説明

哺乳動物において免疫反応を強化するための方法

提供されるものは、慢性的病的状態の根絶を促進するために、哺乳動物における免疫反応を強化する方法である。方法は、該哺乳動物の循環から、可溶性TNF受容体などの免疫系抑制因子を除去し、病原体に対しより活発な免疫反応を可能にすることを含む。免疫系抑制因子の除去は、哺乳動物の生物学的流体を、標的とする免疫系抑制因子に結合し、したがって該因子を生物学的流体から除去することを可能とするTNFαムテインなどの、一種以上の結合パートナーと接触させることによって実現される。特に有用なのは、可溶性TNF受容体などの標的免疫系抑制因子に対し特異的に結合することが可能な、TNFαムテインなどの結合パートナーに対して共有的に結合体化される、不活性な、生体適合性物質から構成される吸収性基質である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2005年9月22日に出願された、米国特許出願第11/234,057号の一部継続出願であり、これに対して優先権を主張する。米国特許出願第11/234,057号は、本明細書中にその全体が参考として援用される。
【0002】
(発明の背景)
発明の分野
本発明は、一般に、免疫療法の分野に関し、より詳細には、宿主の免疫反応を強化する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
哺乳類の免疫系は、有害となる可能性のある介在因子の成長および増殖に対し宿主を保護するように進化してきた。これらの介在因子としては、環境中に存在し、宿主の体内に導入されると様々の病的状態を誘発することが可能な、感染性微生物、例えば、細菌、ウィルス、真菌、および寄生虫などが挙げられる。他にも、病的状態は、環境から得られる因子ではなく、むしろ宿主の体内で自発的に発生した因子に由来する場合もある。そのもっとも良い例が、哺乳類で起こることが知られる多くの悪性疾患である。理想的には、宿主におけるこれらの有害因子の存在が、免疫系の動員を誘発し、該因子の破壊を実行し、それによって宿主の環境の清純性が回復されることである。
【0004】
免疫系による病原体の破壊は、様々のエフェクター機構を巻きこんで行われるが、それらは、一般に、二つのカテゴリー分類される。先天性免疫と特異的免疫である。防衛の第一線は、先天性免疫機構によって仲介される。先天性免疫は、宿主の体内に侵入する無数の因子を区別しない。そうではなく、先天性免疫は、炎症反応、食作用、補体およびインターフェロンなどの原形質包含成分を用いる一般的方法によって対応する。一方、特異的免疫は、病原体をそれぞれ区別する。特異的免疫は、BおよびTリンパ球によって仲介され、大部分は、先天性免疫のエフェクター機構を増幅し、それらの重点的作用を補佐する。
【0005】
効果的免疫反応の微細な調整は、先天性および特異的の両免疫機構からの寄与を必要とする。免疫系のこの両腕それぞれの機能、およびそれらの相互作用は、時間的/空間的に、かつ、関与する特定の細胞タイプの点からも注意深く互いに調和的に調節されている。この調和的調節は、いくつかの、可溶性免疫刺激性介在因子、すなわち「免疫系刺激因子」の活動によってもたらされる(Trinchieri et al.,J.Cell.Biochem.53:301−308(1993)において総覧される)。これらの免疫系刺激因子の内のあるものは、炎症反応、および付属の、一連の全身反応を起動し、それらを恒久的に維持する。そのような因子の例としては、炎症性介在因子腫瘍壊死因子αおよびβ、インターロイキン−1、インターロイキン−6、インターロイキン−8、インターフェロン−γ、およびケモカインRANTES、マクロファージ炎症性タンパク1−αおよび1−β、およびマクロファージの走化性および活性化因子が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。その他の免疫系刺激因子は、特異的免疫のBおよびTリンパ球の間の相互作用を促進する。そのような因子の例としては、インターロイキン−2、インターロイキン−4、インターロイキン−5、インターロイキン−6、およびインターフェロン−γが挙げられるが、ただしこれらに限定されない。さらに別の免疫系刺激因子は、特異的免疫と先天性免疫との間の双方向性コニュニケーションを仲介する。そのような因子の例としては、インターフェロン−7、インターロイキン−1、腫瘍壊死因子αおよびβ、およびインターロイキン−12が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。これらの免疫系刺激因子は全て、宿主細胞表面の特定の受容体に結合し、標的細胞の機能を変える細胞内シグナルの輸送をもたらすことによって、その作用を及ぼす。それと協調して、これらの介在因子は、免疫細胞の活性化および増殖を刺激し、該細胞を、特定の解剖学的部位に招集し、攻撃因子の根絶におけるこれらの細胞同士の協力を可能とする。ある個人において誘発される免疫反応は、生産される免疫系刺激因子の特定の補体、および各刺激因子の相対的量によって決められる。
【0006】
前述の免疫系刺激因子とは対照的に、免疫系は、免疫反応の抑制を補佐する、別の、可溶性介在因子を進化させている(Arend,Adv.Int.Med.40:365−394(1995)に総覧される)。これらの「免疫系抑制因子」は、宿主の組織を損傷する可能性のある慢性的免疫状態の確立を阻止するため、反応を抑える能力を免疫系に付与する。免疫系抑制因子による宿主の免疫機能の調節は、後述の各種機構を通じて実現される。
【0007】
第一に、ある免疫系抑制因子は、免疫系刺激因子に直接結合し、それら刺激因子が、宿主細胞の原形質膜受容体に結合するのを阻止する。この種の免疫系抑制因子の例としては、腫瘍壊死因子αおよびβ、インターフェロン−γ、インターロイキン−1、インターロイキン−2、インターロイキン−4、インターロイキン−6、およびインターロイキン−7に対する可溶性受容体が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。
【0008】
第二に、ある免疫系抑制因子は、免疫系刺激因子の、その受容体に対する結合に拮抗する。例を挙げると、インターロイキン−1受容体拮抗因子は、インターロイキン−1の膜受容体に結合することが知られる。該拮抗因子は、標的細胞に活性化シグナルを輸送することはしないが、インターロイキン−1の膜受容体を占拠することによって、インターロイキン−1の作用をブロックする。
【0009】
第三に、特定の免疫系抑制因子は、宿主細胞の受容体に結合し、免疫系刺激因子の生産低下をシグナル伝達することによってその作用を及ぼす。例としては、二つの、最重要の、前炎症介在因子である、腫瘍壊死因子αおよびインターロイキン−1の生産を下げるインターフェロン−β(Coclet−Ninin et al.,Eur.Cytokine Network 8:345−349(1997))、および、免疫系刺激因子、インターロイキン12の生産を抑制することによって細胞性免疫反応の発達を抑えるインターロイキン−10(D’Andrea et al.,J.Exp.Med.178:1041−1048(1993))が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。免疫系刺激因子の生産の低下に加えて、ある免疫系抑制因子はさらに、他の免疫系抑制因子の生産を強化する。例として挙げると、インターフェロン−α2bは、インターロイキン−1および腫瘍壊死因子αの生産を抑制し、かつ、対応する免疫系抑制因子、インターロイキン−1受容体拮抗因子、および、腫瘍壊死因子αおよびβに対する可溶性受容体の生産は増大させる(Dinarello,Stem.in Oncol.24(3 Suppl.9):81−93(1997))。
【0010】
第四に、ある免疫系抑制因子は、免疫細胞に直接作用し、その増殖および機能を抑制し、そうすることによって免疫系の活力を低下させる。例として挙げると、トランスフォーミング増殖因子βは、各種免疫細胞を抑制し、炎症および細胞性免疫反応を著明に抑える(Letterio and Roberts,Ann.Rev.Immunol.16:137−161(1998)に総覧される)。以上まとめると、これら様々の免疫抑制機構は、免疫反応を量的にも質的にも制御し、それによって宿主自身の組織に対する並行的損傷の可能性を最小化することが意図される。
【0011】
自己調節のために宿主の免疫系によって生産される抑制因子に加え、別の免疫系抑制因子が、感染性微生物によって生産される。例えば、多くのウィルスは、宿主の免疫系抑制因子の、ウィルス相同体である分子を生産する(Spriggs,Ann.Rev.Immunol.14:101−130(1996)に総覧される)。そのようなものとして、宿主の補体抑制因子、インターロイキン−10、および、インターロイキン−1、腫瘍壊死因子αおよびβ、およびインターフェロンα、βおよびγに対する可溶性受容体に対する相同体が挙げられる。同様に、ぜん虫などの寄生生物も、宿主の免疫系抑制因子の相同体を生産し(Riffkin et al.,Immunol.Cell Biol.74:564−574(1996)に総覧される)、かつ、いくつかの細菌属も、免疫抑制性産物を生産することが知られる(Reimann et al.,Scand.J.Immunol.31:543−546(1990)に総覧される)。これらの免疫系抑制因子は全て、感染の初期段階において免疫反応の抑制を助け、微生物に有利な立場を与え、感染の有害性および慢性を強調する。
【0012】
慢性疾患における、宿主由来免疫系抑制因子の役割は既に定まっている。大多数の症例において、これは、初期の感染における二極化T細胞反応を反映する。この反応では、免疫抑制介在因子(すなわち、インターロイキン−4、インターロイキン−10、および/またはトランスフォーミング増殖因子−β)の生産の方が、免疫刺激介在因子(すなわち、インターロイキン−2、インターフェロンγ、および/または腫瘍壊死因子β)の生産に対し優勢になる(Lucey et al.,Clin.Micro.Rev.9:532−562(1996)に総覧される)。この種の免疫抑制介在因子の過剰生産は、いくつかの、医学的に重要な疾患において、慢性の、非治癒性病的状態を生成することが示されている。そのようなものとしては、1)寄生虫Plasmodium falciparum(Sarthou et al.,Infect.Immun.65:3271−3276(1997))、Trypanosoma cruzi(Laucella et al.,Revista Argentina de Microbiolgia 28:99−109(1996)に総覧される)、Leishmania major(Etges and Muller,J.Mol.Med.76:372−390(1998)に総覧される)、およびある種のぜん虫(Riffkin et al.,上記);2)細胞内細菌、Mycobacterium tuberculosis (Baliko et al.,FEMS Immunol.Med.Micro.22:199−204(1998))、Mycobacterium avium(Bermudez and Champsi,Infect.Immun.61:3093−3097(1993))、Mycobacterium leprae(Sieling et al.,J.Immunol.150:5501−5510(1993))、Mycobacterium bovis (Kaufmann et al.,Ciba Fdn.Symp.195:123−132(1995))、Brucella abortus(Fernandes and Baldwin,Infect.Immun.63:1130−1133(1995))、およびListeria monocytogenes(Blauer et al.,J.Interferon Cytokine Res.15:105−114(1995))、および、3)細胞内真菌、Candida albicans(Romani et al.,Immunol.Res.14:148−162(1995)に総覧される)による感染によってもたらされる疾患が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。自発的に感染を解除することができない無能力性は、他の、宿主由来の免疫系抑制因子によっても影響を受ける。例を挙げると、インターロイキン−1受容体拮抗因子、および、腫瘍壊死因子αおよびβに対する可溶性受容体は、多くの感染性介在因子の存在によって駆動される、インターロイキン−1および腫瘍壊死因子αおよび/またはβに対する反応として生産される。例として、Plasmodium falciparum(Jakobsen et al.,Infect.Immun.66:1654−1659(1998);Sarthou et al.,上記)、Mycobacterium tuberculosis(Balcewitcz−Sablinska et al.,J.Immunol.161:2636−2641(1998))、およびMycobacterium avium (Ericks and Emerson,Infect.Immun.65:2100−2106(1997))による感染が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。前述の免疫系抑制因子の内のいずれかが、個別に、または組み合わさって、病原体の根絶前に、免疫反応性を抑える、または他のやり方で変えた場合、慢性的感染がもたらされる場合がある。
【0013】
宿主由来免疫系抑制因子は、感染性疾患における上記の役割の外に、悪性の慢性疾患にも寄与する。癌患者における可溶性腫瘍壊死因子I型(sTNFRI)に関する研究によって説得的証拠が提示されている。ナノモル濃度のsTNFRIが、癌患者の各種活性化免疫細胞によって、多くの場合、腫瘍組織そのものによって合成される(Aderka et al.,Cancer Res.51:5602−5607(1991);Adolf and Apfler,J.Immunol.Meth.143:127−136(1991))。さらに、sTNFRIの循環レベルは、しばしば、癌患者において著明に上昇し(Aderka et al.,上記;Kalmanti et al.,Int.J.Hematol.57:147−152(1993);Elsasser−Beile et al.,Tumor Biol.15:17−24(1994);Gadducci et al.,Anticancer Res.16:3125−3128(1996);Digel et al.,J.Clin.Invest.89:1690−1693(1992))、寛解時には低下し、かつ、腫瘍発達の進行段階では増加し(Aderka,et al.,上記;Kalmanti et al.,上記;Elasser−Beile et al.,上記;Gadducci et al.上記)、および、高レベルで存在する場合は、比較的劣悪な治療結果と相関する(Aderka et al.,上記)。これらの所見は、sTNFRIが、腫瘍壊死因子αおよび/またはβ(TNF)を用いる抗腫瘍免疫機構を抑制することによって腫瘍の生存を助けることを示唆し、かつ、癌の治療的戦略として、sTNFRIレベルの臨床的操作を積極的に支持する。
【0014】
免疫系抑制因子の除去は臨床的利点を提供するという直接的証拠が、癌の有望な実験的治療法であるウルトラフェレーシスの評価から得られている(Lentz,J.Biol.Response Modif.8:511−527(1989);Lentz,Ther.Apheresis 3:40−49(1999);Lentz,Jpn. J. Apheresis 16:107−114(1997))。ウルトラフェレーシスは、限外ろ過による血漿成分の体外分画を含む。ウルトラフェレーシスは、ある定められた分子サイズ範囲内の血漿成分を選択的に除去するが、各種腫瘍タイプを提示する患者に対し、著明な臨床的利点を提供することが示されている。ウルトラフェレーシスによって、腫瘍部位に、多くの場合処置開始の1時間以内に著明な炎症が誘発される。このように速やかであることは、この炎症反応の発達には、あらかじめ形成された化学的および/または細胞介在因子が関与することを示唆し、その反応に対する天然の血漿抑制因子が除去されることを反映する。実際、TNFαおよびβ、インターロイキン−1、およびインターロイキン−6などの免疫系抑制因子は、ウルトラフェレーシスによって取り除かれる(非特許文献1)。注目すべきことは、sTNFRIの除去は、観察された臨床反応と相関することである(非特許文献1;非特許文献2)。
【0015】
ウルトラフェレーシスは、免疫系刺激因子の添加によって免疫を急激に立ち上げようとする、比較的伝統的な方法とは真っ向から対立する。これらの中でももっとも著明なものは、超生理的レベルのTNF(非特許文献3)、および、TNFの生産を間接的に刺激する、インターロイキン−2(非特許文献4)の輸液である。これらの治療の成果は、下記によって限りあるものであった。1)用いたレベルでは、それらは極めて有害であり、かつ、2)それぞれ、免疫系抑制因子であるsTNFRIの血漿レベルを増加させる(非特許文献5;非特許文献6)。以上まとめると、これらの所見は、免疫系刺激因子の添加よりはむしろ、癌に対する生物学的治療法−免疫系抑制因子の除去を含む方法としてのウルトラフェレーシスの有用性を支持する。
【0016】
ウルトラフェレーシスは、従来の治療法に優る利点を提供するとはいうものの、その臨床的有効性を制限する欠点をいくつか有する。ウルトラフェレーシスによって除去されるのは、免疫系抑制因子だけではなく、有効なものまで含めて、他の血漿成分も除去される。なぜなら、除去される血漿成分と保持される血漿成分の間の区別は、単に分子サイズに基づくだけだからである。ウルトラフェレーシスの、さらにもう一つの欠点は、処置の間の、循環血容量の著明な低下であり、これは、交換液の輸液によって補わなければならない。もっとも効果的な交換液は、非腫瘍保持のドナーの血漿から同一の方法で生産された限外ろ過物である。典型的治療スケジュール(それぞれ、約7リットルの限外ろ過液の除去を伴う、15回処置)は、交換液生産のために、200リットルを超えるドナー血漿を必要とする。ドナー血漿の慢性的不足は、ヒト免疫不全ウィルス、A、B、およびC型肝炎、またはその他の病原性介在因子による感染の危険と組み合わされて、ウルトラフェレーシスの広範な導入にたいする重大な障害となっている。
【0017】
免疫系抑制因子の除去に伴って有利な作用が得られるという理由で、これらの抑制因子を循環から特異的に除去するために使用することが可能な方法が求められている。そのような方法は、理想的には、特異的であって、他の循環成分を除かず、かつ、循環容量の著明な低下をもたらすものであってはならない。本発明は、これらの要求を満たし、同時に関連利点を提供する。
【非特許文献1】Lentz,Ther.Apheresis 3:40−49(1999)
【非特許文献2】Lentz,Jpn.J.Apheresis 16:107−114(1997)
【非特許文献3】Sidhu and Bollon,Pharmacol.Ther.57:79−128(1993)
【非特許文献4】Maas et al.,Cancer Immunol.Immunother.36:141−148(1993)
【非特許文献5】Lantz et al.,Cytokine 2:402−406(1990)
【非特許文献6】Miles et al.,Brit.J.Cancer 66:1195−1199(1992)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明の概要
提供されるのは、哺乳動物の循環中に存在する可溶性TNF受容体などの免疫系抑制因子の除去を通じて、哺乳動物における免疫反応を刺激する方法である。可溶性TNF受容体などの免疫系抑制因子の除去は、哺乳動物から生物学的流体を除去し、これらの流体を、標的免疫系抑制因子と選択的に結合することが可能な結合パートナー、例えば、TNFαムテインと接触させることによって実行することが可能である。
【0019】
これらの方法において有用な結合パートナーとしては、可溶性TNF受容体に対して特異性を持つTNFαが挙げられる。さらに、1種以上のTNF受容体に対して特異性を持つTNFαの混合物の使用も可能である。
【0020】
一例として、TNFαムテインなどの結合パートナーは、あらかじめ固相支持体の上に固定して、「吸収性基質」を創製することが可能である(図1)。この吸収性基質に対し生物学的流体を暴露することによって、可溶性TNF受容体などの免疫系抑制因子による結合が可能とされ、したがって、生物学的流体の量の低下が実現される。この処置された生物学的流体は、患者に戻すことも可能である。処置される生物学的流体の量、および処置速度は、毒性を最小化しながらも、活発な免疫反応を誘発する結果をガイドとして、各患者について個別化されるパラメータである。固相支持体(すなわち、不活性媒体)は、このような目的のために有用なものであれば、どのような材料から構成されてもよく、例えば、中空線維、セルロース製繊維、合成繊維、フラットまたはプリーツ状膜、シリカ製粒子、粗大な多孔性ビーズなどを含む材料によって構成されてもよい。
【0021】
別の例として、TNFαムテインなどの結合パートナーは、「攪拌リアクター」において生物学的流体と混ぜ合わせることも可能である。次に、この結合パートナー−免疫系抑制因子複合体は、機械的、または化学的または生物学的手段または方法によって除去することが可能であり、この改変生物学的流体は患者に戻すことが可能である。
【0022】
さらに提供されるのは、基質に付着された、腫瘍壊死因子α(TNFα)ムテインを含む結合体である。
【0023】
さらに提供されるのは、吸収性基質、または攪拌リアクターのいずれかを含む装置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
発明の詳細な説明
本発明は、本発明の好ましい局面に関する、下記の詳細な説明、および該説明に含まれる実施例、および図面、および、それ以前およびそれに続く説明を参照することによってより容易に理解することが可能となろう。
【0025】
本発明の化合物、組成物、物品、装置、および/または方法が開示され、記載される前に、本発明は、特定の合成法、特定の核酸分子、または特定のレーザー波長に限定されるものではないと理解しなければならない。なぜなら、当然のことながら、それらものは変動するからである。さらに、本明細書において使用される用語は、特定の局面を記載するためのものであって、限定的であることを意図するものではないことを理解しなければならない。
【0026】
本明細書および付属の特許請求項において用いられる、「ある」および「当該」という単数形は、文脈から明らかに別様に指定されない限り、複数への言及を含む。したがって、あるリボ核酸に対する言及は、複数のリボ核酸分子から成る複数の混合物を含み、あるプローブに対する言及は、2種以上の、そのようなプローブなどから成る、複数の混合物を含む。
【0027】
範囲は、本明細書では、「約」ある特定の値から、および/または、「約」別のある特定の値までとして表わされる。このような範囲が表される場合、別の局面は、一方の特定の値から、および/または、他方の特定の値までを含む。同様に、値が、先行詞「約」によって近似値として表される場合、特定の数値は、別局面を形成するものであることが理解される。さらに、範囲のそれぞれの端点は、他方の端点との関係において、および他方の端点とは独立に重要であることが理解される。
【0028】
本明細書および後述の特許請求項では、下記の意味を持つと定義されるいくつかの用語に対して言及がなされる。
【0029】
「任意の」または「任意に」とは、後述の事象または状況は起こってもよいし、起こらなくともよいこと、記述は、前記事象または状況が起こる場合と、それが起こらない場合とを含むことを意味する。例えば、「サンプルは、一つを超えるTNFαムテインを任意に含んでもよい」という語句は、サンプルは、一つを超えるTNFαを含んでもよいし、または含まなくてもよいこと、および、該記述は、一つのTNFαムテインを含むサンプルと、一つを超えるTNFαムテインを含むサンプルの両方を含むことを意味する。
【0030】
提供されるものは、宿主哺乳動物における可溶性TNF受容体などの免疫系抑制因子のレベルを下げ、それによって病的状態を寛解するか、または、病的状態の重度を下げることが可能な免疫反応を強化する方法である。開示の方法は、宿主の免疫反応の大きさを強調することによって、多くの場合有害な副作用をもたらす化学療法剤、例えば、癌治療に使用される化学療法剤の反復投与と関連する問題点を回避する。
【0031】
開示の方法は、一般に、(a)病的状態を有する哺乳動物から生物学的流体を得ること;(b)該生物学的流体を、可溶性TNF受容体などの標的免疫系抑制因子に選択的に結合することが可能なTNFαムテイン結合パートナーに接触させ、標的免疫系抑制因子の量が低減された改変生物学的流体を生成すること;および、その後、(c)改変生物学的流体を前記哺乳動物に投与すること、によって実現される。
【0032】
本明細書で用いる「免疫系刺激因子」という用語は、免疫反応の大きさを増すか、あるいは、ある特定の病的状態の寛解においてより効果的な特定の免疫機構の発達を促進する、可溶性介在因子を指す。免疫系刺激因子の例としては、前述の、炎症性介在因子腫瘍壊死因子αおよびβ、インターロイキン−1、インターロイキン−2、インターロイキン−4、インターロイキン−5、インターロイキン−6、インターロイキン−8、インターロイキン−12、インターフェロン−γ、インターフェロン−7、およびケモカインRANTES、マクロファージ炎症性タンパク1−αおよび1−β、およびマクロファージの走化性および活性化因子が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。
【0033】
本明細書で用いる「免疫系抑制因子」という用語は、免疫反応の大きさを下げるか、あるいは、ある特定の病的状態の寛解においてより効果的な特定の免疫機構の発達を抑えるか、または、ある特定の病的状態の寛解において効果のより低い、特定の免疫機構の発達を促進する、可溶性介在因子を指す。宿主由来の免疫系抑制因子の例としては、インターロイキン−1受容体拮抗因子、トランスフォーミング増殖因子−β、インターロイキン−4、インターロイキン−10、あるいは、インターロイキン−1、インターロイキン−2、インターロイキン−4、インターロイキン−6、インターロイキン−7、インターフェロン−γ、および、腫瘍壊死因子αおよびβに対する受容体が挙げられる。開示の組成物、結合体、および方法の特定局面では、免疫系抑制因子は、可溶性TNF受容体I型(sTNFRI)、またはII型(sTNFRII)であってもよい。微生物によって生産される免疫系抑制因子はまた、標的となり得るもの、例えば、腫瘍壊死因子αおよびβに対する、可溶性受容体を含む可能標的である。本明細書で用いる「標的」免疫系抑制因子という用語は、開示の方法によって生物学的流体から除去されるべき抑制因子、または抑制因子の集合体、例えば、sTNFRIおよび/またはsTNRFIIを指す。
【0034】
本明細書で用いる「可溶性TNF受容体」という用語は、TNFαおよびTNFβに対する受容体の可溶形を指す。これまで二つの型のTNF受容体が特定されている。別にTNF−R55とも呼ばれる、I型受容体(TNFRI)、および別名TNF−R75とも呼ばれる、II型受容体(TNFRII)である。いずれも、TNFαおよびTNFβに結合する膜タンパクであり、細胞内シグナル伝達を仲介する。これらの受容体のいずれも、可溶形としても出現する。TNF受容体の可溶形は、前述のように、免疫系抑制因子として機能する。本明細書で用いる可溶形TNF受容体は、TNFRIおよびTNFRII、または他の、任意のTNF受容体の可溶形の内の少なくとも一つを含む。開示の方法では、方法は、方法において使用されるTNFαムテイン、または複数のムテインの結合するTNF受容体が、一型であるのか、または両型であるのかに依存して、一型の、または両型のTNF受容体を除去するのに使用することが可能である。
【0035】
本明細書で用いる「哺乳動物」という用語は、ヒト、または、非ヒト動物、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、非ヒト霊長類、マウス、ラット、ウサギ、またはその他の哺乳類を含む動物であってもよい。「患者」という用語は、開示の組成物、結合体、および方法の記載においては、「哺乳動物」という用語と同義的に使用される。
【0036】
本明細書で用いる「病的状態」という用語は、宿主における、宿主とは免疫学的に異なる介在因子の持続的存在が、病態の成分であるか、または病態の原因となっている、任意の状態を指す。このような病的状態の例としては、ウィルス、細菌、寄生虫、および真菌による持続性の感染、および癌が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。このような慢性疾患を示す個人の中でも、免疫系抑制因子のレベルが上昇している人々は、本開示の治療に特に好適である。免疫系抑制因子の血漿レベルは、従来技術で周知の方法を用いて定量することが可能である(例えば、Adolf and Apfler,上記、1991を参照されたい)。当業者であれば、本発明の方法に従って免疫系抑制因子を除去することによって利益を得られると考えられる病的状態は簡単に決めることが可能である。
【0037】
本明細書で用いる「生物学的流体」という用語は、哺乳動物から得られる体液、例えば、血液、例えば、全血、血漿、血清を含む血液、リンパ液、または、他のタイプの体液を指す。要すれば、生物学的流体は、処理されるか、または、例えば、無細胞成分を得るために分画されてもよい。開示の組成物、結合体、および方法に関連して使用される場合、「無細胞生物学的流体」という用語は、循環系の無細胞成分、例えば、血漿、血清、リンパ液、またはそれらの分画を含む成分を指す。生物学的流体は、哺乳動物から、当業者には既知の任意の手段または方法、例えば、従来のアフェレーシス法(Apheresis:Principles and Practice,McLeod,Price,and Drew,eds.,AABB Press,Besthesda,MD(1997)を参照)を含む方法によって取り出すことが可能である。ある任意の時間において、哺乳動物から抽出される生物学的流体の量は、いくつかの要因、例えば、宿主哺乳動物の年齢および体重、および、治療効果を実現するのに必要な容量を含む要因に依存する。初期のガイドラインとして、一血漿容量(ヒトの成人では約3−5リットル)を取り出し、その後、本発明の方法に従って、標的とする免疫系抑制因子を除去することが可能である。
【0038】
本明細書で用いる「選択的に結合する」という用語は、ある分子が、一つのタイプの標的分子には結合するが、他のタイプの分子にはほとんど結合しないことを意味する。本明細書では、「特異的に結合する」という用語は、「選択的に結合する」と相互交換的に使用される。
【0039】
本明細書で用いる「結合パートナー」という用語は、標的免疫系抑制因子に対し選択的に結合することが可能な能力に関して選ばれた任意の分子を含めることが意図される。結合パートナーは、標的免疫系抑制因子と天然状態で結合するものであってもよい。例えば、sTNFRIに対する結合パートナーとして、腫瘍壊死因子αまたはβを使用することも可能である。それとは別に、標的免疫系抑制因子に選択的に結合することが可能な能力に関して選ばれた、他の結合パートナーを使用することも可能である。そのようなものとして、天然結合パートナーの断片、その、ポリクロナールまたはモノクロナール抗体標本または断片、または合成ペプチドが挙げられる。さらに別の局面では、結合パートナーは、TNFαムテインであってもよく、このTNFαムテインは、トリマー、ダイマー、またはモノマーであってもよい。
【0040】
本明細書で用いる「TNFαムテイン」という用語は、親配列に対し一つ以上の置換を有し、かつ、可溶性および/または膜性TNFRを問わず、TNF受容体に対する特異的結合活性を保持するTNFα変異種を指す。一般に、本発明のムテインは、親配列に対し単一アミノ酸置換を有する。例示のTNFαムテインとして、ムテイン1、2、3、4、5、および6と表示されるヒトのTNFαムテインが挙げられる(図3B参照)。これらは、ヒトのTNFαから得られたものであるが、後述するように、野生型配列に比べ単一のアミノ酸置換を有する。ヒト以外の種の類似ムテイン、例えば、図3Aに示される他の哺乳類種、またはその他の哺乳類種における、ムテイン1、2、3、4、5、または6と類似のムテインも同様に含められることが理解される。さらに下に詳述するように、上記およびその他のムテインも、本発明のTNFαムテインの意味の中に含まれる。さらに、TNFαムテインは、TNFαの突然変異形または改変形、例えば、マルチマーを形成するか、または結合してダイマーを形成して活性を低下させた変異形または改変形を含んでもよい。天然のTNFαの開示の改変形は、別々に、または、任意の組み合わせで一緒に使用することが可能である。さらに、ムテイン1、2、3、4、5、および6の改変形は、共に、または別々に使用することが可能であり、かつ、それぞれ、または全て、モノマーまたはダイマー状成から得られる改変形と共に使用することが可能である。例えば、野生型TNFαの改変モノマーは、野生型TNFαの、第二改変モノマーと結合させてダイマーを形成してもよい。さらに別の局面では、野生型TNFαの改変モノマーは、アミノ酸配列、例えば、ムテイン1と結合してダイマーを形成してもよい。したがって、「TNFαムテイン」は、TNFαの改変モノマー、野生型TNFαにおける単一突然変異を含むモノマー、例えば、ムテイン1、ムテイン2、ムテイン3、ムテイン4、ムテイン5、ムテイン6、または、本明細書に記載される、他の、任意の突然変異アミノ酸配列を含むモノマー;二つの同一アミノ酸配列を含むダイマー;および、二つの、非同一アミノ酸配列を含むダイマーを含んでもよい。例えば、TNFαムテインは、野生型TNFαの、二つの、同一の、改変モノマーを含むダイマー、あるいは、野生型TNFαの、二つの、非同一の、改変モノマーを含むダイマーを含んでもよい。さらに別の局面では、TNFαムテインは、同一のアミノ酸突然変異を含む、二つのアミノ酸配列を含むダイマーを含んでもよい。さらに別の局面では、TNFαは、非同一アミノ酸突然変異を持つ、二つのアミノ酸配列を含むダイマーを含んでもよい。さらに、TNFαムテインは、野生型TNFαの改変形と、単一アミノ酸突然変異を含むアミノ酸配列、例えば、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8によって特定されるアミノ酸配列、あるいは、本明細書に開示される、他の、任意の突然変異アミノ酸配列とを含むダイマーを含んでもよい。
【0041】
TNFαムテインは、モノマー、ダイマー、またはトリマーであってもよい。すなわち、TNFαムテインは、モノマー形、ダイマー状、またはトリマー形を取ってもよい。天然のTNFαは、本明細書において例示されるTNFαムテインと同様、三つの17kDaサブユニットから成るホモトリマーである。本明細書に記載される方法を用いて生産される他のTNFαムテインも、トリマーとして存在してもよい。TNFαまたはTNFαムテインの、一価の可溶性TNFRに対する結合は、TNFαまたはTNFαムテイン・トリマーに存在する、三つのモノマーの内の二つしか含まない。TNFαまたはTNFαムテイン・トリマーは、三つの、可溶性TNFR分子に対して結合することが可能であるが、それぞれに対する結合は、単にアフィニティーのみに支配される独立事象であって、アビディティによる寄与を容れない。したがって、TNFαまたはTNFαムテインのダイマー状による結合の強度は、TNFαまたはTNFαムテインのトリマー形に比べて減少しない。
【0042】
提供されるものは、哺乳動物における免疫反応を刺激するか、または強化するための組成物および方法である。本発明は、そうすると有利であるので、免疫反応に対する免疫系抑制因子の抑制効果に対抗するか、または該効果を下げるために、免疫系抑制因子に結合するリガンドを使用する。このようなリガンドは、本明細書では「結合パートナー」とも呼ばれるが、生物学的流体から免疫系抑制因子の除去を可能とするために固相支持体に付着されてもよい。
【0043】
本発明において特に有用な結合パートナーは、免疫系抑制因子、例えば、可溶性TNF受容体、特に、sTNFRIおよび/またはsTNFRIIに、高度のアフィニティーの下に結合するリガンドである。結合パートナーの、もう一つの有用な特徴は、直接的毒性の欠如である。例えば、TNF作用因子の活性化を持たない、または抑えられた結合パートナーは特に有用である。一般に、結合パートナーなどのリガンドが、固相支持体に共有的に結合された場合でも、結合リガンドのあるパーセンテージは、例えば、共有的連結を破壊する化学的反応、あるいは、生物学的流体中に存在するプロテアーゼ活性によって、支持体から漉し出される。そのような場合、リガンドは、処理される生物学的流体の中に浸透し、したがって患者に戻される。したがって、免疫系抑制因子に対してはアフィニティーを持つが、生物学的反応を刺激する能力は抑えられている、すなわち、作用活性が抑えられているか、または低いリガンドを使用するのが有利である。この場合、リガンドのあるものは、処理される生物学的流体中に漉し出されても、そのリガンドは、患者の体内に再度導入された場合、膜受容体のシグナル伝達に関して依然として低い生物活性を発揮すると考えられる。
【0044】
結合パートナーの、もう一つの有用な特徴は、間接的毒性、例えば、免疫原性の欠如である。前述のように、結合リガンドが、基質から漉し出され、リガンドが、処理される生物学的流体中に存在するようになることはごく普通のことである。この生物学的流体が患者に戻されると、これによって、患者には、低レベルのリガンドが導入されることになる。もしもそのリガンドが免疫原性であるとすると、リガンドに対する免疫反応が刺激され、特に、処理プロセスが繰り返される患者において有害な免疫反応が引き起こされる可能性がある。したがって、低度の免疫原性を持つリガンドであれば、該リガンドに対する、有害な全ての免疫反応を最小化すると考えられる。本明細書の開示では、本発明の結合パートナーとして使用するのに特に有用なリガンドは、治療される患者と同じ種から得られる。例えば、ヒトを治療する場合、結合パートナーとしてヒトのTNFαムテインを使用することが可能である。これは、内因性TNFαに対して相同であるために、免疫原性が低いことが期待されるからである。同様に、他の、哺乳類種から得られたムテインを、それぞれの動物において使用することが可能である。
【0045】
本明細書で開示されるように、TNFαムテインが、本発明の方法では特に有用な結合パートナーである。従来、いくつかのTNFαムテインが記載されている(例えば、Van Ostade et al.,Protein Eng.7:5−22(1994);Van Ostade et al.,EMBO J.10:827−836(1991);Zhang et al.,J.Biol.Chem.267:24069−24075(1992);Yamagishi et al.,Protein Eng.3:713−719(1990)を参照、なお、これらのそれぞれを引用により本明細書に含める)。特定の例示のムテインとしては、図3Bに示す、ヒトのTNFαムテインが挙げられる。
【0046】
本発明において結合パートナーとしてTNFαムテインを使用するのにはいくつかの利点がある。TNFαムテインは、TNFα受容体に対し、比較的低い結合活性を示すが、いくつかのTNFαムテインの結合度は、天然TNFαよりも僅かに5−から17−倍低いだけにすぎない。このような結合アフィニティーは、天然のTNFαに比べると低下してはいるが、それでもなお、本発明では効果的な結合パートナーであることが可能である(実施例3を参照)。TNFαムテイン使用のもう一つの利点は、いくつかのTNFαムテインが、天然のTNFαに比べ、膜受容体を介するシグナル伝達の低下、例えば、細胞傷害活性またはインビボ毒性の低下を示すことである。特に、ムテイン1、2、3、4、5、および6では、200倍から10,000倍の細胞傷害性の低下が示される(下記、およびVan Ostade,上記、1994;Yamagishi et al.,上記、1990;Zhang et al.,上記、1992を参照)。したがって、結合アフィニティーが10から17倍低下しても、膜受容体を介するシグナル伝達において200倍から10,000倍の低下が、例えば、細胞傷害活性またはインビボ毒性の低下があり得る。前述のように、膜受容体を介するシグナル伝達の、このような低下、例えば、細胞傷害性またはインビボ毒性の低下は、基質からのリガンドの漏出の可能性、および、改変生物学的流体を患者に戻す場合、患者の体内へ低レベルが導入されるという観点から有利である。さらに、TNFαのダイマー融合タンパク、または、TNFαムテインのダイマー状を、本開示の方法に使用することも可能である。このようなダイマー融合は、下記の理由で有用である、(1)該融合体は、生物学的流体から可溶性TNFRを除去するのに十分なアフィニティーの下に可溶性TNFR受容体に結合する、および、(2)該融合体は、野生型TNFαに比べ、膜TNFRに対する結合、または膜TNFRを介するシグナル伝達の低下を示す。
【0047】
TNFαムテイン使用のさらに別の利点は、TNFαムテインが天然の構造を持つことである。これらのムテイン類は、天然のTNFα配列に対して高度の相同性を有するために、これらのムテインはフォールド形成して、TNF受容体結合活性を保持する天然構造を取ることが可能である。この天然構造は、恐らく、突然変異アミノ酸残基を除き、同じアミノ酸残基が、天然TNFαの場合と同様に分子の表面に暴露されることを意味する。このような天然のフォールド形成は、TNFαムテインが、哺乳類のそれぞれの種において、ほとんど、または全く免疫原性を持つはずがないことを意味する。
【0048】
本明細書に開示されるように、特に有用なムテインは、ヒトのムテイン1、2、3、4、5、および6(図3B)、および、他の哺乳類種における類似のムテインである。ムテイン1は、野生型のヒトTNFαに対し、Arg31がProで置換された単一アミノ酸置換である(Zhang et al.,上記、1992)。このムテインは、天然TNFαに比べ、膜TNFRに対する結合活性が約10倍低く、細胞傷害性が約10,000倍低い。ムテイン2は、野生型のヒトTNFαに対し、Asn34がTyrで置換された単一アミノ酸置換である(Yamagishi et al.,上記、1990;Yamagishiらの記数システムではAsn32である)。このムテインは、天然TNFαに比べ、膜TNFRに対する結合活性が約5倍低く、細胞傷害性が約12,500倍低い。ムテイン3は、野生型のヒトTNFαに対し、Pro117がLeuで置換された単一アミノ酸置換である(Yamagishi et al.,上記、1990;Yamagishiらの記数システムではPro115である)。このムテインは、天然TNFαに比べ、膜TNFRに対する結合活性が約12倍低く、細胞傷害性が約1400倍低い。ムテイン4は、野生型のヒトTNFαに対し、Ser147がTyrで置換された単一アミノ酸置換である(Zhang et al.,上記、1992)。このムテインは、天然TNFαに比べ、膜TNFRに対する結合活性が約14倍低く、細胞傷害性が約10,000倍低い。ムテイン5は、野生型のヒトTNFαに対し、Ser95がTyrで置換された単一アミノ酸置換である(Zhang et al.,上記、1992)。このムテインは、天然TNFαに比べ、膜TNFRに対する結合活性が約17倍低く、細胞傷害性が約200倍低い。ムテイン6は、野生型のヒトTNFαに対し、Tyr115がPheで置換された単一アミノ酸置換である(Zhang et al.,上記、1992)。このムテインは、天然TNFαに比べ、膜TNFRに対する結合活性が約17倍低く、細胞傷害性が約3,300倍低い。本明細書に開示されるように、それぞれの種のアナログ位置において同じアミノ酸置換を作製することによって、他の哺乳種にも類似のムテインを生成することが可能であることが理解される。
【0049】
ムテイン1、2、および4は、他のTNFαムテインと同様、従来から知られており、多価の膜受容体に対する結合に関してもその特徴が解明されているけれども、これらのTNFαムテインが、一価の、可溶性TNF受容体に結合するかどうかに関しては従来未知であった。本明細書に開示される通り、TNFαムテインは、可溶性TNF受容体に対し、血漿からそれを除去するのに十分なアフィニティーの下に結合する(実施例3および6を参照)。これらの結果は、TNFαムテインが、生物学的流体から可溶性TNF受容体を除去するための、効果的結合パートナーとなり得ることを示す。
【0050】
本明細書に例示される特異的ムテインに対して付加的に加えられるTNFαムテインも本発明の方法において使用が可能であることが理解される。各種種から得られるTNFαは、高度のアミノ酸特異性を示す(図3Aおよび3B、保存配列・配列番号1;Van Ostade et al.,上記、1994を参照)。Van Ostade et al.(上記、1994)によって記載されるように、TNFα保存アミノ酸配列が、11の哺乳種全体に特定された。この保存アミノ酸配列は、図示した11種全ての種で保存されるが、ただ単一種のみが、図示の位置で変異を示す(図3A、およびVan Ostade et al.,上記、1994参照)。したがって、提供されるものは、配列番号1として参照される保存配列を含むTNFαムテインである。
【0051】
当業者であれば、開示の組成物、結合体、および方法において使用するのに好適な、付加的ムテインは簡単に決めることが可能である。前述のように、天然のTNFαに比べて、TNF受容体に対し比較的高いアフィニティーを持つが、膜受容体を介するシグナル伝達の低下、例えば、細胞傷害性またはインビボ毒性の低下を示すTNFαムテインは、本開示の組成物、結合体、および方法において特に有用である。当業者であれば、従来技術で周知の方法に基づいて使用される、好適な、付加的TNFαムテインは簡単に決めることが可能である。配列にアミノ酸置換を導入する方法は従来技術において周知である(Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(Supplement 56),John Wiley & Sons,New York(2001);Sambrook and Russel,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor(2001);米国特許第5,264,563および5,523,388号)。TNFαの生成は既に記載されている(Van Ostade et al.,上記、1994;Van Ostade et al.,上記、1991;Zhang et al.,上記、1992;Yamagishi et al.,上記、1990)。さらに、当業者であれば、本開示の方法に使用する場合の適性を確認するために、候補ムテインの結合、および細胞傷害性および/またはインビボ毒性を簡単に定量することが可能である(Van Ostade et al.,上記、1994;Van Ostade et al.,上記、1991;Zhang et al.,上記、1992;Yamagishi et al.,上記、1990)。
【0052】
本開示の組成物、結合体、および方法において使用する場合、特に興味深いTNFαムテインは、TNF受容体に対し比較的高いアフィニティーを持ち、かつ、膜受容体を介するシグナル伝達の低下、例えば、細胞傷害性またはインビボ毒性の低下を示すことの外に、TNFαの三つの領域:領域1、アミノ酸29−36;領域2、アミノ酸84−91;および領域3、アミノ酸143−149(図3Aに示す番号順)にアミノ酸置換を持つものである。ムテイン1、2、および4が、これらの領域に単一アミノ酸置換を有するムテインの例である。領域1は、ヒトのTNFαの、アミノ酸29−36、残基LNRRANAL(配列番号2のアミノ酸29−36)に対応する。領域2は、ヒトのTNFαの、アミノ酸84−91、残基AVSYQTKV(配列番号2のアミノ酸84−91)に対応する。領域3は、ヒトのTNFαの、アミノ酸143−149、残基DFAESG(配列番号20)に対応する。本明細書に開示されるTNFαの外に、他のTNFαムテインも、本明細書に開示される通り、例えば、領域1、2、または3に単一アミノ酸置換を導入し、かつ、結合活性、および細胞傷害活性および/またはインビボ毒性に関してスクリーニングを行うことによって生成することが可能である(さらに、Van Ostade et al.,上記、1991;Zhang et al.,上記、1992;Yamagishi et al.,上記、1990を参照)。ある特定のアミノ酸残基または領域にアミノ酸置換を導入するための方法は、当業者にはよく知られる(例えば、Van Ostade et al.,上記、1991;Zhang et al.,上記、1992;Yamagishi et al.,上記、1990;米国特許第5,264,563および5,523,388号を参照されたい)。例えば、天然配列に対し、他の19のアミノ酸のそれぞれを、領域1、2、および3の位置のそれぞれに導入し、可溶性および/または膜結合TNF受容体に対する結合活性および/または、シグナル伝達活性、例えば、細胞傷害活性またはインビボ毒性に関してスクリーニングすることが可能である。このためには、約420の突然変異の生成(領域1、2、および3における22位置のそれぞれにおける19種のアミノ酸置換)を要するにすぎず、これは、周知の方法で簡単に生成およびスクリーニングすることが可能な数字である。本明細書に開示される所望の特徴、例えば、TNF受容体に対する特異的結合活性、および膜TNF受容体を介するシグナル伝達の低下を有するものは、本開示の組成物、結合体、および方法において有用なTNFαムテインとして選択することが可能である。
【0053】
さらに提供されるのは、配列番号9の共通配列を有するTNFαムテインである(図3C)。一局面では、TNFαムテインは、配列番号9の共通配列を含む。該配列において、Xは、LeuおよびValから選ばれるアミノサンであり;Xは、位置1においてGlnまたはArg、位置2においてAsn、Ala、またはThr、および位置3においてSer、Leu、Pro、または不在を有する、2または3個のアミノ酸ペプチド、例えば、GlnAsnSer、ArgAlaLeu、ArgThrPro、GlnAlaSer、およびGlnThrから選ばれるペプチドであり;Xは、AspおよびAsnから選ばれるアミノ酸であり;Xは、位置1においてHis、Pro、Leu、Ile、またはVal、位置2においてGln、Glu、Ser、Asn、またはLys、位置3においてVal、Ala、またはSer、位置4においてGluまたはPro、および位置5においてGluまたはGlyを有する5アミノ酸ペプチド、例えば、HisGlnValGluGlu(配列番号21)、HisGlnAlaGluGlu(配列番号22)、ProGlnValGluGly(配列番号23)、ProGluAlaGluGly(配列番号24)、LeuSerAlaProGly(配列番号25)、IleSerAlaProGly(配列番号26)、ProGlnAlaGluGly(配列番号27)、IleAsnSerProGly(配列番号28)、およびValLysAlaGluGly(配列番号29)から選ばれるペプチドであり;Xは、Glu、Gln、およびArgから選ばれるアミノ酸であり;Xは、位置1においてLeu、Gly、Trp、またはGln、位置2においてSer、Asn、またはAsn、位置3においてGln、Arg、Ser、またはGly、および位置4においてArgまたはTyrを有する4アミノ酸ペプチド、例えば、LeuSerGlnArg(配列番号30)、LeuSerArgArg(配列番号31)、GlyAspSerTyr(配列番号32)、LeuSerGlyArg(配列番号33)、TrpAspSerTyr(配列番号34)、GlnSerGlyTyr(配列番号35)、およびLeuAsnArgArg(配列番号36)から選ばれるペプチドであり;Xは、Leu、Met、およびLysから選ばれるアミノ酸であり;Xは、位置1においてMetまたはVal、位置2においてGluまたはGlnを有する2アミノ酸ペプチド、例えば、MetAsp、MetLys、ValGlu、ValLys、およびValGlnから選ばれるペプチドであり;Xは、Lys、Thr、Glu、およびArgから選ばれるアミノ酸であり;X10は、Val、Lys、およびIleから選ばれるアミノ酸であり;X11は、位置1においてAla、Ser、Thr、またはLeu、位置2においてAspまたはGluを有する2アミノ酸ペプチド、例えば、AlaAsp、SerAsp、ThrAsp、LeuAsp、AlaGlu、およびSerGluから選ばれるペプチドであり;X12は、Lys、Ser、Thr、およびArgから選ばれるアミノ酸であり;X13は、GlnおよびHisから選ばれるアミノ酸であり;X14は、位置1においてAsp、Ser、またはPro、位置2においてVal、Tyr、Pro、またはThr、位置3においてVal、Pro、His、またはAsn、位置4においてLeuまたはVal、および、位置5においてLeu、Phe、または不在を有する4または5アミノ酸ペプチド、例えば、AspValValLeu(配列番号37)、AspTyrValLeu(配列番号38)、SerTyrValLeu(配列番号39)、ProProProVal(配列番号40)、SerThrHisValLeu(配列番号41)、SerThrProLeuPhe(配列番号42)、およびSerThrAsnValPhe(配列番号43)から選ばれるペプチドであり;X15は、ValおよびIleから選ばれるアミノ酸であり;X16は、Phe、Ile、およびLeuから選ばれるアミノ酸であり;X17は、IleおよびValから選ばれるアミノ酸であり;X18は、位置1においてGlnまたはPro、位置2においてGlu、Asn、Thr、またはSerを有する2アミノ酸ペプチド、例えば、GlnGlu、ProAsn、GlnThr、およびProSerから選ばれるペプチドであり;X19は、LeuおよびIleから選ばれるアミノ酸であり;X20は、位置1においてPro、His、またはGln、位置2においてLys、Arg、またはThr、および位置3においてAsp、またはGluを有する3アミノ酸ペプチド、例えば、ProLysAsp、HisArgGlu、GlnArgGlu、およびHisThrGluから選ばれるペプチドであり;X21は、Gly、Glu、Gln、およびTrpから選ばれるアミノ酸であるか、または不在であり;X22は、Leu、Pro、およびAlaから選ばれるアミノ酸であり;X23は、LeuおよびGlnから選ばれるアミノ酸であり;X24は、GlyおよびAspから選ばれるアミノ酸であり;X25は、Gln、Leu、およびArgから選ばれるアミノ酸であり;X26は、AlaおよびThrから選ばれるアミノ酸であり;X27は、ValおよびIleから選ばれるアミノサンであり;X28は、Leu、Gln、およびArgから選ばれるアミノ酸であり;X29は、Lys、Glu、Ala、Asn、およびAspから選ばれるアミノ酸であり;X30は、Phe、Ile、Leu、およびTyrから選ばれるアミノ酸であり;およびX31は、ValおよびIleから選ばれるアミノ酸である(図3A;Van Ostade et al.,上記、1994を参照されたい)。このような共通TNFαムテインは、TNF受容体に対し結合活性を示すことが期待されるが、このような活性は、本明細書に開示される通り、当業者によって周知方法の用い簡単に定量することが可能である。
【0054】
前述の変異位置の外に、TNFαムテインは、配列番号1として参照される保存配列の中にさらに変異アミノ酸を含むことも可能であることが理解される。図3Aに示すように、かつ前述したように、TNFα保存配列は、図示の哺乳種の内の一つが、他の10種とは異なる、いくつかの位置を含む。例えば、位置2における保存アミノ酸Argは、イヌではLeuである(図3A)。したがって、TNFαムテインは、残余は配列番号1として参照される保存配列を有しながら、位置2においてLeuから成る置換を含むことが可能である。同様に、種の内の少なくとも1種が、保存配列に対してアミノ酸置換を有する、他の「保存」位置の置換は、TNFαムテインとして含まれる。例えば、TNFαムテインは、ムテイン1の対応置換、すなわち、Arg31Pro、および、前述のようにXで表される可変位置における保存配列の置換、および/または、単一種において変動する、保存位置における置換を有することが可能である。さらに、TNFαムテインは、TNFαの、保存配列または特定種の配列に対する、保存的アミノ酸置換を含むことが可能である。このようなTNFαムテインは、当業者であれば、本明細書に開示される通り、TNFαムテインの所望の特徴にもとづいて簡単に認識することが可能である。
【0055】
本明細書に開示されるTNFαムテインのいずれについても、修飾してN−末端欠失を含めるようにすることも可能である。Van Ostade(上記、1994)に論じられているように、TNFαのN−末端における短い欠失は活性を保持するが、一方、N−末端の17個のアミノ酸の欠失は活性消失をもたらす。したがって、開示のTNFαムテインはさらに、活性を保持する、N−末端欠失を有するTNFαムテインを含むことが理解される。このようなTNFαムテインは、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸から成るN−末端欠失を含んでもよい。さらに、当業者であれば、本明細書に開示される通り、TNFαムテインの中にさらにN−末端欠失を組み込むことが可能かどうかを、欠失突然変異を作製し、所望の特徴についてスクリーニングすることによって簡単に決定することが可能である。
【0056】
提供されるのは、本発明において開示される、各種TNFαムテインである。一般に、特に有用なTNFαムテインは、天然/野生型TNFαに比べ、TNF受容体、特に膜結合TNF受容体に対する結合活性が、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、約20倍、約25倍、約30倍、または場合によってはそれ以上の倍数の低下を示す。このような結合活性の低下は、sTNFRに向けて発揮されてもよいが、必ずしもそうである必要はない。さらに、特定の有用なTNFαムテインは、天然/野生型TNFαに比べ、膜受容体を介するシグナル伝達が、例えば、細胞傷害性またはインビボ毒性が、約5倍、約10倍、約50倍、約100倍、約150倍、約200倍、約300倍、約500倍、約1000倍、約2000倍、約3000倍、約4000倍、約5000倍、約6000倍、約7000倍、約8000倍、約9000倍、約10,000倍、約20,000倍、約30,000倍、約50,000倍、または場合によってはそれ以上の倍数の低下を示す。TNFαムテインは、前述され、本明細書に開示されるように、結合アフィニティーの低下および/または細胞傷害性の低下を有してもよいことが理解される。
【0057】
提供されるのは、基質に付着した腫瘍壊死因子α(TNFα)ムテインを含む結合体である。さらに別の局面では、結合体のTNFαムテインは、配列番号1として参照される保存配列を含む。
【0058】
さらに提供されるのは、TNFαムテインが、共通配列・配列番号9を有する結合体である。該配列において、Xは、LeuおよびValから選ばれるアミノサンであり;Xは、位置1においてGlnまたはArg、位置2においてAsn、Ala、またはThr、および位置3においてSer、Leu、Pro、または不在を有する、2または3個のアミノ酸ペプチド、例えば、GlnAsnSer、ArgAlaLeu、ArgThrPro、GlnAlaSer、およびGlnThrから選ばれるペプチドであり;Xは、AspおよびAsnから選ばれるアミノ酸であり;Xは、位置1においてHis、Pro、Leu、Ile、またはVal、位置2においてGln、Glu、Ser、Asn、またはLys、位置3においてVal、Ala、またはSer、位置4においてGluまたはPro、および位置5においてGluまたはGlyを有する5アミノ酸ペプチド、例えば、HisGlnValGluGlu(配列番号21)、HisGlnAlaGluGlu(配列番号22)、ProGlnValGluGly(配列番号23)、ProGluAlaGluGly(配列番号24)、LeuSerAlaProGly(配列番号25)、IleSerAlaProGly(配列番号26)、ProGlnAlaGluGly(配列番号27)、IleAsnSerProGly(配列番号28)、およびValLysAlaGluGly(配列番号29)から選ばれるペプチドであり;Xは、Glu、Gln、およびArgから選ばれるアミノ酸であり;Xは、位置1においてLeu、Gly、Trp、またはGln、位置2においてSer、Asp、またはAsn、位置3においてGln、Arg、Ser、またはGly、および位置4においてArgまたはTyrを有するアミノ酸ペプチド、例えば、LeuSerGlnArg(配列番号30)、LeuSerArgArg(配列番号31)、GlyAspSerTyr(配列番号32)、LeuSerGlyArg(配列番号33)、TrpAspSerTyr(配列番号34)、GlnSerGlyTyr(配列番号35)、およびLeuAsnArgArg(配列番号36)から選ばれるペプチドであり;Xは、Leu、Met、およびLysから選ばれるアミノ酸であり;Xは、位置1においてMetまたはVal、位置2においてGluまたはGlnを有する2アミノ酸ペプチド、例えば、MetAsp、MetLys、ValGlu、ValLys、およびValGlnから選ばれるペプチドであり;Xは、Lys、Thr、Glu、およびArgから選ばれるアミノ酸であり;X10は、Val、Lys、およびIleから選ばれるアミノ酸であり;X11は、位置1においてAla、Ser、Thr、またはLeu、位置2においてAspまたはGluを有する2アミノ酸ペプチド、例えば、AlaAsp、SerAsp、ThrAsp、LeuAsp、AlaGlu、およびSerGluから選ばれるペプチドであり;X12は、Lys、Ser、Thr、およびArgから選ばれるアミノ酸であり;X13は、GlnおよびHisから選ばれるアミノ酸であり;X14は、位置1においてAsp、Ser、またはPro、位置2においてVal、Tyr、Pro、またはThr、位置3においてVal、Pro、His、またはAsn、位置4においてLeuまたはVal、および、位置5においてLeu、Phe、または不在を有する4または5アミノ酸ペプチド、例えば、AspValValLeu(配列番号37)、AspTyrValLeu(配列番号38)、SerTyrValLeu(配列番号39)、ProProProVal(配列番号40)、SerThrHisValLeu(配列番号41)、SerThrProLeuPhe(配列番号42)、およびSerThrAsnValPhe(配列番号43)から選ばれ;X15は、ValおよびIleから選ばれるアミノ酸であり;X16は、Phe、Ile、およびLeuから選ばれるアミノ酸であり;X17は、IleおよびValから選ばれるアミノ酸であり;X18は、位置1においてGlnまたはPro、位置2においてGlu、Asn、Thr、またはSerを有する2アミノ酸ペプチド、例えば、GlnGlu、ProAsn、GlnThr、およびProSerから選ばれ;X19は、LeuおよびIleから選ばれるアミノ酸であり;X20は、位置1においてPro、His、またはGln、位置2においてLys、Arg、またはThr、および位置3においてAsp、またはGluを有する3アミノ酸ペプチド、例えば、ProLysAsp、HisArgGlu、GlnArgGlu、およびHisThrGluから選ばれ;X21は、Gly、Glu、Gln、およびTrpから選ばれるアミノ酸であるか、または不在であり;X22は、Leu、Pro、およびAlaから選ばれるアミノ酸であり;X23は、LeuおよびGlnから選ばれるアミノ酸であり;X24は、GlyおよびAspから選ばれるアミノ酸であり;X25は、Gln、Leu、およびArgから選ばれるアミノ酸であり;X26は、AlaおよびThrから選ばれるアミノ酸であり;X27は、ValおよびIleから選ばれるアミノ酸であり;X28は、Leu、Gln、およびArgから選ばれるアミノ酸であり;X29は、Lys、Glu、Ala、Asn、およびAspから選ばれるアミノ酸であり;X30は、Phe、Ile、Leu、およびTyrから選ばれるアミノ酸であり;およびX31は、ValおよびIleから選ばれるアミノ酸である。
【0059】
さらに別の局面では、提供されるのは、TNFαムテインが、ヒトのTNFα(配列番号2)の、領域1アミノ酸29−36、領域2アミノ酸84−91、および領域3アミノ酸143−149から選ばれるTNFαの領域において、または別の種のTNFαのアナログ位置においてアミノ酸置換を有する、結合体である。
【0060】
さらに提供されるのは、TNFαムテインが、ムテイン1(配列番号3)、ムテイン2(配列番号4)、ムテイン3(配列番号5)、ムテイン4(配列番号6)、ムテイン5(配列番号7)、およびムテイン6(配列番号8)から選ばれる、結合体である。ある特定局面では、提供されるのは、TNFαムテインが、ムテイン1(配列番号3)、ムテイン2(配列番号4)、およびムテイン4(配列番号6)から選ばれる、結合体である。ダイマー状では、TNFαムテインは、二つの同一のアミノ酸配列を含んでもよいし、あるいは、二つの非同一アミノ酸配列を含んでもよい。結合体のTNFαムテインは、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウサギ、およびラットから選ばれた種から得られてもよい。
【0061】
さらに提供されるのは、病的状態を持つ哺乳動物において免疫反応を刺激する方法である。方法は、該哺乳動物から生物学的流体を得る工程;可溶性腫瘍壊死因子受容体(TNFR)に対して特異的結合活性を有する腫瘍壊死因子α(TNFα)ムテインに該生物学的流体を接触させる工程;可溶性TNFRに結合したTNFαムテインを、生物学的流体から除去し、可溶性TNFR量が低下した改変生物学的流体を生産する工程;および、該哺乳動物に、この改変生物学的流体を投与する工程を含んでもよい。生物学的流体は、例えば、全血を含む血液、血漿、血清、またはリンパ液であってもよい。さらに別の局面では、生物学的流体として全血を用いる方法は、全血を、細胞成分、および、可溶性TNFRを含む、無細胞成分、または無細胞成分の分画に分離する工程をさらに含んでもよい。方法は、細胞成分を、改変無細胞成分、または無細胞成分の改変分画と組み合わせて、改変生物学的流体として該哺乳動物に投与することが可能な改変全血を生産する工程をさらに含んでもよい。したがって、細胞成分、および、改変無細胞成分、または無細胞成分の改変分画は、別々に該哺乳動物に投与されてもよい。
【0062】
TNFαムテインは、単一型の可溶性TNFRに対し、例えば、sTNFRI、またはsTNFRIIに対して特異的結合活性を持つことが可能である。それとは別に、TNFαムテインは、1型を超える可溶性TNFRに対し、例えば、sTNFRIおよびsTNFRIIの両方に対し特異的結合活性を持つことが可能である。
【0063】
結合パートナーの各種混合物も使用することが可能である。例えば、一混合物は、単一標的免疫系抑制因子に対して選択的に結合する、複数の結合パートナーから構成されてもよい。別の混合物は、それぞれが異なる標的免疫系抑制因子に対して選択的に結合する、複数の結合パートナーから構成されてもよい。それとは別に、混合物は、異なる標的免疫システム抑制因子に対し選択的に結合する、複数の結合パートナーから構成されてもよい。例えば、混合物は、1種を超えるTNFαムテインを含んでもよい。さらに、この複数のTNFαムテインは、単一型の可溶性TNF受容体に対し特異的に結合するか、または、1種を超えるTNF受容体に対し、例えば、sTNFRIおよびsTNFRIIに対して結合してもよい。
【0064】
さらに別の局面では、生物学的流体は、複数のTNFαムテインと接触させてもよい。したがって、この複数のTNFαムテインは、単一型の可溶性TNFRに対し、例えば、sTNFRIまたはsTNFRIIに対して特異的結合活性を持ってもよい。それとは別に、TNFαムテインは、1型を超える可溶性TNFRに対し、すなわち、sTNFRIおよびsTNFRIIに対し特異的結合活性を持ってもよい。
【0065】
結合パートナー/免疫系抑制因子複合体の分子量を増したい場合には、結合パートナーを担体に結合体化させてもよい。このような担体の例としては、タンパク、炭水化物複合体、およびポリエチレングリコールなどの合成ポリマーが挙げられるが、ただしこれらに限定されない。
【0066】
本明細書で用いる、結合パートナーの「機能的に活性な結合部位」とは、1種以上の標的免疫系抑制因子に対して結合することが可能な部位を指す。
【0067】
TNFαまたはTNFαムテインのダイマー状を生成するための一法は、TNFαまたはTNFαムテインモノマーを、抗体の重鎖定常域に共有的に連結する融合タンパクを生産することである。ダイマーTNFαを生成するための特に有用な方法は、抗体のダイマー状Fc部分の形成に関与する、2本の重鎖定常域のそれぞれにTNFαを融合することである。これらの重鎖定常域は集合して安定なFc構造を形成するので、該定常域は、連結するTNFαまたはTNFαムテイン分子に対しても同様にダイマーを形成させる。一局面では、ダイマー型の二つのアミノ酸配列は同一である。別の局面では、ダイマー型の二つのアミノ酸配列は、非同一である。さらに別の局面では、TNFαムテインのアミノ末端が、天然そのままの重鎖定常域のカルボキシ末端に融合される、融合タンパクが生産されてもよい。TNFαはこれまでも、その生物活性を大きく失うことなく、そのアミノ末端において、様々の融合タンパクで融合されている。このような重鎖−TNFα融合タンパクは、天然の抗体軽鎖と組み合わされて、可溶性TNFRを中和し、かつ、その抗体およびTNFα配列が得られた哺乳動物において免疫原性が抑えられた分子を形成することが可能である。別の局面では、重鎖定常域は、ヒンジ領域の短縮されたアミノ末端であり、そのため、TNFαまたはTNFαムテインモノマーが、そのカルボキシ末端において融合することが可能な、二つの部位が得られるようになっていてもよい。従来、TNFαのカルボキシ末端を含む融合タンパクが生産されているが、通常、その融合タンパクのTNFα成分の生物活性には著明な低下がもたらされる。この、観察される活性の著明な低下は、TNFαのカルボキシ末端アミノ酸(Leu157)のカルボキシル基が、隣接モノマー中のLys11とイオンペアを形成することによって、トリマー形成を安定化することによる(Eck and Sprang,J.Biol.Chem.264(29):17595−17605(1989)、なお、この文献を引用により本明細書に含める)。Leu157のカルボキシル基を利用するペプチド結合の形成が、可溶性TNFRに対する、この融合タンパクの結合性の低下を招くものであるならば、重鎖定常域のアミノ末端と、TNFαムテインのカルボキシ末端の間の接合部に、一つ以上の、カルボキシル官能基を含むR−基を有するアミノ酸(例えば、AspまたはGlu)を挿入することも可能である。さらに別の局面では、前述のように、ホモダイマーまたはヘテロダイマーを含む、他のダイマー状血漿タンパクを、TNFαムテインのアミノまたはカルボキシ末端に融合させてもよい。
【0068】
それとは別に、TNFαモノマーは、周知の化学的架橋連結法を用いて、血漿タンパク、例えば、抗体または血清アルブミンに架橋結合してもよい。このような方法は、例えば、Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press,San Diego(1996)に教示されるように、よく知られる。
【0069】
さらに提供されるのは、膜TNFRに対する結合、および膜TNFRを介するシグナル伝達がさらに低下されるように調製されたTNFαおよびTNFαムテインのモノマー形である。TNFαのモノマー形は、アビディテイの寄与が全くないので、TNFα異性形の内で、膜TNFRに対する結合強度が最低となることが予想される。さらに、モノマー形TNFαは、トリマー形TNFαよりも、膜TNFRを介するシグナル伝達が著明に低下することが予想される。なぜなら、モノマー形TNFαの、膜TNFRに対する架橋結合能力は低下しているからである。前述のように、一価の可溶性TNFRに対する、TNFαまたはTNFαムテインの結合には、TNFαまたはTNFαムテイン・トリマー中に存在する三つのモノマーの二つが与るだけである。したがって、可溶性TNFRに結合するためには、TNFαおよびTNFαムテインは、少なくともダイマー状態となるようにマルチマー形成されなければならない。モノマー形TNFαまたはTNFαムテインのマルチマー形成は、本明細書に開示される吸着性基質の創製の際、それらを、固相支持体に共有的に結合体化することによって簡単に実現が可能である。したがって、モノマー形TNFαまたはTNFムテインの二つの分子は、一旦固相支持体の上で互いに近接して固定されたならば、可溶性TNFRに結合することが可能である。一方、固相支持体から解離されると、これらのリガンドは、モノマー状態に戻るので、膜TNFRに対する結合、および膜TNFRを介するシグナル伝達は衰える。
【0070】
モノマー形のTNFαまたはTNFαムテインを生成する一方法は、TNFαまたはTNFαムテインが、そのカルボキシ末端において、野生型TNFには存在しないアミノ酸に融合される、融合タンパクを生産することである。前述のように、TNFαのカルボキシ末端融合は従来から生産されているが、通常、これらの融合では、融合タンパクのTNFα成分の生物学的活性に著明な低下がもたらされる。この、観察される活性の著明な低下は、TNFαのカルボキシ末端アミノ酸(Leu157)のカルボキシル基が、隣接モノマー中のLys11とイオンペアを形成することによって、トリマー形成を安定化することによる(Eck and Sprang,J.Biol.Chem.264(29):17595−17605(1989)、なお、この文献を引用により本明細書に含める)。隣接モノマー中のLys11とのイオン形成を阻止するのに十分な距離、該分子のカルボキシ末端を延長するように、さらにいくつかのアミノ酸を組み込むことができれば、それは、トリマー形成を低減するはずである。TNFαまたはTNFαムテインに対して融合されてもよいアミノ酸としては、精製タグ(例えば、ポリヒスチジンまたはGST),または、モノマーの適正なフォールド形成を可能とするが、好ましくは免疫原性を持たない、任意のアミノ酸のランダム配列が挙げられる。
【0071】
もう一つの局面では、ダイマー状融合タンパクの、TNFαまたはTNFαムテイン部分に、該ダイマー状TNFαまたはTNFαムテインの、野生型TNFαのモノマーに対する連結する能力を下げるように設計された突然変異を導入してもよい。ダイマー状TNFαまたはTNFαムテインの、野生型TNFαのモノマーに対する連結は、トリマー構造を回復させ、融合タンパクの、膜TNFRに対する結合能力を高める可能性があり、したがって、もしもこの融合タンパクが吸着性基質から放出されて患者に戻された場合、毒性をもたらすことが考えられる。通常であれば、トリマー形TNFαまたはTNFαムテインの集合に与るイオンペア(例えば、Lys98とGlu116、またはLys11とLeu157、Eck and Sprang,上記、1989)を形成する残基において突然変異を導入した場合、これらのムテインの、野生型TNFαモノマーと連結する能力は、低下または欠失されることが考えられる。前述のように、免疫グロブチンの重鎖、またはその他の融合パートナーに対し、カルボキシ末端Leu157においてTNFαまたはTNFαムテインが融合することは、隣接サブユニットにおけるLys11とのイオンペア形成を阻止するために、野生型TNFαモノマーとの連結を防ぐのに役立つ。
【0072】
開示の組成物、結合体、および方法において有用な各種結合パートナーを生産するための方法は、当業者にはよく知られている。そのような方法としては、組み換えDNAおよび合成技術、またはそれらの組み合わせが挙げられる。TNFαムテインなどの結合パートナーは、前核細胞、または真核細胞、例えば、哺乳類、昆虫、酵母などの細胞において発現させることが可能である。要すれば、発現に使用される宿主種に何らかのコドンバイアスがあれば、それを反映するようにコドンを改変してもよい。
【0073】
TNFαムテインなどの結合パートナーは、不活性媒体に付着させて、吸着基質を形成させてもよい(図1)。TNFαムテインは、例えば、不活性媒体などの基質に共有結合させてもよい。本明細書で用いる「不活性媒体」という用語は、結合パートナー(単複)を付着することが可能な固相支持体を含むことが意図される。特に有用な支持体は、このような目的にために使用される材料、例えば、セルロース製中空線維、合成中空線維、シリカ製粒子、フラットまたはプリーツ状膜、粗大な多孔性ビーズ、アガロース製粒子などを含む材料である。この不活性媒体は、ビーズ形状、例えば、粗大な多孔性ビーズ、または非多孔性ビーズであってもよい。例示の、マクロ多孔性ビーズとしては、アガロース、セルロース、調節孔ガラスなどの天然材料、または、ポリアクリルアミド、架橋結合アガロース(例えば、Trisacryl(登録商標)、Sephacryl、Actigel(登録商標)、およびUltrogel(登録商標))、アズラクトン、ポリメタクリレート、ポリスチレン/ジビニールベンゼンなどの合成材料が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。一局面では、マクロ多孔性ビーズはActigel(登録商標)を含む。例示の、非多孔性ビーズとしては、シリカ、ポリスチレン、ラテックスなどを含むが、ただしこれらに限定されない。中空線維および膜も、天然または合成材料から構成されていてよい。例示の天然材料としては、セルロース、および修飾セルロース、例えば、セルロースジアセテートまたはトリアセテートが挙げられるが、ただしこれらに限定されない。例示の合成材料としては、ポリスルフォン、ポリビニール、ポリアセテートなどが挙げられるが、ただしこれらに限定されない。このような不活性媒体は、購入することも可能であり、あるいは、当業者であれば簡単に作製することが可能である。結合パートナーは、当業者には周知の、例えば、共有接合を含む任意の手段または方法によって、不活性媒体に付着させることが可能である。それとは別に、結合パートナーは、不活性媒体に共有結合させた添加分子との、高アフィニティー、非共有的相互作用を通じて、不活性基質と連結させることも可能である。例えば、ビオチニル化結合パートナーは、不活性媒体にあらかじめ結合体化させたアビジンまたはストレプトアビジンと相互作用を持つことが可能である。
【0074】
このようにして生産された吸着基質は、体外回路の使用を通じて、生物学的流体、またはその分画と接触させてもよい。体外性、吸着基質の開発および使用については広範に論じられている(Kessler,Blood Purification 11:150−157(1993)を参照)。
【0075】
本発明では「攪拌リアクター」と呼ばれる、さらに別の局面では(図2)、生物学的流体を、混合チェンバーにおいてTNFαムテインなどの結合パートナーに暴露し、その後、結合パートナー/免疫系抑制因子複合体を、当業者に既知の手段または方法、例えば、機械的、または化学的または生物学的分離法によって取り除くことが可能である。例えば、結合パートナー、したがって、結合パートナー/免疫系抑制因子複合体が、処理される生物学的流体の最大成分である場合には、機械的分離法を使用することが可能である。そのような場合、結合パートナー、およびそれと連結する免疫系抑制因子を保持するためにろ過が用いられ、その間、生物学的流体の他の全ての成分は、フィルターを浸透通過し、したがって患者の体に戻ることが可能とされる。化学的または生物学的分離法の例では、結合パートナー、およびそれと連結する免疫系抑制因子は、その結合パートナーに特異的に付着することが可能な吸着基質に暴露することを通じて、該処置生物学的流体から取り除くことが可能である。例えば、TNFαムテインに対して反応性を有する抗体によって構築される基質は、この目的のために使用することが可能である。同様に、ビオチンが、生物学的流体に添加される前にTNFαムテインなどの結合パートナーに結合体化された場合、その処置流体から、結合パートナーおよびそれと連結する免疫系抑制因子を除去するために、アビジンまたはストレプトアビジンによって構築された基質を使用することが可能であろう。生物学的流体からの、TNFRに結合したTNFαムテインなどの、結合パートナー/免疫系抑制因子複合体の除去は、何らかの好適なやり方で、生物学的流体と、結合パートナー/免疫系抑制因子複合体とを分離することによって実現することが可能である。結合パートナー/免疫系抑制因子複合体、および生物学的流体の内のどちらか、または両方を、他方から受動的、または能動的に分離することが可能である。したがって、例えば、TNFRに結合したTNFαムテインの、生物学的流体からの除去は、例えば、生物学的流体からTNFRに結合したTNFαムテインを能動的に除去することによって、あるいは、TNFRに結合したTNFαムテインから生物学的流体を能動的に除去することによって実現される。
【0076】
本発明の最終工程では、可溶性TNF受容体などの標的免疫系抑制因子の量を低減させた、処置または改変生物学的流体は、生物学的流体の未処置分画と、処置の際にもしもそのような分画が生産された場合には、共に、処置を受ける患者に戻される。この改変生物学的流体は、当業者に既知の任意の手段または方法、例えば、循環系への直接的注入を含む方法によって、該哺乳動物に投与することが可能である。改変生物学的流体は、同時的、体外回路における結合パートナーとの接触直後に投与してもよい。この回路では、生物学的流体は、(a)収集され、(b)望むなら、細胞成分と無細胞成分に分離され、(c)結合パートナーに暴露され、要すれば、標的免疫系抑制因子に結合した結合パートナーから分離され、(d)要すれば、細胞成分と合わされ、かつ、(e)改変生物学的流体として患者に再投与される。さらに別の局面では、改変無細胞性生物学的流体は、生物学的流体の細胞成分が患者に投与されるのとは別の注入部位において患者に投与することが可能である。患者に対する改変無細胞性生物学的流体の投与は、患者に対する細胞成分の投与と同時であっても、先行しても、あるいは、追加されてもよい。それとは別に、改変生物学的流体の投与は、当業者によって簡単に決められる適切な保存条件下で遅延させることも可能である。
【0077】
望ましければ、全体プロセスは繰り返されてもよい。当業者であれば、患者の臨床状態を監視し、その状態を、処置前、最中、および後の循環における、可溶性TNFα受容体などの標的免疫系抑制因子(単複)の濃度(単複)と相関させることによって、反復処置の利益を簡単に判断することが可能である。
【0078】
さらに提供されるのは、生物学的流体における可溶性TNF受容体などの、標的免疫系抑制因子の量を下げるための装置である。装置は、(a)生物学的流体を、細胞性成分、および無細胞成分、またはその分画に分離するための手段;(b)改変無細胞成分、またはその分画を生産するための、前述の通りの、TNFα成分を付着させた吸着基質、または攪拌リアクター;および(c)改変無細胞成分、またはその分画と細胞分画を合わせるための手段から構成されてもよい。装置は、細胞成分が、全体血漿、またはその分画から分離される、生物学的流体としての全血に対し特に有用である。
【0079】
最初に、生物学的流体を、細胞成分、および無細胞成分、またはその分画に分画するための手段、および、処置後、その細胞成分を、無細胞成分、またはその分画と合わせるための手段は、従来技術において既知である(Apheresis:Principles and Practice,上記参照)。
【0080】
標的とされる免疫系抑制因子は、sTNFRI(Seckinger et al.,J.Biol.Chem.264:11966−11973(1989);Gatanaga et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:8781−8784(1990))、多能性免疫系刺激因子の天然抑制因子、TNFであってもよい。sTNFRIは、膜性腫瘍壊死因子受容体I型の細胞外ドメインを、その膜および細胞ドメインから解放する、タンパク分解性切断によって生産される(Schall et al.,Cell 61:361−370(1990);Himmler et al.,DNA and Cell Biol.9:705−715(1990))。sTNFRIは、高いアフィニティーの下でTNFに結合し、そうすることによって、TNFが、細胞表面の膜受容体に対して結合するのを抑制する能力を保持する。
【0081】
生物学的流体中のsTNFRIレベルは、先行するTNFの増加によって特徴づけられる様々の条件下において上昇する。そのような条件として、前述の細菌、ウィルス、および寄生虫感染、および癌が挙げられる。これらの病態のそれぞれにおいて、攻撃的因子の存在が、TNF生産を刺激し、これが、TNFRI生産における対応する増加を刺激する。sTNFRI生産は、局所の毒性ばかりでなく、TNFレベルの上昇と関連する全身毒性を下げ、かつ、免疫原ホメオスターシスを回復することが意図される。
【0082】
腫瘍を抱える宿主の場合、sTNFRIの過剰生産は、様々な抗腫瘍免疫反応におけるTNFの決定的役割を考えると、病気の進行に深刻な影響を及ぼす可能性がある(Beutler and Cerami,Ann.Rev.Immunol.7:625−655(1989)に総覧されている)。TNFは、I型膜連結TNF受容体に結合することによって腫瘍細胞死を直接誘発する。さらに、血管内皮細胞の死がTNF結合によって誘発され、これは、腫瘍を助ける循環ネットワークを破壊し、さらに腫瘍細胞の死に寄与する。ナチュラルキラー細胞および細胞傷害性Tリンパ球介在細胞分解におけるTNFの重要な役割も記録されている。sTNFRIによるこれらのエフェクター機構のいずれか、または全てに対する抑制は、腫瘍の生存を劇的に強調する可能性がある。
【0083】
sTNFRIは、腫瘍の生存を増進すること、および、その除去は、抗腫瘍免疫を強化することが明らかにされている。マウス腫瘍の実験モデルにおいて、sTNFRI生産は、インビトロにおいて、TNFの細胞傷害作用、および、ナチュラルキラー細胞および細胞傷害性Tリンパ球によって仲介される細胞分解から、形質転換細胞を保護することが認められた(Selinsky et al.,Immunol.94:88−93(1998))。さらに、形質転換細胞によるsTNFRIの分泌は、インビボにおいて、その発癌性および持続性を著明に強化することが示されている(Selinsky and Howell,Cell.Immunol.200:81−87(2000))。さらに、前述のウルトラフェレーシスに関するヒトの臨床治験(Lentz,上記)によって明らかにされたように、循環するsTNFRIの除去は、癌患者に対し臨床的利点を提供することが認められた。これらの所見は、腫瘍の生存におけるこの分子の重要性を確認し、かつ、sTNFRIをより特異的に除去するための方法の開発は、癌の免疫療法のための有望な新しい道程となることを示唆する。
【0084】
下記の実施例は、本明細書において特許請求される化合物、組成物、物品、装置、および/または方法がどのようにして製造され、評価されるかに関する、完全な開示および記述を当業者に提供するために記載されるものであり、本発明の純粋に例示のためであることを意図するものであり、本発明人らが、自らの発明と見なすものの範囲を限定することを意図するものではない。数(例えば、量、温度など)に関しては正確性を確保するように努めたけれども、ある程度の誤差および偏倚は斟酌しなければならない。別様に指示しない限り、部分は、重量部であり、温度は摂氏で表されるか、室温であり、圧は、大気圧であるか、その近傍である。
【実施例】
【0085】
実施例1
免疫系抑制因子、ヒトのsTNFRIの生産、精製、および特徴解明
本実験で使用されるsTNFRIは、大腸菌(R&D Systems;ミネアポリス、ミネソタ州)、または、ほぼ記載される通りの真核細胞培養体(米国特許第6,379,708号を参照されたい、なお、この特許を引用により本明細書に含める)のいずれかにおいて組み換え的に生産された。真核細胞性発現プラスミドの構築、培養細胞の形質転換および選択法、および、形質転換細胞によるsTNFRI生産の定量は、既に記載されている(Selinsky et al.,上記、1998)。
【0086】
sTNFRIは、本実験では、捕捉性ELISA(Selinsky, et al.,上記)によって検出し、定量した。さらに、組み換えsTNFRIの生物活性、すなわち、TNFに対する結合能力は、ELISAによって確認した。アッセイプレートを、ヒトのTNFα(Chemicon;Temecula、カリフォルニア州)でコートし、ウシ血清アルブミンによってブロックし、これに、前述のように培養上清に含ませたsTNFRIを加えた。ビオチニル化ヤギ抗ヒトsTNFRI、アルカリフォスファターゼ結合体化ストレプトアビジン、およびp−ニトロフェニルフォスフェートを順次加えることによって、結合sTNFRIを検出した。
【0087】
実施例2
TNFαムテインの生産、精製、および特徴解明
簡単に言うと、TNFαムテイン1、2、3、および4は、大腸菌においてそれぞれのcDNAを発現させることによって生産した。TNFαおよびTNFαムテイン1、2、3、および4をコードする遺伝子は、細菌発現のために最適化されたコドンを有する、重複オリゴヌクレオチドを用いて調製した。各コード配列を、omp Aリーダーをコードする配列に読み枠が一致するように融合し、組み換えポリペプチドのペリプラズムへの輸出を可能とした。合成断片を、lac Zプロモーター直近の下流においてpUC19誘導体にクローンし、得られた組み換えプラスミドを大腸菌に導入した。組み換え細菌を、後期logまで培養し、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)によって3時間誘発し、遠心によって収集した。ペリプラズム分画を調製し、ヤギ抗ヒトTNFα捕捉ポリクロナール抗体使用のELISAによって試験した。希釈ペリプラズムの添加後、結合TNFαおよびTNFαムテイン1、2、3、および4を、ビオチニル化ポリクロナールヤギ抗ヒトsTNFRI、ストレプトアビジン−アルカリフォスファターゼ、およびp−ニトロフェニルフォスフェート(pNPP)を順次加えることによって検出した。TNFαおよび各TNFαムテインは、それぞれのペリプラズムにおいて検出可能であった。ただし、TNFαムテイン3のレベルは、アッセイの検出限界を僅かに超える程度であった(図4)。
【0088】
TNFαおよびTNFαムテインポリペプチド1、2、および4は、ほぼ記載される通りに(Tavernier et al.,J.Mol.Biol.211:493−501(1990))、それぞれ、QおよびS陰イオンおよび陽イオン交換カラム使用の連続クロマトグラフィーによって、ペリプラズム分画より精製した。TNFαおよびTNFαムテインポリペプチドは、ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)による分析において>95%均一となるまで精製した。ゲルから、TNFαまたはムテインに相当する17kDaのバンド、および、34kDaバンドが明らかになった。後者は、ウェスタンブロットによって、ダイマー状TNFαムテインであることが確認された。
【0089】
TNFαムテインを、sTNFRIに対する結合能力について調べた。マイクロタイタープレートのウェルをTNFαでコートし、ブロックし、抑制因子、TNFαおよびTNFαムテイン1、2、および4の存在下、または不在下においてインキュベートした。図5に示すように、TNFαムテイン1、2、および4はそれぞれsTNFRIに結合する。
【0090】
実施例3
TNFαムテイン吸着基質によるヒト血漿からの、免疫系抑制因子sTNFRIの除去
TNFαムテイン吸着基質を調製し、ヒト血漿からsTNFRIを除去する能力について調べた。簡単に言うと、精製TNFαムテイン1、2、および4を、それぞれ、臭化シアノゲン(CNBr)セファローズ(登録商標)4Bに、ビーズ1mL当たり0.5mgの密度において結合体化し、残余のCNBrは、エタノールアミンによって反応停止させた。得られた基質を、個別のカラム筐体にパックし、使用前にリン酸バッファー生食液にて十分に洗浄した。
【0091】
正常のヒト血漿に、組み換えヒトsTNFRI(実施例1を参照)を含む培養上清を、ミリリットル当たり8ナノグラムの最終濃度となるように加え、分当たり樹脂ミリリットル当たり血漿1ミリリットルの流速で、それぞれのカラムを通過させた。非特異的除去について調整するために、固定タンパクを含まず、エタノールアミンで反応停止させた追加カラムを含めた。1mL分画を収集し、開始試料および分画に含まれるsTNFRIの相対濃度を、捕捉ELISAによって定量した。捕捉ELISAを実行するために、ウェルを、ヤギ抗sTNFRIポリクロナール抗体でコートし、2%BSAでブロックした。血漿サンプルを、1:2で希釈し、ウェルに加え、ウェル中のsTNFRIを捕捉した。ビオチニル化ポリクロナールヤギ抗sTNFRIを加え、次いで、ストレプトアビジン−アルカリフォスファターゼ、およびp−ニトロフェニルフォスフェートを加えた。405nmにおける相対的吸光度を用いて除去を評価した。
【0092】
図6に示すように、固定された3種類のTNFαムテイン全てが、ヒトの血漿からsTNFRIを効果的に除去し、図5で観察された等級がここでも明らかになった。コントロール基質は、sTNFRIレベルに全く低下をもたらさず、TNFαムテイン基質において観察される除去の特異性を裏づけた。重要なことは、臨床背景において使用が予想される流速と近似の流速において、ほぼ定量的な除去が、TNFαムテイン1および4によって実現されたことである。
【0093】
実施例4
ヒトのTNFαムテイン4の高レベル生産および精製
ヒトのTNFαムテイン4を生産するための、高レベル発現システムが開発された。ヒトのTNFαムテイン4をコードする合成遺伝子が、一連の重複オリゴヌクレオチドからBlue Heron Biotechnology(Bothell,ワシントン州)によって生産された。この遺伝子の5′末端は、6ヌクレオチド認識配列の中にメチオニンコドンを含む、制限エンドヌクレアーゼNdeIのための部位を含む。このメチオニンコドンを、6個のヒスチジン残基(His)のコドンと、読み枠が一致するように融合させ、これらの後に、煙草エッチウィルス(TEV)プロテアーゼによって切断される7個のアミノ酸認識配列を指定する追加コドンを付加する。この認識配列の後には、位置147においてセリンをチロシンで置換することを除いては、天然のTNFαポリペプチドの細胞外部分全体を表す157個のアミノ酸をコードする配列が続く。TNFαムテインコード配列の後には、読み枠一致の終止コドンが続き、終止コドンの後には、制限エンドヌクレアーゼBam HIの部位が続く。制限エンドヌクレアーゼ部位を除いては、構築体は、大腸菌のコドンバイアスを反映するように、かつ、mRNA転写物の二次構造を最小化するように最適化される。合成遺伝子は、Blue Heron社特製のpUC19誘導体の中にクローンされ、コード領域のヌクレオチド配列が、ジデオキシ・チェーンターミネーション法を用いて両端において確認された。
【0094】
高レベル発現ベクターを構築するために、前核細胞発現プラスミドpET−11a(EMD Biosciences、サンディエゴ、カリフォルニア州)を用いた。His−TEV−TNFαムテイン4をコードする合成遺伝子が、前述のpCU19−系組み換えプラスミドから、Nde IおよびBam HIによる消化によって放出された。得られた断片を、アガロースゲル電気泳動によって精製し、pET−11aにおいて一意のNde IおよびBam HI部位に連結した。この連結反応産物を、電気穿孔によって大腸菌宿主株λBL21(DE3)(EMD Biosciences)に導入した。λBL21(DE3)は、T7バクテリオファージのRNAポリメラーゼを細菌ゲノム中に転換により取り込んだ、溶原性λファージ組み込み体を含む、大腸菌K12の誘導体である。T7ポリメラーゼ遺伝子の誘発性発現によって、pET−11aにおいてTNFαムテイン遺伝子の直近の上流に存在するT7プロモーターによる高レベル転写が可能となる。100ug/mLのアンピシリンを含むLuria Bertaniプレートにおいて安定な形質転換細菌が選択された。発現プラスミドの忠実度に基づいて、個々のコロニーを選択した。忠実度の評価は、組み換えプラスミドの単離、および、NdeIおよびBam HIの組み合わせ消化による、His−TEV−TNFαムテイン4遺伝子の放出によって行った。
【0095】
TNFαムテイン4発現構築体によって形質転換したλBL21(DE3)の培養体は、37℃で育成し、IPTGで誘発し、遠心によって収集した。細菌ペレットを、溶菌バッファーに再縣濁し、DNアーゼおよびリゾチームと30分インキュベートした。この分解産物をホモジェネートし、遠心によって澄明とした。この分解産物に含まれるTNFα4を、His Bindカラム(BMD Biosciences)を用いメーカーの指示に従って精製した。精製したTNFαムテイン4を、TEVプロテアーゼで消化し、再びHis Bindカラム上でクロマトグラフィー処理し、解離ポリヒスチジンタグ、および、これもポリヒスチジンタグを含むTEVプロテアーゼを除去した。精製TNFαムテイン4を、His Bindカラム通流によって収集し、リン酸バッファー生食液に対して透析し、−20℃で保存した。標本の純度は、ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)による評価では、>95%であった。
【0096】
実施例5
TNFαムテイン4によって構築した体外性吸着装置による、血漿からの、sTNFRIおよびsTNFRIIのインビトロ除去
精製TNFαムテイン4を、Actigel ALD Ultraflow 4(Sterogene Bioseparations,Carlsbad、カリフォルニア州)に化学的に結合体化することによって、体外性吸着装置を無菌的に製造した。リガンド結合体化のために用いられるアルデヒド化学の優れた安定性、および、血液および血漿における架橋結合アガロースの、実証済みの生体適合性および安定性のために、吸着装置の構築には、Actigel ALD Ultraflowが好ましい。TNFαムテイン4は、メーカーの指示に従って、ビーズ1mL当たり1mgのムテイン濃度でビーズに結合体化させた。62.5mLの基質を、重力流によって、両端に36ミクロンのポリプロピレン・フィルターを含む、ポリカーボネート筐体(5cm長×4cm直径)にパックした。得られた装置を、カラムの10倍容量の0.5M NaCl、カラムの10倍容量の0.1Mグリシン、pH2.8、およびカラムの10倍容量の、0.1%アジ化ナトリウム含有正常生食液で順次洗浄した。
【0097】
TNFαムテイン4吸着装置は、血漿からヒトのsTNFRを除去する能力に関してインビトロで評価した。正常ヒト血漿を、0.45ミクロンフィルターでろ過し、ポンプによって1分当たり血漿30ミリリットルの流速で装置を還流させた。30個の25mL分画が収集され、初期の血漿サンプル、および分画の中に含まれる、ヒトのsTNFRIおよびsTNFRIIのレベルを、sTNFRIおよびsTNFRII捕捉ELISAを用いて定量した。捕捉ELISAを実行するために、ウェルを、ヤギ抗ヒトsTNFRIポリクロナール抗体、またはヤギ抗ヒトsTNFRIIポリクロナール抗体でコート(R&D Systems)し、次に、2%BSAでブロックした。血漿サンプルを、1:2で希釈し、ウェルに加え、ウェル中のsTNFRIまたはsTNFRIIを捕捉した。ビオチニル化ポリクロナールヤギ抗ヒトsTNFRI、またはビオチニル化ポリクロナールヤギ抗ヒトsTNFRII(R&D Systems)を加え、次いで、ストレプトアビジン−アルカリフォスファターゼ、およびp−ニトロフェニルフォスフェートを加えた。405nmにおける吸光度を用いて、精製ヒトsTNFRIおよびsTNFRII(R&D Systems)を用いて得られた標準曲線に対するsTNFRIおよびsTNFRIIの濃度を計算した。初期の血漿サンプルにおけるヒトのsTNFRIおよびsTNFRIIの濃度は、それぞれ、1.17ng/mLおよび0.55ng/mLであった。sTNFRIおよびsTNFRIIは、装置通過後に収集した分画のいずれからも検出されなかった。これは、装置が、これら低量の溶質のどちらも血漿から除去する能力を持つことを裏づける。
【0098】
このTNFαムテイン4吸着装置を、同様のやり方で、血漿からイヌのsTNFRを除去する能力について評価した。TNFαムテイン4吸着装置を通過させて、内因性ヒトsTNFRIおよびsTNFRIIをあらかじめ除去した正常ヒト血漿に、イヌsTNFRIおよびsTNFRIIを、それぞれ、2ng/mLおよび5ng/mL加えた。この分析に用いたイヌsTNFRは、下記の実施例7に記載するように細胞培養体において組み換え的に生産した。この添加血漿を、0.45ミクロンフィルターでろ過し、ポンプによって1分当たり血漿30ミリリットルの流速で装置を還流させた。25個の10mL分画が収集され、初期の血漿サンプル、および分画の中に含まれる、イヌのsTNFRIおよびsTNFRIIのレベルを、sTNFRIおよびsTNFRII捕捉ELISAを用いて定量した。捕捉ELISAを実行するために、前述のように、ウェルを、ヤギ抗ヒトsTNFRIポリクロナール抗体、またはヤギ抗ヒトsTNFRIIポリクロナール抗体でコートした。2%BSAでブロックした後、血漿サンプルを、1:2で希釈し、ウェルに加え、ウェル中の、それぞれのsTNFRを捕捉した。組み換えイヌsTNFRIおよびsTNFRIIの、カルボキシ末端ポリヒスチジン・タグと反応することが可能な、ウサギ・ポリクロナールIgGを加え、次いで、ビオチニル化抗ウサギIgG、ストレプトアビジン−アルカリフォスファターゼ、およびp−ニトロフェニルフォスフェートを加えた。各サンプルにおいて405nmにおける吸光度を用いて、精製組み換えイヌsTNFRIおよびsTNFRIIを用いて得られた標準曲線に対するsTNFRIおよびsTNFRIIの濃度を計算した。ELISAで評価した場合の、添加血漿サンプル中のイヌのsTNFRIおよびsTNFRIIの濃度は、それぞれ、2,8ng/mLおよび4.0ng/mLであると定量された。吸着装置の通過後、血漿分画におけるsTNFRIの濃度は、57%から82%に低下し、sTNFRIIは、血漿分画のいずれにおいても検出不能であった。これらの所見は、ヒトのTNFαムテイン4の吸着装置が、イヌのsTNFRに対しても同様に除去する能力を持つことを裏づける。
【0099】
実施例6
TNFαムテイン4によって構築された体外性吸着装置による、血漿からの、イヌのsTNFRIのエクスビボ除去
血漿からsTNFRIを除去する、TNFαムテイン4吸着装置の能力を、治療的血漿交換のために用いられるものとほとんど同様の体外回路で使用された場合について評価した。簡単に言うと、外頸静脈に埋め込んだ二腔カテーテルを通じて、47kgのイヌから血液を抽出した。この血液を、CytoLogicによってあらかじめ無菌的に修正した、Cobe Spectra Therapeutic Plasma Exchangeディスポーザブルチューブを用い、遠心性血漿分離機Cobe Spectraへ輸送した。分離されると、血球および血漿は、それぞれ独立にルートを辿り、システムの残余部分を還流する。血漿成分は、本明細書の図1に示すように、TNFαムテイン4吸着装置を通過させられる。処置ずみ血漿は、再び血球と合わせられてカテーテルを通じて動物に戻される。血漿の0.5から1容量が処置されるいくつかの工程が実行されたが、それぞれ、1時間未満で完了した。
【0100】
このプロセスによるイヌのTNFRIの除去を評価した。血漿サンプルは、体外回路から、吸着装置への進入直前、および吸着装置からの脱出直後において入手した。これらの血漿サンプルにおけるイヌのsTNFRIのレベルを、捕捉ELISAを用いて定量した。捕捉ELISAを実行するために、
除去を評価した。ウェルを、あらかじめイヌのsTNFRIと交差反応することが明らかにされている、マウス抗ヒトsTNFRIモノクロナール抗体(Beckton−Dickinson,Mountain View,カリフォルニア州)でコートした。2%BSAでブロックした後、装置前および装置後の血漿サンプルを、1:2で希釈し、ウェルに加え、ウェル中の、イヌのsTNFRIを捕捉した。ビオチニル化ヤギ抗ヒトsTNFRIポリクロナール抗体を加え、次いで、ストレプトアビジン−アルカリフォスファターゼ、およびp−ニトロフェニルフォスフェートを加えた。各サンプルにおいて405nmにおける吸光度を用いて、精製組み換えイヌsTNFRIを用いて得られた標準曲線に対するsTNFRIの濃度を計算した。この被験体に対する5回の別々の処置時に得られた、装置前および装置後血漿サンプルペアについて、このアッセイを用いて評価した(下表参照)。各サンプルペアにおいて、sTNFRIの著明な除去が観察された(範囲=69.70%から81.03パーセント)。これらの5回の処置におけるsTNFRIの平均除去パーセントは74.90±5.66であった。
【0101】
【化1】

実施例7
イヌのsTNFRIおよびsTNFRIIの生産および精製
本実験において使用されるイヌのsTNFRは、真核細胞培養体において生産された。イヌのsTNFRIおよびsTNFRIIをコードする合成遺伝子は、Blue Heron Technologyによって、一連の重複オリゴヌクレオチドから生産された。イヌのsTNFRI cDNAの配列は、Genbankアクセス番号XM_849381に含まれるものに基づいた。イヌのsTNFRII cDNAの配列は、Genbankアクセス番号XM_544562に含まれるものに基づいた。各cDNAは、3′末端において、6個のヒスチジン残基(His)のコドンと読み枠が一致するように融合させ、これらの後に、読み枠一致終止コドンを付加した。各遺伝子の5′および3′末端には、それぞれ、制限エンドヌクレアーゼHind IIIおよびXho Iの認識配列を側接させた。制限エンドヌクレアーゼ部位を除いては、各構築体は、Canis familiarisのコドンバイアスを反映するように、かつ、mRNA転写物の二次構造を最小化するように最適化される。各合成遺伝子は、Blue Heron社特製のpUC19誘導体の中にクローンされ、各コード領域のヌクレオチド配列が、ジデオキシ・チェーンターミネーション法を用いて両端において確認された。
【0102】
イヌのsTNFRIおよびsTNFRIIをコードする合成遺伝子を、前述のpUC19系組み換えプラスミドから、Hind IIIおよびXho Iによる消化によって放出させた。得られた断片を、アガロースゲル電気泳動によって精製し、真核細胞発現ベクター、pCEP4(Invitrogen,Carlesbad,カリフォルニア州)において一意のHind IIIおよびXho I部位に連結した。この連結反応産物を、電気穿孔によって大腸菌宿主株λBL21(EMD Biosciences)に導入した。100ug/mLのアンピシリンを含むLuria Bertaniプレートにおいて安定な形質転換細菌が選択された。発現プラスミドの忠実度に基づいて、個々のコロニーを選択した。忠実度の評価は、組み換えプラスミドの単離、および、Hind IIIおよびXho Iの組み合わせ消化による、それぞれのsTNFR遺伝子の放出によって行った。
【0103】
イヌのsTNFR発現プラスミドを、リポフェクタミンを用いてCf2Th細胞の培養体(American Type Culture Collection,Manassas,バージニア州)に導入した。sTNFRI(クローンE)およびsTNFRII(クローンF)を生産する、形質転換クローン細胞系統を、ヒグロマイシン(0.1mgの活性剤/ml)の存在下に限界希釈によって単離した。クローンEおよびFの培養体は、スピナーフラスコで育成し、イヌのsTNFRIおよびsTNFRII組み換え体は、それぞれ、臭化シアノゲンセファロースの上に固定されたヒトのTNFαまたはヒトのTNFαムテイン4のカラム使用のアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。精製したsTNFRはPBSに対して透析し、−20℃で保存した。
【0104】
本発明が、現在好ましい局面を参照しながら説明されたわけであるが、本発明の精神から逸脱することなく、各種の改変の実行が可能であることを理解しなければならない。したがって、本発明は、下記の特許請求項によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0105】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する付属の図面は、本発明のいくつかの局面を描き、説明と相俟って、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図1】図1は、開示される組成物、結合体、および方法の一局面の「吸着基質」構成を示す。この例では、患者から血液が取り出され、細胞成分、および無細胞成分またはその分画に分離される。無細胞成分、またはその分画は、吸着基質に暴露され、結合が、したがって、可溶性腫瘍壊死因子(TNF)受容体などの標的免疫系抑制因子の除去が実現される。次に、改変無細胞成分またはその分画は、同時に、患者に戻される。
【図2】図2は、開示される組成物、結合体、および方法の一局面の「攪拌リアクター」構成を示す。この例では、患者から血液が取り出され、細胞成分、および無細胞成分またはその分画に分離される。TNFαムテインなどの結合パートナーが、この無細胞成分、またはその分画に加えられる。続いて、結合パートナー(TNFαムテイン)/免疫系抑制因子(可溶性TNF受容体)複合体が、機械的、または化学的または生物学的手段または方法によって、無細胞成分またはその分画から取り除かれ、次に、この改変無細胞成分またはその分画は、同時に患者に戻される。
【図3A】図3Aは、様々な種から得られたTNFα配列(マウス、配列番号10;ラット、配列番号11;ウサギ、配列番号12;ネコ、配列番号13;イヌ、配列番号14;ヒツジ、配列番号15:ヤギ、配列番号16;ウマ、配列番号17;ウシ、配列番号18;ブタ、配列番号19;ヒト、配列番号2)の整列を示す。最上段配列は、上に示した種全体に亘って保存されるアミノ酸(配列番号1)(完全保存、または一例外を含む)を示す。非保存アミノ酸は、「.」によって示される(Van Ostade et al.,Prot.Eng.7:5−22(1994)から引用、なお、これを引用により本明細書に含める)。
【図3B】図3Bは、保存TNFα配列と、ヒトのTNFα、および、ムテイン1(配列番号3)、ムテイン2(配列番号4)、ムテイン3(配列番号5)、ムテイン4(配列番号6)、ムテイン5(配列番号7)、およびムテイン6(配列番号8)と表示される、六つの代表的TNFαムテインとの整列を示す。4種のムテインは、ボールドおよび下線で示される単一アミノ酸置換において、ヒトの配列と異なる。
【図3C】図3Cは、代表的なTNFαの共通配列(配列番号9)を示す。
【図4】図4は、ヒトのTNFαおよびTNFαムテイン1、2、3、および4の発現構築体によって形質転換した大腸菌のペリプラズムにおける、それらの結合パートナーの存在を示す。
【図5】図5は、TNFαムテインがsTNFRIに結合することを示す。マイクロタイタープレートのウェルをTNFαでコートし、ブロックし、抑制因子、TNFαおよびTNFαムテイン1、2、および4の存在下、または不在下においてインキュベートした。
【図6】図6は、固定されたTNFムテインによる、可溶性TNF受容体I(sTNFRI)の除去を示す。ムテイン1、2、および4を、セファローズ(登録商標)4B上に固定し、組み換えヒトsTNFRIを加えた正常ヒト血漿をムテインを固定させたカラムを通過させた。血漿からのsTNFRIの除去を、固相酵素免疫測定法(ELISA)によって測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基質に付着した腫瘍壊死因子α(TNFα)ムテインを含む結合体。
【請求項2】
前記TNFαムテインが、配列番号1として参照される保存配列を含む、請求項1に記載の結合体。
【請求項3】
前記TNFαムテインが、共通配列・配列番号9を含み、前記配列において、
は、LeuおよびValから選ばれるアミノ酸であり;
は、GlnAsnSer、ArgAlaLeu、ArgThrPro、GlnAlaSer、およびGlnThrから選ばれる2または3アミノ酸ペプチドであり;
は、AspおよびAsnから選ばれるアミノ酸であり;
は、HisGlnValGluGlu(配列番号21)、HisGlnAlaGluGlu(配列番号22)、ProGlnValGluGly(配列番号23)、ProGluAlaGluGly(配列番号24)、LeuSerAlaProGly(配列番号25)、IleSerAlaProGly(配列番号26)、ProGlnAlaGluGly(配列番号27)、IleAsnSerProGly(配列番号28)、およびValLysAlaGluGly(配列番号29)から選ばれる5アミノ酸ペプチドであり;
は、Glu、Gln、およびArgから選ばれるアミノ酸であり;
は、LeuSerGlnArg(配列番号30)、LeuSerArgArg(配列番号31)、GlyAspSerTyr(配列番号32)、LeuSerGlyArg(配列番号33)、TrpAspSerTyr(配列番号34)、GlnSerGlyTyr(配列番号35)、およびLeuAsnArgArg(配列番号36)から選ばれる4アミノ酸ペプチドであり;
は、Leu、Met、およびLysから選ばれるアミノ酸であり;
は、MetAsp、MetLys、ValGlu、ValLys、およびValGlnから選ばれる2アミノ酸ペプチドであり;
は、Lys、Thr、Glu、およびArgから選ばれるアミノ酸であり;
10は、Val、Lys、およびIleから選ばれるアミノ酸であり;
11は、AlaAsp、SerAsp、ThrAsp、LeuAsp、AlaGlu、およびSerGluから選ばれる2アミノ酸ペプチドであり;
12は、Lys、Ser、Thr、およびArgから選ばれるアミノ酸であり;
13は、GlnおよびHisから選ばれるアミノ酸であり;
14は、AspValValLeu(配列番号37)、AspTyrValLeu(配列番号38)、SerTyrValLeu(配列番号39)、ProProProVal(配列番号40)、SerThrHisValLeu(配列番号41)、SerThrProLeuPhe(配列番号42)、およびSerThrAsnValPhe(配列番号43)から選ばれる4または5アミノ酸ペプチドであり;
15は、ValおよびIleから選ばれるアミノ酸であり;
16は、Phe、Ile、およびLeuから選ばれるアミノ酸であり;
17は、IleおよびValから選ばれるアミノ酸であり;
18は、GlnGlu、ProAsn、GlnThr、およびProSerから選ばれる2アミノ酸ペプチドであり;
19は、LeuおよびIleから選ばれるアミノ酸であり;
20は、ProLysAsp、HisArgGlu、GlnArgGlu、およびHisThrGluから選ばれる3アミノ酸ペプチドであり;
21は、Gly、Glu、Gln、およびTrpから選ばれるアミノ酸であるか、または不在であり;
22は、Leu、Pro、およびAlaから選ばれるアミノ酸であり;
23は、LeuおよびGlnから選ばれるアミノ酸であり;
24は、GlyおよびAspから選ばれるアミノ酸であり;
25は、Gln、Leu、およびArgから選ばれるアミノ酸であり;
26は、AlaおよびThrから選ばれるアミノ酸であり;
27は、ValおよびIleから選ばれるアミノ酸であり;
28は、Leu、Gln、およびArgから選ばれるアミノ酸であり;
29は、Lys、Glu、Ala、Asn、およびAspから選ばれるアミノ酸であり;
30は、Phe、Ile、Leu、およびTyrから選ばれるアミノ酸であり;および
31は、ValおよびIleから選ばれるアミノ酸である、
請求項1に記載の結合体。
【請求項4】
前記TNFαムテインが、ヒトのTNFα(配列番号2)の、領域1、アミノ酸29−36、領域2、アミノ酸84−91、および領域3、アミノ酸143−149から選ばれるTNFαの領域、または、別の種のTNFαのアナログ位置にアミノ酸置換を有する、請求項1に記載の結合体。
【請求項5】
前記TNFαムテインが、ムテイン1(配列番号3)、ムテイン2(配列番号4)、ムテイン3(配列番号5)、ムテイン4(配列番号6)、ムテイン5(配列番号7)、およびムテイン6(配列番号8)から選ばれる、請求項1に記載の結合体。
【請求項6】
前記TNFαムテインが、ムテイン1(配列番号3)、ムテイン2(配列番号4)、およびムテイン4(配列番号6)から選ばれる、請求項1に記載の結合体。
【請求項7】
前記TNFαムテインが、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウサギ、およびラットから選ばれる種に由来する、請求項1に記載の結合体。
【請求項8】
前記TNFαムテインが、前記基質に共有結合される、請求項1に記載の結合体。
【請求項9】
前記基質が不活性媒体である、請求項1に記載の結合体。
【請求項10】
前記不活性媒体が中空線維である、請求項9に記載の結合体。
【請求項11】
前記不活性媒体がビーズの形態である、請求項9に記載の結合体。
【請求項12】
前記ビーズがマクロ多孔性ビーズである、請求項11に記載の結合体。
【請求項13】
前記マクロ多孔性ビーズが、アガロース、架橋結合アガロース、セルロース、調節孔ガラス、ポリアクリルアミド、アズラクトン、ポリメタクリレート、およびポリスチレンから選ばれる、請求項12に記載の結合体。
【請求項14】
前記ビーズが非多孔性ビーズである、請求項11に記載の結合体。
【請求項15】
前記非多孔性ビーズが、シリカ、ポリスチレン、およびラテックスから選ばれる、請求項14に記載の結合体。
【請求項16】
前記不活性媒体がセルロース製繊維である、請求項9に記載の結合体。
【請求項17】
前記不活性媒体が合成繊維である、請求項9に記載の結合体。
【請求項18】
前記不活性媒体がフラットまたはプリーツ状膜である、請求項9に記載の結合体。
【請求項19】
前記不活性媒体がシリカ製粒子である、請求項9に記載の結合体。
【請求項20】
前記不活性媒体がアガロース製粒子である、請求項9に記載の結合体。
【請求項21】
前記TNFαムテインがダイマー状である、請求項1に記載の結合体。
【請求項22】
前記ダイマー状TNFαムテインが、二つの同一のアミノ酸配列を含む、請求項21に記載の結合体。
【請求項23】
前記ダイマー状TNFαムテインが、二つの非同一アミノ酸配列を含む、請求項21に記載の結合体。
【請求項24】
前記TNFαムテインがモノマーである、請求項1に記載の結合体。
【請求項25】
前記TNFαムテインのTNF作用活性が、天然TNFαに比べて低下している、請求項1に記載の結合体。
【請求項26】
前記TNFαムテインの膜受容体を介するシグナル伝達が、天然TNFαに比べて低下している、請求項1に記載の結合体。
【請求項27】
前記TNFαムテインの細胞傷害活性が、天然TNFαに比べて低下している、請求項1に記載の結合体。
【請求項28】
前記TNFαムテインのin vivo毒性が、天然TNFαに比べて低下している、請求項1に記載の結合体。
【請求項29】
前記TNFαムテインが、前記哺乳動物と同じ種のTNFα由来のものである、請求項1に記載の結合体。
【請求項30】
前記TNFαムテインの、マルチマーTNFα形成能力が、天然TNFαに比べて低下している、請求項1に記載の結合体。
【請求項31】
病的状態を有する哺乳動物において免疫反応を刺激する方法であって、
(a)前記哺乳動物から生物学的流体を得ること;
(b)前記生物学的流体を、可溶性腫瘍壊死因子受容体(TNFR)に対し特異的結合活性を有する腫瘍壊死因子α(TNFα)と接触させること;
(c)前記生物学的流体から、前記可溶性TNFRに結合したTNFαムテインを除去し、少量の可溶性TNFRをもつ改変生物学的流体を生産すること;および、
(d)前記改変生物学的流体を前記哺乳動物に投与すること、
を含む、方法。
【請求項32】
前記生物学的流体が、血液、血漿、血清、およびリンパ液から選ばれる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記血液が全血である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記全血を、細胞成分と、無細胞成分または無細胞成分の分画とに分離する工程をさらに含み、前記無細胞成分または無細胞成分の分画が可溶性TNFRを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
細胞成分を、前記改変無細胞成分、または前記無細胞成分の改変分画と組み合わせて、改変全血を生産する工程をさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記TNFαムテインが、配列番号1として参照される保存配列を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記TNFαムテインが、共通配列・配列番号9を含み、
は、LeuおよびValから選ばれるアミノ酸であり;
は、GlnAsnSer、ArgAlaLeu、ArgThrPro、GlnAlaSer、およびGlnThrから選ばれる2または3アミノ酸ペプチドであり;
は、AspおよびAsnから選ばれるアミノ酸であり;
は、HisGlnValGluGlu(配列番号21)、HisGlnAlaGluGlu(配列番号22)、ProGlnValGluGly(配列番号23)、ProGluAlaGluGly(配列番号24)、LeuSerAlaProGly(配列番号25)、IleSerAlaProGly(配列番号26)、ProGlnAlaGluGly(配列番号27)、IleAsnSerProGly(配列番号28)、およびValLysAlaGluGly(配列番号29)から選ばれる5アミノ酸ペプチドであり;
は、Glu、Gln、およびArgから選ばれるアミノ酸であり;
は、LeuSerGlnArg(配列番号30)、LeuSerArgArg(配列番号31)、GlyAspSerTyr(配列番号32)、LeuSerGlyArg(配列番号33)、TrpAspSerTyr(配列番号34)、GlnSerGlyTyr(配列番号35)、およびLeuAsnArgArg(配列番号36)から選ばれる4アミノ酸ペプチドであり;
は、Leu、Met、およびLysから選ばれるアミノ酸であり;
は、MetAsp、MetLys、ValGlu、ValLys、およびValGlnから選ばれる2アミノ酸ペプチドであり;
は、Lys、Thr、Glu、およびArgから選ばれるアミノ酸であり;
10は、Val、Lys、およびIleから選ばれるアミノ酸であり;
11は、AlaAsp、SerAsp、ThrAsp、LeuAsp、AlaGlu、およびSerGluから選ばれる2アミノ酸ペプチドであり;
12は、Lys、Ser、Thr、およびArgから選ばれるアミノ酸であり;
13は、GlnおよびHisから選ばれるアミノ酸であり;
14は、AspValValLeu(配列番号37)、AspTyrValLeu(配列番号38)、SerTyrValLeu(配列番号39)、ProProProVal(配列番号40)、SerThrHisValLeu(配列番号41)、SerThrProLeuPhe(配列番号42)、およびSerThrAsnValPhe(配列番号43)から選ばれる4または5アミノ酸ペプチドであり;
15は、ValおよびIleから選ばれるアミノ酸であり;
16は、Phe、Ile、およびLeuから選ばれるアミノ酸であり;
17は、IleおよびValから選ばれるアミノ酸であり;
18は、GlnGlu、ProAsn、GlnThr、およびProSerから選ばれる2アミノ酸ペプチドであり;
19は、LeuおよびIleから選ばれるアミノ酸であり;
20は、ProLysAsp、HisArgGlu、GlnArgGlu、およびHisThrGluから選ばれる3アミノ酸ペプチドであり;
21は、Gly、Glu、Gln、およびTrpから選ばれるアミノ酸であるか、または不在であり;
22は、Leu、Pro、およびAlaから選ばれるアミノ酸であり;
23は、LeuおよびGlnから選ばれるアミノ酸であり;
24は、GlyおよびAspから選ばれるアミノ酸であり;
25は、Gln、Leu、およびArgから選ばれるアミノ酸であり;
26は、AlaおよびThrから選ばれるアミノ酸であり;
27は、ValおよびIleから選ばれるアミノ酸であり;
28は、Leu、Gln、およびArgから選ばれるアミノ酸であり;
29は、Lys、Glu、Ala、Asn、およびAspから選ばれるアミノ酸であり;
30は、Phe、Ile、Leu、およびTyrから選ばれるアミノ酸であり;および
31は、ValおよびIleから選ばれるアミノ酸である、
請求項31に記載の方法。
【請求項38】
前記TNFαムテインが、ヒトのTNFα(配列番号2)の、領域1、アミノ酸29−36、領域2、アミノ酸84−91、および領域3、アミノ酸143−149から選ばれるTNFαの領域、または、別の種のTNFαのアナログ位置にアミノ酸置換を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
前記TNFαムテインが、ムテイン1(配列番号3)、ムテイン2(配列番号4)、ムテイン3(配列番号5)、ムテイン4(配列番号6)、ムテイン5(配列番号7)、およびムテイン6(配列番号8)から選ばれる、請求項31に記載の方法。
【請求項40】
前記TNFαムテインが、ムテイン1(配列番号3)、ムテイン2(配列番号4)、およびムテイン4(配列番号6)から選ばれる、請求項31に記載の方法。
【請求項41】
前記TNFαムテインが、単一型の可溶性TNFRに対して特異的結合活性を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項42】
前記可溶性TNFRがsTNFRIである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記可溶性TNFRがsTNFRIIである、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記生物学的流体が、2つ以上の型の可溶性TNFRに対し特異的結合活性を有するTNFαムテインに接触させられる、請求項31に記載の方法。
【請求項45】
前記TNFαムテインが、sTNFRIおよびsTNFRIIに対して特異的結合活性を有する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記TNFαムテインが、不活性媒体に付着されて吸着基質を形成する、請求項31に記載の方法。
【請求項47】
前記TNFαムテインが不活性媒体に共有結合される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記不活性媒体が中空線維である、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記不活性媒体がマクロ多孔性ビーズである、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記不活性媒体がセルロース製繊維である、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
前記不活性媒体が合成繊維である、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
前記不活性媒体がフラットまたはプリーツ状膜である、請求項46に記載の方法。
【請求項53】
前記不活性媒体がシリカ製粒子である、請求項46に記載の方法。
【請求項54】
前記TNFαムテインが組み換え的に生産される、請求項31に記載の方法。
【請求項55】
前記生物学的流体が、複数のTNFαムテインに接触させられる、請求項31に記載の方法。
【請求項56】
前記複数のTNFαムテインが、単一型の可溶性TNFRに対して特異的結合活性を有する、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記可溶性TNFRがsTNFRIである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
可溶性TNFRがsTNFRIIである、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記生物学的流体が、2つ以上の型の可溶性TNFRに対し特異的結合活性を有する、複数のTNFαムテインに接触させられる、請求項31に記載の方法。
【請求項60】
前記複数のTNFαムテインが、sTNFRIおよびsTNFRIIに対して特異的結合活性を有する、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記TNFαムテインが担体に結合体化される、請求項31に記載の方法。
【請求項62】
前記複数のTNFαムテインが担体に結合体化される、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
工程(a)から工程(d)までが繰り返される、請求項31に記載の方法。
【請求項64】
前記哺乳動物がヒトである、請求項31に記載の方法。
【請求項65】
前記哺乳動物が、非ヒトである、請求項31に記載の方法。
【請求項66】
前記可溶性TNFRに結合した前記TNFαムテインが、機械的方法によって除去される、請求項31に記載の方法。
【請求項67】
前記可溶性TNFRに結合した前記TNFαムテインが、化学的または生物学的方法によって除去される、請求項31に記載の方法。
【請求項68】
前記可溶性TNFRに結合した前記TNFαムテインが、前記TNFαムテインから生物学的流体を分離することによって除去される、請求項31に記載の方法。
【請求項69】
病的状態を有する哺乳動物において免疫系反応を刺激する方法であって、
(a)前記哺乳動物から生物学的流体を得ること;
(b)可溶性腫瘍壊死因子受容体(TNFR)に対して特異的結合活性を有し、不活性媒体に付着されて吸着基質を形成する、腫瘍壊死因子α(TNFα)ムテインに、前記生物学的流体を接触させること;
(c)前記可溶性TNFRに結合したTNFαムテインを含む吸着基質を生物学的流体から除去し、改変生物学的流体を生産すること;および、
(d)前記哺乳動物に、前記改変生物学的流体を投与すること、
を含む、方法。
【請求項70】
前記生物学的流体が、血液、血漿、血清、およびリンパ液から選ばれる、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記血液が全血である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記全血を、細胞成分と、無細胞成分または無細胞成分の分画とに分離する工程をさらに含み、前記無細胞成分、または無細胞成分の前記分画が可溶性TNFRを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
細胞成分を、前記改変無細胞成分または無細胞成分の改変分画と組み合わせて、改変全血を生産する工程をさらに含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
病的状態を有する哺乳動物において免疫反応を刺激する方法であって、
(a)前記哺乳動物から生物学的流体を得ること;
(b)可溶性腫瘍壊死因子受容体に対して特異的結合活性を有する、二つ以上のTNFαムテインに、前記生物学的流体を接触させること;
(c)前記可溶性TNFRに結合した前記TNFαムテインを前記生物学的流体から分離し、改変生物学的流体を生産すること;
(f)前記哺乳動物に、前記改変生物学的流体を投与すること、
を含む、方法。
【請求項75】
前記二つ以上のTNFαムテインが、不活性媒体に付着して吸着基質を形成する、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記二つ以上のTNFαムテインが不活性媒体に共有的に結合体化される、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記生物学的流体が、血液、血漿、血清、およびリンパ液から選ばれる、請求項74に記載の方法。
【請求項78】
前記血液が全血である、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
全血を、細胞成分と、無細胞成分または前記無細胞成分の分画とに分離する工程をさらに含み、前記無細胞成分または無細胞成分の分画が可溶性TNFRを含む、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記細胞成分を、前記改変無細胞成分、または前記無細胞成分の改変分画と組み合わせて、改変全血を生産する工程をさらに含む、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
生物学的流体から可溶性腫瘍壊死因子受容体(TNFR)を除去する方法であって、
(a)生物学的流体を得ること;
(b)前記生物学的流体を、可溶性TNFRに対し特異的結合活性を有する腫瘍壊死因子α(TNFα)ムテインと接触させること;
(c)前記生物学的流体から、前記可溶性TNFRに結合した前記TNFαムテインを除去し、可溶性TNFR量の低下した改変生物学的流体を生産すること;
を含む、方法。
【請求項82】
前記TNFαムテインが、不活性媒体に付着されて吸着基質を形成し、前記生物学的流体から、前記可溶性TNFRに結合した前記TNFαムテインを含む前記吸着基質を除去することによって、前記可溶性TNFRに結合している前記TNFαムテインが、前記生物学的流体から除去される、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
工程(b)において、生物学的流体が、可溶性TNFRに対して特異的結合活性を有する、一つ以上の追加のTNFαムテインにさらに接触させられ、かつ、工程(c)において、前記可溶性TNFRに結合している、前記一つ以上の追加のTNFαムテインが、前記生物学的流体からさらに除去される、請求項81に記載の方法。
【請求項84】
前記生物学的流体が、複数のTNFαムテインと接触させられる、請求項81に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−509965(P2009−509965A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532466(P2008−532466)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/037171
【国際公開番号】WO2007/038386
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(508088605)サイトロジック, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】