説明

商用車のコンプレッサクラッチのための圧力媒体制御式のクラッチアクチュエータ

本発明は、特に商用車用のコンプレッサクラッチ(12)のためのクラッチアクチュエータ(10)であって、作動ピストン(14)を備え、作動ピストンが、ケーシング(16)内に軸線の方向(18)に運動可能に配置されている。本発明に基づき、作動ピストン(14)の1つの端部(20)が、軸線の方向(18)で弾性的なダイヤフラム(22)に支持されていて、ダイヤフラムがケーシング(16)の第1の領域(24)をケーシング(16)の第2の領域(26)に対して密閉しており、この場合に、弾性的なダイヤフラム(22)が、作動ピストン(14)とは逆の側に隆起部(36)を有している。本発明は、更に商用車用のコンプレッサクラッチ(12)に関し、コンプレッサクラッチが本発明に係るクラッチアクチュエータを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
商用車のコンプレッサクラッチのための圧力媒体制御式のクラッチアクチュエータ。
【0002】
本発明は、圧力媒体制御式のクラッチアクチュエータであって、クラッチアクチュエータが作動ピストンを備えており、作動ピストンが、ケーシング内に軸線の方向に運動可能に配置されており、作動ピストンの1つの端部が、軸線の方向で弾性的なダイヤフラムに支持されており、弾性的なダイヤフラムがケーシングの第1の領域をケーシングの第2の領域に対して密閉している形式のものに関する。
【0003】
本発明は、更に、本発明に係るクラッチアクチュエータを備える、商用車のためのコンプレッサクラッチに関する。
【0004】
車両、特に商用車は、今日、車両の駆動のために用いられる駆動装置の他に、駆動装置に対応して配置される複数の補助装置を有しており、補助装置が同じく駆動装置によって駆動されるようになっている。補助装置は、車両の運転のためにしばしば必要であり、この場合に、一部の補助装置は継続的に運転され、かつ他の補助装置は断続的に運転されるようになっている。例えば、駆動装置に燃料を圧縮供給するための噴射ポンプは、駆動装置の運転中、継続的に作動しなければならない。しかしながら、圧力空気コンプレッサ、例えば、商用車において圧力空気により作動される運転ブレーキや駐車ブレーキ、つまり圧力空気作動式の運転ブレーキや駐車ブレーキへの供給のために用いられる圧力空気コンプレッサは、車両内に圧力空気がブレーキ装置の作動のために十分に蓄えられている限りにおいて、一時的に停止されてよいものである。コンプレッサの停止は、例えばクラッチを用いて行われ、クラッチは駆動装置と圧力空気コンプレッサとの間に配置されている。
【0005】
図1は、従来技術のクラッチを示している。図示のコンプレッサクラッチ12は、図面では見えないもののケーシング16内に配置されている複数の摩擦ディスクを軸線の方向18で互いに連結するようになっていて、特にクラッチアクチュエータ10を含んでおり、クラッチアクチュエータが、コンプレッサクラッチ12の作動中における軸線の方向18での摩擦ディスクの運動のために働くものである。クラッチアクチュエータ10は、圧力媒体により操作されるようになっており、この場合に、例えば圧力空気が圧力媒体として、ばね44を備える圧力室内へ導入される。作動ピストン14が、ケーシング16内で軸線の方向18に運動可能であり、この場合に、シールリブ32,34が作動ピストン14の運動中に圧力室をシールしている。作動ピストン14は軸線の方向18で支承部42によって案内され、支承部は、クラッチアクチュエータ10の作動中における作動ピストン14の回転を阻止している。更にばね44が設けられており、ばねは、支承部42を保護するために、作動ピストン14を軸線の方向18で押圧し、つまり初期荷重を与えている。ばね44は、クラッチアクチュエータ10の作動の際に通気される容積内にある。シールリング32,34は、例えば作動ピストン14に組み込まれていてよく、若しくは直接に作動ピストン14に成形されていてよく、この場合に一般的には、薄いオイル膜が、シールリブ32,34とケーシング16との間に、軸線の方向18でのシールリブ32,34と一緒の作動ピストン14の容易な運動のために準備される。従って、通気される容積のシール性は、結局、ケーシング壁に沿って形成されかつ最小の凹凸も補償するオイル膜によって保証されるようになっている。従って構造的に、滑り媒体として用いられるオイルは、クラッチアクチュエータ10の操作に用いられる圧力媒体により受け取られ、次いでクラッチアクチュエータ10の新たな操作に際して、つまり特に圧力室からの放圧の際に環境へ逃がされることになる。このことは、エコロジー的な観点から欠点であり、制御されることなく放出されたオイルが分解されにくく、多くの生物に毒作用を与えるので、環境を負荷することになり、不都合である。
【0006】
米国特許出願公開第4708229A号明細書により、請求項1の上位概念に記載の形式のクラッチアクチュエータが公知である。
【0007】
本発明の課題は、コンプレッサクラッチのための、改善された切換特性を有するクラッチアクチュエータを提供することである。
【0008】
上記課題は、独立請求項の特徴部分に記載の構成により解決される。本発明の有利な形態が従属請求項に記載してある。
【0009】
本発明に係るクラッチアクチュエータは、冒頭に述べた従来技術をベースに次のように構成されており、つまり、弾性的なダイヤフラムが、作動ピストンとは逆の側に隆起部を有している。ダイヤフラムの、作動ピストンとは逆の側における隆起部の形での材料強化が、ケーシングとの協働作用に基づき、作動ピストンを押圧する力の形成を可能にしており、その結果、作動ピストンが常に、軸線方向の規定された位置を占めている。更に、クラッチの作動のために軸線の方向で進められるべき作動距離が減少され、かつ作動ピストンの軸線方向の支承部の耐用年数が高められる。作動ピストンの端部がダイヤフラムに支持されるようになっているので、圧力媒体と滑り媒体として使用されるオイルとの間の接触が避けられる。従って、使用される圧力媒体と一緒の、オイルのコントロールされない放出が、確実に避けられる。
【0010】
有利な形態によれば、弾性的なダイヤフラムが、少なくとも部分的にケーシング内に配置されたベローを形成している。このような構成により、ダイヤフラムは、それ自体例えばクッション若しくはトーラスの形で完全な圧力室を提供するものであり、この場合に、ベロー内の圧力変化が、作動ピストンを軸線の方向でベローの膨張若しくは収縮に基づき移動させることになる。
【0011】
有利な形態によれば、弾性的なダイヤフラムが、ケーシングに対して確定される少なくとも1つの縁部を有している。この場合に選択的に、1つのダイヤフラムが、ケーシング内に固定され、ダイヤフラムは、既に1つの完全なベローを形成しており、或いはダイヤフラムは、1つのベローを形成するために、ケーシング内の1つの容積を互いに分離された2つの領域に区分けしている。後者の場合には、形成された仕切り壁は、ダイヤフラムの弾性に基づき変形可能であり、圧力変化に際して、ダイヤフラムに支持された作動ピストンを軸線の方向に運動させるようになっている。前者の場合には、ベローの位置のみがケーシング内において縁部の固定により確定される。
【0012】
有利な形態によれば、弾性的なダイヤフラムの少なくとも1つの縁部が、シールリブにより形成されている。ダイヤフラムの縁部の、シールリブとしての形成は、組み込みを容易にし、かつ圧力媒体により制御可能な、つまり圧力媒体制御式のクラッチアクチュエータの安定性を高めるものである。
【0013】
特に有利な形態によれば、弾性的なダイヤフラムが織物により強化されている。このような構成により、ダイヤフラム、ひいてはクラッチアクチュエータの耐久性が全体的に高められる。
【0014】
別の形態によれば、弾性的なダイヤフラムが、作動ピストンの支持領域にへこみを有しており、へこみ内に作動ピストンの端部が突入している。このような構成により、作動ピストンはいわばダイヤフラムの表面に支承され、従って、作動ピストンの軸線の方向での他の案内が省略されてよい。
【0015】
有利な形態によれば、弾性的なダイヤフラムがほぼ円形である。このような構成により、特に作動ピストンへの力伝達が、不都合な半径方向成分なしに可能である。
【0016】
有利な形態によれば、作動ピストンが中空ピストンとして形成されていて、コンプレッサクラッチの軸によって貫通されており、弾性的なダイヤフラムが、コンプレッサクラッチの軸の貫通案内のための開口部を有している。このような構成により、クラッチアクチュエータの特にコンパクトな構造が実現可能となっている。この場合に特に有利には、コンプレッサクラッチの軸の貫通案内のための開口部が円形である。
【0017】
次に、本発明を、添付の図面に示した特に有利な実施の形態に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来技術に基づくコンプレッサクラッチを示す図である。
【図2】本発明に係るコンプレッサクラッチを示す図である。
【図3】本発明に係るコンプレッサクラッチの詳細図である。
【図4】弾性的なダイヤフラムの平面図である。
【図5】弾性的なダイヤフラムの断面図である。
【0019】
図面において、同じ符号は、同じ若しくは同等の部分を示している。
【0020】
図1は、従来技術に基づくものでかつ既に述べてあるコンプレッサクラッチを示している。
【0021】
図2は、本発明に係るコンプレッサクラッチを示している。図1に示してある公知のコンプレッサクラッチ12との相違点として、図2に示してある本発明に係るコンプレッサクラッチ12は、弾性的なダイヤフラム22を有しており、ダイヤフラムは、縁部28,30を介してケーシング16に対して確定されていて、この場合に、ケーシング16内の、作動ピストン14を軸線の方向18で運動可能に収容する容積を、第1の領域24と第2の領域26とに区分しており、この場合に、作動ピストン14が弾性的なダイヤフラム22によって第1の領域24から隔てられている。弾性的なダイヤフラム22の縁部28,30が、ばねリング46及びワッシャー48を介してケーシング16に対して固定されている。更に支承部42が設けられており、支承部は作動ピストン14を軸線の方向18でケーシング16に対して支承している。図示のコンプレッサクラッチ12の作動のために、圧力媒体がクラッチアクチュエータ10へ第1の領域24内に供給される。結果として生じる圧力上昇に基づき、弾性的なダイヤフラム22は、作動ピストン14が軸線の方向18に移動させられるように変形される。この場合に、図示のコンプレッサクラッチ12が作動され、例えば開かれる。図示のクラッチアクチュエータ10の組立に際して、まず、弾性的なダイヤフラム22がケーシング16内に配置される。次いで、弾性的なダイヤフラム22が、ワッシャー48を用いて、止め輪として働くばねリング46によって固定される。最終的に、作動ピストン14がケーシング16内に差し込まれる。作動ピストン14の組み込みに際して、図4と関連して記載されている1つの隆起部が、ケーシング16に対して押し付けられ、隆起部は図1のばね44の機能を担うものである。従って、ばね44の誤った組み込みが排除されている。
【0022】
図3は、本発明に係るクラッチアクチュエータの詳細図である。弾性的なダイヤフラム22の縁部28若しくは30におけるシールリブ32,34が明確に見て取れる。更に、弾性的なダイヤフラム22の、作動ピストン14の端部20とは逆の側における1つの隆起部36が見られ、隆起部は、クラッチアクチュエータ10の図示の切換位置ではケーシング16の対応配置された凹部38内に留まっている。隆起部36は、図2に開示の支承部42の寿命にポジティブな影響を及ぼすために、コンプレッサクラッチ12の図示の切換位置では、凹部38と一緒に作動ピストン14の初期荷重を実現している。更に、弾性的なダイヤフラム22はへこみ50を有しており、へこみ内に作動ピストン14の端部20が受容される。このような構成により、必要に応じて支承部42が負荷軽減され、或いは省略される。
【0023】
図4は、弾性的なダイヤフラムの平面図である。図示の弾性的なダイヤフラム22は、内側の縁部28及び外側の縁部30を有していて、円形に形成されている。隆起部36は、環状に形成されることができ、或いは図4に示してあるように、個々の複数の隆起部36から形成されることができる。この場合に、隆起部36の数は変化されることができる。弾性的なダイヤフラム22の内側の縁部28は、円形の開口部を制限しており、開口部を、例えば軸が貫通されることができる。このような構成により、本発明に係るコンプレッサクラッチは、特にコンパクトに形成されることができる。弾性的なダイヤフラム22は特に、織物を含んでいてよく、織物は弾性的なダイヤフラム22の構造を特に機械的に強化し、かつその耐用年数を増大する。すなわち、弾性的なダイヤフラム22は、複合構成部材として理解されることができ、特に場合によっては縁部28,30に、別の材料から成ることができる付加的なシールリブ32,34が取り付けられている。
【0024】
図5は、弾性的なダイヤフラムの断面図である。弾性的なダイヤフラム22は、図4に見える破線に沿って描かれている。作動ピストン14の端部20の受容のためのへこみ50並びに、弾性的なダイヤフラム22の、へこみ50とは逆の側の隆起部36が明確に見られ、隆起部を介して作動ピストンの初期荷重が形成されることができる。
【0025】
本発明の、明細書、図面及び特許請求の範囲に記載の構成事項は、本発明の実施のために単独にも種々に組み合わせても用いられるものである。
【符号の説明】
【0026】
10 クラッチアクチュエータ、 12 コンプレッサクラッチ、 14 作動ピストン、 16 ケーシング、 18 軸線の方向、 20 端部、 22 弾性的なダイヤフラム、 24 第1の領域、 26 第2の領域、 28,30 縁部、 32,34 シールリブ、 36 隆起部、 38 凹部、 42 支承部、 44 ばね、 46 ばねリング、 48 ワッシャー、 50 へこみ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力媒体制御式のクラッチアクチュエータ(10)であって、クラッチアクチュエータが作動ピストン(14)を備えており、作動ピストンが、ケーシング(16)内に軸線の方向(18)に運動可能に配置されており、作動ピストン(14)の1つの端部(20)が、軸線の方向(18)で弾性的なダイヤフラム(22)に支持されており、ダイヤフラムがケーシング(16)の第1の領域(24)をケーシング(16)の第2の領域(26)に対して密閉している形式のクラッチアクチュエータにおいて、弾性的なダイヤフラム(22)が、作動ピストン(14)とは逆の側に1つの隆起部(36)を有していることを特徴とする、圧力媒体制御式のクラッチアクチュエータ。
【請求項2】
弾性的なダイヤフラム(22)がベローを形成しており、ベローが少なくとも部分的にケーシング(16)内に配置されている請求項1に記載のクラッチアクチュエータ。
【請求項3】
弾性的なダイヤフラム(22)が少なくとも1つの縁部(28,30)を有しており、縁部がケーシング(16)に対して確定されている請求項1又は2に記載のクラッチアクチュエータ。
【請求項4】
弾性的なダイヤフラム(22)の少なくとも1つの縁部(28,30)が、シールリブ(32,34)により形成されている請求項3に記載のクラッチアクチュエータ。
【請求項5】
弾性的なダイヤフラム(22)が織物により強化されている請求項1から4のいずれか1項に記載のクラッチアクチュエータ。
【請求項6】
弾性的なダイヤフラム(22)が、作動ピストン(14)の支持領域に1つのへこみ(50)を有しており、へこみ内に作動ピストン(14)の端部(20)が突入している請求項1から5のいずれか1項に記載のクラッチアクチュエータ。
【請求項7】
弾性的なダイヤフラム(22)がほぼ円形である請求項1から6のいずれか1項に記載のクラッチアクチュエータ。
【請求項8】
作動ピストン(14)が中空ピストンとして形成されていて、コンプレッサクラッチ(12)の軸によって貫通されており、
弾性的なダイヤフラム(22)が、軸の貫通案内のための開口部を有している請求項1から7のいずれか1項に記載のクラッチアクチュエータ。
【請求項9】
軸の貫通案内のための開口部が円形である請求項8に記載のクラッチアクチュエータ。
【請求項10】
商用車のためのコンプレッサクラッチ(12)において、コンプレッサクラッチ(12)が、請求項1から9のいずれか1項に記載のクラッチアクチュエータ(10)を備えていることを特徴とするコンプレッサクラッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−511001(P2013−511001A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538305(P2012−538305)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067105
【国際公開番号】WO2011/058005
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(597007363)クノル−ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (110)
【氏名又は名称原語表記】Knorr−Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D−80809 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】