説明

回路基板及びその製造方法

【課題】回路基材の溝内に導電性粒子を含む流動体が配置され、流動体中の導電性粒子が溝内面に固定されて形成された導体パターンのひび割れを防ぐ。
【解決手段】回路基材11の成形と同時に断面が半円弧状で内面13が接線連続性を有する溝12を成形する。導電性粒子を含む流動体を回路基材11の溝12内に塗布し、溝12の内面13に沿った方向での位置変化に対して極めて滑らかになった後、溝12内の流動体を加熱し、流動体Pの導電性粒子を溝12に固定することで、回路パターン31を形成された回路基板10を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体パターンが形成されている回路基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に回路パターン等の導体パターンが形成されている回路基板は、例えば、以下の特許文献1に記載されている方法で製造される。
【0003】
この製造方法では、まず、非導電性の回路基材11上で導体パターンとしての回路パターンを形成する位置に、図11(a)及び同図(b)に示すように、断面形状が長方形状の溝25を形成する。次に、同図(c)に示すように、金属粒子を分散させたインク等、導電性粒子を含む流動体Pをこの溝25内に注入し、同図(d)に示すように、回路パターン35を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−356255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の技術において、溝25内に流動体Pを注入すると、流動体Pは、溝底面27では溝側周面26側に向って濡れ広がる。また、流動体Pは、溝側周面26では、流動体Pの露出面(回路基材11に触れていない面)Sと溝25との境界B、つまり、溝25内の流動体Pで溝25の開口縁Eに最も近い箇所から、溝底面26に向って厚みが次第に増えるように濡れ広がる。このため、溝25内の流動体Pは、図11(c)及び図12に示すように、溝側周面26と溝底面27との角部Cでの厚さが極端に厚くなってしまう。この状態で、流動体Pに導電性を付与するため加熱等を行って、流動体P中の液体成分を除去すると、液体量が角部Cと他の部分とで大きく異なる結果、図11(d)に示すように、先に液体成分が除去されて固化する他の部分側へ、角部Cの流動体Pが引っ張られる力Fが大きくなる。よって、特許文献1に記載の技術では、溝25に沿って形成された回路パターン35の溝25の角部Cに相当する位置にひび割れ36が生じ、回路パターン35の抵抗値が増大することがある。さらに最悪の場合には回路パターン35が断線することがある、という問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は、従来技術の問題点に着目し、導体パターンのひび割れを抑え、導体パターンの抵抗値の増大や導体パターンの断線を防ぐことができる回路基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するための発明に係る回路基板は、
内面が非導電性を有する溝が形成されている回路基材と、前記溝に導電性粒子を含む流動体を塗布することで形成される導体パターンと、を備え、前記溝の断面形状の少なくとも一部は弧形状を成し、前記導体パターンは該溝の該弧形状の部分にのみ形成されていることを特徴とする。
【0008】
ここで、前記溝の前記断面形状は、該溝の深さ方向に凸状の半円弧又は半楕円弧の形状を含んでもよい。この場合、前記溝の深さは、前記円弧の半径、又は前記楕円弧における深さ方向の半径以上であってもよい。
【0009】
また、前記溝の前記内面は、曲率連続性を有する面であることが好ましい。
【0010】
また、上記問題点を解決するための発明に係る回路基板の製造方法は、
回路基材上に、内面が非導電性であり、断面形状の少なくとも一部が弧形状を成す溝を形成する溝形成工程と、導電性粒子含む流動体を前記溝の前記円弧形状の部分にのみ塗布する塗布入工程と、前記溝内の前記流体体中の前記導電性粒子を該溝内に固定して、導体パターンの少なくとも一部を形成する固化工程と、を備えることを特徴とする。
回路基板の製造方法。
【0011】
また、上記問題点を解決するための発明に係る回路基材は、
導体パターンを形成するために、導電性粒子を含む流動体が塗布され、内面が非導電性を有する溝が形成されている回路基材において、前記溝の前記内面は、接線連続性を有する面であり、該溝の深さ方向における各位置での溝幅は、該溝の開口縁側の溝幅が溝底側の溝幅以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、溝に沿って形成された回路パターンの各箇所におけるひび割れの発生を抑えることができる。よって、本発明によれば、導体パターンの抵抗値の増大や導体パターンの断線を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る実施形態における回路基板の製造工程を示すフローチャートである。
【図2】図5中のY−Y線断面での製造過程の変化状態を示す説明図で、同図(a)は加工前の回路基材を示し、同図(b)は溝形成工程後の状態を示し、同図(c)は塗布工程中の形態を示し、同図(d)は塗布工程の終了直後の状態を示し、同図(e)は固化工程中の状態を示す。
【図3】本発明に係る実施形態における回路基材を示し、同図(a)は回路基材の平面図、同図(b)は同図(a)におけるX−X線断面である。
【図4】本発明に係る実施形態における溝の内面上の各位置での流動体の厚さを示すグラフである。
【図5】本発明に係る実施形態における回路基板を示し、同図(a)は回路基板の平面図、同図(b)は同図(a)におけるY−Y線断面である。
【図6】実施形態に対する第一変形例の回路基板における断面での製造過程の変化状態を示す説明図で、同図(a)は溝形成工程後の状態を示し、同図(b)は塗布工程の終了直後の状態を示し、同図(c)は固化工程後の状態を示す。
【図7】実施形態に対する第二変形例の回路基板における断面での製造過程の変化状態を示す説明図で、同図(a)は溝形成工程後の状態を示し、同図(b)は塗布工程の終了直後の状態を示し、同図(c)は固化工程後の状態を示す。
【図8】実施形態に対する第三変形例の回路基板における断面での製造過程の変化状態を示す説明図で、同図(a)は溝形成工程後の状態を示し、同図(b)は塗布工程の終了直後の状態を示し、同図(c)は固化工程後の状態を示す。
【図9】実施形態に対する第四変形例の回路基板における断面での製造過程の変化状態を示す説明図で、同図(a)は溝形成工程後の状態を示し、同図(b)は塗布工程の終了直後の状態を示し、同図(c)は固化工程後の状態を示す。
【図10】実施形態に対する第五変形例の回路基板の断面図である。
【図11】従来技術の回路基板における断面での製造過程の変化状態を示す説明図で、同図(a)は加工前の回路基材を示し、同図(b)は溝形成後の状態を示し、同図(c)は流動体注入終了直後の状態を示し、同図(d)は回路パターン形成後の状態を示す。
【図12】従来の回路基板における溝の内面上の各位置での流動体の厚さを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る回路基板及びその製造方法の実施形態、及び回路基板の各変形例について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
「実施形態」
まず、本発明に係る回路基板及びその製造方法の実施形態について、図1〜図5を参照して詳細に説明する。
【0016】
本実施形態で製造する回路基板10は、図5に示すように、板状の回路基材11と、この回路基材11の一方の面側に導電性材で形成されている回路パターン31とを有している。この回路パターン31は、ここでは平面視がコ字型を成している。回路パターン31は、例えば、回路基板10上に搭載されている図示されていない電子部品相互間を電気的に接続する。なお、図5(a)は回路基板10の平面図で、同図(b)は同図(a)中のY−Y線断面図である。
【0017】
次に、以上で説明した回路基板10の製造方法について、図1に示す製造工程のフローチャートに従って説明する。また、図2(a)〜同図(d)は、いずれも、図5(a)中のY−Y線断面における各工程での状態を示している。
【0018】
まず、図2(a)及び同図(b)に示すように、回路基材11上で回路パターン31を形成する位置に溝12を形成する(溝形成工程(S1))。回路基材11は、非導電性であって、後述の固化工程(S3)で回路基材11に加える熱負荷に耐える材料であれば如何なる材料で形成されてもよく、例えば、樹脂、セラミックス、さらにこれらの複合材料等で形成されてもよい。また、回路基材11は、導電性の基材に溝12を形成した後、この基材の外面、さらに溝12の内面13を非導電性の樹脂等でコーティングしたものであってもよい。
【0019】
溝12は、その断面形状の少なくとも一部が弧形状を成す。具体的に、本実施形態の溝12は、溝深さ方向に凸状の半円弧形状である。よって、この溝12の内面13は、接線連続性を有する面である。なお、面の接続連続性とは、面のいずれかの箇所で2つに切断しても、一方の面の切断箇所の位置と他方の面の切断箇所の位置とが同じであり、且つ、一方の面の切断箇所での接線と他方の面の切断箇所での接線とが同一になることを言う。この溝12は、各種方法で形成することが可能で、例えば、レーザ照射加工法、切削加工法、回路基材成形時に同時に形成する方法等がある。
【0020】
ここでは、回路基材11として、ポリカーボネート製の平板を用いる。また、ここでは、溝12の形状に対応した凸部が形成されている成形金型を用いて、図3(a)及び同図(b)に示すように、回路基材11の成形と同時に溝12を成形する。なお、断面が半円弧状の溝12の開口幅Wは、例えば、100μmで、溝12の深さD及び円弧の半径rは、50μmである。なお、図3(a)は回路基材11の平面図で、同図(b)は同図(a)中のX−X線断面図である。
【0021】
次に、図2(c)及び同図(d)に示すように、流動体塗布装置40を用いて、導電性粒子を含む流動体Pを回路基材11の溝12内に塗布する(塗布工程(S2))。
【0022】
流動体Pは、有機溶剤などの溶媒中に導電性粒子を分散させた導電性インクである。流動体Pに含まれる導電性粒子としては、例えば、銀、金、銅、ニッケル、アルミニウム、ハンダ等の合金の金属粉がある。ここでは、導電性粒子として、ナノサイズの銀粒子を用いる。流動体Pには、上記導電性粒子の他、導電性粒子を分散させるための溶媒となる有機溶剤、樹脂、界面活性剤や、硬化剤・分散剤のような添加剤を含んでいる。有機溶剤としては、例えば、各種アルコールや各種エーテルを用いる。なお、流動体Pには、樹脂が含まれていなくてもよい。
【0023】
流動体Pを回路基材11の溝12内に塗布する流動体塗布装置40としては、例えば、インクジェット装置、ディスペンサ等を用いるとよい。ここでは、溝12が形成された回路基材11を、平面内で移動可能な二方向アクチュエータを有するXYロボットの基材搭載ステージに置き、このXYロボットを駆動して、回路基材11の溝12の直上に流動体塗布装置40のノズル41が位置するように、移動させる。さらに、流動体Pが溝12内に吐出されるように回路基材11とノズル41との距離を制御する。そして、流動体塗布装置40のノズル41から流動体Pを吐出させると同時に、XYロボットを駆動させて、回路基材11を流動体塗布装置40に対して相対移動させ、流動体Pを溝12内に塗布する。
【0024】
溝12内に塗布された流動体Pは、導内面13に濡れ広がる。なお、流動体Pは、溝12の円弧形状の部分にのみ接触するように、XYロボットにより濡れ広がりを考慮した量に制御されて塗布される。ところで、溝12は、前述したように、その断面形状が溝深さ方向に凸状の半円弧形状である。従って、流動体Pは、図2(d)及び図4に示すように、流動体Pの露出面(回路基材11に触れていない面)Sと溝12との境界B、つまり、溝12内の流動体Pで溝12の開口縁Eに最も近い箇所から、その厚さが次第に厚くなり、溝12の最深部で最も厚くなる。すなわち、流動体Pの厚さは、溝12の内面13に沿った方向での位置変化に対して極めて滑らかに変化し、流動体Pの厚さが局所的に厚い部分はない。
【0025】
塗布工程(S2)が終了すると、図2(d)に示すように、加熱装置50を用いて、溝12内の流動体Pを加熱し、流動体Pの導電性粒子を溝12に固定し、回路パターン31を形成する(固化工程(S3))。
【0026】
固化工程(S3)では、溝12内の流動体Pが加熱され、流動体P中の液体成分が蒸発し、流動体P中の固体成分である多数の導電性粒子同士が接触又は結合して、固化すると共に溝12の内面13に固定される。
【0027】
加熱装置50としては、例えば、流動体Pと共に回路基材11全体を加熱する装置、溝12内の流動体Pのみに光照射又は電圧印加する装置等がある。ここでは、流動体Pと共に回路基材11全体を加熱する装置としてオーブンを用いる。このオーブンを用いて、流動体Pと共に回路基材11を140℃で30分間加熱する。この加熱により、流動体P中の溶媒は蒸発し、銀粒子を被覆する有機膜等の分散剤は分解する。この結果、流動体P中の多数の銀粒子同士は凝集し、金属結合して固化すると共に、溝12の内面13に固定され、導電性材料としての銀による回路パターン31が形成される。この回路パターン11は、流動体Pが溝16内で断面形状が円弧形状の部分のみに塗布されている関係上、溝12の円弧形状の部分にのみ形成される。
【0028】
溝12内の流動体Pの厚さは、前述したように、溝12の内面13に沿った方向での位置変化に対して極めて滑らかに変化し、流動体Pの厚さが局所的に厚い部分はない。このため、流動体P中の液体成分が蒸発する過程で、この蒸発による液体成分の除去量は、溝12の内面13に沿った方向での位置変化に対して極めて滑らかに変化する。よって、本実施形態では、図5(b)に示すように、溝12に沿って形成された回路パターン31の各箇所におけるひび割れの発生を抑えることができる。
【0029】
この固化工程(S3)が終了すると、必要に応じて、回路パターン31に対して電子部品の接続等を行うことで、回路基板10が完成する。
【0030】
以上、本実施形態では、溝12の断面形状が半円弧形状で、この溝12内に塗布された流動体Pの厚さは、溝12の内面13に沿った方向での位置変化に対して極めて滑らかに変化するため、溝12に沿って形成された回路パターン31の各箇所におけるひび割れの発生を抑えることができ、回路パターン31の抵抗値を目的の範囲内に収めることができる。
【0031】
「第一変形例」
次に、回路基板の第一変形例について、図6を参照して説明する。
【0032】
本変形例の回路基板は、上記実施形態に対して、回路基材11の溝14の断面形状を変えたものである。なお、以下で説明する第二〜第四変形例の回路基板も、回路基材の溝14の断面形状を変えたものである。
【0033】
本変形例の溝14の断面形状は、図6(a)に示すように、上記実施形態と同様、溝深さ方向に凸状の円弧形状である。但し、本変形例では、円弧の長さが、この円弧と同じ半径の円の周長の半分より短い。よって、この溝14の内面15も、上記実施形態と同様、接線連続性を有する面である。なお、断面が円弧状の溝14の開口幅Wは、例えば、100μmで、溝14の深さDは30μmで、円弧の半径rは54μmである。
【0034】
本変形例でも、上記実施形態と同様、溝14の断面形状が円弧形状であるため、この溝14内に塗布された流動体Pの厚さは、図6(b)に示すように、溝14の内面15に沿った方向での位置変化に対して極めて滑らかに変化し、流動体Pの厚さが局所的に極端に厚い部分はない。なお、本変形例においても、流動体Pは、溝14内で断面形状が円弧形状の部分のみに塗布されている。このため、固化工程で流動体Pを加熱する際、溶媒蒸発による液体成分の除去量も、溝14の内面15に沿った方向での位置変化に対して極めて滑らかに変化する。よって、本変形例でも、図6(c)に示すように、溝14内に形成された回路パターン31の各箇所におけるひび割れの発生を抑えることができる。
【0035】
「第二変形例」
次に、回路基板の第二変形例について、図7を参照して説明する。
【0036】
本変形例の溝16の断面形状は、図7(a)に示すように、溝深さ方向に凸状の半円弧形状部16aと、この半円弧形状部16aの半円弧の両端から溝深さ方向と反対方向に延びる直線形状部16bとを組み合わせた形状である。直線形状部16bの該反対方向の端は、溝16の開口縁Eを形成している。また、半円弧形状部16aの端の接線と、直線形状部16bの端の接線とは同じである。よって、この溝16の内面17も、上記実施形態及び第一変形例と同様、接線連続性を有する面である。なお、この溝16の開口幅Wは、例えば、100μmで、溝16の深さDは80μm、円弧の半径rは50μmである。
【0037】
本変形例でも、上記実施形態及び第一変形例と同様、溝16の内面17が接線連続性を有する面であるため、この溝16内に塗布された流動体Pの厚さは、図7(b)に示すように、溝16の内面17に沿った方向での位置変化に対して極めて滑らかに変化し、流動体Pの厚さが局所的に厚い部分はない。なお、本変形例においても、流動体Pは、溝16内で断面形状が円弧形状の部分のみに塗布されている。このため、固化工程で流動体Pを加熱する際、溶媒蒸発による液体成分の除去量も、溝16の内面17に沿った方向での位置変化に対して極めて滑らかに変化する。よって、本変形例でも、図7(c)に示すように、溝16内に形成された回路パターン31の各箇所におけるひび割れの発生を抑えることができる。なお、この回路パターン11は、流動体Pが溝16内で断面形状が円弧形状の部分のみに塗布されている関係上、溝12の円弧形状の部分にのみ形成される。
【0038】
「第三変形例」
次に、回路基板の第三変形例について、図8を参照して説明する。
【0039】
本変形例の溝18の断面形状は、図8(a)に示すように、溝18の両側を形成する2つの1/4円弧形状部18aと、2つの1/4円弧形状部18aの端部相互を接続する直線形状部18bとを組み合わせた形状である。1/4円弧形状部18aは、1/4円弧の形状で、溝深さ方向に向うに連れて他方の1/4円弧形状部18aから遠ざかる方向に凸状を成している。各1/4円弧形状部18aの端で、他方の1/4円弧形状部18aに対して遠い側の端は、溝18の開口縁Eを形成している。また、1/4円弧形状部18aの端で、他方の1/4円弧形状部18aに近い側の端の接線と、直線形状部18bの端の接線とは同じである。よって、この溝18の内面19も、上記実施形態等と同様、接線連続性を有する面である。なお、この溝18の開口幅Wは、例えば、130μmで、溝18の深さD及び円弧の半径rは50μmである。
【0040】
本変形例でも、上記実施形態等と同様、溝18の内面19が接線連続性を有する面であるため、この溝18内に塗布された流動体Pの厚さは、図8(b)に示すように、溝18の内面19に沿った方向での位置変化に対して極めて滑らかに変化し、流動体Pの厚さが局所的に厚い部分はない。このため、固化工程で流動体Pを加熱する際、溶媒蒸発による液体成分の除去量も、溝18の内面19に沿った方向での位置変化に対して極めて滑らかに変化する。よって、本変形例でも、図8(c)に示すように、溝18内に形成された回路パターン31の各箇所におけるひび割れの発生を抑えることができる。
【0041】
「第四変形例」
次に、回路基板の第四変形例について、図9を参照して説明する。
【0042】
本変形例の溝22の断面形状は、図9(a)に示すように、溝深さ方向に凸状の半楕円形状である。半楕円の短軸は溝深さ方向を向き、長軸は溝幅方向を向いている。よって、この溝22の内面23も、接線連続性を有する面である。また、溝深さ方向における各位置での溝幅は、溝22の開口縁E側の溝幅が溝底側の溝幅より大きい。なお、この溝22の開口幅Wは、例えば、130μmで、溝22の深さDは50μmである。言い換えると、半楕円の長軸の長さ130μmで、短軸の長さが50μmである。
【0043】
本変形例でも、上記実施形態等と同様、溝22の内面23が接線連続性を有する面であるため、この溝22内に塗布された流動体Pの厚さは、図9(b)に示すように、溝22の内面23に沿った方向での位置変化に対して極めて滑らかに変化し、流動体Pの厚さが局所的に厚い部分はない。なお、本変形例においても、流動体Pは、溝22内で断面形状が楕円弧形状の部分のみに塗布されている。このため、固化工程で流動体Pを加熱する際、溶媒蒸発による液体成分の除去量も、溝22の内面23に沿った方向での位置変化に対して極めて滑らかに変化する。よって、本変形例でも、図9(c)に示すように、溝22内に形成された回路パターン31の各箇所におけるひび割れの発生を抑えることができる。
【0044】
以上のように、溝の内面の少なくとも一部を形成する曲面は、断面が円弧であっても楕円弧であってもよく、曲率連続性を有する面であればよい。
【0045】
また、本変形例では、溝22の内面23の断面が全て楕円弧で形成しているが、上記実施形態に対する第二変形例や第三変形例のように、溝22の断面形状は楕円円弧形状部と直線形状部とを組み合わせた形状であってもよい。但し、溝の内面に沿った方向での位置変化に対して、溝内に塗布された流動体Pの厚さを極めて滑らかに変化させるという観点からは、上記実施形態、第一変形例及び本変形例のように、溝の内面全体が曲率連続性を有していることが好ましい。
【0046】
「第五変形例」
次に、回路基板の第五変形例について、図10を参照して説明する。
【0047】
本変形例の回路基板は、上記実施形態の固化工程後に、メッキ工程を実施して、流動体P中の導電性粒子で形成された導体パターン(導電層)31上に、メッキ層32を形成したものである。
【0048】
メッキ工程では、まず、固化工程後の回路基板に対してメッキ前処理を施す。このメッキ前処理では、必要に応じて、固化工程後の回路基板の表面全体(導電性粒子で形成された導電層31の表面を含む)を脱脂する脱脂処理等を行う。
【0049】
そして、以上のメッキ前処理が施された回路基板に対してメッキ処理を施して、この回路基板の導電層31の表面にメッキ層32を形成する。ここでは、メッキ前処理が施された回路基板を無電解メッキ液に浸漬して、銅メッキ層32を形成する。この際、銀粒子で形成されている導電層31は、銅メッキ層32のメッキ触媒層としての役割を果たす。
【0050】
本変形例の回路基板10aでは、導電性粒子で形成された導電層31とメッキ層32とを併せて、導体パターン33を成す。メッキ層32の厚さは、無電解メッキ液への浸漬時間を調整することで、容易に変えることができる。このため、導体パターン33の厚さを厚くしたい場合には、無電解メッキ液への浸漬時間を長くすればよい。
【0051】
以上のように、本変形例では、上記実施形態の回路基板の導電層31上に、メッキ層32を形成したものであるため、上記実施形態同様、回路パターン33のいずれの箇所にもひび割れが生じることがない。さらに、本変形例では、メッキ層32の厚さを調整することで、回路パターン33の厚さを自在に変えることができるため、回路パターン33の抵抗値を調整することができる。
【0052】
なお、本変形例は、第一実施形態の回路基板の導体層31上にメッキ層32を形成したものであるが、第一から第四変形例の各回路基板の導体層31上にメッキ層32を形成してもよい。
【0053】
また、上記実施形態及び以上の各変形例は、いずれも、導体パターンが回路パターンの例であるが、導体パターンは、導電性材料で形成されたパターンであれば如何なるパターンでもよく、例えば、磁気シールドするための磁気シールドパターンであってもよい。
【0054】
また、上記実施形態及び以上の各変形例では、平板状の回路基材11に対して回路パターンを形成したが、立体的な回路基材に対して回路パターン等を形成する場合にも、本発明を適用してもよい。この場合、立体的な回路基材や、この回路基材に形成した立体的な溝の形状に追従可能なステージを用いればよい。
【符号の説明】
【0055】
10,10a…回路基板、11…回路基材、12,14,16,18,22…溝、13,15,17,19,22…内面、31,33…回路パターン、32…メッキ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面が非導電性を有する溝が形成されている回路基材と、
前記溝に導電性粒子を含む流動体を塗布することで形成される導体パターンと、を備え、
前記溝の断面形状の少なくとも一部は弧形状を成し、前記導体パターンは該溝の該弧形状の部分にのみ形成されている、
ことを特徴とする回路基板。
【請求項2】
前記溝の前記断面形状は、該溝の深さ方向に凸状の半円弧又は半楕円弧の形状を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
前記溝の深さは、前記円弧の半径、又は前記楕円弧における深さ方向の半径以上である、
ことを特徴とする請求項2に記載の回路基板。
【請求項4】
前記溝の前記内面は、曲率連続性を有する面である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の回路基板。
【請求項5】
回路基材上に、内面が非導電性であり、断面形状の少なくとも一部が弧形状を成す溝を形成する溝形成工程と、
導電性粒子含む流動体を前記溝の前記円弧形状の部分にのみ塗布する塗布入工程と、
前記溝内の前記流体体中の前記導電性粒子を該溝内に固定して、導体パターンの少なくとも一部を形成する固化工程と、
を備えることを特徴とする回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−227467(P2012−227467A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95988(P2011−95988)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】