説明

噴霧装置

印刷機のための噴霧装置であって、液体を収容するための液体流入開口と、液体流入開口の下流側に配置された、気体を収容するための気体流入開口と、印刷機の表面から間隔を有して配置された流出開口とを備えている。また印刷機の表面に液体を供給する方法であって、噴霧装置の液体流入開口に液体を供給し、噴霧装置の気体流入開口に気体を供給し、印刷機の表面に液体と気体との混合物を噴霧するステップを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総じて印刷機に関しており、特に印刷機の表面に噴霧するための、印刷機に設けられた噴霧装置に関する。
【0002】
噴霧装置は、オフセット印刷機、特にウェブオフセット印刷機に関して、胴表面に液体を供給するのに用いられる。複数の噴霧装置が、典型的には噴霧バーに取り付けられており、噴霧バーは、噴霧装置を、胴表面から間隔を有して保持する。噴霧装置は、印刷プロセスの一部として、版胴に水または湿し溶液を付与するのに用いられる。典型的には、噴霧装置は、液体を直接的に湿し胴の表面に噴霧する。したがって2つ以上の湿し胴の湿し系は、液体を噴霧して、連続的な膜を形成し、液体を版胴に送る。液体は、版胴の表面における親水性領域に付着して、この領域にインキが堆積しないように作用する。噴霧装置は、印刷機における別の機能のため、たとえば印刷機の別の表面を洗浄し、かつ/または冷却するためにも使用することができる。
【0003】
米国特許第4738400号明細書には、金属圧延機におけるローラを冷却するための、縦長に延びる噴霧バーが開示されている。噴霧バー構造体が、噴霧バーの底板に取り付けられた複数のノズルを備えており、独立した流体通路が、噴霧バーの中間板および天板によって規定されている。
【0004】
米国特許第4708058号明細書には、印刷機のためのウォータパルススプレーダンプニングシステムが開示されている。ダンプニングシステムは、噴霧バーに配置された複数の噴霧ノズルを備えている。各ノズルと協働するソレノイドバルブが、ノズルを通る液体流を周期的に開閉し、たとえば40プサイグで維持される流体圧力でもって、最大印刷速度において1分あたり350パルスで開閉する。
【0005】
米国特許第5540390号明細書には、印刷機のためのスプレーバー組立体が開示されており、スプレーバー組立体は、少なくとも1つのノズルを備えており、ノズルを通る液体流を選択的に開閉するようになっている。ノズルを収容する、それぞれ反対側に位置する壁対は、液体噴霧の制御を助成する。
【0006】
米国特許第5463951号明細書には、印刷機の表面を加湿するための印刷機噴霧装置が開示されている。噴霧装置によって、噴霧中に表面に対して噴霧装置が相対的に移動して、大面積の表面にわたって均等に少量の水を分配することができる。
【0007】
発明の開示
本発明の課題は、冒頭で述べたような形式の、印刷機に液体を供給するための噴霧装置を改良して、液体損失および/またはミスチングの低減されたものを提供することである。
【0008】
分散噴霧中の液滴のサイズおよび成分によって、噴霧の特性および効果に影響が及ぼされる。小さすぎる液滴によってミスチングが生じ、このような液滴は湿しローラの表面に到達することができない。さらにまた大きすぎるかまたは密度の濃すぎる液滴は、胴表面に当接すると飛散する恐れがある。このことは、液滴が表面に衝突する際に、液体の一部が胴に付着せずに、胴から飛散する場合に生じる。印刷機に使用される湿し水は、典型的には、液体の表面張力を低減するように設定された化学物質を含有しており、これによって版胴に対する良好な被着特性および被膜特性が提供される。しかしながら表面張力の低下によって、噴霧における液滴のサイズが小さくなり、したがってミスチングが増加し、結果として使用中の液体の損失が生じる傾向にある。液体の流量およびノズルの幾何学形状によって、液滴サイズと同様にノズルから噴霧される噴霧パターンにも影響が及ぼされる。液体を湿し胴に供給するのに用いられる噴霧ノズルは、典型的には、ごく少量(ノズル全開状態で1秒あたり約数ミリリットル)の液体流に適している。
【0009】
本発明による印刷機のための噴霧装置では、液体を収容するための液体流入開口が設けられており、液体流入開口の下流側に配置された、気体を収容するための気体流入開口が設けられており、印刷機の表面、たとえば湿し胴の表面から間隔を有して配置された流出開口が設けられている。したがって噴霧装置は、混合物が印刷機の表面に向かって噴霧されるまえに、液体と気体、たとえば空気との混合(飛沫同伴)を許容する。
【0010】
噴霧装置に、液体流入開口と気体流入開口と流出開口とに連通する内部通路が設けられていてよい。特に表面張力の小さな液体に関して、微少の気泡の存在によって、たとえば比較的大きな質量を有していて、かつ比較的流動しにくい液滴群を形成して、噴霧特性を改善することができる。
【0011】
有利には、噴霧装置がインサートを備えており、インサートによって、液体流入開口と気体流入開口と内部通路の少なくとも一部とが規定される。さらにまた流出開口は、インサートの下流側の端部に配置された個別的なノズル先端部によって規定される。内部通路は、インサートおよびノズル先端部の両方によって規定される。液体および気体は、内部通路で混合されて、気体−液体−混合物が形成される。液体導管を備えた本体は、有利にはインサートの上流側に配置されているので、液体通導管は、液体流入開口に連通している。噴霧装置は、本体を通流する液体流を繰り返し遮断するための、有利にはソレノイドによって作動される弁エレメントを備えていてよく、その結果として、パルス化された噴霧が噴霧装置から噴出される。
【0012】
気体流入開口と液体流入開口とを規定するインサート、および噴霧装置の流出開口を規定する個別的なノズル先端部が設けられている場合、流入開口のサイズおよび形状は、流出開口とは無関係に制御することができる。したがって主に各流入開口のサイズによって制御される、ノズルに流入する液体および/または気体の流量は、噴霧パターンの特性とは無関係に制御することができ、噴霧パターンの特性は、主にノズル先端部における流出開口の幾何学形状によって制御される。前述のインサートに代えて、これとは異なる、比較的小さな液体流入開口を備えたインサートを用いると、たとえばノズルを通流する流体流量は低減することができる。ノズル先端部もまた、流出開口を含めて、低減された流量に適合するため、かつ低減された流量に関する最適な噴霧パターンを形成するために適当なサイズおよび幾何学形状に交換することができる。ノズル先端部は、有利にはインサートの傍で、結合装置、たとえばねじ山付きキャップによって保持されており、ねじ山付きキャップは、インサート自体または噴霧装置の本体に着脱可能に取り付けられており、これによってノズル先端部および/またはインサートは簡単に交換することができる。
【0013】
印刷機の表面は、湿し胴の一部を有していてよく、液体は、水、または低い液体表面張力を提供するための物質を含有する湿し水であってよい。気体は、有利には大気圧で存在する。気体流入開口が液体流入開口の上流側に配置されているので、噴霧装置は、ベンチュリノズル構造体と同様に作動し、気体流入開口を液体が通過することに起因して、気体流入開口の内側縁部における低圧によって、空気を噴霧装置に吸い込む。しかしながら気体は、空気以外の気体であってよく、また大気圧を超える圧力下で気体流入開口に供給してもよい。
【0014】
また本発明によって、前述の噴霧装置から成る印刷装置が提供される。
【0015】
さらにまた本発明によって、印刷機の表面に液体を供給する方法において、
噴霧装置の液体流入開口に液体を供給し、
噴霧装置の気体流入開口に気体を供給し、
印刷機の表面に液体と気体との混合物を噴霧する、
ステップを有する方法が提供される。
【0016】
また本発明は、噴霧装置を通る液体流を繰り返し遮断して、パルス化された噴霧を形成するステップを有していてよい。
【0017】
さらにまた本発明の方法によれば、液体開口のサイズを変化して噴霧装置を通る液体流量を制御し、かつ/または流入開口のサイズを変化して噴霧装置を通る気体流量を制御する。噴霧は、有利には噴霧装置の流出開口を用いて形状付与されており、流出開口のサイズおよび/または形状の選択によって噴霧の噴霧パターンに影響が及ぼされる。
【0018】
実施例の説明
次に本発明の実施例を図示し、詳しく説明する。
【0019】
図1および図2には、本発明による噴霧装置(噴射装置)100の1実施例を示した。ねじ山付きキャップ12が、本体2にねじ被せられていて、かつノズル先端部11を定位置で保持する。噴霧装置100の正面に流出開口10が看取され、流出開口100は、平底のスリット13として形成されている。ソレノイド4が、ソレノイド4の内側で弁エレメント16を作動させるために本体2の側方に取り付けられており、これによって噴霧装置を通る流体流を繰り返し遮断して、パルス化された噴霧が形成される。
【0020】
噴霧装置を通る液体および気体の通路は、図3(図2のA−A線に沿った断面図)および図4(図3のB−B線に沿った断面図)から看取される。液体は、液体供給導管1を通って本体2に進入する。噴霧装置が、印刷機における版胴に給水するために用いられる場合、流体は、典型的には、表面張力を低減するための添加剤を含有する湿し水である。噴霧装置の別の使用例では、流体は、洗浄液、冷却液または他の液体であってよい。
【0021】
液体は、液体源から管路または管体を通って供給導管1に到達することができ、液体源は、他の噴霧装置にも供給することができ、それも有利には圧力下で供給することができる。液体は、液体導管1から弁導管3を通流し、そこでソレノイド4によって作動される弁エレメント16によって調量される。弁エレメント16が開いている場合、液体は、液体導管5を通流して、インサート7の流入開口6に収容される。液体流入開口の幾何学形状、特にその直径サイズは、弁エレメント16の開放状態で噴霧装置を通る液体の流量を規定する。
【0022】
液体流入開口6から、液体は、内部通路14に流入して、気体流入開口8を通過する。液体が気体流入開口8を通過することによって、気体供給導管9の圧力で液滴が形成され、したがって気体は、既知のベンチュリ効果によって気体流入開口8を通って内部通路14に進入する。この実施例では、気体は、噴霧装置の外側における大気圧の空気である。
【0023】
内部通路14は、インサート7の一部から形成されていて、かつ有利にはノズル尖端部11の一部に延びている。有利には、内部通路は、内部通路14の拡張域15に拡張される。拡張域15は、噴霧装置の混合室として作用し、そこでは空気−液体−混合物がノズル先端部11の流出開口10を通って噴出するまえに、空気は液体に飛散することができ、有利には微細な気泡として飛散する。
【0024】
インサート7およびノズル先端部11は、ねじ山付きキャップ12によって定位置で保持される個別的な構成部材であり、ねじ山付きキャップ12は、本体2の拡張部にねじ被せられているので、流出開口10およびノズル先端部11における内部通路14の一部は、インサート7によって規定される内部通路14の一部と整合されている。さらにまた本体2の正面部分の幾何学形状は、インサート7を収容するように設定されているので、液体流入開口6は、本体2内で液体導管5と整合している。複数の気体供給導管9は、ねじ山付きキャップ12の後方で本体2に開口している。このような実施例によって、ねじ山付きキャップ12は簡単に取り外すことができるので、ノズル先端部11またはインサート7は、噴霧特性、たとえば液体流量または気体流量または噴霧パターン幾何学形状を変化させるために、簡単に取外および取付可能である。
【0025】
図5には、8つの噴霧装置100の取り付けられた噴霧バー構造体50を示した。噴霧装置100は、その大部分が噴霧バー51内で設けられるように、噴霧バーに取り付けられている。平底のスリット13(図4参照)を含む流出開口10の幾何学形状によって、実質的に噴霧装置100から噴出される液体の噴霧パターンが規定される。各噴霧装置100(図5参照)の噴霧によって形成される噴霧パターン52は、典型的には扁平な扇形のパターンである。噴霧バー構造体50は、典型的には胴表面に対して間隔を有して縦長に取り付けられているので、扁平な扇形パターンの端部は互いに僅かに重畳し、これによって胴表面は液体で最大限カバーされる。
【0026】
図6には、印刷機60の一部を概略的に側面図で示した。連続的な材料ウェブ75は、2つのゴム胴65,66の間を通走して、両面で、ゴム胴65,66から転写される複数のインキ画像で印刷される。インキ画像は、画像に応じてエッチ処理された版胴64によって(鏡面画像として)ゴム胴65に堆積される。版胴64は、親水性領域(ここではエッチ処理されない)ならびにエッチ処理の行われる疎水性領域を有している。版胴64が回転すると、版胴64は、湿し系(湿し胴67,68,69を含む)から湿し水の膜を受け取る。湿し水の膜は、版胴64の親水性領域に付着する。版胴がさらに回転すると、版胴は、インキ系(インキ胴61,62,63を含む)からインキの膜を受け取り、インキの膜は、液体(湿し水)を含んでいない、エッチ処理された疎水性の表面にだけ付着する。さらに版胴64が回転すると、インキ画像は、ゴム胴65に転写される。
【0027】
湿し水は、噴霧バー51と複数の噴霧装置100とを有する噴霧バー構造体50から湿し胴69に供給される。噴霧バー構造体50は、有利には、噴霧装置の流出開口10が湿し胴69の表面から数センチメートルの間隔で位置するように、取り付けられている。追加的に噴霧バー構造体50は、噴霧バー51に取り付けられ、かつ湿し胴69の極めて近くに、これにほとんど接触するように配置された側板70を有していてよく、このようにすると、噴霧装置は、噴霧位置で、噴霧の飛沫の進入できる空間を最小化することができる。側板70は、湿し胴69に付着しない全ての液体を集積するのに役立ち、これらは排出路を通って側板70から排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による、印刷機のための噴霧装置の1実施例を示す斜視図である。
【図2】図1に示した噴霧装置の正面図である。
【図3】図2のA−A線に沿った断面図である。
【図4】図3のB−B線に沿った断面図である。
【図5】噴霧バーに配置された複数の噴霧装置を示す斜視図である。
【図6】図5に示した噴霧バーの取り付けられた印刷機の一部を示す側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷機のための噴霧装置において、
液体を収容するための液体流入開口が設けられており、
液体流入開口の下流側に配置された、気体を収容するための気体流入開口が設けられており、
印刷機の表面から間隔を有して配置された流出開口が設けられていることを特徴とする、印刷機のための噴霧装置。
【請求項2】
液体流入開口と気体流入開口と流出開口とに連通する内部通路が設けられている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
液体流入開口、気体流入開口、および内部通路の少なくとも一部が、インサートによって規定されている、請求項2記載の装置。
【請求項4】
流出開口が、インサートの下流側の端部に配置されたノズル先端部によって規定されている、請求項3記載の装置。
【請求項5】
内部通路が、インサートとノズル先端部とによって規定されており、液体および気体が、内部通路で混合されて、気体−液体−混合物が形成されるようになっている、請求項4記載の装置。
【請求項6】
液体導管を備え、かつインサートの上流側の端部に配置された本体が設けられており、液体導管が、液体流入開口と連通している、請求項4記載の装置。
【請求項7】
パルス化された液体流が本体を通流できるようにするための弁エレメントが設けられている、請求項6記載の装置。
【請求項8】
弁エレメントを作動させるために形成されたソレノイドが設けられている、請求項7記載の装置。
【請求項9】
印刷機の表面が、湿し胴の一部を有している、請求項1記載の装置。
【請求項10】
液体が、水および湿し水のうちの少なくとも1つである、請求項1記載の装置。
【請求項11】
気体が、空気である、請求項1記載の装置。
【請求項12】
気体流入開口の外側に位置する気体が、大気圧で存在する、請求項1記載の装置。
【請求項13】
気体流入開口の外側に位置する気体が、加圧されて、大気圧よりも高圧にされるようになっている、請求項1記載の装置。
【請求項14】
インサートと、インサートに近接してノズル先端部を保持するための本体とのうちの1つに着脱可能に取り付けられた連結装置が設けられている、請求項6記載の装置。
【請求項15】
請求項1記載の噴霧装置を備えた印刷機。
【請求項16】
印刷機の表面に液体を供給する方法において、
噴霧装置の液体流入開口に液体を供給し、
噴霧装置の気体流入開口に気体を供給し、
印刷機の表面に液体と気体との混合物を噴霧する、
ステップを有していることを特徴とする、印刷機の表面に液体を供給する方法。
【請求項17】
噴霧装置を通る液体流を繰り返し遮断して、噴霧をパルス化する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
噴霧装置を通る液体流量を、液体開口のサイズを変化させることによって制御する、請求項16記載の方法。
【請求項19】
噴霧装置を通る気体流量を、気体流入開口のサイズを変化させることによって制御する、請求項16記載の方法。
【請求項20】
噴霧装置の流出開口を用いて噴霧に形状付与し、流出開口のサイズおよび形状のうちの少なくとも1つを選択して、噴霧パターンに影響を及ぼす、請求項16記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−521959(P2007−521959A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553375(P2006−553375)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/005343
【国際公開番号】WO2005/086642
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(505332174)ゴス インターナショナル アメリカス インコーポレイテッド (48)
【氏名又は名称原語表記】Goss International Americas, Inc.
【住所又は居所原語表記】121 Broadway, Dover NH 03820, USA
【Fターム(参考)】