説明

回線極性検出方式及び回線極性検出方法

【課題】 回線の極性を検出する際に、誤検出や動作不良が生じる可能性を低減する。
【解決手段】 回線の2線間の電位差によって回線の極性を検出する電圧監視極性検出部3と、回線に流れる電流の方向によって回線の極性を検出する電流監視極性検出部4と、回線の状態を判定する回線状態判定部5と、回線状態判定部5によって判定された回線の状態に基づいて、電圧監視極性検出部3にて検出された極性と電流監視極性検出部4にて検出された極性とのいずれを有効にするかを決定する制御部6とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末が接続されている回線の極性を検出する回線極性検出方式に関し、特に、通信端末がオンフック時の回線の極性を検出する回線極性検出方式及び回線極性検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、通信端末が接続されている回線の極性の検出は、コンパレータ等を利用して回線のTipとRingとの間の電位差を監視することにより行われている。
【0003】
また、TipとRingとの間に流れる電流の方向を監視することにより回線の極性を検出する方法も行われている。(例えば、特許文献1,2参照。)。この場合、フォトカプラを用いて、フォトカプラの発光側を回線のTip及びRingに接続し、TipとRingとの間に流れる電流がフォトカプラ内の発光ダイオードの順方向電流であった場合に、発光ダイオードの発光によりフォトカプラ内のフォトトランジスタがON状態となる。一方、電流が発光ダイオードの逆方向電流であった場合には、フォトトランジスタがOFF状態となる。このフォトトランジスタの出力を正電位にプルアップしておくことにより、フォトカプラの出力を参照して回線の極性が判断されている。
【特許文献1】特開昭61−013848号公報
【特許文献2】特開平11−055426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、通常の回線にて装置のGND電位に対して同期して変動しているTipとRingとの間の変動電位は、回線状態によって大きく異なるため、従来のコンパレータ等を利用して回線のTipとRingとの間の電圧を監視する方法では、コンパレータ入力側の抵抗値のばらつきや、回線側の線路ロスのばらつきによって、コンパレータの入力がTipとRingとの間で同期して変動しなくなってしまい、その結果、コンパレータの出力信号にヒゲのようなノイズが出力されることにより、極性の誤検出が生じてしまうという問題点がある。
【0005】
また、特許文献1,2に記載されたフォトカプラ等を利用して電流を監視する方法については、オンフック時のTipとRingとの間の絶縁抵抗を確保するために、1Mオーム以上の抵抗値を持った抵抗を接続して電流監視を行わなければならず、電流監視を行うには電流値が微小すぎて、検出素子が動作保証されない電流値で動作することにより、絶えず動作不良が生じてしまうリスクを負わなければならないという問題点がある。
【0006】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点を鑑みてなされたものであって、回線の極性を検出する際に、誤検出や動作不良が生じる可能性を低減することができる回線極性検出方式及び回線極性検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、
通信装置が接続されている回線の2線間の電位差を測定し、該回線の極性を検出する電圧監視極性検出手段と、前記回線に流れる電流の方向によって、該回線の極性を検出する電流監視極性検出手段とを有する回線極性検出方式において、
前記通信装置のGND電位と前記回線の電位とを比較することにより、前記回線の状態を判定する回線状態判定手段と、
前記回線状態判定手段において判定された回線の状態に基づいて、前記電圧監視極性検出手段によって検出された極性と前記電流監視極性検出手段によって検出された極性とのいずれの極性を有効にするかを決定する制御手段とを有することを特徴とする。
【0008】
また、前記回線状態判定手段は、発光側に抵抗器が接続されたフォトカプラであることを特徴とする。
【0009】
また、前記回線状態判定手段は、前記回線の状態を判定するための閾値を、前記抵抗器の抵抗値により設定することを特徴とする。
【0010】
また、通信装置が接続されている回線の極性を検出する回線極性検出方法であって、
前記回線の2線間の電位差を測定し、該回線の極性を検出する処理と、
前記回線に流れる電流の方向によって、該回線の極性を検出する処理と、
前記通信装置のGND電位と前記回線の電位とを比較することにより、前記回線の状態を判定する処理と、
判定された回線の状態に基づいて、電位差の測定によって検出された極性と電流の流れる方向によって検出された極性とのいずれの極性を有効にするかを決定する処理とを有する。
【0011】
上記のように構成された本発明においては、回線の2線間の電位差によって検出された極性と、回線に流れる電流の方向によって検出された極性とについて、回線の状態を判定してその判定された状態に基づいて、いずれの極性を有効にするかが判断される。このため、回線の状態に適した検出手段によって検出された極性が使用されて回線の極性が検出される。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明においては、回線の2線間の電位差によって検出された極性と、回線に流れる電流の方向によって検出された極性とのうち、回線の状態に基づいた極性を有効にする構成としたため、回線の極性を検出する際に、誤検出や動作不良が生じる可能性を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の回線極性検出方式の実施の一形態を示す図である。
【0015】
本形態は図1に示すように、2線からなる回線に接続された通信装置1内に、回線から提供される各種サービスを実現する回線インタフェース部2と、回線の2線間の電位差を測定することにより回線の極性を検出する電圧監視極性検出部3と、回線に流れる電流の方向を監視することにより回線の極性を検出する電流監視極性検出部4と、回線の電位の変動状況を判定する回線状態判定部5と、回線状態判定部5における判定結果に基づいて、電圧監視極性検出部3による検出結果と電流監視極性検出部4による検出結果とのいずれを有効にするかを決定する制御部6とが設けられて構成されている。
【0016】
図2は、図1に示した回線極性検出方式における通信装置1内の電圧監視極性検出部3、電流監視極性検出部4及び回線状態判定部5を回路図として示した図である。
【0017】
図2に示すように、電圧監視極性検出部3についてはコンパレータ回路、電流監視極性検出部4及び回線状態判定部5についてはフォトカプラ回路がそれぞれ使用されている。
【0018】
回線インタフェース部2は、回線を介して通話、着信信号検出、ループ閉結等が行われる回路から構成されており、制御部6によって制御されることにより、回線から提供される各種サービスが実現される。
【0019】
電圧監視極性検出部3は、コンパレータ等の電圧監視素子から構成されており、2線の回線となるTipとRingとの電位を測定、比較し、その電位差によって回線の極性を検出する。
【0020】
電流監視極性検出部4は、フォトカプラ等の電流監視素子から構成されており、2線の回線となるTipとRingに電流を流れる電流の方向により回線の極性を検出する。つまり、回線に流れる電流の方向に応じてフォトカプラ内のフォトトランジスタがON状態あるいはOFF状態となり、それにより、フォトカプラの出力が切り替わり、その出力を参照することによって回線の極性が判断されることになる。このとき、オンフック時のTipとRingとの間の絶縁抵抗を確保するために、フォトカプラの発光側に1Mオーム以上の抵抗値を持った抵抗器が接続されている。
【0021】
回線状態判定部5は、フォトカプラ等の電流監視素子から構成されており、2線の回線となるTipまたはRingの電位と通信装置1のGND電位とを比較し、この比較結果を用いて回線の状態を判定する。
【0022】
制御部6においては、回線状態判定部5における判定結果に基づいて、電圧監視極性検出部3によって検出された極性を有効するのか、電流監視極性検出部4によって検出された極性を有効にするのかが決定され、有効にすると判断された極性において制御が行われる。
【0023】
以下に、上記のように構成された回線極性検出方式の回線極性検出方法について説明する。
【0024】
図3は、図1に示した回線極性検出方式における回線極性検出方法を説明するためのフローチャートである。
【0025】
まず通信装置1に電源が投入されると、制御部6の指示により各種デバイスの初期設定が行われる(ステップS1)。この初期設定は、制御部6から回線インタフェース部2に対して行われる初期設定を示すが、例えば、電圧監視極性検出部3、電流監視極性検出部4及び回線状態判定部5内に接続された抵抗器の抵抗値が制御部6からの設定によって変更可能であれば、これらの抵抗値についても初期設定で設定されることも考えられる。もちろん、抵抗値がハード的に固定化されている場合は、この初期設定において抵抗値の設定は行われない。
【0026】
次に、回線状態判定部5において、回線の状態が判定される(ステップS2)。具体的には、回線状態判定部5において、回線のTipまたはRingと通信装置1のGNDとが抵抗器を介して回線状態判定部5のフォトカプラの発光側に接続されることにより、回線側の電位と通信装置1のGND電位との電位の比較が行われる。回線側の電位が通信装置1のGND電位よりも低い場合は、フォトカプラ内のフォトトランジスタがOFF状態となり、それにより、フォトカプラの出力がHighとなる。一方、回線側の電位が通信装置1のGND電位よりも高い場合は、フォトカプラ内のフォトトランジスタがON状態となり、それにより、フォトカプラの出力がLowとなる。回線状態判定部5においては、フォトカプラの出力がHighの場合、回線状態が良好であると判定され、また、フォトカプラの出力がLowの場合、回線状態が不良であると判定されることになる。なお、フォトカプラ内のフォトトランジスタのON/OFFの閾値は、フォトカプラの発光側に接続されている抵抗器の抵抗値によって決まってくる。
【0027】
ステップS2において、回線状態判定部5の出力がHighとなり、回線状態が良好であると判定された場合、制御部6において電流監視極性検出部4による極性検出結果が無視され(ステップS3)、電圧監視極性検出部5による極性検出結果が有効となって適用される(ステップS4)。
【0028】
一方、ステップS2において、回線状態判定部5の出力がLowとなり、回線状態が不良であると判定された場合は、制御部6において電圧監視極性検出部5による極性検出結果が無視され(ステップS5)、電流監視極性検出部4による極性検出結果が有効となって適用される(ステップS6)。
【0029】
なお、上述した動作を行っている間、電圧監視極性検出部3及び電流監視極性検出部4については、回線状態判定部5の判定結果に関係無く、常に検出動作が行われているものとして説明したが、回線状態判定部5において無効と判定された検出手段については、回線状態判定部5において有効と判定されるまで、検出動作を停止させておいても良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の回線極性検出方式の実施の一形態を示す図である。
【図2】図1に示した回線極性検出方式における電圧監視極性検出部、電流監視極性検出部及び回線状態判定部を回路図として示した図である。
【図3】図1に示した回線極性検出方式における回線極性検出方法を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0031】
1 通信装置
2 回線インタフェース部
3 電圧監視極性検出部
4 電流監視極性検出部
5 回線状態判定部
6 制御部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置が接続されている回線の2線間の電位差を測定し、該回線の極性を検出する電圧監視極性検出手段と、前記回線に流れる電流の方向によって、該回線の極性を検出する電流監視極性検出手段とを有する回線極性検出方式において、
前記通信装置のGND電位と前記回線の電位とを比較することにより、前記回線の状態を判定する回線状態判定手段と、
前記回線状態判定手段において判定された回線の状態に基づいて、前記電圧監視極性検出手段によって検出された極性と前記電流監視極性検出手段によって検出された極性とのいずれの極性を有効にするかを決定する制御手段とを有することを特徴とする回線極性検出方式。
【請求項2】
請求項1に記載の回線極性検出方式において、
前記回線状態判定手段は、発光側に抵抗器が接続されたフォトカプラであることを特徴とする回線極性検出方式。
【請求項3】
請求項2に記載の回線極性検出方式において、
前記回線状態判定手段は、前記回線の状態を判定するための閾値を、前記抵抗器の抵抗値により設定することを特徴とする回線極性検出方式。
【請求項4】
通信装置が接続されている回線の極性を検出する回線極性検出方法であって、
前記回線の2線間の電位差を測定し、該回線の極性を検出する処理と、
前記回線に流れる電流の方向によって、該回線の極性を検出する処理と、
前記通信装置のGND電位と前記回線の電位とを比較することにより、前記回線の状態を判定する処理と、
判定された回線の状態に基づいて、電位差の測定によって検出された極性と電流の流れる方向によって検出された極性とのいずれの極性を有効にするかを決定する処理とを有する回線極性検出方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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