説明

回路、電子機器、及び画像処理装置

【課題】電子機器を省電力で動作させる一方法を提供する。
【解決手段】メモリーコントローラー及びメモリーPHYにより制御されるSDRAMと接続し、通常モード及び省電力モードで動作可能なSoCは、省電力モードにおいて電源オフされるブロックA及び電源オフされないブロックBを含む。ブロックAには、メモリーコントローラーが含まれる。ブロックBには、メモリーPHYと、前記メモリーコントローラー及び前記メモリーPHYの間に設けられ、省電力モード中に前記メモリーコントローラーからの出力信号を所定のレベルに固定する信号レベル保持セルが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路、電子機器、及び画像処理装置に関し、特に、省電力制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンター等の画像処理装置を含む電子機器は、より省電力で動作することが要
求されている。例えば、通常の動作を行う通常モードと、一部の動作を停止した省電力モ
ードとを有する電子機器がある。省電力動作のための一方法として、例えば、電子機器の
主要な要素であるSoC(System on Chip)、ASIC(Application Specific Integra
ted Circuit)、LSI(Large Scale Integration)などに設けられた複数のデバイス(
例えば、CPU、RAM、ROM、各種の処理回路など)を複数のブロックに区分けし、
一部のブロックの電源をOFFにする方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、電源制御対象ブロックを設け、当該ブロックへの電源供給を停止した
り開始したりする方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−4108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、省電力モード時に電源をOFFにするブロックと電源をOFFにしないブロ
ックに、上記の各種デバイスをどのように配置するかによって、電子機器の回路規模や省
電力の程度は異なってくる。
【0006】
本発明は、電子機器を省電力で動作させる一方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための本発明の一態様は、メモリーコントローラー及びメモリー
PHYにより制御される外部メモリーと接続し、通常モード及び省電力モードで動作可能
な回路であって、省電力モードにおいて電源オフされる第一ブロック及び電源オフされな
い第二ブロックを含み、前記第一ブロックに、メモリーコントローラーを備え、前記第二
ブロックに、メモリーPHYと、前記メモリーコントローラー及び前記メモリーPHYの
間に設けられ、省電力モード中に前記メモリーコントローラーからの出力信号を所定のレ
ベルに固定する信号レベル保持部と、を備える、ことを特徴とする。
【0008】
ここで、前記第一ブロックに、前記メモリーコントローラーに対するリクエストを調停
する調停回路を備える、ことを特徴としていてもよい。
【0009】
また、前記第一ブロックに、前記メモリーコントローラーに対するリクエストを送る第
一CPU及び所定の処理を行う複数の処理回路を備える、ことを特徴としていてもよい。
【0010】
また、前記第二ブロックに、第二CPUと、前記第二CPUのリクエストを受けて前記
外部メモリーに対するコマンドを発行するコマンド変換部と、を備え、前記第二CPUは
、省電力モード中に外部リクエスト又は内部リクエストの発生を監視し、外部リクエスト
又は内部リクエストが発生した場合、通常モードへの復帰処理を開始する、ことを特徴と
していてもよい。
【0011】
また、上記のいずれかの前記回路を備える電子機器であってもよい。
【0012】
また、上記のいずれかの前記回路を備える印刷装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態の一例に係るプリンターの概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態の一例に係るSoCの概略構成を示すブロック図である。
【図3】SoC内の構成要素の配置の一覧である。
【図4】本発明の一実施形態の特徴を有さないSoC(配置A)を説明するブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態の一例に係るSoC(配置B)を説明するブロック図である。
【図6】本発明の一実施形態の特徴を有さないSoC(配置C)を説明するブロック図である。
【図7】本発明の一実施形態の一例に係る省電力モードへの移行処理を示すフロー図である。
【図8】本発明の一実施形態の一例に係る通常モードへの移行(省電力モードからの復帰)処理を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態の一例について、図面を参照して説明する。
【0015】
本実施形態では、電子機器として、画像処理装置であるプリンターを例に挙げて説明す
る。もちろん、電子機器は、プリンターに限られず、例えば、複合機、コピー機、スキャ
ナーなど画像処理装置であってもよい。また、画像処理装置に限られず、他の種類の電子
機器であってもよい。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態の一例に係るプリンターの概略構成を示すブロック図であ
る。
【0017】
プリンター1は、印刷データを受信して、当該印刷データに基づいて印刷媒体に印刷を
行う装置である。プリンター1は、例えば、レーザー方式のページプリンターである。も
ちろん、インクジェット方式やシリアルプリンターであってもよい。
【0018】
プリンター1は、プリンター1を統合的に制御するコントローラー10と、印刷媒体へ
の印刷を行う印刷エンジン60と、各種情報の表示やユーザー操作の入力受付などを行う
操作パネル70とを備える。
【0019】
コントローラー10は、SDRAM40を制御して各種プログラムによる処理を行う回
路であるSoC20と、SoC20へ電源供給を行う電源供給ユニット30と、各種プロ
グラムやデータを揮発的に記憶するSDRAM(Synchronous DRAM)40と、各種プログ
ラムやデータを不揮発的に記憶するフラッシュROMなどのROM50とを備える。
【0020】
本実施形態では、SDRAM40は、例えば、DDR(Double Data Rate)−SDRA
Mである。また、SDRAM40は、セルフリフレッシュ機能を有する。SDRAM40
は高速に動作するため、後述するように、SDRAM40に対するアクセス制御は、メモ
リーコントローラーと、当該メモリーコントローラーとは分離したメモリーPHY(Phys
ical Interface)と、SSTL I/O(Stub Series Termination logic I/O)とによ
り実現される。
【0021】
印刷エンジン60は、コントローラー10の制御の下、印刷データに基づいて印刷媒体
に印刷を行うユニットである。印刷エンジン60は、例えば、トナーカートリッジ、感光
体ドラム、レーザー光照射機構、転写機構、紙送り機構、給排紙機構などを有するレーザ
ー方式のエンジンである。もちろん、印刷エンジン60は、レーザー方式に限られず、イ
ンクジェット方式であってもよい。
【0022】
操作パネル70は、プリンター1とユーザーの入出力インターフェイスである。操作パ
ネル70は、例えば、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display)や有機ELディスプ
レイ(Electro-Luminescence Display)などのディスプレイと、入力装置として機能する
タッチパネル、ハードスイッチ等を備える。
【0023】
なお、上記のプリンター1の構成は、本願発明の特徴を説明するにあたって主要構成を
説明したのであって、上記に限られない。また、一般的なプリンターが備える他の構成を
排除するものではない。例えば、SoC20は、一以上のASICで構成されていてもよ
い。
【0024】
図2は、本発明の一実施形態の一例に係るSoCの概略構成を示すブロック図である。
【0025】
SoC20は、メインCPU201と、処理回路202と、メモリーコントローラー2
03と、信号レベル保持セル204と、サブCPU205と、電源管理回路206と、ネ
ットワークI/F(インターフェイス)207と、USB I/F208と、外部I/F
209と、コマンド変換回路210と、メモリーPHY211と、SSTL I/O21
2とを備える。
【0026】
本実施形態では、SoC20は、省電力モード時に電源がOFFされるブロックAと、
常時電源がONされるブロックBとを有する。SoC20の各デバイスは、ブロックAと
ブロックBに分離して配置されている。ブロックAには、メインCPU201と、処理回
路202と、メモリーコントローラー203とが含まれる。ブロックBには、信号レベル
保持セル204と、サブCPU205と、電源管理回路206と、ネットワークI/F(
インターフェイス)207と、USB I/F208と、外部I/F209と、コマンド
変換回路210と、メモリーPHY211と、SSTL I/O212とが含まれる。
【0027】
電源供給ユニット30は、電源管理回路206から出力される信号に従って、ブロック
Aに対して電源の供給を行ったり停止したりする。すなわち、電源OFF enable
信号が入力されている間は、ブロックAへの電源を停止し、電源OFF enable信
号が停止した場合は、ブロックAへの電源を供給する。電源供給ユニット30は、ブロッ
クBに対しては、通常モードにおいても省電力モードにおいても常時電源を供給する。
【0028】
メインCPU201は、所定のプログラムを実行してプリンター1の主要な機能を実現
する演算装置である。メインCPU201は、基本的にプリンター1が通常モードの場合
に動作する。メインCPU201は、メモリーコントローラー203を介してSDRAM
40にアクセスすることができる。
【0029】
メインCPU201は、プリンター1が通常モードの場合に、省電力モードへの移行要
求があったか否かを監視する。省電力モードへの移行要求があった場合、その旨をサブC
PU205に通知する。
【0030】
処理回路202は、所定の処理を行う回路である。処理回路202は、本図では一つ図
示されているが、複数個設けられている。処理回路202は、例えば、各種の画像処理や
データ処理などを行う回路である。処理回路202は、メモリーコントローラー203を
介してSDRAM40にアクセスすることができる。
【0031】
サブCPU205は、所定のプログラムを実行して、プリンター1の省電力モードに関
する機能を実現する演算装置である。サブCPU205は、基本的には、プリンター1が
通常モードにおいても省電力モードにおいても動作する。サブCPU205は、コマンド
変換回路210を介してSDRAM40にアクセスすることができる。メモリーコントロ
ーラー203を介してSDRAM40アクセスしてもよい。
【0032】
サブCPU205は、メインCPU201から省電力モードへの移行要求に関する通知
があった場合、移行処理を開始する。例えば、電源管理回路206に指示して、電源供給
ユニット30に対して電源OFF enable信号を出力させる。
【0033】
また、サブCPU205は、プリンター1が省電力モードの間、プリンター1の外部か
らのリクエスト又はプリンター1の内部からのリクエストを監視し、リクエストがあった
場合、復帰処理を開始する。例えば、電源管理回路206に指示して、電源供給ユニット
30に対する電源OFF enable信号の出力を停止させる。
【0034】
メモリーコントローラー203は、メインCPU201や処理回路202等のマスター
からのリクエストを受け付け、SDRAM40に対するコマンドの発行などを行う。メモ
リーコントローラー203は、生成したコマンド等を、信号レベル保持セル204を介し
て、メモリーPHY211に出力する。
【0035】
メモリーPHY211は、SDRAM40に対する物理層の制御を行う。メモリーPH
Y211は、例えば、メモリーコントローラー203又はコマンド変換回路210から出
力された信号の位相制御、タイミング制御等を行ってSDRAM40に出力する。
【0036】
SSTL I/O212は、メモリーPHY211及びSDRAM40と接続し、SD
RAM40に対して高速かつ低信号振幅で信号を転送するためのインターフェイス回路で
ある。
【0037】
コマンド変換回路210は、サブCPU205からメモリーコントローラー203を介
さずにリクエストを受け付け、SDRAM40に対するコマンドの発行などを行う。コマ
ンド変換回路210は、生成したコマンド等を、メモリーPHY211に出力する。なお
、コマンド変換回路210は、サブCPU205が実行する処理で必要なコマンドを発行
できればよいため、メモリーコントローラー203が有する機能の少なくとも一部を実現
する。
【0038】
電源管理回路206は、電源供給ユニット30に対する信号を出力する回路である。電
源管理回路206は、サブCPU205の指示に従って、電源供給ユニット30に対する
電源OFF enable信号の出力を開始又は停止する。
【0039】
ネットワークI/F207は、LAN(Local Area Network)等のネットワークに接続
し、データの送受信を制御するインターフェイス回路である。USB I/F208は、
USBホストと接続し、USBによるデータの送受信を制御するインターフェイス回路で
ある。外部I/F209は、ROM50、操作パネル70等の装置とのデータの送受信を
制御するインターフェイス回路である。これらの回路は、外部からのリクエストを受信し
た場合、サブCPU205に通知する。
【0040】
信号レベル保持セル204は、省電力モード時(ブロックAの電源OFF時)に、ブロ
ックAから出力される全ての信号をそれぞれ所定のレベル(ハイ又はロウ)に固定する。
本実施形態では、メモリーコントローラー203からの複数の出力信号は、ブロックBの
各種デバイスが誤動作しないように、例えば、SDRAM40がセルフリフレッシュ状態
を維持できるように、それぞれ所定のレベルに固定される。また、各種入出力信号は、ブ
ロックBからブロックAへ又は逆に電流が流れないように、それぞれ所定のレベルに固定
される。なお、信号レベル保持セル204は、通常モード時には、各種入出力信号をその
まま通す。
【0041】
図示していないが、SoC20のブロックAには、メインCPU201及び処理回路2
02からメモリーコントローラー203へのリクエストを調停する調停回路が設けられて
いてもよい。
【0042】
なお、上記のSoC20の構成は、本願発明の特徴を説明するにあたって主要構成を説
明したのであって、上記に限られない。また、一般的なSoCが備える他の構成を排除す
るものではない。例えば、SoC20は、一以上のデバイスを含むASICを有していて
もよい。
【0043】
次に、図3〜図6を参照して、本実施形態の一例に係るSoCの特徴をより明らかに説
明する。
【0044】
図3は、SoC内の構成要素の配置の一覧である。本図に示すように、SoC内の構成
要素の配置としては、例えば、従来の配置と、配置A〜Cとが考えられる。なお、ここで
は、主な構成要素として、メインCPU、処理回路群、メモリーコントローラー、及びメ
モリーPHYを例に挙げる。
【0045】
従来の配置では、メインCPU、処理回路群、メモリーコントローラー、及びメモリー
PHYは、ブロックBに配置される。配置Aでは、メインCPU、及び処理回路群は、ブ
ロックAに配置され、メモリーコントローラー、及びメモリーPHYは、ブロックBに配
置される。配置B(本実施形態)では、メインCPU、処理回路群、及びメモリーコント
ローラーは、ブロックAに配置され、メモリーPHYは、ブロックBに配置される(図2
参照)。配置Cでは、処理回路群、メモリーコントローラー、及びメモリーPHYは、ブ
ロックAに配置される。
【0046】
配置Aは、より具体的には、例えば、図4に示すようになる。すなわち、ブロックAに
含まれるメインCPU201及び複数の処理回路202と、ブロックBに含まれるメモリ
ーコントローラー203との間に、信号レベル保持セル204が設けられる。信号レベル
保持セル204は、メインCPU201及び複数の処理回路202それぞれからの出力信
号に対応してセルを有する。そして、例えば、省電力モード時にSDRAM40がセルフ
リフレッシュ状態を維持できるように、それぞれの出力信号を所定のレベルに固定する。
メインCPU201及び複数の処理回路202の数が増えると、それに応じてセルの数も
多くなる。
【0047】
従って、配置Aでは、メモリーコントローラー203と、メインCPU201及び各処
理回路202との間に、信号レベル保持セル204を設ける必要があるため、配置B及び
Cと比べて、回路規模が大きくなる。また、メモリーコントローラー203が、メインC
PU201及び各処理回路202がブロックAに配置されているため、従来の配置と比べ
て省電力性が高いが、配置B及びCよりは省電力性が低い。
【0048】
なお、信号レベル保持セル204とメモリーコントローラー203との間には、メイン
CPU201及び処理回路202からメモリーコントローラー203へのリクエストを調
停する調停回路が設けられていてもよい。
【0049】
配置B(本実施形態)は、より具体的には、例えば、図5に示すようになる。すなわち
、ブロックAに含まれるメモリーコントローラー203と、ブロックBに含まれるメモリ
ーPHY211との間に、信号レベル保持セル204が設けられる。信号レベル保持セル
204は、メモリーコントローラー203からの各出力信号(例えば、制御信号、データ
信号、設定信号等)に対応してセルを有する。そして、例えば、省電力モード時にSDR
AM40がセルフリフレッシュ状態を維持できるように、それぞれの出力信号を所定のレ
ベルに固定する。
【0050】
メモリーコントローラー203とメモリーPHY211間の信号は、メインCPU20
1及び複数の処理回路202とメモリーコントローラー203間の信号よりも少ない。ま
た、メインCPU201及び複数の処理回路202の数が増えても、メモリーコントロー
ラー203とメモリーPHY211間の信号の数は変わらないので、セルの数に変化はな
い。
【0051】
従って、配置Bでは、メインCPU201及び各処理回路202の出力信号の数に係わ
らず、その数よりも小さいメモリーコントローラー203からの出力信号の数に応じて、
信号レベル保持セルを設ければよい。そのため、配置Aと比べて、回路規模が小さくなる
。また、メモリーコントローラー203が、ブロックAに配置されているため、従来の配
置及び配置Aと比べて、省電力性が高い。
【0052】
また、配置Bでは、メモリーPHY211は、ブロックBに配置されているため、省電
力モード中でも動作可能であるとともに、省電力モードから通常モードへ復帰した直後で
あっても、いつでも動作可能である。また、メモリーPHY211は、サブCPU205
からコマンド変換回路210を介してSDRAM40を制御可能であるので(図2参照)
、省電力モードから通常モードへ復帰する前であっても(メインCPU201が停止して
いても)、SDRAM40をセルフリフレッシュ状態から通常アクセス状態へ復帰させる
ことができる。
【0053】
なお、メインCPU201及び処理回路202とメモリーコントローラー203との間
には、メインCPU201及び処理回路202からメモリーコントローラー203へのリ
クエストを調停する調停回路が設けられていてもよい。調停回路がブロックAに属する点
からも、配置Bは、従来の配置及び配置Aと比べて、省電力性が高い。
【0054】
配置Cは、より具体的には、例えば、図6に示すようになる。すなわち、ブロックAに
含まれるメモリーPHY211と、ブロックBに含まれるSSTL I/O212との間
に、信号レベル保持セル204が設けられる。信号レベル保持セル204は、メモリーP
HY211からの各出力信号(例えば、制御信号、データ信号等)に対応してセルを有す
る。そして、例えば、省電力モード時にSDRAM40がセルフリフレッシュ状態を維持
できるように、それぞれの出力信号を所定のレベルに固定する。
【0055】
メモリーPHY211とSSTL I/O212間の信号は、メモリーコントローラー
203とメモリーPHY211間の信号よりも少ない。また、メインCPU201及び複
数の処理回路202の数が増えても、メモリーPHY211とSSTL I/O212間
の信号の数は変わらないので、セルの数に変化はない。
【0056】
従って、配置Cでは、メインCPU201及び各処理回路202の出力信号の数に係わ
らず、その数よりも少ないメモリーPHY211からの出力信号の数に応じて、信号レベ
ル保持セルを設ければよい。そのため、配置A及びBと比べて、回路規模が小さくなる。
また、メモリーコントローラー203及びメモリーPHY211が、ブロックAに配置さ
れているため、従来の配置及び配置Aと比べて、省電力性が高い。
【0057】
ただ、配置Cでは、省電力モードにおいて、メモリーPHY211の電源がOFFとな
る。そのため、省電力モードから通常モードへ復帰する前に、SDRAM40をセルフリ
フレッシュ状態から通常アクセス状態へ復帰させることができず、配置A、Bと比べて、
復帰が遅くなる。また、メモリーPHY211とSSTL I/O212の距離が離れて
配置されているため、アナログ信号を安定させるための回路設計等が必要となり、コスト
アップにつながる。また、SSTL I/O212の近傍に信号レベル保持セル204が
配置されるため、信号の周波数が上がりにくくなるおそれがあり、配置A、Bと比べて、
パフォーマンスが低下する。
【0058】
なお、メインCPU201及び処理回路202とメモリーコントローラー203との間
には、メインCPU201及び処理回路202からメモリーコントローラー203へのリ
クエストを調停する調停回路が設けられていてもよい。
【0059】
以上のことから、本実施形態では、配置Bを選択している。
【0060】
次に、本実施形態の一例に係るSoCの特徴的な動作について説明する。
【0061】
図7は、本発明の一実施形態の一例に係る省電力モードへの移行処理を示すフロー図で
ある。本フローは、例えば、プリンター1が通常モードで動作中に開始される。
【0062】
S10では、省電力モードへの移行要求が監視される。具体的には、メインCPU20
1は、省電力モードへの移行要求があったか否かを監視する。メインCPU201は、例
えば、ネットワークI/F(インターフェイス)207、USB I/F208、及び外
部I/F209のいずれからもリクエストが入力されない状態が所定時間継続した場合に
、省電力モードへ移行すべきと判定することができる。また、例えば、操作パネル70を
介して省電力モードへの移行を指示するユーザーの操作があった場合に、省電力モードへ
移行すべきと判定することができる。省電力モード移行要求があった場合(S10:YE
S)、メインCPU201はサブCPU205に通知を行い、処理はS20に進む。省電
力モード移行要求がない場合(S10:NO)、監視が継続される。
【0063】
S20では、SDRAM40がセルフリフレッシュ状態に移行される。具体的には、メ
インCPU201(サブCPU205でもよい)は、メモリーコントローラー203に指
示して所定のコマンドを発行させ、SDRAM40をセルフリフレッシュ状態に移行させ
る。そして、処理は、S30に進む。なお、ブロックAに配置されているメインCPU2
01、処理回路202、及びメモリーコントローラー203は、例えば、SDRAM40
にプログラムの状態を記憶するなど、電源OFFへ向けた準備処理を実行してもよい。
【0064】
S30では、電源OFF Enable信号の出力が開始される。具体的には、サブC
PU205は、メインCPU201からの通知を受けて、電源管理回路206に指示して
、電源供給ユニット30に対して電源OFF enable信号を出力させる。そして、
処理は、S40に進む。
【0065】
S40では、ブロックAへの電源供給が停止される。具体的には、電源供給ユニット3
0は、電源OFF enable信号の入力を受けて、ブロックAへの電源を停止する。
そして、処理は、S50に進む。
【0066】
S50では、各種信号のレベルが信号レベル保持セル204より保持される。具体的に
は、メモリーコントローラー203からの複数の出力信号は、ブロックBの各種デバイス
が誤動作しないように、例えば、SDRAM40がセルフリフレッシュ状態を維持できる
ように、それぞれ所定のレベルに固定される。また、各種入出力信号は、ブロックBから
ブロックAへ又は逆に電流が流れないように、それぞれ所定のレベルに固定される。そし
て、本フローは終了する。
【0067】
以上のようにして、通常モードから省電力モードへの移行が行われる。
【0068】
図8は、本発明の一実施形態の一例に係る通常モードへの移行(省電力モードからの復
帰)処理を示すフロー図である。本フローは、例えば、プリンター1が省電力モードで動
作中に開始される。
【0069】
S110では、通常モードへの移行要求が監視される。具体的には、サブCPU205
は、通常モードへの移行要求があったか否かを監視する。サブCPU205は、例えば、
ネットワークI/F(インターフェイス)207、USB I/F208、及び外部I/
F209のいずれかから外部リクエストが入力された場合に、通常モードへの移行をすべ
きと判定することができる。また、例えば、タイマー(ブロックAに含まれない)による
割り込みなどの内部的なリクエストが発生した場合に、通常モードへの移行をすべきと判
定することができる。通常モード移行要求があった場合(S110:YES)、処理はS
120に進む。通常モード移行要求がない場合(S110:NO)、監視が継続される。
【0070】
S120では、復帰モードが判定される。具体的には、サブCPU205は、復帰モー
ドを判定する。本実施形態では、基本的にメインCPU201により復帰処理を行う第一
復帰モードと、基本的にサブCPU205により復帰処理を行う第二復帰モードとがある
。復帰モードは、例えば、デフォルト設定としていずれかのモードがROM50等に予め
設定されている。もちろん、例えば、ホストPCからネットワークI/F207を介して
、又は操作パネル70から外部I/F209を介してユーザーが設定変更できるようにし
てもよい。復帰モードが第一復帰モードである場合(S120:第一復帰モード)、処理
は、S130に進む。復帰モードが第二復帰モードである場合(S120:第二復帰モー
ド)、処理は、S210に進む。
【0071】
S130では、電源OFF Enable信号の出力が停止される。具体的には、サブ
CPU205は、電源管理回路206に指示して、電源供給ユニット30に対する電源O
FF enable信号の出力を終了させる。これにより、ブロックAへの電源供給が開
始される。そして、処理は、S140に進む
【0072】
S140では、メインCPU201の復帰が待たれる。具体的には、メインCPU20
1は、電源OFF状態から通常動作状態への復帰を実行する。なお、ブロックAに配置さ
れている処理回路202、及びメモリーコントローラー203も、通常の動作状態への復
帰を行う。そして、復帰後、処理はS150に進む。
【0073】
S150では、SDRAM40のセルフリフレッシュ状態からの復帰が指示される。具
体的には、メインCPU201は、メモリーコントローラー203に指示して、SDRA
M40をセルフリフレッシュ状態から通常アクセス状態に移行させる所定のコマンドを発
行させる。そして、処理は、S160に進む。
【0074】
S160では、SDRAM40のセルフリフレッシュ状態からの復帰が待たれる。具体
的には、SDRAM40は、通常アクセス状態に移行させる所定のコマンドに対応する信
号の入力を受けて、通常アクセス状態への移行を行う。そして、復帰後、処理はS170
に進む。
【0075】
S170では、外部リクエストによる復帰であるか否かが判定される。具体的には、メ
インCPU201は、S110で外部リクエストがあった場合、外部リクエストによる復
帰であると判定し(S170:YES)、処理は、S180に進む。S110で、例えば
、タイマー割り込みなど内部的なリクエストがあった場合、外部リクエストによる復帰で
ないと判定し(S170:NO)、本フローは終了する。なお、サブCPU205は、S
110において、リクエストの内容等を、ROM50や内部RAM等に保持しておけばよ
い。
【0076】
S180では、メインCPU201によりリクエストが処理される。具体的には、メイ
ンCPU201は、S110で受け付けられたリクエストに対応する処理を実行する。そ
して、本フローは終了する。なお、S180では、メインCPU201は、例えば、リク
エストの受付処理などの前処理を行い、リクエストに応じた本処理については本フローの
終了後(通常モード移行処理が終了した後)に実行する。外部リクエストは、例えば、ネ
ットワークI/F207を介して受信された印刷データであり、当該外部リクエストに応
じた本処理は、例えば、印刷データに基づく印刷処理である。
【0077】
S190では、メインCPU201によりタイマー割り込み処理が行われる。具体的に
は、メインCPU201は、S110で発生したタイマー割り込みに対応する処理を実行
する。そして、本フローは終了する。なお、S190では、メインCPU201は、例え
ば、タイマーの実行を解除するなどの前処理を行い、タイマー割り込みに応じた本処理に
ついては本フローの終了後(通常モード移行処理が終了した後)に実行する。タイマー割
り込みに応じた本処理は、例えば、印刷エンジン60のキャリブレーション処理である。
【0078】
S210は、S130と同様である。S220では、SDRAM40に対してセルフリ
フレッシュ状態からの復帰指示がされる。具体的には、サブCPU205は、コマンド変
換回路210に指示して、SDRAM40をセルフリフレッシュ状態から通常アクセス状
態に移行させる所定のコマンドを発行させる。そして、処理は、S230に進む。
【0079】
S230は、S160と同様である。S240では、外部リクエストによる復帰である
か否かが判定される。具体的には、サブCPU205は、S110で外部リクエストがあ
った場合、外部リクエストによる復帰であると判定し(S240:YES)、処理は、S
250に進む。S110で、例えば、タイマー割り込みなど内部的なリクエストがあった
場合、外部リクエストによる復帰でないと判定し(S240:NO)、処理は、S290
に進む。
【0080】
S250では、サブCPU205で外部リクエストを処理するか否かが判定される。具
体的には、サブCPU205は、外部リクエストに対応する処理の少なくとも一部をサブ
CPU205が処理可能か否かを、例えば、リクエストの内容と所定の基準とに基づいて
判定する。所定の基準は、例えば、リクエストの内容ごとに、サブCPU205が実行で
きない処理が含まれるか否かを示す情報を対応付けたものとすることができる。もちろん
、この判定方法は一例であり、他の判定方法であってもよい。サブCPU205が外部リ
クエストに対応する処理の少なくとも一部を実行できる場合(S250:YES)、処理
は、S260に進む。サブCPU205が外部リクエストを処理できない場合(S250
:NO)、処理は、S270に進む。
【0081】
S260では、サブCPU205によりリクエストが処理される。具体的には、サブC
PU205は、S110で受け付けられたリクエストに対応する処理を実行する。ただし
、サブCPU205は、リクエストに対応する処理のうち少なくとも一部の実行可能な処
理を実行する。例えば、S260では、サブCPU205は、リクエストに応じた前処理
のうち実行可能な処理を行う。実行不可能な処理は、S280でメインCPU201によ
り行われる。そして、処理は、S270に進む。
【0082】
S270は、S140と同様である。S280では、メインCPU201によりリクエ
ストが処理される。具体的には、メインCPU201は、外部リクエストに応じた前処理
の全て、又はS260でサブCPU205により実行されなかった前処理、を実行する。
S260でサブCPU205がリクエストに対応した全ての前処理を実行した場合は、メ
インCPU201は処理を行わなくてよい。そして、本フローは終了する。なお、リクエ
ストに応じた本処理については本フローの終了後(通常モード移行処理が終了した後)に
、メインCPU201により実行される。
【0083】
S290では、サブCPU205によりタイマー割り込み処理が行われる。具体的には
、サブCPU205は、S110で発生したタイマー割り込みに対応する処理を実行する
。そして、本フローは終了する。なお、S290では、サブCPU205は、例えば、タ
イマーの実行を解除するなどの前処理を行う。タイマー割り込みに応じた本処理について
は本フローの終了後(通常モード移行処理が終了した後)に、メインCPU201により
実行される。
【0084】
S300は、S140と同様である。
【0085】
以上のようにして、省電力モードから通常モードへの移行が行われる。第二復帰モード
では、メインCPU201が復帰する前に、サブCPU205によりSDRAMの復帰、
リクエストに対応する少なくとも一部の処理等が実行される。従って、メインCPU20
1が復帰する前に処理を進めることができ、通常モードへの復帰に係る時間がより短縮さ
れる。SDRAMの復帰がサブCPU205により行われるため、メインCPU201は
その復帰後、すぐにSDRAMを使用することができる。
【0086】
なお、第一復帰モードは、実行されないようにしてもよい(すなわち、S110、S2
10〜S300が実行される)。
【0087】
上記の図7及び図8の各処理単位は、プリンター1の処理を理解容易にするために、主
な処理内容に応じて分割したものである。処理単位の分割の仕方や名称によって、本願発
明が制限されることはない。プリンター1の処理は、処理内容に応じて、さらに多くの処
理単位に分割することもできる。また、1つの処理単位がさらに多くの処理を含むように
分割することもできる。
【0088】
以上、本発明の一実施形態の一例について説明した。本実施形態によれば、電子機器を
より省電力で動作させることができる。また、回路規模をできる限り抑えつつ、省電力で
動作させることができる。また、サブCPUによる復帰処理を行うことで、省電力モード
からの復帰をより早くすることができる。
【0089】
以上の本発明の実施形態は、本発明の要旨と範囲を例示することを意図し、限定するも
のではない。多くの代替物、修正および変形例が当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0090】
1:プリンター、10:コントローラー、20:SoC、30:電源供給ユニット、40
:SDRAM、50:ROM、60:印刷エンジン、70:操作パネル、201:メイン
CPU、202:処理回路、203:メモリーコントローラー、204:信号レベル保持
セル、205:サブCPU、206:電源管理回路、207:ネットワークI/F、20
8:USB I/F、209:外部I/F、210:コマンド変換回路、211:メモリ
ーPHY、212:SSTL I/O

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリーコントローラー及びメモリーPHYにより制御される外部メモリーと接続し、
通常モード及び省電力モードで動作可能な回路であって、
省電力モードにおいて電源オフされる第一ブロック及び電源オフされない第二ブロック
を含み、
前記第一ブロックに、
メモリーコントローラーを備え、
前記第二ブロックに、
メモリーPHYと、
前記メモリーコントローラー及び前記メモリーPHYの間に設けられ、省電力モード中
に前記メモリーコントローラーからの出力信号を所定のレベルに固定する信号レベル保持
部と、を備える、
ことを特徴とする回路。
【請求項2】
請求項1に記載の回路であって、
前記第一ブロックに、
前記メモリーコントローラーに対するリクエストを調停する調停回路を備える、
ことを特徴とする回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回路であって、
前記第一ブロックに、
前記メモリーコントローラーに対するリクエストを送る第一CPU及び所定の処理を行
う複数の処理回路を備える、
ことを特徴とする回路。
【請求項4】
請求項3に記載の回路であって、
前記第二ブロックに、
第二CPUと、
前記第二CPUのリクエストを受けて前記外部メモリーに対するコマンドを発行するコ
マンド変換部と、を備え、
前記第二CPUは、省電力モード中に外部リクエスト又は内部リクエストの発生を監視
し、外部リクエスト又は内部リクエストが発生した場合、通常モードへの復帰処理を開始
する、
ことを特徴とする回路。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか一項に記載の前記回路を備える電子機器。
【請求項6】
請求項1〜4いずれか一項に記載の前記回路を備える印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−221442(P2012−221442A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89828(P2011−89828)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】