説明

唄口を有する楽器の教授方法、自習方法、演奏補助具および演奏補助装置

【課題】 フルートの吹き方の技法を伝授することは大変に難しく、初心者は音を出そうとするあまりに息を吹く口に集中し、肩に力が入ってがちがちになってしまい、正しい音階で美しい音色を出すことが、長期間の練習を経ても出来ないでいる。本発明はこのように困難な問題を解決に導くことを課題とする。
【解決手段】 唄口を吹いた時に正しい音階となる息の方向を段階的に指示するための目印を、目で捕らえさせて唄口を吹かせることによって、息を吹く方向が視線の方向に一致し、初心者でも正しい音階で美しい音色が出せてそのまま本格的な練習に入って行けるようにすることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルートなどの唄口を有する(リードを用いない)楽器を吹いた時に初心者でも正しい音名の音で美しい音色が出せるようにするための、唄口を有する楽器の教授方法、自習方法、そしてこのために用いる演奏補助具および演奏補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フルートを吹奏する際に重要なことは、フルートを安定して支持し、唄口に適正に息を吹くこととされている。フルートの支持方法に付いては特開2004−205682で詳しく開示されているが、息の適正な吹き方に関しては特許文献的には実用新案登録3038459の吹奏補助アダプターくらいしか知られていない。
【特許文献1】 特開2004−205682
【特許文献2】 実用新案登録3038459
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
フルートの練習を始めた初心者にとって最も難しい点は、第1に音階が表わせないこと、第2に音を出せるようになってからもなかなか美しい音色にはならないことが上げられる。ピアノのようにあるキーを押えさえすれば決まった音が出る楽器とは異なり、唄口に適正に息を吹くことは初心者にとって至難の技であるように思われる。
【0004】
音楽教室などでもその教授方法はただ練習あるのみであり、はっきり言ってしまえば教授方法も何もないのが現状である。これはすなわちフルートの吹き方の技法を伝授することがいかに難しいかを示している。吹奏者は音を出そうとするあまり息を吹く口に集中し、肩に力が入ってがちがちになってしまうのである。従って当然のことながら正しい音名の音を美しい音色で出すことなど出来るわけがないのである。
【0005】
そこで本発明は上述したような問題を解決して、フルートの初心者でも正しい音名の音を美しい音色で出せてそのまま本格的な練習に入って行けるようにするための教授方法、自習方法、そしてこのために用いる演奏補助具を世界で初めて提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ターゲットを設けるステップと、そのターゲットを、唄口を吹いた時に正しい音名の音となる息の方向に段階的に移動させるステップと、その移動するターゲットを目で追って唄口を吹かせるステップと、から成ることを特徴とする唄口を有する楽器の教授方法である。また自習用として、唄口を吹いた時に正しい音階となる息の方向を段階的に指示するための目印を設けるステップと、所要の目印を目で捕らえて唄口を吹くステップと、から成る方法を編み出した。またこのために用いることが出来る、唄口を吹いた時に正しい音名の音となる息の方向を段階的に指示するための目印が設けられていることを特徴とする、唄口を有する楽器用の演奏補助具とした。
【0007】
前記教授方法に付いて、これまで吹奏者は息を吹く口に神経を集中させていたが、本発明によれば教授者によって前方に設けられたターゲットを目で見ることに集中するようになる。また教授者がターゲットを操作してターゲットを上方向へあるいは下方向へと移して行くと、吹奏者はこのターゲットを目で追うことに集中するようになる。ここで特筆すべきは、演奏者は目が追う方向に自然に息を吹くことが出来る、と言う事実が本発明者によって見出されたことである。すなわちターゲットを移して行きこのターゲットを目で追うと息の方向が自然にこれについて行き、息はターゲットの方を目がけて吹くようになるために、教授者が吹奏者ごとのターゲットの位置をきちんと音階に合わせておきさえすれば正しい音階が出せるようになるのである。この発明が為されてから振り返って見れば、以前は吹くように言われても特に初心者には目標が定まらなかったものである。それが今では容易に視線を定めることが出来るようになったのである。
【0008】
更に特筆すべきは、こうして吹奏者が前方に設けられたターゲットを目で見ることに集中すると、自然に肩の力が抜けてリラックスし、フルートを構える姿勢も安定して吹奏出来るようになるため、美しい音色を出すことが出来ると言う効果があることである。こうして従来であれば綺麗な音を出すのに2〜3年は掛かっていたのであるが、この発明の教授方法によれば何と1ヶ月でも出せるようになるのである。
【0009】
なおターゲットを吹奏者に合わせることに付いてであるが、フルートでは37音中の一番上の「ド」と吹奏者の唇の位置とがおよそ水平になる所を目印の基点とすると良い。従って吹奏者の身長に応じてその高さを加減すれば良い。ターゲットと吹奏者との距離に付いてはおよそ1〜1.5メートルなどとすれば良い。またターゲットを移す際の段階のことであるが、最低2音、4音、37音などとすれば良い。全くの初心者に教授するのであれば、唄口の角に息を当てる感覚を覚えさせるために頭部管の「レ」と「ソ」の2音だけで足りるし、あるいは慣れた者であっても初心に帰る目的でこの2音を練習すようにして良い。
【0010】
なおこの方法は自習方法としてもうまく働く。すなわち唄口を吹いた時に正しい音名の音となる息の方向を段階的に指示するための目印を、吹奏者自らが設けて、この目印を目で追って唄口を吹くようにする。この際に吹奏者自らが正しく目印を設定しなくてはならないため、このステップをより容易なものとするにはやはり以下で述べるような演奏補助具を提供すると良い。
【0011】
すなわち本発明の演奏補助具は、唄口を吹いた時に正しい音名の音となる息の方向を段階的に指示する目印が設けられているものである。一例として縦長の紙葉に音名の音を表わす例えば黒丸を縦方向に付すのである。また一例として縦長の木盤に音名の音を表わす例えばメモリを縦方向に刻設するのである。必要があれば前記黒丸やメモリなどの目印に音名を付すようにすれば良い。吹奏者は黒丸やメモリを目で追うようにして唄口を吹けば、息の方向が視線に追随して、黒丸やメモリを目がけて吹くようになるために、正しい音名の音で美しい音色が出せるようになるのである。
【0012】
なお低い方の音を示す目印の方が高い方の音を示す目印よりも強調されて設けられているものとしても良い。これは吹く息の強弱を示すものであり、低い方の音を出す時には比較的に強く吹かせたいからである。強調の付け方は目印を大小で表わしたり濃い薄いで表わしたり、またカラー表示で色を変えるなど任意である。好適な一例として目印を多重同心円で表わしてどの円までを塗り潰すかで強弱を付けることを上げる。
【0013】
ところで上記によれば確かに正しい音名の音で美しい音色を出すことが出来るようにはなる。吹奏者が正しく音階を表わすことが出来れば、聴者の耳には違和感がなくなり、それなりに美しく聞こえるからである。吹奏者が本発明によってリラックスすれば、楽器を構える姿勢が安定して美しい音色を出すことが可能になる。しかしながらより一層の美しい音色を奏でるには、微妙な吹き加減の体得が不可欠であり、それには相当の練習時間が必要なことは言うまでもない。
【0014】
このような問題に対しても本発明によれば効果的な解決手段を提供することが出来る。すなわち教授方法として、ある特定の音を出すべく唄口を吹く時に同時に、その音名の美しい音が出る息の方向を示してその方向に吹かせるようにするのである。また自習方法としてある特定の音を出すべく唄口を吹く時に同時に、その音名の美しい音が出る息の方向を指示するための目印を設けてその方向に吹くようにするのである。またこのために用いることが出来る演奏補助具として、ある特定の音名の音を出すべく唄口を吹いた時に同時に、その音名の美しい音が出る息の方向を指示するための目印が設けられているものとした。
【0015】
音階の各音が正しく出せるようになったら、次はこの何れの音に付いてもより一層美しく吹けるようにしなくてはならない。或いは正しい音を出す練習とより一層の美しい音を出す練習とが一時に行えるのであれば言うことはない。そのためには各々の音に付いて上述した音階に対する吹奏方向とは異なる特定の方向があることを体得することが望まれる(この方向はおよそ左右方向となるはずである)。なお各音に付いて吹く方向を特定して見るとこの方向も段階的になることが分かるのは、この方向が音階に対応しているためである。従って正しい音の吹奏方向と、より美しい音の吹奏方向とは、一つの共用される目印で表わすことも可能である(別々に表わして良いことは言うまでもない)。
【0016】
ところでこのような演奏補助具を使い始めるのに先立って目印を吹奏者に合わせることが必要である。上述したようにフルートでは37音中の一番上の「ド」と吹奏者の唇の位置とが水平になる所を目印の基点とすると良く、これは吹奏者の身長によって変わることから、この演奏補助具をスタンドや掛け具や吊り具などの支持手段を有すると共にこの支持手段に高さ位置の調節手段を備えたものとするのである。スタンドであれば演奏補助具を載せる台を立てる支柱を伸縮自在に構成する。掛け具であれば演奏補助具を止めるピンの位置を可変とするのである。また吊り具であれば演奏補助具を吊す吊り紐を繰り出したり巻き戻したりし得る紐の収納具を設けたりする。すなわち支持手段は必要に応じていかようにも設計することが可能である。なお更に上述した、より美しい音の吹奏方向を示す目印をこの支持手段に設けても良い。
【0017】
また目印が、開いた楽譜が閉じないように止めておくためのクリップに設けられているものとすることが出来る。クリップの吹奏者に向かう面に目印を設けて成るものとするのである。楽譜台に楽譜を載せ、所要のページを開いてクリップで止めれば、このクリップがそのまま本発明の演奏補助具となる。このクリップは単独でも楽譜と一緒でも運搬や収納が容易である。またこのようなクリップをアクセサリーとして構成することが可能である。なお更に上述した、より美しい音の吹奏方向を示す目印をこのクリップに設けても良い。
【0018】
また目印が、一例アクリル板のような透明な板状体に設けられている演奏補助具とすることが出来る。この板状体をスタンドの頂部に設けておくなどしてこれを立てて使用するようにする。例えば複数の吹奏者が練習を行うような場合に、互いの様子や教授者の仕草などが透明な板状体を通して見られる。なお後述する演奏補助装置にも関連するが、演説の際に用いる原稿を透明な液晶ディスプレイに表示しておき、演説者にはこの原稿が見えるが聴衆からは見えないようにする装置があるが、これと同じように透明な液晶ディスプレイに本発明の演奏補助具すなわち唄口を吹いた時に正しい音名の音となる息の方向を段階的に指示する目印を表示する演奏補助装置を提供することが可能である。これは発表会などの演奏会で使用すると良いであろう。なおこれ等に付いても更に上述したようなより美しい音の吹奏方向を示す目印を設けることが出来る。
【0019】
また演奏補助具が書籍のページとして設けられていものとすることが出来る。紙葉に音階を表わす目印であるメモリを縦方向に並ぶように印刷したものを提供することが出来るが、このような紙葉を書籍のページとして、教則本や雑誌などに綴じ込んでおくのである。あるいは綴じ込み付録として、本体から切り離せるようにミシン目を入れたものも提供可能である。なお更に上述した、より美しい音の吹奏方向を示す目印を印刷するようにしても良い。
【0020】
次に、これまで説明して来た演奏補助具に、更に前記目印を光らせるなどして目立たせるための明示手段を設けたものとしても良い。この明示手段の一例としては、目印に例えばLED(発光ダイオード)ランプを使用して、個々のLEDランプに対応するスイッチを設け、このスイッチを介して電源からLEDランプへ電力を供給出来るようにして成るものを上げる。前記スイッチはフルートであれば37音に対応している。従ってこの内の何れか一をONにすれば、この音名の音に対応するLEDランプが点燈するので、これを吹くべき目印とするのである。このスイッチを足で操作し得るように設けても良い。また他の例として前記一群のスイッチをシンセサイザーのキーボードに割り当てて成るものを上げる。キーボードの何れかのキーを押せば、これに対応する音名の音のLEDランプが点燈する。これにより教授者や第三者に演奏して貰い、点燈した目印に向かって吹く練習を行なうことが出来るようになる。なお各々の音名の音に付いて、美しい音が出る息の方向を指示するための目印を光らせるなどして目立たせるための明示手段を設けたものとすることが可能である。
【0021】
このような明示手段に、更に運指表示を行なうための運指表示手段を備え、この運指表示された音階を明示手段による表示に合わせるものとしても良い。運指表示とは、例えばフルートであれば左手の親指、人差し指、中指、薬指、小指、そして右手の人差し指、中指、薬指、小指の9指が押えるキーを指図するための表示のことである。すなわち運指表示に従ってキーを押えれば音の高さを設定することが出来るのである。この運指表示手段の一例としては、フルートのキーの配列をイラストで表示すると共にキーの位置に例えばLEDランプを埋め込んでおき、これに通電して光ったLEDランプが示すキーを押えるように指示するものを上げる。従って吹奏者は、前記演奏補助具の明示手段を見て息を吹く方向を定めると共に、この運指表示を見て指示されたキーを押えるようにすれば良いのである。なお上掲例の場合、イラストや写真でフルートの全体図を表示してこのキー配列にLEDランプを埋め込むような構成も可能である。
【0022】
また上述したような明示手段に、更にデジタル信号を出力し得るピアノなどの楽器からの演奏信号を受け付けて、この演奏信号が示す音名の音に対応する目印を、前記明示手段が目立たせて表示するような構成を設けても良い。上述のスイッチの操作に楽曲のプレーヤの演奏信号を利用するものと考えることが出来る。なお必要なものは演奏信号であって、これをスピーカなどに流すか否かの設定は任意である。
【0023】
さて上述した課題は、テレビジョン受像器やコンピュータディスプレイなどのディスプレイを備えると共に、このディスプレイに、唄口を吹いた時に正しい音階となる息の方向を段階的に指示する目印、を表示するための制御装置を備えている演奏補助装置とすることによっても達成される。
【0024】
テレビジョン受像器やパーソナルコンピュータは、一般的にハードディスクやROM(Read Only Memory)などの記憶装置やCPU(Central Prosessing Unit)やRAM(Random Access Memory)などを備えているため、記憶装置に唄口を吹いた時に正しい音名の音となる息の方向を段階的に指示する目印を表示するためのソフトウェアをインストールしておき、これを読み出してRAM上に展開して、CPUで演算処理して前記制御装置をソフトウェア的に構成することが出来る。この制御装置は前記目印をディスプレイに表示する。目印としては一例として音階を表わす例えば黒丸の並びやメモリ(目盛りの意)を縦方向に配置して画面を描画する。また必要があれば黒丸やメモリなどの目印に音名を付すようにすれば良い。従って吹奏者は、ディスプレイ上に表示された黒丸やメモリを目で追うようにして唄口を吹けば、息の方向が視線に追随して、黒丸やメモリを目がけて吹くようになるため、正しい音名の美しい音色が出せるようになるのである。
【0025】
なお現在ではデジタルカメラで撮影した画像を記録したSDカード(商標である)などの可搬型記憶装置を挿入するスロットを備え、ここに挿入すると自動的に画像を表示するテレビジョン受像器が存在しているため、単に目印をディスプレイに表示するだけであるならば、このようなテレビジョン受像器を利用することが可能である。すなわちこのような記憶装置に本発明の目印を写真やイラストなどとして記録しておけば良い。また異なる音名を表わした写真やイラストなどをスライドショーとして表示するようにしても良い。あるいは動画が再生出来るものであれば連続して音階を吹く練習に利用し得る。
【0026】
また上述の課題は、前方にスクリーンを映し出すヘッドマウントディスプレイを具備すると共に、このヘッドマウントディスプレイに、唄口を吹いた時に正しい音名の音となる息の方向を段階的に指示する目印、を表示するための制御装置を備えている楽器用の演奏補助装置とすることによって達成される。
【0027】
ヘッドマウントディスプレイには、専用のゴーグルタイプのものや、普段使用している眼鏡のレンズの前方に配設するタイプのものなどがあり、ディスプレイ部分は主に液晶ディスプレイになるものであり、これを着用すると前方に映像を映し出すことが出来ると言うものである。従ってこれを出力装置とする可搬型のコンピュータで上述したソフトウェアを動作させれば、いつでも前方に、唄口を吹いた時に正しい音名の音となる息の方向を段階的に指示する目印を表示することが可能になる。このものは持ち運びや収納に便利であり、吹奏者が一人で練習する際にこれを着用すれば、極めて容易に本発明の自習方法を実施することが出来るのである。なおここではヘッドマウントディスプレイに目印を表示するために、可搬型のコンピュータを使用した例を上げたが、せっかくコンピュータを利用するのであれば後述する明示手段や運指表示手段やプレーヤを備えるようにすると更に良い。
【0028】
また上述の課題はスクリーンに映像を映し出すプロジェクタであって、唄口を吹いた時に正しい音名の音となる息の方向を段階的に指示する目印、を表示するための制御装置を備えている演奏補助装置とすることにより達成される。
【0029】
プロジェクタによって前記目印を前方に設置したスクリーンに映像として映し出そうと言うものである。なおこのプロジェクタを出力装置とするものとしては前記コンピュータと前記ソフトウェアとの組み合わせを一例として上げる。
【0030】
また上述の課題は、調律すべく吹奏者が吹いた唄口を有する楽器の、その音の周波数を測定して、その音名の標準ピッチからの誤差を表示する、楽器の調律を行うためのチューナであって、唄口を吹いた時に正しい音名の音となる息の方向を段階的に指示する目印、を表示するための表示装置を備えている演奏補助装置とすることにより達成される。なお前記誤差を表示すると共に、前記音の音名を表示するようにしても良い。
【0031】
楽器調律用チューナには針式メータのアナログ表示タイプのものやLCD画面を備えたデジタル表示タイプのものがあり、楽器が発する音のずれを正確に表示することが出来るものである。従って本発明の上述したようなソフトウェアをこの楽器調律用チューナで動作させるようにして、本発明のソフトウェアを動作させて唄口を吹いた時に正しい音名の音となる息の方向を段階的に指示する目印を表示画面に表示させるようにすることが可能である。或いは楽器調律用チューナに上述したプロジェクタを組み込んで、プロジェクタによって前記目印を前方に設置したスクリーンに映像として映し出すようなものとすることが出来る。
【0032】
さて上述したテレビジョン受像器やパーソナルコンピュータのディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイ、プロジェクタのスクリーン、楽器調律用チューナなどに前記目印を映し出す装置に関して、低い方の音名を示す目印の方を高い方の音名を示す目印よりも強調して表示するようにすることが出来る。これは低い方の音名の音を出す時には比較的に強く吹かせる、と言うように吹く息の強弱を示すものである。強調の付け方は、目印を大小で表わしたり、濃い薄いで表わしたり、目印を多重同心円で表わしてどの円までを塗り潰すかで強弱を付けたり、カラー表示で色を変えるなど、吹奏者にとって分かり易いものである限りは任意である。
【0033】
また前記目印をハイライトするなどして目立たせるための明示手段を備えるようにすることが出来る。吹かせようとする目印が他の目印から吹奏者に明らかに区別が付けられるようにするべく、前記制御装置が画面の表示の中でハイライト処理などを行なうように設計すれば良い。ハイライト以外には、その目印を発光させる、着色する、枠囲いする、立体化するなど、表示上で可能なことであるならばどう設計しようとも全く任意である。その対象となる目印はフルートであれば37音に対応している。従って今まさに吹かせようとする音名の音に対応する目印を目立たせることによって、吹奏者の目線は自然にこの目印に向かうので、吹奏者の反応速度を高めることが出来るのである。なおこの明示手段を操作するためのスイッチとしては、テレビジョン受像器であればリモコンのスイッチを、テレビジョン受像器やパーソナルコンピュータであれば外付けのピアノキー配列のキーボード等々を、設計過程で任意に選択することが出来る。
【0034】
この明示手段に加えて更に、運指表示を行なうための運指表示手段を備え、この運指表示された音名を前記明示手段による表示に合わせるようにしても良い。吹奏者は、前記演奏補助具の明示手段を見て息を吹く方向を定めると共に、この運指表示を見て指示されたキーを押えるようにする。すなわち運指表示に従ってキーを押えれば音の高さを設定することが出来るのである。これには前記制御装置が画面の表示の中で、フルートのキーの配列をイラストで表示して、このキーを発光させるようにする。イラストや写真でフルートの全体図を表示するようにしても良い。
【0035】
また前記明示手段に加えて更に、デジタル信号を出力し得るピアノなどの楽器からの演奏信号を受け付けて、この演奏信号が示す音名に対応する前記目印を明示手段が目立たせて表示するようにしても良い。このような楽器としては実際に外部の楽器を使用する場合と、内部的にソフトウェア的にCPU上に楽器を実現する場合とがある。なおこの演奏信号をスピーカに流すようなオプションを設けても良い。
【0036】
また前記明示手段に加えて更に、楽曲のプレーヤを備え、このプレーヤからの演奏信号を受けて、この演奏信号が示す音名に対応する前記目印を、明示手段が目立たせて表示するものとすることが可能である。テレビジョン受像器にしてもパーソナルコンピュータにしても自己の装置の中に楽曲のプレーヤを備えることが出来る。これはCD−ROMプレーヤであったりSD(商標)カードプレーヤであったり、ハードディスク内蔵型プレーヤであったりする。こうしたプレーヤで再生され出力される演奏信号が示す音名の通りに、明示手段が前記目印を目立たせて表示するようにすれば、演奏に合わせて吹奏者は本発明の自習方法を実施することが出来るのである。なおこの演奏をスピーカから出力することを止めるオプションを設けても良い。
【0037】
また前記明示手段に加えて更に、楽曲を記録するための記憶装置を備え、この記憶装置から演奏信号を読み出してこの演奏信号が示す音名に対応する前記目印を前記明示手段が目立たせて表示するものとすることが可能である。これによれば明示手段が、記憶装置から読み出した演奏信号が示す音名の通りに、前記目印を目立たせて表示する。前記記憶装置には、例えば音楽出版社や音楽教室などのWWWサイトからダウンロードした楽曲が記録される。
【0038】
次に本発明の演奏補助装置は、更に吹奏者の演奏を録音するためのまたは吹奏者を録画するための記録手段を備えているものとしても良い。この演奏補助装置を用いて練習することにより上達して行く吹奏者自身を記録して聞くことは吹奏者の励みになるものである。正しい音階が吹ける、綺麗な音が出せることが記録として残せるのも重要である。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、唄口を吹いた時に正しい音名の音となる息の方向を段階的に指示するための目印を、目で捕らえさせて唄口を吹かせることにより、フルートなどの唄口を有する楽器を、初心者でも正しい音名の音で美しい音色が出せてそのまま本格的な練習に入って行けるようにすることが出来るようになった。なお更に、ある特定の音名の音を出すべく唄口を吹いた時に同時に、その音名の美しい音が出る息の方向を指示するための目印、の方向に唄口を吹かせることによって、より一層美しい音が出せるようになった。このような教授方法、自習方法、演奏補助具や演奏補助装置は世界でも初めてものであり、これ等が音楽界に及ぼす産業上の利益には計り知れないものがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
(第1実施形態)
図1は本発明の印刷物としての演奏補助具1を正面図で表わしたものである。縦長の紙葉10に目印2,20とメモリとを印刷すると共に、これ等の目印2,20の脇に各々の音名21を記載して成る。図1から明らかであるように、この音階は一番低い「ド」から3オクターブ上の「ド」までの37音で表示されている。目印は3重円の目印2と、半音高い(低い)音を表わす黒丸の目印20とから成っている。3重円の中心円は黒丸である。これ等の黒丸は低い方に向かって1オクターブ毎に大きくなるように設けられている。すなわち低い方の音名を示す目印の方が高い方の音名を示す目印よりも強調されて設けられているわけである。
【0041】
このように構成された演奏補助具1は、壁に張り付けたり、壁から掛けたり、厚紙などに張り付けて立てるなどして利用する。この際に一番高い「ド」の音を指す目印2−4の位置と吹奏者の唇の位置(設置基準線Sを参照)とがおおよそ水平になるように位置を合わせるようにする。そして吹奏者はこの演奏補助具1からおおよそ1〜1.5メートル離れるようにして立ち位置を決める。これ等は個人個人で微調整すると良い。なおこの演奏補助具1は紙葉10であるために、折り畳んだり巻いたりして持ち運んだり収納することが出来る。
【0042】
吹奏者は目印2,20の円や黒丸やメモリを、「目で追うようにして」唄口を吹くようにするだけで、息の方向が視線に追随して、目印2,20などを目がけて吹くようになるために、正しい音名の美しい音が出せるようになる。なお低い方の音を示す目印の方を高い方の音を示す目印よりも、黒丸を大きくすることで強調して設けている。これに従って黒丸が大きい低い方の音ほど強く吹くようにすると良い。
【0043】
(第2実施形態)
本実施形態は上述の第1実施形態の紙葉10から成る演奏補助具1をスタンド仕様に構成したものである。図2に示すように、支持手段であるスタンド11は床に置く台部12に立設した長さ調節自在な脚部13の頂部に立てて固定されたものであり、このスタンド11の表面に前記演奏補助具1が張り付けられたものである。前記脚部13には調節ネジ14が設けられており、これを締め付けるようにして長さ調節した脚部13を固定する。これが本発明で言う高さ位置の調節手段である。
【0044】
前記脚部を伸縮させ、演奏補助具1の一番高い「ド」の位置を唇の位置に合わせるようにして調節ネジ14を締め付け、演奏補助具1の高さ位置を固定する。これで練習を開始することが出来る。練習する人が変わる時には、必要に応じて高さ位置を再調節するようにすれば良い。
【0045】
(第3実施形態)
本実施形態は上述した第1実施形態の紙葉10から成る演奏補助具1の小型版を用いて楽譜クリップ仕様に構成したものである。本実施形態の演奏補助具1’は、第1実施形態で用いた縦長の紙葉10に目印2,20とメモリとを印刷すると共に、これ等の目印2,20の脇に各々の音名21を記載して成るものの縮小版を用いており、これを図3の楽譜挟み15として構成したものである。楽譜挟み15は開いた楽譜をその側面部の小口で止めて不本意にはページが捲れないようにするためのものであり、合成樹脂性の楽譜挟み15の表側と成る部材を台板16として、ここに前記目印2,20等を印刷した紙葉10が貼付されているものである。台板16は支持手段である。この他の実施形態としては楽譜挟み15の台板16に直接目印2,20を印刷して成るものを上げる。
【0046】
この楽譜挟み15で開いた楽譜の小口を止めると、目印2,20等は縦に表示される。またこの演奏補助具1’は吹奏者の比較的近い場所に置かれるものであるため、上述した第1実施形態の吹奏者から比較的に離れた場所に置かれる演奏補助具1とは相似形ではあるが随分と小さいものである。本実施形態の楽譜挟み15は持ち運びや収納に便利である。また市販可能である他に各種音楽関連商品やサービスの付録としても利用することが可能である。
【0047】
本実施形態によれば、図3から明らかであるようにこの音階は一番低い「ド」から3オクターブ上の「ド」までの37音で表示されている。目印は3重円の目印2と、半音高い(低い)音を表わす黒丸の目印20とから成っている。3重円の中心円は黒丸である。これ等の黒丸は低い方に向かって1オクターブ毎に大きくなるように設けられている。すなわち低い方の音を示す目印の方が高い方の音を示す目印よりも強調されて設けられているわけである。
【0048】
(第4実施形態)
本実施形態の楽譜クリップ18は薄い金属板や合成樹脂板から成るものであって、開いた楽譜帳のページが不本意には捲れないように固定しておくための道具である。図4で示したものは弾力性を有する薄い金属板に着色を施した楽譜クリップ18がその上側に台板19を備えており、この台板19に演奏補助具17が貼付されているものである。この他の実施形態としては、台板19に直接目印22を印刷して成るものを上げる。
【0049】
本実施形態の楽譜クリップ18は上述した第3実施形態の楽譜挟み15に類似するものではあるが、目印の付け方が異なるものとなっている。すなわち楽譜クリップ18の台板19に貼付された演奏補助具17は、目印22が人の顔面を表わした具象形のマークとなっている点で異なると共に、目印22−1が頭部管の「レ」の位置に付されており、目印22−2が頭部管の「ソ」の位置に付されていると言うように、2音だけの目印から成っている点で異なる(図4)。
【0050】
本実施形態の楽譜クリップ18は小型で持ち運びに便利であり、収納時には楽譜帳のしおりと成る。また市販可能である他に、各種音楽関連商品やサービスの付録としても利用することが可能である。なおこの楽譜クリップ18の演奏補助具17の裏面に、上述した第1実施形態の紙葉10から成る演奏補助具1を小型化した相似形のもの、を設けて成るものとすることが出来る。このようにすれば好みのものを表裏で使い分けることが出来るようになる。
【0051】
(第5実施形態)
本実施形態の演奏補助具100はフルート教則本などの本101の巻末ページ102に印刷されると共に、本101から切り離せるように巻末ページ102にミシン目103が設けられているものとした(図5)。このものの使用に当っては巻末ページ102から演奏補助具100だけをミシン目103を以て切り離すようにする。そしてこれを楽譜台に載せたり、拡大コピーして壁に貼るなどして用いれば良い。なお本101から切り離すことなく本101を見開きにして使用することも可能である。
【0052】
本実施形態はそれが適用可能な本101の種類に限定されない。すなわち雑誌や蛇腹折りのパンフレットなども含まれる。またこの巻末ページ102の裏面に例えばピッコロ用の演奏補助具を印刷して設けておくなどしても良い。
【0053】
(第6実施形態)
図6は本発明のスタンドとしての演奏補助具3を正面図にて表わしたものである。このものはスタンド部分に上述した第2実施形態の台部12や調節ネジ14を備えて(図示せず)、脚部31は脚部13に類似するものとしているが、スタンド11の代わりに透明アクリル板30(透明な板状体である)を用い、これに4音だけの目印22−1〜22−4を、上述した第4施形態の顔のマークで付したものである。
【0054】
この演奏補助具3は、例えば発表会でステージ演奏を行なうと言うような場合に於いて、この演奏補助具3を練習時と同じように前方に立てて各々の目印22−1〜4が客席のどの椅子(既にオーディエンスがいるのであればその頭部)の位置に当たるのかを調べておく、と言うような使い方が出来る。透明アクリル板30を用いているのは目印22−1〜4の先方に客席が透視出来るようにするためである。実際の発表会では事前に見ておいた椅子(あるいは人の頭)を目印として吹奏するのである。なお目印22−1〜4の代わりに、第1実施形態の目印2,20を設けるようにしても良い。あるいは他の形状のものであっても良く、これは任意設計事項である。
【0055】
(第7実施形態)
次に本実施形態は図7で示すように、中間部の演奏補助具4と、上端部の運指表示部41と、下端部の鍵盤表示部43とから構成されている。中間部の演奏補助具4では目印2,20の左側に、各々の目印に一対一対応させてLEDライト40が設けられている。またこの音階に対応するように上端部の運指表示部41にもLEDライト42が設けられている。またこれ等に対応するようにして下端部の鍵盤表示部43にもLEDライト44が設けられている。このLEDライト44は鍵盤のキーの形状を呈しているが、他のLEDライト40,42は円形のものである。
【0056】
図8は上述した各部を含むブロック図であるが、演奏補助具4のLEDライト40、運指表示部41のLEDライト42、鍵盤表示部43のLEDライト44は、音階に合わせて設置されたスイッチ群45に並列接続されており、またこれ等に電力を供給するための電源46が接続されている。前記LEDライト40は明示手段の一部分を為しLEDライト42は運指表示手段の一部分を為す。なお鍵盤表示部43のLEDライト44の配列は、音域がフルートのそれと一致するように設けられており、ピアノのフルート音域を表わすために設けたものであるが、運指表示手段の一部であると見ることも可能である。
【0057】
本実施形態は次のような使い方が出来るようになっている。例えば生徒である吹奏者を演奏補助具4に向かわせ、指導者役の者が前記スイッチ群45の中から任意のスイッチを選んでON状態にすることによって、このスイッチに対応するLEDライト40,42,44が点燈する。吹奏者は演奏補助具4で点燈されたLEDライト40を「見て」それに向けて唄口を吹く。この際に指使いが不明であるならば、運指表示部41のLEDライト42の中で点燈しているものを利用する。なお鍵盤表示部43のLEDライト44の点燈も参考になる。スイッチ群45の操作にメロディーを付けるようにしても良い。生徒同士で吹奏者と指導者の役割を交替して学ぶのも面白い。なお当然のことながら指導者役の者が教師であると本格的な教授を行なうことが出来る。
【0058】
(第8実施形態)
図9で表わした本実施形態は、上述の第7実施形態のスイッチ群45の代わりに、デジタル信号を出力し得る楽器としての電子ピアノ47を配した点に特徴を有する。この電子ピアノ47に用いられているキーボード48で演奏を行うと、この電子ピアノ47から出力される演奏信号によって、その音階に合ったLEDライト40,42,44が点燈するので、吹奏者は特に演奏補助具4で点燈しているLEDライト40を「見て」それに向けて唄口を吹くようにして練習する。また他のLEDライト42,44に関しても上述した通りである。
【0059】
なお本実施形態は電子ピアノ47を含んでいるが、電子ピアノ47に接続出来るように設けた演奏補助具とする構成が実現可能である。また鍵盤表示部43のLEDライト44の配列数を電子ピアノ47に一致させて88とする設計も可能である。なお電子ピアノ47は自動演奏が可能なものであっても良く、ここから出力される演奏信号を利用することが出来る。
【0060】
(第9実施形態)
さて本実施形態は図10で示すように、テレビジョン受像器50の画面に表示される演奏補助具5に関するものである。すなわち唄口を吹いた時に正しい音名の音となる息の方向を段階的に指示する目印を、画面に表示するための制御装置に、テレビジョン受像器50の制御装置を利用している。図10は正面図で表わしたテレビジョン受像器50であるが、カードスロット51を備え、図示しない制御装置がこのカードスロット51に挿入されたカードメモリ52に記録されている画像を画面に表示するようになっている。
【0061】
そこでこのカードメモリ52に演奏補助具5の画像を記録しておく。なお見方を変えればこのような画像が記録されたカードメモリ52が演奏補助具であると言うことが出来る。このような演奏補助具5では、図示しないが明示手段は目印を画面上でハイライトさせて目立たせるようにしているため、演奏者は画面上でハイライト表示される目印を「見て」、それに向けて唄口を吹くのである。また明示手段は低い方の音階を示す目印の方を高い方の音階を示す目印よりも強調して表示するようにしている。なおここではテレビジョン受像器50を用いているが、同様のことはパーソナルコンピュータなどを用いても実現可能である。
【0062】
(第10実施形態)
そのパーソナルコンピュータとプロジェクタとを利用したものがここで説明する第10実施形態の演奏補助装置である。すなわち図11はこの実施形態の使用状態の説明図であるが、プロジェクタ61はこれに接続されたノート型のコンピュータ62の画面表示をそのままスクリーン60に投影する。符号6は拡大して表示された演奏補助具を指す。
【0063】
従って前記演奏補助具6はコンピュータ62によっていかようにも表示可能であるから、例えば目印を電飾したように見せたり、曲を演奏してそれに合わせるようにして目印を動かしたり、キーボードを押すことによって目印を動かせるようにしたり、併せて運指表示や鍵盤表示を行ったりを、プログラミングによって実現することが可能である。吹奏者は前記スクリーン60に投影される演奏補助具6を見て、唄口を吹いて練習し、所期の成果を上げることが出来る。
【0064】
(第11実施形態)
図12及び図13で表わした本実施形態は、身体の腰部等に装着可能なウェアラブルコンピュータの一機能として、演奏補助具7の表示機能を備えたものであって、眼鏡に取り付けたヘッドマウント式のディスプレイ71を装着することにより、ディスプレイ71の前方に現われる仮想スクリーン70(現実に存在するものではないが、そこにあるように見える)に演奏補助具7が表示されるため、この表示の唄口を吹いた時に正しい音名の音となる息の方向を段階的に指示するための目印を目で追って唄口を吹くことで初心者でも正しい音階で美しい音色が出せて、そのまま本格的な練習に入って行けるようにすることが出来るようになると言うものである。なお図示はしていないが演奏補助具7の表示機能は、明示手段を以て前記目印を演奏補助具7上でハイライトさせて目立たせるようにしている。
【0065】
ウェアラブルコンピュータは上述したような機能を実現するための制御部72を中心として、前記ディスプレイ71、このコンピュータをディスプレイ71を見ながら操作するタッチパッドや音声を出力するヘッドフォンや音声を入力するマイクロフォン等から成る入出力部73、このコンピュータのオペレーティングシステムOSや、演奏補助具7を表示するためのソフトウェアや、演奏補助具7のための楽曲などを記録しておくための記憶部74、上述した第8実施形態のような外部からの演奏信号を得るためのピアノ入力部76、前記記憶部74に記録してある楽曲を再生して演奏信号を得るためのプレーヤ75、前記ディスプレイ71に表示された演奏補助具7の表示に従って唄口を吹いて出した音を入出力部73で拾って録音し、後に再生して練習の評価に供するための録音部77を備えている。
【0066】
なお更に、図7の運指表示部41で表わしたような、運指表示を行なうための運指表示手段を備え、この運指表示された音階を前記明示手段による表示に合わせるように設計することが可能である。モーションセンサを備えて、このヘッドマウント式のディスプレイ71を装着した頭が振れても、仮想スクリーン70に表示されている演奏補助具7が振れないように補正する補正手段を備えることも好ましい。
【0067】
(第12実施形態)
さて本発明の教授方法の一実施形態を図14を用いて説明する。ここでは次のような道具を使用する。すなわち恰もアンテナのように伸縮自在な支持棒70の先端部に円形板の目印23を取り付けて成るものである。これもまた演奏補助具の一種であると言うことが可能である。
【0068】
その理由はこの教授方法に依る。すなわち教授者はこの演奏補助具7の支持棒70を伸長させて手で持ち、これを操って目印23を上下させ、目印23を所定の位置で止めて、吹奏者にこれを見るように指示すると共に唄口を吹かせるように指導するのである。教授者はこの吹奏者の立ち位置や身長などから、前記所定位置(この位置にある目印23をターゲットと言う)を割り出すことが出来る。図14では頭部管の「レ」と「ソ」の二つの音を出させるための位置が表わされている。
【0069】
このようにしてターゲットを定める位置が設定されたならば、教授者は吹奏者にこのターゲットを見るように指示する。吹奏者はこの指示の通りにターゲットを見ながら唄口に息を吹くのである。教授者はこの様子を観察する。次に教授者がターゲットを音階に合わせて段階的に移動させて、このターゲットを見るように指示したら、吹奏者はこの指示通りに新しいターゲットの位置に視線を移してこのターゲットを見ながら唄口に息を吹くのである。このようにすると初心者でも比較的にずっと早い時期に正しく美しい音色が出せるようになる。なおこのような演奏補助具7を使用することなく、教授者の手と腕とで本発明の教授方法を実践することが出来る。また手と腕を使用する際にあるいは演奏補助具7を利用する際に、上述した各実施形態の演奏補助具を併用することも好ましい。
【0070】
(第13実施形態)
さて本発明の自習方法の一実施形態を図15を用いて説明する。上述の第12実施形態の教授方法は自習方法としても利用可能である。すなわち唄口を吹いた時に正しい音階となる息の方向を段階的に指示するための目印を、吹奏者自らが設けて、この目印を目で追って唄口を吹くようにするのである。このようにして自習することが出来る。しかしながら吹奏者自らが正しく目印を設定しなくてはならないため、このステップをより容易なものにするものとして図15で示すような演奏補助具9を上げる。
【0071】
この演奏補助具9は上述した第6実施形態の演奏補助具3に非常に近い構成のものである。透明アクリル板90は脚部91の頂部に設けられており、この脚部91は図示しない台部12や、脚部91の高さ調節用の調節ネジ14を備えている。この透明アクリル板90と、再剥離可能な粘着層を裏面に有するステッカーとしての4音の目印24−1〜24−4とを組み合わせたものがこの演奏補助具9である。吹奏者はこの透明アクリル板90を設置する位置を自分に近づけるか遠ざけるかで、目印24−1〜24−4の間隔を変えるようにするのが良い。
【0072】
吹奏者は実際に吹奏しながら、前記透明アクリル板90に対する演奏補助具9の貼付や再剥離後の貼付によって正しい音の出る位置を決定すると、そこが正しいターゲットになるので、このターゲットを見ながら唄口に息を吹く練習を行うのである。次には目で見るターゲットを段階的に移動させて新しいターゲットの位置で唄口に息を吹くようにする。このようにして体感的に自習することが出来る。なおこのような演奏補助具9と自習方法とを初心者に有料で提供することが出来る。
【0073】
(第14実施形態)
図16で表わした本実施形態は、本発明の印刷物としての演奏補助具1’’を正面図で表わしたものである。このものは上述した第1実施形態の演奏補助具1の縦方向の音階表示(目印2,20による表示)に併せて、横方向の吹く息の方向の表示を行ったものである。縦方向に関しては、音階は一番低い「ド」から3オクターブ上の「ド」までの37音で表示するものとし、この一つ一つの音に付いて低い音名の音ほど唄口の右方に向けて、また高い音名の音ほど唄口の右方に向けて吹かせるべく、対応する目印2,20を横方向に移動させて表示するようにした。従って第1実施形態の演奏補助具1とは異なり、紙葉104上に印刷された目印2,20の列は、左上から右下への斜線上に配列されていることになるのである。
【0074】
このように構成された演奏補助具1’’は壁から掛けたり壁に張り付けたり、また厚紙などに張り付けて立てるなどして利用する。この際に一番高い「ド」の音を指す目印2−4の位置と吹奏者の唇の位置とがおおよそ水平になるように位置を合わせるようにする。その上で吹奏者はこの演奏補助具1’’からおおよそ1〜1.5メートル離れるようにして、また紙葉104の中央に来るようにして立ち位置を決める。これ等は個人個人で微調整すると良い。
【0075】
吹奏者は目印2,20の円や黒丸やメモリを、「目で追うようにして」唄口を吹くようにするだけで、息の方向が縦方向への視線の移動に追随して、目印2,20などを目がけて吹くようになるために、正しい音名の美しい音が出せるようになる。またこの際に同時に、唄口に吹き掛ける息の横方向の位置取りを意識的にコントロールするようにするのである。すなわち目印2,20の横方向のずれを意識して、音階の低い方の音ほど右方向に、また音階の高い方の音ほど左方向にと言うように、「横方向を吹き分ける」のであるが、これは目印2,20を見れば直ぐに出来ることであり、こうすることによってより一層美しい音色を奏でることが出来るのである。
【0076】
(第15実施形態)
図17及び図18で表わした本実施形態は、調律すべく演奏者が演奏した楽器の、その音の周波数を測定して、その音名の標準ピッチからの誤差を表示する、楽器の調律を行うためのチューナ92の一機能として、演奏補助具9の表示機能を備えたものである。これはフルートの唄口を模したものを台板90上に印刷したものであって、その唄口の中に音階を表わすLEDライト91を、上述した第14実施形態の目印2,20のように、左上から右下へ斜めに配設したものである。なお台板90上のLEDライト91とチューナ92とはリード線93で電気的に接続されている。
【0077】
このチューナ92は制御部94を中心として、フルートが発した音を図示しないマイクで拾ってサンプリングを行う入力部95と、このデータを展開するための記憶部96と、このデータを元に基本周期を抽出して音名の判別とピッチ誤差の算出との演算を行う制御部94とが設けられている。この制御部94は、音名の表示を行う音名表示部98と、この音名の標準ピッチからの誤差の表示を行う誤差表示部97とを制御し、またこの音名に対応するLEDライト91を点燈させる。
【0078】
従って吹奏者がある音を吹くと、制御部94は音名の判別を行ってそれを音名表示部98に表示すると共にこの音名に対応する台板90上のLEDライト91を点燈させ(図17ではLEDライト91’が点燈している)、また誤差表示部97では標準ピッチからの誤差の表示を行う。吹奏者は誤差表示部97でずれの有無や程度の確認を行い、点燈しているLEDライト91に向けて正確に吹くように練習する。また次のような使い方が出来るようになっている。例えば生徒である吹奏者を演奏補助具9に向かわせ、指導者役の者が音階に合わせて設置されたスイッチ群99(図17では図示せず)の中から任意のスイッチを選んでON状態にすることによって、このスイッチに対応するLEDライト91’が点燈する。吹奏者は演奏補助具9で点燈しているLEDライト91’を「見て」それに向けて唄口を吹く。この場合には横方向へ正しく吹くことも意識しなくてはならない。この結果は音名表示部98と誤差表示部97とに表示されるから、生徒にも直ぐに分からせることが出来る。
【0079】
(その他の実施形態)
上述した第9実施形態のテレビジョン受像器50の画面に演奏補助具5を表示するものに関して、あるいは第10実施形態のコンピュータ62の画面に演奏補助具6を表示するものに関して、画面を挟んで吹奏者に対向する者からは画面が透視可能な液晶表示装置とすることが出来る。このような液晶表示装置を対向する者から見ると何も映っておらず、これを透してただ吹奏者が見えるだけであるが、吹奏者からはこの画面には演奏補助具が映って見えることになる。
【0080】
また本発明の演奏補助具はこれをTシャツなどに印刷して利用するような可能性がある。上述した楽譜クリップ15の例からも了解されることであるが、携帯電話機のストラップに取り付けるアクセサリー等として構成することもまた可能である。
【0081】
上述した第12実施形態の教授方法は、円形板の目印23が付いた支持棒70を操って目印23を上下させ、目印23を所定の位置で止めて、吹奏者にこれを見るように指示すると共に唄口を吹かせるように指導するが、これに加えてある特定の音を出すべく唄口を吹く時に同時に、その音名の美しい音が出る息の方向を同時に示す、すなわち縦方向の指図と共に横方向の指図を行うようにすることが出来る。
【0082】
また上述した第13実施形態の自習方法に関して、唄口を吹いた時に正しい音階となる息の方向を段階的に指示するための目印を、吹奏者自らが設けて、この目印を目で追って唄口を吹くようにするのであるが、この目印を設ける際に縦方向への移動に横方向への移動を加味するようにすることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0083】
なおこの発明の演奏補助具は、単にフルートやピッコロの練習用に限られず、たぬ笛などの練習用としても利用することが出来る。目印の配置にはピタゴラス律や和音階などを適用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】第1実施形態の正面図である。
【図2】第2実施形態の説明図である。
【図3】第3実施形態の正面図である。
【図4】第4実施形態の正面図である。
【図5】第5実施形態の斜視図である。
【図6】第6実施形態の正面図である。
【図7】第7実施形態の正面図である。
【図8】同実施形態のブロック図である。
【図9】第8実施形態のブロック図である。
【図10】第9実施形態の説明図である。
【図11】第10実施形態の説明図である。
【図12】第11実施形態の説明図である。
【図13】同実施形態のブロック図である。
【図14】第12実施形態の説明図である。
【図15】第13実施形態の説明図である。
【図16】第14実施形態の正面図である。
【図17】第15実施形態の説明図である。
【図18】同実施形態のブロック図である。
【符号の説明】
【0085】
1 演奏補助具
1’ 演奏補助具
1’’ 演奏補助具
10 紙葉
11 スタンド
12 台部
13 脚部
14 調節ネジ
15 楽譜挟み
16 台板
17 演奏補助具
18 楽譜クリップ
19 台板
100 演奏補助具
101 本
102 巻末ページ
103 ミシン目
104 紙葉
2 目印
20 目印
21 音階名
22 目印
23 目印
24 目印
3 演奏補助具
30 透明アクリル板
31 脚部
4 演奏補助具
40 LEDライト
41 運指表示部
42 LEDライト
43 鍵盤表示部
44 LEDライト
45 スイッチ群
46 電源
47 電子ピアノ
48 キーボード
5 演奏補助具
50 テレビジョン受像機
51 カードスロット
52 カードメモリ
6 演奏補助具
60 スクリーン
61 プロジェクタ
62 コンピュータ
7 演奏補助具
70 仮想スクリーン
71 ディスプレイ
72 制御部
73 入出力部
74 記憶部
75 プレーヤ
76 ピアノ入力部
77 録音部
8 演奏補助具
80 指示棒
81 演奏補助具
82 透明アクリル板
83 脚部
9 演奏補助具
90 台板
91 LEDライト
92 チューナ
93 リード線
94 制御部
95 入力部
96 記憶部
97 誤差表示部
98 音名表示部
99 スイッチ群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットを設けるステップと、そのターゲットを、唄口を吹いた時に正しい音名の音となる息の方向に段階的に移動させるステップと、その移動するターゲットを目で追って唄口を吹かせるステップと、から成ることを特徴とする唄口を有する楽器の教授方法。
【請求項2】
更に、ある特定の音を出すべく唄口を吹く時に同時に、その音名の美しい音が出る息の方向を示してその方向に吹かせるステップを有する、請求項1に記載の唄口を有する楽器の教授方法。
【請求項3】
唄口を吹いた時に正しい音名の音となる息の方向を段階的に指示するための目印を設けるステップと、所要の目印を目で捕らえて唄口を吹くステップと、から成ることを特徴とする唄口を有する楽器の自習方法。
【請求項4】
更に、ある特定の音を出すべく唄口を吹く時に同時に、その音名の美しい音が出る息の方向を指示するための目印を設けてその方向に吹くステップを有する、請求項3に記載の唄口を有する楽器の自習方法。
【請求項5】
唄口を吹いた時に正しい音名の音となる息の方向を段階的に指示するための目印が設けられていることを特徴とする、唄口を有する楽器用の演奏補助具。
【請求項6】
低い方の音を示す目印の方が高い方の音を示す目印よりも強調されて設けられている、請求項5に記載の唄口を有する楽器用の演奏補助具。
【請求項7】
更に、ある特定の音名の音を出すべく唄口を吹いた時に同時に、その音名の美しい音が出る息の方向を指示するための目印が設けられている、請求項5に記載の唄口を有する楽器用の演奏補助具。
【請求項8】
スタンドや掛け具や吊り具などの支持手段を有すると共にこの支持手段に高さ位置の調節手段を備えている、請求項5または請求項7に記載の唄口を有する楽器用の演奏補助具。
【請求項9】
前記目印が、開いた楽譜が閉じないように止めておくためのクリップに設けられている、請求項5又は請求項7に記載の唄口を有する楽器用の演奏補助具。
【請求項10】
前記目印が透明な板状体に設けられている、請求項5または請求項7に記載の唄口を有する楽器用の演奏補助具。
【請求項11】
書籍のページとして設けられている、請求項5または請求項7に記載の唄口を有する楽器用の演奏補助具。
【請求項12】
更に前記目印を光らせるなどして目立たせるための明示手段を備えている、請求項5乃至請求項11の何れか一に記載の唄口を有する楽器用の演奏補助具。
【請求項13】
更に運指表示を行なうための運指表示手段を備え、この運指表示された音名を前記明示手段による表示に合わせるものである、請求項12に記載の唄口を有する楽器用の演奏補助具。
【請求項14】
さらにデジタル信号を出力し得るピアノなどの楽器からの演奏信号を受け付けて、この演奏信号が示す音名に対応する前記目印を前記明示手段が目立たせて表示する、請求項12に記載の唄口を有する楽器用の演奏補助具。
【請求項15】
テレビジョン受像器やコンピュータディスプレイなどのディスプレイを備えると共に、このディスプレイに、唄口を吹いた時に正しい音名の音となる息の方向を段階的に指示する目印、を表示するための制御装置を備えていることを特徴とする唄口を有する楽器用の演奏補助装置。
【請求項16】
前方にスクリーンを映し出すヘッドマウントディスプレイを備えると共に、このヘッドマウントディスプレイに、唄口を吹いた時に正しい音名の音となる息の方向を段階的に指示する目印、を表示するための制御装置を備えていることを特徴とする唄口を有する楽器用の演奏補助装置。
【請求項17】
スクリーンに映像を映し出すプロジェクタであって、唄口を吹いた時に正しい音名の音となる息の方向を段階的に指示する目印、を表示するための制御装置を備えていることを特徴とする唄口を有する楽器用の演奏補助装置。
【請求項18】
調律すべく演奏者が吹いた唄口を有する楽器の、その音の周波数を測定して、その音名の標準ピッチからの誤差を表示する、楽器の調律を行うためのチューナであって、唄口を吹いた時に正しい音名の音となる息の方向を段階的に指示する目印、を表示するための表示装置を備えていることを特徴とする唄口を有する楽器用の演奏補助装置。
【請求項19】
低い方の音名を示す目印の方を高い方の音名を示す目印よりも強調して表示するようにした、請求項15乃至請求項18の何れか一に記載の唄口を有する楽器用の演奏補助装置。
【請求項20】
前記制御装置は更に、ある音を出すべく唄口を吹いた時に同時に、その音名の美しい音が出る息の方向を段階的に指示する目印を表示するものである、請求項15乃至請求項18の何れか一に記載の唄口を有する楽器用の演奏補助装置。
【請求項21】
更に前記目印をハイライトするなどして目立たせるための明示手段を備えている、請求項15乃至請求項20の何れか一に記載の唄口を有する楽器用の演奏補助装置。
【請求項22】
更に運指表示を行なうための運指表示手段を備え、この運指表示された音名を前記明示手段による表示に合わせるものである、請求項21に記載の唄口を有する楽器用の演奏補助装置。
【請求項23】
さらにデジタル信号を出力し得るピアノなどの楽器からの演奏信号を受け付けて、この演奏信号が示す音名に対応する前記目印を前記明示手段が目立たせて表示する、請求項21に記載の唄口を有する楽器用の演奏補助装置。
【請求項24】
更に楽曲のプレーヤを備え、このプレーヤからの演奏信号を受けて、この演奏信号が示す音名に対応する前記目印を前記明示手段が目立たせて表示する、請求項21に記載の唄口を有する楽器用の演奏補助装置。
【請求項25】
更に楽曲を記録するための記憶装置を備え、この記憶装置から演奏信号を読み出してこの演奏信号が示す音名に対応する前記目印を前記明示手段が目立たせて表示する、請求項21に記載の唄口を有する楽器用の演奏補助装置。
【請求項26】
更に吹奏者の演奏を録音するための、または吹奏者を録画するための記録手段を備えている、請求項15乃至請求項25の何れか一に記載の唄口を有する楽器用の演奏補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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