説明

噴霧乾燥による生物活性材料の防腐

本発明は生物活性材料を粉末粒子のマトリックスで防腐するための方法と組成物を提供する。方法は製剤の高圧ガス噴霧及び/又は近超臨界噴霧後に調整ガス流で乾燥し、生物活性材料を含有する安定な粉末粒子を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願とのクロスリファレンス)
本願は先願米国仮特許出願第60/372,192号(発明の名称「超臨界流体を使用する治療剤の噴霧乾燥方法(Method of Spray−Drying Therapeutic Agents Using Supercritical Fluids)」、発明者Vu Truong−Le、出願日2002年4月11日)及び先願米国仮特許出願第60/447,683号(発明の名称「噴霧乾燥による生物活性材料の防腐(Preservation of Bioactive Materials by Spray Drying)」、発明者Vu Truong−Le、出願日2003年2月14日)の優先権を主張する。先願の全開示は参考資料として本明細書に組込む。
【0002】
本発明は保存時の生物材料の防腐の分野に関する。特に、本発明は例えば噴霧乾燥粉末粒子のマトリックによる生物活性分子の防腐に関する。
【背景技術】
【0003】
蛋白質、ペプチド、核酸、細菌、細胞、抗体、酵素、血清、ワクチン、リポソーム、及びウイルス等の生物材料は一般に培地又は他の液体溶液に保存した場合に不安定である。例えば、卵尿膜腔液から製造した生きたインフルエンザウイルス等のエンベロープウイルスは低温即ち約4℃で保存した場合に2〜3週間以内に組織培養感染量(TCID50)として定義される力価が1log低下する。室温条件(約25℃)と例えば37℃等の中温では、ウイルスは夫々数日から数時間のうちに同等の力価が低下する。水性製剤を凍結した後に昇華により乾燥する凍結乾燥法はこれらの生物材料を安定化するために一般に使用されている。保存の目的で生物材料から脱水するために一般に使用されている別の方法は噴霧乾燥法である。脱水後に炭水化物等の保護分子で置換すると、化学分解、変性、及び微生物汚染増殖を防止することにより安定性を増すことができる。
【0004】
凍結乾燥法(噴霧乾燥法)では、一般に生物材料を溶液又は懸濁液として保護剤と混合し、凍結し、昇華と二次乾燥により脱水する。凍結の低温と昇華による乾燥は分解反応速度を遅らせることができるが、生物材料によっては保護剤が浸透しにくくなる。更に、凍結乾燥で使用される低温と低い表面積/体積比には長い乾燥時間が必要である。
【0005】
凍結乾燥工程と二次乾燥工程は例えば蛋白質や細胞に相当の化学的及び物理的変化を生じることがある。このような変化の結果として、塩濃度、沈殿/結晶化、剪断応力、pH異常、及び凍結乾燥後の残留水分により蛋白質の活性が低下する恐れがある。凍結乾燥の結果、氷結晶で細胞に穴があき、内部区画を保護できなくなる恐れがある。
【0006】
凍結乾燥ケーキの粉砕又は噴霧乾燥による粉末粒子の形成は生物活性材料の防腐のために生物薬剤産業に実質的に有利且つ重要である。このような微粒子は蛋白質、非蛋白質生体分子(例えば、DNA、RNA、脂質、及び炭水化物を含む)等の生物材料に簡便な保存形態を提供できるだけでなく、長期保存のために実質的に脱水し、保存期間後にその所期用途に生物材料を適用するために再湿潤することができる。更に、このような乾燥微粒子は制御された直径範囲で製造することができ、例えば鼻腔内経路で乾燥エアゾール粉末として投与し、患者の鼻粘膜で生物材料を再湿潤及び再溶解することができる。生物材料を含有するこのような微粒子及び超微粒子は薬剤学、生物学、及び特に生ウイルスワクチンの分野で多数の用途がある。従って、生物活性材料を含有する微粒子の形成方法が開発されるならば有利である。
【0007】
噴霧乾燥法は例えば食品加工産業で粉末を製造するために古くから使用されている周知方法である。例えば、牛乳等の液体製品をノズルから熱ガス流内に噴霧して粉末を製造する。噴霧ミストに暴露される表面積が大きいことと、乾燥ガスの高温が相俟って、液体製品から迅速に脱水することができる。しかし、このようなプロセス条件は高温での水和水の損失に伴う剪断応力、熱応力、酸化ストレス、及びコンホメーション変化により感受性生物材料には不適切な場合が多い。これらの問題のいくつかは米国特許第5,902,844号(発明の名称「アミノ酸材料を含有する医薬製剤の噴霧乾燥(Spray Drying of Pharmaceutical Formulations Containing Amino Acid−Based Materials),発明者Wilson)に記載されているような医薬噴霧乾燥法で検討されている。Wilsonでは、水溶性ポリマーを加えたペプチド溶液を乾燥ガス流中に噴霧して医薬組成物を形成している。ポリマーの存在は、ペプチドにコーティングして薬品攻撃から保護し、乾燥中に失われた水和水に置換することによりペプチドを分解から保護することができる。しかし、所定の感受性ペプチドや他の生物材料(例えば核酸、細菌、細胞、抗体、酵素、血清、ワクチン、リポソーム、及びウイルス)は化Wilsonにより記載されている方法の熱、剪断応力及び脱水等によりやはり損傷を受ける。
【0008】
生ウイルス及び細菌ワクチン等の大型で複雑な生物材料は最も不安定な製品として広く認められている。例えば、卵尿膜腔液から製造した生きたインフルエンザウイルス等のエンベロープウイルスは低温即ち約4℃で保存した場合に2〜3週間以内に組織培養感染量(TCID50)として定義される力価が1log低下する。室温条件(約25℃)では、ウイルスは数日間のうちに同等の力価が低下する。
【特許文献1】米国特許第5,902,844号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特に凝固点よりも高温で保存時の蛋白質や生きたウイルス等の感受性生物材料を防腐するための方法が依然として必要とされている。特定生物材料の感受性に合うように迅速な低温乾燥を含む工程を使用して乾燥粉末粒子を製造する方法が望ましい。更に、有機補助溶媒に暴露する必要のない噴霧乾燥法は感受性生物構造の変性を減らすことができる。保存時のこのような生物材料を保護することができる組成物は医学及び科学研究で有利であろう。本発明はこれらの特徴と、以下に記載する他の特徴を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は保存時の生物活性材料を防腐するための方法、装置及び組成物に関する。本発明は例えば高圧ガス及び/又は近超臨界流体を用いて混合物を噴霧し、感受性生物活性材料に加わる剪断又は温度応力を低くしながら乾燥粉末微粒子を提供することができる条件下に噴霧乾燥する。
【0011】
本発明の方法は一般に例えば懸濁液又は溶液中の生物活性材料を高圧ガス又は近超臨界ガスと混合して噴霧し、慣用噴霧ないしアトマイゼーション技術で一般に使用されているよりも低温及び低剪断応力の条件下に微粒子を提供する。スプレー中の微細液滴は例えば慣用技術よりも迅速且つ低温で乾燥することができる。本発明の方法は例えば超微細液滴サイズを形成することができるので、液滴表面積/体積比が増加し、所与熱入力当たりの蒸発効率が増加する。本発明における粉末粒子の製造方法は例えば、生物活性材料とポリオールの水性懸濁液又は溶液を製造する段階と、溶液又は懸濁液と加圧ガス又は近超臨界流体の混合物を形成する段階と、混合物を減圧することにより超微細液滴を噴霧する段階と、例えば噴霧乾燥装置の乾燥チャンバーに噴霧することによりスプレーガスを乾燥ガスと交換することにより液滴を乾燥して粉末粒子にする段階を含む。
【0012】
本方法で混合及び噴霧に使用する懸濁液又は溶液中の生物活性材料は例えば蛋白質、ペプチド、核酸、細菌、細胞、抗体、酵素、血清、ワクチン、リポソーム、ウイルス、及び/又は同等物とすることができる。本方法の生物活性材料懸濁液に使用するウイルスとしては、例えばインフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器多核体ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、SARSウイルス、コロナウイルスファミリーメンバー、ヒトメタニューモウイルス、及びエプスタイン・バールウイルスが挙げられる。
【0013】
本方法で混合及び噴霧に使用する懸濁液又は溶液中のポリオールは例えばトレハロース、スクロース、ソルボース、メレジトース、グリセロール、フルクトース、マンノース、マルトース、ラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトース、グルコース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、スレイトール、ソルビトール、及びラフィノースとすることができる。懸濁液又は溶液は更に生物活性材料を保護し、粒子に構造を与えるために、例えば澱粉、澱粉誘導体、カルボキシメチルスターチ、ヒドロキシエチルスターチ(HES)、デキストラン、ヒト血清アルブミン(HSA)、及びゼラチン等のポリマーを加えることができる。懸濁液又は溶液成分の溶解度を上げ、及び/又は本発明の粉末粒子の再構成と安定性を増すために、例えばポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、又はポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックコポリマー等の界面活性剤を懸濁液又は溶液に加えることができる。安定剤としてはアルギニン、リジン、グリシン、メチオニン、グルタミン、ヒスチジン等のアミノ酸添加剤が有用であると思われる。
【0014】
本発明の懸濁液又は溶液は噴霧前に加圧ガス又は近超臨界条件ガスと混合することができる。本発明において高圧ガスは例えば約100ポンド/平方インチ(psi)〜約15,000psi、又は約1000psiの圧力の窒素、二酸化炭素、酸素、プロパン、亜酸化窒素、ヘリウム、水素、及び/又は同等物とすることができる。近超臨界とは例えば流体の臨界圧及び/又は温度の約90%〜110%の圧力を意味することができる。近超臨界流体が二酸化炭素である場合には、典型的圧力は約1200psiとすることができる。本方法における近超臨界流体は例えば二酸化炭素、六フッ化硫黄、クロロフルオロカーボン、フルオロカーボン、亜酸化窒素、キセノン、プロパン、n−ペンタン、エタノール、窒素、水、及び/又は同等物とすることができる。懸濁液又は溶液と混合する前の高圧ガス又は近超臨界流体の温度は一般に約0℃〜約60℃である。例えば流体の物性を変えるため及び/又は懸濁液又は溶液の一次乾燥を促進するためにメタノール、エタノール、イソプロパノール、又はアセトン等の改質剤をガス又は近超臨界流体に添加することができる。
【0015】
高圧又は近超臨界ガスを混合物中で溶液又は懸濁液と接触させることにより、例えば所定溶媒和及び/又は乳化効果を提供することができる。例えば、ガスが懸濁液又は溶液に相当程度まで可溶性である場合に懸濁液又は溶液中にガスの溶液ないし液相ガスを形成することができる。場合により、溶液又は懸濁液を液相近超臨界ガスにある程度まで溶解することができる。別の側面では、懸濁液又は溶液を高圧ガス又は近臨界ガスで乳化するか、あるいは高圧ガス又は近臨界ガスを懸濁液又は溶液で乳化することができる。このような溶媒和又は乳化効果の制御は例えば混合物温度、混合チャンバーにおける滞留時間、溶液又は懸濁液と高圧又は近超臨界ガスの相対比率、流速、圧力、溶液又は懸濁液成分、付加溶媒の存在、及び/又は同等因子の調節により行うことができる。
【0016】
高圧ガス及び/又は近超臨界流体と懸濁液又は溶液の混合物の形成は例えばTジャンクション、混合チャンバー及び/又はキャピラリーレストリクターを備えるノズルで実施することができる。混合物の形成は溶液又は懸濁液と加圧ガス又は近超臨界流体を混合チャ
ンバーに流すことにより実施することができる。混合チャンバーは例えば混合効率を上げるように流動中の混合物に渦流又は乱流を生じる通路構成とすることができる。例えば混合物をノズルに通し、キャピラリーレストリクターのスプレーオリフィス出口から吐出させることにより、混合物を減圧(発泡)して液滴のガス懸濁系を形成することができる。キャピラリーレストリクターは例えば混合チャンバーよりも小さい内径とすることができ、一般には約1000um未満、約50um〜約500um、又は約100umである。
【0017】
液滴の平均サイズを変えるために種々のパラメーターを調節することができる。液滴サイズは例えば近超臨界流体圧もしくは高圧ガスの圧力を調節するか、懸濁液もしくは溶液の圧力を調節するか、懸濁液もしくは溶液の流速を調節するか、ノズル管内径を選択するか、乾燥ガスの温度を調節するか、粒子形成容器の内圧を調節するか、懸濁液もしくは溶液成分の濃度を変化させるか、及び/又は同等手段により変化させることができる。例えば、懸濁液又は溶液は約0.5ml/分〜約30ml/分で混合チャンバーに供給し、100um内径ノズルオリフィスから噴霧することができ、流速が低いほど小さい液滴が形成され、流速が速いほど大きな液滴が形成される。本方法では、質量中央径約1um〜約200umの液滴を形成することが好ましい。
【0018】
液滴の噴霧形成後、一次及び二次乾燥により液滴を粒子に変換する。一次乾燥は例えば液−気(溶液又は懸濁液−高圧又は近超臨界ガス)混合物を減圧及び発泡させて液滴のガス懸濁系を形成することにより開始することができる。発泡混合物のガスと蒸発した溶媒を次に温度約5℃〜約90℃の窒素等の乾燥ガスと交換することができる。乾燥は例えば大まかな一次脱水後に残留水分を更に減らす二次乾燥を含むことができる。乾燥は例えばサイクロン渦流で実施することもできるし、乾燥ガス上昇流に粉末粒子を懸濁して流動層を形成することにより実施することもできる。帯電を減らし、場合により生じる粒子凝集を減らすために、乾燥後又は乾燥中の粒子のチャンバーに対イオンを注入することができる。乾燥ガスは例えば熱交換器及び/又はデシケーター又はコンデンサーで再調整することによりリサイクルすることができる。乾燥後に粉末粒子は例えば平均粒度(MMD)約0.5um〜約200um、又は約1um〜約150um、又は約5um〜約20umであり、含水率は約10重量%未満であり、保存時の生物活性材料安定性は例えば約25℃で少なくとも約9カ月又は約4℃で保存時に少なくとも約2年間とすることができる。生きたウイルス、生きた細菌及び生細胞は処理後に粉末粒子中で元の生存率の少なくとも約50%、又は少なくとも約10%を維持することができる。
【0019】
粒子は乾燥ガス流で乾燥、サイズ分離、コーティング、捕集、及び/又は同等処理のためのチャンバーへ移送することができる。粉末粒子は乾燥ガスの流動流で二次乾燥チャンバーに移送することにより捕集することができる。二次乾燥チャンバーは粒子を温チャンバー表面と接触させ、粒子と乾燥ガスの接触時間を延ばすためにサイクロン渦流チャンバーとして構成することができる。粒子はチャンバー内で例えば分画沈降によりサイズ分離することができる。粒子は例えばポリマーでコーティングして保護コートを付けることができる。粒子は回収前にチャンバーの底の捕集容器に沈降して蓄積することができる。総プロセス効率は生物活性材料質量及び/又は活性の50%、70%、80%、90%、又はそれ以上の回収率に達することができる。
【0020】
回収された粉末粒子は粒子又は再構成溶液もしくは懸濁液として投与することができる。本発明の方法により製造した微粒子は元のプロセス懸濁液又は溶液よりも高い生物活性材料濃度の懸濁液又は溶液に再構成することができる。例えば、乾燥粉末粒子は有意活性低下又は蛋白質変性を伴うことなく初期液体フィード(溶液又は懸濁液)の濃度の2〜30倍に再構成することができ、100mg/ml溶液の再構成時間は5分未満とすることができる。粉末粒子は例えば筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液内、鞘内、経口、局所、鼻腔内吸入、及び/又は肺投与経路により哺乳動物に投与することができる

【0021】
本発明の方法は例えば本発明の装置を使用して実施することができる。本装置は混合物をノズルから粒子形成容器内に噴霧する前に懸濁液又は溶液と加圧ガス又は近超臨界流体を保持及び混合するためのチャンバーを備えることができる。粒子形成容器で形成された粒子は例えば乾燥ガス流で乾燥するか、及び/又は粒子を更に乾燥、コーティング、篩別、サイジング及び/又は捕集するように構成された二次乾燥チャンバーに移送することができる。装置の1態様では、例えば、第1のチャンバーが生物活性材料とポリオールの懸濁液又は溶液を収容するしており、第2のチャンバーが高圧ガス及び/又は近超臨界流体を収容しており、混合チャンバーが第1の導管を介して第1のチャンバーと流体連通すると共に第2の導管を介して第2のチャンバーと流体連通しており、キャピラリーレストリクターが混合チャンバーと粒子形成容器の間に制限的流体連通を提供し、乾燥ガス流が流動し、懸濁液又は溶液が混合チャンバーでガス及び/又は近超臨界流体と混合されて粒子形成容器内に噴霧されるときに形成される液滴の微細ミストを乾燥する。その結果、生物活性材料を含有する安定な乾燥微粉末粒子を製造することができる。
【0022】
第1のチャンバー内の懸濁液又は溶液は例えば生物活性材料、ポリオール、ポリマー、及び界面活性剤を含むことができる。生物活性材料としては、例えば蛋白質、ペプチド、核酸、細菌、細胞、抗体、酵素、血清、ワクチン、リポソーム、ウイルス、及び/又は同等物が挙げられる。ポリオールとしては、例えばトレハロース、スクロース、ソルボース、メレジトース、グリセロール、フルクトース、マンノース、マルトース、ラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトース、グルコース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、スレイトール、ソルビトール、ラフィノース、及び/又は同等物が挙げられる。ポリマーとしては例えば澱粉、澱粉誘導体、カルボキシメチルスターチ、ヒドロキシエチルスターチ(HES)、デキストラン、ヒト血清アルブミン(HSA)、ゼラチン、及び/又は同等物が挙げられる。界面活性剤としては、例えばポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート(Tween 20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween 80)、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックコポリマー(Pluronic)、及び/又は同等物が挙げられる。安定剤としてはアルギニン、リジン、グリシン、メチオニン、グルタミン、ヒスチジン等のアミノ酸添加剤が有用であると思われる。
【0023】
装置で懸濁液又は溶液と混合するのに使用するガス及び/又は近超臨界流体としては、例えば窒素、二酸化炭素、酸素、プロパン、一酸化炭素、フラオラン、亜酸化窒素、ヘリウム、水素、六フッ化硫黄、クロロフルオロカーボン、フルオロカーボン、亜酸化窒素、キセノン、プロパン、n−ペンタン、エタノール、窒素、及び又は水が挙げられる。
【0024】
懸濁液又は溶液と高圧ガス及び/又は近超臨界流体は装置のノズルに供給され、装置の粒子形成容器内に噴霧される混合物を形成することができる。混合チャンバー内への懸濁液又は溶液の流量を制御するために第1のチャンバーと混合チャンバーの間で第1の導管にポンプ又はバルブ等の第1の流量制御手段を接続することができる。混合チャンバー内へのガス及び/又は近超臨界流体の流量を制御するために第2のチャンバーと混合チャンバーの間で第2の導管にポンプ又はバルブ等の第2の流量制御手段を接続することができる。第1の導管及び/又は第2の導管から混合チャンバーへの入口は混合チャンバーの軸から90°未満の角度に向けることができる。混合物をノズルから噴霧するためにキャピラリーレストリクターにより例えば流動中の混合物とオリフィスに背圧を加えることができる。キャピラリーレストリクターは例えば混合チャンバーよりも小さい内径にすることができ、一般に、キャピラリーレストリクターは約50um〜約1000um、約50um〜約500um、又は約100umの内径にすることができる。ノズルとしては、例えば多重キャピラリーコンストリクターが挙げられる。ノズルは2種以上のガス及び/又は
2種以上の液体フィードの混合物に対応するように多重フィードチャネルの交点をもつことができる。
【0025】
混合物がノズルから噴霧されるにつれて形成される微細液滴のミストは乾燥ガスにより乾燥することができる。粒子形成容器は二次乾燥チャンバーとして機能することもできるし、二次乾燥チャンバーと流体接触させ、この二次乾燥チャンバーに粒子を移送して乾燥ガス及び/又はチャンバー表面と接触させることにより乾燥することもできる。乾燥ガスは例えば温度及び/又は湿度を制御した窒素とすることができる。乾燥ガス(入力ガス)は例えば粉末粒子のガラス転移温度よりも低温とすることができる。
【0026】
粒子中の残留水分は二次乾燥チャンバーで安定化レベルまで下げることができる。二次乾燥チャンバーはサイクロン渦流、粉末粒子の流動層、粉末粒子に保護コーティング材料を噴霧するためのチャンバー、サイズ分離装置、及び/又は粒子捕集容器として機能するように構成することができる。乾燥ガスはコンデンサー又はデシケーターで脱水後に粒子形成容器及び/又は二次乾燥チャンバーを通してリサイクルすることができる。装置における粒子のサイズ分離は例えば分画沈降、表面衝突、又は濾過により実施し、平均粒度(MMD)約1um〜約150um、又は約10umの粉末粒子を製造することができる。静電荷を中和するために装置にイオン発生器を備えることができる。
【0027】
本発明は改善された安定性をもつ噴霧乾燥粉末粒子を形成するために高圧ガス及び/又は近超臨界流体と混合するための組成物(例えば生物活性材料、ポリオール、ポリマー添加剤、アミノ酸添加剤、及び/又は界面活性剤の懸濁液又は溶液)に関する。懸濁液又は溶液は緩衝液、キャリヤー、賦形剤及び/又は安定剤等の他の成分を添加することができる。1態様において、組成物はスクロース、HES、及びポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックコポリマー(Pluronic)の水溶液中のインフルエンザウイルスの懸濁液である。
【0028】
懸濁液又は溶液製剤は、蛋白質、ペプチド、核酸、細菌、細胞、抗体、酵素、血清、ワクチン、リポソーム、及びウイルス等の生物活性材料を含むことができる。生物活性材料は例えば懸濁液又は溶液の約0.00001重量%未満〜約30重量%以上の量で存在することができる。ウイルス生物活性材料の場合には、ウイルスは例えばインフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器多核体ウイルス、単純ヘルペスウイルス、SARS(重症急性呼吸器症候群)ウイルス、コロナウイルスファミリーメンバー、サイトメガロウイルス、ヒトメタニューモウイルス、及びエプスタイン・バールウイルスとすることができる。生きたウイルスは例えば約10TCID50/mL〜約1012TCID50/mL、又は約10TCID50/mLの量で懸濁液又は溶液中に存在することができる。ウイルスは例えば約10TCID50/g、約10TCID50/g、約10TCID50/g、約10TCID50/g、約10TCID50/g、約10TCID50/g、約10TCID50/g、約10TCIDso/g、約10TCID50/g、約1010TCID50/g、又は約1011TCID50/gの量で乾燥粒子中に存在することができる。
【0029】
本発明の懸濁液及び溶液は種々の非還元性又は還元性ポリオールを含むことができ、例えばトレハロース、スクロース、ソルボース、メレジトース、グリセロール、フルクトース、マンノース、マルトース、ラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトース、グルコース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、スレイトール、ソルビトール、及びラフィノースが挙げられる。ポリオールは例えば約1重量%〜約40重量%の濃度で懸濁液又は溶液中に存在することができる。1特定態様では、ポリオールは懸濁液又は溶液の約10重量%の量で存在するスクロースである。
【0030】
本発明の懸濁液及び溶液にはポリマーを添加することができる。典型的ポリマーは澱粉、澱粉誘導体、カルボキシメチルスターチ、ヒドロキシエチルスターチ(HES)、デキストラン、ヒト血清アルブミン(HSA)、ゼラチン及び/又は同等物等の親水性バイオポリマーである。多くの場合には分子量約1kDa〜約300kDaのポリマーが好ましい。ポリマーは一般に本発明の懸濁液中に約0.5重量%〜約10重量%の濃度で存在する。1態様では、懸濁液又は溶液は約5重量%の濃度のHESを含有する。
【0031】
例えば製剤成分の溶解度を増すため、微粒子を噴霧し易くするため、生物活性材料を安定化するため、及び/又は乾燥粒子の再構成時間を改善するために本発明の懸濁液及び溶液に界面活性剤を添加することができる。本発明の懸濁液及び溶液はアルキルフェニルアルコキシレート、アルコールアルコキシレート、脂肪アミンアルコキシレート、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル、ひまし油アルコキシレート、脂肪酸アルコキシレート、脂肪酸アミドアルコキシレート、脂肪酸ポリジエタノールアミド、ラノリンエトキシレート、脂肪酸ポリグリコールエステル、イソトリデシルアルコール、脂肪酸アミド、メチルセルロース、脂肪酸エステル、シリコーン油、アルキルポリグリコシド、グリセロール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマー、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールエーテルブロックコポリマー、ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート、及び/又はポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等の非イオン性界面活性剤を含むことができる。本発明の懸濁液及び溶液はアルキルラウリルスルホネート、フェニルスルホネート、アルキルスルフェート、アルキルスルホネート、アルキルエーテルスルフェート、アルキルアリールエーテルスルフェート、アルキルポリグリコールエーテルホスフェート、ポリアリールフェニルエーテルホスフェート、アルキルスルホスクシネート、オレフィンスルホネート、パラフィンスルホネート、石油スルホネート、タウリド、サルコシド、脂肪酸、アルキルナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、リグノスルホン酸、スルホン酸化ナフタレンとホルムアルデヒドの縮合物、スルホン酸化ナフタレンとホルムアルデヒドとフェノールの縮合物、リグニン−亜硫酸廃液、アルキルホスフェート、第4級アンモニウム化合物、アミンオキシド、及びベタイン等のイオン性界面活性剤を含むことができる。界面活性剤は例えば約0.001重量%〜約5重量%、又は約0.01重量%〜約1重量%の量で懸濁液又は溶液中に存在することができる。
【0032】
本発明の懸濁液又は溶液(液体フィード材料)は更にリジン、アルギニン、グリシン、メチオニン、ヒスチジン等のアミノ酸安定剤を添加することができる。例えば約pH3〜約pH8のpHにするためにリン酸塩、炭酸塩、硼酸塩、酢酸塩、ヒスチジン、グリシン、クエン酸塩、及び/又は同等物等の緩衝液を懸濁液又は溶液に添加することができる。緩衝液は必要に応じて約2mM〜約500mMの濃度で存在することができる。
【0033】
本発明は例えば高圧ガス及び/又は近超臨界ガスと、生物活性材料、ポリオール、ポリマー添加剤、及び界面活性剤の懸濁液又は溶液の混合物を噴霧乾燥することにより製造された乾燥粉末粒子を収容する容器を含む製品に関する。
定義
【0034】
本発明は特定装置又は生物系に限定されず、当然のことながら種々のものに適用できると理解すべきである。同様に、本明細書で使用する用語は特定態様のみの説明を目的とし、限定的でないことも理解すべきである。本明細書と特許請求の範囲に使用する単数形はそうでないことが内容から明白である場合を除き、複数形も含む。従って、例えば「表面」と言う場合には2個以上の表面の組合せを含み、「細菌」と言う場合には細菌混合物を含み、他の用語についても同様である。
【0035】
特に定義しない限り、本明細書で使用する全科学技術用語は本発明が属する分野の当業者に一般に理解されていると同一の意味をもつ。本発明の試験の実施には本明細書に記載するものに類似又は等価の任意方法及び材料を使用することができるが、好ましい材料と方法は本明細書に記載するものである。本発明の明細書と特許請求の範囲では、以下の用語は以下の定義に従って使用される。
【0036】
「周囲」温度又は条件は所与環境で任意所与時点のものである。一般に、周囲室温は22℃であり、周囲大気圧及び周囲湿度は容易に測定され、時季、気候条件、高度等により異なる。
【0037】
「沸騰」とは例えば液体の温度がその沸点を超えるときに生じる液体から気体への迅速な相転移を意味する。沸点は当業者に周知の通り、液体の蒸気圧が印加圧力に等しい温度である。
【0038】
「緩衝液」とはその酸−塩基共役成分の作用によりpH変化に対向する緩衝溶液を意味する。緩衝液のpHは一般に選択活性材料を安定化するように選択され、当業者により容易に確かめられる。一般に、これは生理的pHの範囲内であるが、蛋白質によってはもっと広いpH範囲(例えば酸性pH)で安定なものもある。従って、好適pH範囲は約1〜約10であり、約3〜約8が特に好ましく、約6.0〜約8.0がより好ましく、約7.0〜約7.4が更に好ましく、約7.0〜約7.2が最も好ましい。適切な緩衝液としてはpH7.2リン酸緩衝液とpH7.0クエン酸緩衝液が挙げられる。当業者に自明の通り、多数の適切な緩衝液を使用できる。適切な緩衝液としては限定されないが、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ヒスチジン−HCl、クエン酸ナトリウム、琥珀酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、及び炭酸塩が挙げられる。一般に、緩衝液は約1mM〜約2Mのモル濃度で使用し、約2mM〜約1Mが好ましく、約10mM〜約0.5Mが特に好ましく、25〜50mMが殊に好ましい。
【0039】
「脱気」とはガスの分圧が印加圧を上回るときに液体中の溶液からガスが放出されることを意味する。水を1気圧(約760Torr)の窒素ガスと接触させ、水中の窒素の分圧が気相圧と平衡している場合に、ガス圧を下げるならば水から窒素が発泡する。これは沸騰ではなく、多くの場合には溶媒を沸騰させる圧力を上回る圧力で生じる。例えば、瓶詰炭酸飲料はCOガスの分圧が高いため、瓶のキャップを外して圧力を下げると迅速に発泡する。
【0040】
「分散度」とは分散粒子を対象の肺に吸入又は吸引できるように粉末組成物を空気流に分散(即ち懸濁)できる程度を意味する。従って、分散度が20%の粉末とは、粉末の質量の20%しか肺吸入用吸入装置により懸濁できないことを意味する。
【0041】
乾燥粉末組成物に関して「乾燥」とは残留含水率が約10%未満であることを意味する。乾燥粉末組成物は残留水分5%以下、又は約3%〜0.1%まで乾燥するのが一般的である。吸入用粒子に関して「乾燥」とは組成物がエアゾールを形成するために粒子を吸入装置に容易に分散できるような含水率をもつことを意味する。
【0042】
「賦形剤」とは一般に噴霧凍結乾燥工程中に治療剤の安定性を増加し、同工程後に粉末製剤の長期安定性と流動性のために添加される化合物又は材料を意味する。適切な賦形剤は例えば水と接触しても濃化又は重合せず、患者が吸引した場合に基本的に無害であり、その生物活性を変化させるような方法で治療剤と有意に相互作用しない物質とすることができる。適切な賦形剤については以下に記載し、限定されないが、ヒト及びウシ血清アルブミン、ゼラチン、イムノグロブリン等の蛋白質;単糖類(ガラクトース、D−マンノー
ス、ソルボース等)、二糖類(ラクトース、トレハロース、スクロース等)、シクロデキストリン、及び多糖類(ラフィノース、マルトデキストリン、デキストラン等)等の炭水化物;グルタミン酸1ナトルウム、グリシン、アラニン、アルギニン又はヒスチジン、及び疎水性アミノ酸(トリプトファン、チロシン、ロイシン、フェニルアラニン等)等のアミノ酸;ベタイン等のメチルアミン;硫酸マグネシウム等の賦形剤塩;3価以上の高級糖アルコール(例えばグリセリン、エリスリトール、グリセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、及びマンニトール)等のポリオール;プロピレングリコール;ポリエチレングリコール;プルロニック;界面活性剤;及びその組合せが挙げられる。賦形剤は本発明の溶液又は懸濁液の多機能成分とすることができる。
【0043】
「ガラス」又は「ガラス状態」又は「ガラスマトリックス」とは流動性が著しく低下した液体、即ち粘度が非常に高く、1010〜1014パスカル秒である液体を意味する。これは分子が振動運動するが、回転及び並進成分が非常に遅い(殆ど測定不能)準安定非晶質系とみなすことができる。準安定系はガラス転移温度よりも十分低温で保存した場合に長期間安定である。ガラスは熱力学的平衡状態にないので、ガラス転移温度又はその付近の温度でガラスを保存すると、平衡まで弛緩し、その高粘度が低下する。その結果、ゴム状又はシロップ状の流動性液体となり、多くの場合には化学的及び構造的に不安定になる。ガラスは多数の異なる経路により得ることができるが、経路に関係なく物理的及び構造的に同一材料であると思われる。本発明の目的でガラスマトリックスを得るために使用される方法は一般に溶媒昇華及び/又は蒸発法である。
【0044】
「ガラス転移温度」は記号Tで表され、組成物がガラス状態からシロップ又はゴム状態に変化する温度である。一般に、Tは示差走査熱量分析(DSC)を使用して測定され、標準的には転移点の走査により組成物の熱容量(Cp)変化が開始する温度とみなされる。Tの定義は常に任意であり、現在国際条約はない。Tは転移の開始、中間点又は終点として定義するこができ、本発明の目的ではDSC及びDERを使用した場合のCp変化の開始を使用する。C.A.Angellの論文「Formation of Glasses from Liquids and Biopolymers」:Science,267,1924−1935(Mar.31,1995)及びJan P.Wolanczykの論文「Differential Scanning Calorimetry Analysis of Glass Transitions」:Cryo−Letters,10,73−76(1989)参照。数学的処理の詳細についてはGibbsとDiMarzio著「Nature of the Glass Transition and the Glassy State」:Journal of Chemical Physics,28,NO.3,373−383(March,1958)参照。これらの論文は参考資料として本明細書に組込む。
【0045】
「浸透促進剤」は薬剤の粘膜又は内層浸透を促進し、一般に鼻腔内、直腸内、及び膣内で使用される表面活性化合物である。
【0046】
「医薬的に許容可能」な賦形剤(担体、添加剤)は使用される活性成分の有効用量を提供するために対象哺乳動物に妥当に投与できるものである。これらは米国食品医薬品局(FDA)が現在までに「一般に安全とみなす(Generally Regarded as Safe(GRAS))」と指定している賦形剤が好ましい。
【0047】
「医薬組成物」とは活性成分の生物活性を明白に有効にできる形態であり、組成物を投与する対象に毒性の付加成分を含有しない調製物を意味する。
【0048】
「ポリオール」は複数のヒドロキシル基をもつ物質であり、例えば糖類(還元性及び非還元性糖類)、糖アルコール及び糖酸が挙げられる。本発明で好ましいポリオールは約6
00kDa未満(例えば約120〜約400kDa)の分子量をもつ。「還元性糖」は金属イオンを還元するか又はリジン及び蛋白質中の他の基と共有的に反応することができるヘミアセタール基を含むポリオールである。「非還元性糖」は還元性糖のこれらの特性をもたない糖である。還元性糖の例としてはフルクトース、マンノース、マルトース、ラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトース及びグルコースが挙げられる。非還元性糖としてはスクロース、トレハロース、ソルボース、メレジトース及びラフィノースが挙げられる。糖アルコールの例としてはマンニトール、キシリトール、エリスリトール、スレイトール、ソルビトール及びグリセロールが挙げられる。糖酸としてはL−グルコン酸とその金属塩が挙げられる。
【0049】
「粉末」とは比較的さらさらしており、吸入装置に容易に分散することができ、その後、患者が吸引できる微細に分散した固体粒子から構成される組成物を意味し、従って、粒子が鼻腔粘膜を含む上気道を介する鼻腔内又は肺投与に適するものである。
【0050】
組成物の「推奨保存温度」は安定した送達用量を確保するように組成物の保存期間にわたって薬剤の安定性を維持するために粉末薬剤組成物を保存すべき温度(T)である。この温度はまず組成物の製造業者により決定され、組成物の販売認可に関与する政府機関(例えば米国食品医薬品局)により認可される。この温度は製剤中の活性薬剤及び他の材料の温度感受性に応じて認可薬剤毎に異なる。推奨保存温度は約0〜約40℃であるが、一般には周囲温度即ち約25℃である。通常、薬剤は推奨保存温度以下の温度に維持される。
【0051】
所与時点における酵素等の生物活性材料の生物活性が例えば結合アッセイで測定した場合に医薬組成物の製造時の生物活性の約10%以内(アッセイの誤差以内)にある場合に生物活性材料は医薬組成物中で「その生物活性を維持する」。抗体等の蛋白質では、サイズ排除HPLC、FTIR、DSC、CD、ELISA等の分析技術による純度を生物活性に相関させることができる。生きたウイルスの場合には、組成物のウイルス力価が初期力価の1log以内にある場合に生物活性は維持されているとみなすことができる。生きたインフルエンザウイルスの力価を測定するために使用されるアッセイは蛍光フォーカスアッセイ(Fluorescent Focus Assay(FFAアッセイ))である。このアッセイからの力価はml当たりの蛍光フォーカス単位(FFU/ml)として報告される。1FFU/mlは1組織培養感染量/ml(TCID50/ml)にほぼ等しい。他の「生物活性」アッセイについては以下に詳述する。
【0052】
例えば所与時点における化学的安定性が上記定義により生物活性材料がその生物活性を維持するとみなされる程度である場合に生物活性材料は医薬組成物中で「その化学的安定性を維持する」。あるいは、化学的安定性は例えば適当な分析手段により評価した場合に生物材料の構造に有意変化がない場合として定義することができる。化学的安定性は生物活性材料の化学的改変形を検出及び定量することにより評価することができる。化学的改変としてはサイズ改変(例えば蛋白質の短縮)が挙げられ、例えばサイズ排除クロマトグラフィー、SDS−PAGE及び/又はマトリックス支援レーザー脱離イオン化/飛行時間質量分析(MALDI/TOF MS)を使用して評価することができる。他の型の化学的改変としては(例えば脱アミド化の結果として生じる)電荷改変が挙げられ、例えばイオン交換クロマトグラフィーにより評価することができる。
【0053】
例えば色及び/又は透明度の目視試験、又はUV光散乱もしくはサイズ排除クロマトグラフィーにより測定した場合に凝集、沈殿及び/又は変性の有意増加を示さない場合に生物活性材料は医薬組成物中で「その物理的安定性を維持する」。
【0054】
「安定」な製剤又は組成物はその生物活性材料が保存後にその物理的安定性及び/又は
化学的安定性及び/又は生物活性をほぼ維持するものである。安定性を測定するための種々の分析技術が当分野で入手可能であり、例えばPeptide and Protein Drug Delivery,247−301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991)及びJones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29−90(1993)に記載されている。安定性は選択温度で選択時間測定することができる。材料を実際に保存する前に予想保存期間を推定するためには傾向分析を使用することができる。生きたインフルエンザウイルスでは、安定性は1log FFU/ml又は1log TCID50/mlの低下に要する時間として定義される。組成物は室温(〜25℃)で少なくとも3カ月、及び/又は約2〜8℃で少なくとも1年間安定であることが好ましい。更に、組成物は組成物の(例えば−70℃までの)凍結と融解後に安定であることが好ましい。
【0055】
本明細書で使用する高圧ガス又は近超臨界乾燥とは、高圧ガス又は近超臨界流体と混合した懸濁液又は溶液から水又は有機試薬等の溶媒を除去することを意味する。高圧又は超臨界乾燥は、例えば活性成分を含有する溶液又は溶媒を加圧ガス又は超臨界流体と混合して液体とガスの混合物を形成する段階と、気−液混合物の減圧、発泡、又は脱気により懸濁液又は溶液を噴霧して微細液滴を発生する段階を含むことができる。超臨界乾燥法では例えば超臨界二酸化炭素等の多数の超臨界流体を使用することができる。
【0056】
「近超臨界流体」とは臨界点圧力及び/又は温度(ケルビン温度)の約10%以内に維持された流体を意味する。臨界点は温度(臨界温度)を上げるか又は圧力(臨界圧力)を下げたならば物質が液体として存在できなくなる温度と圧力の組合せである。臨界温度はその温度を越えると気体が液化できなくなる温度であり、その温度を越えると物質が所与圧力で気相と液相を別々に示すことができなくなる温度である。臨界圧力は臨界温度で気体(蒸気)を液化させるために必要な圧力である。例えば、二酸化炭素の臨界圧力と臨界温度は夫々74気圧と31℃である。その臨界点を上回る圧力と温度に維持された二酸化炭素は超臨界状態にある。他の物質の臨界圧力と臨界温度を下表に示す。
【表1】

【0057】
薬理学的意味では、生物活性材料の「治療有効量」とは疾患の予防又は治療に有効な量を意味し、「疾患」は生物活性材料による処置の恩恵を受ける任意状態である。これは慢性及び急性疾患又は疾病を含み、哺乳動物を該当疾患にかかりやすくする病態も含む。
【0058】
「処置」は治療処置と予防処置の両者を意味する。処置を要する対象としては、既に疾患をもつものと、疾患を予防すべきものを含む。
【0059】
「単位製剤」とは治療有効量の本発明の組成物を収容する容器を意味する。
図面の簡単な説明
【0060】
図1A及び1Bは近超臨界COを使用して噴霧した場合の100ミクロンフューズドシリカノズルからの液滴サイズをノズル先端からの距離の関数として示す。
【0061】
図2は加圧窒素ガスを使用して噴霧した場合の100ミクロンフューズドシリカノズルからの液滴サイズをノズル先端からの距離の関数として示す。
【0062】
図3は粒度に及ぼす噴霧圧の効果を示すヒストグラムを示す。
【0063】
図4はB/ハルビン生ウイルスワクチンを含有する噴霧乾燥製剤の乾燥粉末粒度分布を示す。
【0064】
図5は示差走査熱量計(DSC)を使用して測定したAVO47製剤のガラス転移温度を示す。
【0065】
図6は典型的噴霧乾燥粉末の形態を示す。
【0066】
図7は噴霧乾燥粉末製剤AVO47のx線回折データを示す。回折パターンはAVO47製剤のガラス非晶質性を示した。
【0067】
図8は製剤AVO47aで噴霧乾燥した生きたB/ハルビンインフルエンザウイルスの長期安定性を示す。
【0068】
図9は典型的超臨界CO噴霧乾燥システムの模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
本発明の方法、装置、及び組成物は乾燥粉末粒子のマトリックスで生物活性材料の高い初期純度と長期保存を実現する。本方法は例えば混合チャンバーで生物活性材料の製剤を高圧ガス及び/又は近超臨界ガスと混合した後にノズルから噴霧して微細ミストを生成することにより高温加熱せずに液滴を迅速に乾燥して粒子とする。ミスト液滴から溶媒が迅速に蒸発し、残った乾燥粒子を更に二次乾燥チャンバーで脱水することができる。本発明の製剤としては例えば生物活性材料とポリオール、ポリマー、アミノ酸、及び/又は界面活性剤の懸濁液又は溶液が挙げられ、乾燥して安定な防腐マトリックスにすることができる。
粉末粒子の製造方法
【0070】
本発明の方法は例えば生物活性材料懸濁液又は溶液を近超臨界流体及び/又は高圧ガスと混合する段階と、混合物を発泡させて液滴の微細ミスト(懸濁ガス)を形成する段階と、粒子形成容器及び/又は二次乾燥チャンバーで液滴を乾燥して粉末粒子にする段階を含む。近超臨界ガスとの混合物から懸濁液又は溶液を発泡させると、低剪断応力と比較的低温の条件下で非常に微細な液滴を生成することができる。発泡中の迅速な脱水と微細な粒度により、粒子形成容器及び/又は二次乾燥チャンバーで比較的温和な乾燥条件が可能になる。低剪断噴霧、低温一次乾燥、及び/又は温和な二次乾燥条件により、粉末粒子内の生物活性材料のプロセス分解を減らすと共に、粒子の保存安定性を増すことができる。
【0071】
本発明における粉末粒子の製造方法は例えば溶液又は懸濁液を製造する段階と、高圧ガス及び/又は近超臨界流体と混合する段階と、一次乾燥用粒子形成チャンバーに噴霧する段階と、粒子を二次乾燥する段階と、安定な乾燥物粉末粒子を回収する段階を含む。水性懸濁液又は溶液は例えば生物活性材料、ポリオール、ポリマー、アミノ酸、及び界面活性剤を含むことができる。近超臨界流体は例えば二酸化炭素とすることができる。混合物は例えばキャピラリーレストリクタースプレーノズル出口に隣接する混合チャンバーで形成することができる。噴霧中のガスの発泡は懸濁液又は溶液を分裂させ、迅速に乾燥する微細液滴にすることができる。二次乾燥は例えば温度/湿度を制御したガスの渦流又は流動
層に粒子を懸濁することにより実施することができる。粉末粒子製品は例えばサイジング後に沈降により回収することができる。
懸濁液又は溶液の製造
【0072】
本発明の懸濁液又は溶液(液体フィード材料)は例えば水溶液中にポリオール、ポリマー、界面活性剤、アミノ酸、及び/又は緩衝液と配合した生物活性材料を含むことができる。当業者に自明の通り、成分は成分に適した方法を使用して順次添加することができる。例えば、ウイルスや細菌等の生物活性材料は例えば遠心分離又は濾過により増殖培地から濃縮分離した後にポリオール溶液と混合して懸濁液を形成することができる。抗体は例えばアフィニティークロマトグラフィーにより精製及び濃縮した後に他の製剤成分と共に溶液に溶解することができる。噴霧用懸濁液又は溶液は生物活性材料、ポリオール、及び他の賦形剤を水溶液中で混合することにより製造することができる。例えばペプチドや抗体等の所定生物活性材料は水溶液に溶け易い。例えば細菌やリポソーム等の生物活性材料は懸濁液として存在する粒子であり得る。生物活性材料が溶液になるか懸濁液になるかに関係なく、多くの場合には例えば噴霧用製剤に混合する際に苛酷な剪断応力又は温度条件を避けることが必要である。製剤成分によっては溶液にするために加熱や強い撹拌が必要であるが、その場合には例えば別々に溶かしてから冷却後に生物活性材料と温和にブレンドすることができる。
【0073】
本発明の生物活性材料は例えば工業試薬、分析試薬、ワクチン、薬剤、治療薬等とすることができる。本発明の生物活性材料としては例えば蛋白質、ペプチド、核酸、細菌、細胞、抗体、酵素、血清、ワクチン、リポソーム、ウイルス、及び/又は同等物が挙げられる。生物活性材料は例えば生細胞及び/又は生存可能なウイルスとすることができる。生物活性材料は例えばワクチン又は治療剤の送達担体として有用な非生存細胞又はリポソームとすることができる。本発明のウイルス生物活性材料は例えばインフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器多核体ウイルス、単純ヘルペスウイルス、SARSウイルス、コロナウイルスファミリーメンバー、サイトメガロウイルス、ヒトメタニューモウイルス、エプスタイン・バールウイルス、及び/又は同等物等の生きたウイルスとすることができる。これらの材料の溶液又は懸濁液製剤の製造段階は各材料の固有の感受性により異なる。
【0074】
懸濁液又は溶液中の生物活性材料の濃度は例えば比活性、賦形剤の濃度、投与経路、及び/又は材料の所期用途に応じて広い範囲をとることができる。生物活性材料が例えばペプチドワクチン、生きたウイルス又は細菌である場合には、必要材料濃度は非常に低くすることができる。生物活性材料が例えば吸入による治療投与用抗体又は局所投与用リポソームである場合には、必要濃度はもっと高くすることができる。一般に、生物活性材料は例えば必要に応じて約1pg/ml未満〜約150mg/ml、約5mg/ml〜約80mg/ml、又は約50mg/mlの濃度で本発明の溶液又は懸濁液中に存在することができる。
【0075】
生物活性材料の懸濁液又は溶液には例えば種々のポリオールの任意のものを添加することができる。本発明の方法では、ポリオールは例えば粘度増加剤として機能し、噴霧中に剪断応力の作用を弱めることができる。ポリオールは本発明の乾燥粉末粒子の保護バリヤー及び薬品としても機能することができる。例えば、スクロース等のポリオールは生物活性材料を物理的に包囲し、損傷性の光、酸素、水分、及び/又は同等物との接触から保護することができる。ポリオールは例えば乾燥中に失われた水和水に置換し、材料の生体分子の変性を防ぐことができる。本発明は特定ポリオールに限定されないが、懸濁液又は溶液及び粉末粒子組成物は例えばスクロース、トレハロース、ソルボース、メレジトース、ソルビトール、スタチオース、ラフィノース、フルクトース、マンノース、マルトース、ラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトース、グルコ
ース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、スレイトール、ソルビトール、グリセロール、L−グルコン酸塩、及び/又は同等物を含むことができる。製剤が凍結−融解安定性であることが所望される場合には、ポリオールは製剤中の生物活性材料を不安定にするような凝固温度(例えば−20℃)で結晶化しないものが好ましい。製剤中のポリオールの使用量は生物活性材料と他の賦形剤の種類、及び所期用途により異なる。しかし、懸濁液又は溶液は一般に約1%〜40%、より好ましくは約1〜20%の濃度で非還元性糖を含む。特に好ましい態様では、懸濁液又は溶液は約10%のスクロースを含有する。
【0076】
本方法の懸濁液又は溶液には例えば保護及び構造効果を与えるためにポリマーを加えることができる。ポリオールと同様に、ポリマーは例えば生物活性材料に物理的及び化学的保護を与えることができる。直鎖又は分枝鎖ポリマーは例えば本発明の粒子組成物に高い構造強度を与えることができる。ポリマーは保護及び/又は徐放コートとして本発明の粉末粒子の外側に付着することができる。多くのポリマーは例えば高度に水溶性であるため、乾燥粒子の再構成をさほど妨げない。ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリアミノ酸(例えばポリL−リジン)等の多くのポリマーは水溶液中の再構成速度を有意に増すことができる。本発明の方法におけるポリマー保護剤としては、例えば澱粉及び澱粉誘導体(例えば酸化澱粉、カルボキシメチルスターチ及びヒドロキシエチルスターチ(HES))、加水分解ゼラチン、非加水分解ゼラチン、オボアルブミン、コラーゲン、コンドロイチン硫酸、シアル酸化多糖、アクチン、ミオシン、微小管、ダイニン、カイネチン、ヒト血清アルブミン、及び/又は同等物が挙げられる。分子量約100,000〜300,000、より好ましくは約200,000のHESを使用すると好ましい。一般に、HESの濃度は約0.5〜約10%、より好ましくは約1〜5%である。好適製剤は約5%のHESを含有する。
【0077】
本発明の懸濁液及び溶液には例えば使用する特定生物活性材料に適合性の界面活性剤を添加することができる。界面活性剤は他の製剤成分の溶解度を上げ、より高濃度での凝集又は沈殿を避けることができる。界面活性剤は例えば生物活性材料が気液界面で変性しないように、及び/又は噴霧中により微細な液滴を形成できるように懸濁液又は溶液の表面張力を下げることができる。本発明による懸濁液又は溶液は約0.001〜5%、好ましくは約0.05〜1%、又は約0.2%の非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、又はその組合せを含むことができる。
【0078】
例えば本発明の方法の製剤及び組成物に適切な安定したpHを提供するために本発明の方法の製剤には緩衝液を添加することができる。本発明の典型的な緩衝液としては、例えばアミノ酸、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ヒスチジン、グリシン、琥珀酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、及び/又は炭酸塩が挙げられる。緩衝液は例えば約pH3〜約pH10、約pH4〜約pH8の範囲でpH安定性を提供するように適当な酸及び塩形態に調整することができる。多くの組成物には例えばpH7.2等の中性付近のpHが好ましい。
【0079】
他の賦形剤も製剤に添加することができる。例えば、アルギニンやメチオニン等のアミノ酸を製剤及び組成物の成分とすることができる。アミノ酸は例えば処理表面及び保存容器上の荷電基をブロックする両性イオンとして機能し、生物活性材料の非特異的結合を防止することができる。アミノ酸は例えば酸化剤のスカベンジング、脱アミド化剤のスカベンジング、及び蛋白質のコンホメーションの安定化により組成物の安定性を増すことができる。別の例では、例えば粉末粒子組成物中でポリオール及び/又は可塑剤として機能するように本発明の製剤にグリセロールを添加することができる。例えば、製剤成分の凝集を弱めるため及び/又は有害なフリーラジカル化学反応を開始する可能性のある金属イオンをスカベンジするために組成物にEDTAを添加することができる。
混合と噴霧
【0080】
本発明の懸濁液又は溶液は例えばチャンバー内で高圧ガス又は近超臨界流体と混合した後にキャピラリーレストリクターノズル出口を通して噴霧し、液滴の微細ミストを形成する。特定理論に結び付けるものではないが、高圧ガス又は近超臨界流体を懸濁液又は溶液と混合することにより、加圧流体で飽和及び/又は包囲された液滴のエマルション混合物を提供することができる。混合物がスプレーノズルから放出されるにつれて圧力は迅速に低下して爆発性発泡、及び/又は起泡(脱気)を生じ、液滴を分裂させて微細ミスト(液滴の懸濁ガス)にする。このようなミストは例えばより低圧(例えば100psi未満)での噴霧又は近超臨界流体の不在下の噴霧で得られるよりも微細にすることができる。液滴は例えば相転移中に冷温と接触するか、又は混合物の分解に伴う断熱発泡を受けることができる。同一微細液滴を提供するために十分高い圧力で水噴霧(即ちガス不在下の液体噴霧)を使用する場合よりも剪断応力を小さくすることができる。
【0081】
懸濁液又は溶液は例えば混合チャンバーで近超臨界流体及び/又は高圧ガスと混合した後に噴霧して粒子形成チャンバーで発泡させる。懸濁液又は溶液は容器(第1のチャンバー)に保持し、導管を通して混合チャンバーに供給することができる。懸濁液又は溶液は例えば容器の加圧又は高圧ポンプによるポンピングにより混合チャンバーに導入することができる。高圧ガス及び/又は近超臨界流体は例えば加圧容器(第2のチャンバー)から導管を通して混合チャンバーに供給することができる。混合チャンバーは例えば流動混合物中に渦流又は乱流を生成するように構成されたノズル構造の内側の拡大導管とすることができる。例えば、ガス又は流体と懸濁液又は溶液成分に応じて、生物活性材料は粒子、エマルション、沈殿、及び/又は溶質として混合物中に存在することができる。
【0082】
本発明のスプレーノズルは液滴の所望微細ミストを提供するように適応させることができる。ノズルは例えば内径約50um〜約1000um、又は約100umのキャピラリーレストリクタースプレーオリフィスに混合物を供給する導管をもつことができる。1好適態様では、圧力が迅速に低下すると流体が迅速に気体に転移してエマルション液滴を分散するように、混合物は加圧ガス又は近超臨界流体中の懸濁液又は溶液のエマルションを含む。圧力解放は例えばガス形成が爆発性で生物活性材料を含む微細液滴を形成するように十分に迅速に行うことができる。より具体的には、超臨界COにより噴霧すると、超微細噴霧液滴を発生することが判明した。液滴サイズは図1A及び1Bに示すようにノズルからの距離と共に変化することが判明した。特定理論に結び付けるものではないが、図1Bに示すように、混合物は低剪断応力下にノズル10から噴霧して混合物の比較的大きい液滴11を形成し、大きい液滴は爆発領域12で発泡及び/又は起泡し、懸濁液又は溶液液滴のミスト13になると考えられる。例えば、図1Aに示すように、約0〜約2cmの距離で液滴は約400μmの平均粒度をもつことができ、ノズルオリフィスからたった3cmの爆発領域で約10μmの液滴サイズまで分裂することができる。このような超微細液滴生成は例えば圧力約1000psi以上の高圧慣用ガスにより生成することができる(図2参照)。
【0083】
当業者に自明の通り、粒状製品における粒度、粒度分布、形状及び形態等のパラメーターの制御は本発明の方法を実施する際に使用する操作条件に依存する。変数としては超臨界流体の流速、溶液又は懸濁液の流速、生物活性材料と賦形剤の濃度、ノズルの直径と長さ、粒子の表面電荷、並びに粒子形成チャンバーと二次乾燥チャンバーの内側の相対湿度、温度及び圧力が挙げられる。例えば、図3に示すように、粒度は噴霧圧の増加と共に小さくすることができる。ヒストグラムによると、高噴霧圧30では、得られる平均粒度は約10um未満であり、集団粒度範囲は比較的狭い。中噴霧圧31では平均粒度は約45umであり、低噴霧圧32では粒度は約200umであり、いずれも集団粒度範囲は比較的広かった。
【0084】
所望粒度、粒度分布、形状及び/又は形態を達成するようにノズルを通る高圧ガス/近超臨界流体及び/又は懸濁液/溶液の流速を制御することができる。流速は導管内の独立バルブ、好ましくはニードルバルブを調節することにより設定することができる。流速は高圧ガス/近超臨界流体及び/又は懸濁液/溶液のポンピング条件を変えることにより制御することもできる。本発明では一般に粒子に乾燥する前の平均粒度が約1um〜約50um、又は約5umの液滴が生成される。
【0085】
近超臨界流体は一般に流体の臨界圧付近で混合チャンバーに導入される。高圧ガスは一般に約1000psiを上回る圧力で混合チャンバーに導入される。懸濁液又は溶液は一般に流速約0.5ml/分〜約50ml/分、又は約3ml/分(100umキャピラリーレストリクターの場合)〜約30ml/分と超臨界流体の圧力付近の圧力で混合チャンバーに導入される。高圧ガス又は近超臨界流体流速と懸濁液又は溶液流速の質量流量比(気/液)は約0.1〜100、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10、最も好ましくは約5とすることができる。懸濁液又は溶液の割合が高く、流速が高いほど、液滴と乾燥粒子のサイズを増すことができる。本発明における粉末粒子は例えば平均粒度が約200um未満、約0.5um〜約150um、一般には約1um〜約15um、好ましくは約3um〜約10um、最も好ましくは約5um〜約10umとなるように制御することができる(図4参照)。液滴サイズ(質量中央径−MMDとして測定)は約1um〜400um、約1um〜約200um、好ましくは約5um〜約50um、最も好ましくは約3um〜約10umの範囲となるように制御することができる。
【0086】
本発明の溶液又は懸濁液を噴霧するのに適した加圧ガスとしては、例えば約100ポンド/平方インチ(psi)〜約15,000psiの圧力の窒素、二酸化炭素、酸素、プロパン、亜酸化窒素、ヘリウム、水素及び/又は同等物が挙げられる。超臨界流体として使用するのに適した多数の流体が当分野で公知であり、例えば二酸化炭素、六フッ化硫黄、クロロフルオロカーボン、フルオロカーボン、亜酸化窒素、キセノン、プロパン、n−ペンタン、エタノール、窒素、水、当分野で公知の他の流体、及びその混合物が挙げられる。超臨界流体は二酸化炭素又は二酸化炭素と別のガス(例えばフルオロホルム)及び/又は改質剤(例えばエタノール)の混合物が好ましい。本方法で懸濁液又は溶液と混合する加圧ガス及び/又は超臨界流体の温度は例えば約0℃〜約60℃とすることができる。1典型的態様では、近超臨界流体は圧力約1000psiのCOである。例えば、500、750及び950の低二酸化炭素圧下(近臨界条件下)に微粒子を分散することもできる。近臨界流体はその臨界圧及び/又は温度(ケルビン温度)の0.9〜1.0倍の圧力に維持された物質として定義されている(King,M.B.,and Bott,T.R.,eds.(1993),「Extraction of Natural Products using Near−Critical solvents,」(Blackie Acad & Prof.,Glasgow)pp.1−33)。
【0087】
超臨界流体は場合により1種以上の改質剤を含むことができ、限定されないが、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、及び/又はアセトンが挙げられる。改質剤を使用する場合には、超臨界流体の容量の20%以下、より好ましくは1〜10%とすることが好ましい。「改質剤」なる用語は当業者に周知である。改質剤(又は補助溶媒)は、超臨界流体に加えると、その臨界点又はその付近における超臨界流体の固有特性又は束一性を変化させる薬品と言うことができる。
【0088】
液滴の一次乾燥は例えば気−液混合物の発泡中に開始することができる。一次乾燥は例えば液滴を一次乾燥粒子に変換することができる。懸濁液又は溶液の溶媒によっては例えば発泡が開始する前でも近超臨界流体に溶かすことができる。スプレーが発泡するにつれて流体は気体に状態変化し、潜熱を除去し、ミストを冷却することができる。爆発性発泡
は混合液滴をより小さい液滴に分解することができる。高圧ガス又は超臨界流体が液滴から脱気すると、液滴を更に微細な液滴に分裂することができる。微細な液滴の周囲のガスと蒸気は粒子形成容器を流れる乾燥ガス流で置換(即ち交換)することができる。乾燥ガスと接触させると相当量の溶媒を液滴から蒸発させることができ、これは液滴の表面積/体積比が高く、乾燥ガスが中温であり、乾燥ガスの相対湿度が低いために加速することができる。粒子形成容器で二次乾燥を行うことができ、及び/又は乾燥ガスは更に残留水分を減らすための二次乾燥チャンバーに微細液滴及び/又は一次乾燥粒子を輸送することができる。
【0089】
場合により、液滴を凍結させるために液滴の微細ミストを冷流体流中に噴霧することができる。冷流は例えば温度約−60℃〜約−200℃のガス(例えばCO)又は液体(液体窒素)とすることができる。凍結した液滴を低圧(即ち大気圧未満の圧力)環境に暴露し、昇華により氷を除去して例えば低密度凍結乾燥粉末粒子を形成することができる。
二次乾燥
【0090】
構造的に安定化された一次乾燥粒子の二次乾燥は例えばトラップされた溶媒、残留水分、及び/又は分子水和水を更に除去し、例えば周囲温度で長期間保存時に安定な有意低含水率の粉末粒子の組成物を提供することができる。二次乾燥は例えば粒子を乾燥ガスの渦流に懸濁するか、粒子を乾燥ガスの流動層に懸濁するか、及び/又は高真空中で粒子に中温を数時間〜数日間加えることにより実施することができる。迅速な乾燥と噴霧及び一次乾燥中に形成される微細粒度により、本発明の方法では二次乾燥温度及び時間を低減することができる。
【0091】
例えば粒子の含水率を更に低げるために二次乾燥条件を使用することができる。粒子を二次乾燥チャンバーで捕集し、乾燥(水分<1%)製剤のガラス転移温度(図5参照)よりも低温又は約5℃〜約90℃、又は約25℃〜約65℃、又は約35℃に維持することができる。チャンバーは低圧を維持することができ、二次乾燥は残留水分が所望レベルに低下するまで例えば約2時間〜約5日間、又は約4時間〜約48時間続けることができる。二次乾燥はチャンバー内に乾燥ガスの上昇流を提供して粉末粒子の流動層懸濁系を形成することにより加速することができる。残留水分の低い粒子は一般に良好な継時的保存安定性を示す。二次乾燥は粉末粒子の残留水分が約0.5%〜約10%、又は約5%未満になるまで続けることができる。残留水分値が非常に低いと、生物活性分子によっては水和水分子の損失により変性することがある。この変性は多くの場合にはプロセス懸濁液又は溶液中に糖、ポリオール、及び/又はポリマー等の代替水素結合分子を加えることにより緩和することができる。
【0092】
本明細書に記載する装置と方法は効率が高いため、一般に使用されている方法に比較して比較的低温で乾燥を達成することができる。更に、断熱発泡中に混合物の温度は低下すること、即ち得られる液滴の周囲の純温度は自己冷却により低くなることも判明した。粒子形成容器と粒子捕集器内のガスの温度は乾燥粉末粒子のT又は生物活性材料の変性温度以下に維持することができ、一般には約90℃以下、好ましくは約25〜約80℃、より好ましくは約30〜約50℃、又は約35℃である。乾燥温度が低下すると乾燥プロセスからの活性低下が最小限になり、プロセスから回収される乾燥微粒子に維持される生物活性を高めることができる。
【0093】
乾燥ガスはリサイクルし、所望乾燥条件を提供するように調整することができる。乾燥ガスは乾燥中の生物活性材料の化学分解を避けるように窒素等の実質的に不活性ガスとすることができる。ガスは粒子形成容器及び/又は二次乾燥チャンバーから循環させ、デシケーター又はコンデンサーを通して水分を除去し、熱交換器を通してガスを加熱又は冷却して所望乾燥温度とし、例えば粒子形成チャンバーにリサイクルすることができる。電荷
蓄積を減らすため及び/又は微粒子がより大きなサイズに凝集する速度を抑制するためにイオン発生器から粒子流にイオンを注入することができる。
【0094】
本発明の粉末粒子は例えば製品の取り扱い、再構成及び/又は投与要件に適した乾燥後粒度をもつことができる。例えば、吸入による深部肺送達よりも吸入による鼻腔内送達による投与に用いる生物活性材料の粉末粒子のほうが大きく、前者の約0.1um〜約10umに対して約20um〜約150umとすることができる。ゆっくりと再構成する製品の粒度は粒子の溶解を速めるように小さくすることができる。噴霧凍結乾燥粒子は残留固形分により支持されるケーキ構造を崩さずに液滴から氷を除去できるので、例えばより低密度にすることができる。このような粒子は例えばその空気力学的半径により吸入投与に適した物理的に大きい粒度にすることができる。プロセス条件によっては、本発明における粉末粒子は中空半球形にすることもできる(図6参照)。凍結乾燥粒子は例えば液滴から乾燥した粒子よりも大きくすることができるが、凍結乾燥粒子の多孔性により迅速な再構成性を維持することができる。本発明の粉末粒子は例えば約0.1um〜約200um、約1um〜約50um、又は約2um〜約20umの平均物理的直径とすることができる(図4参照)。
【0095】
二次乾燥工程中に、例えばスプレーコート又は他の保護コーティングを粒子に付着することができる。例えば、渦流又は流動層中の乾燥粒子の懸濁系にポリマー溶液のミストを噴霧することができる。
【0096】
本発明の方法の結果、例えば非晶質ガラスマトリックス中に少なくとも1種の生物活性材料を含む医薬的に許容可能な粉末粒子が得られる。組成物はほぼ完全に乾燥状態であることが好ましい。多少の水又は他の水性溶媒が組成物中に残留していてもよいが、一般には残留水分は約5重量%以下とする。乾燥温度は約90℃未満、約25℃〜約80℃、約30℃〜約50℃、又は約35℃とすることができる。典型的二次乾燥工程は例えば温度を約30℃〜約55℃の乾燥温度まで上げる段階と、約0.5日〜約5日間保温して残留水分0.1%〜約5%、又は約3%の安定な乾燥粉末組成物を得る段階を含むことができる。本明細書で「乾燥」、「乾燥した」、及び「実質的に乾燥した」と言う場合には、水分が約0%〜約5%の組成物を意味する。粉末マトリックスはカールフィッシャー法を使用して測定した場合に含水率約0.1%〜約3%であることが好ましい。
【0097】
得られる製品は非晶質固体(図7のX線結晶図参照)とすることができ、ガラス状賦形剤(例えばスクロース)が非晶質ガラス状態であり、生物活性材料を封入することにより、分子移動を実質的に制限すると共に蛋白質変性を防止する。特定理論に結び付けるものではないが、このプロセスは非晶質ガラスによる蛋白質もしくは活性成分の機械的固相化又は蛋白質上の極性荷電基との水素結合即ち水置換により生じ、乾燥による変性を防ぐと共に有害又は分解性の相互作用の進行を抑制するとみなされている。ガラスマトリックス安定化理論は一般的生物防腐現象を説明する有用且つ簡単な方法になっている。しかし、近年文献に蓄積されたデータは、ガラス状態が長期安定化に必要でも十分でもないことを多数の例で示唆している。生物材料の安定化に関与するメカニズムは多因子であり、活性成分を封入する粉末マトリックスの非晶質種に限定されないことに留意することが重要である。本明細書に記載する方法による安定化は多数の因子を含むことができ、限定されないが、生物材料の熱履歴、蛋白質側鎖のコンホメーション移動度及びフレキシビリティの低下及び/又は封入の結果としての空隙率の低下、マトリックスの構造剛性の改善、活性成分からの賦形剤の相分離の低下、最適水素結合供与体の選択による水置換度の改善が挙げられる。最後の因子は安定化される蛋白質、核酸、炭水化物、又は脂質の表面に対する賦形剤の親和性及びアビディティの関数である。一般に、固体がそのガラス転移温度よりも低温にあり、賦形剤中に残存する残留水分が比較的低い限り、脂質膜を含む不安定蛋白質及び/又は生物活性材料は比較的安定に維持することができる。
粒子中の生物活性材料の回収
【0098】
本発明の粉末粒子は所望活性と初期投与経路に適した形態で回収される。本発明の粉末粒子は例えば乾燥後に沈降又は濾過によりプロセス流から物理的に回収することができる。本発明の方法は温和なプロセス条件を使用するため、活性で安定な材料を高収率で回収することができる。本発明の方法は例えば高濃度溶液、エアゾールミスト、鼻腔内付着粒子、又は肺付着粒子としての投与に適した粒子を提供することができる。
【0099】
粉末粒子の物理的回収率は例えば噴霧乾燥装置により保持又は吐出される材料の量や、粒度選択法により生じる損失に依存し得る。例えば、生物活性材料を含むプロセス材料は配管系や噴霧乾燥装置の表面で失われる可能性がある。例えば噴霧液滴の凝集が進んでプロセス流から離れるとき又は小さい液滴が乾燥して微粒子となり、乾燥ガスにより二次乾燥チャンバーを通ってプロセス廃棄流に輸送されるときに溶液又は粒子はプロセス中で失われる可能性がある。本発明のプロセス収率(プロセスを経た入力活性材料の回収百分率)は例えば>約70%、又は約80%〜約98%、又は約90%とすることができる。
【0100】
例えば濾過、沈降、衝突吸着、及び/又は当分野で公知の他の手段により所望平均粒度及び粒度範囲の粒子を選択することができる。均質な細孔寸法の1個以上のフィルターでスクリーニングすることにより粒子をサイジングすることができる。大型粒子は液体又はガスの移動流中の粒子の懸濁系から落下させることにより分離することができる。回転流体流で小型又は低密度粒子を排出しながら、大型粒子を慣性衝突により流体流の外側の表面に吸着させることもできる。小型粒子は大型粒子が沈降する速度で移動する液体又はガス流で押し流すことにより分離することができる。
【0101】
活性な生物活性材料の回収率は例えば噴霧乾燥工程中の物理的損失、細胞分裂、変性、凝集、断片化、酸化、及び/又は同等現象により左右されることがある。プロセスにおける生物活性材料の回収率は回収される材料の物理的回収率と比活性の積である。入力活性と回収活性の差を「プロセス損失」と言うこともある。本発明の方法は例えばより多量の生物活性材料をプロセス仕様に合致する粉末粒子に変換することによりプロセス損失を低らすことができる。本発明の方法は例えば剪断応力を低下させ、乾燥時間を短縮し、乾燥温度を下げ、及び/又は安定性を増加する噴霧乾燥法を提供することにより、粉末粒子最終製品の比活性(活性生物活性材料/不活性生物活性材料)を従来技術よりも改善することもできる。比活性(例えば合計蛋白質又は合計ウイルス粒子に対する活性蛋白質又は生存可能なウイルスの比)は本発明の粒子形成プロセスを通して比較的一定に維持することができる。プロセス中の生物活性材料の比活性の変化は例えば約2%未満、約10%未満、約30%未満、又は約50%未満とすることができる。
生物活性材料の投与
【0102】
本発明の生物活性材料は必要に応じて例えば哺乳動物に投与することができる。本発明の生物活性材料としては例えばペプチド、ポリペプチド、蛋白質、ウイルス、細菌、抗体、リポソーム、及び/又は同等物が挙げられる。このような材料は治療薬、栄養剤、ワクチン、医薬、予防薬、及び/又は同等物として作用することができ、例えば,胃腸吸収、局所塗布、吸入、及び/又は注射により患者に投与した場合に効果を与えることができる。
【0103】
生物活性材料は局所塗布により患者に投与することができる。例えば、粉末粒子を唾液、キャリヤー軟膏、加圧液体、ガス推進剤、及び/又は浸透剤と直接混合し、患者の皮膚に塗布することができる。あるいは、粉末粒子を例えば水性溶媒で再構成した後に他の成分と混合してから塗布することもできる。
【0104】
本発明の生物活性材料は吸入により投与することができる。空気力学径約10um未満の乾燥粉末粒子を肺に吸引して肺投与することができる。場合により、空気力学径が約20um以上の粉末粒子を鼻腔内又は上気道に投与し、患者の粘膜への慣性衝突により空気流から除去してもよい。あるいは粉末粒子を再構成して懸濁液又は溶液とし、水性ミストとして吸引投与してもよい。
【0105】
本発明の生物活性材料は注射により投与することができる。粉末粒子は例えば高圧空気ジェットを使用して患者の皮下に直接投与することができる。より一般には、粉末粒子を例えば滅菌水性緩衝液で再構成し、中空注射針ど注射することができる。このような注射は必要に応じて例えば筋肉内、静脈内、皮下、鞘内、腹腔内等に行うことができる。本発明の粉末粒子は投薬と取り扱い条件に応じて例えば約0.1ng/ml未満から約1mg/ml未満〜約500mg/ml、又は約5mg/ml〜約400mg/mlの生物活性材料濃度の溶液又は懸濁液に再構成することができる。再構成した粉末粒子を更に希釈し、例えば多重ワクチン接種、IV輸液による投与等に使用することもできる。
【0106】
生物活性材料の妥当用量(「治療有効量」)は例えば処置する疾患、疾患の重篤度と段階、生物活性材料を予防目的に投与するのか又は治療目的に投与するのか、治療暦、患者の臨床暦と生物活性材料に対する応答、使用する生物活性材料の種類、及び主治医の裁量により異なる。生物活性材料は患者に1回又は一連の治療で適宜投与され、診断後の任意時点で患者に投与することができる。生物活性材料は単独処置として投与してもよいし、該当疾患の処置に有用な他の薬剤又は療法と併用してもよい。
【0107】
一般提案として、投与する生物活性材料の治療有効量は約0.00001(例えば生弱毒ウイルスワクチンの場合)〜約50mg/kg患者体重を1回以上投与し、蛋白質の典型的使用範囲は約0.01ng/kg未満〜約20mg/kg、より好ましくは約0.1mg/kg〜約15mg/kgを例えば毎日投与する。しかし、他の投与計画が有用な場合もある。この治療の進行は慣用技術により容易にモニターされる。
【0108】
本発明は更に高温で保存した乾燥生物活性材料の「保存期間」ないし保存安定性の増加方法に関する。保存安定性の増加は加速エージング試験で生物活性の回収率により測定することができる。本発明の方法により製造した乾燥粒子組成物は適切な任意温度で保存することができる。組成物は約0℃〜約80℃で保存することが好ましい。組成物は約20℃〜約60℃で保存するとより好ましい。組成物は周囲温度保存するのが最も好ましい。
本発明の組成物
【0109】
本発明の組成物としては、例えば本発明の方法で使用される懸濁液及び溶液の製剤と、ポリオール及び/又は他の賦形剤を加えたマトリックスで防腐した生物活性材料の安定粉末粒子製剤が挙げられる。組成物は例えば改善された安定性をもつ乾燥粒子を提供するように高圧ガス又は近超臨界流体を用いて噴霧するのに適した懸濁液又は溶液(液体フィード材料)とすることができる。生物活性材料の懸濁液又は溶液は例えばポリオール、ポリマー及び/又は界面活性剤を添加することができる。
乾燥粉末粒子の噴霧用懸濁液又は溶液
【0110】
本発明の乾燥粉末粒子組成物の製造用製剤は例えば生物活性材料、ポリマー、アミノ酸、ポリオール、界面活性剤、及び/又は緩衝液を含むことができる。このような製剤を本発明の方法により処理し、生物活性材料の保存及び投与用の安定な組成物を提供することができる。例えば、本発明の組成物は近超臨界二酸化炭素による噴霧乾燥用として、インフルエンザウイルスとスクロース、HES、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックコポリマー(Pluronic)の水性懸濁液とすることができる。
【0111】
本発明の生物活性材料としては、例えば生体系で検出可能な生物活性をもつ材料、分析に使用される生物細胞及び分子、医療に使用される生物細胞及び分子、研究に使用される生物細胞及び分子、及び/又は同等物が挙げられる。例えば、本発明の組成物の生物活性材料としては蛋白質、ペプチド、核酸、細菌、細胞、抗体、酵素、血清、ワクチン、リポソーム、ウイルス、及び/又は同等物が挙げられる。
【0112】
本発明の粉末粒子中の生物活性材料はその製造に使用される剪断応力が低く、乾燥温度が低く、乾燥時間が短いため、例えば粉末粒子の乾燥時に高純度で活性にすることができる。生物活性材料は初期プロセス分解が少ないことと組成物賦形剤の保護側面により、例えば粉末粒子中で安定である。組成物の生物活性材料は粒子の表面積/体積比が大きく、組成物の賦形剤により溶解度を増加できるので、例えば分解せずに高濃度で再構成することができる。
【0113】
本発明の粉末粒子を形成するために噴霧乾燥される溶液又は懸濁液は例えば約0.1ng/ml未満〜約200mg/ml、約0.5mg/ml未満〜約150mg/ml、約10mg/ml〜約80mg/ml、又は約50mg/mlの量の本発明の生物活性材料を含有する。本発明の乾燥粉末粒子中の生物活性材料は一般に、例えば約0.01重量%未満〜約80重量%、約40重量%〜約60重量%、又は約50重量%の量で存在する。再構成した組成物の生物活性材料は一般に、例えば約0.1ng/ml未満〜約500mg/ml、約0.5mg/ml〜約400mg/ml、又は約1mg/mlの濃度で存在することができる。
【0114】
生物活性材料としては脂質膜をもつ複雑な材料が挙げられ、例えば生物学的に活性で生存可能又は非生存性の細胞、ウイルス、及び/又はリポソームが挙げられる。例えば、生物活性材料としてはワクチン、ウイルス、リポソーム、細菌、血小板、及び細胞が挙げられる。ウイルス生物活性材料としては、例えばインフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器多核体ウイルス、単純ヘルペスウイルス、SARSウイルス、コロナウイルスファミリーメンバー、サイトメガロウイルス、及び/又はエプスタイン・バールウイルスが挙げられ、約10TCID50/mL〜約1012TCID50/mL、又は約10TCID50/mLの量で本発明の懸濁液及び溶液中に存在することができる。ウイルス生物活性材料は一般に重量換算で約1%未満、より好ましくは約0.001%未満、最も好ましくは約0.0001%未満の量で懸濁液又は溶液中に存在する。本発明の乾燥粉末粒子組成物は例えば約10TCID50/g〜約1012TCID50/g以下の量で存在するウイルスを提供することができる。乾燥粉末粒子組成物は例えば約10TCID50/g、約10TCID50/g、約10TCID50/g、約10TCID50/g、約10TCID50/g、約10TCID50/g、約10TCID50/g、約10TCIDso/g、約10TCID50/g、約1010TCID50/g、又は約1011TCID50/gの量で存在するウイルスを提供することができる。
【0115】
本発明のポリオールとしては例えば種々の糖、炭水化物、及びアルコールが挙げられる。例えば、ポリオールとしては非還元性糖、スクロース、トレハロース、ソルボース、メレジトース、及び/又はラフィノースが挙げられる。ポリオールとしては、例えばマンノース、マルトース、ラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトース及びグルコース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、スレイトール、ソルビトール、グリセロール、L−グルコン酸塩、及び/又は同等物が挙げられる。製剤が凍結−融解安定性であることが所望される場合には、ポリオールは製剤中の生物活性材料を不安定にするような凝固温度(例えば−20℃)で結晶化しないものが好ましい。懸濁液又は溶液中のポリオールの使用量は生物活性材料の種類、ポリオールの種類、及び所期用途により異なる。しかし、一般にポリオールの最終濃度は重量換算で約1%〜4
0%であり、約1%〜20%がより好ましい。特に好ましい態様では、懸濁液又は溶液は約10%のスクロースを含有する。
【0116】
本発明のポリマーとしては、例えば種々の炭水化物、ポリペプチド、直鎖及び分枝鎖親水性分子が挙げられる。例えば、製剤のポリマーとしては酸化澱粉、カルボキシメチルスターチ及びヒドロキシエチルスターチ(HES)、デキストラン、非組換えヒト血清アルブミン(HSA)、並びに非加水分解及び加水分解ゼラチン、ゼラチン、オボアルブミン、コラーゲン、コンドロイチン硫酸、シアル酸化多糖、アクチン、ミオシン、微小管、ダイニン、カイネチン、アルギン酸塩、及び/又は同等物が挙げられる。これらの添加剤は必ずしも単独では生物活性材料を不活化に対して安定化しないが、一次乾燥、凍結乾燥、二次乾燥、及び/又はその後の固体状態保存中に噴霧乾燥材料の物理的崩壊を防ぐのに役立つ。分子量約100,000〜300,000、より好ましくは約200,000のHESを使用すると好ましい。一般に、HESの濃度は懸濁液又は溶液の重量を基にして約0.5%〜約10%、より好ましくは約1〜5%とすることができる。好適製剤は約5%のHESを含有する。
【0117】
本発明の組成物の製造用懸濁液又は溶液は、例えば製剤成分の溶解度と安定性を助長するために1種以上の界面活性剤を添加することができる。界面活性剤は約0.001重量%〜約5重量%、又は約0.01重量%〜約1重量%の濃度で本発明の製剤中に存在することができる。界面活性剤としては例えばポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート(Tween 20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween
80)、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックコポリマー(Pluronic)、及び/又は同等物等の非イオン洗剤が挙げられる。
【0118】
適切な非イオン性界面活性剤の例はアルキルフェニルアルコキシレート、アルコールアルコキシレート、脂肪アミンアルコキシレート、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル、ひまし油アルコキシレート、脂肪酸アルコキシレート、脂肪酸アミドアルコキシレート、脂肪酸ポリジエタノールアミド、ラノリンエトキシレート、脂肪酸ポリグリコールエステル、イソトリデシルアルコール、脂肪酸アミド、メチルセルロース、脂肪酸エステル、シリコーン油、アルキルポリグリコシド、グリセロール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマー、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールエーテルブロックコポリマーとこれらの混合物、ポリアクリレート及びポリアクリル酸グラフトコポリマーである。他の非イオン性界面活性剤もそれ自体当業者に公知であり、文献に記載されている。好適物質はポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマー、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールエーテルブロックコポリマーとこれらの混合物である。特に好ましい界面活性剤としてはPluronic F68(BASF製品)等のポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンの混合物のポリマーが挙げられる。
【0119】
適切なイオン性界面活性剤の例はアルキルラウリルスルホネート、フェニルスルホネート、アルキルスルフェート、アルキルスルホネート、アルキルエーテルスルフェート、アルキルアリールエーテルスルフェート、アルキルポリグリコールエーテルホスフェート、ポリアリールフェニルエーテルホスフェート、アルキルスルホスクシネート、オレフィンスルホネート、パラフィンスルホネート、石油スルホネート、タウリド、サルコシド、脂肪酸、アルキルナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、リグノスルホン酸、スルホン酸化ナフタレンとホルムアルデヒドの縮合物、スルホン酸化ナフタレンとホルムアルデヒドとフェノールの縮合物、更に必要に応じて尿素、リグニン−亜硫酸廃液(それらの
アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム及びアミン塩を含む)、アルキルスルフェート、第4級アンモニウム化合物、アミンオキシド、ベタイン及びこれらの混合物が挙げられる。好適物質としては、Pluronic F68又はPluronic F188が挙げられ、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(即ちSigma製品Tween 20)が特に好ましい。
【0120】
例えば安定性を増すため、pHを制御するため、再構成速度を変化させるため、バルク剤として機能させるため、酸化性分子をスカベンジするため等のためにアミノ酸賦形剤を添加することができる。適切なアミノ酸の例はアルギニン、リジン、メチオニン、ヒスチジン、グリシン、グルタミン酸、及び/又は同等物である。
【0121】
例えばpHを制御、安定性を増進、成分溶解度を変化、投与時の快適さを提供する等のために、乾燥粉末組成物の製造用製剤に緩衝液を添加することができる。製剤pHは約pH3〜約pH10、約pH6〜約pH8、又は約pH7.2に制御することができる。好ましい緩衝液は多くの場合には生物活性材料の特定投与経路に安全であると一般に認められている緩衝液アニオンの酸と塩の対形態である。本発明の製剤及び組成物で使用される典型的緩衝液としては例えばアミノ酸、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、琥珀酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、、炭酸塩等が挙げられる。一般に、緩衝液は約1mM〜約2Mのモル濃度で使用され、約2mM〜約1Mが好ましく、約10mM〜約0.5Mが特に好ましく、25〜50mMが殊に好ましい。
【0122】
インフルエンザウイルス懸濁液用の典型的製剤としては以下のものが挙げられる。10%スクロース、5%ヒドロキシエチルスターチ(Fesnius)、2mMメチオニン、50mMKHPO緩衝液(pH7.2)、及び0.1% Pluronic F−68を添加したインフルエンザウイルスの水性懸濁液。10%スクロース、5%ヒドロキシエチルスターチ、75mMKHPO緩衝液(pH7.2)、2mMメチオニン、及び0.01% Pluronic F−68を添加したインフルエンザウイルスの水性懸濁液。5%スクロース、2%トレハロース、0.2% Pluronic−F68; 10mMメチオニン、2%アルギニン、2mM EDTA、及び50mM KHPO緩衝液(pH7.2)を添加したインフルエンザウイルスの水性懸濁液。
【0123】
1態様では、製剤は上記物質(即ち生物活性材料、ポリオール、界面活性剤、及びゼラチン)を含有しており、ベンジルアルコール、フェノール、m−クレゾール、クロロブタノール、及び塩化ベンゼトニウム等の1種以上の防腐剤を本質的に含有しない。別の態様では、特に製剤が多用量製剤である場合には防腐剤を製剤に添加してもよい。
【0124】
製剤の所望特徴に悪影響を与えないという条件でRemington’s Pharmaceutical Sciences 16th Edition,Osol,A.Ed.(1980)に記載されているような1種以上の医薬的に許容可能なキャリヤー、賦形剤又は安定剤を製剤に添加することができる。許容可能なキャリヤー、賦形剤又は安定剤は使用用量及び濃度でレシピエントに非毒性であり、付加緩衝剤、補助溶媒、塩形成対イオン(例えばカリウム及びナトリウム)、酸化防止剤(例えばメチオニン、N−アセチルシステイン、又はアスコルビン酸)、キレート剤(例えばEDTA又はEGTA)が挙げられる。例えばアルギニンやメチオニン等のアミノ酸を製剤に添加してもよい。アルギニンは約0.1重量%〜約5重量%の量で製剤中に存在することができる。メチオニンは約1mM〜約50mM又は約10mMの濃度で製剤中に存在することができる。グリセロールは例えば約0.1重量%〜約5重量%、又は約1重量%の濃度で製剤中に存在することができる。EDTAは例えば約1mM〜約10mM、又は約5mMの濃度で製剤中に存在することができる。
【0125】
本発明は加圧ガス又は近超臨界ガスと、生物活性材料、ポリオール、ポリマー添加剤、及び界面活性剤の懸濁液又は溶液の混合物を噴霧乾燥することにより製造された乾燥粉末粒子を収容する容器を含む製品に関する。本発明の1態様では、本発明の医薬組成物を保持し、場合によりその使用説明書を添付した容器を含む製品が提供される。適切な容器としては例えば瓶、バイアル、ブリスターパック、及びシリンジが挙げられる。容器はガラスやプラスチック等の種々の材料から形成することができる。典型的な容器は3〜20cc使い捨てガラスバイアルである。あるいは、多用量製剤では、容器は3〜100ccガラスバイアルとすることができる。容器は製剤を保持し、容器にラベルを添付して使用法を指示することができる。製品は更に商業的及びユーザー観点から望ましい他の材料を加えることができ、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、注射器、使用説明書が挙げられる。
【0126】
本明細書に記載する粉末粒子は安定であり、即ちその生物活性を維持し、化学的及び/又は物理的に安定である。高温(例えば37℃)でエージングさせ、その生物活性、化学的及び/又は物理的安定性を測定することにより粉末粒子の安定性を試験した。これらの試験の結果、本発明の方法を使用して55℃で乾燥したこれらの粒子は25℃で少なくとも9カ月間安定であることが判明した(図8参照。)。35℃で乾燥した粒子は25℃で少なくとも約13カ月間、4℃で2年間安定であった。このような粉末粒子は高濃度の生物活性材料を使用する場合にも安定である。従って、これらの乾燥粒子は室温以上の温度で長期間輸送及び保存できるという利点がある。
本発明の装置
【0127】
本発明の装置は例えば懸濁液又は溶液を保持するための容器(第1のチャンバー)と、高圧ガス及び/又は近超臨界流体を保持するための圧力容器(第2のチャンバー)と、第1及び第2のチャンバーから混合チャンバーへの流量を制御するための制御バルブを備える導管と、混合物を粒子形成容器内に噴霧することができるキャピラリーレストリクターを備えるノズルと、粒子形成容器からの粒子の一次及び/又は二次乾燥を行うことが可能な乾燥ガス流を含むことができる。粒子の二次乾燥は例えば真空下の中温表面への沈降、凍結粒子の凍結乾燥、乾燥ガスの渦流への懸濁、及び/又は乾燥ガスの流動層への懸濁を含むことができる。
【0128】
例えば図9に示すように、装置は例えば液滴ミストをスプレードライヤーに導入するスプレーノズルを含むことができる。第1のチャンバー30内のウイルス懸濁液はHPLCポンプ31によりポンピングされ、第1の導管32を通ってT字交点に至り、スプレーノズル34の混合チャンバー33に導入することができる。第2のチャンバー35内の加圧ガス又は近超臨界CO流体は選択圧(例えば約250〜15000psi)を供給することが可能な高圧ポンプ36によりポンピングされ、第2の導管37を通ってT字交点に至り、混合チャンバー内で懸濁液と混合することができる。混合物は混合チャンバーからキャピラリーレストリクター38を通って吐出され、微細液滴の噴霧ミストを形成し、粒子形成チャンバー39で乾燥して粒子になる。ファン40により圧送された乾燥ガスはスプレーからのガス及び溶媒蒸気に置換し、粒子を例えば二次乾燥チャンバー41に輸送しながら一次乾燥することができる。粒子形成チャンバーからの一次乾燥粒子は粒子捕集容器42に沈降する前後に乾燥ガスと接触して二次乾燥することができる。スプレーノズルは種々のスプレードライヤーで機能するように適応させることができ、数リットル/時まで噴霧するプロセスに適応するような規模にすることができる。装置のスプレードライヤーコンポーネントは例えばBuchi(Brinkmann Instruments)製品のラボ用ベンチスプレードライヤーを応用することができる。
【0129】
本発明の方法を実施するために装置の所定チャンバー及び容器に多重又は代替機能をもたせることができる。例えば、所定態様では、粒子形成容器は二次乾燥チャンバー、及び
/又は粒子捕集容器としても機能することができる。場合により、二次乾燥チャンバーは渦流チャンバー、流動層チャンバー、粒子サイジングチャンバー、ポリマーコーティングチャンバー、及び/又は粒子捕集容器を含むことができる。
流体とガス
【0130】
本発明の装置は高圧ガス又は近超臨界流体及び懸濁液又は溶液を保持するためのチャンバーと混合チャンバーまで移送するための導管を備えることができる。噴霧した液滴は例えば乾燥ガスとの接触により一次及び二次乾燥することができる。
【0131】
高圧ガス及び/又は近超臨界流体は上記方法セクションと組成物セクションに記載したものとすることができ、例えば窒素、二酸化炭素,六フッ化硫黄、クロロフルオロカーボン、フルオロカーボン、亜酸化窒素、キセノン、プロパン、n−ペンタン、エタノール、窒素、水、及び/又は同等物が挙げられる。例えば溶媒、臨界点及び/又は流体の発泡性を調節するために所定のアルコール等の改質剤を超臨界流体に溶存させてもよい。
【0132】
懸濁液又は溶液は生物活性材料とポリオールを含むことができる。典型的生物活性材料としては、蛋白質、ペプチド、核酸、細菌、細胞、抗体、酵素、血清、ワクチン、リポソーム、及びウイルスが挙げられる。装置の懸濁液又は溶液中のポリオールとしては、例えばトレハロース、スクロース、ソルボース、メレジトース、グリセロール、フルクトース、マンノース、マルトース、ラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトース、グルコース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、スレイトール、ソルビトール、及びラフィノースが挙げられる。
【0133】
装置の懸濁液又は溶液はポリマーや界面活性剤等の付加賦形剤を添加することができる。ポリマーとしては、例えば澱粉、澱粉誘導体、カルボキシメチルスターチ、ヒドロキシエチルスターチ(HES)、デキストラン、ヒト血清アルブミン(HSA)、及び/又はゼラチンが挙げられる。界面活性剤としては、例えばポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリエチレン及び/又はポリプロピレングリコールのブロックコポリマーが挙げられる。
装置ハードウェア
【0134】
本発明の装置は例えば懸濁液又は溶液を保持するための第1のチャンバーと、高圧ガス及び/又は近超臨界流体を保持するための第2のチャンバーと、混合チャンバーと出口オリフィスをもつキャピラリーレストリクターを含むノズルと、粒子形成チャンバーと、二次乾燥チャンバーを含むことができる。懸濁液又は溶液は第1の導管を通して加圧下に混合チャンバーにポンピングされ、第2の導管を通して混合チャンバーにポンピングされた近超臨界流体と混合することができる。混合物はミストとしてノズルから粒子形成チャンバー内に噴霧することができ、乾燥ガス流と接触して乾燥し始めることができる。二次乾燥は粒子形成容器及び/又は二次乾燥チャンバー内で暖められたチャンバー壁との接触及び/又は乾燥ガス流との接触により実施することができる。
【0135】
1好適態様では、粒子形成容器及び/又は二次乾燥チャンバーは環境制御チャンバー内に収容される。環境制御チャンバーの制御された湿度と温度を乾燥ガス源とすることができる。環境制御チャンバーから粒子形成容器への入力ガスはキャピラリーコンストリクターから微細ミストとして放出される液滴と混合することができる。微細ミストは粒子形成容器で部分的に(即ち液滴から粒子に)乾燥した後に乾燥ガス流でサイクロン渦流チャンバー等の二次乾燥チャンバーに移送することができる。乾燥ガス流はガス出口ポートから環境制御チャンバーに逆送し続け、ガスを再調整することができる。装置は更にガス及び/又は環境制御チャンバーから水分を除去するためのデシケーター又はコンデンサーシステムを含むことができる。リサイクルガスの温度を制御し、環境制御チャンバー内の温度
の過度の上昇を防ぐために熱交換器を使用することができる。一般に、チャンバーは環境制御チャンバー内に比較的一定の温度を提供するように液体窒素を自動的に配量することができる選択的温度コントローラーによる制御下に液体窒素レザーバーから液体窒素を導入することにより冷却される。場合により、環境制御チャンバーは冷却熱交換器(蒸発器)により冷却することができる。環境制御チャンバーは一般にバルブ又は圧力ゲートを取付ることができる圧力制御ポートを介して周囲室温まで排気される。低水分に制御されたガスに噴霧乾燥することにより、噴霧される液滴と乾燥チャンバー環境の間に大きな水分差を提供することができる。その結果、一次乾燥段階の入力熱要件を低くすることができる。
【0136】
高圧ガス及び/又は近超臨界流体、及び/又は懸濁液又は溶液を混合チャンバーに移送するために、第1及び第2のチャンバーを加圧するか、及び/又は導管でポンプを使用することができる。移送速度は例えばポンピング速度を制御するか又は導管内のバルブを制御する等の当分野で一般に実施されている手段により制御することができる。ポンプは例えば蠕動ポンプ、ロータリーポンプ、ダイヤフラムポンプ、ピストンポンプ等の当分野で公知の任意型とすることができる。バルブは加圧流体流を制限することができる当分野で公知の適当な任意様式とすることができ、例えばボールシート、ダイヤフラム、ニードルが挙げられる。一般に、第2の容器は加圧ガス又は付臨界条件の流体を保持するために加圧、冷却及び/又は断熱される。
【0137】
混合チャンバーは例えば導管流入ポートとキャピラリーレストリクター出口オリフィスの間の拡大スペースとすることができる。導管は一般に混合を促進するように加圧ガス及び/又は近超臨界流体と懸濁液又は溶液を合流させるように配管することができる。導管は流れが真正面に合流するT字交点又は流れが180°未満の対向角で合流する交点、例えば第1の導管及び/又は第2の導管が混合チャンバー内の流れの軸から90°未満の角度で流れを導く交点で接合する。当業者に自明の通り、旋回流、渦流又は乱流を形成するとより十分な混合を促進すると共により単分散の気−液エマルションを形成することができるので、このような乱流等を形成するために流れは例えば分岐管で間接的に合流することができる。チャンバーの本体は超臨界流体と懸濁液又は溶液の間の接触表面積を増すようにアスペクト比を大きくすることができる。混合チャンバーは高圧ガス及び/又は超臨界流体と懸濁液又は溶液の混合を促進するために、じゃま板、ビーズ、チャネル、閉塞部、狭窄部、及び/又は同等物を含む通路構成とすることができる。混合チャンバーはキャピラリーレストリクターの内径よりも大きい内径をもつ導管とすることができる。混合チャンバーはノズルの一部でもよいし、装置の別コンポーネントでもよい。
【0138】
キャピラリーレストリクターは例えば混合チャンバー内に高圧又は近超臨界条件を維持し易くするために流体流を制限する導管とすることができる。キャピラリーレストリクターは例えば高圧ガス/近超臨界流体と懸濁液又は溶液の混合物を噴霧することができる出口オリフィスをもつことができる。キャピラリーレストリクター内径と出口オリフィスの寸法はスプレーで生成される液滴のサイズを左右し、例えば大きい出口から噴霧することにより形成される液滴(最終的に粒子)のほうが一般に大きい。一般にキャピラリーレストリクターは長さ約2インチ〜約6インチであり、内径及び/又は出口径が例えば約50um以下〜約1000um、約50um〜約500um、又は約100umである。
【0139】
混合物はノズルから粒子形成容器内に噴霧され、例えば発泡してガスと分裂液体フィード液滴となる。乾燥ガスを粒子形成容器内に導入し、液滴からの混合物ガス(発泡ガスと蒸発した溶媒)に置換することができる。乾燥ガスは液滴と接触し、更に溶媒を蒸発させて粒子を形成することができる。乾燥ガスは本発明の方法による処理用の他のチャンバーに液滴及び/又は粒子を輸送することができる。例えば、一次乾燥粒子は粒子形成容器で乾燥ガス流に懸濁するか、又は二次乾燥、サイジング、コーティング、及び/又は捕集用
の別のチャンバーに輸送することができる。乾燥ガスは例えば粉末粒子のガラス転移温度未満の温度の不活性ガス(例えば窒素)とすることができる。装置は乾燥ガスの温度を例えば約90℃未満、約25℃〜約80℃、約30℃〜50℃、又は約35℃に制御するために熱交換器を含むことができる。本発明の方法における粒子形成中の好ましい乾燥ガス(入力ガス)温度は65℃未満、又は約30℃〜約55℃、又は約35℃である。装置は例えば乾燥ガスをリサイクル又は環境汚染せずに廃棄できるように乾燥ガスの相対湿度又は溶媒レベルを下げるためにコンデンサー又はデシケーターを含むことができる。
【0140】
粒子形成容器又は二次乾燥容器はサイクロン渦流チャンバーを提供するように適応させることができる。乾燥ガス流で輸送された粒子は例えば分岐管ポートを通って一端の長円筒形又は円錐形チャンバーに流入することができる。ガスはチャンバーの入口端から出口端に向かって螺旋経路で何度も旋回することができる。このような経路では粒子はガスとチャンバー壁から熱を受取りながら残留水分を失い続けるので相当時間を要すると思われる。
【0141】
粒子形成容器又は二次乾燥容器は流動層チャンバーを提供するように適応させることができる。乾燥ガス流に懸濁した粒子を例えば円筒形チャンバーの底の入口に送り、乾燥ガスの上昇流に懸濁させることができる。場合により、チャンバーの底で粒子を捕集してから乾燥ガスを下方から送り、粒子を流動層に懸濁することもできる。粒子は相当時間流動層に懸濁状態に保つことができ、その間、残留水分は失われ続ける。小粒子はチャンバーの頂部から廃棄流に排出され、大きい粒子は底に沈降するので、流動層チャンバーでサイズ分離を行うことができる。例えば流動層にポリマー溶液のミストを噴霧して粒子のコートとして乾燥することにより、ポリマーコーティングを粒子に付着することができる。
【0142】
粒子形成容器又は二次乾燥容器は乾燥粉末粒子を捕集するための捕集容器を提供するように適応させることができる。例えば、移送導管内を流れる粒子をガスに懸濁し、移送導管よりも相当大きな径のチャンバーに導入することができる。大きなチャンバーではガスの速度が遅くなるので、ガスが上方の廃棄流に排出される間に粒子をチャンバーの底に落下させることができる。粒子はチャンバーの底の取り外し可能な容器に蓄積し、使用、包装、又は保存のために回収することができる。
【0143】
本発明は例えば本発明の方法の実施を容易にする装置及びプロセス材料の要素を含むキットに関する。本発明のキットは加圧ガス又は近超臨界流体の容器、懸濁液又は溶液成分(例えば生物活性材料又はポリオール、ポリマー、アミノ酸、界面活性剤、及び/又は緩衝液のプロセス溶液)、スプレーノズル、捕集容器、及び/又は同等物等の本発明の乾燥粒子組成物の製造方法の実施に使用するための本発明の装置要素を収容する容器とすることができる。キットは実質的に滅菌可能であり、例えばオートクレーブ内の温度と水分に耐性であり、イオン化放射線に耐性であり、及び/又は電子レンジ内で発生される放射線に耐性の材料から作製される。本発明のキットは生物活性材料の乾燥粒子を製造するために本発明の装置、装置要素、及び/又はプロセス材料の使用を教示する説明書を含むことができる。
以下、実施例により本発明を例証するが、これにより請求の範囲に記載する発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0144】
インフルエンザ懸濁液の噴霧用製剤
B/ハルビンインフルエンザウイルス又はプラセボを使用して本発明の方法に従って以下の製剤を調製した。製剤のpHは水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムで調整した。弱毒インフルエンザウイルスの噴霧乾燥に有用な製剤は例えば約10%〜約2%トレハロース、約40%〜約5%スクロース、約1%ソルビトール、約5%〜約2%HES、約2%
オボアルブミン、約5%〜約2%ゼラチン、約1%PVP、約2%〜約0.01% Pluronic F68、約0.03% Tween 20、約10mM〜約2mMメチオニン、約5%〜約0.5%アルギニン、約23mM EDTA、約0.5%〜約0.05%グリセロール、約10%〜約1%グルタミン酸塩、及び/又は約10mM N−アセチルシステインを添加することができる。
【表2】

【表3】


【表4】

【表5】

【0145】
本明細書に記載する実施例と態様は例証のみを目的とし、これらに鑑みて種々の変形又は変更が当業者に示唆され、本願の精神と範囲及び特許請求の範囲に含まれるものと理解すべきである。
【0146】
以上、明確に理解できるように本発明を多少詳細に記載したが、本発明の真の範囲を逸
脱することなく形態や細部に種々の変更が可能であることは以上の開示から当業者に自明である。例えば、上記製剤、技術及び装置は種々に組合せて使用することができる。本明細書に引用した全刊行物、特許、特許出願、及び/又は他の文献はその開示内容全体を全目的で参考資料として組込み、各刊行物、特許、特許出願、及び/又は他の文献を全目的で参考資料として組込むと個々に記載しているものとして扱う。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1A】近超臨界COを使用して噴霧した場合の100ミクロンフューズドシリカノズルからの液滴サイズをノズル先端からの距離の関数として示す。
【図1B】近超臨界COを使用して噴霧した場合の100ミクロンフューズドシリカノズルからの液滴サイズをノズル先端からの距離の関数として示す。
【図2】加圧窒素ガスを使用して噴霧した場合の100ミクロンフューズドシリカノズルからの液滴サイズをノズル先端からの距離の関数として示す。
【図3】粒度に及ぼす噴霧圧の効果を示すヒストグラムを示す。
【図4】B/ハルビン生ウイルスワクチンを含有する噴霧乾燥製剤の乾燥粉末粒度分布を示す。
【図5】示差走査熱量計(DSC)を使用して測定したAVO47製剤のガラス転移温度を示す。
【図6】典型的噴霧乾燥粉末の形態を示す。
【図7】噴霧乾燥粉末製剤AVO47のx線回折データを示す。回折パターンはAVO47製剤のガラス非晶質性を示した。
【図8】製剤AVO47aで噴霧乾燥した生きたB/ハルビンインフルエンザウイルスの長期安定性を示す。
【図9】典型的超臨界CO噴霧乾燥システムの模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物活性材料を含む粉末粒子の製造方法であって、
生物活性材料とポリオールを含む懸濁液又は溶液を製造する段階と;
溶液又は懸濁液と高圧ガス又は近超臨界流体の混合物を形成する段階と;
混合物を減圧することにより液滴のガス懸濁系を形成する段階と;
液滴のガス懸濁系からのガスを乾燥ガスと交換することにより液滴を乾燥して粉末粒子にする段階を含む前記方法。
【請求項2】
生物活性材料が蛋白質、ペプチド、核酸、細菌、細胞、抗体、酵素、血清、ワクチン、リポソーム、及びウイルスから構成される群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ウイルスがインフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器多核体ウイルス、単純ヘルペスウイルス、SARSウイルス、コロナウイルスファミリーメンバー、サイトメガロウイルス、ヒトメタニューモウイルス、及びエプスタイン・バールウイルスから構成される群から選択される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ポリオールがトレハロース、スクロース、ソルボース、メレジトース、グリセロール、フルクトース、マンノース、マルトース、ラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトース、グルコース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、スレイトール、ソルビトール、及びラフィノースから構成される群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
懸濁液又は溶液が更にポリマーを含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ポリマーが澱粉、澱粉誘導体、ポリビニルピロリドン(PVP)、カルボキシメチルスターチ、ヒドロキシエチルスターチ(HES)、デキストラン、ヒト血清アルブミン(HSA)、及びゼラチンから構成される群から選択される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
懸濁液又は溶液が更に界面活性剤を含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
界面活性剤がポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、又はポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックコポリマーを含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
懸濁液又は溶液が更にアミノ酸を含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
アミノ酸がアルギニン、リジン、メチオニン、ヒスチジン、又はグルタミン酸を含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ガス又は近超臨界流体が窒素、酸素、ヘリウム、二酸化炭素、六フッ化硫黄、クロロフルオロカーボン、フルオロカーボン、亜酸化窒素、キセノン、プロパン、n−ペンタン、エタノール、窒素及び水から構成される群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項12】
近超臨界流体が流体臨界圧の約90%〜110%の圧力をもつ請求項11に記載の方法。
【請求項13】
高圧ガス又は近超臨界流体が約1200psiの圧力を含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
高圧ガス又は近超臨界流体が約0℃〜約60℃の温度を含む請求項11に記載の方法。
【請求項15】
近超臨界流体がメタノール、エタノール、イソプロパノール、及びアセトンから構成される群から選択される改質剤を含有する請求項1に記載の方法。
【請求項16】
混合物を形成する段階が溶液又は懸濁液を高圧ガス又は近超臨界流体と共に混合チャンバーに流すことを含む請求項1に記載の方法。
【請求項17】
混合チャンバーが流動中の混合物に渦流又は乱流を発生する通路構成を含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
減圧段階が混合物をキャピラリーレストリクターに通すことを含む請求項1に記載の方法。
【請求項19】
キャピラリーレストリクターが約50um〜約1000umの内径を含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
内径が約100umである請求項19に記載の方法。
【請求項21】
懸濁液又は溶液を約0.5ml/分〜約30ml/分の速度で流す段階を更にを含む請求項1に記載の方法。
【請求項22】
液滴が平均サイズ約5um〜約50umである請求項1に記載の方法。
【請求項23】
近超臨界流体の圧力を調節するか、懸濁液もしくは溶液の圧力を調節するか、懸濁液もしくは溶液の流速を調節するか、ノズル管内径を調節するか、乾燥ガスの温度を調節するか、粒子形成容器の内圧を調節するか、又は懸濁液もしくは溶液成分の濃度を変化させることにより液滴の平均サイズを変える段階を更に含む請求項22に記載の方法。
【請求項24】
乾燥段階が粉末粒子を流動層に懸濁することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項25】
乾燥後又は乾燥中の粒子のチャンバーに対イオンを注入する段階を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項26】
乾燥ガスが約35℃〜約90℃の温度の窒素である請求項1に記載の方法。
【請求項27】
乾燥ガスをリサイクルする段階を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項28】
粉末粒子が平均粒度約1um〜約150umである請求項1に記載の方法。
【請求項29】
粉末粒子が約5重量%未満の含水率をもつ請求項1に記載の方法。
【請求項30】
生物活性材料が約25℃で少なくとも約9カ月又は約4℃で少なくとも約1年間保存した場合に安定に維持される請求項1に記載の方法。
【請求項31】
生物活性材料が粉末中で元の生存率の少なくとも約50%を維持する生きたウイルス、生きた細菌、又は細胞を含む請求項26に記載の方法。
【請求項32】
粉末粒子を捕集する段階を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項33】
捕集段階が粉末粒子を流動ガス流で二次乾燥チャンバーに移送することを含む請求項3
2に記載の方法。
【請求項34】
二次乾燥チャンバーがサイクロン渦流チャンバーを含む請求項33に記載の方法。
【請求項35】
捕集段階が粉末粒子のサイズ分離を含む請求項32に記載の方法。
【請求項36】
分離が粉末粒子の分画沈降を含む請求項35に記載の方法。
【請求項37】
総プロセス効率が約70%以上である請求項32に記載の方法。
【請求項38】
粉末粒子を保護コートでコーティングする段階を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項39】
懸濁液又は溶液よりも高濃度の生物活性材料を含有する再構成懸濁液又は溶液に粉末粒子を再構成する段階を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項40】
筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液内、鞘内、経口、局所、鼻腔内吸入、又は肺投与経路により粉末粒子を哺乳動物に投与する段階を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項41】
生物活性材料を含有する粉末粒子の製造装置であって、
生物活性材料とポリオールを含む懸濁液又は溶液を収容する第1のチャンバーと;
高圧ガス又は近超臨界流体を収容する第2のチャンバーと;
第1の導管を介して第1のチャンバーと流体連通しており、第2の導管を介して第2のチャンバーと流体連通している混合チャンバーと;
混合チャンバーと粒子形成容器の間に制限流体連通を提供するキャピラリーレストリクターと;
乾燥ガス流を含み;
混合チャンバーで懸濁液又は溶液を高圧ガス又は近超臨界流体と混合して粒子形成容器内に噴霧することにより液滴の微細ミストを形成し、乾燥ガスにより乾燥することにより生物活性材料を含有する粉末粒子を製造する前記装置。
【請求項42】
生物活性材料が蛋白質、ペプチド、核酸、細菌、細胞、抗体、酵素、血清、ワクチン、リポソーム、及びウイルスから構成される群から選択される請求項41に記載の装置。
【請求項43】
ポリオールがトレハロース、スクロース、ソルボース、メレジトース、グリセロール、フルクトース、マンノース、マルトース、ラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトース、グルコース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、スレイトール、ソルビトール、及びラフィノースから構成される群から選択される請求項41に記載の装置。
【請求項44】
懸濁液又は溶液が更にポリマーを含む請求項41に記載の装置。
【請求項45】
ポリマーが澱粉、澱粉誘導体、ポリビニルピロリドン(PVP)、カルボキシメチルスターチ、ヒドロキシエチルスターチ(HES)、デキストラン、ヒト血清アルブミン(HSA)、及びゼラチンから構成される群から選択される請求項44に記載の装置。
【請求項46】
懸濁液又は溶液が更に界面活性剤を含む請求項41に記載の装置。
【請求項47】
界面活性剤がポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、又はポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの
ブロックコポリマーを含む請求項46に記載の装置。
【請求項48】
懸濁液又は溶液が更に1種以上のアミノ酸を含む請求項41に記載の装置。
【請求項49】
近超臨界流体が二酸化炭素、六フッ化硫黄、クロロフルオロカーボン、フルオロカーボン、亜酸化窒素、キセノン、プロパン、n−ペンタン、エタノール、窒素及び水から構成される群から選択される請求項41に記載の装置。
【請求項50】
第1のチャンバーと混合チャンバーの間で第1の導管に接続された第1の流量制御手段を更に含む請求項41に記載の装置。
【請求項51】
第2のチャンバーと混合チャンバーの間で第2の導管に接続された第2の流量制御手段を更に含む請求項41に記載の装置。
【請求項52】
混合チャンバーがキャピラリーレストリクターの内径よりも大きい内径を含む導管を含む請求項41に記載の装置。
【請求項53】
第1の導管又は第2の導管から混合チャンバーへの入口が混合チャンバーの軸から90°未満の角度を含む請求項52に記載の装置。
【請求項54】
キャピラリーレストリクターが約50um〜約1000umの内径を含む請求項41に記載の装置。
【請求項55】
内径が約50um〜約500umである請求項54に記載の装置。
【請求項56】
内径が約100umである請求項55に記載の装置。
【請求項57】
乾燥ガスの温度又は湿度を制御する請求項41に記載の装置。
【請求項58】
粒子形成容器が乾燥ガス流を含む二次乾燥チャンバーを含むか又はこれと流体接触している請求項41に記載の装置。
【請求項59】
乾燥ガスが窒素である請求項58に記載の装置。
【請求項60】
乾燥ガスが粉末粒子のガラス転移温度よりも低温である請求項58に記載の装置。
【請求項61】
二次乾燥チャンバーにリサイクルする前に乾燥ガスから脱水するようにコンデンサー又はデシケーターを更に含む請求項58に記載の装置。
【請求項62】
二次乾燥チャンバーが更に粉末粒子を捕集又は乾燥する粒子捕集容器を含むか又はこれと流体接触している請求項58に記載の装置。
【請求項63】
二次乾燥チャンバーが更にサイクロン渦流チャンバーを含む請求項58に記載の装置。
【請求項64】
二次乾燥チャンバーが更に粉末粒子の流動層を含む請求項58に記載の装置。
【請求項65】
粉末粒子を保護コートでコーティングするように保護コーティング材料スプレーを更に含む請求項64に記載の装置。
【請求項66】
粉末粒子を二次乾燥チャンバーでサイズ分離する請求項58に記載の装置。
【請求項67】
サイズ分離が分画沈降、表面衝突、又は濾過を含む請求項66に記載の装置。
【請求項68】
粉末粒子が平均粒度約1um〜約150umである請求項41に記載の装置。
【請求項69】
静電荷を中和するようにイオン発生器を更に含む請求項41に記載の装置。
【請求項70】
改善された安定性をもつ噴霧乾燥粉末粒子を形成するために近超臨界流体と混合するための懸濁液又は溶液であって、生物活性材料、ポリオール、ポリマー、及び界面活性剤を含む前記懸濁液又は溶液。
【請求項71】
生物活性材料が蛋白質、ペプチド、核酸、細菌、細胞、抗体、酵素、血清、ワクチン、リポソーム、及びウイルスから構成される群から選択される請求項70に記載の懸濁液又は溶液。
【請求項72】
生物活性材料が懸濁液又は溶液の約0.05重量%〜約1重量%の量で存在する請求項70に記載の懸濁液又は溶液。
【請求項73】
ウイルスがインフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器多核体ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、SARSウイルス、コロナウイルスファミリーメンバー、ヒトメタニューモウイルス、及びエプスタイン・バールウイルスから構成される群から選択される請求項71に記載の懸濁液又は溶液。
【請求項74】
ウイルスが約10TCID50/mL〜約1012TCID50/mLの力価で懸濁液又は溶液中に存在する生きたウイルスである請求項73に記載の懸濁液又は溶液。
【請求項75】
ポリオールがトレハロース、スクロース、ソルボース、メレジトース、グリセロール、フルクトース、マンノース、マルトース、ラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトース、グルコース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、スレイトール、ソルビトール、及びラフィノースから構成される群から選択される請求項請求項70に記載の懸濁液又は溶液。
【請求項76】
ポリオールか懸濁液又は溶液の約1重量%〜約40重量%の濃度で存在する請求項75に記載の懸濁液又は溶液。
【請求項77】
ポリオールが懸濁液又は溶液の約10重量%の濃度で存在するスクロースである請求項75に記載の懸濁液又は溶液。
【請求項78】
ポリマーが澱粉、酸化澱粉、カルボキシメチルスターチ、ヒドロキシエチルスターチ(HES)、加水分解ゼラチン、ポリビニルピロリドン、非加水分解ゼラチン、オボアルブミン、コラーゲン、コンドロイチン硫酸、シアル酸化多糖、アクチン、ミオシン、微小管、ダイニン、カイネチン、及びヒト血清アルブミンから構成される群から選択される請求項70に記載の懸濁液又は溶液。
【請求項79】
更に1種以上のアミノ酸を含む請求項75に記載の懸濁液又は溶液。
【請求項80】
ポリマーが約100kDa〜約300kDaの分子量をもつ請求項78に記載の懸濁液又は溶液。
【請求項81】
ポリマーが懸濁液又は溶液の約0.5重量%〜約10重量%の濃度で存在する請求項7
8に記載の懸濁液又は溶液。
【請求項82】
ポリマーが約5重量%の濃度で存在するHESを含む請求項81に記載の懸濁液又は溶液。
【請求項83】
界面活性剤がアルキルフェニルアルコキシレート、アルコールアルコキシレート、脂肪アミンアルコキシレート、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル、ひまし油アルコキシレート、脂肪酸アルコキシレート、脂肪酸アミドアルコキシレート、脂肪酸ポリジエタノールアミド、ラノリンエトキシレート、脂肪酸ポリグリコールエステル、イソトリデシルアルコール、脂肪酸アミド、メチルセルロース、脂肪酸エステル、シリコーン油、アルキルポリグリコシド、グリセロール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマー、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールエーテルブロックコポリマー、ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート、及びポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートから構成される群から選択される非イオン性界面活性剤である請求項70に記載の懸濁液又は溶液。
【請求項84】
界面活性剤がアルキルラウリルスルホネート、フェニルスルホネート、アルキルスルフェート、アルキルスルホネート、アルキルエーテルスルフェート、アルキルアリールエーテルスルフェート、アルキルポリグリコールエーテルホスフェート、ポリアリールフェニルエーテルホスフェート、アルキルスルホスクシネート、オレフィンスルホネート、パラフィンスルホネート、石油スルホネート、タウリド、サルコシド、脂肪酸、アルキルナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、リグノスルホン酸、スルホン酸化ナフタレンとホルムアルデヒドの縮合物、スルホン酸化ナフタレンとホルムアルデヒドとフェノールの縮合物、リグニン−亜硫酸廃液、アルキルホスフェート、第4級アンモニウム化合物、アミンオキシド、及びベタインから構成される群から選択されるイオン性界面活性剤である請求項70に記載の懸濁液又は溶液。
【請求項85】
界面活性剤が約0.001重量%〜約5重量%の量で存在する請求項70に記載の懸濁液又は溶液。
【請求項86】
界面活性剤が約0.01重量%〜約1重量%の量で存在する請求項85に記載の懸濁液又は溶液。
【請求項87】
約pH3〜約pH8のpHを含む緩衝液を更に含む請求項70に記載の懸濁液又は溶液。
【請求項88】
緩衝液がリン酸塩、アミノ酸、炭酸塩、硼酸塩、酢酸塩、ヒスチジン、グリシン、又はクエン酸塩を含む請求項87に記載の懸濁液又は溶液。
【請求項89】
緩衝液が約2mM〜約500mMの濃度で存在する請求項87に記載の懸濁液又は溶液。
【請求項90】
キャリヤー、賦形剤又は安定剤を更に含む請求項70に記載の懸濁液又は溶液。
【請求項91】
生物活性材料がインフルエンザウイルスを含み、ポリオールがスクロースを含み、ポリマーがHESを含み、界面活性剤がポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックコポリマーを含む請求項70に記載の懸濁液又は溶液。
【請求項92】
近超臨界ガスと生物活性材料、ポリオール、ポリマー、及び界面活性剤の懸濁液又は溶液の混合物を噴霧乾燥することにより製造された乾燥粉末粒子を収容する容器を含む製品。
【請求項93】
生物活性材料とポリオールを含む懸濁液又は溶液を製造する段階と;
溶液又は懸濁液と高圧ガス又は近超臨界流体の混合物を形成する段階と;
混合物を減圧することにより液滴のガス懸濁系を形成する段階と;
液滴のガス懸濁系からのガスを乾燥ガスと交換することにより液滴を乾燥して粉末粒子にする段階を含む乾燥粒子組成物の製造方法による粉末粒子製造装置の要素を含むキット。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図4】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−512102(P2006−512102A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−584279(P2003−584279)
【出願日】平成15年4月10日(2003.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2003/011195
【国際公開番号】WO2003/087335
【国際公開日】平成15年10月23日(2003.10.23)
【出願人】(504380714)メディミューン・ヴァクシンズ・インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】