説明

回旋状被覆編組ホース組立体及びその作製方法

シームレス回旋状ホース組立体。該組立体は、外面と、内面と、該両面間で通路を画定するインナーライナー壁とを有する管状インナーライナーを含む。該組立体は、管状インナーライナーを、加熱及び加圧下で、強制的にヘリカルコイル又は複数のループを通すと、管状ライナーの外面で回旋部を生成するヘリカルコイル又は複数の環状ループを更に含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホース組立体に関する。特に、本発明は、好適には燃料、ブレーキ液等を導通するといった自動車用途での、流体を導通するホース組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料や他の腐食性物質を搬送するのに使用するホース組立体が、当該技術分野で周知である。そうした組立体は、極端な温度に曝されるのに加えて、様々な燃料混合物、燃料添加剤、苛性物質にも曝される。従って、そうしたホース組立体は、化学物質への暴露、熱に対する環境暴露、曲げや反復動作、又は組立体に印加される力の結果生じる物理的劣化といった化学的、環境的、物理的劣化に対して耐性がなければならない。
【0003】
ポリテトラフルオロエチレン等のフルオロカーボン重合体材料は、殆どの燃料ホース用途に対して必要な耐薬品性や耐熱性が所有する。残念なことに、フルオロカーボン重合体材料は、引張強度やフープ強度が比較的弱い。結果として、そうしたフルオロカーボン材料は、キンクし易い。キンク(kinking)は、容易に永久的なものになり得、ホース組立体を流れる流体に対する継続的な抵抗部分となってしまう。
【0004】
ホースに耐キンク性を提供する周知のアプローチは、フィリップス等へ付与された米国特許第3,023,787号に示されているような、回旋部(convolutions)を組み込むことである。フィリップス特許では、多層の螺旋状に巻着したテフロン製RTMテープから構成したフルオロカーボンインナーライナーを有する回旋状ホース組立体について開示している。
【0005】
フィリップス特許で記載した種類の回旋状ホース組立体には、幾つかの本質的欠点がある。回旋状ホースは、一般的に、伸長する傾向が強い。つまり、加圧流体がホースを通り移動すると、回旋部が平坦になり、そうして平坦になることで、ホースが長手方向に延びてしまう。より具体的には、フィリップスらのホース組立体におけるインナーライナーは、フルオロカーボンテープの螺旋状に巻着した層で形成されているため、この巻着によってできた継ぎ目が、本質的に弱く、内圧や長期に亘る動きで、漏出や破裂し易い。また、継ぎ目によって、インナーライナー内で凹凸ができ、それが原因でホース中の液体の流れを妨害するため、ホース内に堆積する電荷が増加する可能性が生じる。
【0006】
また、既知の回旋状ホース作製方法にも、特有の大きな短所がある。既存の方法では、高価なフルオロカーボン材料を無駄使いしている点である。フィリップス特許で開示されたタイプのものでは、回旋部を、1本の直線的なホースを波付けして形成するため、結果的に、最終製品としては遥かに短いホースとなってしまう。テープの巻回を重ねて管を作製することでも、重複領域で高価な材料が無駄使いされ、複雑で、時間がかかり、手間がかかる工程が必要となる。最後に、フィリップスらが開示した種類のホースは、単一の連続一貫した工程で、容易に製造できるようにはなっていない。
【0007】
従って、既存の回旋状ホース組立体よりも優れた耐キンク性、耐破裂性、耐伸長性を備えた回旋状ホース組立体を有することが望ましい。更に、そうした回旋状ホース組立体を、簡単で、連続した工程で、内部の継ぎ目を導入せずに作製できる一方で、高価なフルオロカーボンの使用や組立工程での手間を抑えた方法を有することが望ましい。
【発明の概要】
【0008】
本発明によれば、外面と、内面と、通路を画定する該両面間にあるインナーライナー壁とを有する管状インナーライナーを含むシームレス回旋状(convoluted)ホース組立体を提供する。該組立体は、管状インナーライナーを、加熱及び加圧下で、強制的にヘリカルコイル又は複数のループを通すと管状ライナーの外面に回旋部を生成するヘリカルコイル又は複数の環状ループを更に含む。また、シームレス回旋状ホース組立体を形成する方法も提供し、該方法は、可溶で拡張可能な管状インナーライナーの内面に対して、径方向外方に加圧し、加熱する工程と、管状インナーライナーのインナーライナー壁の第1複数部分の外方への拡張を制限する一方で、管状インナーライナーのインナーライナー壁の第2複数部分の外方への拡張を可能にし、第1複数部分の各部材を第2複数部分の部材に隣接させ、それにより第1複数部分が複数の回旋部の谷部となり、第2複数部分が複数の回旋部の山部となるようにして、回旋部を生成する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の他の利点は、添付図面と併せて考慮したときに以下の詳細な説明を参照することでより一層理解できるようになるので、容易に分かるであろう。
【0010】
【図1】回旋部を形成する前のホース組立体の長手方向の断面図である。
【0011】
【図2】外方へ拡張させて回旋部を形成した後のホース組立体の長手方向の断面図である。
【0012】
【図3】内方へ拡張させて回旋部を形成した後のホース組立体の長手方向の断面図である。
【0013】
【図4】本発明の好適実施形態の斜視図である。
【0014】
【図5】発明の別の実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
新規な方法を、回旋状ホースを作製するために提供する。この回旋部は、直線的な壁のホースを波付けすることや、テープの螺旋状巻回の外側に作製することで、作製するのではない。代わりに、回旋部を、熱や圧力を加えて、直線壁管の壁を拡張する一方、それと同時に回旋部の谷部になる壁部分が外方に拡張するのを制限することにより作製される。この制限は、熱及び圧力を加える前に管の周囲に包着する回旋部生成用コイル又は一連の環状リング等の回旋部生成手段(convolution producing means)によって達成できる。熱や圧力を加えると、コイル又はリングで制限した管壁部分が、元の直径のままとなり、回旋部の谷部になる。コイル又はリングで制限しない管壁部分は、図2のように、外方に拡張して、回旋部の山部を形成する。好適には、圧力を、管状インナーライナー12の通路20から径方向外方に向ける。この圧力は、窒素等の不活性ガスで通路20を加圧して、或いは真空室内で拡張させて、発生させることができる。或いはまた、例えば、通路20内を真空引きするか、与圧室内で拡張させるかして、圧力を通路20に向かい径方向内方に印加してもよい。この場合、図3のように、壁を内方に通路20内へと拡張することによって回旋部が形成される。
【0016】
本製法の例を、図1及び2で示しており、両図では、径方向外方に加圧して、外方向に拡張又は形成したホース組立体10のインナーライナー12を図示しており、ヘリカルコイルで回旋部を生成するループ22を提供している。好適には、インナーライナー12は、可溶で(meltable)拡張可能な(expandable)フルオロカーボン重合体材料からなり、そして、ヘリカルコイルは、ガラス糸、プラスチック又は金属の線、若しくはこれら材料の少なくとも2つの組合せを含む。拡張が内向きか外向きかに関係なく、ホースを波付けして回旋部を生成する従来技術の処理での場合と同様に、拡張が原因でホース組立体が短くなるよりはむしろ、各回旋部の山部でインナーライナー壁18の壁厚が薄くなる。
【0017】
回旋部の山部の拡張を、インナーライナー壁18に加える熱を制御する、インナーライナー壁18に加えるガス圧を制御する、インナーライナー壁18を高温及び/又は高圧に曝す時間を制御する、又は熱、圧力若しくはタイミングの組合せを制御することによって限定してもよい。好適には、拡張については、外側補強層30を存在させることで限定するが、該層を、熱や圧力を加える前に、インナーライナー12及び回旋部生成手段36に被着する。好適には、外側補強層は、有機ポリマーの外被覆34で被覆した編組繊維又は織成繊維13からなる。有機ポリマーを発泡、即ち、マルトゥッチに付与された米国特許第5,613,524号で開示されているように、独立気泡のフルオロカーボンポリマー発泡体から構成してもよい。発泡させた外被覆34は、重量や材料消費を軽減するのに有利である。また、外被覆34により、拡張工程中弱くなる回旋部の山部に対して、所望通りに強度を加えられる。
【0018】
本発明の方法により、費用や手間のかかるテープを包着して回旋部を形成する工程を必要とせずに、単一の簡単で連続した工程で、回旋状ホース組立体を構成可能になる。また、直線的なホースを短い回旋状ホースに波付けする必要がある工程でも、ホースをそのままの状態で短縮しないため、高価なフルオロカーボン材料の無駄使いを最小限に抑制できる。
【0019】
本発明の製造物は、回旋状ホースにはこれまで見られない特性を有する回旋状ホース組立体10である。回旋部自体が耐キンク性を示すのに留まらない。回旋部により、フープ強度、引張強度、破裂に対する耐性も与えられる。これは、ガラス糸又は編組線のヘリカルコイルといった回旋部を生成する手段を、直接回旋部自体に組み込んだことによるものである。本ホース組立体の別の利点は、インナーライナーの内壁が滑らかで継ぎ目がない点であり、それにより継ぎ目を通過する揮発性流体で発生する可能性がある危険な乱流だけなく、継ぎ目不良で起きる破裂の危険性も減らすことができる。ホース組立体全体が、回旋状ホースは加圧下で伸長するといった一般的な傾向に抵抗するが、この理由は、回旋部を、その補強用編組を、好適には、中立編組角度で伸長が無効になるよう配置した補強用外層に接着したためである。また、本組立体では、これまでの回旋状ホースに比べて格別な破裂強度を示すが、この理由は、接着した補強層の中立編組角度が、直径が拡大するのにも抵抗し、その結果、ホースを通り移動する流体の圧力による外方への拡張に抵抗するためである。それにより、ホースは、作動圧力が高くなっても破裂せずに流体を導通できる。該層をインナーライナーに接着することで、外側補強層に対してインナーライナーが動くのを防止できる。
【0020】
ホース組立体10を作製する好適な方法は、以下の通りである。有機ポリマー製のインナーライナー12を用意する。具体的には、フルオロカーボンポリマー製の内管部材12を押出成形する。ホース組立体12は、有機ポリマー製のインナーライナー12を含む。ライナー12は、好適には、押出成形され、そしてその壁厚が0.001〜0.120インチである。好適には、インナーライナー12は、可溶性フルオロカーボンポリマーでできている。押出成形可能なフルオロカーボンポリマー材料を溶融することは、高温等の適切な条件で該材料を溶融又は流せるようにできる、或いは加圧下で拡張する及び/又はホース組立体の他の層に流入するように変形できることを意味する。好適には、インナーライナーを、テトラフルオロエチレンのポリマー(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)のポリマー、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)のポリマー、又はエチレン―テトラフルオロエチレン(ETFE)のポリマー製とする。フルオロカーボンポリマーPTFE、FEP、PFAは、商標TEFLONとしてデュポン(Dupont)社が販売している。ポリマーETFEは、商標TEFZELとしてデュポン社が販売している。
【0021】
インナーライナー12は、壁から流入しないように不浸透性とする。インナーライナー12を好適にはフルオロカーボンポリマー材料製とするため、熱及び化学劣化の両方に対して耐性がある。これにより、ライナー12を腐食させずに、様々な流体、特に自動車燃料をライナー12の内側を通過可能にできる。また、インナーライナー12の不浸透性は、導通する流体が気体の場合に、蒸気制御用途と同様に、有利である。
【0022】
本発明の新規な特徴は、回旋部生成手段を組み込んだ点であり、該手段により、拡張中に連続した工程で、インナーライナー12を継ぎ目の無い回旋部にでき、そのためライナーを殆ど短縮せず、従って高価な材料を殆ど無駄使いしない。好適実施形態では、回旋部を生成する手段は、インナーライナー周りに巻着した複数のループ22を、最も好適には螺旋体の形で含むが、個別の環状リングを使用してもよい。
【0023】
グラスファイバー糸等のガラス繊維、又は金属線、好適にはステンレス鋼線は、回旋部誘導用螺旋体を構成する好適な材料である。ガラス繊維は、インナーライナー12の外方への拡張を制限するのに必要な必須強度を提供すると共に、ガラス繊維には、製造時に用いる高温で、使用中にも遭遇する高温で使用するのに重要な耐熱性がある。重要なことには、回旋部誘導用螺旋体は、完成ホースに組み込まれたままとなり、ライナー12のみでなく全体としてのホース組立体10の引張強度もフープ強度も増大できる。好適実施形態では、ガラス繊維を、隣接する繊維間の間隙や空間が最小になるように密織する。回旋部の形状や深さを、編糸の形状や厚さによって決める。編糸が重い程、結果として得られる回旋部は深くなり、ホース組立体はキンクに対して耐性が高くなる。編糸が平坦でリボン状である程、結果として得られる回旋部の谷部は広くなる。断面が正方形や三角形といった異形の編糸により、回旋部に平坦又は楔形の谷部を生成できる。或いは、回旋部生成手段を、ワイヤで構成できる。
【0024】
回旋部生成手段を、好適には、インナーライナー12の外面14の周りに配置するが、内面16にも配置してもよい。この配置では、インナーライナー12の通路20に径方向外方へ加圧した状態で回旋部を生成するが、該通路20への加圧を好適にはガス、好適には不活性ガス、最も好適には窒素で行う。或いは、通路20での径方向外方への加圧を、真空室で回旋部生成を実行し、通路20を大気圧で放置して行う。また、回旋部を、インナーライナー12の壁をインナーライナーの内部通路20へと拡張しても生成でき、内部通路20を真空にして、又はインナーライナー12の外部に加圧して生成することもできる。この場合、回旋部生成手段のループで、回旋部の谷部を画定し、且つループ間空間で山部を画定する。
【0025】
回旋部誘導手段36をインナーライナー12の外面14周りに配置するために、好適には、ガラス糸等の材料を、当該技術分野で周知の編組機を利用して、外面14の周りに被着する。編組機は、先撚糸を担持する少なくとも1つのスプールを含む。或いは、被着工程中に、ガラス繊維を紡糸してもよい。この方法では、編組機は、繊維材料を担持する複数のスプールを含み、該繊維を編組機に通して編組領域に供給して、編組領域で、繊維をインナーライナー12の周りに編組又は巻回して、ヘリカルコイル等の回旋部生成手段を形成する。或いは、回旋部誘導手段を、ガラス繊維の代わりにプラスチック線や金属線を投入した編組機を利用して、配置できる。金属線を好適にはステンレス鋼製とするが、当該技術分野で既知の任意の適当な金属材料のものともできる。必要なら、回旋部生成手段を、図3のように、管状インナーライナー12の内面16に対して、螺旋体として配置してもいいし、複数の環状ループを、マンドレル又は当該技術分野で既知の他の機械を用いて、内面16に対して配置してもよい。
【0026】
螺旋体又は他の回旋部生成手段を被着した後に、インナーライナーを、少なくともライナーの外壁を十分軟化できる温度まで加熱する。好適なポリフルオロカーボンポリマー材料に対しての、好適な加熱温度は、500°F〜750°Fである。所望の軟化温度に達したなら、回旋部生成用螺旋体に対してインナーライナーの壁を拡張して、回旋部を形成できる。これを、好適には、インナーライナーの内部通路20に径方向外方へ正圧を印加して、好適には、1〜200psiで窒素ガスをこの通路に充填して、行う。或いは、インナーライナーを、回旋部生成用螺旋体に対して、外室で真空引して拡張できる。好適には、この真空を、水銀柱2〜17インチの範囲内にする。
【0027】
その結果得られる回旋部の深さを、熱量、印加圧力量、及びインナーライナー12の厚さで制御できる。回旋部をインナーライナー12の内面16に達しないようにし、それにより得られるホースの通路20が円滑穴を有するようにできる。これを、比較的厚い壁で囲んだライナーを使用して、且つ比較的低圧と低温を印加して達成できる。逆に、回旋部を内面16に到達させて、内部通路20が回旋部に沿って起伏する穴を有するホースを製造してもよい。この結果は、比較的薄い壁のライナーを使用して、比較的高い圧力及び温度で得られる。
【0028】
インナーライナー12の回旋部の外方への拡張を、温度及び圧力を調節して限定できる。インナーライナー12の内部通路20を、例えば、特定のフルオロカーボン材料の溶融温度より低温の流体又はガスを通過させて冷却できる。例えば、流体は、空気又は水であり得る。
【0029】
しかし、好適には、回旋部の外方への拡張を、外側補強層30によって制限するが、該層は、外方への拡張前に、インナーライナー12の外面14に被着する。外側補強層30は、有機ポリマー分散体又は被覆34によって被覆した編組材13からなる。上述したように、外側補強層30により、ホース組立体のフープ強度、引張強度、耐破裂性、耐伸張性を増大できる。編組材13は、当該技術分野で既知の任意の適当な金属材料又は非金属材料からなる。好適には、繊維をガラス繊維とする。ガラス繊維は必要な強度を提供する。更に、ガラス繊維は耐熱性であり、加熱環境で使用するのに、及び次に説明するような組立体を作製するのに、重要である。或いは、編組材を、ステンレス鋼等の適当な金属で構成できる。編組材13を、インナーライナー12の周りに挟設できる又は密包できる。好適には、編組材を、インナーライナー12の外面14に及び回旋部生成手段36に、外被覆34、好適には有機ポリマーの被覆(coating)によって接着する。
【0030】
好適な補強層30を作製するために、編組又は織成繊維13を、インナーライナー10の外面14及び回旋部誘導手段36の周りに被着する。好適には、繊維の被着を、当該技術分野に周知で、且つ上述した編組機で行う。編組又は織成繊維13を、インナーライナー10の周りに密に巻着してもよい、又は隣接する繊維間の間隙を広くして緩く巻着してもよい。好適な実施形態では、編組又は織成繊維13を、隣接した繊維間の間隙又は空間を最小にするよう密に巻着する。有機ポリマー材料を、織成繊維又は編組繊維13の周りに分散させ、織成繊維又は編組繊維13の外周から径方向内方にインナーライナー12に向けて散在させる。有機ポリマー材料を、編組又は織成繊維13の隙間に蒸着させる。好適には、この外被覆34は、フルオロカーボンポリマーを含む。具体的には、該外被覆は、テトラフルオロエチレン(PTFE)のポリマー、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)のポリマー、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)のポリマー、又はエチレン―テトラフルオロエチレン(ETFE)のポリマーからなる。
【0031】
有機ポリマーの外被覆34により、編組又は織成繊維13を外周から径方向内方に覆い又は被覆する。好適には、事実上、外側補強層30が、その中に織成又は編組繊維を有する有機ポリマーからなるようにして、編組又は織成繊維13を被覆した後に、各繊維を認識可能にする。
【0032】
好適には、有機ポリマー材料は、フルオロカーボンポリマーの分散体である。つまり、有機ポリマーの分散体又は被覆は、被着する際には、フルオロカーボンポリマーと少なくとも1つの搬送流体を含む。好適な流体は水である。当然ながら任意の適当な流体も使用できる。フルオロカーボンポリマー溶液を、編組又は織成繊維13全体に被覆又は分散させる。被覆完了後、乾燥によって分散体から搬送流体を除去する。これにより織成材若しくは編組材13全体に分散した有機ポリマーの分散体又は被覆が残存する。
【0033】
編組又は織成層13を被覆する好適な方法は、インナーライナー12及び回旋部生成手段36を、有機ポリマー材料の分散体と少なくとも1つの搬送流体を収容する容器に通過させることである。或いは、分散体を編組材に噴霧してもよい。組立体10を、乾燥機である、好適には流体(水)の沸点より低く予熱したオーブンに送る。搬送流体の沸点よりも低温でオーブンを利用して、最終生成物での気泡の影響を避けられる。その温度は沸点よりも高温にできるが、しかし、もし高温を使用するならば、組立体10は、外被覆14に多くの気泡を含み得る。搬送流体(水)を除去して、編組又は織成繊維13全体に有機ポリマー材料の被覆を分散させたままにする。その後、有機ポリマー被覆14を硬化させるために、組立体10を適当な温度(約700°F)で焼結させる。
【0034】
インナーライナー12と有機ポリマーの分散体又は被覆とを、同一のフルオロカーボンポリマーとしてよいが、そうする必要はない点にも注意されたい。例えば、インナーライナー12をPFA製とする一方で、被覆13をPTFE製としてもよい。リストしたフルオロカーボンポリマーの任意の組合せを、インナーライナー12及び被覆34に利用してもよい。別法として、材料の重さ及び費用に特に関心がある場合、管状インナーライナー12、フルオロカーボンポリマーを利用したインナーライナー12か外側補強層30又はその両方を、マルトゥッチに付与された米国特許第5,613,524号で開示されたような独立気泡のフルオロカーボンポリマー発泡体で構築してもよい。
【0035】
好適には、外側補強層30をインナーライナー12の外面14に全体的に接着し、それにより確実に回旋部の各山部28と谷部26とに合致するようにできる。こうした回旋部に密着させる構成は、被覆材料の溶液槽にインナーライナー12を浸漬して被覆34を被着することで達成できる。この構成の利点は、図1でのようにホース組立体の外部に回旋部を表せる点である。これにより、回旋部を、曲折時にホース組立体において所望の角度で連動可能にし、更に、そうした曲折でキンクが発生する可能性を低くできる。或いは、外側補強層30を、インナーライナー12と間欠接触状態、例えば各回旋部の山部28だけでインナーライナーに接触するようにもできる。この構成は、被覆34を適切な粘度に調節し、浸漬でなくドクターホイール(doctor wheels)のような被着装置で被覆34を被着することによって達成できる。この間欠接触構成の利点は、軽量になる点と、材料を節約できる点である。更に、補強層34とインナーライナー12との間にガスを充填した間隙を存在させることで、絶縁性を提供できる。
【0036】
別の実施形態では、螺旋体、好ましくはワイヤ製の螺旋体を、インナーライナー12内に配置できる。ライナー12内の真空又はライナー12外側の圧力を使用して、ライナー材料を内方に引き込んで、回旋部を形成する。また、材料によっては、通常、加熱が必要となる。
【0037】
本発明の利点は、全工程を単一の連続工程で実行できる点である。インナーライナー12、回旋部誘導手段36、外側補強層を含む組立体10の全構成要素を、組み立てでき、回旋部の生成及び外被覆34の焼結を、適当な時期の加熱及び冷却工程で実行してもよい。
【0038】
組立体10は、マシューとマルトゥッチに付与された米国特許第5,931,510号で開示された高速連結装置等の連結手段を、組立体を外部装置に連結できるように含むことができる。
【0039】
流体がインナーライナー12を通り流れると、インナーライナー12の長さに亘り、電荷が堆積し易くなる。そうした電荷の蓄積を防ぐために、インナーライナー12は、ライナーを通して電荷を伝達するための、インナーライナー12の長さと同延の一体化した長手方向伝達手段を含むことができる。好適には、インナーライナー12には、カーボンブラックの導電片を有する。このカーボンブラックは、導電性であり、流体によって堆積した電荷を消散する。或いは、内側環状部材12全体が、導電手段を備えることができる。これを、インナーライナー12全体にカーボンブラックを使用して行う。好適には、外側補強層30を非導電性とする。これは、外被覆14の外部に印加する電荷を、ホース組立体10の長さに亘り、又はインナーライナー12の内部通路20の内部を通過する流体に伝達させなくする点で重要である。当然ながら、他の導電材料を使用して導電片16を形成してもよい。
【0040】
本発明について、例示的な方法で説明したが、使用した用語は、限定するというよりは、むしろ説明するためのものであると理解すべきである。
【0041】
本出願を通して、米国特許を含む様々な刊行物は、作者、年、特許番号によって参照するものとする。全ての刊行物の引用については、以下に記載する。本発明が関係する現状技術についてより完全に説明するために、これらの刊行物や特許の開示を全体として、本明細書において、参照として本出願に組み込むものとする。
【0042】
明らかに、本発明に関する多くの変形及び変更が、上記教示に照らして可能である。従って、添付特許請求の範囲の範囲内において、参照符号は単なる便宜上のものであって何等限定するものではなく、本発明は、具体的に説明した以外でも実施してもよいと理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面と、内面と、該両面間で通路を画定するインナーライナー壁とを有する管状インナーライナー、及び、
前記管状インナーライナーを、加熱及び加圧下で、強制的に回旋部生成手段に通すと前記管状インナーライナーの前記外面に回旋部を生成する回旋部生成手段
を備えるシームレス回旋状ホース組立体。
【請求項2】
前記管状インナーライナーは、可溶で拡張可能な材料を含む、請求項1に記載の組立体。
【請求項3】
前記回旋部生成手段は、前記管状インナーライナーの前記外面周りに包着した複数のループとループ間空間を含み、前記インナーライナーを、加熱及び径方向外方に加圧下で、強制的に前記回旋部生成手段に通すと、前記回旋部生成手段により、前記インナーライナーの前記外面に前記回旋部を生成し、前記ループで、前記回旋部の谷部を画定し、前記ループ間空間で前記回旋部の山部を画定することを特徴とする、請求項1に記載の組立体。
【請求項4】
前記回旋部生成手段は、前記管状インナーライナーの前記外面周りに包着した複数のループとループ間空間を含み、前記インナーライナーを、加熱及び径方向内方に加圧下で、強制的に前記回旋部生成手段に通すと、前記回旋部生成手段により、前記インナーライナーの前記外面に前記回旋部を生成し、前記ループで、前記回旋部の山部を画定し、前記ループ間空間で前記回旋部の谷部を画定することを特徴とする、請求項1に記載の組立体。
【請求項5】
前記回旋部生成手段により、前記管状インナーライナーの前記インナーライナー壁と内面で回旋部を更に生成することを特徴とする、請求項1に記載の組立体。
【請求項6】
前記回旋部生成手段を、前記管状インナーライナーの外面周りに配置することを特徴とする、請求項1に記載の組立体。
【請求項7】
前記回旋部生成手段を、前記管状インナーライナーの内面周りに配置することを特徴とする、請求項1に記載の組立体。
【請求項8】
前記回旋部生成手段は、ガラス繊維を更に備える、請求項1に記載の組立体。
【請求項9】
前記回旋部生成手段は、金属線を更に備える、請求項1に記載の組立体。
【請求項10】
前記回旋部生成手段は、ヘリカルコイルを更に含む、請求項1に記載の組立体。
【請求項11】
前記回旋部生成手段は、複数の環状ループを更に含む、請求項1に記載の組立体。
【請求項12】
前記管状インナーライナーは、可溶で拡張可能なフルオロカーボン重合体材料を備える、請求項1に記載の組立体。
【請求項13】
前記管状インナーライナーは、テトラフルオロエチレンのポリマー、フッ素化エチレンプロピレンのポリマー、パーフルオロアルコキシのポリマー、エチレン―テトラフルオロエチレンのポリマーからなる群から選択した可溶で拡張可能なフルオロカーボン重合体材料を備える、請求項12に記載の組立体。
【請求項14】
前記管状インナーライナーの前記外面と前記回旋部生成手段の周りに配置した外側補強層(30)を更に含む、請求項1に記載の組立体。
【請求項15】
前記補強層は編組材を更に備える、請求項14に記載の組立体。
【請求項16】
前記編組材は編組したガラス繊維を更に備える、請求項15に記載の組立体。
【請求項17】
前記編組材は編組したワイヤを更に備える、請求項15に記載の組立体。
【請求項18】
前記管状インナーライナーと前記回旋部生成手段を、内被覆によって互いに接着することを特徴とする、請求項1に記載の組立体。
【請求項19】
前記内被覆を、テトラフルオロエチレンのポリマー、フッ素化エチレンプロピレンのポリマー、パーフルオロアルコキシのポリマー、エチレン―テトラフルオロエチレンのポリマーからなる群から選択することを特徴とする、請求項18に記載の組立体。
【請求項20】
前記インナーライナーと、前記回旋部生成手段と、前記補強層とを、外被覆で纏めて接着することを特徴とする、請求項1に記載の組立体。
【請求項21】
前記外被覆を、テトラフルオロエチレンのポリマー、フッ素化エチレンプロピレンのポリマー、パーフルオロアルコキシのポリマー、エチレン―テトラフルオロエチレンのポリマーからなる群から選択することを特徴とする、請求項20に記載の組立体。
【請求項22】
通路を画定する壁と、前記壁を加熱及び加圧下で強制的に回旋部生成手段に通すと、前記壁に回旋部を生成するように前記壁の周りに配置する前記回旋部生成手段とを備える管。
【請求項23】
可溶で拡張可能な管状インナーライナーの内面に対して、径方向外方に加圧し、加熱する工程と、
管状インナーライナーのインナーライナー壁の第1複数部分の外方への拡張を制限する一方で、管状インナーライナーのインナーライナー壁の第2複数部分の外方への拡張を可能にし、第1複数部分の各部材を第2複数部分の部材に隣接させ、それにより第1複数部分が複数の回旋部の谷部となり、第2複数部分が複数の回旋部の山部となる工程と
を含む、シームレス回旋状ホース組立体を形成する方法。
【請求項24】
前記径方向外方に加圧し、加熱する工程は、前記管状インナーライナーを不活性ガスで加圧し、管状インナーライナーの壁を十分に拡張できる熱を加えることを更に備える、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記管状インナーライナーのインナーライナー壁の第1複数部分の外方への拡張を制限する工程は、管状インナーライナーの周りに回旋部生成手段を配置する工程を更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記管状インナーライナーの周りに回旋部生成手段を配置することは、管状インナーライナーの外面の外側に回旋部生成手段を配置する工程を更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記管状インナーライナーの周りに回旋部生成手段を配置することは、管状インナーライナーの内面の内側に回旋部生成手段を配置する工程を更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記管状インナーライナーの周りに回旋部生成手段を配置することは、管状インナーライナーの周りにヘリカルコイルを配置する工程を更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記管状インナーライナーの周りに回旋部生成手段を配置することは、管状インナーライナーの周りに複数の環状ループを配置する工程を更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
回旋部生成手段はガラス繊維を備える、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
回旋部生成手段は金属線を備える、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
複数の回旋部を外方へ拡張するのを制限する工程を更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
複数の回旋部を外方へ拡張するのを制限することは、管状インナーライナーの外面の外側と、回旋部生成手段の外側に外側補強層を配置する工程を更に含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
外側補強層を配置することは、編組したガラス繊維を配置することを更に含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
外側補強層を配置することは、編組したワイヤを配置することを更に含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
管状インナーライナーの外面の外側と、回旋部生成手段の外側に外側補強層を配置することは、外側補強層と、管状ライナーの外面と、回旋部生成手段とを、外被覆によって纏めて接着することを更に含む、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
外被覆で被覆することは、外側補強層と、管状ライナーの外面と、回旋部生成手段とを、フルオロカーボンポリマー分散体で被覆すること、及び、フルオロカーボンポリマー分散体を硬化させてフルオロカーボンポリマー被覆にするために焼結することを更に含む、請求項36に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−515317(P2012−515317A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546419(P2011−546419)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/021336
【国際公開番号】WO2010/083497
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(511173321)
【出願人】(511173332)
【Fターム(参考)】