説明

呼吸訓練器およびコンピュータプログラム

【課題】呼吸訓練器において、被験者の呼吸訓練継続に対するモチベーションを効果的に向上できるようにする。
【解決手段】呼吸訓練器は、各回の呼吸訓練の前後のAI(開始時AIと終了時AI)を測定し、それらの値を、各回の呼吸訓練後に表示することもでき、また、一定期間分をまとめて表示することもできる。なお、線L1上の開始時AIと線L2上の終了時AIに注目すると、第1週の1回目から、これらの値には顕著な差異が見られている。一方、血圧値は、呼吸訓練を開始してから3週間程度の期間が経過すれば、ある程度の低下を認識することができるが、呼吸訓練を開始してから1週間程度では、顕著な低下を認識することは難しいといえる。なお、血圧値として、中枢血圧の値が表示されても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸訓練器およびコンピュータプログラムに関し、特に、呼吸の訓練パターンをガイドする呼吸訓練器およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
高血圧や動脈硬化につながる、循環器系の望ましくない状態の一つは、末梢血管の硬化によって、血圧の反射波成分が増大し、心臓や血管系への圧力負荷が増大するような状況である。
【0003】
若者などでは血管は柔軟性に富んでいるが、緊張やストレスなどにより血管が収縮することによって硬くなることがある。このような血管の収縮機能による血管の硬さ変化を、以後、機能的変化と呼ぶ。一方、高齢者・高血圧患者などでは血管は血管壁が構造的・材質的に硬化している。このような血管の構造的・材質的な硬化への変化のことを、以後、器質的変化と呼ぶ。
【0004】
高血圧・動脈硬化への進行は、心臓や血管の機能的変化から器質的変化への移行に対応したものと考えられ、具体的なメカニズムとしては下記のようなものが考えられる。
【0005】
緊張やストレスなどによる血管の機能的変化によってもたらされる心臓や血管系への圧力負荷増大が継続的に生じることによって、心臓や血管系には機械的ダメージが蓄積させたり、圧負荷への適応のために心臓や血管の壁が肥大したりする。このことが、構造・材質が変化する器質的変化へとつながり、さらなる心臓や血管系への圧力負荷増大へとつながっていくと考えられる。
【0006】
呼吸訓練は、上記の動脈硬化への進行メカニズムの、緊張やストレスなどによる血管の機能的変化によってもたらされる心臓や血管系への圧力負荷増大とは逆方向に、心臓や血管を導こうとするものである。呼吸訓練によれば、副交感神経が活性化され、末梢血管が拡張するなどの生理的変化がもたらされ、心臓や血管系への圧力負荷は低減される。これによって、心臓、血管の適応によって、器質的変化を改善方向に導くことができると考えられる。
【0007】
人間の呼吸に関して検討する技術は、従来から種々開示されている。
たとえば、特許文献1には、被験者の呼吸パターンを検出することにより、ストレス度合いを判定する技術が開示されている。なお、特許文献1では、圧電素子により、被験者の胸部や腹部の状態の変化を検出することにより、呼吸パターンが検出されている。このような、圧電素子による被験者の状態を検出する技術は、特許文献2にも開示されている。
【0008】
特許文献3〜特許文献6には、非侵襲で被験者の生理的変数を計測し、そして、当該計測結果に基づいて呼吸訓練における理想的な呼吸パターンについてのパラメータを変更する技術が開示されている。また、被験者の生理的変数として、特許文献7〜特許文献8には被験者の呼吸パターンを検出する技術が開示され、さらに、特許文献9には血圧を計測する技術が開示されている。また、特許文献9に開示されているような、呼吸訓練に関連して血圧を計測する技術については、非特許文献1に開示されているように、実際に商品化がなされている。
【特許文献1】米国特許第5423328号明細書
【特許文献2】米国特許第4580574号明細書
【特許文献3】米国特許第5800337号明細書
【特許文献4】米国特許第6090037号明細書
【特許文献5】国際公開第01/02049号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2004/014226号パンフレット
【特許文献7】米国特許第5076281号明細書
【特許文献8】米国特許第6662032号明細書
【特許文献9】国際公開第2004/054429号パンフレット
【非特許文献1】7つの臨床実験における血圧低下の実績(Proven To Lower Blood Pressure In 7 Clinical Studies)、[online]、[平成19年2月21日検索]、インターネット〈http://www.resperate.com/discover/clinical_evidence.aspx?src=cld.SubNav〉
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献9および非特許文献1に開示されている技術は、被験者に、呼吸訓練の効果に関連すると考えられる具体的な指標である血圧値を提示しながら呼吸訓練を行なわせることができる点では、有益であると考えられる。
【0010】
しかしながら、被験者が呼吸訓練による血圧値の低下という具体的な効果を実感できるには、一般的には、訓練開始から3〜4週間程度の期間を要すると考えられる。
【0011】
また、上記した事項から理解されるように、呼吸訓練によって求められる重要な変化は、心臓や血管系への圧力負荷の変化である。これを直接的に捉えることができるのは、中枢(大動脈起始部)の血圧波形もしくは血圧波形の反射波成分である。
【0012】
一方、大動脈起始部の血圧波形を非侵襲で測定することは困難である。
一般的に血圧測定としては、上腕あるいは手首で測定される非侵襲の血圧値が用いられている。そして、上腕あるいは手首のような末梢で測定される血圧波形は、駆出波がもっとも大きいことが多く、反射波によるピークは駆出波よりも小さい場合が多い。
【0013】
これに対し、中枢、例えば大動脈起始部、の血圧波形は、駆出波よりも反射波によるピークのほうが大きい場合が多い。末梢血管が拡張することによって直接的に影響を受けるのは、血圧波形のうち反射波成分であると考えられるからである。
【0014】
中枢血圧波形では、駆出波よりも反射波によるピークのほうが大きい場合が多いため、呼吸訓練による反射波の変化が直接的に血圧値の変化としてとらえることができる。すなわち、中枢の血圧値ならば呼吸訓練の効果を示す直接的な指標として考えることができる場合が多い。
【0015】
しかしながら、一般的に用いられる末梢の血圧波形では、駆出波がもっとも大きいことが多いため、呼吸訓練による反射波の変化を血圧値でとらえることは困難な場合が多い。つまり、末梢の血圧値と呼吸訓練による効果とが直接的には結びつかない場合が多い。
【0016】
末梢の血圧値が下がるのは、中枢血圧や血管系の圧力負荷が下がった結果、適応的にリモデリング等が起こる様なメカニズムによると考えられる。したがって、末梢の血圧値が有意に変化するには、生理的なリモデリングが起こるような期間、つまり、上記したような3〜4週間程度が必要となると考えられる。
【0017】
以上のことから、従来の技術では、呼吸訓練の効果を、非侵襲で測定される被験者の生理的変数に基づいて実感させるには相当の期間を要していた。
【0018】
なお、被験者にとって、効果を実感できることは、呼吸訓練を継続する際の重要なモチベーション向上の要因となる。一方、効果をなかなか実感できなければ、被験者は、効果が実感できるのを待たずに呼吸訓練を中止してしまう事態も考えられる。
【0019】
本発明はかかる実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、被験者の呼吸訓練継続に対するモチベーションを効果的に向上できるような呼吸訓練器およびコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に従った呼吸訓練器は、呼吸の訓練パターンをユーザにガイドする情報を報知する処理を実行するガイド手段と、被験者の脈波を測定する脈波測定手段と、前記脈波測定手段により測定された脈波の波形の所定の特徴点から直接得られる特徴量を複数算出し、算出された複数の特徴点を用いた演算により前記脈波の反射現象を反映する指標を算出する脈波特徴量算出手段と、前記ガイド手段による前記処理の実行の前後に前記脈波測定手段に脈波の測定を実行させ、前記処理の実行の前後に測定された脈波に基づいて前記脈波特徴量算出手段に前記指標を算出させる制御手段と、前記脈波特徴量算出手段が算出した前記指標を提示する提示手段とを備えることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の呼吸訓練器は、前記脈波特徴量算出手段が算出した前記処理の実行の前後に測定された脈波に基づく前記指標の差分を算出する差分算出手段をさらに備え、前記提示手段は、前記差分手段が算出した差分をさらに提示することが好ましい。
【0022】
また、本発明の呼吸訓練器は、前記脈波特徴量算出手段が算出した前記処理の実行の前後に測定された脈波に基づく前記指標を記憶する記憶手段をさらに備え、前記制御手段は、複数回の前記ガイド手段による前記処理について、前記脈波特徴量算出手段が算出した前記処理の実行の前後に測定された脈波に基づく前記指標を、前記記憶手段に記憶させることが好ましい。
【0023】
また、本発明の呼吸訓練器では、前記制御手段は、前記脈波測定手段に被験者の脈波の測定を継続的に実行させ、かつ、前記脈波測定手段による継続的な脈波の測定の結果に対応した前記指標を算出させ、前記指標の変化量が一定量以内である状態が一定期間継続した場合に、前記ガイド手段による前記処理を実行させることが好ましい。
【0024】
また、本発明の呼吸訓練器では、前記指標は、AI(Augmentation Index)であることが好ましい。
【0025】
また、本発明の呼吸訓練器は、被験者の血圧値を測定する血圧測定手段をさらに備え、前記制御手段は、前記ガイド手段による前記処理の前または後の少なくとも一方において、前記血圧測定手段に被験者の血圧値を測定させることが好ましい。
【0026】
また、本発明の呼吸訓練器では、前記提示手段は、前記脈波特徴量算出手段が算出した前記指標とともに、前記血圧測定手段が測定した血圧値を提示することが好ましい。
【0027】
また、本発明の呼吸訓練器では、前記脈波特徴量算出手段は、前記脈波測定手段により検出される前記脈波における収縮期後方成分を求める手段と、前記収縮期後方成分を求める手段によって求められた前記収縮期後方成分を用いて前記生体の中枢動脈の収縮期血圧の推定値を前記指標として算出する推定手段とを含むことが好ましい。
【0028】
本発明に従ったコンピュータプログラムは、コンピュータに、呼吸の訓練パターンをユーザにガイドする情報を報知する処理を実行させるための、コンピュータ読取可能なプログラムであって、コンピュータに、被験者の脈波の測定結果を読込む第1の読込ステップと、前記第1の読込ステップで読込んだ脈波の波形の所定の特徴点から直接得られる特徴量を複数算出し、算出された複数の特徴点を用いた演算により前記脈波の反射現象を反映する指標を算出する第1の算出ステップと、前記第1の読込ステップの後に呼吸の訓練パターンをガイドする情報を、情報を報知する装置を介して報知する報知ステップと、前記報知ステップの後に被験者の脈波を読込む第2の読込ステップと、前記第2の読込ステップで読込んだ脈波の波形の所定の特徴点から直接得られる特徴量を複数算出し、算出された複数の特徴点を用いた演算により前記脈波の反射現象を反映する指標を算出する第2の算出ステップと、前記第1の算出ステップで算出した前記指標と前記第2の算出ステップで算出した前記指標を、情報を報知する装置を介して提示するステップとを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、呼吸パターンをガイドする情報の報知の前後における、脈波の波形に基づいた指標、つまり、血圧波形中の反射波成分の変化が反映された指標の変化を、被験者に提示できる。
【0030】
これにより、被験者に対して、呼吸パターンをガイドする情報の報知に基づく呼吸訓練による効果を、短期的に測定する指標という形で提供できる。
【0031】
したがって、本発明によれば、被験者は、呼吸訓練による効果をより短い訓練期間で実感できる。つまり、本発明によれば、呼吸訓練器は、被験者の呼吸訓練継続に対するモチベーションを効果的に向上できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の作業支援装置の一実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、同一の構成要素には各図において同一の符号を付し、詳細な説明は繰返さない。
【0033】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態の呼吸訓練器の一実施の形態である呼吸訓練器の外観図である。また、図2は、当該呼吸訓練器のシステム構成を模式的に示す図である。
【0034】
図1および図2を参照して、本実施の形態の呼吸訓練器は、において診断支援向け脈波測定装置は本体1A、各種情報を外部に表示するための表示器1Bおよび操作キー1Dを一体的に有してCPU(central processing unit)10、メモリ11およびRTC(リアルタイムクロック)12を内蔵するパソコン(パーソナルコンピュータ)1、パソコン1に着脱自在に装着されるメモリカード2、パソコン1にケーブルを介して接続されるテンキー3、プリンタ4、センサアンプ5および血圧計7、センサアンプ5に接続されるセンサユニット13、そして血圧計7に接続される空気袋を有した腕帯8を備える。センサユニット13は内部にセンサ6とセンサ6を生体に押圧する空気袋9を有する。CPU10は圧力制御回路71を介して空気袋9によるセンサ6の生体への押圧レベルを調整する。なお、本実施の形態において、センサユニット13は脈波測定手段として機能し、血圧計7は血圧測定手段として機能する。
【0035】
センサ6は手首に押圧されると撓骨動脈を介して脈波を検出して、検出された脈波信号はセンサアンプ5により所定のレベルにまで増幅され、その後、A/D変換器51によりデジタル情報に変換されてCPU10に与えられる。
【0036】
操作キー1Dおよびテンキー3は、外部からの操作によりパソコン1に対して情報・指示を入力する。メモリカード2がパソコン1に装着されることにより、パソコン1のCPU10は、当該メモリカード2に対して情報の読込みおよび書込みを実行することができる。
【0037】
図3は、図1の呼吸訓練器の外観の変形例を示す図である。図3では、図1のパソコン1の本体1Aに、プリンタ4、センサアンプ5、テンキー3および血圧計7が内蔵された状態が示されている。
【0038】
本実施の形態では、図1(または図3)および図2に示された呼吸訓練器によって、血圧計測と同等の計測簡便性を備えかつ血圧情報とは異なる循環器系情報であるAIを計測することができ、そして、呼吸訓練の前後にAIを提示することによって、ユーザに各回の呼吸訓練の効果を明確な形態で提示する。なお、本実施の形態では、後述する呼吸訓練における呼吸の訓練パターンをガイドする情報の報知やAIの提示は、表示器1Bにおける表示によって行なわれるが、本発明における報知や提示の態様はこれに限定されるものではなく、呼吸訓練器にスピーカ等をさらに設けることによる音声出力であってもよいし、表示と音声出力の双方で実現されても良い。
【0039】
上記した情報の表示器1Bを用いた表示は、CPU10が予めメモリ11に格納された所定プログラムを実行することによりなされる。したがって、CPU10はこのような情報を表示器1Bに表示するための提示部10Bを有する。また、CPU10は、後述するような呼吸訓練処理において呼吸の訓練パターンを提示するためのガイド部10Xを備えている。
【0040】
ここで、AIとは、公知の指標であって、主に中枢血管の動脈硬化に対応する脈波の反射強度(脈波の反射現象であって送り出し血流量の受入れ易さ)を反映する特徴量を指標化したものである。AIは、特に循環器系疾患の早期発見のために有効な指標と言われており、血圧とは異なった挙動を示すことが知られている。AIは、測定された脈波から計算される。センサユニット13を装着ベルトなどで手首部位に装着し、圧力制御回路71により圧力調整しながら空気袋9でセンサ6を手首に押圧して脈波は検出される。検出された脈波に基づくAIの算出は、パソコン1のCPU10が予めメモリ11に格納された所定プログラムを実行することによりなされる。したがって、CPU10は、脈波特徴量算出手段として機能する脈波特徴量算出部10Aを有する。
【0041】
図4と図5には、測定される脈波の時間の経過に従う変化の一例がそれぞれ示されている。
【0042】
たとえば、図4のような脈波が測定された場合、AIは以下の式(1)または式(2)に従って算出できる。
【0043】
AI=P1/P2 …(1)
AI(%)=(P1−P2)/P1*100 …(2)
また、図5のような脈波が測定された場合には、AIは上記の式(1)または以下の式(3)に従って算出できる。
【0044】
AI(%)=(P2−P1)/P2*100 …(3)
図4および図5において、時間T1におけるレベルP1は、心臓の心拍による血液の駆出(拍出)波によるピーク値を示し、時間T2におけるレベルP2は、心拍による駆出波についての反射波によるピーク値を示す。この反射波は、血管の硬化に対応して強度と出現時相が変化する。したがって、AIは、測定された脈波の波形に含まれる駆出(拍出)波に相当の進行波の成分のピーク値と反射波成分のピーク値との比をあらわすことになる。なお、レベルP1およびP2を決定する方法としては、脈波波形に微分等の演算操作を行って求める方法を適用できる。
【0045】
一般的に、若い人についての脈波では、図4のように、レベルP2<レベルP1の関係にある。
【0046】
しかしながら、年配の人についての脈波では、図5のようにレベルP2>レベルP1となる場合もある。これは血管内壁の硬化(動脈硬化)が進行しているために駆出波を血管壁で十分に吸収できないために、レベルの高い反射波が短時間の内に検出されることによる。
【0047】
ΔTpは、駆出波を発生する心臓から反射波発生部位までの距離と脈波の伝播速度(加速度)とに関連している。したがって、心臓から近い部位で発生した反射波のレベルが高ければΔTpは小さくなる。血管内壁が硬化すると脈波は早く伝播されることが知られている。また、AIは、脈波の反射波のレベルP2が同じであっても、ΔTpが小さければ、大きくなることが知られている。
【0048】
このようにAIは、脈波波形の特徴点であるピークから直接に得られる特徴量(脈波の振幅レベル(mV))を複数個(レベルP1,P2)算出して、算出した特徴量同士の演算により算出できる。
【0049】
本実施の形態では上述のAIを用いた説明をしているが、ΔTpを代替して用いても、同様の効果を得ることができる。ΔTpもAIと同様に公知の指標である。ΔTpについては書籍“Hypertension"のpp434-438(September.2001.発行元:American Heart Association,Inc)に示される。また、ΔTpは、TR(time reflection)と表記される場合がある。TRについては、“Journal of Physiology(2000),525.1,pP263-270に示されている。ΔTpは、脈波波形の特徴点である脈波立上り点の位置および反射波の開始位置から直接に得られる特徴量(該位置に対応の時間(msec))を複数算出して、算出された特徴量同士の演算(差)により算出できる。
【0050】
次に、ユーザが呼吸訓練器1を利用して呼吸訓練を行なう際に、CPU10が実行する処理(呼吸訓練処理)について、当該処理のフローチャートである図6を参照して説明する。
【0051】
図6を参照して、呼吸訓練処理では、CPU10は、まずステップS10で、操作キー1Dの一部であるスタートキーが押圧されたか否かを判断し、押圧されたと判断すると、ステップS20へ処理を進める。
【0052】
ステップS20では、CPU10は、予め定められた(メモリ11に記憶された)特定の時間が経過するまで待機する。なお、ここでいう特定の時間とは、ユーザが落ち着いて呼吸訓練を開始するためにユーザに状態を整えさせるための時間であって、たとえば2〜3分間とすることができる。
【0053】
次に、CPU10は、ステップS30で、AIを測定して、ステップS40へ処理を進める。なお、呼吸訓練処理では、実際にユーザが呼吸訓練を実行する(ユーザに対して呼吸の訓練パターンをガイドする情報が報知される)のは、後述するステップS40の処理が実行されている期間である。そして、当該ステップS40の実行前(つまり、ユーザが呼吸訓練を開始する前)に、上記のようにステップS30で測定されるAIについて、以下適宜「開始時AI」と呼ぶ。
【0054】
ステップS40では、CPU10は、ガイド部10Xに所定のプログラムを実行させることにより、ユーザに呼吸の訓練パターンをガイドする情報を報知する処理であるガイド情報報知処理を実行して、ステップS50へ処理を進める。本実施の形態の呼吸訓練器1では、訓練情報報知処理では、たとえば15分間程度、ユーザに対して吸気のタイミングと呼気のタイミングを指示する情報を表示器1Bに表示される。なお、表示される画面の一例を図7に示す。
【0055】
図7を参照して、訓練パターンをガイドする情報の一例として表示される画面400では、今回の訓練の回数(訓練回数)と、今回の訓練の残り時間と、現在のBRS(圧受容体反射:Baroreflex Sensitivity)が表示されるとともに、縦方向に並べられた14個のブロックが表示されている。
【0056】
訓練回数については、図9および表1を参照して後述する。また、14個のブロックについては、当該14個のブロックのうち、上側の7個は吸気のタイミングが指示される際に反転表示されることにより利用され、下側の7個は呼気のタイミングが指示される際に反転表示されることにより利用される。
【0057】
また、BRSは、たとえば2〜3秒程度の時間における「血圧変動値(ΔBP)/心拍数変動値(ΔHR)」によって算出される。BRSは、深呼吸により自律神経に刺激を与えて心拍数を変化させた際に、血圧値がどの程度上昇するかを表わす指標である。この値が高いほど、圧受容体反射が低下していることになる。つまり、BRSの値が高いほど、健康状態が良好であるといえる。なお、本実施の形態の呼吸訓練器において、BRSは、呼吸訓練の際の必須の表示項目ではない。たとえば、ステップS40における訓練情報報知処理が実行されている際に継続して心拍数および血圧が測定された場合に、表示されるものである。
【0058】
ステップS50では、CPU10は、再度AIを測定して、ステップS60へ処理を進める。ここで、ステップS50において、ステップS40における訓練情報報知処理の終了後に測定されるAIを、以下適宜「終了時AI」と呼ぶ。
【0059】
ステップS60では、CPU10は、ステップS30で測定した開始時AIとステップS50で測定した終了時AIを表示器1Bに表示させることにより提示し、さらに、これらの測定値をメモリ11に記憶させて、処理を終了させる。ここで、表示器1Bにおける開始時AIと終了時AIの表示画面の一例を、図8を参照して説明する。
【0060】
図8を参照して、ステップS60で表示器1Bに表示される画面の一例である画面410では、その時点で、何回目の呼吸訓練が終了したかを示す「訓練回数」が表示されている。また、画面410では、表示欄411に開始前AIの値が表示され、そして、表示欄412に、終了時AIが表示されている。
【0061】
また、画面410には、縦方向に並べられた14個のブロックが表示されている。CPU10は、ステップS60において開始時AIと終了時AIとを表示させる際に、これらの差分を算出し、当該差分と14個のブロックを利用して、訓練終了後の状態が訓練開始時の状態と比較して改善されたか悪化したかを示してもよい。ブロックの上半分は改善したことおよびその度合を示すのに用いられ、下半分は状態が悪化したことおよびその度合を表示するのに用いられる。なお、改善または悪化の評価は、たとえば、終了時AIから開始時AIを差し引いた値を差分値とした場合、正の値であれば改善であり負の値であれば悪化とされ、また、差分値が大きいほど改善または悪化の程度が大きいものとして行なわれる。また、このような14個のブロックを利用した度合を表示させる代わりに、CPU10は、開始時AIと終了時AIの差分値をそのまま画面410に表示させてもよい。
【0062】
表1は、メモリ11における開始時AIと終了時AIの記憶態様を模式的に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
表1では、測定回数ごとに開始時AIと終了時AIとが記憶されている。また、CPU10は、各回の開始時AIと終了時AIの差分(ΔAI)を算出し、メモリ11に記憶させる。さらに、CPU10は、ステップS50において終了時AIを測定するとともに、血圧値を測定し、ステップS60でメモリ11に記憶させることが好ましい。
【0065】
メモリ11では、開始時AIと終了時AIの測定値についての測定回数(呼吸訓練の訓練回数)は、1週間を大きな単位とし、そして、1日を詳細な単位として扱われている。つまり、m週目のn回目(m週目のn日目)の測定結果を、「n回(m)」に対応する測定値として記憶させている。
【0066】
CPU10は、図8を用いて説明したように、各回の呼吸訓練における開始時AIと終了時AIを、各回の終了時に表示器1Bに表示させるとともに、メモリ11に蓄積させた複数回の呼吸訓練についての開始時AIと終了時AIをまとめて表示させることができる。図9に、3週間分の開始時AIと終了時AIを含む測定結果の表示画面の一例を示す。
【0067】
図9では、各回の開始時AIが線L1上の点として示され、終了時AIの値が線L2上の点として示されている。また、各回におけるΔAIの値がL3上の点として示され、そして、各週の初めの血圧値がL4上の点として示されている。
【0068】
図9から理解されるように、開始時AIと終了時AIに注目すると、第1週の1回目から、これらの値には顕著な差異が見られている。一方、血圧値は、呼吸訓練を開始してから3週間程度の期間が経過すれば、ある程度の低下を認識することができるが、呼吸訓練を開始してから1週間程度では、顕著な低下を認識することは難しいといえる。つまり、本実施の形態の呼吸訓練器は、各回の呼吸訓練の終了時に開始時AIと終了時AI(およびこれらの差分値)をユーザに提示することにより、各回の呼吸訓練における効果を、ユーザの実感しやすい情報として提示できるといえる。
【0069】
以上説明した本実施の形態では、図6を参照して説明したように、呼吸訓練処理では、ステップS30において開始時AIが測定され、ステップS50において終了時AIが測定されていた。これに代わり、CPU10は、ステップS30およびステップS50では脈波のみが測定され、メモリ11に記憶され、そして、ステップS60においてデータの提示等が実行される際に、記憶させておいたそれぞれの脈波からAIを算出してもよい。
【0070】
また、図6を参照して説明した呼吸訓練処理では、CPU10は、ステップS10でスタートボタンが押圧されたことを検出した後、ステップS20において、ステップS30で開始時AIを測定する前に待機していた。このような待機の代わりに、スタートボタンが押圧されてから、継続的にAIを測定し、当該AIの値が安定したことを条件として、ステップS30で開始時AIを測定し、ステップS40における訓練情報報知処理に進んでもよい。このような呼吸訓練処理の変形例のフローチャートを図10に示す。
【0071】
図10を参照して、当該呼吸訓練処理の変形例では、CPU10は、ステップS10でスタートボタンが押圧されたことを検出した後、ステップS21において、AIの測定を開始するとともに、そして、AIの値が安定したことを条件として、ステップS30へ処理を進める。なお、ステップS30以降の処理は、図6を参照して説明した呼吸訓練処理において実行されたものと同様の処理が実行される。
【0072】
なお、ここでAIが安定するとは、たとえば、スタートボタンが押圧されてから定期的に(たとえば、10秒ごと)に脈波を測定することによりAIを算出し、前回のAIの値との差分が所定の範囲以内となる状態が予め定められた期間(たとえば30秒間)継続したこと、とすることができる。
【0073】
また、以上説明した本実施の形態では、CPU10は、呼吸訓練処理において、訓練情報報知処理の後に血圧値を測定していたが、訓練情報報知処理の前に、たとえば、開始時AIと同時または開始時AIの測定と訓練情報報知処理の開始の間に、血圧値を測定してもよい。
【0074】
なお、本実施の形態の呼吸訓練器は、少なくとも、呼吸の訓練パターンをユーザにガイドする情報を報知し、そして、上記したように各回の呼吸訓練の前後(たとえば、図6のステップS30とステップS50)でAIを測定(算出)し、それを提示できれば良い。したがって、血圧計7は、省略することもできる。
【0075】
また、以上説明した本実施の形態の呼吸訓練器では、CPU10は、A/D変換器51を介して、脈波測定手段が測定する脈波を読込み、AIの算出を行なっていた。なお、パソコン1は、脈波測定手段を備えることなく、脈波の測定結果を外部(たとえば、脈波測定装置)から入力されるように構成することもできる。このような場合の呼吸訓練器の構成例について、図11を参照して説明する。
【0076】
図11に示されるように、呼吸訓練器では、パソコン1とは別に脈波測定装置50が存在し、パソコン1と脈波測定装置50とは、インターフェイス1Xとインターフェイス50Xとを介して接続されている。そして、脈波測定装置50には、センサユニット13、圧力制御回路71、センサアンプ5およびA/D変換器51が設けられている。このような場合、パソコン1のCPU10は、必要に応じて脈波測定装置50から、インターフェイス1Xを介して、脈波の測定結果を読込み、AIの算出等を実行する。
【0077】
また、本実施の形態において、AI値の代わりに、心臓から脳や腎臓へ至る大動脈の内圧(以下、「中枢血圧」と呼ぶ)が測定(推定)されて表示されても良い。さらには、当該中枢血圧は、AI値と同様に、各回の呼吸訓練器の前と後の両方において測定(推定)され、それらの差の値が表示されることが好ましい。
【0078】
ここで表示される中枢血圧は、たとえばユーザ(被験者)の体内にカテーテルを挿入することにより侵襲して測定することも考えられるが、脈波波形に基づいて推定された値であっても良い。以下に、脈波波形に基づく中枢血圧の推定について、その技術的な背景と実際の推定方法を説明する。
【0079】
[中枢血圧の推定についての技術的な背景]
図12(A)と図12(B)には同一被験者について同時に測定した末梢動脈の圧脈波の変化と中枢動脈の圧脈波の変化を示す。図12(A)と図12(B)の波形は、中枢動脈の状態に左右される。図12(B)の中枢動脈の波形はカテーテルを挿入して侵襲に計測したものであり、図12(A)の末梢動脈の圧脈波は電子血圧計などを用いて上腕部の血圧をオシロメトリック法により測定して得たものである。図12(A)と図12(B)の横軸は時間経過を示し、縦軸は圧脈波信号(電圧信号)の電圧レベル(mV)を示しており、この電圧レベルは血圧に比例する。
【0080】
図12(B)の中枢動脈の圧脈波は、多くの場合には反射波の振幅レベルが大きく、反射波の振幅レベルが大きい人の場合には中枢動脈の最高血圧(収縮期血圧)は反射波の振幅レベルに左右される。図12(A)は抹消動脈の圧脈波の変化を示す。中枢動脈の圧脈波の反射波の振幅レベルが大きい人でも末梢動脈の圧脈波は進行波が大きい場合がある。これは圧脈波が血管を伝わる際にある周波数(5Hz程度)成分が強調される伝達特性があるためである。この場合、心臓の拍動に伴い心臓から血液が送出されるときの駆出波の振幅が大きいことが多く、末梢動脈の最高血圧(収縮期血圧)は駆出波の振幅レベルに大きく左右される。
【0081】
図13(A)と図13(B)は被験者の体にカテーテルを挿入して、ニトログリセリン投与前後の中枢動脈の血圧を測定した結果をグラフで示しており、グラフの横軸は時間経過を示し、縦軸は圧脈波の振幅レベルを示し、その単位は圧力(mmHg)で示されている。ニトログリセリン投与前の図13(A)とニトログリセリン投与後の図13(B)を参照すると、ニトログリセリンが血管細胞に作用して血管を拡張させるので、結果として中枢動脈の圧脈波について反射波成分が低減されたことが、圧脈波の振幅のピークが図中矢印で示されるように低減されていることでわかる。
【0082】
図14(A)と図14(B)には、ニトログリセリンの投与により、末梢動脈の圧脈波において反射波が低減される様子がグラフで示される。グラフの横軸は時間経過を示し、縦軸は圧脈波の振幅レベルを示し、その単位は圧力(mmHg)で示されている。ここで示される末梢動脈の圧脈波は、電子血圧計を用いたオシロメトリック法に従い測定された血圧の波形に対応する。末梢動脈の圧脈波の波形においては、圧脈波の振幅のピークであるポイントA1とA2、ポイントB1とB2において血圧が指示される。特許文献1で示されているように中枢動脈の圧脈波で出現する反射波成分は、抹消動脈の圧脈波ではポイントa1およびa2、ならびにポイントb1およびb2において出現する。したがって、末梢動脈における血圧を示す圧脈波の振幅レベルは反射波に影響されないことがわかる。図示されるように、ニトログリセリンを投与したことにより、血管が拡張しているので、図14(B)に出現する反射波の振幅レベルは図14(A)のそれに比べて低減されて、その結果ポイントa1のレベルはポイントb1のレベルにまで低下し、同様にポイントa2のレベルはポイントb2のレベルにまで低下していることがわかる。
【0083】
図15には、実験結果の実測値を用いた末梢動脈の圧脈波における反射波の振幅レベルの傾向を示すグラフ(以下、反射波トレンドという)L1と中枢動脈圧(最大値:収縮期血圧)の変化の傾向を示す中枢動脈圧トレンドL2が示されている。図15のグラフでは横軸に時間経過がとられて、縦軸に中枢動脈圧(収縮期血圧)と末梢動脈圧の圧脈波のピーク値(いずれも単位は(×100mmHg))を示している。前述したように、中枢動脈圧、すなわち中枢動脈の収縮期血圧は反射波の振幅レベルに左右されるので、反射波の振幅レベルが大きくなると収縮期血圧は上昇し、振幅レベルが低くなると収縮期血圧も低くなる。これに対し、末梢動脈の圧脈波においては、反射波の影響は収縮期血圧(図14(A)と(B)のポイントA1、A2、B1およびB2の血圧)の後方成分として図14(A)と(B)ポイントa1、a2、b1およびb2において出現している。
【0084】
したがって、図15に示されるように、反射波トレンドL1の変化点は、中枢動脈圧トレンドL2の変化点よりわずかに遅れて出現することになる。図15では、その変化点が僅かの時間差をもって対応付けて示されることになって、この変化点は心臓の拍動の1拍ごとに出現しており、反射波トレンドL1は、この1心拍毎の反射波のピーク値を変化点として時系列にプロットしたものである。このように図15のグラフからは、末梢動脈における反射波の振幅レベルの変化と中枢動脈における収縮期血圧の変化はほぼ一致しているということがわかる。このことから、この実験によれば末梢動脈の圧脈波における反射波トレンドL1をモニタすることにより、中枢動脈における収縮期血圧の時系列の時間的変化(トレンド)を容易に把握することが可能になるという結果を得ることができる。
【0085】
[中枢血圧の推定方法(推定に用いる装置の構成)]
脈波は、上記したようにセンサユニット13等を利用することによって測定できる。なお、ここでは、同様の機能を有するセンサユニット101について、その構成等を上記したセンサユニット13よりも具体的に説明する。
【0086】
図16には、センサユニットと固定台との接続関係が示される。図17には、脈波を検出するための装置が生体に装着された状態が示される。
【0087】
図16および図17を参照して、脈波検出装置は手首の橈骨動脈における脈波を検出するために手首表面に装着されるセンサユニット101、脈波検出のために手首を固定するための固定台102および脈波検出に関する各種情報を入出力するための表示ユニット(後述する表示ユニット103)を備える。図16ではセンサユニット101は筐体内に収容されており、図17ではスライド溝9(図16参照)を介して筐体内から外部にスライド移動されて、手首上に位置している状態が示される。
【0088】
固定台102は固定台ユニット107を内蔵しており、固定台ユニット107は後述する図19の表示ユニット103と外部接続インターフェース29とにUSB(Universal Serial Bus)ケーブル4を介して通信可能に接続される。また、固定台ユニット107とセンサユニット101とは通信ケーブル105とエア管6とを介して接続される。
【0089】
脈波検出時には、図17に示すように、ユーザは手首を固定台102の所定位置に載置した状態で、センサユニット101をスライド移動により手首の動脈側の表面に位置させてセンサユニット101の筐体と固定台102とをベルト8を介して締めて、手首上のセンサユニット101がずれないように止める。
【0090】
図18(A)〜図18(E)にはセンサユニット101の構成が示される。
図18(A)のセンサユニット101の、手首装着時の手首を横断する方向の断面構造が図18(B)に示される。図18(C)には図18(B)の破線の枠内の一部が拡大して示される。図18(B)の押圧カフ118は、加圧ポンプ115および負圧ポンプ116によりカフ圧が調整されると、セラミックないしは樹脂により成型されたブロックを介して取付けられた半導体圧力センサ119は該カフ圧レベルに応じた量だけ自在に上下移動する。半導体圧力センサ119は、下方向に移動されることにより、筐体の予め設けられた開口部から突出して手首表面に押圧される。
【0091】
図18(D)と図18(E)に示すように、半導体圧力センサ119の複数個のセンサエレメント128の配列方向は、センサユニット101を手首に装着した時には動脈と略直交(交差)する方向に対応し、配列長は少なくとも動脈の径より長い。センサエレメント128それぞれは押圧カフ118のカフ圧により押圧されると、動脈から発生して生体表面に伝達される圧力振動波である圧力情報を電圧信号として出力する(以下、「圧力信号」という)。センサエレメント128は所定の大きさ(5.5mm×8.8mm)の測定面140において、たとえば40個配列される。
【0092】
図18(C)を参照して、センサエレメント128からの圧力信号は、フレキシブル配線127を介してPCB(Printed Circuit Board)126内のマルチプレクサ120、アンプ121へと順次送られる。
【0093】
図19には、図17に示したシステム構成の変形例が示されている。この図では、図17に示したセンサユニット13、センサアンプ5、圧力制御回路71、およびA/D変換器51の代わりに、上記したようなセンサユニット1および固定台ユニット107が備えられている。また、図19では、センサユニット13が、CPU10が実行するプログラム等を記憶するROM12とCPU10のワークエリアとして機能するRAM13とを備えることが示されている。
【0094】
固定台ユニット107は、CPU10を含む。なお、メモリカード2には、脈波検出および中枢血圧推定の動作を制御するためのデータやプログラムが記憶される。固定台ユニット107には、さらに、加圧ポンプ115、負圧ポンプ116、切換弁117、CPU10からの信号を受け取り加圧ポンプ115、負圧ポンプ116および切換弁117に送信するための制御回路114、少なくとも2つの特性値を有してそのいずれかの特性値に変更可能である特性可変フィルタ122、A/D変換部123を備える。なお、CPU10は、血圧計7から入力される血圧測定結果データを、中枢血圧推定のために参照する。
【0095】
図17では、末梢動脈の圧脈波(単に脈波ともいう)の検出部位が手首とされ、血圧測定部位が上腕とされているが、脈波および血圧ともに測定部位はこれに限定されない。中枢血圧について、より高い推定精度を得るには両者の測定部位は近接していることが望ましい。
【0096】
CPU10はROM12にアクセスしてプログラムを読出してRAM13上に展開して実行し、当該装置全体の制御を行なう。そして、CPU10は、操作キー1Dよりユーザからの操作信号を受取り、その操作信号に基づいて装置全体の制御処理を行なう。すなわち、CPU10は、操作キー1Dから入力された操作信号に基づいて、制御信号を送出する。また、CPU10は、脈波測定結果などを表示部125に表示する。
【0097】
加圧ポンプ115は、上記した押圧カフ(空気袋)118の内圧(以下、「カフ圧」という)を加圧するためのポンプであり、負圧ポンプ116は、カフ圧を減圧するためのポンプである。切換弁117は、これらの加圧ポンプ115と負圧ポンプ116とのいずれかを選択的にエア管6に切換接続する。そして、制御回路114は、これらを制御する。
【0098】
センサユニット101は、複数のセンサエレメント128を含む半導体圧力センサ119、複数のセンサエレメントそれぞれが出力する圧力信号を選択的に導出するマルチプレクサ120、マルチプレクサ120から出力される圧力信号を増幅するためのアンプ121、および半導体圧力センサ119を手首上に押圧させるために加圧調整される空気袋を含む押圧カフ118を備える。
【0099】
半導体圧力センサ119は、単結晶シリコンなどからなる半導体チップに一方向に所定間隔に配列された複数のセンサエレメントを含んで構成され(図18(E)参照)、押圧カフ118の圧力によって測定中の被験者の手首などの測定部位に押圧される。その状態で、半導体圧力センサ119は撓骨動脈を介して被験者の脈波を検出する。半導体圧力センサ119は、脈波を検出することで出力する圧力信号を各センサエレメント128のチャネルごとにマルチプレクサ120に入力する。
【0100】
マルチプレクサ120は、各センサエレメント128が出力する圧力信号を選択的に出力する。マルチプレクサ120から送出される圧力信号は、アンプ121において増幅し、特性可変フィルタ122を介して選択的にA/D変換部123に出力する。本実施の形態において、マルチプレクサ120は、CPU10により動的に制御される。
【0101】
特性可変フィルタ122は、所定値以上の信号成分を遮断するための低域通過フィルタであり、遮断周波数を変更することができる。特性可変フィルタ122についても、後に詳述する。
【0102】
A/D変換部123は、半導体圧力センサ119から導出されたアナログ信号である圧力信号をデジタル情報に変換して、CPU10に与える。CPU10は、半導体圧力センサ19に含まれる各センサエレメント128が出力する圧力信号を、時間軸に沿ってマルチプレクサ120を介して同時に取得する。
【0103】
本実施の形態において、CPU10、ROM12およびRAM13を固定台ユニット107に備えることとしたので、表示ユニット103の小型化を図ることができる。
【0104】
なお、固定台102の固定台ユニット107と表示ユニット103とは別個に設けたが、両機能を固定台102に内蔵する構成であってもよい。また、固定台ユニット107にCPU10を備える構成にしたが、これらを表示ユニット103に設ける構成としてもよい。また、PC(Personal Computer)と接続されて、各種制御を行なうこととしてもよい。
【0105】
[中枢血圧の推定方法(推定のための動作)]
上記したような構成が利用されることにより、中枢血圧が推定される。なお、具体的な中枢血圧の推定動作は、特開2006−000176号公報に記載されているものと同じものとすることができる。具体的には、特に、当該公報において、図9、図12、および図13を参照して説明されているように、中枢動脈の収縮期の血圧が推定され、表示等に用いられる。
【0106】
より具体的には図20(上記公報の図12)では、末梢動脈の反射波を含む圧脈波の波形が示されている。なお、図20では、圧脈波の振幅の最低レベルからピークレベルまでの差分がP1、また、この圧脈波の反射波により生じる収縮期後方成分の振幅の最低レベルからピークレベルまでの差分がP2、同時期に電子血圧計30で測定した末梢動脈圧、すなわち収縮期血圧がPSYS(mmHg)、拡張期血圧がPDIA(mmHg)として、それぞれ示されている。このとき、末梢動脈の収縮期後方成分の圧力PSYS2(mmHg)は次の式1で求まる。
【0107】
SYS2=P2/P1×(PSYS−PDIA)+PDIA …(式1)
そして、末梢動脈における収縮期後方成分の圧力PSYS2が求まると、次に、中枢動脈の収縮期血圧c−PSYSが式2に従って求められる。
【0108】
c−PSYS=α×PSYS2+β …(式2)
このように、呼吸訓練の効果を示す直接的な指標と考えられる中枢血圧(中枢の血圧値)を推定し、表示することにより、より確実にユーザの呼吸訓練に対するモチベーションの向上を図ることができると考えられる。
【0109】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の呼吸訓練器の外観を模式的に示す図である。
【図2】図1の呼吸訓練器のシステム構成を模式的に示す図である。
【図3】図1の呼吸訓練器の外観の他の例を示す図である。
【図4】図1の呼吸訓練器において計測される脈波の時間の経過に従う変化の一例を示す図である。
【図5】図1の呼吸訓練器において測定される脈波の時間の経過に従う変化の他の例を示す図である。
【図6】図2のCPUが実行する呼吸訓練処理のフローチャートである。
【図7】図1の表示器に表示される画面の一例を示す図である。
【図8】図1の表示器に表示される画面の他の例を示す図である。
【図9】図1の表示器に表示される画面のさらに他の例を示す図である。
【図10】図6の呼吸訓練処理の変形例のフローチャートである。
【図11】図2の呼吸訓練器の変形例のシステム構成を模式的に示す図である。
【図12】(A)と(B)は同一被験者について同時に測定した末梢動脈の圧脈波の変化と中枢動脈の圧脈波の変化を示す図である。
【図13】(A)と(B)はカテーテルを挿入して、投薬前後の中枢動脈圧を測定した結果を示すグラフである。
【図14】(A)と(B)は投薬により、末梢動脈の圧脈波において反射波が低減される様子示すグラフである。
【図15】末梢動脈の圧脈波の反射波トレンドと中枢動脈圧の実験による測定結果を示すグラフである。
【図16】本発明の実施の形態におけるセンサユニットと固定台の接続態様を示す図である。
【図17】本発明の実施の形態における脈波測定時の使用態様を示す図である。
【図18】(A)〜(E)は本発明の実施の形態におけるセンサユニットの構成を示す図である。
【図19】本発明の実施の形態における装置の機能構成図である。
【図20】本発明の実施の形態における中枢動脈圧算出の手順を説明するための図である。
【符号の説明】
【0111】
1 呼吸訓練器、1B 表示器、1D 操作キー、5 センサアンプ、7 血圧計、10 CPU、10A 脈波特徴量算出部、10B 提示部、10X ガイド部、11 メモリ、13,101 センサユニット、71 圧力制御回路、51 A/D変換器、102 固定台、107 固定台ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸の訓練パターンをユーザにガイドする情報を報知する処理を実行するガイド手段と、
被験者の脈波を測定する脈波測定手段と、
前記脈波測定手段により測定された脈波の波形の所定の特徴点から直接得られる特徴量を複数算出し、算出された複数の特徴点を用いた演算により前記脈波の反射現象を反映する指標を算出する脈波特徴量算出手段と、
前記ガイド手段による前記処理の実行の前後に前記脈波測定手段に脈波の測定を実行させ、前記処理の実行の前後に測定された脈波に基づいて前記脈波特徴量算出手段に前記指標を算出させる制御手段と、
前記脈波特徴量算出手段が算出した前記指標を提示する提示手段とを備える、呼吸訓練器。
【請求項2】
前記脈波特徴量算出手段が算出した前記処理の実行の前後に測定された脈波に基づく前記指標の差分を算出する差分算出手段をさらに備え、
前記提示手段は、前記差分手段が算出した差分をさらに提示する、請求項1に記載の呼吸訓練器。
【請求項3】
前記脈波特徴量算出手段が算出した前記処理の実行の前後に測定された脈波に基づく前記指標を記憶する記憶手段をさらに備え、
前記制御手段は、複数回の前記ガイド手段による前記処理について、前記脈波特徴量算出手段が算出した前記処理の実行の前後に測定された脈波に基づく前記指標を、前記記憶手段に記憶させる、請求項1に記載の呼吸訓練器。
【請求項4】
前記制御手段は、前記脈波測定手段に被験者の脈波の測定を継続的に実行させ、かつ、前記脈波測定手段による継続的な脈波の測定の結果に対応した前記指標を算出させ、前記指標の変化量が一定量以内である状態が一定期間継続した場合に、前記ガイド手段による前記処理を実行させる、請求項1または請求項2に記載の呼吸訓練器。
【請求項5】
前記指標は、AI(Augmentation Index)である、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の呼吸訓練器。
【請求項6】
被験者の血圧値を測定する血圧測定手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記ガイド手段による前記処理の前または後の少なくとも一方において、前記血圧測定手段に被験者の血圧値を測定させる、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の呼吸訓練器。
【請求項7】
前記提示手段は、前記脈波特徴量算出手段が算出した前記指標とともに、前記血圧測定手段が測定した血圧値を提示する、請求項6に記載の呼吸訓練器。
【請求項8】
前記脈波特徴量算出手段は、
前記脈波測定手段により検出される前記脈波における収縮期後方成分を求める手段と、
前記収縮期後方成分を求める手段によって求められた前記収縮期後方成分を用いて前記生体の中枢動脈の収縮期血圧の推定値を前記指標として算出する推定手段とを含む、請求項2〜請求項7のいずれかに記載の呼吸訓練器。
【請求項9】
コンピュータに、呼吸の訓練パターンをユーザにガイドする情報を報知する処理を実行させるための、コンピュータ読取可能なプログラムであって、コンピュータに、
被験者の脈波の測定結果を読込む第1の読込ステップと、
前記第1の読込ステップで読込んだ脈波の波形の所定の特徴点から直接得られる特徴量を複数算出し、算出された複数の特徴点を用いた演算により前記脈波の反射現象を反映する指標を算出する第1の算出ステップと、
前記第1の読込ステップの後に呼吸の訓練パターンをガイドする情報を、情報を報知する装置を介して報知する報知ステップと、
前記報知ステップの後に被験者の脈波を読込む第2の読込ステップと、
前記第2の読込ステップで読込んだ脈波の波形の所定の特徴点から直接得られる特徴量を複数算出し、算出された複数の特徴点を用いた演算により前記脈波の反射現象を反映する指標を算出する第2の算出ステップと、
前記第1の算出ステップで算出した前記指標と前記第2の算出ステップで算出した前記指標を、情報を報知する装置を介して提示するステップとを実行させる、コンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−82175(P2009−82175A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251865(P2007−251865)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【Fターム(参考)】