説明

回路パターン検査装置

【課題】非接触センサにより導電パターンの検査を行う検査装置は、より大型化された基板により生じる検査ステージ表面の高低差や基板の反りにより、検査時のセンサ部の移動機構の移動精度と技術的な難易度が高くなり、製造コストにも影響している。
【解決手段】検査時に非接触センサ部と検査ステージが固定され、搬送される基板が検査ステージから定距離の浮上した状態で通過し、検査対象となる基板上の導電パターンとセンサ部との距離が一定となり、検出された検出信号の電位レベルにおけるうねり等の上下変動が抑制され、簡易な搬送機構を用いて構成される回路パターン検査装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定されたセンサ部を通過する基板の上面に形成された導電パターンの良否を非接触で検査可能な回路パターン検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示デバイスは、ブラウン管等の真空管表示デバイスに替わって、ガラス基板上に液晶を用いた表示デバイス、所謂、液晶表示デバイスやプラズマ表示デバイスが主流となっている。これらの表示デバスイの製造工程の中で、ガラス基板上に形成された回路配線となる導電パターンに対して、断線及び短絡の有無の検査を行っている。
【0003】
これまでの一般的な導電パターンの検査手法としては、例えば、特許文献1に記載されるように、順次、導電パターンの両端に検査プローブのピン先を接触させて、一方の検査プローブから直流検査信号を印加し、他方の検査プローブから伝搬された直流検査信号を検出し、検出信号の有無により断線及び短絡の有無を検査する接触式の検査手法(ピンコンタクト方式)がある。
【0004】
異なる検査手法として、特許文献2には、少なくとも2つの検査プローブを導体パターンの両端と非接触で容量結合した状態で移動させつつ、一方の検査プローブから交流検査信号を印加し、他方の検査プローブで導体パターンを伝搬した交流検査信号を検出する。検出信号の波形の変化により、導電パターンにおける断線及び短絡の有無の検査を行っている。
【特許文献1】特開昭62−269075号公報
【特許文献2】特開2004−191381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した液晶表示デバイスは、ユーザの要望に従い、表示画面の大型化と画素の緻密化が製造技術の進歩により実現している。また、製造メーカは、生産数の増加に対応することや1製品単位の製造コストを低く抑えるために、一度の製造工程でなるべく多くの製品数を製造できるように、大型化された基板に対応する製造装置を用いた生産ラインを構築している。このため、回路パターン検査装置においても、その大型基板に対応できる構成が必要となっている。
【0006】
特に、画素が緻密化された電子回路の検査装置として、ピンコンタクト方式の検査装置は、製品毎に、狭ピッチで多本数からなる検査プローブで構成されるプローブカードを作成するため、製造コストが高くなっている。さらに、線幅が極小的に狭くなった導電パターンにピンが接触して損傷を与えるため、後の製造工程で不具合を発生させる原因ともなりかねず、緻密化されたパターン検査には好適する検査装置とは言い難いものがある。このような理由から、検査プローブが導体パターンとは非接触で容量結合を利用した検査装置の方が望ましい。
【0007】
ピンコンタクトせず、非接触で容量結合を利用した検査装置においては、検査プローブが導電パターンと離間して対向し、導電パターンから伝搬してきた交流検査信号を受信するため、検査信号としては、微小な信号となる。検査精度を上げるためには、検出した交流検査信号の全体的なうねりを少なくし、不良箇所の信号変化を目立たせることである。
【0008】
従って、配列する導電パターンの上方を通過する際に、同じ容量結合の状態が継続すること、即ち、検査プローブと導電パターンとの間の距離が数十μmの単位で一定であることが重要なこととなる。
【0009】
しかし図8に示すように、検査対象となる大型ガラス基板4は、大きさに比べて厚みが薄いため重力の影響を受けやすく、載置される検査ステージ52の表面の高低差(h1,h2)が大きく影響する。また、プロセス処理に加えられる熱により、僅かながら全体的に反りが発生する場合もある。さらに、検査プローブ51の移動機構において、数メートル四方のガラス基板上を移動させるため、移動機構の構成も繁雑なものとなる。
【0010】
このような大型基板により発生する問題を解決するには、平坦な検査ステージの作製と、検査時におけるガラス検査基板の浮き上がりのない吸着と、高さ(検査プローブと基板との距離)の変動がない移動機構とが必要となる。いずれにおいても、大型基板には現在の検査精度又はそれ以上の検査精度を要求することは、技術的な難易度が高くなり、製造コストも大幅に上がることが想定される。
【0011】
そこで本発明は、対向する導電パターンと検査プローブとの距離を一定に維持し、大型基板上に形成される導電パターンの断線及び短絡検査に最適な回路パターン検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、搬送される基板上に形成された複数列の導電パターンに対して、容量結合して非接触で交流検査信号を印加し、該導電パターンを伝搬した前記交流検査信号を非接触で検出するセンサ部と、前記センサ部と離間対向し、導電体により構成される検査ステージと、前記センサ部と前記検査ステージとの間を前記基板が通過するように搬送する搬送機構と、前記検査ステージにおける前記センサ部との対向面側に設けられ、通過する前記基板を定距離のエアー浮上状態で維持する基板位置調整機構と、前記センサ部で連続的に得られた前記検出信号に急峻な振幅変化が生じた導電パターンを不良と判断する判断部と、を備える回路パターン検査装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、対向する導電パターンと検査プローブとの距離を一定に維持し、大型基板上に形成される導電パターンの断線及び短絡検査に最適な回路パターン検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の回路パターン検査装置は、ガラス製の基板の表面にはドットマトリクス表示パネルを形成するための一定間隔で列状に形成される導電パターンの良否を検査する。本実施形態では、導電パターンは、パターン幅がほぼ同一であり、各パターン間隔もほぼ等間隔とする。但し、センサ部が移動したい際に、同じ導電パターンの両方の端部にセンサ対が対向するパターンであれば、導電パターンの途中の幅が変わったり、各パターン間隔が等間隔でなくとも検査を実施することができる。
【0015】
図1には、本発明の回路パターン検査装置のブロック構成例を示し、図2には、検出信号処理部の構成例を示している。
【0016】
この回路パターン検査装置は、大別して、検査対象となる導電パターンと非接触で検査を行うセンサ部1と、センサ部1と離間して対向し検査時には離間距離(高さ)を維持する検査ステージ5と、センサ部1と検査ステージ5との間を検査対象の基板4が通り抜けるように搬送する搬送機構7と、装置全体を制御し、センサ部1から得られた検出信号に基づき、基板4上に形成された複数の導電パターン19の断線及び短絡の良・不良を判断する制御部8とで、構成される。
【0017】
さらに、周辺機器として、キーボードやタッチパネル等の入力部11と、設定条件や検査条件等を表示させる表示部12が設けられている。また、遠隔的に管理又は監視するためのホスト装置15を設けてもよい。ホスト装置15からの検査条件等の入力も可能である。
【0018】
また、図3及び図4には、回路パターン検査装置の外観構成例を示している。
本実施形態は、検査対象となる基板の幅よりも長い矩形形状のベース部(架台)31と、ベース部31の両端にそれぞれに設けられた支柱32と、支柱間を横架するガイド部33と、ガイド部33の上面に設けられた複数のガイドレール33aと、ガイドレール33aに滑動するように設けられるセンサ支持部材34と、センサ支持部材34に吊着されるセンサ部1と、センサ部1の下方で対向する位置に設けられた検査ステージ7と、で構成される。さらにベース部31上には、ガイド部33と直交する基板搬送方向に沿って配置される搬送架台35と、搬送架台35上を移動可能で基板4の先端及び終端を係止するストッパ部材36と、搬送架台35上方で検査ステージ7を挟み搬送方向上流下流に均一的に配置される複数の搬送用ローラ37と、を備えている。尚、以下の説明において、配列される導電パターンの幅方向(図3におけるX方向又は、基板の搬送方向)に対して、センサ部の各プローブの長さと称し、検査ステージにおいても同様にステージの長さと称している。
【0019】
このような構成において、センサ部1は、少なくとも一対の印加プローブ1a及び検出プローブ1bが設けられている。本実施形態の両プローブは、ピンを所有せず、対向する検査対象物の面積に従う面積(設計に応じて、例えば、導電体パターンに対して、1パターン又は2パターンに掛かる程度)を有する電極板である。印加プローブ1aには、検査信号供給部2から交流波形の検査信号が供給され、容量結合により検査対象となる導電パターン19にその検査信号を印加する。検出プローブ1bは、同じ検査対象となる導電パターン19上方に位置し、容量結合により導電パターン19を伝搬した検査信号を受信(検出)する。検出プローブ1bは、検査対象となる導電パターン19の断線不良を検出する。本実施形態においては、検出プローブ1bは導電パターン19の幅と略同じ長さ又は、少なくとも導電パターン19間のピッチ幅を含めた長さよりも短く形成されている。これは、不良を有している導電パターンを特定し易くするためである。但し、実際には、検出プローブ1bが2,3つの導電パターンに掛かっていたとしても、印加プローブ1aと検出プローブ1bの各中心が同じ導電パターンと正対させることにより、検出された信号のピーク値から不良を有している導電パターンを特定することも可能である。また、検出プローブ1bの近傍には、検査対象となる導電パターン19に隣接する導電パターン上方に位置するように、第2の検出プローブ(図示せず)を配置して検査対象となる導電パターン19における短絡を検出する。
【0020】
従って、断線検査のみであれば、一対のプローブで構成でき、短絡検査の場合には、1つの印加プローブ1aと、2つの検出プローブ1bが望ましく、適宜選択して設ければよい。また、2本の導電パターン19に掛かる幅(面積)を有する検出プローブ1bであれば、1つの検出プローブ1bにより、断線及び短絡の良・不良を検出することは可能である。さらに、第2の検出プローブは、必ずしも検査対象となる導電パターン19に隣接する導電パターン上方に位置せずに、数導電パターンの距離が離れた位置に配置されても検出することは可能である。
【0021】
これらのプローブ対が備えられる数は、基板4に形成される導電パターンの群(製品時に1つの表示デバイスとなる導電パターンの区分)により異なり、本実施形態の図4に示す例では、同時に2つの群を検査するため、2組のプローブ対が設けられている。このプローブ対の数は、基板の仕様により規定され、使用しないプローブ対は、ガイド部33における基板検査範囲外に退避している。
【0022】
さらに本実施形態には、制御部8の制御により、センサ部1と検査ステージ5の対向距離(高さ位置)を調整するための高さ位置調整機構10と、基板4の搬送方向と直交する方向にセンサ部1を移動して、所定位置に退避させる退避機構9とが設けられている。
【0023】
退避機構9は、ガイド部33と、センサ部1又はガイド部33に設けられた駆動部(図示せず)とにより構成される。退避機構9は、センサ部1の不使用時、装置停止時及び点検時などには、センサ部1をガイド部33上を移動して基板検査範囲外に退避させる。この退避機構9を用いれば、導電パターン19の形成方向に沿った移動も可能となり、不良と判断された導電パターン19に対して、パターン上のどの位置に不良箇所が存在するかを検出するために、センサ部1を導電パターンの形成方向に沿って移動させる移動機構として兼用できる。尚、この導電パターンにおける不良箇所の位置検出は、別途、移動機構を設けてもよい。
【0024】
また、検査ステージ5又はセンサ部1の近傍には、基板4と検査ステージ5間の距離及び検査ステージ5とセンサ部1間の距離を測定するための距離測定センサ13が設けられている。距離測定センサ13は、例えば、レーザ光を用いて、基板4に照射し、その微小な反射光から基板4と検査ステージ5間の距離を検出する。又は、基板4上の導電パターン19に照射して、その反射光から距離を検出して、基板4の厚みを差し引いて基板4と検査ステージ5間の距離を算出してもよい。同様に、検査ステージ5又はセンサ部1間の距離も反射光から測定する。
【0025】
さらに、センサ部1の近傍に、基板4の導電パターン4を撮像する撮像部14を設けて、撮像した画像から検査開始位置の位置決めを行う。また、センサ部1に付帯させて、一体的に移動可能に設けて、検出されたパターン上の不良箇所を撮像して、画像表示させてもよい。
【0026】
検査ステージ5は、導電体により構成され、図5(a)に示すようにその幅L2、特にセンサ部1の検出プローブ1bの幅L1に対して、同じ幅から2倍以下の幅とする。また図5(b)に示すように、検査ステージ5の上面には、基板位置調整機構6が設けられている。
【0027】
本実施形態の基板位置調整機構6は、例えば、円盤形状で多孔質部材により形成されたエアー吐出部61と、円盤中央又は近傍に設けられた吸引口62と、エアー吐出部61にエアーを供給するコンプレッサ等からなるエアー供給部63と、吸引口62から吸気を行うポンプ等からなるエアー吸引部64とで構成される。本実施形態では、図5(b)において、概念的に4つのエアー吐出部61を記載しているが、これに限定されるものではなく、センサ部1と検査ステージ6の間を通過している基板を、定距離(検査ステージからの定距離又はセンサ部からの定距離のいずれでもよい)でエアー浮上状態を維持することが実現できる個数を設ければよい。従って、エアー吐出部61が複数列の配置であってもよい。また、本実施形態では、エアー吐出部61は上から見て円形を示しているが、これに限定されず、矩形によるマトリックス配置や適宜ずらして配置してもよい。さらに、エアー吐出部61を六角形に形成して、ハニカム配置にしてもよい。
【0028】
尚、基板位置調整機構6は、公知なエアーフロート機構を利用して構成してもよい。エアー供給部63においては、一定の流量のエアーを供給する必要があるため、例えば、マスフローコントローラを用いて制御してもよい。また、エアー(空気)に限定されるものではなく、窒素や不活性ガスを用いてもよい。さらに、製造工程の関係で導電パターンの成膜直後に検査を実施するのであれば、浮上させるために吐出する気体の温度を調整(低温化)して、基板4に対してクーリング(cooling)処理を併せて実施することもできる。
【0029】
この構成において、エアー吐出部61は、多孔質部材を通り抜けたエアーが表面全面から均一的に吐出する。また、吸引口62は、吐出されたエアーのある程度を吸引する。このような構成において、エアーの吐出量と吸引量との比率を加減することにより、ガラス等の基板4を検査ステージ5上に置くと、基板4は、吐出されたエアーで浮上しつつ、吸引により浮上する距離が制限されることとなる。即ち、この検査ステージの上方の基板4は、浮き上がり距離が調整された位置で空中停止する状態となる。本実施形態においては、基板4が検査ステージ5から一定の距離で浮上状態を維持できる構成であれば、その浮上機構は、上述の構成に限定されるものではない。
【0030】
また、本実施形態では、検査時には、検査ステージ5とセンサ部1は固定されているため、検査ステージ5とセンサ部1との間を基板4が通り抜けるように搬送する搬送機構7を有している。
【0031】
搬送機構7は、搬送手法としては種々の公知な機構が適用でき、例えば、ベルト搬送機構、多数のローラを配置したローラ搬送機構、リニアモータを利用したモータスライド搬送機構、エアー浮上によるエアー浮上搬送等があり、これらを組み合わせた構成でもよい。本実施形態では、図3及び図4に示すように、検査ステージ5における搬送方向の上流側と下流側に配置され、それぞれ複数のローラ37を用いて構成されたローラ搬送機構を例としている。本実施形態では、検査ステージ7を挟んで上流側と下流側に分断されて、ストッパ部の一部分が重なりを有するように配置されている。これらのローラ37には、図示しない回転駆動機構が設けられており、制御部8の制御により回転されて、載置する基板4を搬送する。尚、基板4が適切に搬送される範囲であれば、全部のローラ37に駆動機構を設ける必要はない。
【0032】
本実施形態では、例えば、基板4の先端側と後端側にそれぞれストッパ部36を宛がうように設けている。ストッパ部36には、搬送方向に一定速度でスライド移動する摺動機構が設けられている。これらのストッパ部36は、ローラ37による基板4の搬送される時に、一定の速さで基板4が搬送されるように制御することができる。また、ローラ37には、駆動機構を設けずにフリー状態にする又は、ローラ37に替わってエアー浮上機構により浮上状態にして、ストッパ部36を搬送方向に摺動させることにより、基板搬送を行うことも可能である。
【0033】
さらに、変形例としては、例えば、ベルトコンベアを用いたベルト搬送機構が採用できる。ベルトコンベアが検査ステージ7を避けるようなベルト軌道を作製すればよい。即ち、ベルトコンベアを検査ステージ7の手前で一旦、下方に沈み込み、検査ステージ7の下方を抜けて、再度上昇するように構成する。この構成では、検査ステージ7を挟む上流側と下流側の基板の搬送速度が同じであるため、搬送速度の制御が容易である。さらに、ベルトコンベアに多数の小孔を開口し、ファン等を内部に設けて、内側から吸気することにより、基板4がベルトコンベアに吸着された状態で搬送され、搬送途中における基板ズレを防止することができる。
【0034】
また、出信号処理部3は、センサ部1から送出された微小なアナログ検出信号を所定の電圧レベル(良否の判断可能なレベル)まで増幅する増幅回路21と、増幅回路21により増幅された検出信号の雑音成分を除去し、必要な帯域を通過させるバンドパスフィルタ22と、バンドパスフィルタ22からの検出信号を全波整流する整流回路23と、全波整流された検出信号を平滑する平滑回路24とで構成される。尚、全波整流を行う整流回路23及び検出信号を平滑する平滑回路24は必ずしも備える必要はない。
【0035】
制御部8は、プログラムや設定された演算条件により演算処理を行う中央処理部(CPU)16と、CPU16に使用するプログラム、制御パラメータ及び検査結果等を記憶する記憶部17と、CPU16により設定された判断基準により、検査対象の導電パターンの断線不良又は短絡不良を判断する判断部18とを有している。
【0036】
また、検査信号供給部2は、例えば、検査信号として例えば交流200KHz、200Vの正弦波信号を生成し、印加プローブ1aに供給する。このような場合、バンドパスフィルタ22には、検出される検査信号も200KHzであるため、200KHzを通過させるバンドパス領域のフィルタを用いる。尚、検査信号は正弦波信号に限らず、振幅を有する信号であればよく、矩形波やパルス波であってもよい。
【0037】
次に、このように構成された本実施形態の回路パターン検査装置による検査について説明する。
まず、起動時には、検査者により装置内の各構成部位の初期設定、検査パラメータ(検査対象の基板及び導電パターンにより規定されている検査パラメータ)の入力が行われて、検査条件が設定される。検査条件は、予め定められた検査パラメータとして、検査対象の基板及び導電パターンにより規定されている数値、例えば、検査対象となる基板の大きさ及び厚さ等の設定、導電パターンに対するセンサ部の位置合わせ等が通常のルーチンに基づいて設定される。この時に、ダミー基板等を用いて条件設定及び試験的な検査を実施してもよい。
【0038】
この時、検査ステージ5から検査対象の基板4が、例えば距離30μmを浮き上がった状態となるように、基板位置調整機構6により調整する。また、センサ部1の印加プローブ1a及び検出プローブ1bが基板4上の導電パターンとの距離が検査信号の印加と検出が適正に行われる距離となるように、高さ位置調整機構10により高さ(Z方向)の調整が行われる。この調整は、実際に導電パターンに信号を印加/検出を行いつつ実施してもよい。また、センサ部1の印加プローブ1a及び検出プローブ1bは、導電パターンの両端の上方に非接触で位置するように位置出しされる。
【0039】
次に、上流側の搬送機構7に検査対象の基板4を供給する。この時、搬送用ローラ37上において、基板4の先端と後端にストッパ部36が宛がわれる。センサ部1の位置調整が確認された後、搬送機構7により基板4の検査開始位置まで搬送される。この時、例えば、撮像部14により撮像された画像により開始位置が確認される。
【0040】
制御部8からの検査実施の指示により、搬送機構7により基板4が搬送され、検査ステージ5に掛かると、センサ部1により導電パターンへの検査信号の印加と、導電パターンを伝搬した検査信号の検出が行われる。検出信号は、検出信号処理部3に入力される。
【0041】
検出信号処理部3は、図2に示すように、まず入力された検出信号を増幅回路21で必要レベルまで増幅する。次に増幅された検出信号は、検査信号の周波数帯域のみを通過させるバンドパスフィルタ22により、雑音成分が除去される。その後、バンドパスフィルタ22を通過した検出信号は、整流回路23で全波整流され、さらに、全波整流された検出信号が平滑回路24で平滑されて、検出信号として生成される。この検出信号は、制御部8における図示しないA/D変換部でデジタル化処理を施される。
【0042】
CPU16は、A/D変換されたデジタル検出信号に変換して、判断部18に送出される。判断部18では、読み取った検出信号における瞬間的な急峻な変化の有無を検出して、それらの変化の正負の向きにより、断線又は短絡を判定する。
【0043】
具体的には、センサ部1により連続的に検出される検出信号に対して、その直前の検出信号の信号値から急峻な変化(ピーク値を有して元の信号値近くに復帰する信号値の振幅変化)を発生させた導電パターンに短絡又は断線の不良があると判断する。尚、本実施形態によるセンサ部1からの検出信号は、一定の電位レベルで推移するが、例え、検出された検出信号の電位レベルにおけるうねり等の上下変動が発生しても、前述した判断を実施することができる。つまり、信号値から急峻な変化に対して、判断レベルを予め設定しておき、直前の信号値からその判断レベルを超えた急峻な変化に対して不良判断を行うので、うねりの等の緩やかな検出信号の電位レベルの変化に対しては、良/不良の判断はおこなわれない。従って、判断基準は、信号値の経時的な変化に対して、判断レベル(信号値)を正負方向に重畳したものとなり、常に直前の検出信号値、又は予め設定した期間における平均の検出信号値から正負のある範囲(検出信号値を中心とする幅)で判断し、その範囲の上限又は下限を外れた検出信号が出された検査対象の導電パターンを不良と判断することとなる。尚、予め設定した期間における平均の検出信号値は、その期間全体(積算量)の平均でもよいし、その期間の中で複数取得した検出信号値の平均値でもよい。また、検出信号値から正負のある範囲の上限又は下限とは、検出信号値をaとし、判断レベルをbとすると、良否判断の範囲の上限は、a+bであり、範囲の下限a−bを示唆する。
【0044】
図6は、検査部と検査ステージにおける検査について説明するための概念を示している。図6に示すように、搬送されている基板4は、常に検査ステージ5より30μm浮き上がった状態が維持される。従って、基板4に反りや歪みが発生していても、基板4の検査対象領域に対して位置調整が行われるため、センサ部1と導電パターンとの距離が一定となる。
【0045】
図7には、基板4の移動距離と、センサ部1から出力信号(但し、増幅処理後)の一例を示している。本実施形態の基板位置調整機構6による基板4の位置調整が行われた結果Aは、0.3Vを一定に推移する。一方、基板位置調整機構6を動作させず、基板4の位置調整を行わなかった結果Bは、基板4の高さが変動するため、センサ部1と導電パターンとの距離が変化しているため、略0.12Vから略0.19Vの範囲を変化している。不良箇所は、共に同じ略24mm、略53mmの位置で検出されている。尚、従来は、ソフトウエアを用いて出力結果のうねりを補正している。本実施形態では、ハードウエアの出力結果をそのまま判定に利用できるため、平坦化のためのソフトウエア処理が不要となり、装置構成の簡易化及び判断の高速化が図れる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によれば、センサ部における印加プローブと検出プローブは、導電パターンに非接触であるため、検査を実施しても導電パターンに接触による損傷を無くすことができ、表面の傷や剥がれ等を防止することができる。
【0047】
また、検査時には、センサ部と検査ステージ間の距離が固定され、その間で検査ステージ上方の一定の位置を基板が通過される。このため、センサ部と基板上の導電パターンとの距離が一定となり、検出信号に電位レベルのうねり等の上下変動を防止することができる。
【0048】
さらに、基板はセンサ部と検査ステージ間で位置調整が行われて規定位置を通過するため、搬送における上下変動や基板に反りや歪みが発生していても、検出結果に問題が発生しない。よって、高精度な搬送機構が要求されず、簡易な搬送機構を用いることができる。そのため、装置の製造コストを下げるだけではなく、搬送機構として種々の構成を用いることできる。
【0049】
また、本実施形態では、基板を載置固定する従来の検査ステージではないため、基板の大きさで高い平面の精度を有するステージ面積を必要とせず、検査ステージを製作するための高度で熟練した技術を必要としない。さらに、センサ部が基板上を移動する構成ではないため、移動検査のためのセンサ移動機構が不要であり、検査前の高さ調整だけの簡易で小型の調整機構のみで実現する。
【0050】
また、検査対象となる基板の幅を設計段階でセンサ部の数とセンサ部が設けられるガイド部の長さを考慮することにより、大きさが異なる基板であっても、センサ部を基板に合わせてガイド部上を移動させるだけで、種々のサイズ間基板に対して同等に検査を行うことができる高い汎用性を有している。また、センサ部の数を増減する構成にもでき、ユーザが基板検査に要求する仕様に容易に対応することができる。
【0051】
また、センサ部と導電パターンとの距離が一定であるため、結合された静電容量に上下変動の電位レベルのうねりが無くなり、ソフトウエアの処理が不要となり、制御部の処理能力を逼迫することなく、結果処理が簡易化され、且つ検出時間等のレスポンスが向上する。また、不良箇所の信号レベルの変化が判断しやすくなり、誤判断を抑制することができる。
【0052】
ガイド部に、センサ部が基板上に形成される導電パターンのパターン方向に沿って退避移動する退避機構を設けているため、導電パターンに不良が見出された時に、退避機構を利用して、導電パターンに沿ってセンサ部を移動させることにより、導電パターンの不良箇所の位置を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態に係る回路パターン検査装置のブロック構成例を示す図である。
【図2】図1に示す検出信号処理部の構成例を示す図である。
【図3】本実施形態の回路パターン検査装置を斜め上から見た外観構成例を示す図である。
【図4】本実施形態の回路パターン検査装置を上から見た外観構成例を示す図である。
【図5】図5(a)は検査ステージとセンサ部の大きさについて説明するための図であり、図5(b)は検査ステージの上面に設けられた基板位置調整機構を示す図である。
【図6】本実施形態による構成の検査部と検査ステージにおける検査について説明するための概念図である。
【図7】基板の移動距離とセンサ部から出力信号の関係について説明するための図である。
【図8】大型基板をステージに載置してセンサ部を移動させる構成について説明するための図である。
【符号の説明】
【0054】
1…センサ部、1a…印加プローブ、1b…検出プローブ、2…検査信号供給部、3…検出信号処理部、4…基板(ガラス基板)、5…検査ステージ、6…基板位置調整機構、7…搬送機構、8…制御部、9…退避機構、10…高さ位置調整機構、11…入力部、12…表示部、13…距離測定センサ、14…撮像部、15…ホスト装置、16…中央処理部(CPU)、17…記憶部、18…判断部、19…導電パターン、21…増幅回路、22…バンドパスフィルタ、23…整流回路、24…平滑回路、31…装置ベース部(架台)、32…支柱、33…ガイド部、33a…ガイドレール、34…センサ支持部材、35…搬送架台、36…ストッパ部材、37…搬送用ローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される基板上に形成された複数列の導電パターンに対して、容量結合して非接触で交流検査信号を印加し、該導電パターンを伝搬した前記交流検査信号を非接触で検出するセンサ部と、
前記センサ部と離間対向し、導電体により構成される検査ステージと、
前記センサ部と前記検査ステージとの間を前記基板が通過するように搬送する搬送機構と、
前記検査ステージにおける前記センサ部との対向面側に設けられ、通過する前記基板を定距離のエアー浮上状態で維持する基板位置調整機構と、
前記センサ部で連続的に得られた前記検出信号に急峻な振幅変化が生じた導電パターンを不良と判断する判断部と、
を具備することを特徴とする回路パターン検査装置。
【請求項2】
前記基板位置調整機構は、
気体を透過させる多孔質部材からなるエアー吐出部と、
前記エアー吐出部内又は近傍に設けられ、該エアー吐出部から吐出された前記気体を吸引する吸引口と、
前記エアー吐出部にエアーを供給するエアー供給部と、
前記吸引口から吸気を行うエアー吸引部と、
を具備し、
前記エアー吐出部から吐出された前記気体の吐出量と、前記吸引口から吸引されるエアー吸引量との比率を加減し、前記検査ステージ上において定距離で前記基板が浮上状態を維持することを特徴とする請求項1に記載の回路パターン検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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