説明

哺乳類細胞の増殖を治療するためのハロゲン化芳香族を含有する医薬製剤

【課題】癌、非癌性(noncancer)の脈管形成状態、又は動脈硬化状態を含む望ましくない細胞増殖によって特徴付けられる状態を有する被検者に対して投与することができる医薬製剤を提供する。
【解決手段】下式:


(上記式中、R1は水素、ヒドロキシル及びハロゲンから成る群より選択され;R2はフェニル、及び置換フェニルから成る群より選択され、前記置換はヒドロキシル基であり;R3は水素、ヒドロキシル、低級アルキル、及び低級アルコキシから成る群より選択され;R4はフェニル、及び置換フェニルから成る群より選択され、前記置換はヒドロキシル基及びハロゲンから成る群より選択される。)の化合物、またはその薬学的に許容できる塩を含有する、哺乳類の望ましくない細胞増殖を阻止するための医薬製剤。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、哺乳類細胞の増殖を抑制する方法及び生成物に関するものである。これらの方法は、癌、動脈硬化症、及び新血管新生によって特徴付けられる疾患を治療するためのin vivo用途を含む広範な用途を有する。
【0002】
発明の背景
細胞増殖は、生命それ自体にとって必要な、哺乳類存在の正常な一部である。しかしながら、細胞増殖は、必ずしも望ましいとは限らず、例えば癌、皮膚病、炎症性疾患及び動脈硬化症のような生命を脅かす状態の原因となることがある。
【0003】
抗真菌薬である様々なイミダゾールが、癌、脈管形成状態及び動脈硬化症と関連のある細胞増殖を抑制するのに有用であることが発見された。これらのイミダゾールとしては、クロトリマゾール、ミコナゾール及びエコナゾールが挙げられる。それらの特徴の一部は、赤血球における、カルシウムによって活性化されたカリウムチャンネルを抑制する能力である。イミダゾール基は、記載されて来た活性化合物のすべてに共通しており、イミダゾール基は、これらの分子の官能活性部分の不可欠な成分であると考えられていた。
【0004】
発明の概要
本発明は、哺乳類細胞の増殖を抑制する方法及び生成物を提供する。発明の背景で記載した化合物のイミダゾール官能価は、前記化合物の増殖抑制活性にとって必要ではないことを発見した。したがって、抗真菌薬であり、また赤血球のカルシウム活性化カリウムチャンネルを抑制するイミダゾールを、イミダゾール基を取り除くことによって、本発明で用いるために改質した。前記の改質化合物は、典型的には原子5個以下の分だけ、更に典型的には原子3個以下の分だけ、互いから分離された少なくとも2つの芳香族基を有する。芳香族基を結合させる原子は、炭素原子、窒素原子及び/又は硫黄原子であることができる。芳香族基の少なくとも1つは、塩素、又は正味の総負電荷を有する別の官能価で置換される。
【0005】
本発明の1つの態様にしたがって、被検者を治療して、望ましくない哺乳類細胞の増殖を抑制する方法が提供される。化合物は、望ましくない哺乳類細胞の増殖を抑制するのに有効な量で、前記の治療を必要とする被検者に対して投与される。前記の化合物は下式:
【0006】
【化1】

【0007】
[式中、R1は水素、ヒドロキシル及びハロゲンから成る群より選択され;R2は無し、水素、フェニル、及び置換フェニルから成る群より選択され、前記置換はヒドロキシル基であり;R3は水素、ヒドロキシル、低級アルキル、及び低級アルコキシから成る群より選択され;R4は硫黄−CH2−R5、酸素−CH2−R5、=N−O−CH2−R5、酸素−フェニル−CH=CH2
【0008】
【化2】

【0009】
フェニル、及び置換フェニルから成る群より選択され、前記置換はヒドロキシル基及びハロゲンから成る群より選択され;R5はビニル、フェニル、ハロゲン一置換フェニル、ハロゲン二置換フェニル、フェニル−S−フェニル、CH2−O−フェニル、CH2−O−(ハロゲン置換)フェニル、及び:
【0010】
【化3】

【0011】
(式中、Zは硫黄、酸素、又は窒素である)から成る群より選択され;及びR6は水素及びハロゲンから成る群より選択される]を有することができる。
本発明で有用な他の化合物は下式:
【0012】
【化4】

【0013】
[式中、R=N、S又はCであり;R1=H、OH、O又は無しであり;R2=H、Cl、OH、低級カルボン酸(C1 − C3)、又は無しであり;R3=H、Cl、OH、低級カルボキシル又は無しであり;及びR4=H、Cl、OH、低級カルボキシル又は無しである]を有することができる。
【0014】
好ましい化合物は、イミダゾール基を欠くクロトリマゾールの誘導体、イミダゾール基を欠くエコナゾールの誘導体、イミダゾール基を欠くミコナゾールの誘導体、ケトプロフェン及びジクロフェナック(diclofenac)である。
【0015】
上記の化合物は、癌、非癌性(noncancer)の脈管形成状態、又は動脈硬化状態を含む望ましくない細胞増殖によって特徴付けられる状態を有する被検者に対して投与することができる。
【0016】
本発明の別の態様にしたがって、哺乳類細胞の増殖を抑制する方法が提供される。哺乳類細胞は、哺乳類細胞の増殖を抑制するのに有効な量の上記化合物の1種類以上と接触する。この発明の態様は、in vitroで投与して、所望の時間、細胞増殖を抑制することができる。この方法で治療可能な哺乳類細胞としては、脈管平滑筋細胞、線維芽細胞、内皮細胞及び様々な癌細胞が挙げられる。
【0017】
また、本発明は、上記化合物を含む持続放出性インプラントである薬剤、ならびに上記化合物を含む抗癌剤のカクテルである薬剤も提供する。
本発明のこれらの及び他の態様を、以下でより詳細に説明する。
【0018】
本発明の詳細な説明
本発明は、哺乳類細胞の増殖を抑制するための方法及び生成物を含む。抗真菌薬であり、且つ赤血球のカルシウム活性化カリウムチャンネルを抑制する、ある種のイミダゾールは、哺乳類細胞の増殖を抑制することができるということは既に確立されている。本発明は、これらのイミダゾールの代謝産物及び類似化合物が、それらがイミダゾール官能価を含んでいないにもかかわらず、哺乳類細胞の増殖を抑制することができるという予期外の所見を含んでいる。
【0019】
本発明にしたがう有用な分子は、以下の一般式:
【0020】
【化5】

【0021】
[式中、R1は水素、ヒドロキシル及びハロゲンから成る群より選択され;R2は無し、水素、フェニル、及び置換フェニルから成る群より選択され、前記置換はヒドロキシル基であり;R3は水素、ヒドロキシル、低級アルキル、及び低級アルコキシから成る群より選択され;R4は硫黄−CH2−R5、酸素−CH2−R5、=N−O−CH2−R5、酸素−フェニル−CH=CH2
【0022】
【化6】

【0023】
フェニル、及び置換フェニルから成る群より選択され、前記置換はヒドロキシル基及びハロゲンから成る群より選択され;R5はビニル、フェニル、ハロゲン一置換フェニル、ハロゲン二置換フェニル、フェニル−S−フェニル、CH2−O−フェニル、CH2−O−(ハロゲン置換)フェニル、及び:
【0024】
【化7】

【0025】
(式中、Zは硫黄、酸素、又は窒素である)から成る群より選択され;及びR6は水素及びハロゲンから成る群より選択される]で表される分子を含む。
最も好ましい化合物は、クロトリマゾール、ミコナゾール及びエコナゾールの類似化合物であり、それらのイミダゾール基は水素、ヒドロキシル、低級(1 − 3個の炭素原子)アルキル又は低級アルコキシ基で置換されるように改質された分子である。前記の化合物としては:
【0026】
【化8】

【0027】
(式中、Rは水素、ヒドロキシル、低級アルキル又は低級アルコキシである)が挙げられる。
好ましい化合物は
【0028】
【化9】

【0029】
である。
本発明にしたがって有用であると考えられる他の化合物としては、オキシコナゾール、イソコナゾール、クロコナゾール、ブトコナゾール、フェンティコナゾール、エニルコナゾール、オモコナゾール、スルコナゾール及びチココナゾールを含む、抗真菌薬であり、且つ赤血球のカルシウム活性化カリウムチャンネルを抑制する他のイミダゾールの誘導体が挙げられる:
【0030】
【化10】

【0031】
上記の化合物は、市販されているイミダゾールの誘導体である。そのような市販のイミダゾールは、上記の化合物を製造するために、従来の有機化学技術にしたがって改質することができる。また、前記の化合物は、容易に入手できる出発材料から新たに合成することもできる。これらの化合物の製造は、当業において通常の範囲内である。
【0032】
本発明で有用な他の化合物としては、下式:
【0033】
【化11】

【0034】
で表される構造を有するケトプロフェン及びジクロフェナックが挙げられる。これらの化合物は、抗炎症薬として知られているが、これまでは非炎症状態を治療するためには用いられて来なかった。したがって、本発明にしたがって、前記化合物を用いて、抗炎症治療を必要としない、またその他の点で、例えばケトプロフェン及びジクロフェナックのような非ステロイド抗炎症薬による治療を必要とする適応が認められない被検者を治療するのに用いられる。非炎症状態としては、癌、動脈硬化状態、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、皮膚病、(以下に記載した疾患、湿疹は除く)、子宮レイオミオマス(leyomyomas)及び線繊症が挙げられる。
【0035】
本発明は、その場において、望ましくは、治療が必要なヒトの微小循環において、哺乳類細胞の増殖を抑制することが望ましい場合にはいつでも有用である。定義によって、「その場において(in-situ)」という用語は、用語「in vivo」、「ex vivo」及び「in vitro」を包含及び含む。本発明の特有な使用は、以下の段落で説明してあり、これらの使用は、予防処置、及び急性状態及び慢性状態を含む。
【0036】
癌治療
アメリカ合衆国の人々の1/3が癌になると考えられている。癌は、アメリカ合衆国における主たる死因として、心臓病に次ぐ第二番目を保っている。本発明の化合物を用いる化学療法が提供される。
【0037】
本発明は、次の癌:すなわち、胆管癌;神経膠芽細胞腫及びメデロブラストメス(medelloblastomes)を含む脳の癌;胸部の癌;子宮頸部癌;絨毛癌;結腸癌;子宮内膜癌;食道癌;胃癌;急性及び慢性のリンパ球性白血病及び骨髄性白血病を含む血液学的新生物、多発性骨髄腫、AIDS関連白血病リンパ腫及び成人T細胞白血病リンパ腫;ボーエン病及びパジェット病を含む上皮内新生物;肝臓癌;肺癌;ホジキン病及びリンホジティック(lymphozytic)リンパ腫を含むリンパ腫;神経芽細胞腫;扁平上皮細胞腫を含む口腔癌;上皮細胞、間質細胞、生殖細胞及び間充織細胞から生じる癌を含む卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;直腸癌;平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、線繊肉腫及び骨肉腫を含む肉腫;黒色腫、カポージ肉腫、基底細胞癌(basocellular cancer)及び扁平上皮細胞癌を含む皮膚癌;胚芽肉腫(germinal tumors)(精上皮腫、非精上皮腫(奇形腫、絨毛上皮腫))、間質肉腫(stromal tumors)及び生殖細胞肉腫を含む睾丸癌;甲状腺癌及び髄様癌を含む甲状癌;及び腺癌及びウィルムス腫瘍を含む腎臓癌を含む様々な癌を治療するのに有用である。
【0038】
本発明で有用な化合物は、抗癌カクテルの形態で投与することができる。抗癌カクテルは、本発明による有用な化合物のいずれか1種類と、別の抗癌剤及び/又は補助的薬効増強剤(supplementary potentiating agent)との混合物である。癌治療におけるカクテルの使用はルーティンである。この態様では、通常の投与賦形剤(例えば、丸剤、錠剤、インプラント、注入可能な溶液など)は、本発明で有用なイミダゾールと、抗癌剤及び/又は補助的薬効増強剤との双方を含む。
【0039】
抗癌剤としては、上記のイミダゾールが挙げられる。他の抗癌剤は公知であり、例えば:アミノグルテチミド;アスパラギナーゼ;ブレオマイシン;ブスルファン;カルボプラチン;カルムスチン(BCNU);クロラムブチル;シスプラチン(cis-DDP);シクロホスファミド;シタラビンHCl;ダカーバジン;ダクチノマイシン;ダウノルビシンHCl;ドクソルビシンHCl;エストラムスチン燐酸ナトリウム;エトポサイド(V16−213);フロックスウリジン;フルオロウラシル(5−FU);フルタミド;ヒドロキシウレア(ヒドロキシカルバミド);イホスファミド;インターフェロンα−2a,α2b;ロイプロリドアセテート(LHRH−放出因子類似化合物);ロムスチン(CCNU);メクロレタミンHCl(窒素マスタード);メルファラン;メルカプトプリン;メスナ;メトトレキサート(MYX);マイトマイシン;マイトタン(o.p´−DDD);マイトキサントロンHCl;オクトレオタイド;プリカマイシン;プロカルバジンHCl;ストレプトゾシン;タモキシフェンシトレート;チオグアニン;チオテパ;ビンブラスチンスルフェート;ビンクリスチンスルフェート;アムサクリン(m−AMSA);アザシチジン;ヘキサメチルメラミン(HMM);インターロイキン2;ミトグアゾン(メチル−GAG;メチルグリオキサルビス−グアニルヒドラゾン;MGBG);ペントスタチン;セマスチン(メチル−CCNU);テニポシド(VM−26);及びビンデシンスルフェートが挙げられる。
【0040】
補助的薬効増強剤も同様に十分にその特性が記述されており、例えば:三環系抗うつ薬(例えば、イミプラミン、デシプラミン、アミトリプチリン、クロミプラミン、トリミプラミン、ドクサピン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、アモキサピン及びマプロチリン);非三環系抗うつ薬(例えば、セルトラリン、トラゾドン及びシタロプラム);Ca++アンタゴニスト(例えば、ベラパミル、ニフェジピン、ニトレンジピン、及びカロベリン);カルモジリン抑制剤(例えば、プレニルアミン、トリフルオロペラジン及びクロミプラミン);アンフォテリシン(例えば、トゥイーン80及びペルヘキシリンマレエート);トリパラノール類似化合物(例えば、タモキシフェン);抗不整脈薬(例えば、キニジン);抗高血圧薬(例えば、レセルピン);及びチオール除去剤(Thiol depleters)(例えば、ブチオニン及びスルホキシミン)が挙げられる。
【0041】
カクテルで用いるとき、本発明の化合物は、治療上有効な量で投与する。治療上有効な量は、既に考察したパラメーターによって決定されるが;少なくとも、腫瘍の増殖を抑制するのに有効な、腫瘍領域における薬剤のレベルを確立する量である。
【0042】
本発明の化合物は、腫瘍の塊を減少させる他の治療と共に、有利に用いることができる。他の治療の性質にしたがって、本発明の化合物は、腫瘍の治療前、治療中又は治療後に投与することができる。腫瘍を出来る限り多く手術で摘出することが意図される場合には、本発明の化合物は、手術前に、手術中に、及び/又は手術後に投与することができる。例えば、一回投与又は数回投与で、手術前に、腫瘍塊の中に注入することによって、腫瘍に対して本発明化合物を投与することができる。その後で、腫瘍(すなわち、出来るだけ多くの腫瘍)を手術によって摘出することができる。腫瘍部位(一度摘出された)に対する更なる投与を行うことができる。別法として、手術によってできる限り多くの腫瘍を摘出することは、腫瘍部位に対する本発明化合物の投与に先立って行うことができる。
【0043】
動脈硬化
動脈硬化は、動脈壁の肥厚及び硬化を説明するために用いられ用語である。動脈硬化は、アメリカ合衆国及び最も西洋化された社会における死亡原因の大部分を占めていると考えられる。アテローム性動脈硬化症は、ほとんどの冠状動脈疾患、大動脈瘤、及び下肢の動脈疾患の原因、ならびに脳血管疾患の原因であると考えられる動脈疾患の1つのタイプである。動脈疾患は、アメリカ合衆国における死因の第一位である。
【0044】
典型的には、正常な動脈は、内皮細胞、すなわち脈管内膜の単一層のみが、その内側上を覆っている。脈管内膜は、中膜の上を覆っており、中膜は単一細胞タイプのみ、すなわち平滑筋細胞のみを含んでいる。動脈の最も外側の層は、外膜である。老化と共に、脈管内膜の厚さが連続して増加し、脈管内膜からの平滑筋細胞の移動及び増殖がその原因の一部であると考えられている。また、脈管内膜の肥厚の同様な増大は、例えばバルーン膨張法によって血管壁の損傷が引き起こされる場合に起こるような様々な外傷性の出来事又は介入の結果としても起こる。現在までのところでは、アテローム性動脈硬化症に関して証明された治療は存在していない。
【0045】
本発明化合物は、内皮細胞、平滑筋細胞及び線維芽細胞の増殖を抑制する。したがって、動脈硬化状態及び線繊症を含む状態を治療する方法が提供される。
本発明は、動脈硬化状態を治療することに関して用いられる。本明細書で用いている動脈硬化状態とは、古典的なアテローム性動脈硬化症、悪性アテローム性動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症の病変、及び糖尿病の血管性合併症を含む、望ましくない内皮細胞及び/又は脈管平滑筋細胞の増殖によって特徴付けられるあらゆる他の動脈硬化状態を意味している。脈管平滑筋細胞の増殖は、古典的なアテローム性動脈硬化症における主たる病理学的特徴である。内皮細胞からの増殖因子の遊離は、口径を減少させ、最終的には動脈を塞いでしまう内膜下平滑筋の増殖を刺激する。本発明は、前記の増殖を抑制するので、前記増殖及び関連するアテローム性動脈硬化状態の始まりを遅らせ、進行を抑制し、又は進行を停止させるのにも有用である。
【0046】
脈管平滑筋細胞の増殖は、避けられない心臓移植の失敗に関する主な理由である悪性アテローム性動脈硬化症を生じさせる。この増殖も、増殖因子によって媒介されると考えられ、最後には冠状動脈が閉塞してしまうことがある。本発明は、前記の閉塞を抑制し、移植の失敗の危険性を低下させるか、又は防止するのにも有用である。
【0047】
脈管損傷も、内皮細胞及び脈管平滑筋細胞の増殖を招くことがある。その損傷は、多くの外傷性の出来事、又は脈管手術及び例えばバルーン膨張カテーテルによって行われる血管形成術を含む介入によって引き起こされ得る。再狭窄は、冠状動脈の成功したバルーン血管形成術の主な合併症である。前記の再狭窄は、冠状動脈を覆っている内皮細胞を機械的に損傷させた結果として増殖因子が放出されることにより引き起こされると考えられる。本発明は、望ましくない内皮細胞増殖及び平滑筋細胞増殖を抑制し、遅らせ、又は再狭窄を全く防止するのにも有用であり得る。
【0048】
他の動脈硬化状態としては、例えば糖尿病の脈管合併症、糖尿病性糸球体硬化症及び糖尿病性網膜症のような内皮細胞及び/又は脈管平滑筋細胞の増殖を含む動脈壁の疾患が挙げられる。
【0049】
他の脈管状態としては、バイパス手術、冠状動脈バイパス手術、及び閉塞又は部分的に閉塞された血管における開通性を再確立するためのバルーン血管形成術を含む方法、例えばアセレクトミー(atherectomy)、レーザー法及び超音波法
が挙げられる。
【0050】
脈管形成状態
血管新生、すなわち脈管形成は、新しい動脈の成長及び発達である。血管新生は、損傷修復を含む脈管系の正常な発達には重要である。しかしながら、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、慢性関節リウマチ、及びある種の癌を含む異常な血管新生によって特徴付けられる状態がある。例えば糖尿病性網膜症は、失明の主な原因である。糖尿病性網膜症には2つのタイプ、すなわち単純タイプと増殖性タイプとがある。増殖性網膜症は、血管新生及び瘢痕によって特徴付けられる。増殖性網膜症を有するそれらの患者の約1/2は、約5年以内に、失明へと進行する。
【0051】
異常な血管新生の別な例としては、固化腫瘍(solid tumors)と関連のあるものがある。今では、腫瘍の無制限の増殖は脈管形成に依存していること、及び脈管形成因子の遊離による脈管形成の誘発が発癌現象における重要な段階で有り得ることは確立されている。例えば、基礎的線維芽細胞増殖因子(bFGF)は、いくつもの癌細胞によって遊離され、癌脈管形成において極めて重要な役割を担う。脈管形成が抑制されるとき、ある種の動物腫瘍が退行するという証明は、腫瘍増殖における脈管形成の役割に関する最も説得力のある根拠を提供した。
【0052】
本明細書で用いている、脈管形成状態とは、血管新生を含む病状を有する疾患又は望ましくない医学的状態を意味している。前記の疾患又は状態としては、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障及び慢性関節リウマチ(非癌性脈管形成状態)が挙げられる。癌脈管形成状態は、固化腫瘍、及び例えば血管内皮腫、血管腫及びカポージ肉腫のような血管新生と他の点では関連のある癌又は腫瘍がある。
【0053】
内皮細胞及び脈管平滑筋細胞の増殖は、血管新生の主な特徴である。本発明は、前記の増殖を抑制し、したがって、前記の血管新生に完全に又は部分的に依存する脈管形成状態の進行を全く抑制又は停止させるのに有用である。本発明は、その状態が、追加の要素として、望ましくない血管新生と必ずしも関連がない内皮細胞及び脈管平滑筋細胞の増殖を有するとき、特に有用である。例えば、乾癬は、血管新生と関連のある内皮細胞増殖と無関係である内皮細胞増殖を更に伴うかもしれない。同様に、継続した増殖のために血管新生を必要とする固化腫瘍も、内皮細胞及び脈管平滑筋細胞の腫瘍であるかもしれない。この場合、腫瘍細胞それら自体は、本発明で用いられるイミダゾール代謝産物の存在下で、増殖が抑制される。
【0054】
他の増殖性疾患
本発明は、実質的にあらゆる増殖性疾患と関連のある哺乳類の細胞増殖を抑制するのに有用である。上記した特有の疾患に加えて、また本発明は、ケロイド、過形成性瘢痕、脂漏性角化症、パピローマウィルス感染(例えば、尋常性ゆうぜい、足底ゆうぜい、扁平ゆうぜい、コンジロメータ(condilomata)などを生じさせる)光線性角化症及び湿疹を含む他の皮膚病;増殖性糸球体腎炎を含む他の炎症性疾患;紅斑性狼瘡;強皮症;一時性関節炎;閉塞性血栓性脈管炎;皮膚粘膜リンパ節症候群;及び子宮レイオミオマス(leyomyomas)を治療するのにも有用である。
【0055】
また本発明は、線繊症を、及び線繊芽細胞の増殖から全部又は一部が生じるすべての、線繊症の他の医学的合併症を治療するのにも有用である。線繊症(アテローム性動脈硬化症以外の他の)を含む医学的状態としては、手術又は損傷から生じる望ましくない組織癒着が挙げられる。
【0056】
処方、投与及び用量
投与するとき、本発明の処方は、薬学的に許容可能な量で且つ薬学的に許容可能な配合物で適用される。前記の製剤は、通常、塩、緩衝剤、保存薬、適合担体、及び任意に他の治療成分を含むことができる。医学で用いるとき、塩は、薬学的に許容可能であるべきであるが、薬学的に許容可能でない塩を都合良く用いて、それらの薬学的に許容可能な塩を調製することができ、また本発明の範囲からも排除されない。前記の薬理学的に及び薬学的に許容可能な塩としては、限定するものではないが、次の酸:すなわち、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、燐酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、蟻酸、マロン酸、琥珀酸、ナフタレン−2−スルホン酸、及びベンゼンスルホン酸が挙げられる。また、薬学的に許容可能な塩は、例えばカルボン酸基のナトリウム塩、カリウム塩又はカルシウム塩のようなアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩として調製することもできる。
【0057】
適当な緩衝剤としては:酢酸及び塩(1 − 2% W/V);クエン酸及び塩(1 − 3% W/V);硼酸及び塩(0.5 − 2.5% W/V);及び燐酸及び塩(0.8 − 2% W/V)が挙げられる。
【0058】
適当な保存薬としては、ベンズアルコニウムクロリド(0.003 − 0.03% W/V);クロロブタノール(0.3 − 0.9% W/V);パラベンズ(parabens)(0.01 − 0.25% W/V)及びチメロサール(0.004 − 0.02% W/V)が挙げられる。
【0059】
本発明の活性化合物は、薬学的に許容可能な担体中に任意に含まれるイミダゾール代謝産物の治療上有効な量を有する薬学配合物であることができる。本明細書で用いている「薬学的に許容可能な担体」という用語は、ヒト又は他の哺乳類に対して投与するのに適している、1種類以上の適合性の固体又は液体充填剤、ディリュータント(dilutant)又は封入用物質を意味している。「担体」という用語は、適用を容易にするために、活性成分と組み合わせる、天然又は合成の、有機又は無機の成分のことを意味している。薬学配合物の成分は、所望の薬学的効力を実質的に付与する相互作用がないような方法で、本発明の分子と、また互いと混合することもできる。
【0060】
非経口投与に適する配合物は、都合良くは、活性化合物の滅菌水性製剤を含み、好ましくは、宿主の血液と等張である。この水性製剤は、適当な分散剤又は湿潤剤及び沈殿防止剤を用いて、公知の方法にしたがって処方することができる。滅菌注入可能製剤も、例えば1,3−ブタンジオール中溶液として、非中毒性の非経口的に許容可能な希釈剤又は溶媒中滅菌注入可能溶液又は懸濁液であることができる。用いることができる、許容可能な賦形剤及び溶媒は、水、リンゲル溶液、及び等張の塩化ナトリウム溶液である。更に、滅菌不揮発性オイルは、溶媒又は懸濁媒として、伝統的に用いられている。この目的のために、合成のモノ−又はジ−グリセリドを含む任意のブランドの不揮発性オイルを用いることができる。更に、例えばオレイン酸のような脂肪酸も、注入可能な製剤において用いることができる。経口、皮下、静脈内、筋肉内などに適する担体処方は、ペンシルバニア州イーストンにある Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company で見出すことができる。
【0061】
本発明は、上で考察した状態を有する、若しくは有すると推測される、また前記状態が進んでいる、若しくは進んでいると推測される被検者を治療することに関して用いられる。本明細書で用いられる被検者とは、ヒト、霊長類、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ及びネズミを意味している。
【0062】
本発明の化合物は、有効な量で投与される。有効な量とは、治療される特有な状態の始まりを遅らせ、進行を抑制し、あるいは始まり又は進行を全く停止させるのに必要な量を意味している。一般的に、有効な量は、哺乳類の細胞増殖をその場で抑制するのに必要な量である。
【0063】
被検者に対して投与するとき、有効な量は、当然、治療される特有な状態;すなわち、状態の激しさ;年齢、肉体の状態、大きさ及び重量を含む個々の患者のパラメーター;並行して行っている治療;治療の頻度;及び投与方式によって左右される。これらの因子は、当業者には公知であり、ルーティンの実験だけで提出することができる。特に、急性鎌状赤血球の発症が支配的な臨床上の発現である場合には、最大用量、すなわち堅実な医学的診断にしたがって、最も高用量で安全な量を用いることが一般的に好ましい。
【0064】
目標血漿レベルは、赤血球において75%の抑制を誘発することができるレベルである(実施例参照)。用量は、所望の薬剤血漿レベルを達成するために適当に調節することができる。一般的に、活性化合物の毎日の経口用量は、約0.01mg/kg・日から1000mg/kg・日である。1日当たり1回又は数回、50 − 500mg/kgで経口投与することによって、所望の結果が得られる。被検者における応答が前記の投与で不十分である場合には、よりずっと高用量(又は異なる一層局所的な送達経路による有効なより高用量)を、患者の許容度が許す程度まで用いることができる。化合物の適当な全身性レベルを達成するために、1日当たり複数回の投与が企図される。
【0065】
様々な投与経路を用いることができる。選択される特有の方式は、当然、選択される特有の薬剤、治療される疾患状態の激しさ、及び治療効力に要求される用量によって決定される。一般的に言えば、本発明の方法は、医学的に許容可能である投与の任意の方式を用いて実施することができ、その方式とは、臨床上許容出来ない副作用を引き起こさずに、活性化合物の有効レベルを生じさせる任意の方式を意味している。前記の投与方式としては、経口経路、直腸経路、局所的な経路、鼻腔経路、経皮的な経路又は非経口経路が挙げられる。「非経口」という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、又は輸液(infusion)を含む。静脈内及び筋肉内の経路は、長期間の療法及び予防には特に適しない。しかしながら、それらは、緊急の状況では好ましい。経口投与は、患者にとって、ならびに投与量計画にとって都合が良いので、予防的治療にとっては好ましい。
【0066】
配合物は、都合良くは、単位用量の形態で出すことができ、薬学の当業者に公知の方法のいずれかで調製することができる。すべての方法は、1つ以上の補助的成分を構成する担体と活性化合物とを結合させる工程を含む。一般的に、配合物は、活性化合物を、液体担体、微粉砕された固体担体、又は両方と均一に且つ密接に結合させることによって調製する。そのとき、必要であれば、その生成物を造形する。
【0067】
経口投与に適する配合物は、活性化合物の予定量をそれぞれ含む、例えばカプセル、カシェ、錠剤、又は口内錠のような分離単位として出すことができる。他の配合物としては、例えばシロップ、エリキシル剤、又は乳濁液のような水薬中又は非水性液中懸濁液が挙げられる。
【0068】
他の送達システムとしては、時間放出、遅延放出又は持続放出の送達システムが挙げられる。前記システムは、本発明の活性化合物の繰り返しの投与を避けることができ、被検者及び医師にとって利便性が増す。多くのタイプの放出送達システムを用いることができ、当業者には公知である。前記の送達システムとしては、例えばポリ乳酸及びポリグリコール酸、ポリ無水物及びポリカプロラクトンのようなポリマーに基づくシステム;例えばコレステロール、コレステロールエステルのようなステロール、及び例えばモノ−、ジ及びトリグリセリドのような脂肪酸又は中性脂肪を含む脂質である非ポリマーシステム;ヒドロゲル放出システム;シラスチックシステム;ペプチドベースのシステム;ワックスコーティング、従来のバインダー及び賦形剤を用いている圧縮された錠剤、部分的に融合されたインプラントなどが挙げられる。特定の例としては、限定するものではないが:(a)米国特許第4,452,775号(Kent);第4,667,014号(Nestor ら);第4,748,034号及び第5,239,660号(Leonard)で見出される、多糖類がマトリックス内において、ある形態で含まれている侵食システム、及び(b)米国特許第3,832,253号(Higuchi ら)及び第3,854,480号(Zaffaroni)で見出される、活性化合物がポリマーを通過して制御された速度で透過する拡散システムが挙げられる。更に、ポンプに基づくハードウェア送達システムを用いることができ、そのいくつかは、移植に適応する。
【0069】
長期持続放出インプラントの使用は、例えば癌を含む慢性状態の治療に特に適するかもしれない。本明細書で用いている「長期」放出とは、インプラントが構築され、配置されて、少なくとも30日間、好ましくは60日間、治療レベルの活性成分を送達するという意味である。長期持続放出インプラントは、当業者に公知であり、上記放出システムのいくつかが挙げられる。前記インプラントは、腫瘍付近に又は腫瘍内に直接にインプラントを配置し、それにより本発明化合物を局所的に高用量で作用させることによって固化腫瘍を治療するのに特に有用で有り得る。前記インプラントは、うまく摂取されず、又は例えば血液/脳関門のような生物学的バリアーを通過しないので、本発明の化合物を送達するのに特に有用で有り得る。また、それらを用いて、例えば脳腫瘍が治療されているときのような、望ましくないカニューレ挿入を避けることもできる。
【0070】
実施例
材料
略語:ChTX,カリブドトキシン;CLT,クロトリマゾール;ECZ,エコナゾール;MCZ,ミコナゾール;FCZ,フルコナゾール;METZ,メトロニダゾール;IbTX,イベロトキシン;KTX,カリオトキシン;DIDS,ジ−イソチアシアノ−ジスルホニルスチルベン;ヘモグロビン濃度;MCHC,平均血球ヘモグロビン濃度;MOPS,3−[N−モルフォリノ]プロパンスルホン酸。
【0071】
薬剤及び化学薬品
合成カリブドトキシン(ChTX)は、Peptides International(ケンタッキー州ルイスビル)から購入した。A23187は、Calbiochem-Behring(カリフォルニア州ラホーヤ)から購入した。フルコナゾールは、コネチカット州グロトンにある Pfizer Inc.から購入した。ジスルホン酸(MOPS)、クロトリマゾール(CLT)、ミコナゾール、エコナゾール、メトロニダゾール、及びすべての他の薬剤及び化学薬品は、Sigma Chemical Co.(ミズーリ州セントルイス)及びFisher Scientific Co.(ニュージャージー州フェアローン)から購入し、放射性同位体86Rbは、Dupont(マサチューセッツ州ビレリカ)から購入した。
【0072】
細胞増殖に関するアッセイ
[3H]チミジンの取り込みによって評価したDNA合成:細胞は、ウェル(well)1つ当たり104及び0.8 10-3個の細胞がそれぞれ存在している48又は96のウェルプレート(Costar, マサチューセッツ州ケンブリッジ)中で増殖させ、また、10%熱失活仔ウシ血清が補われた Dubelcco によって改良されたイーグル培地(DME, Gibco, ニューヨーク州グランドアイランド)中で増殖させた;それらを、5%CO2中37℃に保った。それらが、集密に達したら(通常は3 − 4日)、培地をDME0.5%血清で置換して、それらを停止させ、有糸分裂誘発アッセイを24時間後に行う。
【0073】
休止細胞を、例えば10%血清、PDGF(ミズーリ州セントルイスにある Sigma Co.)、bFGF(ニューヨーク州レイクプラシッドにある Upstate Biote-chnologies)、又は細胞系にしたがって他の適当な有糸分裂誘発剤のような有糸分裂誘発性刺激薬に暴露し、3時間後に、[3H]チミジン(マサチューセッツ州ビレリカにある Dupont)1μCi/ml を、そのウェルに添加し、細胞を、更に21時間、37℃/5%CO2において保つ。次ぎに、その細胞をDME培地で3回洗浄し、酸で沈殿可能な放射能(acid-precipitable radioactivity)を、冷10%TCA(Sigma Co.)で抽出した。0.3N水酸化ナトリウム(Sigma Co.)で中和させた後、アリコートを、Packard Tri-Carb Scintillation counter(イリノイ州ダウナーズグローブにある Packard Instrument)でカウントする。 培養プレート中の細胞密度の測定:特定の試験細胞系の細胞を、培養プレート中に厳密に同じ低密度で接種し、DME10%血清中で、又は試験する細胞系によっては他の培地で、約12時間培養する。12時間後、試験薬剤を、例えばクロトリマゾール10μMを、1つのプレートの細胞培地に添加し、また同量の薬剤の担体のみを、担体エタノール10μlを、別のプレートに対して添加する。48 − 74時間後、対照(エタノール)における細胞密度と、実験プレートの細胞密度とを、細胞単層によって隠蔽された培養プレートの表面を測定することによって、光学倒立顕微鏡下で評価する。別法として、細胞を、エチレンジアミノテトラ酢酸(ECTA;Sigma Co.)中トリプシン50%(v/v)を用いて培養することによって、プレートから分離することができ;次に、その細胞を、血球計算器(ペンシルヴェニア州ピッツバーグにある Fisher)中でカウントする。
【0074】
Ca++活性化Kチャンネルの抑制剤に関するアッセイ
Ca++感受性K+チャンネルは、ヒト赤血球を含む細胞中で広範に分布している。ヒト赤血球は、前記チャンネルが初めて発見された細胞であり、また次の理由:すなわち、それらは容易に入手することができ、研究室で容易に扱うことができ、また輸送アッセイを、赤血球懸濁液のヘモグロビン濃度を読み取ることによって正確に標準化することができる、という理由から、前記チャンネルの活性剤及び抑制剤に関して最も普通に用いられるアッセイシステムである。
【0075】
ヒト赤血球の調製:血液を、ヘパリンで凝血防止された管に集め、5℃で10分間、3000gで、Sorvall 遠心機(RB 5B, コネチカット州ニュートンにある Du Pont Instruments)で遠心分離させる。血漿と軟膜を注意深く取り除き、細胞を、pH7.4、4℃(CWS)の、150mM 塩化コリン(Sigma Co.)、1mM 塩化マグネシウム(Sigma Co.)、10mM Tris-MOPS(Sig-ma Co.)を含む洗浄溶液で4回洗浄する。次に、細胞のアリコートを、ほぼ同体積のCWS中に懸濁させ、この元の細胞懸濁液から、ヘマトクリット(Hct)及びヘモグロビン(540nmにおける光学密度)を測定する。
【0076】
Ca++活性化Kの抑制剤を試験する方法:Ca++活性化Kチャンネルの抑制剤を試験するために、前記チャンネルを、カルシウムイオン透過担体A23187(Chalbiochem)を用いて活性化する。
【0077】
原子吸光分光測定法:洗浄したヒト赤血球を、0.150mM 塩化カルシウム(Sigma Co.)を含むCWS中ヘマトクリット≒1%で懸濁させる。1mlのアリコートを、0,3及び5分間において取り出し、エッペンドルフマイクロチューブ(Eppendorf microtube)(Fisher)中に入れた油状n−ブチルフタレート(Fair Lane, ニュージャージー州)0.3mlの先端上に層にし、20秒間、マイクロ遠心機中で遠心分離させた。5.30分において、イオン透過担体A23187(1μM 最終濃度)を添加し、6、7、8及び9分において、フタレートによって、サンプルを取り出し、スピンダウンさせる。油状層の上端上にある上澄みを取り出し、そのK+濃度を、Perking Elmer model 5000 spectrometer(コネチカット州ノーフォーク(Norwolk)にある Perking Elmer Corp.)を用いる原子吸光分光測定法によって測定する。抑制剤の非存在及び存在下におけるK+の流出(ミリモル/リットル細胞/時間)を、上澄み液(ミリモル/リットル細胞)対 時間(分)におけるK+濃度と関連のある曲線の傾きから計算する。
【0078】
86Rb流入の放射性同位体測定。培地は同じであるが、塩化カリウムを2mM及び放射性トレーサー86Rbを1μCi/ml 含む。フタレート層によってサンプルをスピンさせた後、メタノール・ドライアイス中に浸漬することによって、管を急速に凍結(-80℃)させる。管の先端は、充填された赤血球切片を含み、それを Packard Gamma Counter でカウントした。
【0079】
実施例1
ヒト赤血球のCa++活性化Kチャンネルに関するクロトリマゾール代謝産物B(2−クロロフェニル−ビス−フェニル−メタノール)の抑制効果を、A231H7/L細胞 60マイクロモル 及び塩化カルシウム 100μM の存在下で評価した。この代謝産物は、Ca++で活性化された86Rb流入及びK流出を著しく抑制した。IC50の平均値は、約9mMであった。
【0080】
実施例2
Ca++活性化K輸送を抑制する代謝産物Bの能力は、125I-ChTXの置換を評価することによっても測定した。ChTXによるK輸送の抑制と比較して、ChTXによる125I-ChTXの置換に関するIC50値は2 − 3倍増加するということはChTXに関して既に示されている(Brugnara, J.Biol.Chem.1993)。細胞を、1μMの代謝産物Bで処理したとき、また代謝産物Bが10μMの最大レベルに達したとき、K輸送の抑制%は50%を超えた。
【0081】
実施例3
細胞増殖に関する代謝産物Bの抑制効果を、Swiss 3T3 細胞(ネズミの線繊芽細胞系)で評価した。休止細胞を、精製された増殖因子(bFGF)及びDNAの合成で刺激し、24時間後に測定した[3H]チミジンの取り込みによって評価した。10μMのCLTは、bFGFで刺激されたDNA合成を完全に抑制した。代謝産物B、すなわちケトプロフェン及びジクロフェナックも、細胞増殖を抑制した。対照と比較して、ケトプロフェンは約80%だけ、チミジンの取り込みを抑制し、CLT代謝産物B及びジクロフェナックは、約50%だけチミジンの取り込みを抑制した。
【0082】
実施例4
この実験では、ヒト黒色腫細胞(MM RU)系を用いた。MM RU細胞系は、肺においてのみ転移(metasteses)を生じた(Byers,H.R.,ら による「Organ
Specific Metasteses in ImmunoDeficient Mice Injected with Human Melanomacells; A Quantitative Pathologic Analysis. Melanoma Res. 3:247-253(1993))。これらの細胞は、CLT代謝産物Bの存在及び非存在下で培養し、チミジン取り込みを測定した。10μMのCLT代謝産物Bは、対照に対して、約60%だけチミジンの取り込みを抑制した。
【0083】
実施例5
この実験では、結腸線癌細胞系(HT59)を用いた。前記の細胞は、CLT代謝産物Bの存在及び非存在下で培養した。10μMのCLT代謝産物Bは、対照に対して、約50%だけ、チミジンの取り込みを抑制した。
【0084】
当業者は、本明細書で説明した特定のイミダゾール及び方法に対して多数の等価物を、ルーティンの実験だけで確認することができる。前記の等価物は、本発明の範囲内にあると考えられ、また以下の請求の範囲によって包含されることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式:
【化1】

(上記式中、R1は水素、ヒドロキシル及びハロゲンから成る群より選択され;R2はフェニル、及び置換フェニルから成る群より選択され、前記置換はヒドロキシル基であり;R3は水素、ヒドロキシル、低級アルキル、及び低級アルコキシから成る群より選択され;R4はフェニル、及び置換フェニルから成る群より選択され、前記置換はヒドロキシル基及びハロゲンから成る群より選択される。)の化合物、またはその薬学的に許容できる塩を含有する、哺乳類の望ましくない細胞増殖を阻止するための医薬製剤。
【請求項2】
前記化合物が、下記の化合物:
【化2】

(式中、Rは低級アルキル、又は低級アルコキシである。)である請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
前記化合物が、
【化3】

である請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項4】
下式:
【化4】

(上記式中、R1は水素、ヒドロキシル及びハロゲンから成る群より選択され;R2はフェニル、及び置換フェニルから成る群より選択され、前記置換はヒドロキシル基であり;R3は水素、ヒドロキシル、低級アルキル、及び低級アルコキシから成る群より選択され;R4はフェニル、及び置換フェニルから成る群より選択され、前記置換はヒドロキシル基及びハロゲンから成る群より選択される。)の化合物、又はその薬学的に許容できる塩を含有する持続放出インプラントを含む哺乳類の望ましくない細胞増殖を阻止するための医薬製剤。
【請求項5】
下式
【化5】

(式中、R1は水素、ヒドロキシル及びハロゲンから成る群より選択され;R2はフェニル、及び置換フェニルから成る群より選択され、前記置換はヒドロキシル基であり;R3は水素、ヒドロキシル、低級アルキル、及び低級アルコキシから成る群より選択され;R4はフェニル、及び置換フェニルから成る群より選択され、前記置換はヒドロキシル基及びハロゲンから成る群より選択される。)の化合物、またはその薬学的に許容できる塩を含有する抗癌剤のカクテルを含む医薬製剤。
【請求項6】
化合物が、下記の化合物:
【化6】

(式中、Rは水素、ヒドロキシル、C−Cアルキル、又はC−Cアルコキシである。)から選択される請求項4又は5に記載の医薬製剤。
【請求項7】
化合物が、下記の化合物:
【化7】

からなる群から選択される請求項6に記載の医薬製剤。
【請求項8】
化合物が、
【化8】

である請求項7に記載の医薬製剤。
【請求項9】
望ましくない哺乳類の細胞増殖が、癌、脈管形成状態、動脈硬化状態、皮膚病又は炎症性病状である請求項1〜3のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項10】
癌が:胆管癌;脳の癌;胸部の癌;子宮頸部癌;絨毛癌;結腸癌;子宮内膜癌;食道癌;胃癌;血液学的新生物;上皮内新生物;肝臓癌;肺癌;リンパ腫;神経芽細胞腫;口腔癌;卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;直腸癌;肉腫;皮膚癌;睾丸癌;甲状腺癌;及び腎臓癌から成る群より選択される請求項9記載の医薬製剤。
【請求項11】
癌が皮膚癌である請求項9に記載の医薬製剤。
【請求項12】
癌が結腸癌である請求項9に記載の医薬製剤。
【請求項13】
動脈硬化状態がアテローム性動脈硬化症および糖尿病性血管合併症から選択される請求項9に記載の医薬製剤。
【請求項14】
脈管形成状態が、糖尿病性網膜症、血管新成緑内障、慢性関節リュウマチ(非癌性脈管形成状態)、固化腫瘍(癌性脈管形成状態)、血管内皮腫、血管腫、カポージ肉腫、乾癬からなる群から選択される。請求項9に記載の医薬製剤。
【請求項15】
皮膚病が、ケロイド、過形成性瘢痕、脂漏性角化症、パピローマウィルス感染、光線性角化症及び湿疹から成る群より選択される請求項9に記載の医薬製剤。
【請求項16】
炎症性症状が、増殖性糸球体腎炎、紅斑性狼瘡、心臓移植の悪性アテローム性動脈硬化症;強皮症;一時性関節炎;閉塞性血栓性脈管炎;皮膚粘膜リンパ節症候群および子宮レイオミオマスから成る群より選択される請求項9に記載の医薬製剤。

【公開番号】特開2007−277273(P2007−277273A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200510(P2007−200510)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【分割の表示】特願平8−510391の分割
【原出願日】平成7年9月15日(1995.9.15)
【出願人】(500154179)プレジデント・アンド・フェローズ・オブ・ハーバード・カレッジ (1)
【出願人】(596115687)チルドレンズ メディカル センター コーポレーション (25)
【Fターム(参考)】