説明

商品販売データ処理装置

【課題】商品に付された無線タグを、セキュリティを高めつつ有効に活用できるようにする。
【解決手段】無線タグのメモリへのアクセスを制限するためのパスワードを生成する。情報が読み取られた無線タグに対して、生成されたパスワードを無線通信により書き込む。無線タグに書き込まれたパスワードを、当該無線タグが付された商品の購入者に対して発行されるレシートに印字するなどのように当該購入者が認識可能な形態で出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各商品に付された無線タグの情報に基づいて商品販売データを処理するPOS(Point Of Sales)端末等の商品販売データ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、流通分野では、無線タグを利用して個体を識別するシステム、いわゆるRFID(Radio Frequency Identification)システムが注目されている。
【0003】
例えば、RFIDシステムを利用した万引防止システムや在庫管理システムは、既に実用化されている。また、バーコードの代わりに無線タグを用いたPOS(Point Of Sales)システムも、実用化に向けて研究が進められている。
【0004】
バーコードを利用したPOSシステムでは、商品に付されたバーコードを1つずつスキャナで読み取り操作しなければならない。これに対して、無線タグを用いた場合は、複数の商品にそれぞれ付された無線タグのデータを一括して読み取ることができる。したがって、会計に要する手間と時間を大幅に簡略できる。
【0005】
ただし、あらゆる商品に無線タグが付されるようになると、プライバシの侵害が問題となる。すなわち、無線タグリーダは、無線を利用して無線タグのデータを読取るので、無線通信範囲内であればある程度離れた位置からも無線タグのデータを非接触で読み取ることができる。このため、誰でも無線タグリーダさえ持っていれば、例えば他人のバッグの中を覗かなくてもその中に入っている品物の情報を知ることができる。あるいは、他人が身に付けている衣類やアクセサリなどの情報も容易に知り得る。
【0006】
このような問題を解決するために、商品購入時に、無線タグリーダによってその商品に付された無線タグを無効化する技術が種々提案されている。しかしながら、商品購入時に無線タグを無効化してしまうと、返品に対応できなくなる。
【0007】
そこで、特許文献1には、情報漏洩の危険を軽減しつつ返品に対応できるようにするために、外部から無効化指示が入力されると、所定期間が経過した後に無効となる無線タグが提案されている。
【特許文献1】特開2006−178770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、商品を購入した直後から所定期間が経過するまでの期間内は、誰でも無線タグリーダさえ持っていれば、その商品に付された無線タグの情報を読み取ることができる。このため、セキュリティの面では不十分であった。また、所定期間が経過すると、その無線タグを全く活用することができなかった。
【0009】
本発明はこのような事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、会計が済んだ商品に付された無線タグの情報漏えいを会計の直後から防止しつつ、いつでもその無線タグを有効に活用できる商品販売データ処理装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、無線通信により検出された無線タグのメモリから情報を読み取り、この情報に基づいて当該無線タグが付された商品の販売データを処理するPOS端末等の商品販売データ処理装置において、無線タグのメモリへのアクセスを制限するためのパスワードを生成するパスワード生成手段と、情報が読み取られた無線タグに対して、パスワード生成手段により生成されたパスワードを無線通信により書き込むパスワード書込手段と、このパスワード書込手段により無線タグに書き込まれたパスワードを、当該無線タグが付された商品の購入者に対して発行されるレシートに印字するなどのように当該購入者が認識可能な形態で出力するパスワード出力手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
かかる手段を講じた本発明によれば、商品に付された無線タグを、会計が済んだ商品に付された無線タグの情報漏えいを会計の直後から防止しつつ、いつでもその無線タグを有効に活用できる商品販売データ処理装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を用いて説明する。なお、この実施の形態は、商品1品毎にそれぞれ無線タグが付された状態で、各商品が販売される形態の店舗に、本発明を適用した場合である。
【0013】
図1は、本実施形態の全体構成図である。同図において、1は店舗を示しており、店舗1には、POSシステム2と万引防止システム3とが構築されている。POSシステム2は、複数台のPOS端末4と、その上位機であるストアサーバ5とによって構成されている。万引防止システム3は、一対のゲート式アンテナ6a,6bと、無線タグリーダ7と、警報用パソコン8とによって構成されている。店舗1内には、LAN(Local Area Network)9が敷設されており、このLAN9に、前記各POS端末4とストアサーバ5と警報用パソコン8とが接続されている。
【0014】
各POS端末4は、本発明に係る商品販売データ処理装置の一態様であり、チェックアウトカウンタの上、またはその近傍に設置されている。各POS端末4には、それぞれ無線タグリーダ・ライタ10が接続されている。各無線タグリーダ・ライタ10は、それぞれ平面アンテナ11の交信領域内に存在する無線タグに無線通信を利用してアクセスし、応答のあった無線タグのメモリからデータを読み取ったり、メモリにデータを書き込んだりする。各平面アンテナ11は、それぞれチェックアウトカウンタの上または下に設けられている。あるいはチェックアウトカウンタに埋設されていてもよい。
【0015】
客が購入する商品が平面アンテナ11の上方に置かれると、この商品に付されている無線タグの情報が無線タグリーダ・ライタ10によって読み取られる。無線タグには、当該タグが付されている商品を識別するための商品IDが記憶されている。無線タグの情報は、無線タグリーダ・ライタ10を介してPOS端末4に送られる。POS端末4では、この無線タグの情報に基づいて、当該無線タグが付されている商品の販売データが処理される。
【0016】
ストアサーバ5は、各POS端末4で処理された商品販売データを収集し集計して、店舗の売上や商品の在庫等を管理するコンピュータである。ストアサーバ5には、商品マスタファイル12が記憶されている。商品マスタファイル12には、各商品の商品IDに対応して、その商品IDで識別される商品の品名,単価、分類コード、分類名、仕入先コード、仕入先名等、その商品に関する種々の情報が予め設定されている。なお、商品IDは、一般には、単品コード、JANコード、PLUコード等と称される。
【0017】
一対のゲート式アンテナ6a,6bは、店舗1の出入口に取付けられている。無線タグリーダ7は、ゲート式アンテナ6a,6bの間を通過する無線タグに無線通信を利用してアクセスして、応答の有無を判断する。警報用パソコン8は、無線タグリーダ7を常時監視し、無線タグの応答有りを検出すると警報を発する。
【0018】
すなわち、本実施の形態では、店内で販売されている商品に付されている無線タグについては無線タグリーダ7に応答させ、POS端末4で会計された商品に付されている無線タグについては応答させない。こうすることにより、会計を済ましていない商品を店舗1から持ち出すと、警報用パソコン8から警報が発せられるので、万引きを防止することができる。
【0019】
また、店舗1には、Webサーバ13が設置されている。Webサーバ13の設置場所は、店舗1の内部でも外部でもどちらでもよい。WEBサーバ13は、Web上に商品データベース14と無線タグ読取プログラム15とを公開している。商品データベース14は、各商品の商品ID、品名,単価等、その商品に関する種々の情報の集合体である。商品データベース14は、商品マスタファイル12のデータに基づいて作成される。例えば、ストアサーバ5とWebサーバ13とをネットワークで接続し、商品マスタファイル12のデータのデータをストアサーバ5からWebサーバ13にダウンロードすることで、商品データベース14が作成される。あるいは、ストアサーバ5で作成された商品データベース14のデータを記憶媒体に格納し、Webサーバ13がこの記憶媒体のデータを読み取ることで、商品データベース14が作成される。
【0020】
無線タグ読取プログラム15は、各商品に付された無線タグの情報を読み取るためのアプリケーションプログラムである。
【0021】
不特定多数のユーザは、パソコン等のインターネット対応の情報処理装置(以下、ユーザ端末と称する)21を操作し、インターネット22を介してWebサーバ13にアクセスする。そうすることにより、商品データベース14を閲覧したり、無線タグ読取プログラム15をダウンロードしたりすることができる。無線タグ読取プログラム15をダウンロードしたユーザ端末21においては、無線タグリーダ23を接続することにより、無線タグの情報を読み取ることが可能となる。
【0022】
図2は、本実施の形態において、各商品にそれぞれ付される無線タグのメモリ構造図である。無線タグのメモリは、ID領域31と、ユーザ領域32と、パスワード領域33とに区分されている。ID領域31には、当該無線タグを個々に識別するためのユニークなID(タグIDと称する)が記憶されている。ユーザ領域32には、当該無線タグが付されている商品の商品IDが記憶されている。パスワード領域33には、無線タグのメモリへのアクセスを制限するためのパスワードが記憶される。
【0023】
パスワードは、2バイトで表現できる範囲(01〜FF:16進数)で生成される乱数が用いられる。このパスワードが“00”のとき、未設定とする。本実施の形態では、会計が行われていない商品に付されている無線タグは、パスワードが未設定である。会計が行われると、POS端末4の作用により、その商品に付されている無線タグにパスワードが設定される。
【0024】
図3は、POS端末4のブロック構成図である。POS端末4は、制御部本体としてCPU(Central Processing Unit)41を搭載している。そして、このCPU41に、アドレスバス及びデータバス42を介して、ROM(Read Only Memory)43、RAM(Random Access Memory)44、HDD(Hard Disk Drive)45、LANコントローラ46、タグリーダ・ライタインターフェイス47、キーボードコントローラ48、第1の表示コントローラ49、第2の表示コントローラ50、プリンタコントローラ51及びI/O(Input/Output)ポート52が接続されている。
【0025】
ROM43には、固定的なプログラム等が予め格納されている。RAM44には、種々のデータを一時的に記憶するためのワークエリアが形成されている。HDD45には、可変的なプログラムや種々のデータファイルが保存されている。LANコントローラ46には、LAN9が接続されている。タグリーダ・ライタインターフェイス47には、無線タグリーダ・ライタ10が接続されている。
【0026】
キーボードコントローラ48には、キーボード53が接続されている。第1の表示コントローラ49には、オペレータ用ディスプレイ54が接続されている。第2の表示コントローラ50には、客用ディスプレイ55が接続されている。プリンタコントローラ51には、レシート印字機能を有するプリンタ56が接続されている。I/Oポート52には、現金等を収容するためのドロワ57が接続されている。
【0027】
図4は、読取タグテーブル60の構成図である。読取タグテーブル60は、RAM44に形成されるワークエリアの1種であり、一連のテーブル番号毎に、タグIDエリア61と、商品IDエリア62とを備えている。
【0028】
図5は、各POS端末4のプリンタ56によって印字発行されるレシート70の一例を示している。レシート70には、商品タグ再利用パスワード71が印字される。商品タグ再利用パスワード71については後述する。
【0029】
図6は、各POS端末4のCPU41が実行する商品登録手順を示す流れ図である。図7は、同CPU41が実行する登録決済手順を示す流れ図である。以下、これらの流れ図を用いて1人の客が買上げる商品の会計業務について説明する。
【0030】
POS端末4のオペレータは、会計業務が発生すると、先ず、会計対象の商品を平面アンテナ11の上に置く。商品が複数ある場合は、それらをまとめて平面アンテナ11の上に置く。次いで、キーボード53に設けられている登録キーを押下する。
【0031】
アイドル状態にあるPOS端末4のCPU41は、ST(ステップ)1として登録キーが操作されるのを待機している。キーボードコントローラ48からの信号により登録キーが操作されたことを確認すると(ST1のYES)、CPU41は、ST2として読取タグテーブル60をクリアする。
【0032】
次に、CPU41は、ST3としてタグリーダ・ライタインターフェイス47を介して無線タグリーダ・ライタ10に読取開始コマンドを送信する。これにより、無線タグリーダ・ライタ10は、平面アンテナ11からタグ問合せの電波を放射させる。このとき、平面アンテナ11の交信領域内に無線タグが存在し、この問合せ電波に応答すると、無線タグリーダ・ライタ10は、この応答があった無線タグのID領域31に記憶されているタグIDを読み取り、POS端末4に通知する。
【0033】
読取開始コマンドを送信後、CPU41は、ST4としてタグIDを待機する。そして、タグリーダ・ライタインターフェイス47を介してタグIDを検出したならば(ST4のYES)、CPU41は、ST5としてそのタグIDが読取タグテーブル60に未だ記憶されていない新規のタグIDか否かを判断する。ここで、当該タグIDが読取タグテーブル60に記憶されており、新規のタグで無いと判断した場合には(ST5のNO)、CPU41は、ST4の処理に戻る。すなわち、次のタグIDが検出されるのを待機する。
【0034】
検出したタグIDが、読取タグテーブル60に記憶されていない新規のタグIDであった場合には(ST5のYES)、CPU41は、ST6としてそのタグIDで識別される無線タグに対するユーザ領域読取コマンドを無線タグリーダ・ライタ10に送信する。ユーザ領域読取コマンドには、パスワードは指定されていない。
【0035】
このユーザ領域読取コマンドに応じて、無線タグリーダ・ライタ10は、当該タグIDで識別される無線タグと無線通信を行う。このとき、当該無線タグのパスワード領域33にパスワードが未設定、すなわち“00”であった場合には、当該無線タグのユーザ領域32に記憶されているデータが無線タグリーダ・ライタ10によって読み取られる。
【0036】
ユーザ領域読取コマンドを送信後、CPU41は、ST7としてユーザ領域32のデータを待機する。そして、タグリーダ・ライタインターフェイス47を介してユーザ領域32のデータを検出したならば(ST7のYES)、CPU41は、ST8としてそのデータから商品IDを取得する。
【0037】
次に、CPU41は、ST9としてこの取得した商品IDと新規のタグIDとを関連付けて、読取タグテーブル60に格納する。また、ST10として上記商品IDで商品マスタファイル12を検索し、当該商品IDに対応して記憶されている商品情報を読み込む。そして、ST11としてこの商品情報から商品名,価格等を取得し、オペレータ用ディスプレイ54及び客用ディスプレイ55に表示する。
【0038】
しかる後、CPU41は、ST4の処理に戻る。すなわち、次のタグIDが検出されるのを待機する。なお、ユーザ領域読取コマンドを送信後、一定時間が経過してもユーザ領域32のデータを検出できなかった場合にも(ST7のNO)、CPU41は、ST4の処理に戻って、次のタグIDが検出されるのを待機する。
【0039】
したがって、会計対象の商品が平面アンテナ11の上に置かれた状態で登録キーが押下されると、この会計対象の商品に付されている無線タグは、パスワードが未設定なので、ユーザ領域32内の情報、すなわち商品IDが無線タグリーダ・ライタ10によって読み取られる。そして、この商品IDに基づいて商品販売データが処理される。
【0040】
また、この無線タグのタグIDと商品IDとが、読取タグテーブル60に格納される。このとき、会計対象の商品が平面アンテナ11の上方に複数置かれていた場合には、それぞれに付されている無線タグの情報が無線タグリーダ・ライタ10によって順次読み取られ、それぞれのタグIDと商品IDとが読取タグテーブル60に順次記憶される。また、商品IDに対応した商品情報の品名,価格等がオペレータ用ディスプレイ54及び客用ディスプレイ55に表示される。
【0041】
そこで、オペレータ用ディスプレイ54の表示内容から、オペレータは、会計対象の商品に付されている無線タグの情報が全て読み取られたかどうかを判断する。そして、読み取られたことを確認したならば、オペレータは、キーボード53に設けられている小計キーを押下する。
【0042】
タグIDの検出待機状態にあるPOS端末4のCPU41は、ST12として小計キーが操作されたか否かを判断する。そして、キーボードコントローラ48からの信号により小計キーが操作されたことを確認すると(ST12のYES)、CPU41は、ST13としてタグリーダ・ライタインターフェイス47を介して無線タグリーダ・ライタ10に読取停止コマンドを送信する。これにより、無線タグリーダ・ライタ10は、タグ問合せ電波の放射を停止する。
【0043】
読取停止コマンドを送信後、CPU41は、ST14として会計対象商品の会計金額を算出し、この会計金額をオペレータ用ディスプレイ54及び客用ディスプレイ55に表示する。
【0044】
そこでオペレータは、客から会計金額に対する代金の支払を受ける。そして、支払いを受けたならば、キーボード53に設けられている締めキーを押下する。
【0045】
商品登録処理を終えたPOS端末4は、登録決済処理に移る。すなわち、CPU41は、ST21として締めキーが操作されるのを待機している。キーボードコントローラ48からの信号により締めキーが操作されたことを確認すると(ST21のYES)、CPU41は、ST22として登録締め処理を実行する。この処理には、釣銭の演算、売上データの更新、レシートの印字、ジャーナルの記録等が含まれる。
【0046】
登録締め処理を終了すると、CPU41は、ST23として2バイトの乱数を生成し、この乱数を、無線タグのメモリへのアクセスを制限するためのパスワードpとする(パスワード生成手段)。
【0047】
パスワードpを生成後、CPU41は、ST24としてタグリーダ・ライタインターフェイス47を介して無線タグリーダ・ライタ10に書込開始コマンドを送信する。これにより、無線タグリーダ・ライタ10は、平面アンテナ11からタグ問合せの電波を放射させる。このとき、平面アンテナ11の交信領域内に無線タグが存在し、この問合せ電波に応答すると、無線タグリーダ・ライタ10は、この応答があった無線タグのID領域31に記憶されているタグIDを読み取り、POS端末4に通知する。
【0048】
書込開始コマンドを送信後、CPU41は、ST25としてテーブル番号カウンタNを“0”にクリアする。テーブル番号カウンタNは、例えばRAM44に形成されている。しかる後、CPU41は、ST26としてテーブル番号カウンタNを“1”だけカウントアップする。そして、ST27としてこのテーブル番号カウンタNが、今回の商品登録処理で読み取った無線タグの数、いわゆる読取タグ数を超えたか否かを判断する。
【0049】
テーブル番号カウンタNが読取タグ数を越えていない場合には(ST27のNO)、CPU41は、ST28として読取タグテーブル60のテーブル番号Nに記憶されているタグIDを取得する。そして、ST29としてこのタグIDが無線タグリーダ・ライタ10で読み取られるのを待機する。
【0050】
無線タグリーダ・ライタ10を介して当該タグIDが読み取られたことを検知したならば、CPU41は、ST30として当該タグIDで識別される無線タグに対するパスワード書込コマンドを無線タグリーダ・ライタ10に送信する。このコマンドには、ST23の処理で生成されたパスワードpが含まれる。このコマンドに応じて、無線タグリーダ・ライタ10は、当該タグIDで識別される無線タグと無線通信を行い、パスワード領域33にパスワードpを書き込む(パスワード書込手段)。
【0051】
パスワード書込コマンドを送信後、CPU41は、ST26の処理に戻る。すなわち、テーブル番号カウンタNをさらに“1”だけカウントアップする(ST26)。そして、読取タグテーブル60のテーブル番号Nに記憶されているタグIDを取得し(ST28)、このタグIDが読み取られたならば(ST29のYES)、このタグIDで識別される無線タグに対するパスワード書込コマンドを無線タグリーダ・ライタ10に送信する(ST30)。以後、テーブル番号カウンタNが読取タグ数を超えるまで上記ST26〜ST30の処理を繰返し実行する。
【0052】
したがって、読取タグテーブル60にタグIDが格納された個々の無線タグに対し、それぞれのパスワード領域に同一のパスワードpが書き込まれる。
【0053】
テーブル番号カウンタNが読取タグ数を超えたならば(ST27のYES)、CPU41は、ST31としてタグリーダ・ライタインターフェイス47を介して無線タグリーダ・ライタ10に書込停止コマンドを送信する。これにより、無線タグリーダ・ライタ10は、タグ問合せ電波の放射を停止する。
【0054】
書込停止コマンドを送信後、CPU41は、ST32としてパスワードpを十進数に変換する。そして、ST33としてプリンタ56を制御して、レシート70にこの十進数のパスワードpを商品タグ再利用パスワード71として印字する。すなわち、無線タグに書き込まれたパスワードpを、当該無線タグが付された商品の購入者が認識可能な形態で出力する(パスワード出力手段)。その後、CPU41は、ST34としてレシート70を発行する。
【0055】
オペレータは、POS端末4から発行されたレシート70を客に渡す。レシートを受取った客は、会計を終えた商品を持って店を出る。この商品に付されている無線タグには、そのメモリのパスワード領域33に同一のパスワードpが書き込まれている。パスワードpが書き込まれた無線タグは、無線タグリーダまたは無線タグリーダ・ライタからのユーザ領域読取コマンドに、一致するパスワードが指定されていない限り応答しない。
【0056】
そこで、警報用パソコン8は、図8の流れ図に示す手順で動作するように構成されている。すなわち警報用パソコン8は、システム立上げ後、ST41として、無線タグリーダ7に読取開始コマンドを送信する。これにより、無線タグリーダ710は、ゲート式アンテナ6a,6bからタグ問合せの電波を放射させる。そして、ゲート式アンテナ6a,6bの間を無線タグが通過し、この問合せ電波に応答すると、無線タグリーダ7は、この応答があった無線タグのID領域31に記憶されているタグIDを読み取り、警報用パソコン8に通知する。
【0057】
読取開始コマンドを送信後、警報用パソコン8は、ST42としてタグIDを待機する。そして、無線タグリーダ7を介してタグIDを検出したならば(ST62のYES)、警報用パソコン8は、ST63としてそのタグIDで識別される無線タグに対するユーザ領域読取コマンドを無線タグリーダ・ライタ10に送信する。このユーザ領域読取コマンドには、パスワードは指定されていない。
【0058】
ユーザ領域読取コマンドを送信後、警報用パソコン8は、ST44としてユーザ領域32のデータを待機する。そして、ユーザ領域32のデータを読み取れなかった場合には(ST44のNO)、ST42に戻り、次のタグIDが検出されるのを待機する。
【0059】
これに対し、ユーザ領域32のデータを読み取れた場合には(ST44のYES)、警報用パソコン8は、ST45として警報を発する。例えば警報音を鳴動させる。あるいは、警報ランプを点灯させる。その後、ST42に戻り、次のタグIDが検出されるのを待機する。
【0060】
前述したように、会計を終えた商品の無線タグには、パスワードpが書き込まれている。したがって、客が会計を終えた商品を持って店を出る際は、警報が発せられない。ところが、未会計の商品に付されている無線タグには、パスワードが設定されていない。このため、客が未会計の商品を持って店を出ようとすると、警報が発せられる。すなわち、万引防止機能が有効に働く。
【0061】
また、会計を終えた商品には、無線タグがそのまま付されているものの、この無線タグのユーザ領域32の情報を無線タグリーダで読み取るためには、そのパスワード領域33に設定されたパスワードpを知る必要がある。換言すれば、パスワードpを知られない限り、商品購入直後からその商品に付された無線タグのユーザ領域32の情報を読み取られることは無い。パスワードpは、レシート70に印字されるが、レシート70を見られない限り他人に知られることはない。したがって、商品に付された無線タグの情報から個人のプライバシが侵害されるような情報漏洩の危険性は極めて小さい。
【0062】
ところで店舗では、客が会計済の商品の返品を申し出る場合がある。その際には、本当にこの商品を自店舗で購入したかどうかの確認が必要である。たとえレシートに返品対象商品の購買履歴が記録されていたとしても、返品される商品そのものがレシートに印字された商品かどうかは定かでない。POS端末4は、このような返品業務に対処できるようになっている。
【0063】
図9は、各POS端末4のCPU41が実行する返品登録手順を示す流れ図である。以下、この流れ図を用いて1商品の返品業務について説明する。
【0064】
POS端末4のオペレータは、返品業務が発生すると、先ず、返品対象の商品を1点だけ平面アンテナ11の上方に置く。また、客に返品対象商品を購入したときのレシート70の提示を求める。しかる後、キーボード53に設けられている返品キーを押下する。
【0065】
アイドル状態にあるPOS端末4のCPU41は、ST51として返品キーが操作されるのを待機している。キーボードコントローラ48からの信号により返品キーが操作されたことを確認すると(ST51のYES)、CPU41は、ST52としてオペレータ用ディスプレイ54にパスワード入力画面80を表示させる(パスワード受付手段)。
【0066】
パスワード入力画面80の一例を図11に示す。図示するように、パスワード入力画面80には、パスワードの入力欄81と、OKボタン82とが表示されている。
そこでオペレータは、キーボード53を操作して、客が提示したレシート70に印字されている商品タグ再利用パスワード71を入力欄81に入力し、次いで、OKボタン82を入力する。
【0067】
パスワード入力画面80を表示後、CPU41は、ST53としてパスワードの入力を待機する。そして、上述したように、入力欄81に商品タグ再利用パスワード71が入力され、さらにOKボタン82が入力されたならば、CPU41は、ST54として入力欄81の商品タグ再利用パスワード71を16進数のパスワードpに変換する。
【0068】
次に、CPU41は、ST55としてタグリーダ・ライタインターフェイス47を介して無線タグリーダ・ライタ10に読取開始コマンドを送信する。これにより、無線タグリーダ・ライタ10は、平面アンテナ11からタグ問合せの電波を放射させる。このとき、平面アンテナ11の交信領域内に無線タグが存在し、この問合せ電波に応答すると、無線タグリーダ・ライタ10は、この応答があった無線タグのID領域31に記憶されているタグIDを読み取り、POS端末4に通知する。
【0069】
読取開始コマンドを送信後、CPU41は、ST56としてタグIDを待機する。そして、タグリーダ・ライタインターフェイス47を介してタグIDを検出したならば(ST56のYES)、CPU41は、ST57としてそのタグIDで識別される無線タグに対するユーザ領域読取コマンドを無線タグリーダ・ライタ10に送信する。このときのユーザ領域読取コマンドには、パスワードpを指定する(タグ情報読取手段)。
【0070】
このユーザ領域読取コマンドに応じて、無線タグリーダ・ライタ10は、当該タグIDで識別される無線タグと無線通信を行う。このとき、この無線タグのパスワード領域33にパスワードpが設定されていた場合には、そのユーザ領域32に記憶されているデータが無線タグリーダ・ライタ10によって読み取られる。
【0071】
ユーザ領域読取コマンドを送信後、CPU41は、ST58としてユーザ領域32のデータを待機する。そして、タグリーダ・ライタインターフェイス47を介してユーザ領域32のデータを検出したならば(ST58のYES)、CPU41は、ST59としてそのデータから商品IDを取得する。
【0072】
次に、CPU41は、ST60として上記商品IDで商品マスタファイル12を検索し、当該商品IDに対応して記憶されている商品情報を読み込む。そして、ST61としてこの商品情報から商品名,価格等を取得し、オペレータ用ディスプレイ54及び客用ディスプレイ55に表示する。
【0073】
しかる後、CPU41は、ST62としてタグリーダ・ライタインターフェイス47を介して無線タグリーダ・ライタ10に読取停止コマンドを送信する。これにより、無線タグリーダ・ライタ10は、タグ問合せ電波の放射を停止する。
【0074】
一方、パスワードpを指定したユーザ領域読取コマンドの送信に対して、ユーザ領域32のデータを検出できなかった場合には(ST58のNO)、CPU41は、ST63としてオペレータ用ディスプレイ54にパスワードエラーのメッセージを表示させる。
【0075】
また、読取開始コマンドの送信に対して、タグIDを検出できなかった場合には(ST56のNO)、CPU41は、ST64としてオペレータ用ディスプレイ54にタグエラーのメッセージを表示させる。これらのエラーメッセージを表示した後、CPU41は、無線タグリーダ・ライタ10に読取停止コマンドを送信する。
【0076】
したがって、返品対象商品の商品名と価格が表示された場合には、当該商品は、自店舗で販売された商品であると確定できる。これに対し、パスワードエラーやタグエラーが表示された場合には、自店舗で販売された商品であるかどうかは確定できない。この場合は、別の方法で確認することになる。
【0077】
また、本実施の形態では、無線タグが付された状態で商品が客に提供される。この無線タグの情報を客が有効に活用できることが好ましい。そこで本実施の形態では、店舗のWebサーバ13から無線タグの情報を読み取るための無線タグ読取プログラム15を配信している。
【0078】
図10は、無線タグ読取プログラム15の制御手順を示す流れ図である。この無線タグ読取プログラム15がインストールされたユーザ端末21のCPUは、無線タグ読取プログラム15が起動すると、図10の流れ図に示す手順で動作する。
【0079】
先ず、CPUは、ST71としてユーザ端末21のディスプレイにパスワード入力画面を表示する。そして、ST72としてパスワードが入力されるのを待機する。ここで、商品タグ再利用パスワード71に相当する値が入力されると、CPUは、ST73として入力された値を16進数のパスワードpに変換する。
【0080】
次に、CPUは、ST74として無線タグリーダ23に読取開始コマンドを送信する。これにより、無線タグリーダ23は、アンテナからタグ問合せの電波を放射させる。このとき、アンテナの交信領域内に無線タグが存在し、この問合せ電波に応答すると、無線タグリーダ23は、この応答があった無線タグのID領域31に記憶されているタグIDを読み取り、ユーザ端末21に通知する。
【0081】
読取開始コマンドを送信後、CPUは、ST74としてタグIDを待機する。そして、無線タグリーダ23で読み取られたタグIDを検出したならば(ST74のYES)、ユーザ端末21のCPUは、ST75としてそのタグIDで識別される無線タグに対するユーザ領域読取コマンドを無線タグリーダ23に送信する。このときのユーザ領域読取コマンドには、パスワードpを指定する。
【0082】
このユーザ領域読取コマンドに応じて、無線タグリーダ23は、当該タグIDで識別される無線タグと無線通信を行う。このとき、この無線タグのパスワード領域33にパスワードpが設定されていた場合には、そのユーザ領域32に記憶されているデータが無線タグリーダ23によって読み取られる。
【0083】
ユーザ領域読取コマンドを送信後、CPUは、ST76としてユーザ領域32のデータを待機する。そして、無線タグリーダ23で読み取られたユーザ領域32のデータを検出したならば(ST76のYES)、CPU41は、ST77としてそのデータから商品IDを取得する。
【0084】
次に、CPUは、ST78としてインターネット22を介してWebサーバ13にアクセスする。そして、このWebサーバ13で公開されている商品データベース14から、上記商品IDに対応して記憶されている商品情報を読み込む。そして、ST79としてブラウザを利用してユーザ端末21のディスプレイに商品情報を表示させる。
【0085】
しかる後、CPUは、ST80として無線タグリーダ23に読取停止コマンドを送信する。これにより、無線タグリーダ23は、タグ問合せ電波の放射を停止する。
【0086】
次に、CPUは、次商品への処理が選択されるか、保存処理が選択されるか、プログラム終了が選択されるのを待機する。次商品への処理が選択された場合には(ST81のYES)、CPUは、ST82としてパスワードを変更するか否かの指令を待機する。そして、パスワードを変更しない旨の指令を受けた場合には(ST82のNO)、CPUは、ST74の処理に進む。すなわち、無線タグリーダ23に読取開始コマンドを再度送信する。
【0087】
パスワードを変更する旨の指令を受けた場合には、CPUは、ST71の処理に進む。すなわち、ディスプレイにパスワード入力画面を表示する。そして、商品タグ再利用パスワード71に相当する値が入力され、それを16進数のパスワードpに変換したならば、無線タグリーダ23に読取開始コマンドを再度送信する。
【0088】
一方、保存処理が選択された場合には(ST83のYES)、CPUは、ST84として商品データベース14から取得した商品情報をユーザ端末21の記憶部で記憶する。以上で、読取プログラムが終了する。なお、保存処理が選択されること無くプログラム終了が選択された場合には(ST83のNO)、商品データベース14から取得した商品情報が破棄される。
【0089】
なお、パスワードpを指定したユーザ領域読取コマンドの送信に対して、ユーザ領域32のデータを検出できなかった場合には(ST77のNO)、CPUは、ST86としてパスワードエラーのメッセージを表示させる。
【0090】
また、読取開始コマンドの送信に対して、タグIDを検出できなかった場合には(ST75のNO)、CPUは、ST87としてタグエラーのメッセージを表示させる。これらのエラーメッセージを表示した後、CPUは、無線タグリーダ23に読取停止コマンドを送信する。
【0091】
したがって、購入した商品に付されている無線タグの情報を活用したい客は、ユーザ端末21を操作して、店舗1のWebサイトから読取プログラム15をダウンロードする。また、ユーザ端末21に市販の無線タグリーダ23を接続する。
【0092】
かかる状態で、読取プログラム15を起動する。そうすると、パスワード入力画面が表示されるので、所望する商品を購入したときのレシート70に印字されている商品タグ再利用パスワードを入力する。このとき、レシートやパスワードの入力に誤りがない場合は、当該商品に付されている無線タグに設定されたパスワードと、入力された商品タグ再利用パスワードから変換されたパスワードとは一致する。その結果、無線タグのユーザ領域32に記憶されている商品IDが無線タグリーダ23によって読み取られる。そして、この商品IDに対応する商品情報が商品データベース14からユーザ端末21にダウンロードされて表示される。
【0093】
次に、別の商品に付されている無線タグの情報も活用したい場合には、次商品への処理を選択する。ここで、直前の商品とレシートが異なる場合には、パスワード変更を指定する。直前の商品とレシートが同一である場合には、パスワード変更を指定しない。パスワード変更を指定した場合には、パスワード入力画面が表示されるので、該当するレシートの商品タグ再利用パスワードを入力する。
【0094】
こうすることにより、客は、商品に付されている無線タグを利用して当該商品に関わる各種の情報を商品データベース14からユーザ端末21にダウンロードできる。そして、ダウンロードした商品情報を保存することにより、例えば、家計簿の作成など、有効に活用することができる。
【0095】
ところで近年、無線タグの国際標準化が進み、グローバルで完全にユニークになる物品管理用のコード、いわゆるエレクトリック・プロダクト・コード(Electric Product Code:以下、EPCと略称する)が提案されている。そこで次に、各商品に付される無線タグをEPCタイプとした場合の実施形態について説明する。
【0096】
なお、説明の便宜上、図1〜図11を用いて説明した実施形態を第1の実施の形態と称し、次に説明する実施形態を第2の実施形態と称する。そして、この第2の実施の形態も、第1の実施の形態と同様の店舗1に適用するものとし、共通する部分には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0097】
図12は、EPCタイプの無線タグにおけるメモリ構造図である。この無線タグのメモリは、第1の実施形態と同様に、ID領域31、ユーザ領域32及びパスワード領域33に区分されている。ただし、ID領域31とユーザ領域32には、同一のEPCが記憶されている。そして、商品マスタファイル12には、各無線タグのEPCに対応して、その無線タグが付された商品の商品名,単価、分類コード、分類名、仕入先コード、仕入先名等、その商品に関する種々の情報が予め設定されている。商品データベース14も同様である。
【0098】
図13は、各POS端末4のCPU41が実行する商品登録手順を示す流れ図である。第1の実施の形態と異なる点は、ST5の無線タグリーダ・ライタ10で検出した無線タグのタグIDが、新規のタグIDであると判断した後の処理である。EPCタイプの無線タグの場合、タグIDはEPCであり、ユーザ領域32の情報と同じである。そこでCPU41は、このEPCを読取タグテーブル60に格納する(ST9)。
【0099】
このように、EPCタイプの無線タグを利用した場合には、ST6〜ST8のユーザ領域読取処理が省略される。
【0100】
図14は、各POS端末4のCPU41が実行する登録決済手順を示す流れ図である。第1の実施の形態と異なる点は、ST29の読取タグテーブル60のテーブル番号Nから取得したタグID(EPC)が無線タグリーダ・ライタ10で読み取られた後の処理である。
【0101】
EPCタイプの無線タグの場合、ID領域31の情報とユーザ領域32の情報は、いずれも同じ(EPC)である。したがって、たとえパスワード領域33にパスワードを設定して、ユーザ領域32の情報をパスワード指定なしでは読み取れないようにしても、ID領域31の情報は読み取ることができるので、結果的に、ユーザ領域32の情報(EPC)を知られてしまうこととなる。
【0102】
そこで本実施の形態では、読取タグテーブル60のテーブル番号Nから取得したタグID(EPC)が無線タグリーダ・ライタ10で読み取られたならば(ST29のYES)、CPU41は、ST101として当該タグIDで識別される無線タグに対するID書換コマンドを無線タグリーダ・ライタ10に送信する。このコマンドには、ST26の処理で取得したテーブル番号カウンタの値Nが含まれる。このコマンドに応じて、無線タグリーダ・ライタ10は、当該タグIDで識別される無線タグと無線通信を行い、ID領域31の情報をEPCからカウント値Nに書き換える(コード書換手段)。
【0103】
次いで、CPU41は、ST102としてこのカウント値Nと一致するタグIDが無線タグリーダ・ライタ10で読み取られるのを待機する。そして、無線タグリーダ・ライタ10を介して当該タグIDが読み取られたことを検知したならば、当該タグIDで識別される無線タグに対するパスワード書込コマンドを無線タグリーダ・ライタ10に送信する。このコマンドには、ST23の処理で生成されたパスワードpが含まれる。このコマンドに応じて、無線タグリーダ・ライタ10は、当該タグIDで識別される無線タグと無線通信を行い、パスワード領域33にパスワードpを書き込む(パスワード書込手段)。
【0104】
このように、無線タグに対してパスワードを書き込む際には、同時にタグIDをEPCからテーブル番号カウンタの値Nに変換する。こうすることにより、以後、この無線タグは、無線タグリーダや無線タグリーダ・ライタによって、タグID、すなわち値Nは読み取られるものの、パスワード領域33に設定されているパスワードが指定されない限り、ユーザ領域32に記憶されている情報、すなわちEPCが読み取られることは無い。したがって、商品に付された無線タグの情報から個人のプライバシが侵害されるような情報漏洩の危険性は極めて小さい。
【0105】
なお、タグIDがEPCからテーブル番号カウンタの値Nに変換されるので、POS端末4の返品登録手順は、第1の実施の形態と同様である。また、無線タグ読取プログラム15も、第1の実施の形態のものをそのまま使用することができる。さらに、万引防止システム3も、第1の実施の形態のままでよい。
【0106】
なお、この発明は前記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0107】
例えば前記実施の形態では、無線タグに書き込まれたパスワードを、当該無線タグが付された商品の購入者に対して発行されるレシート70に印字することにより、当該購入者が認識可能な形態で出力したが、パスワード出力手段はこれに限定されるものではない。例えば、POS端末4に近距離無線通信インターフェイスを設け、近距離無線通信機能を有した携帯電話のメモリにパスワードを転送し、携帯電話のディスプレイで購入者が視認できるようにしてもよい。
【0108】
また、会員カードやポイントカード等の会員番号と紐付けてEメールアドレスがストアサーバ5に登録されている場合、決済時にカードの会員番号をPOS端末4で読み取らせることによって、そのカードの会員番号に対応したEメールアドレスにパスワードを通知することも可能である。この場合も、ユーザは、パソコンや携帯電話のディスプレイでパスワードを視認できる。
【0109】
また、前記実施の形態では、パスワードを乱数としたが、パスワードの形態はこれに限定されるものではない。例えば、POS端末4で管理される取引番号や、年月日及び時刻等を使用することで、ユニークなパスワードを生成し、無線タグに設定することができる。
【0110】
また、本発明の適用は、商品を販売する店舗に限定されるものではない。例えば、書籍やCD,DVDなどのレンタルショップなどにも適用して有効である。なお、これらの店では、返品の際に、パスワード領域33のデータを任意のパスワードから未設定を示す“00”に書き換える処理ステップを追加する。こうすることにより、各商品に付された無線タグを何度も使うことができる。
【0111】
また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を組合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の第1及び第2の実施形態を示す全体構成図。
【図2】第1の実施の形態において、各商品にそれぞれ付される無線タグのメモリ構造図。
【図3】第1の実施の形態におけるPOS端末のブロック構成図。
【図4】第1の実施の形態における読取タグテーブルの構成図。
【図5】第1の実施の形態において、印字発行されるレシートの一例を示す図。
【図6】第1の実施の形態において、各POS端末のCPUが実行する商品登録手順を示す流れ図。
【図7】第1の実施の形態において、各POS端末のCPUが実行する登録決済手順を示す流れ図。
【図8】第1の実施の形態における警報用パソコンの動作手順を示す流れ図。
【図9】第1の実施の形態において、各POS端末のCPUが実行する返品登録手順を示す流れ図。
【図10】第1の実施の形態における無線タグ読取プログラムの制御手順を示す流れ図。
【図11】第1の実施の形態において、各POS端末のオペレータ用ディスプレイに表示されるパスワード入力画面の一例を示す図。
【図12】本発明の第2の実施の形態であるEPCタイプの無線タグにおけるメモリ構造図。
【図13】第2の実施の形態において、各POS端末のCPUが実行する商品登録手順を示す流れ図。
【図14】第2の実施の形態において、各POS端末のCPUが実行する登録決済手順を示す流れ図。
【符号の説明】
【0113】
2…POSシステム、3…万引防止システム、4…POS端末、5…ストアサーバ、7…無線タグリーダ、10…無線タグリーダ・ライタ、11…平面アンテナ、12…商品マスタファイル、13…Webサーバ、14…商品データベース、15…無線タグ読取プログラム、21…ユーザ端末、22…インターネット、23…無線タグリーダ、60…読取タグテーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信により検出された無線タグのメモリから情報を読み取り、この情報に基づいて当該無線タグが付された商品の販売データを処理する商品販売データ処理装置において、
前記無線タグのメモリへのアクセスを制限するためのパスワードを生成するパスワード生成手段と、
前記情報が読み取られた無線タグに対して、前記パスワード生成手段により生成されたパスワードを無線通信により書き込むパスワード書込手段と、
このパスワード書込手段により前記無線タグに書き込まれたパスワードを、当該無線タグが付された商品の購入者が認識可能な形態で出力するパスワード出力手段と、
を具備したことを特徴する商品販売データ処理装置。
【請求項2】
パスワードの入力を受付けるパスワード受付手段と、
無線通信により検出された無線タグに対して、前記パスワード受付手段で受付けたパスワードを指定してメモリ情報の読み取りを指令するタグ情報読取手段と、
をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載の商品販売データ処理装置。
【請求項3】
前記パスワード受付手段は、返品モードが選択されたとき有効であることを特徴とする請求項2記載の商品販売データ処理装置。
【請求項4】
前記パスワード出力手段は、商品販売データの明細が印字されるレシートにパスワードを印字出力することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1に記載の商品販売データ処理装置。
【請求項5】
前記無線タグは、そのメモリに記憶された個体識別のためのIDと当該タグが付された商品を識別するためのIDとが共通であり、
無線通信により検出された無線タグの前記個体識別のためのIDをユニークなコードに書き換えるコード書換手段、をさらに具備し、
前記パスワード書込手段は、前記コード書換手段により書き換えられたコードで無線タグの個体識別を行い、識別された無線タグに対してパスワードを書き込むことを特徴とする請求項1記載の商品販売データ処理装置。
【請求項6】
前記パスワードは、前記無線タグのメモリに記憶された商品を識別するためのIDの読み取りを制限するためのものであることを特徴とする請求項5記載の商品販売データ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−187491(P2009−187491A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29621(P2008−29621)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】