説明

噴射用液体乾燥抑制装置、液体噴射装置、および噴射用液体乾燥抑制方法

【課題】ノズルへの気泡の巻き込みやメニスカスの位置の変動を抑制できる噴射用液体乾燥抑制装置および噴射用液体乾燥抑制方法、並びにこの噴射用液体乾燥抑制装置を備えた液体噴射装置を提供する。
【解決手段】印刷ヘッド10のノズル開口部Kが形成されたノズル形成面10pに当接可能な当接面40pがノズル開口部を塞ぐようにノズル形成面に密着して当接した当接状態とノズル形成面から離間した離間状態とを呈するノズル当接手段40と、ノズル内のインクLの圧力を制御する圧力制御部25,26とを備え、ノズル当接手段は、当接状態から離間状態となる過程においてノズル形成面に対する当接面の離間領域が徐々に拡大するように当接面がノズル形成面から離間するとともに、圧力制御部は、当接面がノズル形成面から離間するのに先立って、ノズル内のインクの圧力がノズル開口部における気圧に対して少なくとも負圧にならないように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴射用液体乾燥抑制装置、液体噴射装置、および噴射用液体乾燥抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射手段(例えば印刷ヘッド)から媒体(例えば用紙)に噴射用液体(例えばインク)を噴射して所定の画像(文字や図形などを含む)を形成する液体噴射装置が知られている。このような液体噴射装置は、噴射用液体を液体噴射手段から安定して噴射できるようにするため、液体噴射手段内の噴射用液体が乾燥しないように抑制する噴射用液体乾燥抑制装置が備えられている。この装置は、画像を形成しないときは、液体噴射手段に備えられ、噴射用液体を噴射するノズルの端部開口であるノズル開口部が設けられたノズル形成面に対して、当接部材を当接してノズル開口部を覆うことで、噴射用液体の乾燥を抑制する。そして、画像を形成するときは、ノズル開口部から噴射用液体を媒体に噴射できるように、当接した当接部材をノズル形成面から離間するように構成された装置である。
【0003】
この種の装置として、キャップ状の当接部材がノズル形成面との間に閉空間域を形成してノズル形成面を覆うように構成された装置(キャッピング装置)が知られている。このような装置の場合は、ノズル開口部に部材が直接当接しないので、ノズル内に形成されるメニスカス(噴射用液体と大気との界面)が当接部材によって壊される虞は少ない。しかしながら、閉空間域が飽和蒸気圧に達するまで溶媒成分が蒸発して噴射用液体が乾燥してしまう虞がある。
【0004】
そこで、噴射用液体の乾燥を抑制するために、部材が空間を介さず直接ノズル形成面に当接つまり密着してノズル開口部を覆うようにするとともに、メニスカスが安定して形成されるように工夫した技術が、種々提案されている。例えば特許文献1には、密着部材がノズル形成面に当接するとき、ノズル内の噴射用液体を加圧してメニスカスを通常の位置から密着部材側に近づけることで、密着部材が当接するときにノズル開口部に空気(気泡)が押し込まれないようにするインク乾燥防止装置が提案されている。あるいは特許文献2には、密着部材がノズル形成面に当接するとき、逆にノズル内の噴射用液体を負圧にしてメニスカスを通常の位置からノズル内に引き上げることで、メニスカスが密着部材に当接しないようにする液体吐出装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−292885号公報
【特許文献2】特開2009−029113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の開示技術は、気泡の混入は抑制できるものの、密着部材とメニスカスとが接触しやすく、接触した瞬間に密着部材との間に生じる毛細管現象によって、噴射用液体がノズル開口部から滲出してノズル形成面に広がってしまう虞がある。従って、この滲出した噴射用液体が増粘あるいは乾燥固化することによって、密着部材がノズル形成面から離れる時に多数のノズル開口部から噴射用液体を引き出してメニスカスの位置を変化させたり、ノズル形成面を汚したりしてしまうなどの不具合を生じ易くしていた。
【0007】
また、特許文献2の開示技術は、実際には噴射用液体をノズルに供給する供給口からの流路長差などに起因してノズル内の噴射用液体に加わる負圧が均一でなく、全てのノズルについてメニスカスを均一に引き上げることは困難であった。従って、ノズル開口部からの噴射用液体の滲出は抑制できるものの、メニスカスを引き上げられなかったノズルは負圧が大きくなっているため、密着部材が当接するとき気泡が巻き込まれやすいという不具合があった。また、負圧の状態で密着部材をノズル形成面から離すと、移動する密着部材との間でメニスカスの引き合いが生じ、メニスカスの形成位置を不安定にさせてしまう虞があった。この結果、画像形成時に噴射用液体がノズル開口部から正しく噴射するための通常位置と異なる位置にメニスカスが形成されるために、所謂ドット抜けが発生するという課題があった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。その目的は、噴射用液体の乾燥を抑制する噴射用液体乾燥抑制装置において、ノズルへの気泡の巻き込みやメニスカスの位置の変動を抑制できる噴射用液体乾燥抑制装置及び噴射用液体乾燥抑制方法、並びにこの噴射用液体乾燥抑制装置を備えた液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の噴射用液体乾燥抑制装置は、ノズル形成面に形成されたノズル開口部から噴射用液体を噴射するノズルを有する液体噴射手段と、前記ノズル形成面に当接可能な当接面を有し、当該当接面が、前記ノズル開口部を塞ぐように前記ノズル形成面に密着して当接した当接状態と、前記ノズル形成面から離間した離間状態と、を呈するノズル当接手段と、前記ノズル内の前記噴射用液体の圧力を制御する圧力制御手段と、を備えた噴射用液体乾燥抑制装置であって、前記ノズル当接手段は、前記当接状態から前記離間状態となる過程において前記ノズル形成面に対する前記当接面の離間領域が徐々に拡大するように前記当接面が前記ノズル形成面から離間するとともに、前記圧力制御手段は、前記当接面が前記ノズル形成面から離間するのに先立って、前記ノズル内の前記噴射用液体の圧力がノズル開口部における気圧に対して少なくとも負圧にならないように制御する。
【0010】
この構成によれば、ノズル開口部に対して当接面が、例えば斜めの状態を呈しながら離間することになるので、ノズル開口部において当接面との間に微小な隙間が形成される。同時に、ノズル内の噴射用液体に対しては負圧を解除するかもしくは加圧することになるので、ノズル内の噴射用液体はノズル開口部に向かって移動する。このとき、噴射用液体は、巻き込まれた気泡分だけ流動抵抗が減少しているので、ノズル内を速く移動する。この結果、巻き込まれた気泡も噴射用液体と一緒に速く移動し、噴射用液体がノズル開口部から飛び出す際にこの微小な隙間に排出される。こうして、気泡を排出することによってメニスカスを好ましい位置に形成することができる。一方、ノズル開口部から飛び出した噴射用液体は、その表面張力や流動抵抗によって微小な隙間を通過することは困難なため、排出が抑制される。この結果、消費される噴射用液体の液量を抑制することができる。
【0011】
また、当接面が離間するとき、ノズル内の噴射用液体を加圧された状態、もしくは負圧が解除された状態にすることによって、ノズルと当接面との間で噴射用液体の引っ張り合いを抑制する。従って、離間時において、噴射用液体が破断されたときに形成されるメニスカスに加わる衝撃を弱めることができるので、ノズルへの気泡の巻き込みや形成されるメニスカスの位置の変動を抑制することができる。
【0012】
本発明の噴射用液体乾燥抑制装置において、前記液体噴射手段は、前記圧力制御手段によって前記噴射用液体の圧力が共通に制御される複数の前記ノズルを有し、前記ノズル当接手段は、複数の前記ノズルに対応する複数の前記ノズル開口部を塞いだ前記当接状態から前記離間状態となる過程において同時に複数の前記ノズル開口部を開放するように前記当接面が前記ノズル形成面から離間する。
【0013】
この構成によれば、例えばノズル当接手段の当接面が先に離間してしまい、その当接面との間における噴射用液体の通過が困難な微小な隙間の形成状態が過ぎたノズルから、加圧されもしくは負圧が解除されて生じる噴射用液体の滲み出しを、複数のノズルにおいて同時に当接面の離間を行うことによって抑制することができる。この結果、噴射用液体の消費を抑制するとともに、形成されるメニスカスの位置の変動を抑制できる。
【0014】
本発明の噴射用液体乾燥抑制装置において、複数の前記ノズル開口部は、前記ノズル形成面にノズル列を呈するように一方向に配列され、前記ノズル当接手段は、前記当接状態から前記離間状態となる過程において前記ノズル列が配列された一方向と直交する方向の一方側から他方側に向けて前記離間領域が徐々に拡大するように前記当接面が前記ノズル形成面から離間する。
【0015】
この構成によれば、ノズル当接手段は、ノズル列と直交する方向の一方側から他方側に向けて離間領域が徐々に拡大するように当接面を離間させることができるので、ノズル列を呈する複数のノズルに対して、当接面を最小幅の当接面とすることができる。
【0016】
本発明の噴射用液体乾燥抑制装置において、前記液体噴射手段は、前記ノズル形成面に複数の前記ノズル列を有し、前記ノズル当接手段は、前記ノズル列毎に前記当接面が前記ノズル形成面から離間するとともに、前記圧力制御手段は、前記複数のノズル列のそれぞれに対して、前記当接面が前記ノズル形成面から離間するのに先立って、前記ノズル内の前記噴射用液体の圧力がノズル開口部における気圧に対して少なくとも負圧にならないように制御する。
【0017】
この構成によれば、ノズル列が複数であっても、当接面が離間するとき、ノズル列毎に加圧もしくは負圧の解除を行うので、それぞれのノズル列において当接面が離間するタイミングに合わせて加圧もしくは負圧を解除することができる。従って、噴射用液体の消費を抑制するとともに、形成されるメニスカスの位置の変動を抑制できる。
【0018】
本発明の噴射用液体乾燥抑制装置において、前記複数のノズル列は平行に配列されると共に、前記ノズル当接手段は、前記当接状態から前記離間状態となる過程において前記複数のノズル列が配列された一方向と直交する方向の一方側から他方側に向けて前記離間領域が徐々に拡大するように前記当接面が前記ノズル形成面から離間する。
【0019】
この構成によれば、複数のノズル列に対して全て同じ方向から当接面が離間するので、例えば、複数のノズル列に対してノズル形成面の端に位置するノズル列から順番にノズル開口部を開放するように当接面をノズル形成面から離間することができる。従って、ノズル当接手段は、当接面を連続する一つの平面で形成することができる。この結果、安定した平坦度を有する当接面を容易に形成することができるので、ノズル開口部を確実に塞いだり開放したりすることができ、ひいては複数のノズル列のそれぞれに対して、離間時において形成されるメニスカスの位置の変動を抑制することができる。
【0020】
本発明の噴射用液体乾燥抑制装置において、前記ノズル当接手段は、前記ノズル列と交差する方向に分割された複数の前記当接面を有し、前記複数の当接面のそれぞれが、前記複数のノズル列のうち少なくとも一つの前記ノズル列に対して前記当接状態と前記離間状態とを呈する。
【0021】
この構成によれば、複数に分割された当接面のそれぞれによって、複数のノズル列に対して当接面をノズル開口部から同時に離間することができる。この結果、例えば、圧力制御部は複数のノズル列に対して、前記ノズル内の前記噴射用液体の圧力を同時に制御することになるので、前記ノズル内の前記噴射用液体の圧力を制御するタイミングをノズル列毎に調節する必要がない。従って、圧力制御を容易かつ適切に行うことができるので、ひいては離間時において形成されるメニスカスの位置の変動を抑制することができる。
【0022】
本発明の噴射用液体乾燥抑制装置において、前記ノズル形成面および前記当接面は、前記噴射用液体に対して撥液性を有し、前記当接面の撥液性は、前記ノズル形成面の撥液性よりも高い。
【0023】
この構成によれば、ノズル開口部からの当接面側への噴射用液体の滲み出しを抑制できるので、気泡の排出時に同時に排出される噴射用液体の消費を抑制することができるとともに、形成されるメニスカスの位置の変動を抑制することができる。
【0024】
本発明の噴射用液体乾燥抑制装置において、前記液体噴射手段に対して前記噴射用液体を供給する供給手段を有し、前記圧力制御手段は、前記供給手段における前記噴射用液体の圧力を制御することによって、前記ノズル内の前記噴射用液体の圧力を制御する。
【0025】
この構成によれば、液体噴射手段におけるノズル内の噴射用液体に対して加圧したり負圧を解除したりすることを容易に行うことができる。従って、形成されるメニスカスの位置の変動を抑制することができる。
【0026】
上記目的を達成するために、本発明の液体噴射装置は、上記構成の噴射用液体乾燥抑制装置と、噴射用液体の噴射対象物となる媒体を前記噴射用液体乾燥抑制装置が備える液体噴射手段に対して相対的に移動する移動手段と、を有する。
【0027】
この構成によれば、上記構成の噴射用液体乾燥抑制装置が奏し得る作用効果と同様の作用効果を奏することができる。
上記目的を達成するために、本発明の噴射用液体乾燥抑制方法は、液体噴射手段における噴射用液体を噴射するノズルのノズル開口部が形成されたノズル形成面に対して当接可能な当接面を有するノズル当接手段が、前記当接面を前記ノズル形成面に対して前記ノズル開口部を塞ぐように密着させた当接状態から、前記ノズル形成面から離間した離間状態に移行する過程において、前記ノズル当接手段における前記当接面を、当該当接面における前記ノズル形成面に対する離間領域が徐々に拡大するように前記ノズル形成面から離間させるとともに、前記当接面が前記ノズル形成面から離間するのに先立って、前記ノズル内の前記噴射用液体の圧力がノズル開口部における気圧に対して少なくとも負圧にならないように、前記ノズル内の前記噴射用液体の圧力を制御する。
【0028】
この方法によれば、上記構成の噴射用液体乾燥抑制装置が奏し得る作用効果と同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1実施形態における噴射用液体乾燥抑制装置を備えた液体噴射装置の概略構成を示す斜視図。
【図2】(a)は印刷ヘッドを上方から見た平面図、(b)および(c)は(a)におけるB−B線矢視断面図を含む噴射用液体乾燥抑制装置の説明図。
【図3】(a)(b)(c)(d)は従来の噴射用液体乾燥抑制装置の離間時におけるインクの挙動説明図。
【図4】(a)(b)(c)(d)(e)は第1実施形態の噴射用液体乾燥抑制装置の離間時におけるインクの挙動説明図、(f)は従来の噴射用液体乾燥抑制装置の離間時におけるインクの挙動説明図。
【図5】第2実施形態で、(a)(b)(c)はノズル列が2つの場合においてノズル当接手段の構成例を説明する説明図。
【図6】第2実施形態で、(a)(b)(c)はノズル列が4つの場合においてノズル当接手段の構成例を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した実施形態について、図を用いて説明する。図1は、第1実施形態の噴射用液体乾燥抑制装置(以降、単に「乾燥抑制装置」)を有する液体噴射装置としての印刷装置100の概略構成図である。図示するように、印刷装置100は、噴射用液体としてのインクを噴射する液体噴射手段としての印刷ヘッド10を有し、この印刷ヘッド10から、印刷ヘッド10に対して相対的に搬送移動する媒体としての用紙Sに向けてインクを噴射して画像を形成するように構成されている。なお、媒体は特に用紙(紙)に限られるものでなく、セラミックやガラス、あるいは木、金属、樹脂、布など他の素材で形成されたものであってもよい。
【0031】
用紙Sは、図示しない給紙トレイから供給される。そして、図示しない駆動手段(モーターなど)によって回転駆動される紙送りローラー31と従動ローラー32とによって挟持され、印刷ヘッド10に対して対向配置されたプラテン(用紙Sの支持台)33との間を通過するように搬送される。印刷ヘッド10には、インクを噴射するノズル(不図示)が設けられ、このノズルのそれぞれのノズル端部に位置するノズル開口部Kから、搬送中の用紙Sに対して、形成する画像に応じたインク滴16が噴射される。なお、本実施形態では、重力方向を下方向、反重力方向を上方向とし、下方向にインク滴16が噴射されるようになっている。
【0032】
ノズル開口部Kは、印刷ヘッド10の下側に用紙Sに対向するように備えられた略平坦なノズル形成面10pに設けられている。本実施形態では、ノズルは複数設けられるとともに、複数のノズル開口部Kは、搬送される用紙Sの搬送方向であるY方向と交差するX方向に沿ってほぼ一列に配列されたノズル列を呈するように形成されている。また、ノズル開口部Kは、ほぼ用紙Sの幅方向に渡って形成されている。従って、本実施形態は、所謂ラインヘッド形式の印刷装置100である。
【0033】
その後、プラテン33を通過した用紙Sは、図示しない駆動手段(モーターなど)によって回転駆動される排紙ローラー34と従動ローラー35とによって挟持されてY方向に搬送され、最終的に印刷装置100から図示しない排紙トレイなどに排出される。従って、少なくとも紙送りローラー31と排紙ローラー34とが、用紙Sを印刷ヘッド10に対して相対的に移動させる移動手段30として機能する。
【0034】
また、印刷装置100には、図示するように、印刷ヘッド10に対して噴射するインクLを供給する供給手段としてのインク供給部20が備えられている。インク供給部20は、印刷ヘッド10に設けられた2つの供給口11,12の各々にインクLを供給する2つの供給路を有している。具体的には、供給するインクLを貯留したインクタンク21,22と、インクタンク21,22からインクLを運ぶための配管23,24と、が設けられ、供給口11,12にそれぞれインクLを供給する。
【0035】
本実施形態において、配管23,24の途中には、印刷ヘッド10に供給されるインクLの圧力を制御する圧力制御部25,26が設けられている。従って、供給口11から印刷ヘッド10の各ノズルに供給されるインクLは、圧力制御部25によって、また、供給口12から印刷ヘッド10の各ノズルに供給されるインクLは、圧力制御部26によって、それぞれその圧力が制御されるようになっている。
【0036】
圧力制御部25,26は、ローラーが可撓性のチューブを押圧しながら回転することによってチューブ内のインクLを回転方向に押し出す方式のポンプや、ダイヤフラム方式のポンプなどの周知のポンプを備え、印刷ヘッド10に供給されるインクLの圧力を制御する。あるいは、印刷ヘッド10(ノズル)との水頭差を利用して、印刷ヘッド10に供給するインクLの圧力を制御することもできる。さらには、これらをバルブによって組み合わせた構成とすることによって、印刷ヘッド10に供給されるインクLの圧力を制御するようにしてもよい。もとより、印刷ヘッド10に供給されるインクLの圧力を制御できるものであれば、これ以外の構成を採用することができる。なお、本実施形態の圧力制御部25,26は、供給するインクLに対して基準となる圧力(ここでは大気圧)に対して加圧から減圧(負圧)までの所定の範囲で圧力を制御できるようになっている。
【0037】
また、印刷装置100には、用紙Sに画像を形成しないときなどにおいてノズル内のインクLの乾燥を抑制するため、図示するように、ノズル当接手段40が備えられている。ノズル当接手段40は、当接面40pが形成された当接部材41と、この当接部材41を保持するとともに、当接部材41の当接面40pの凡そ全体をノズル形成面10pに当接させるための弾性部材42と、弾性部材42を保持するプレート43とを有している。
【0038】
プレート43は駆動装置45によって上下方向に移動されるように構成されている。一方、本実施形態においては、印刷ヘッド10は、図示しないスライド機構によって用紙Sに上側から対向する位置とノズル当接手段40の当接面40pに上側から対向する位置との間をX方向にスライド移動するように構成されている。従って、ノズル当接手段40は、当接面40pと対向するようにX方向にスライド移動した印刷ヘッド10に対して上下移動することによって、印刷ヘッド10のノズル形成面10pに当接面40pを当接させたり離間させたりできるようになっている。
【0039】
また、印刷装置100は、制御装置50を備えている。制御装置50は、圧力制御部25,26を制御することによって、供給口11,12から供給されるインクLを加圧したり減圧したりする。こうすることによって、印刷ヘッド10におけるノズル内のインクLの圧力を調節できるようになっている。従って、圧力制御部25,26は、制御装置50によって制御されることによって、圧力制御手段として機能する。また、制御装置50は、駆動装置45を制御してノズル当接手段40を上昇移動および下降移動させる。
【0040】
なお、制御装置50は、これ以外に、印刷ヘッド10に対して、加圧手段17(図2(b)参照)を制御して、形成する画像に応じた液量のインク滴16をノズル開口部Kから噴射させるとともに、紙送りローラー31および排紙ローラー34の回転を制御する。また、印刷装置100における各種動作(例えば、印刷ヘッド10のスライド移動)を制御する。
【0041】
従って、本実施形態の印刷装置100において、圧力制御部25,26、ノズル当接手段40、駆動装置45、および制御装置50は、印刷ヘッド10におけるノズル内のインクLの乾燥を抑制する乾燥抑制装置KYSとして機能する。具体的に、乾燥抑制装置KYSが印刷装置100においてノズル内のインクLの乾燥抑制を行う場合は、まず印刷ヘッド10を図示しないスライド機構によってノズル当接手段40と対峙する位置になるまでX方向に移動させる。そして、ノズル当接手段40を駆動装置45によって上昇させ、各ノズル開口部Kの全周領域に当接面40pが密着して各ノズル開口部Kが大気開放されない個別に塞がれた状態となるように、当接面40pをノズル形成面10pに当接させる。こうして、ノズル内のインクLは大気と接触しない密着状態となるため、乾燥が抑制されるようになっている。
【0042】
次に、印刷装置100において、このようにインクLの乾燥を抑制する乾燥抑制装置KYSを構成するノズル当接手段40の動作について、図2を用いて具体的に説明する。図2(a)は、ノズル当接手段40に対峙する位置にスライド移動した印刷ヘッド10を上方向から見た状態で示した平面図で、図2(b),(c)は、図2(a)におけるB−B線矢視断面図である。図2(b)は、ノズル当接手段40が上昇する前の状態であって、当接面40pがノズル形成面10pから離間した離間状態を示し、図2(c)は、ノズル当接手段40が上昇して、当接面40pがノズル形成面10pに密着した当接状態を示している。従って図2(b),(c)は、本実施形態の乾燥抑制装置KYSの説明図でもある。
【0043】
本実施形態では、図2(a),(b)に示すように、印刷ヘッド10には、各供給口11,12に供給されたインクLを噴射する9個のノズルNL1〜NL9が、それぞれの供給口11,12に対して設けられている。そして、各ノズルNL1〜NL9の端部開口となる各ノズル開口部K1〜K9は、X方向に沿う一方向に平行に配列された2つのノズル列NRを呈するとともに、各ノズル列NRは、ノズル形成面10pにおいてY方向に所定の間隔をあけて並んで設けられている。もとより、これは本実施形態についての説明を判りやすくするためであって、1つのノズル列や2つよりも多いノズル列(供給口)が設けられていることとしてもよい。また、ノズル数(ノズル開口部数)も、1つのノズル列において1つあるいは更に多数(通常は、例えば数十個から数千個)のノズル(ノズル開口部)が設けられていることとしてもよい。なお、本実施形態の説明において、ノズルNL1〜NL9を区別しない場合はノズルNLと呼ぶことにする。また、ノズル開口部K1〜K9を区別しない場合は、ノズル開口部Kと呼ぶことにする。
【0044】
この2つのノズル列NRにおいて、各ノズルNLには、圧力制御部25,26によって所定の圧力に調節されたインクLが供給口11,12から印刷ヘッド10内に設けられたインク流路を経由して供給されるようになっている。インク流路は、各ノズルNLについてそれぞれ形成されている。ここで、ノズル形成面10pに設けられた2つのノズル列NRのうち、供給口12に供給されたインクLがノズル開口部K1から噴射されるまでのインク流路について、図2(b)を用いて説明する。もとより、他のノズルNL2〜ノズルNL9についても、同様なインク流路が形成されている。また、供給口11に供給されたインクLが各ノズル開口部Kから噴射されるまでのインク流路についても、供給口12と同様なインク流路が形成されている。
【0045】
図2(b)に示したように、圧力制御部26を経由し、供給口12から供給されたインクLは、まずX方向に延在する共通インク室13に流入する。共通インク室13は、各ノズルNLへインクLを安定して供給するためのリザーバーとして機能するものである。その後、共通インク室13に流入したインクLは、共通インク室13と連通する連通流路14を介して加圧室15に流入し、さらに、この加圧室15と連通しているノズルNL内に導かれるようになっている。従って、各ノズルNL内のインクLは、圧力制御部26によってその圧力(背圧)が共通に制御されるように構成されている。なお、加圧室15には電歪素子や発熱素子などからなる加圧手段17が設けられ、加圧室15内のインクLを加圧するように構成されている。そして、加圧手段17によって加圧されたインクLは、加圧室15と連通して形成されたノズルNL1を介して、ノズル形成面10pに設けられたノズル開口部K1から噴射するようになっている。
【0046】
さて、ノズル当接手段40は、図2(b)に示したように、当接面40pがノズル形成面10pに当接する前の離間状態においては、Y方向に向かって下側に傾斜する1つの平面状の傾斜面となるように形成されている。具体的には、本実施形態では、当接面40pが形成された当接部材41は、平板上の合成ゴム(例えば、CR(クロロプレン)ゴムやEPDM(エチレンプロピレンジエン)ゴム)等の弾性部材で形成されている。また、弾性部材42は、Y方向に向かって厚さが徐々に薄くなった形状を有するとともに、当接部材41よりも大きな弾性変形が得られるスポンジ状に加工された樹脂(合成樹脂)やゴム(合成ゴム)などで形成されている。そして、当接部材41は弾性部材42に接着等によって固定され、さらに弾性部材42はプレート43に接着等によって固定されている。
【0047】
そして、図2(c)に示すように、ノズル当接手段40は、インクLの乾燥を抑制するために上昇して、当接面40pがノズル形成面10pに密着するように当接する。言い換えれば、当接部材41における当接面40pの凡そ全体がノズル形成面10pに密着して当接するように、当接部材41および弾性部材42がそれぞれ変形(弾性変形)するようになっている。こうして密着して当接することによって、各ノズル開口部Kは、1つずつ個別にその全周領域が塞がれるようになっている。
【0048】
次に、印刷装置100では、このように構成された乾燥抑制装置KYSにおいて、ノズル当接手段40の当接面40pがノズル形成面10pから画像形成のために離間するとき、各ノズルNLに形成されるメニスカスの位置を安定させるように離間動作する。以下この動作について、図4を用いて具体的に説明する。なお、この動作についての説明に対する理解を容易にするため、まず図3(a)(b)(c)(d)を参照して、従来の乾燥抑制装置KYSについて、当接状態から離間状態になる過程におけるメニスカスの挙動を簡単に説明する。なお、図3は、各ノズルNLのうち代表して一つのノズルNL1について、その部分断面を示した図であり、印刷ヘッド10(ノズル形成面10p)に対して当接部材41(当接面40p)が当接した状態(図3(a))から離間した状態(図3(d))までの過程におけるインクLの挙動を示す説明図である。
【0049】
さて、従来技術では、当接面40pを密着して当接させる状態において、圧力制御部25,26の制御によって、ノズルNL1内および加圧室15内のインクLに対して、ノズル開口部K1における気圧(大気圧)よりも低い負圧が印加されるようにしていた。こうすることで、ノズルNL1内のインクLに対して負圧力BFを発生させ、この負圧力BFによって、メニスカスMSをノズルNL1内において引き上げ、当接面40pの当接時においてノズルNL1への気泡の巻き込みを防止していたのである。しかしながら、前述するように、実際にはインクLに加わる負圧は各ノズルNLにおいて均一でなく、各ノズルNL全てにおいてメニスカスMSを引き上げることは困難であった。従って、図3(a)に示すように、例えば、ノズルNL1の先端部分のインクLがノズル開口部K1において当接部材41に接触して付着する場合が生ずる。
【0050】
そして、この場合において、従来は、当接部材41の当接面40pが、ノズル形成面10pと密着した状態から、ノズル形成面10pに対して略平行状態を維持したまま離間するようになっていた。このように当接面40pが略平行状態で離間する場合は、図3(b)に示すように、当接面40pに付着したインクLは、その付着部分が負圧力BFに抗しながら付着力MFによって均等に引っ張られることになり、インクLに対して部分的に大きなせん断力が発生し難い状態となる。従ってインクLは付着力MFによって破断することなく引っ張られていくことになる。
【0051】
そして、ノズルNL1から引っ張られて引き出されたインクLは、当接部材41の下方向への移動に伴って引き出された液量が多くなるので、引き出されたインクLをノズルNL1内に引き込もうと作用する負圧力BFが次第に大きくなる。この結果、大きくなる負圧力BFと、この反力である付着力MFとの引っ張り合いによって、インクLは図3(c)に示したようについに破断されることになる。
【0052】
この結果、インクLは、破断時において大きな値を呈している負圧力BFによってノズルNL1内に引き戻されるように強く引っ張られるので、メニスカスMSの位置はノズルNL1内において一旦大きく後退するとともに、メニスカスMSに対して衝撃が加わることになる。そして、この加わる衝撃などに起因して、ノズルNL1内におけるインクLには振動が発生し、図3(d)に示したように、形成されるメニスカスの位置は一定な位置に定まらず不安定となる。また、メニスカスMSが大きく後退するので、このときノズルNL1内への気泡の巻き込みなどが発生し易くなる。このような状態が発生すると、画像形成時においてインクLがノズル開口部K1から正しく噴射されないことになり、所謂ドット抜けを発生させる虞が生じるのである。
【0053】
また、当接面40pには、図3(d)に示したように、破断して付着したインクLが残インク18として残留することになる。そして、この残留した残インク18が増粘あるいは固化することによって、当接面40pが再びノズル形成面10pに当接した場合、この増粘あるいは固化した残インク18がノズル形成面10pを汚したりしてしまうなどの不具合を生じ易くする虞も生じるのである。
【0054】
そこで、本実施形態では、前述するように、ノズル当接手段40が、離間状態においてノズル形成面10pに対して傾斜する当接面40pを備えるようにした。こうすることによって、上記の課題を解決するように乾燥抑制装置KYSを作用させることができる。以下、本実施形態についての作用について、図4(a)〜(f)を用いて説明する。
【0055】
本実施形態では、ノズル当接手段40は、その当接部材41における当接面40pが、当接状態ではノズル形成面10pと密着するようにノズル形成面10pと平行状態になり、離間状態ではY方向に一様に傾いた傾斜面を形成する状態になるよう形成されている。このように形成されることによって、Y方向と交差するX方向に沿って平行に配列された2つのノズル列NRにおける各ノズル開口部Kは、当接面40pの離間時において、それぞれのノズル列NRにおいて、ほぼ同時に各ノズル開口部Kの密閉状態が開放されることになる。従って、以降の説明においては、代表して1つのノズル列NRにおけるノズルNL1について、乾燥抑制装置KYSの作用を説明する。もとより、他のノズルNL2〜NL9についても、また他のノズル列NRにおいても、以下の説明は同様である。
【0056】
まず、図4(a)は、従来例の図3(a)と同じ状態、すなわち、負圧力BFの作用によって、ノズルNL1内におけるメニスカスMSの引き込みができなかった状態を示したものである。この場合において、本実施形態では、当接部材41が離間を開始するのに先立って、圧力制御部25,26の制御によって、インクLに印加していた負圧を解除するか若しくは逆に加圧するようにする。こうすることによって、ノズルNL1内のインクLには、インクLの自重あるいは加圧によって、図4(b)に示すように、ノズル開口部K1からインクLが飛び出すように下方向への加圧力PFが印加される。
【0057】
次に、このように加圧力PFが印加された状態となった後、当接部材41つまり当接面40pを離間させる。当接面40pは離間状態においてノズル形成面10pに対して傾斜面を呈するように形成されていることから、当接面40pは、ノズル列NRの配列方向(X方向)と直交する方向となる一方側(ここではY方向側)から離間を開始し、他方側に向けて徐々にその離間領域を拡大するように、斜めに傾斜しながらノズル形成面10pから離間する。
【0058】
このように離間した場合は、ノズルNL1内のインクLには、負圧力BFに替わって加圧力PFが印加されているので、ノズル開口部K1において前述したインクLの引っ張り合いが発生しないことになる。逆に、加圧力PFによって、ノズル開口部K1からノズルNL1の先端部分のインクLが押し出される状態が発生することになる。このとき、図4(b)に示したように、離間する当接面40pは、ノズル形成面10pとの間で斜めになった微小な隙間を形成するため、インクLの表面張力によって生ずる力(図中矢印)にはY方向において原理的に差異が生ずることになる。この結果、この微小な隙間が狭くなる方向(図ではY方向と反対方向)への力が発生し、この発生した力によって、押し出されたインクLはノズルNL1側に押し返される。
【0059】
さらに、本実施形態では、当接面40pに、インクLに対する撥液処理を施し、インクLにおいて表面張力が安定して発生するようにしている。従って、インクLは滲出が抑制されてノズル形成面10pの近傍に安定して位置するようになる。そして、当接部材41が移動して当接面40pがノズル形成面10p(ノズル開口部K1)から離間した離間状態になると、インクLは、ノズル形成面10pに施された撥液性などによってノズルNL1内に押し戻される。この結果、図4(e)に示したように、形成されるメニスカスMSは、ノズルNL1内において好ましい位置、もしくはその近傍位置に落ち着くことになる。
【0060】
なお、メニスカスMSの好ましい形成位置とは、画像形成のためにインクLを噴射できる待機状態において、形成する画像に応じた液量のインクLをノズル開口部K1から正しく噴射することができる位置である。ちなみに、このような待機状態では、通常ノズルNL1内のインクLに対しては、圧力制御部25,26内に設けられた弁機構によって供給口11へのインクLの供給量を制御することで、ノズルNL1内のインクLに対して所定の負圧(背圧)が印加されるようになっている。従って、この所定の負圧が印加された状態のときに形成されるべきメニスカスMSの位置が好ましい位置でもある。
【0061】
一方、図4(c)は、従来技術において図3(a)の場合とは異なる状態、つまり負圧力BFによってメニスカスMSの引き込みができた状態を示したものである。このとき、図4(b)と同様に、当接部材41の当接面40pが離間するのに先立って、ノズルNL1内のインクLに対して印加していた負圧を解除するか若しくは逆に加圧することによって負圧力BFに替えて加圧力PFを発生させると、図4(d)に示した状態となる。すなわち、加圧力PFによって、ノズルNL1内のインクLに対してノズルNL1から押し出そうとする力が加わる。従って、メニスカスMSは図示するようにノズル形成面10pに対して近づくようにノズルNL1内において形成位置が下がるので、メニスカスMSを、ノズル開口部K1の近傍に位置させることができる。
【0062】
さらに、このとき、例えばメニスカスMSの引き込みによってインクLに気泡不図示が巻き込まれている場合は、ノズルNL1を移動するインクLの流動抵抗は巻き込まれた気泡に応じて減少しているため、インクLのノズルNL1内での移動速度が速くなる。この結果、巻き込まれた気泡はインクLの移動と共に移動する確率が高くなる。従って、図示するように、インクLとともに移動した気泡は、離間状態において形成される当接面40pとノズル形成面10pとの間の斜めの微小な隙間を容易に通過できる空気となって排出される。
【0063】
なお、ノズルNL1内をインクLが速く移動しても、離間時においてノズル開口部K1は離間領域が徐々に広がるように開放されるので、ノズル開口部K1における隙間は微小であることから、インクLのノズル形成面10pへの滲出は抑制される。また、本実施形態では、ノズル形成面10pにインクLに対する撥液処理が施されており、この施された撥液処理によって、インクLは、ノズル形成面10pに広く滲出することなく、ほぼノズル開口部K1の近傍に位置する。このように、空気が通過可能であって、インクLがその表面張力や流動抵抗によって通過が困難な状態を呈する微小な隙間が形成される。
【0064】
この結果、メニスカスMSの引き込みができた場合において、図4(e)に示したように、当接面40pがノズル形成面10p(ノズル開口部K1)から離間した離間状態において、メニスカスMSを、ノズルNL1において好ましい位置に形成することができる。
【0065】
ところで、本実施形態では、図4(b)において説明したように、当接面40pにインクLに対する撥液処理を施している。このとき、施された撥液処理による当接面40pの撥液性が、ノズル形成面10pの撥液性よりも低い場合や、当接面40pが撥液性を有していない場合は、図4(f)に示した状態が発生することがある。すなわち、ノズルNL1から自重や加圧によって押し出されたインクLには、例えば図中矢印で示したように、ノズル形成面10pの撥液性によって当接面40pの方向に押される押し力Lsが生じる場合がある。このとき、当接面40pの撥液性が低いと、インクLにはこの押し力Lsに抗する表面張力が当接面40pとの間で発生せず、当接面40p上に広がってしまうことがある。このような場合は、前述した従来の課題が発生してしまう虞がある。
【0066】
そこで、本実施形態では、当接面40pの撥液性を、ノズル形成面10pの撥液性よりも高くしている。こうすることで、当接面40pはノズル形成面10pよりも大きな表面張力をインクLに対して発生させることができるので、ノズルNL1から押し出されたインクLは、ノズルNL1方向に確実に押し戻されることになる。
【0067】
また、本実施形態では、ノズル列NRにおいて各ノズルNLがほぼ同時に開放されるようになっている。いま仮に、例えば1つのノズルNL1のみが開放され、他のノズルNL2〜NL9が塞がれた状態であったとすると、共通インク室13において加圧されたインクLは、これと連通する他のノズルNL2〜NL9において移動できない。このため、ノズルNL1に他のノズルNL2〜NL9におけるインクLの移動量分が全て集中することになる。この結果、ノズルNL1において加圧力による想定移動量よりも多量のインクLがノズル開口部K側に移動するため、ノズルNL1からのインクLの滲出量が多くなったり、あるいはメニスカスMSの位置を所望する位置に形成できなくなったりしてしまう。また、押し出されたインクLがノズルNL1側に押し戻されずに当接面40p上に残ってしまうことも想定される。従って、本実施形態では、ノズル列NRにおいて各ノズルNLがほぼ同時に開放されるようにしている。
【0068】
上記説明した第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)各ノズル開口部Kに微小な隙間が形成されるとともに、インクLに対して負圧が解除されるかもしくは加圧されることになるので、この微小な隙間から気泡を排出することによってメニスカスMSを好ましい位置に形成することができる。また、気泡と共に移動するインクLは、この微小な隙間を通過することは困難なため、各ノズルNLから排出されて消費されるインクLの液量を抑制できる。また、各ノズルNLと当接面40pとの間でインクLの引っ張り合いが抑制され、離間時において、インクLの破断によってメニスカスMSに加わる衝撃が弱められるので、各ノズルNLへの気泡の巻き込みやメニスカスMSの形成位置の変動を抑制できる。
【0069】
(2)各ノズルNLにおいて、ほぼ同時に各ノズル開口部Kを開放するように離間を行うので、例えば先に開放されたノズル開口部から、負圧が解除されるかもしくは加圧されることによるインクLの滲み出しを抑制することができる。この結果、滲み出しによるインクLの消費を抑制するとともに、離間状態におけるメニスカスMSの形成位置の変動を抑制できる。
【0070】
(3)各ノズルNLに対して、ノズル列NRと直交する方向の一方側から他方側に向けて離間領域が徐々に拡大するように当接面40pを離間させることができるので、ノズル列NRを呈する複数のノズルNLに対して当接面40pを最小幅の面とすることができる。また、当接面40pを一つの平面とすることができるので、各ノズル開口部Kを確実に塞いだり開放したりすることができる。この結果、各ノズル開口部Kのそれぞれに対して、当接面40pが離間するときに微小な隙間が安定して形成できるので、各ノズルNLにおいて形成されるメニスカスMSの位置の変動を抑制することができる。
【0071】
(4)ノズル列NRが複数であっても、当接面40pが離間するとき、ノズル列NR毎に加圧もしくは負圧の解除を行うので、それぞれのノズル列NRにおいて当接面40pが離間するタイミングに合わせて、加圧もしくは負圧を解除することができる。従って、インクLの消費を抑制するとともに、メニスカスMSの形成位置の変動を抑制できる。
【0072】
(5)平行に配列された複数のノズル列NRに対して、配列方向と直交する一方側から他方側に向けて離間領域が徐々に拡大するように当接面40pが離間するので、例えば、複数のノズル列NRに対してノズル形成面10pの端に位置するノズル列NRから順番に各ノズル開口部Kを開放するように、当接面40pを離間することができる。従って、ノズル当接手段40は、当接面40pをY方向に一様に下がる一つの連続傾斜面で形成することができるので、当接面40pはノズル列NRの方向において凹凸が抑制された平坦な面を容易に形成することができる。この結果、各ノズル開口部Kを確実に塞いだり開放したりすることができるので、複数のノズル列NRのそれぞれに対して、離間時において形成されるメニスカスMSの位置の変動を抑制することができる。
【0073】
(6)ノズル形成面10pの撥液性よりも高い当接面40pの撥液性によって、各ノズル開口部Kからの当接面40p側へのインクLの滲み出しを抑制するとともに、当接面40pにおけるインクLの残留を抑制することができる。この結果、気泡の排出時に同時に排出されるインクLの消費を抑制することができるとともに、メニスカスMSの形成位置の変動に対する影響を抑制することができる。
【0074】
(7)圧力制御部25,26によって、各ノズルNL内のインクLの圧力をノズル列ごとに制御することができる。従って、各ノズルNL内のインクLに対して、負圧が印加されないように負圧を解除したり、加圧を印加したりすることを、当接面40pの離間に先立つタイミングで適切に行うことができる。この結果、形成されるメニスカスMSの位置の変動を抑制することができる。
【0075】
(8)本実施形態の乾燥抑制装置KYSを備えることによって、上記(1)〜(7)の効果を奏する印刷装置100が得られる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を説明する。第2実施形態は、ノズル当接手段40が、上記第1実施形態と異なる構成を有した乾燥抑制装置KYSである。以下、本実施形態におけるノズル当接手段40の構成例について、図を用いて説明する。
【0076】
まず構成例の一つとして、図5(a)に示すように、当接面40pをY方向に一様に下がる面ではなく、Y方向において接線の下がり方が漸次大きくなる凸面形状としてもよい。例えば、当接部材41を、X方向に側面を有する円筒曲面であって上側に凸面形状を呈する曲板状に形成する。こうすれば、各ノズル開口部Kを開放する場合、離間した当接面40pが曲面になることから、各ノズル開口部Kに対して、当接面40pが平面である場合に比べて、一部の領域が離間した状態で隙間が大きくなるように当接面40pを離間させることができる。この結果、前述した気泡の排出を、離間部分からより早く行えることが期待できる。勿論、凸面形状は、当接面40pがノズル形成面10pに密着して当接することができる曲率で形成されるとともに、各ノズル開口部Kから同時若しくはほぼ同時に離間することができる形状で形成されている。なお、この場合、弾性部材42はこの当接部材41の形状に合わせた形状とすればよい。
【0077】
あるいは、弾性部材42を、図5(a)の右側に示したように、例えば、スポンジ状の弾性部材42ではなく、初期的に長さの異なる2種類のコイルばね46aとコイルばね46bとをY方向に並べて構成するようにしてもよい。勿論、図示しないが、コイルばね46aおよびコイルばね46bは、ノズル列NRに沿ってそれぞれ複数所定の間隔を有して配列されるようにしてもよい。
【0078】
また構成例の一つとして、図5(b)に示すように、供給口11と供給口12とのそれぞれに対応する各ノズル開口部Kに対して、それぞれ異なる当接面40pが密着するように構成してもよい。具体的には、図示するように、当接部材41を、ノズル列NRの配列方向と交差するY方向において当接部材41aと当接部材41bの2つに分割した構成とする。こうすれば、2つの当接面40pは、離間時において、供給口11に対応する各ノズル開口部Kを開放するタイミングと、供給口12に対応する各ノズル開口部Kを開放するタイミングとをほぼ同時とすることができる。
【0079】
また構成例の一つとして、当接面40pを、供給口11と供給口12とのそれぞれに対応する2つのノズル列NRの凡そ中間位置に最大凸部を有する1つの曲面として形成してもよい。具体的には、図5(c)の左側に示すように、当接部材41を、ノズル列NRの配列方向に側面を有する円筒曲面の曲板で形成するとともに、当接面40pとなる円筒面の略中心位置が上側に最大凸部を呈するようにする。そして、この最大凸部の位置が、各ノズル開口部KからY方向において等距離である略中間位置となるように形成する。こうすることによって、ノズル形成面10pに当接面40pが当接したとき、弾性部材42からプレート43に対して加わる力がこの最大凸部を中心にして左右ほぼ同等に発生することになる。なお、本構成例において、弾性部材42は、この当接部材41の形状に合わせた形状とすればよい。
【0080】
このとき、さらに、図5(c)の右側に示したように、当接部材41を、Y方向に一様に下がった傾斜面を有する当接部材41aと、Y方向と反対方向に一様に下がった傾斜面を有する当接部材41bとの2つで構成するようにしてもよい。同じくこのとき、弾性部材42を、スポンジ状の樹脂(ゴム)に替えて、当接部材41aに対しては長さの異なるコイルばね47aとコイルばね47bとで、また当接部材41bに対しては長さの異なるコイルばね48aとコイルばね48bとで構成するようにしてもよい。
【0081】
ところで、前述するように、印刷ヘッド10は、2つより多い複数のノズル列NRが設けられている場合がある。そこで、一例として印刷ヘッド10にノズル列NRが4つ設けられている場合における第2実施形態の構成例を、図6を用いて説明する。
【0082】
図6(a)に示すように、印刷装置100において、供給口11,12に加えて、さらに2つの供給口11aと供給口12aとが設けられる。そして、各供給口11,12,11a,12aに対して、例えば4種類のカラーインク(例えばシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各インク)がそれぞれ供給される。もとより、インク供給部20には供給口11aと供給口12aとにインクLを供給するさらに2つの供給路が設けられるとともに、供給口11,12に供給するインクLの圧力をそれぞれ制御する圧力制御部が設けられる。
【0083】
このような4つのノズル列NRの場合でも、上記第1実施形態と同様、図示するようにY方向に一様に下がる傾斜面を有する当接面40pをノズル形成面10pに当接させることによって、4つのノズル列NRの各ノズル開口部Kを塞ぐようにすることができる。この場合、ノズル形成面10pにおいて、最初に、供給口11に対応する各ノズル開口部Kを塞いでから、最後に、供給口12aに対応する各ノズル開口部Kを塞ぐまでの間に、弾性部材42は連続的に圧縮されて変形する。
【0084】
このようなノズル列NRの数が多い場合は、最初の供給口11に対応する各ノズル開口部Kを塞いでから、最後に、供給口12aに対応する各ノズル開口部Kを塞ぐまでの間において、弾性部材42は大きく圧縮変形することになる。このように大きく変形する場合、弾性部材42は圧縮変形具合においてばらつきが生じ易いため、当接面40pが各ノズル開口部Kから離間するタイミングについて、弾性部材42の変形のばらつきに起因するばらつきが離間の都度発生することがある。また、ノズル当接手段40の下方向の移動速度にばらつきがある場合も、当接面40pが各ノズル開口部Kから離間するタイミングについて、離間の都度ばらつきが発生することがある。このため、例えば圧力制御部25によって供給口11から供給されるインクLの圧力を制御して、各ノズルNL内のインクLに対して負圧を解除したり加圧したりするタイミングが、ノズル当接手段40の離間動作のたびに異なることが起きる虞がある。
【0085】
そこで、図5(b)と同様、図6(b)に示したように、ノズル当接手段40を、供給口11、供給口12、供給口11a、および供給口12aのそれぞれに対応する各ノズル開口部Kに対して、それぞれ異なる当接面40pが密着するように構成してもよい。具体的には、図示するように、当接部材41を、ノズル列NRの配列方向と交差するY方向において、当接部材41a、当接部材41b、当接部材41c、および当接部材41dの4つに分割する。こうすれば、当接面40pは、供給口11、供給口12、供給口11a、および供給口12aのそれぞれに対応する各ノズル開口部Kを開放するタイミングを全てほぼ同時とすることができる。また、弾性部材42も当接部材41と同様に、弾性部材42a、弾性部材42b、弾性部材42c、および弾性部材42dの4つに分割されるので、各々の圧縮変形量も抑制されることになる。従って、各ノズル開口部Kにおいて当接面40pが離間するタイミングのばらつきが抑制される。
【0086】
あるいは、図5(c)と同様、図6(c)に示したように、ノズル当接手段40を、Y方向において、それぞれほぼ中央部に最大凸部を有する円筒曲面形状の2つの当接面40pが形成された形状としてもよい。具体的には、図示するように、当接部材41を、当接部材41eと当接部材41fの2つに分割する。当接部材41eは、ノズル列NRの配列方向に側面を有する円筒曲面に形成された平板であって、当接面40pとなる円筒面の頂点位置が、供給口11の各ノズル開口部Kと供給口12の各ノズル開口部Kとの間の凡そ中心位置となるように形成する。また、当接部材41fは、当接面40pとなる円筒面の頂点位置が、供給口11aの各ノズル開口部Kと供給口12aの各ノズル開口部Kとの間の凡そ中心位置となるように形成する。これに合わせて、弾性部材42も、弾性部材42eと弾性部材42fの2つに分割する。
【0087】
こうすることによって、すべてのノズル列NRにおいて、各ノズル開口部Kの開放をほぼ同時に行うように離間することができる。また、図5(c)の場合と同様に、弾性部材42aおよび弾性部材42bからプレート43に対して加わる力が、プレート43において左右同等に発生する。
【0088】
上記説明した第2実施形態によれば、上記第1実施形態における(1)〜(7)の効果に加えて、次の効果を奏する。
(9)圧力制御部は複数のノズル列NRに対して、ノズルNL内のインクLの圧力を同時に制御することになるので、ノズルNL内のインクLの圧力を制御するタイミングをノズル列NR毎に調節する必要がない。従って、圧力制御を容易かつ適切に行うことができるので、ひいては当接面40pの離間時において形成されるメニスカスMSの位置の変動を抑制することができる。また、ノズル当接手段40において、プレート43には回転力が発生しないので、ノズル当接手段40の上下移動においてプレート43を傾けるようとする力の発生が抑制される。この結果、当接部材41は、その当接面40pを安定してノズル形成面10pに当接(密着)させることができる。
【0089】
(10)本実施形態の乾燥抑制装置KYSを備えることによって、上記(9)の効果を奏する印刷装置100が得られる。
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
【0090】
・上記実施形態において、当接面40pは、Y方向と逆の方向に一様に上がる傾斜面を有する面であってもよい。このような傾斜面であれば、上記実施形態と同様に、それぞれのノズル列NRにおいて、各ノズル開口部Kを同時に開放することができる。
【0091】
・上記実施形態の乾燥抑制装置KYSにおいて、印刷ヘッド10をX方向に移動してノズル当接手段40の上側にノズル形成面10pを位置することとしたが、必ずしもこのような構成に限るものでない。例えば、印刷ヘッド10を、用紙Sの搬送方向に沿った平面内で回転して、ノズル形成面10pがノズル当接手段40の上側に位置するようになっていてもよい。あるいは、ノズル当接手段40を、平面的にプラテン33から外れた位置に設けるようにしてもよい。また、印刷ヘッド10を当接部材41に対して下げるように構成されていてもよい。
【0092】
・上記実施形態において、各ノズル開口部Kは必ずしもノズル列NRを呈するように形成されなくてもよい。要は、当接面40pが、各ノズル開口部Kに対して、ほぼ同時に、離間領域が徐々に拡大するように離間できる構成であればよい。
【0093】
・上記実施形態において、各ノズルNLは必ずしも共通インク室13と連通する構成を有していなくてもよい。もとより、この場合は、各ノズル開口部Kにおいて密閉状態を開放するタイミングは必ずしも同時でなくてもよい。
【0094】
・上記実施形態において、ノズル形成面10pに設けられるノズル列NRはY方向に沿ってほぼ一列に形成されるとともに、印刷ヘッド10が、X方向に往復移動するように構成された所謂シリアルヘッド型の印刷装置100としてもよい。また、印刷ヘッド10はX方向に往復移動するキャリッジに固定されるようにしてもよい。また、インク供給部20は、印刷ヘッド10あるいはキャリッジに搭載されている構成としてもよい。
【0095】
・上記実施形態では、液体噴射装置は、噴射用液体としてインクを噴射する印刷装置100であることとしたが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする印刷装置を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる印刷ヘッド等を備える各種の印刷装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記印刷装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、印刷装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクが挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。印刷装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する印刷装置がある。あるいは、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の印刷装置に本発明を適用することができる。
【0096】
・また、上記実施形態では、本発明を、噴射用液体乾燥抑制装置を有する液体噴射装置としての印刷装置として説明しているが、上記説明から明らかなように、本発明の実施形態を噴射用液体乾燥抑制方法とすることも可能である。この方法によれば、上記実施形態による効果と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0097】
10…印刷ヘッド、10p…ノズル形成面、11,11a,12,12a…供給口、13…共通インク室、18…残インク、20…供給手段としてのインク供給部、21,22…インクタンク、25,26…圧力制御手段としての圧力制御部、30…移動手段、40…ノズル当接手段、40p…当接面、41,41a,41b,41c,41d,41e,41f…当接部材、42,42a,42b,42c,42d,42e,42f…弾性部材、43…プレート、45…駆動装置、46a,46b,47a,47b,48a,48b…コイルばね、50…制御装置、100…液体噴射装置としての印刷装置、L…噴射用液体としてのインク、S…媒体としての用紙、BF…負圧力、K,K1〜K9…ノズル開口部、MS…メニスカス、NL,NL1〜NL9…ノズル、NR…ノズル列、PF…加圧力、KYS…噴射用液体乾燥抑制装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル形成面に形成されたノズル開口部から噴射用液体を噴射するノズルを有する液体噴射手段と、
前記ノズル形成面に当接可能な当接面を有し、当該当接面が、前記ノズル開口部を塞ぐように前記ノズル形成面に密着して当接した当接状態と、前記ノズル形成面から離間した離間状態と、を呈するノズル当接手段と、
前記ノズル内の前記噴射用液体の圧力を制御する圧力制御手段と、
を備えた噴射用液体乾燥抑制装置であって、
前記ノズル当接手段は、前記当接状態から前記離間状態となる過程において前記ノズル形成面に対する前記当接面の離間領域が徐々に拡大するように前記当接面が前記ノズル形成面から離間するとともに、
前記圧力制御手段は、前記当接面が前記ノズル形成面から離間するのに先立って、前記ノズル内の前記噴射用液体の圧力がノズル開口部における気圧に対して少なくとも負圧にならないように制御することを特徴とする噴射用液体乾燥抑制装置。
【請求項2】
請求項1に記載の噴射用液体乾燥抑制装置において、
前記液体噴射手段は、前記圧力制御手段によって前記噴射用液体の圧力が共通に制御される複数の前記ノズルを有し、
前記ノズル当接手段は、複数の前記ノズルに対応する複数の前記ノズル開口部を塞いだ前記当接状態から前記離間状態となる過程において同時に複数の前記ノズル開口部を開放するように前記当接面が前記ノズル形成面から離間することを特徴とする噴射用液体乾燥抑制装置。
【請求項3】
請求項2に記載の噴射用液体乾燥抑制装置において、
複数の前記ノズル開口部は、前記ノズル形成面にノズル列を呈するように一方向に配列され、
前記ノズル当接手段は、前記当接状態から前記離間状態となる過程において前記ノズル列が配列された一方向と直交する方向の一方側から他方側に向けて前記離間領域が徐々に拡大するように前記当接面が前記ノズル形成面から離間することを特徴とする噴射用液体乾燥抑制装置。
【請求項4】
請求項3に記載の噴射用液体乾燥抑制装置において、
前記液体噴射手段は、前記ノズル形成面に複数の前記ノズル列を有し、
前記ノズル当接手段は、前記ノズル列毎に前記当接面が前記ノズル形成面から離間するとともに、
前記圧力制御手段は、前記複数のノズル列のそれぞれに対して、前記当接面が前記ノズル形成面から離間するのに先立って、前記ノズル内の前記噴射用液体の圧力がノズル開口部における気圧に対して少なくとも負圧にならないように制御することを特徴とする噴射用液体乾燥抑制装置。
【請求項5】
請求項4に記載の噴射用液体乾燥抑制装置において、
前記複数のノズル列は平行に配列されると共に、
前記ノズル当接手段は、前記当接状態から前記離間状態となる過程において前記複数のノズル列が配列された一方向と直交する方向の一方側から他方側に向けて前記離間領域が徐々に拡大するように前記当接面が前記ノズル形成面から離間することを特徴とする噴射用液体乾燥抑制装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の噴射用液体乾燥抑制装置において、
前記ノズル当接手段は、前記ノズル列と交差する方向に分割された複数の前記当接面を有し、前記複数の当接面のそれぞれが、前記複数のノズル列のうち少なくとも一つの前記ノズル列に対して前記当接状態と前記離間状態とを呈することを特徴とする噴射用液体乾燥抑制装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の噴射用液体乾燥抑制装置において、
前記ノズル形成面および前記当接面は、前記噴射用液体に対して撥液性を有し、
前記当接面の撥液性は、前記ノズル形成面の撥液性よりも高いことを特徴とする噴射用液体乾燥抑制装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の噴射用液体乾燥抑制装置において、
前記液体噴射手段に対して前記噴射用液体を供給する供給手段を有し、
前記圧力制御手段は、前記供給手段における前記噴射用液体の圧力を制御することによって、前記ノズル内の前記噴射用液体の圧力を制御することを特徴とする噴射用液体乾燥抑制装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の噴射用液体乾燥抑制装置と、
噴射用液体の噴射対象物となる媒体を前記噴射用液体乾燥抑制装置が備える液体噴射手段に対して相対的に移動する移動手段と、
を有する液体噴射装置。
【請求項10】
液体噴射手段における噴射用液体を噴射するノズルのノズル開口部が形成されたノズル形成面に対して当接可能な当接面を有するノズル当接手段が、前記当接面を前記ノズル形成面に対して前記ノズル開口部を塞ぐように密着させた当接状態から、前記ノズル形成面から離間した離間状態に移行する過程において、
前記ノズル当接手段における前記当接面を、当該当接面における前記ノズル形成面に対する離間領域が徐々に拡大するように前記ノズル形成面から離間させるとともに、
前記当接面が前記ノズル形成面から離間するのに先立って、前記ノズル内の前記噴射用液体の圧力がノズル開口部における気圧に対して少なくとも負圧にならないように、前記ノズル内の前記噴射用液体の圧力を制御する、
ことを特徴とする噴射用液体乾燥抑制方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−255592(P2011−255592A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132082(P2010−132082)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】