、大気から得られるレベルよりも高い。好ましくは、気体供給源は実質的に純粋な酸素、すなわち実質的に汚染物質を含まない100%の酸素を供給する。
【0033】
呼吸装置10は、図1A及び図1Bに示すごとく組み立てられてもよい。ここではチャンバー40と貯蔵器50とが、コンパクトなユニットを構成しており、貯蔵シリンダ60がそのユニットに取り付け可能となっている。このユニットの代替的な実施形態が、図2及び図3に示されている。ここでは、貯蔵器50とチャンバー40の外表面は、滑らかである。図1及び図2に示す実施形態では、シリンダ60は、好適には楔型又は輪止め型をした固定ブロック44を用いて、上記ユニットの使用時に最上部となる位置に、保持可能である。
【0034】
ユーザー(不図示)は、前記呼吸装置10を背中に負うことができる。そのために、固定可能な肩ストラップ(不図示)を備えてもよい。吸入及び吐出側チューブ36、34は、その場合、マスク20がユーザーの口及び/又は鼻の周囲に装着できるように、ユーザーの肩越しに配される。マスク20は、着脱可能なストラップ(不図示)を備えていてもよく、前記ストラップは、マスク20をユーザーの口及び/又は鼻に固定するように、ユーザーの頭にぴったりと合っている。
【0035】
使用中は、ユーザーが息を吸うと、その吸入により気体が吸入側チューブ36を経てマスク20に流入し、吸入圧力により1方向バルブ32が開く。吸入している間は、気体は、吐出側チューブ34内のバルブ32によって、吐出側チューブ34を通ってマスク20に流入することを実質的に阻止されている。
【0036】
通常、吸入の間は、調整弁62は、貯蔵シリンダ60から一定量の気体を放出するように作動する。好適な実施形態において、貯蔵シリンダ60に蓄えられていて放出される気体は、酸素であるか、少なくとも酸素を含有している。調整弁60から放出された酸素は、チューブ70を通って、吸入側チューブ36及び/又はマスク20に流入するように、導かれる。
【0037】
吸入の間は、一定量の気体が、貯蔵器50から吐出口56を介して、マスク20に流入する。気体が貯蔵器50から持ち出されるとき、持ち出されるのは吐出口56付近に存在する気体である。貯蔵器50から吐出口56を介して取り出された気体の量の入れ替わりとして、一定量の気体が外部環境もしくは大気からポート54を介して貯蔵器50に流入する。大気から貯蔵器50に流入した気体の量は、吐出口56を通って持ち出された量と実質的に等しい。それゆえ、貯蔵器50内の気体は、特に貯蔵器50内のポート54付近の部位の気体は、典型的には、窒素、二酸化炭素、酸素及び微量の他の気体など大気を含んでいる。
【0038】
ユーザーが息を吐くと、吐出側チューブ34の1方向バルブ32が開いて、吐出された気体が吐出側チューブ34を通って流れるのが可能となる。吐出された気体は、吸入口42を介してチャンバー40に流入する。二酸化炭素吸収装置は、チャンバー40内の気体の二酸化炭素含有量を減少させる。吐出の間は、吸入側チューブ36の1方向バルブ32は閉じられているので、気体がマスク20から吸入側チューブ34を通って流れることが、実質的に阻止されている。
【0039】
吐出の圧力によって、チャンバー40内の気体は吸入口52を介して貯蔵器50に流入する。貯蔵器50に流入する気体はチューブ51内の気体を移動させ、それにより気体は、吸入口52から実質的に遠ざかり、実質的にポート54に向かう方向へと向かう。これにより、同量の気体が、ポート54を介して貯蔵器から移動する。このような動作の間、気体が吐出口56を介して貯蔵器50から流出することが、本実施形態では吸入側チューブ36のバルブ32によって、実質的に阻止されている。
【0040】
吸入及び吐出のサイクルにおいて、吐出された気体は、吸入口52を介して貯蔵器50に導入されるが、貯蔵器内の吸入口52及び吐出口56付近の部位に滞留する傾向がある。一方、ポート54を介して貯蔵器50に流入した気体は、貯蔵器内のポート54付近の部位に滞留する傾向がある。しかし、吐出された気体と導入された気体との混合は、時間の経過とともに必ず起こり、そのため吐出された気体は大気ガスによって補充される。特に、大気ガスとりわけ窒素の呼吸回路への拡散が起こる。貯蔵器50の性能は、その寸法、特に容積、及びユーザーの呼吸気量によって決まる。好ましくは、貯蔵器50の容積は、少なくとも5リットル、より好ましくは少なくとも10リットル、もっとも好ましくは約12リットルがよい。
【0041】
吸入の間、貯蔵器50から持ち出される気体は、吐出口56付近に存在する気体を含んでいる。貯蔵器50の構造から、及び貯蔵器50内での気体の混合が限定的であることから、吸入時に貯蔵器50から持ち出される気体は、主として、吐出時に貯蔵器に流入した気体を含んでいる。したがって、吐出された気体は、リサイクル、言い換えれば「再呼吸」される。吐出された気体をリサイクルすなわち再呼吸することによって、未消費の酸素は再吸入され、それゆえ酸素の浪費が抑制される。加えて、再呼吸された気体は最初の吸入の結果暖められており、そのため供給される気体は部分的に暖かく、このことはユーザーにとって有益である。
【0042】
使用法の一例において、調整弁62を介して貯蔵シリンダ60から放出される酸素レベルは、吸入ごとの所望の量を設定できる。貯蔵シリンダ60からの、設定された量の酸素が、貯蔵器50から持ち出された気体と混合する場合、全体の酸素レベルは、貯蔵器50から持ち出された気体の酸素含有量によって決まる。全体の酸素含有量は、貯蔵器50内の酸素レベルが可変であれば、変動する。
【0043】
好適な使用法において、呼吸回路中の酸素レベルは、例えば貯蔵器50内、好ましくは吐出口56もしくはそれに隣接して取り付けられた、又は吸入側チューブ内、好ましくは吐出口56もしくはそれに隣接して取り付けられた、例えば酸素センサーである酸素モニター90(図5Aのみに示す)によって、測定可能である。回路中の酸素レベルを測定することにより、貯蔵シリンダ60から放出される酸素量は、しかるべく調節が可能となる。これは例えば、センサー90及び調整弁62に連結され、センサー90が検出した酸素レベルに応じて調整弁62の動作を制御するように構成された適切な電子回路を典型的に含む制御モジュール92(図5Aのみに示す)を備えることにより、好適な態様で実現できる。センサー90と制御モジュール92とは、例えば有線又は無線通信により、好適な態様で交信可能である。呼吸回路中の酸素量が減少した場合、貯蔵シリンダ60から放出される酸素量を増加させることができる。回路中の酸素量が増加した場合、貯蔵シリンダ60から放出される酸素量を減少させることができる。このようにして、実質的に一定の酸素レベルを吸入時に供給することができる。
【0044】
呼吸装置10はまた、段階的に変動する酸素レベルを、吸入時に供給するのに用いてもよい。酸素レベルを増加させたい場合は、貯蔵シリンダ60から放出される酸素量を段階的に増加させるとよい。この条件下では、吸入される気体の大部分は貯蔵シリンダ60からの酸素であり、吸入される気体のわずかな量が貯蔵器50からのものである。酸素レベルを減少させたい場合は、シリンダ60から放出される酸素量を減少させるとよい。この条件下では、吸入される気体の大部分は貯蔵器50からの気体からなる。従来の閉回路では、酸素レベルを減少させたときに酸素と入れ替わる気体は追加の貯蔵シリンダから供給される。しかし、呼吸装置10においては、置き換わる気体は貯蔵器50のポート54を介して、周囲の大気から供給される。この点は、酸素含有量を低下させ、呼吸可能気体の窒素含有量を増加させる場合に、特に有利である。
【0045】
より概略的には、吸入時にシリンダ60から持ち出される気体の量を調節することによって、吸入時に貯蔵器50から持ち出される気体の量もそれに応じて調整され、更にそれにより吐出された気体が貯蔵器50に導入された気体と混合する割合が変動し、同様に貯蔵器50から持ち出される気体の成分比も変動する。
【0046】
ここで図5A〜図5Dを参照すると、本発明を具体化した呼吸装置に好適に用いられる呼吸回路が模式的に示されている。同様の符号は同様の要素を指す。図5Aに示す回路10は、図1〜図4を参照して上記で説明した回路に対応する。回路110、210、310は、それぞれ、ユーザーが吐出及び吸入をおこなうたびに膨張及び収縮が可能なように、例えばプラスティックやゴムなど柔軟な材料から形成された折り畳み可能な、すなわち膨張可能なチャンバー180、280、380を備えている。膨張可能なチャンバー180、280、380は呼吸回路の実質的に剛体又は半剛体の部位182、282、382を覆って又はその周囲に取り付けられており、それゆえチャンバー180、280、380が収縮しているときも回路を流れる空気流は収縮したチャンバーによって妨げられることはない、言い換えれば回路の部位182、282、382はチャンバーが収縮した状態にあるときでも通路を維持している。部位182、282、382には、気体がチャンバー180、280、380と呼吸回路との間を流通できるように、1つ以上の開口が形成されている。別の態様として、部位182、282、382の一部が、気体がチャンバー180、280、380に出入りできるように、気体が透過可能な材料で形成されていてもよい。
【0047】
図5Bに示す回路110において、膨張可能なチャンバー180は、吐出側チューブ134の周囲に、マスク120と二酸化炭素吸収装置140との間に、設けられている。図5Cに示す回路210では、膨張可能なチャンバー280は、吸入側チューブ136の周囲に設けられている。図5Dに示す回路310では、膨張可能なチャンバー380は貯蔵器350の一部の周囲に設けられている。
【0048】
膨張可能なチャンバー180、280、380は、貯蔵器150、150、350で利用可能な容積を補充する追加の容積を提供し、貯蔵器が持つべきサイズを小さくすることができる。
【0049】
回路110、210、310は、回路内での気体の流通を抑制するため、抑制又は抵抗装置184、284、384を選択的に備えてもよい。184、284、384の目的は、吐出時に、気体が貯蔵器150、250、350に入るか通り抜ける前に、膨張可能なチャンバー180、280、380が気体で満たされる、又は少なくとも気体がそこに流入するべく促すように、回路を通じての気体の流れに付勢することである。この目的のため、抵抗装置184、284、384はチャンバー180、280、380と貯蔵器150、250、350との間、又は少なくともチャンバー180、280、380と貯蔵器のポート154、254、354との間に配置されている。抵抗装置は貯蔵器の吸入口152、252、352に、又は隣接する位置に配置されているのが好ましく、チャンバー180、280、380が貯蔵器に組み込まれている場合は、チャンバー180、280、380と貯蔵器のポートの間で、好ましくはチャンバー180、280、380の吐出口に隣接する位置に配置されるのが好ましい。
【0050】
抵抗装置は、例えば各チューブ30、51に設けられた縮径部や、気体の流れを抑制する挿入物など、好適な形態で設けることができる。
【0051】
上記の説明から、呼吸装置10、110、210、310は、吐出された気体の再呼吸が可能な呼吸回路(吸入側及び吐出側チューブ、吸収装置及び貯蔵器を含む)を提供することが明らかである。呼吸回路は、外部環境から回路内へ導入される気体の量が制限可能でありながら、なお吐出された気体が再利用可能であることから、半開放型と呼ぶことができる。貯蔵器は開放されているので、吸入/吐出サイクル中に膨張や収縮をさせる必要はなく、外部環境からの気体は供給容器を別途も受ける必要なく、回路に導入することが可能である。
【0052】
貯蔵器(好ましくはチューブ30も)の直径あるいは断面積は、気流に対する抵抗を低減し、乱流でなく層流の形で流通できるよう、できるだけ大きいことが望ましい。直径を大きくすることによって、低温下での使用時に貯蔵器50/チューブ30が凍結する恐れも少なくなる。好適な実施形態では、貯蔵器及び/又はチューブ30の直径又は幅は約35mmである。しかし、呼吸装置10、110、210、310が高地のみで使用される場合は、貯蔵器50及び/又はチューブ30の好適な直径は約11mmである。
【0053】
好適な実施形態において、呼吸装置10、110、210、310は、例えば貯蔵器50内の酸素レベルをモニターし、それに応じて典型的には調整弁62を用いて貯蔵シリンダ60から放出される酸素量を、例えば呼吸可能気体の所望の酸素含有量レベルに合わせるように自動的に調節する電子モニター・制御システムを備えている。
【0054】
使用法の一例では、呼吸装置10、110、210、310は、大気中から得られるよりも高いレベルの酸素を着用者に供給するため、補助的酸素供給装置として機能する。
【0055】
好適な呼吸装置10、110、210、310は、吐出側チューブ34が呼吸回路から切り離された(例えばマスク20及び/又はチャンバー40から切り離された)開回路モードで操作可能である。呼吸装置10、110、210、310はまた、次の装置のうち1つ以上を備えてもよい:気流モニター、流量モニター、回路周辺の各部位の1つ以上の温度センサー、気圧モニター、二酸化炭素レベルモニター、上記センサーの較正手段、及び/又はGPSシステム。呼吸装置10、110、210、310はまた、呼吸データを保存できるよう、データ保存システムを備えてもよい。二酸化炭素モニター(不図示)は、二酸化炭素が危険な高レベルまで蓄積されるのを防止するため、回路内の二酸化炭素レベルをモニターし、容器60から調整弁62を通って流れる気体を調節する。
【0056】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、上記実施形態は本発明の範囲を逸脱することなく修正又は改変が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1A】本発明の実施形態による半閉回路型呼吸装置の斜視図である。
【図1B】図1Aに示す半閉回路型呼吸装置の正面図である。
【図1C】図1A及び図1Bに示す呼吸装置に含まれる二酸化炭素吸収装置及び貯蔵器の側面図である。
【図2A】本発明の別の実施形態による半閉回路型呼吸装置の正面図である。
【図2B】図2Aに示す呼吸装置に含まれる二酸化炭素吸収装置及び貯蔵シリンダの側面図である。
【図3A】二酸化炭素吸収装置及び貯蔵器の正面図を示す。
【図3B】二酸化炭素吸収装置及び貯蔵器の上面図を示す。
【図3C】二酸化炭素吸収装置及び貯蔵器の底面図を示す。
【図3D】二酸化炭素吸収装置及び貯蔵器の側面図を示す。
【図3E】二酸化炭素吸収装置及び貯蔵器のシリンダ把持部を除いた状態を示す。
【図4A】図2Aに示す呼吸装置のシリンダ把持部の上面図を示す。
【図4B】図2Aに示す呼吸装置のシリンダ把持部の側面図を示す。
【図4C】図2Aに示す呼吸装置のシリンダ把持部の側面図を示す。
【図5A】本発明の実施形態による呼吸装置に好適に使用できる呼吸回路の代替例を示す模式図である。
【図5B】本発明の実施形態による呼吸装置に好適に使用できる呼吸回路の代替例を示す模式図である。
【図5C】本発明の実施形態による呼吸装置に好適に使用できる呼吸回路の代替例を示す模式図である。
【図5D】本発明の実施形態による呼吸装置に好適に使用できる呼吸回路の代替例を示す模式図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体がユーザーによってその中に吐出されると共に、気体がユーザーによってそこから吸入される、呼吸回路を備えており、
前記回路が、吐出された気体の少なくとも一部がその中に導かれると共に、吸入された気体の少なくとも一部がそこから取り出される、気体貯蔵器を、備えており、
気体貯蔵器の一部が、外部環境と流体連通しており、
前記回路が、使用時に、呼吸可能気体を供給するための装置に接続されている、
ことを特徴とする、呼吸装置。
【請求項2】
呼吸可能気体を供給するための前記装置から前記回路に導入される気体の量を制御するように構成された、調節装置を、更に有している、
請求項1に記載の呼吸装置。
【請求項3】
回路中の少なくとも1つの対象気体のレベルを検出するように配置された、少なくとも1つの気体センサーを、更に備えており、
前記センサーが、前記少なくとも1つの対象気体の検出されたレベルに応じて前記調節装置の運転を制御するための手段に、連結されている、
請求項2に記載の呼吸装置。
【請求項4】
前記気体貯蔵器が、前記回路から気体を受け入れるための吸入口と、気体が前記貯蔵器から前記回路に流入できる吐出口と、前記外部環境との流体連通をもたらす流体ポートと、を備えており、
前記ポートが、前記吸入口から遠い位置に配置されている、
請求項1〜3のいずれか1つに記載の呼吸装置。
【請求項5】
前記吐出口が、前記吸入口に近い位置に配置されている、
請求項4に記載の呼吸装置。
【請求項6】
前記貯蔵器が、前記気体を収容するための、形状保持可能な構造を有している、
請求項1〜5のいずれか1つに記載の呼吸装置。
【請求項7】
前記貯蔵器の構造が、前記吸入口と前記ポートとの間で曲がりくねった通路を画定するように形作られている、
請求項4に従属するときの請求項6に記載の呼吸装置。
【請求項8】
前記回路が、前記ユーザーが吐出及び吸入するときにそれぞれ膨張及び収縮するように配置された、膨張可能なチャンバーを、更に備えており、
前記チャンバーが、前記回路の形状保持可能部位の中に組み込まれており、
前記膨張可能なチャンバーが収縮状態を選んでいるとき、前記気体が前記膨張可能なチャンバーを貫流する又は流れ去ることができる通路を、前記形状保持可能部位が提供するように、前記配置が行われている、
請求項1〜7のいずれか1つに記載の呼吸装置。
【請求項9】
前記回路の前記形状保持可能部位が、前記膨張可能なチャンバーを通っており、
気体が前記膨張可能なチャンバーに出入りできるように、1以上の開口又は1以上の気体透過性の接合部分が、前記形状保持可能部位に設けられている、
請求項8に記載の呼吸装置。
【請求項10】
前記回路が、前記回路を通る気体の流れを抑制するための抵抗装置を備えており、
前記抵抗装置が、前記膨張可能なチャンバーと前記貯蔵器の前記流体ポートとの間に配置されている、
請求項8又は9に記載の呼吸装置。
【請求項11】
前記抵抗装置が、実質的に前記貯蔵器の前記吸入口に配置されている、
請求項10に記載の呼吸装置。
【請求項12】
前記貯蔵器は、少なくとも5リットル、好ましくは少なくとも10リットル、もっとも好ましくは約12リットルの、気体収容容積を、画定する容量を有する、
請求項1〜11のいずれか1つに記載の呼吸装置。
【請求項13】
二酸化炭素を含む気体を、吐出された気体から取り除く、吸収手段を、更に備えている、
請求項1〜12のいずれか1つに記載の呼吸装置。
【請求項14】
前記吸収手段は、前記吐出された気体が前記貯蔵器に流入する前に前記吸収手段を通るように、前記呼吸回路の中に配置されている、
請求項13に記載の呼吸装置。
【請求項15】
呼吸可能気体を供給するための前記装置は、前記呼吸可能気体の供給源を収容する容器を、備えている、
請求項1〜14のいずれか1つに記載の呼吸装置。
【請求項16】
前記容器は、前記装置に取り付け可能である、
請求項15に記載の呼吸装置。
【請求項17】
前記呼吸可能気体は、酸素を含んでいる、
請求項1〜16に記載の呼吸装置。
【請求項18】
前記少なくとも1つの気体センサーは、酸素センサーを含んでおり、
前記少なくとも1つの対象気体は、酸素を含んでいる、
請求項3に記載の呼吸装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つの気体センサーは、二酸化炭素センサーを含んでおり、
前記少なくとも1つの対象気体は、二酸化炭素を含んでいる、
請求項3に記載の呼吸装置。
【請求項1】
気体がユーザーによってその中に吐出されると共に、気体がユーザーによってそこから吸入される、呼吸回路を備えており、
前記回路が、吐出された気体の少なくとも一部がその中に導かれると共に、吸入された気体の少なくとも一部がそこから取り出される、気体貯蔵器を、備えており、
気体貯蔵器の一部が、外部環境と流体連通しており、
前記回路が、使用時に、呼吸可能気体を供給するための装置に接続されている、
ことを特徴とする、呼吸装置。
【請求項2】
呼吸可能気体を供給するための前記装置から前記回路に導入される気体の量を制御するように構成された、調節装置を、更に有している、
請求項1に記載の呼吸装置。
【請求項3】
回路中の少なくとも1つの対象気体のレベルを検出するように配置された、少なくとも1つの気体センサーを、更に備えており、
前記センサーが、前記少なくとも1つの対象気体の検出されたレベルに応じて前記調節装置の運転を制御するための手段に、連結されている、
請求項2に記載の呼吸装置。
【請求項4】
前記気体貯蔵器が、前記回路から気体を受け入れるための吸入口と、気体が前記貯蔵器から前記回路に流入できる吐出口と、前記外部環境との流体連通をもたらす流体ポートと、を備えており、
前記ポートが、前記吸入口から遠い位置に配置されている、
請求項1〜3のいずれか1つに記載の呼吸装置。
【請求項5】
前記吐出口が、前記吸入口に近い位置に配置されている、
請求項4に記載の呼吸装置。
【請求項6】
前記貯蔵器が、前記気体を収容するための、形状保持可能な構造を有している、
請求項1〜5のいずれか1つに記載の呼吸装置。
【請求項7】
前記貯蔵器の構造が、前記吸入口と前記ポートとの間で曲がりくねった通路を画定するように形作られている、
請求項4に従属するときの請求項6に記載の呼吸装置。
【請求項8】
前記回路が、前記ユーザーが吐出及び吸入するときにそれぞれ膨張及び収縮するように配置された、膨張可能なチャンバーを、更に備えており、
前記チャンバーが、前記回路の形状保持可能部位の中に組み込まれており、
前記膨張可能なチャンバーが収縮状態を選んでいるとき、前記気体が前記膨張可能なチャンバーを貫流する又は流れ去ることができる通路を、前記形状保持可能部位が提供するように、前記配置が行われている、
請求項1〜7のいずれか1つに記載の呼吸装置。
【請求項9】
前記回路の前記形状保持可能部位が、前記膨張可能なチャンバーを通っており、
気体が前記膨張可能なチャンバーに出入りできるように、1以上の開口又は1以上の気体透過性の接合部分が、前記形状保持可能部位に設けられている、
請求項8に記載の呼吸装置。
【請求項10】
前記回路が、前記回路を通る気体の流れを抑制するための抵抗装置を備えており、
前記抵抗装置が、前記膨張可能なチャンバーと前記貯蔵器の前記流体ポートとの間に配置されている、
請求項8又は9に記載の呼吸装置。
【請求項11】
前記抵抗装置が、実質的に前記貯蔵器の前記吸入口に配置されている、
請求項10に記載の呼吸装置。
【請求項12】
前記貯蔵器は、少なくとも5リットル、好ましくは少なくとも10リットル、もっとも好ましくは約12リットルの、気体収容容積を、画定する容量を有する、
請求項1〜11のいずれか1つに記載の呼吸装置。
【請求項13】
二酸化炭素を含む気体を、吐出された気体から取り除く、吸収手段を、更に備えている、
請求項1〜12のいずれか1つに記載の呼吸装置。
【請求項14】
前記吸収手段は、前記吐出された気体が前記貯蔵器に流入する前に前記吸収手段を通るように、前記呼吸回路の中に配置されている、
請求項13に記載の呼吸装置。
【請求項15】
呼吸可能気体を供給するための前記装置は、前記呼吸可能気体の供給源を収容する容器を、備えている、
請求項1〜14のいずれか1つに記載の呼吸装置。
【請求項16】
前記容器は、前記装置に取り付け可能である、
請求項15に記載の呼吸装置。
【請求項17】
前記呼吸可能気体は、酸素を含んでいる、
請求項1〜16に記載の呼吸装置。
【請求項18】
前記少なくとも1つの気体センサーは、酸素センサーを含んでおり、
前記少なくとも1つの対象気体は、酸素を含んでいる、
請求項3に記載の呼吸装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つの気体センサーは、二酸化炭素センサーを含んでおり、
前記少なくとも1つの対象気体は、二酸化炭素を含んでいる、
請求項3に記載の呼吸装置。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【公表番号】特表2009−527302(P2009−527302A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555706(P2008−555706)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001583
【国際公開番号】WO2007/096181
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(508254934)
【氏名又は名称原語表記】Roger MCMORROW
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001583
【国際公開番号】WO2007/096181
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(508254934)
【氏名又は名称原語表記】Roger MCMORROW
【Fターム(参考)】
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