説明

嚥下障害者向けに適応させた食品組成物の使用の指標および方法

本発明は、嚥下障害の臨床管理において食品テクスチャーを適応させるために、定量的および記述的手法が使用される方法を提供する。嚥下障害に関係する問題を克服することを目的として、新たな指標であるST指数、および食品組成物が提供温度で硬さ、付着性、弾力性、および凝集性の所望の組合せを有することを可能とする方法で食品の物理的性質を測定および調節するための使用法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嚥下障害を患う者における嚥下運動を促進するための食品のレオロジープロフィールに関する。嚥下障害に関連する困難を克服するために、固形食用物質向けのテクスチャープロフィール算出法を決定する。
【背景技術】
【0002】
嚥下障害は、嚥下の不可能あるいは嚥下における困難であり、かつ神経学的疾患、感染、代謝疾患あるいは医学的介入に起因することがある。神経学的疾患は卒中、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、脳幹腫瘍あるいは認知症であることもある。感染症はジフテリア、ボツリヌス中毒あるいは梅毒を含むことがある。代謝性疾患はクッシング症候群あるいは甲状腺中毒からなることがある。医学的介入は神経弛緩薬、化学療法、手術あるいは放射線照射の副作用であることがある。嚥下は、随意的に開始されかつ反射的に完了され、これにより食物が口から咽頭および食道を経て胃に移動する複雑な連鎖である。嚥下運動は3つの段階で発生し、中咽頭求心性ニューロンからの末梢感覚入力および重複する高次神経系中枢からの調節が関与する頭部および頸部構造の統合かつ協調された運動を必要とする。
【0003】
口腔期と呼ばれ且つ味と動機に応じた高度に随意的かつ多様な正常な嚥下の第1段階においては、食物はまず準備を受ける。口腔準備連鎖の間、食物は舌の運動、唾液分泌および混合を伴う咀嚼運動によって食塊に変換される。その後、口腔期の移動連鎖の間、食塊は舌の表面におかれ、続いて口の後部で舌の中央部の凹みが求心的、次に遠心的動きを示して後舌が硬口蓋に絞り込まれることにより、咽頭と呼ばれる口腔と鼻腔が合流する空隙に送られる。食塊が舌の後部に到達するのとほぼ同時に、咽頭期と呼ばれる嚥下の第2段階が引き起こされる。咽頭期と呼ばれる正常な嚥下の第2段階では、咽頭の再構成が起こり、食道入り口の開口と喉頭入口の閉鎖によって中咽頭が呼吸経路から嚥下経路に変換される。同時に筋肉性の軟口蓋が後咽頭壁に付着して鼻腔への逆流を防止し、また喉頭の挙上、舌骨の挙上および披裂軟骨の傾斜による気道の閉鎖によって、食物の侵入より肺が保護される。また舌骨の挙上によって食道上部の括約筋が引かれて開く。咽頭を経た食塊の移動は、舌の推進運動の際に、かつ食塊が喉頭に触れるのを防いで咽頭の収縮を伝播する深部での咽頭の短縮によって獲得された運動エネルギーによるものである。これは咽頭壁の収縮、喉頭蓋の後方への屈曲、および喉頭と気道の上方および前方への移動である。この期間中、呼吸運動は反射によって阻害される。食道期と呼ばれる正常な嚥下の第3段階においては、食塊は開いた食道括約筋を経て近位食道に移動する。次に食道を下って胃に移動する。この運動は第2段階からの運動量、蠕動性収縮および重力によって達成される。
【0004】
嚥下の主な機能は食塊の生成とその口から胃への移動であるが、また嚥下は鼻咽頭および中咽頭で捕捉された粒子の除去、胃から逆流した物質の咽頭への後退、あるいは上気道から咽頭に押し出された粒子の除去による上気道の防御反射としても作用する。
【0005】
嚥下機能不全あるいは嚥下障害は低栄養および脱水、吸引、窒息のリスクを大いに高めるため、罹患、死亡およびコストの上昇と関連する。高齢者における嚥下障害の有病率の推定値は10%から22%の範囲であり、かつ長期療養施設に収容された入居者では70%に達する。
【0006】
現在、嚥下障害の臨床的管理はまだ不確定な科学であり、また嚥下障害者の栄養状態の改善における何らかの戦略の効果を裏付ける確証に基づいていない。最も多い障害された嚥下様態の改善、およびこれによって食物および液体の経口摂取を増加させるための現在最も優れた臨床診療は、食餌および摂食行動の改良および嚥下治療法である。
【0007】
上声門嚥下、声門嚥下、メンデルスゾーン手技、強化運動および温度刺激などの、補償的な体位および食餌療法以外の嚥下療法の適用には、指示を理解して実行できる適切な認知能力が必要である。この認知要件により、神経原性嚥下障害者の大半は除外される。
【0008】
嚥下障害およびその高い罹患/死亡レベルに付随する低栄養に対抗するための治療効果という点で、嚥下障害の治療に関与する臨床家に向けてなされたもっとも強力なエビデンスに基づく勧告は、食餌の改良に関係している。
【0009】
固形物のテクスチャーの改良により、食塊形成および嚥下が促進されることが提唱されている。現在、食事の条件はとりわけ柔らかなミンチ化あるいはピューレ化された食品と表現される。通常、所望のテクスチャーはブレンダーあるいはフードプロセッサーによって得られる。なめらかで固まりや大きな粒子のないピューレ化製品の製造には、液体の添加が必要とされることが多い。しかし、この希釈法は栄養素密度を低下させると考えられている。また、得られた製品は多くの人から魅力がなく柔らかいと見なされていた。従って、嚥下障害集団では食物摂取量の低下および低栄養の増加がみられる。改善テクスチャー食品の食味、外観および栄養価の改善には常に特別の努力が払われている。改良テクスチャー食品の再成形は、現時点でわずかに開拓された道の1つである。テクスチャー改良食品の記述は定性的であることが多い。
【0010】
通常、嚥下障害食は禁止食品と許可食品のリストの形態を取る。これらの食品の特徴付けには、粘りのある、なめらかな、柔らかいあるいは均等なといった記述的用語が用いられる。この用語のリストは、嚥下障害者に提供する食餌の臨床的管理における語義の不一致をもたらす。公表された全ての嚥下障害食は、主として固形物および液状物のテクスチャーの記述的評価に基づいており、またその者らに許可された食品の治療的効果あるいは定量的なテクスチャー特性については殆ど述べられていない。多様な嚥下障害食の効果を具体的に評価する臨床試験および栄養的ミンチ化あるいはピューレ化食品のテクスチャーパラメータの定量は知られていない。
【0011】
嚥下障害者の臨床的評価に参加するには、医師、看護師、放射線科医、言語病理学医、作業療法士、理学療法士および栄養士等の多くの専門職員が必要とされることがある。嚥下障害の治療に必要とされる集学的な手法には、コミュニケーションと協調が必要とされる。その者を評価する際に臨床的に問題として観察されるものが、確実に食餌処方により伝達することが不可欠である。ベッドサイド検査およびビデオX線透視検査などのような臨床評価時に、特定の試験物質に対処できる嚥下障害者は、同様のテクスチャーの食品を嚥下できるはずであると考えられる。その後、適切な食品の定性的記述が示され、処方される食餌はどのようでなければならないかを主観的に評価する。臨床的情報の伝達における客観性の欠如により、臨床的な過誤が生じる可能性もある。
【0012】
嚥下障害の診断と治療が取り扱われていても、医療専門職員間で嚥下障害の栄養療法の標準化は殆どなされていない。
【0013】
嚥下障害食で許容された食品については、臨床的効果を説明し、禁止食品を除外することを目的とした単独あるいは組み合わされた測定可能な定量的パラメータはまだ同定されていない。ある目標と測定可能なパラメータと嚥下障害者に対するその臨床的効果のみの相関と共に提供されることが非常に望ましいであろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の1つの目的は、嚥下障害の治療に対して食品が臨床的に有効である専用のテクスチャープロフィール値を同定する能力であって、テクスチャープロフィールあるいは提供温度におけるテクスチャープロフィールが硬さ(F)、付着性(A)、弾力性(S)および凝集性(C)の変数からなり、以下のように表される数式:
ST指数=(F+|A|)×S×C
によって算出される嚥下テクスチャー(ST)指数によって定量される能力である。
【0015】
本発明の他の目的は、嚥下障害の栄養的治療に必要な食品調合物の標準化および管理のために、これらの専用テクスチャープロフィール値を用いる能力である。
【0016】
また、ある者の嚥下能力を評価することを目的として標準化された食品組成物を用いる診断法も提供される。その方法は、ある個人に対して、食品組成物の一部を投与すること、本明細書で定義するようなST指数あるいはSSTI指数を有すること、および例えば嚥下時間、移動時間、あるいは咀嚼パターン、嚥下毎の平均体積(ml)、嚥下毎の平均時間(秒)および嚥下能力(ml/秒)、食塊毎に必要な嚥下回数、嚥下と嚥下の間の食物粒子の口中蓄積量(mL)、食事中の疲労、嚥下遅延作用(N)、咬合間の遅延時間(秒)、嚥下時の呼吸パターン、嚥下後の声のパターンおよび質、気道の清浄化、口の外への物質の垂れ落ち(流涎)、咽頭への早期流入の有無、あるいは鼻腔を経た食物の逆流と定義することができるが、これに限定されない嚥下能力を測定することから構成される。
【0017】
本明細書で使用する「ST指数」という表現は、嚥下テクスチャー指数であり、数式の結果であって、かつ本明細書ではヒトの嚥下の過程に特に適用される食品組成物のテクスチャープロフィールを定量するために用いられる。
【0018】
略語「TPA」はテクスチャープロフィール分析を意味し、上述のレオロジーパラメータのうち1つあるいはそれ以上より構成される。
【0019】
略語「ST」は嚥下テクスチャーを意味する。
【0020】
略語「SSTImax」は最大安全嚥下テクスチャー指数を意味する。これは、その値を超えるとテクスチャーは嚥下障害者にとってもはや嚥下が容易でないと見なされる最大値である。
【0021】
食品組成物の提供温度におけるテクスチャープロフィールは、嚥下障害の治療のために適応され、かつ肉、魚、家禽、野菜、果物、焼き菓子、乳製品あるいは2つあるいはそれ以上の組合せからなることのあるピューレ化食用物質で調製され、かつ最大安全ST指数(SSTImax)よりも小さいST指数で定量化され、前者は好ましくは提供温度で34である。
【0022】
低温で提供し、かつ融点が37℃以下の焼き菓子については例外があり、23℃でのST指数が34を下回る限りST指数値は提供温度でSSTImaxである34を超えてもよい。
【0023】
また、嚥下障害に関連する問題を克服するために適応され、かつ肉、魚、家禽、野菜、果物、焼き菓子、乳製品あるいは2つあるいはそれ以上の組合せからなることのあるミンチ化食用物質で調製された食品組成物の提供温度におけるテクスチャープロフィールも、SSTImaxよりも小さいSTで定量化し、前者は好ましくは提供温度で80である。
【0024】
本発明に従い、特定の測定可能なテクスチャープロフィールに対応した薬物の経口摂取のための食用組成物の転換を調節する方法が提供される。
【0025】
本発明に従い、嚥下障害者の嚥下運動を促進するための臨床的効果が証明されている適応された食品組成物、いわゆるピューレ化およびミンチ化食品が提供される。
【0026】
本発明の目的のために、以下の用語が以下のように定義される:
【0027】
本明細書で使用される用語「嚥下する」は、飲み込みを含む食用物質の口唇から胃への移動を意味することを意図する。
【0028】
用語「嚥下障害」は、嚥下することの障害であり、咀嚼、食塊形成、その飲み込みおよびその移動、あるいはその組合せの運動において発生する。「嚥下障害」は嚥下の障害あるいは飲み込み障害と互換的に使用することができる。
【0029】
本明細書で使用される用語「促進する」および「促進」は、咀嚼、食塊形成、その飲み込みおよびその移動、あるいはその組合せの運動の障害された機能の補償を意味する。
【0030】
本明細書で使用される用語「硬さ」は、物体の変形を得るのに要する力を意味することを意図する。本明細書では、硬さ測定の単位はニュートンで表す。1ニュートンは、質量1kgの1m/秒での加速をもたらす力と同等の力の単位である。用語硬さおよび硬度は互換的に使用することができる。
【0031】
本明細書で使用される用語「凝集性」は、食品物体を構成する内部結合の強さを意味することを意図する。粒子をまとめるために作用する物体内あるいは表面内のそれらの間の分子力として定義することができる。凝集性は2つの硬さ測定値の比率である。従って単位はない。
【0032】
本明細書で用いる用語「弾力性」は、変形した食品が力を取り除いた後でその元の変形前の状態に戻る率を意味することを意図する。本明細書では、弾力性値の単位は%で表す。弾力性は、その長さ、体積、あるいは形状の変化に影響する力に直接反応してそのように変化し、かつ力を取り除いたときにその元の形状を回復することを可能とする物質の性質である。用語弾力性および弾性は互換的に使用することができる。
【0033】
本明細書で用いる用語「付着性」は、物質の表面とこれに接触する他の物質の表面の間の引力を克服するのに必要な力を意味することを意図する。付着性は、物体とは異なり、互いに接触しているときに結合を保とうとする分子の引力である。本明細書では、付着性値の単位はニュートンで表す。
【0034】
用語「ゴム性」は、食用製品を崩壊させるのに必要なエネルギーと定義される。一次パラメータである硬さおよび凝集性と関係する(それぞれFおよびC)。ニュートンとして表示される。
【0035】
用語「咀嚼性」は、食用製品を咀嚼するのに必要とされるエネルギーと定義される。一次パラメータである硬さ、凝集性および弾力性と関係する(F.C.S)。ニュートンとして表示される。
【0036】
表現「融点」は、通常の大気圧で固形物が液状物となる温度である。
【0037】
本明細書で用いる表現「治療用ピューレ化食品」は、以下の特徴を有する適応させた食品組成物を意味することを意図する:
【0038】
ピューレ化肉、魚、家禽、野菜、果物、焼き菓子、ペーストリー、卵、乳製品あるいは2つあるいはそれ以上の組合せからなる群から選択される食用物質は、
全般に約0.5mm未満の球の粒径を有し、
プレートおよび口の中で器具あるいは舌の圧迫下にあって均一かつ全般的にシネレシスがなく、
食欲を増進するために、しばしば転換されていない同じ食品と同様の形状に成形されていることがあり、
全般に転換されていない同じ食品と同じ温度で、熱いあるいは冷たい状態で提供され、
特に口腔期および/あるいは咽頭期が重度に障害された者における嚥下を促進する。
【0039】
本明細書で用いる表現「治療用ミンチ化食品」は、以下の特徴を有する適応させた食品組成物を意味することを意図する:
ミンチ化肉、魚、家禽、野菜、果物、焼き菓子、ペーストリー、卵、乳製品あるいは2つあるいはそれ以上の組合せからなる群から選択される食用物質は、
全般に約2mmから5mmの球の粒径を有し、
プレートおよび口の中で器具あるいは舌の圧迫下にあって均一かつ全般的にシネレシスがなく、
食欲を増進するために、しばしば転換されていない同じ食品と同様の形状に成形されていることがあり、
全般に転換されていない同じ食品と同じ温度で、熱いあるいは冷たい状態で提供され、
特に口腔期の準備連鎖が軽度に障害された者における嚥下を促進する。
【0040】
略語「SAH」は聖アン病院を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明は、これ以降本発明の好ましい実施形態が示された付属の図面を参照してより完全に記載する。しかし本発明は、多くの異なる形態で具体化することができ、かつ本明細書で示す実施形態に限定されると解釈すべきではなく、むしろこれらの実施形態は本開示が徹底的かつ完全であり、かつ本発明の範囲を当業者に完全に伝えるよう提供される。
【0042】
本発明の1つの実施形態は、嚥下障害の臨床管理において食品テクスチャーを適応させるために、定量的および記述的手法が使用される方法を提供することである。食品のテクスチャー特性の記述が提供され、かつ嚥下障害の臨床管理の不可欠な一部となりやすい。既知の先行技術で、嚥下障害者の医療における、その定義と関連して定量された固形食品テクスチャーを報告したものはない。レオロジーは物質の変形および流動の学問である。食品およびそのテクスチャー特性を論じるための語彙および特別な用語を提供する。レオロジーは、粘度計、ちゅう度計、およびテクスチュロメーターなどの、これらのテクスチャー特性を定量化することのできるいくつかの機器の利用を必要とする。
【0043】
本発明に従えば、固形食品の物理的特性を決定および調節するための新たな指標およびその使用方法が提供される。例えば治療用ミンチ化および治療用ピューレ化食品であるがこれに限定されない治療的食品の2つの主要なクラスについては、物理的状態が提供される。本発明の方法により、全ての単純なテクスチャーパラメータの統合的組合せの適用がST指数によって定量化されることが可能となる。嚥下テクスチャー(ST)指数は硬さ(F)、付着性(A)、弾力性(S)および凝集性(C)の変数からなり、以下のように表される数式によって算出される:
ST指数=(F+|A|)×S×C
【0044】
本発明によれば、嚥下障害の栄養学的治療についての臨床効果の閾値を表す新たなST指数数式によって算出される2つの新たな最大安全嚥下テクスチャー指数(SSTImax)が提供される。これら2つの新たな指数は、2つの主要な治療食群であるピューレ化およびミンチ化製品に適用する。
【0045】
本発明の方法の具体的な有用性の1つは、嚥下障害の異なる特異な性質を有する者に適応させた食品の標準化されたロットを調製できる可能性である。
【0046】
本発明の方法は、食品組成物が提供温度で所望の硬さ、付着性、弾力性および凝集性の組合せを有することができる方法で、少なくとも1つの食品テクスチャープロフィールのパラメータの調節を統合しかつ含む新たな指数であるST指数の決定に基づいている。
【0047】
本発明の方法のもう1つの態様は、栄養学、老人医学、歯科学および小児科学などの多様な医療部門における優良な用途を有する食品の記述およびカテゴリー化の指標として用いることである。
【0048】
含まれる方法は、本明細書に記載するような標準化された治療用食品の組合せも提供する。ある者の嚥下能力は、始めに患者が第1のST指数を有する組成物を嚥下する際の嚥下障害の指標について評価することができる。その者の嚥下能力は、さらに患者が他のST指数を有する組成物を嚥下する際の嚥下障害の指標について評価することができる。組成物は既知でありかつST指数が標準化されているが、さらにより重要な情報が生成され、全般的に正確な診断、全般的に効率的な治療および全般的に均一化された食餌処方の理解が可能となる。
【0049】
標準化された組成物および方法の有用性は数倍である。主要な有用性は、多様な嚥下障害レベルに従って嚥下を促進し、かつこれにより嚥下障害後の低栄養に対抗するために、それらの標準化された組成物のテクスチャープロフィールを最適化することである。他の有用性は、標準化された組成物を用いることにより嚥下障害の治療の一貫性が促進されることである。嚥下障害者に任意にテクスチャー改良食品を提供するのではなく、むしろ患者に既知の標準化された物理的特性の組成物を提供する。
【0050】
本発明は、食用物質を一定のST指数により特徴付けられる食品組成物に転換して、嚥下障害者の嚥下運動を促進することを可能とする方法を提供する。
【0051】
本発明の他の実施形態によれば、ある患者における嚥下障害の存在および程度の診断を可能とする方法が提供される。異なるSTおよびSSTI指数を有する食品組成物が調製され、被験患者に投与される。次に異なるパラメータを測定して嚥下障害の重症度あるいは残留嚥下能力の存在を評価する。例えば、嚥下時間、移動時間あるいは咀嚼パターン、嚥下毎の平均体積(ml)、嚥下毎の平均時間(秒)および嚥下能力(ml/秒)、食塊毎に必要な嚥下回数、嚥下と嚥下の間の食物粒子の口中蓄積量(mL)、食事中の疲労、嚥下遅延作用(N)、咬合間の遅延時間(秒)、嚥下時の呼吸パターン、嚥下後の声のパターンおよび質、気道の清浄化、口の外への物質の垂れ落ち(流涎)、咽頭への早期流入の有無、あるいは鼻腔を経た食物の逆流であるが、これに限定されない。
【0052】
また問題は嚥下困難であるのか、あるいは嚥下時の疼痛(嚥下痛)であるのかも重要である。嚥下痛は炎症性あるいは悪性腫瘍性過程を示唆することがある。嚥下困難の感覚のレベル(「受け取り」)を探求しなければならない。胸骨上痛は下咽頭部の疾患を示唆する。胸骨下あるいは剣状突起下の症状は食道が発生源であることを示唆する。しかし、遠位食道の問題は時に胸骨上の不快感と共に存在することがあるので、これらの位置を示すものは誤解を招くことがある。
【0053】
他の実施形態によると、本発明による食品組成物の投与により、嚥下障害の重症度を評価することが可能となり、また嚥下障害の各種類および原因を識別し、かつ一過性のあるいは恒久的な嚥下困難を克服するための異なる選択肢を提供することが可能となる。例えば、固形物に対する嚥下障害は食道あるいは他の構造の閉塞を示唆することがある。液体に対する嚥下障害は、神経筋肉疾患を含む咽頭の障害を示唆することがある。これらのデータは、疾患の重大性および期間の指標である嚥下障害患者の体重減少所見と複合することがある。また嚥下障害に応じた食事の変化とも複合され、当業者に疾患の性質および重症度への洞察を与えるであろう。
【0054】
この試験を用いれば、嚥下能力を比率スケールで定性および定量して、例えば残留嚥下能力の百分率としてではあるがこれに限定されずに表示することができ、このような情報は臨床的評価の予測的価値を高め、かつ嚥下障害患者の変化を監視する実践的方法を提供する。
【0055】
本発明は、本発明の範囲を限定するためではなく本発明を例示するために提示された以下の実施例を参照することにより、より容易に理解することができるであろう。
【実施例1】
【0056】
(嚥下障害の治療に特化した食品のテクスチャーおよび感覚の評価)
ピューレ化食品67種類およびミンチ化食品30種類からなるデータベースを確立し、これについて臨床的効果の評価およびレオロジー分析を実施した(表1)。定量的にいうと、各食品サンプルについてTPAとしても知られるテクスチャープロフィール分析を得た。これらのTPAは食用製品のテクスチャーに関する貴重な情報を提供し、かつ食用製品が食事中に顎、舌および頬によってかけられる圧あるいは力にどのように反応するかについてのいくつかの洞察を与える。TPAの測定のために用いた機器は、Groherが報告した第1期の食塊形成のシミュレーションを試みる(図1aおよび1b)。このシミュレーションでは食品サンプルを圧迫して、我々にとって重要なテクスチャーパラメータを測定する。食品はその組成(ピューレ化かミンチ化か)に応じて分類し、それぞれのテクスチャーパラメータを分離して統計的に分析した。
【0057】
【表1】

【0058】
この実験を通じて達成された目的の1つは、治療用ピューレ化およびミンチ化食用製品調合物のためのST指数の安全域を同定するためにTPAを定量する新たな方法および式を策定することであった。
【0059】
定性的観点より、本実験ではまた食品テクスチャーの重要な説明を提供した嚥下障害の臨床治療の専門家が、食品サンプルを感覚的にも評価した。これらの分析は、定量的な数値と定性的記述を関連付けるために実施し、またその結果として口中での食用製品の状態と、テクスチャー機器によって測定した科学的に検証された定量的数値との関連を演繹した。
【0060】
(方法論)
実験過程の作業の進行は、図2のフローチャートに例示される。
【0061】
レオロジー機器法を用いて、治療用ミンチ化およびピューレ化食品の定量的評価を実施し、そのテクスチャー特性のよりよい理解を提供した。ユニバーサル検査機器あるいはテクスチャーメータ(Lloyd Model LRX, Fareham, Hans U.K.)を用いて、硬さ、凝集性、弾力性、付着性、咀嚼性およびゴム性などのテクスチャー特性を測定した。50N加重セルと直径50mmの円盤形プローブを速度25mm/分で契合し、各食品サンプルについて2回咬合圧迫試験を遂行した。サンプルは3cm×3cm×2cmとし、個別に加熱して例えば肉は65℃、野菜は23℃またはケーキあるいは果物は12℃のように通常の提供温度で試験した。Rcontrolデータ分析ソフトウェア(バージョン3.2、1995)で、個別化プログラムを用いて所望のテクスチャーデータを蓄積した。体温である37℃で実施した定性的評価とは対照的に、本テクスチャーメータの試験環境が室温であることに留意するのは適切である。
【0062】
力変形曲線の模式図を表3に示し、これによりテクスチャーパラメータは先に定義したように2つの主要なカテゴリーである一次機械特性および二次機械特性に分けることができるテクスチャー特性の指標として求められる。
【0063】
評価シートは、臨床専門家である食味検査員に配布し、その口腔内でのテクスチャー感覚、臨床効果、食餌用途および他の因子に関係する各食品項目についての、完全かつ包括的な記述を有するという具体的な目的でデザインされた。同時に、テクスチャーパラメータの定量的数値(前述のTPA)と臨床専門家によるその定性的記述を相関させるために、これらの各食品項目に対してTPAを実施した。続いて、ST指数値をそれぞれ記録した。残った食品記述には圧縮あるいは均一性の欠如あるいは粒子サイズの不均一性、凝集性、シネレシスおよび付着性が含まれた。さらに、サンプルは臨床的に優れている、許容できる、普通、あるいは危険と分類した。優れているおよび許容できるサンプルは臨床的に有効としてデータベースに残し、危険なものは臨床的に無効としてデータベースに残した。これより最終データベースを確立した。
【0064】
(結果)
硬さ、付着性、弾力性および凝集性は、嚥下過程に直接関係するテクスチャーの基本的本質的量であるのに対し、ゴム性および嚥下性は後者から算出される。硬さ単独、および硬さと弾力性と、ゴム性および咀嚼性のパラメータの間にはそれぞれ正比例関係が存在することが確認された。ゴム性については、治療用食用製品の硬さが増加する毎に対応する増加が顕著であった。同じ傾向はいくつかの治療用食品における硬さの低下でも現れた。同様に、咀嚼性についても硬さおよび弾力性パラメータの一方あるいは両者の影響が増加あるいは減少すると、全く同じ結果が発生した。
【0065】
従って、ゴム性および咀嚼性は単純なテクスチャーパラメータから算出された複合テクスチャーの積であるので、その影響は重要でないと見なし、また硬さ、付着性、弾力および凝集性の中で起こる変化に労力を集中した。
【0066】
重要な4つのパラメータは硬さ、付着性、弾力性、および凝集性であった。
【0067】
硬さは、咬合する、咀嚼する、食塊を舌で圧迫するおよび口の後を経て咽頭に押し出すために要する力に影響するため、重要なパラメータであった(図3)。テクスチャーメータで描出した上昇カーブのx=0で算出した勾配値である(図3)。
F=BD=C2L 式(1)
(式中F=硬さ)
【0068】
付着性は、食品組成物と舌および硬口蓋および軟口蓋などの口腔構造との間の引力を克服するのに必要とされるエネルギーに影響するので、重要なパラメータであった(図3)。テクスチャーメータで描出した上昇カーブがx=0である時、1回目の圧迫後と2回目の圧迫前の間で算出した勾配値の負の値である(図3)。
A=EF=C7L 式(2)
(式中A=付着性)
【0069】
弾力性は、食品組成物が咀嚼作用で圧迫された後および硬口蓋上での舌による圧迫の後その元の形状に戻る能力に影響するので、重要なパラメータであった(図3)。
【0070】
【数1】

【0071】
凝集性は食品組成物の分子を結びつけるのに必要とされる引力に影響するので、重要なパラメータであった。食塊の移動、食塊の嚥下を促進しかつピューレ化およびミンチ化食品の成形を可能にする一定の凝集力の範囲を同定した。凝集性は、食品材料をまとめるその成形能力による食品の美的外観にとって重要なパラメータである。心理的な観点より、この食品の外観の魅力的価値の上昇は特に厳格なピューレ食を取っている高齢嚥下障害者にとって非常に望ましい(図3)。
C=圧迫2/圧迫1 式(4)
(式中C=凝集力、圧迫1=(C2L/2)×(C3E−ClE)、かつ圧迫2=(C5L/2)×(C6E−C4E))。
【0072】
臨床専門家によって「臨床的に優れている」および「臨床的に許容できる」と評価されたピューレ化食品サンプルは、嚥下の口腔および/あるいは咽頭期が重度に障害された患者にとって「臨床的に有効」と見なされた。
【0073】
臨床専門家によって「臨床的に優れている」および「臨床的に許容できる」と評価されたミンチ化食品サンプルは、嚥下の口腔期の準備連鎖が軽度に障害された患者にとって「臨床的に有効」と見なされた。
【0074】
データベース内の各食品サンプルについて各テクスチャーパラメータについて最小値および最大値を算出した。臨床的に有効なサンプルについては、その硬さ、付着性、弾力性および凝集性の範囲を記録し、以下のように報告した(表2)。治療的食品群によって分類するとき、硬さ、付着性、弾力性および凝集性の値は相当にばらつくことが確認された(図4aから4f)。時間の経過と共に、臨床的専門家を食味検査員として、本実験を通じてまとめた、その各感覚的評価と直接関係する各治療的食品サンプル全てのテクスチャーパラメータの、変動する数値において確認された傾向を明確に説明しようと試みるために、多くの論点に従った。目的は、各パラメータの総体的影響をST指数にまとめ、個別に割り当てられた数値と共に硬さ、付着性、弾力性、および凝集性の4つのパラメータの全ての全般的な影響を1つの数式にまとめて示すことであった。
【0075】
最大安全ST指数(SSTImax)を決定するために、臨床的に無効なサンプルのレオロジー値を用いた。SSTImaxはピューレ化およびミンチ化食品のそれぞれについての、その値を下回るときに全ての臨床的に有効なサンプルが適合するはずである上限値を示す。式の結果によって臨床的効果が反映される多様な数学的操作によりいくつかの式を分析した。各式について、そのSSTImax未満で適合しないサンプルの個数を示すために、包含試験を実施した(表3)。
【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
包含試験による好ましいフィッティング式は、ピューレおよびミンチサンプルのいずれについても除外が0であった。式の1つである検定#11は、12℃における6つのピューレ化ケーキサンプル全てを例外として、この除外0の結果を示した(表3および4)。これらの例外は後で論じる。
【0079】
【表4】

【0080】
検定#11で用いられた式は、口の中にあって2回連続の圧迫を受ける際の食品サンプルにかけられた全ての力を考慮に入れる。検定#11に用いられた式は(硬さ+|付着性|)×弾力×凝集性である:
F+|A|)×S×C 式(5)
【0081】
式(5)の第1の部分には、図3に示された全ての垂直力からなる累積効果が存在する。これらは正の置換力である硬さおよび負の置換力である付着性を含む。後者の絶対値は、食品サンプルの粒子を互いに結びつける内部結合、および食品材料が歯、舌および口蓋などの口の内部に付着することを可能とする結合の両者を引き離す上で役割を果たすこれらの力の付加的影響を算出するために、考慮に入れられている。硬さも付着性もニュートンで表される力である。
【0082】
式の第2の部分は、最終的に食品サンプルの食塊への転換およびそれに続く口から咽頭へ移動に影響する弾力性および凝集性の影響を共に説明する。弾力性は、食品がこれにかけられた力に抵抗し、変形力が取り除かれれば元の形状に戻る能力を表す。一方凝集性は、内部から食品の構造の一体性を維持し、かつ咀嚼、舌による圧迫および/あるいは唾液分泌の影響の元での速すぎる崩壊から維持する。 食品の内部結合の崩壊が開始すると、凝集性は急激に低下する。従って、硬さおよび付着性の加算によって表され、かつその弾力性および凝集性が積算される食品の崩壊に対する抵抗性の複合された影響は、食品サンプルの食塊への形成されやすさおよび咽頭へ移動する容易さを規定する。
【0083】
式(5)によって算出されるSSTImaxは、数値34を下回るとピューレ化食品が臨床的に有効となることを示した(図5)。
【0084】
式(5)によって算出されるSSTImaxは、数値80を下回るとミンチ化食品が臨床的に有効となることを示した(図5)。
【0085】
しかし、ピューレ化焼き菓子群についてはいくつかの例外が存在するため、ピューレについて確立されたSSTImaxは必ずしも当てはまらない。低温で提供した全ての治療用ピューレ化ケーキサンプルは、その肯定的な臨床的効果と、式(5)によって確立されたSSTImaxによる包含試験における否定的な結果の間で矛盾を示す。この矛盾の説明は、全てのケーキサンプルが熱に敏感で融点が32℃である通常の家庭用ゼラチンを用いて調合されたことである。
【0086】
これらのピューレ化ケーキが、この場合は口および舌の温度を表す暖かい環境にいったん置かれると、ゼラチンの温度が大きく上昇して殆ど同時に一方の相から他の相に変化してより柔らかくなり、その後口の中で崩壊しやすくなる。実際に、これらのピューレ化ケーキサンプルを23℃で測定した場合、いずれもST指数が34未満となった。
【0087】
本発明はその具体的な実施態様と関連付けて記載されているが、さらに改良することが可能であり、また本明細書は、全般的に本発明の原則に従い、本発明が関係する既知のあるいは習慣的実践の範囲内に収まるような本開示からのあらゆる変法、用途、あるいは適応を含む本発明のこのような逸脱を対象とすることを意図し、かつそのように上述の本明細書、及び添付の請求項の範囲内で示す本質的特性に適用することができることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】(a)および(b)は正常な嚥下および高齢者における嚥下障害をそれぞれ例示する。
【図2】は実験過程の作業の進行を表すフローチャートである。
【図3】はテクスチャープロフィール分析:1回目および2回目の加圧を示す食品サンプル外力変形曲線模式図を示す。
【図4】aからfは、それぞれ異なる食品サブグループについて異なる6種類のテクスチャーパラメータの棒グラフを例示する。
【図5】は治療用ピューレ化および治療用ミンチ化食品についてのSSTImaxを表すグラフを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬さ、付着性、弾力性、および凝集性からなる群から選択される少なくとも1つのパラメータを調節することによって食品組成物の嚥下テクスチャー(ST)指数を調節することを含む嚥下障害者において嚥下を改善する方法であって、前記ST指数が式:
ST指数=(F+|A|)×S×C
によって算出される方法(式中Fは硬さであり、|A|は付着性の絶対値であり、Sは弾力性であり、かつCは凝集性である)。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記調節が前記食品組成物の加工によって実施される方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記食品組成物が肉、魚、家禽、野菜、果物、焼き菓子、乳製品あるいはその組合せからなる群から選択される方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記食品組成物が香味、視覚的外観、物理的態様、色調、温度、および芳香あるいはその組合せからなる群から選択される物理的特性を含む方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって前記嚥下が固形食品の口唇から胃への移動である方法。
【請求項6】
請求項2に記載の方法であって、前記加工が以下の作業:食品テクスチャー変更物質の添加、つぶし、すりおろし、刻み、ピューレ化、ミンチ化、混合、配合、撹拌、気体の混合、加温、加熱、調理、冷却、冷蔵、冷凍、再加熱、希釈、加圧、粒径の変更、あるいは前記食品組成物の適応させた食品内での新規マクロ構造の作成のうち少なくとも1つによって実施される方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記食品テクスチャー変更物質が結合、ゲル化あるいは増粘化合物である方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記結合、ゲル化あるいは増粘化合物がタンパク質、カラゲナン、デンプン、繊維質、アルギン酸塩、ペクチン、ゴム類、ゼラチン、あるいはその組合せからなる群から選択されることのできる方法。
【請求項9】
ある者の嚥下能力を評価する診断法であって、
a)規定の嚥下テクスチャー(ST)指数を有する食品組成物であって、前記ST指数が式:
ST指数=(F+|A|)×S×C
に従って算出される食品組成物を投与することおよび
b)嚥下時間、移動時間、咀嚼パターン、嚥下毎の平均体積(ml)、嚥下毎の平均時間(秒)および嚥下能力(ml/秒)、食塊毎に必要な嚥下回数、嚥下と嚥下の間の食物粒子の口中蓄積量(mL)、食事中の疲労、嚥下遅延作用(N)、咬合間の遅延時間(秒)、嚥下時の呼吸パターン、嚥下後の声のパターンおよび質、気道の清浄化、口の外への物質の垂れ落ち(流涎)、咽頭への早期流入の有無、あるいは鼻腔を経た食物の逆流のうち少なくとも1つを測定することによって嚥下能力を測定することを含み;
Fが硬さであり、|A|が付着性の絶対値であり、Sが弾力性であり、かつCが凝集性である診断法。
【請求項10】
請求項9に記載の診断法であって、前記食品組成物が肉、魚、家禽、野菜、果物、焼き菓子、乳製品あるいはその組合せからなる群から選択される診断法。
【請求項11】
請求項9に記載の診断法であって、前記食品組成物が前記の所望のST指数を得るために加工される診断法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記加工が以下の作業:食品テクスチャー変更物質の添加、つぶし、すりおろし、刻み、ピューレ化、ミンチ化、混合、配合、撹拌、気体の混合、加温、加熱、調理、冷却、冷蔵、冷凍、再加熱、希釈、加圧、粒径の変更、あるいは前記食品組成物の適応させた食品内での新規マクロ構造の作成のうち少なくとも1つによって実施される方法。
【請求項13】
請求項12に記載の診断法であって、前記食品テクスチャー変更物質が結合、ゲル化あるいは増粘化合物である診断法。
【請求項14】
請求項13に記載の診断法であって、前記結合、ゲル化あるいは増粘化合物がタンパク質、カラゲナン、デンプン、繊維質、アルギン酸塩、ペクチン、ゴム類、ゼラチン、あるいはその組合せからなる群から選択されることのできる診断法。
【請求項15】
嚥下障害者の嚥下を改善することを目的として適応させた提供温度でSSTImaxよりも低いST指数を有する食品組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の食品組成物であって、ピューレ化あるいはミンチ化され、かつ肉、魚、家禽、野菜、果物、焼き菓子、乳製品あるいは2つあるいはそれ以上の組合せからなる群から選択される食品組成物。
【請求項17】
請求項16に記載の食品組成物であって、前記ピューレ化食品組成物が34のSSTImaxを有する食品組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の食品組成物であって、低温で提供される焼き菓子でありかつ37℃未満の融点を有する食品組成物。
【請求項19】
請求項18に記載の食品組成物であって、前記焼き食品が23℃でのそのST指数が34未満である限り提供温度でのST指数が34を上回る食品組成物。
【請求項20】
請求項16に記載の食品組成物であって、前記ミンチ化食品組成物が80のSSTImaxを有する食品組成物。
【請求項21】
嚥下障害者の嚥下を改善することを目的として適応させた食品組成物の調製におけるST指数あるいはSSTImaxの使用であって、前記ST指数が式:
ST指数=(F+|A|)×S×C
に従って算出される使用(式中Fは硬さであり、|A|は付着性の絶対値であり、Sは弾力性であり、かつCが凝集性である)。
【請求項22】
嚥下障害者による薬物あるいは薬剤の経口摂取を目的として適応させた食用組成物の調製におけるST指数あるいはSSTImaxの使用であって、前記ST指数が式:
ST指数=(F+|A|)×S×C
に従って算出される使用(式中Fは硬さであり、|A|は付着性の絶対値であり、Sは弾力性であり、かつCは凝集性である)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−500822(P2008−500822A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513635(P2007−513635)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000849
【国際公開番号】WO2005/117617
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(506400339)プロファジア インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】