説明

回転コネクタ装置

【課題】回転ローラに生じた突起等によるフラットケーブルの導体部の損傷を防止できる回転コネクタ装置を提供する。
【解決手段】回転コネクタ装置は、ステータと、ステータに対し相対回転可能なロテータと、ステータとロテータの間に配置されるベースリングと、フレキシブルフラットケーブル14と、回転ローラと、を備える。フレキシブルフラットケーブル14は、導体部14aを有しており、ステータ側とロテータ側とを電気的に接続可能である。回転ローラは、ベースリングに回転可能に支持され、外周面をフレキシブルフラットケーブル14に接触させて案内を行う。回転ローラは型を用いて成形される。そして、成形時に回転ローラの外周面に形成されるパーティングラインを含む平面を仮想面90としたときに、当該仮想面90は回転ローラの軸に垂直であり、かつフレキシブルフラットケーブル14の導体部14aと重ならない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転コネクタ装置に関する。詳細には、回転コネクタ装置が備えるケーブルの導体部の損傷を防止する構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば自動車のステアリング側と車体側のように、回転側と固定側を電気的に接続するための回転コネクタ装置が知られている。一般的に、自動車のステアリング手段は、緊急時に確実な動作を要求されるエアバッグ等の構成を備えている。このため、動作の信頼性、コンパクト化等の観点から、フレキシブルフラットケーブル等によってステアリング側と車体側とを接続する構成の回転コネクタ装置が採用されている。
【0003】
特許文献1はこの種の回転コネクタを開示する。特許文献1の回転コネクタは、ステータが有する筒状の外側筒部(外筒)と、ロテータが有する筒状の内側筒部(内筒軸部)と、の間に形成された環状の空間に、ある程度の長さを有するフラットケーブルを巻いた状態で収納した構成である。このフラットケーブルは内部に導体部を有しており、この導体部によって、ステータが備えるコネクタと、ロテータが備えるコネクタと、を電気的に接続している。そして、このフラットケーブルは前記環状の空間内で一方向に巻かれた後、巻かれる方向をU字状に反転されて逆方向に巻かれている。この構成で、当該フラットケーブルの長さに対応する回数だけ、ロテータを時計回り又は反時計回りに回転させることが可能となっている。
【0004】
また、特許文献1が開示する回転コネクタは、リング部材(支持部材)と、回転ローラと、を備えている。リング部材は円板状に構成されており、周方向に等間隔で並べて配置された回転ローラを回転可能に支持している。回転ローラは、外周面でフラットケーブルと接触することにより、前記環状の空間内で巻かれたフラットケーブルをスムーズに案内することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−126836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、回転ローラは一般的に合成樹脂製であり、射出成形によって製造される。そのため、射出成形に用いる金型の分割面の影響によって、回転ローラの外周面等には、突起や段差が形成される。そのため、フラットケーブルの案内時には、この突起等によってフラットケーブルの導体部が損傷することがある。導体部が損傷すると、自動車のステアリング側と車体側との電気的接続が失われるおそれがあるため、回転コネクタ装置の修理又は交換が必要となる。
【0007】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、回転ローラに生じた突起等によるフラットケーブルの導体部の損傷を防止できる回転コネクタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本発明の観点によれば、以下の構成の回転コネクタ装置が提供される。即ち、この回転コネクタ装置は、第1ケースと、第2ケースと、支持部材と、ケーブルと、ローラと、を備える。前記第2ケースは、前記第1ケースに対し相対回転可能に取り付けられる。前記支持部材は、前記第1ケースと前記第2ケースの間に形成される収容空間内に配置される。前記ケーブルは、導体部及び当該導体部を覆う被覆部で構成されており、前記第1ケースに配置される第1コネクタと前記第2ケースに配置される第2コネクタとを前記導体部によって電気的に接続する。前記ローラは、前記支持部材に回転可能に支持され、前記第2ケースが前記第1ケースに対して相対回転するときに、外周面を前記ケーブルに接触させて当該ケーブルの案内を行う。前記ローラは型を用いて成形される。そして、前記成形時に前記ローラの外周面に形成されるパーティングラインを含む平面を仮想面としたときに、当該仮想面は前記ローラの軸に垂直であり、かつ前記ケーブルの前記導体部と重ならないように配置される。
【0010】
これにより、ローラの外周面に形成されたパーティングラインに突起や段差が生じている場合でも、ケーブルの案内時にその突起等が導体部を損傷させることがない。従って、耐久性の高い回転コネクタ装置が実現できる。
【0011】
前記の回転コネクタ装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ケーブルは、前記ローラの軸方向に並べて配置された複数の前記導体部を有している。前記仮想面は、前記導体部同士の間を通過する。
【0012】
これにより、仮想面がケーブル(詳細には被覆部のみ)を通過するレイアウトを採用しつつ導体部の損傷を防止できるため、ローラのパーティングラインの位置、ローラ及びケーブルの配置等に関して、自由度を向上させることができる。
【0013】
前記の回転コネクタ装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ケーブルは、自動車のステアリング側と車体側とを電気的に接続する。複数の前記導体部には、エアバッグの動作に関する信号を伝達するエアバッグ用導体部が含まれている。前記仮想面は、前記エアバッグ用導体部以外の前記導体部同士の間を通過する。
【0014】
即ち、エアバッグは確実に動作することが要求されるため、エアバッグ用導体部の電気接続の信頼性は、他の構成(例えばホーン)よりも高い方が望ましい。この点、上記の構成においては、突起等によるエアバッグ用導体部の損傷を確実に防止できるレイアウトを実現できる。
【0015】
前記の回転コネクタ装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記支持部材には、第1規制部と第2規制部とが形成されている。前記第1規制部は、前記ローラの軸方向の少なくとも一側に前記ケーブルが移動しないように規制する。前記第2規制部は、前記ローラの軸方向の少なくとも一側に当該ローラが移動しないように規制する。
【0016】
これにより、1つの部材(支持部材)でローラとケーブルの位置を規制できるため、寸法誤差の累積を防止しながらローラ及びケーブルを正確に配置することができる。従って、仮想面が導体部と重ならないレイアウトをより確実に実現できるので、導体部が損傷する確率を一層低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るステアリングロールコネクタの全体的な構成を示す外観斜視図。
【図2】ステアリングロールコネクタの分解斜視図。
【図3】ステアリングロールコネクタの縦断面図。
【図4】回転ローラ近傍の構成を示す拡大縦断面図。
【図5】ステアリングロールコネクタの平面断面図。
【図6】回転ローラに生じた突起とフレキシブルフラットケーブルの導体部との位置関係を示す拡大縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係るステアリングロールコネクタ1の全体的な構成を示す斜視図である。図2はステアリングロールコネクタ1の分解斜視図である。図3は、ステアリングロールコネクタ1の縦断面図である。
【0019】
図1及び図2に示す回転コネクタ装置としてのステアリングロールコネクタ1は、互いに相対回転可能なステータ(第1ケース)11とロテータ(第2ケース)12とから構成されるケーブルハウジング13を備えている。
【0020】
ステータ11は、車体側の適宜の部材、例えばステアリングコラムのコンビネーションブラケットスイッチ(図略)に固定されている。前記ケーブルハウジング13の中心には、図1に示すように貫通状の差込孔19が形成されている。また、この差込孔19には、前記ステアリングコラムに支持されたステアリングシャフトが挿入されている。前記ステータ11はステアリングシャフトに対して相対回転可能に取り付けられる一方、ロテータ12はステアリングシャフトとともに一体的に回転するように構成されている。また、ステアリングホイール(回転操作具)は、前記ステアリングシャフトに固定されている。
【0021】
図2等に示すように、前記ステータ11は、固定側リング板21と、この固定側リング板21の外縁の部分に固定された円筒状の外側筒部31と、を備えている。また、前記ロテータ12は、リング状に形成された回転側リング板22と、この回転側リング板22の内縁から垂直に延びる円筒状の内側筒部32と、を備えている。ロテータ12はステータ11に対し、前記ステアリングシャフトの回転軸と同一の軸線を中心にして回転することができる。
【0022】
図2に示すように、ステータ11には挿通孔11aが、ロテータ12には係止凹部12aがそれぞれ形成されている。前記挿通孔11aには、回転止めのための固定ピン17を差し込むことができる。この固定ピン17には係止突起17aが形成されており、当該固定ピン17を前記挿通孔11aに挿通させるとともに係止突起17aを係止凹部12aに係合させることにより、ステータ11に対してロテータ12が回転しないようにロックすることができる。
【0023】
この固定ピン17は、ステアリングロールコネクタ1を車体に取り付ける際に、ロテータ12の位置が中間位置(ロテータ12を時計方向に最大に回した位置と、反時計方向に最大に回した位置と、の中間の位置)からズレないように、当該ステアリングロールコネクタ1の製造時に一時的に取り付けられるものである。これにより、ステアリングロールコネクタ1の車体への組付作業の効率を向上させるとともに、組付ミスを防止することができる。なお、ステアリングロールコネクタ1を適切に車体に取り付けた後は、当該固定ピン17を挿通孔11aへの差込み部分の根元で折り取ることにより、ステータ11に対してロテータ12を回転させることが可能となる。
【0024】
ステータ11には第1コネクタ41が取り付けられ、ロテータ12には第2コネクタ42が取り付けられる。第2コネクタ42は、ロテータ12の回転に伴って一体的に回転する。第1コネクタ41及び第2コネクタ42には、外部の電気回路(例えば、ホーンスイッチ、エアバッグモジュール、電源等)から引き出された図略のケーブルをそれぞれ接続可能に構成されている。
【0025】
第1コネクタ41は固定側リング板21に配置され、第2コネクタ42は回転側リング板22に配置されている。そして、第1コネクタ41と第2コネクタ42とは、ケーブルハウジング13の内部(後述する収容空間15の内部)に配置されたフレキシブルフラットケーブル(ケーブル)14によって相互に電気的に接続されている。
【0026】
前記固定側リング板21と回転側リング板22は、ロテータ12の回転軸の方向で互いに対面するとともに、それぞれが外側筒部31と内側筒部32とを接続するように配置されている。また、前記内側筒部32は外側筒部31より内側に配置され、前記外側筒部31と内側筒部32は、径方向で互いに対面するように配置されている。以上の構成で、固定側リング板21、回転側リング板22、外側筒部31、及び内側筒部32によって囲まれた環状の空間である収容空間15が形成されている。
【0027】
また、ロテータ12にはスリーブ16が固定されている。このスリーブ16には突起58が形成されており、ロテータ12の前記突起58に対応する位置には爪59が形成されている。そして、前記爪59に前記突起58を引っ掛けることにより、スリーブ16がロテータ12に相対回転不能に取り付けられている。
【0028】
前記収容空間15の内部には、図2及び図3に示すように、リテーナ25と、フレキシブルフラットケーブル14と、が収容されている。リテーナ25は、ベースリング(支持部材)26と、複数の回転ローラ(ローラ)27とを備えている。
【0029】
フレキシブルフラットケーブル14は、後述の図6に示すように、並べて配置された複数の導体部14aと、これらの導体部14aを覆うように配置された被覆部14bと、で構成されている。このフレキシブルフラットケーブル14は、収容空間15内に適宜巻かれた状態で収容されている。
【0030】
ベースリング26は、図2に示すように、環状に形成された板状の部材として構成されており、前記固定側リング板21に近接して配置されている。このベースリング26は、ロテータ12の回転軸を中心にして回転可能に構成されている。回転ローラ27は、図2に示すように、ベースリング26の一面側に周方向に等間隔で並べて配置され、それぞれが、前記ロテータ12の回転軸と平行な軸を中心として回転可能に設けられている。
【0031】
以下、このベースリング26及び回転ローラ27の詳細な構成について、図4を参照して説明する。図4は、回転ローラ27近傍の構成を示す拡大縦断面図である。
【0032】
図4等に示すように、回転ローラ27は、外筒部27aと、2つの弾性係止片27b,27bと、当接軸27cと、を有する。外筒部27aは、当該回転ローラ27の外周面を構成する円筒部材であり、中空状に形成され、その一端側(図4では上端側)を塞ぐ蓋部27dを有する。弾性係止片27b,27bは、回転側リング板22から離れる方向(図4では下方向)に突出するように形成されている。また、2つの弾性係止片27b,27bの表面はテーパ面の一部を構成するように形成されている。なお、このテーパ面は回転側リング板22から離れるにつれて徐々に拡がるように構成されている。当接軸27cは、回転ローラ27の回転軸線と一致するように形成された棒状部材であり、回転側リング板22から離れる方向に向かって延び、その下端が当該外筒部27aから突出するようになっている。
【0033】
また、図4等に示すように、ベースリング26には、回転ローラ27の取付け位置と対応する位置に、円筒状の取付円筒26aが形成されている。この取付円筒26aは中空状に形成されており、ベースリング26の一面側から他面側に貫通する貫通孔を形成している。また、取付円筒26aの内周側には、当該取付円筒26aの内側に突出する突出部(第2規制部)26bが形成されている。更に、ベースリング26には、取付円筒26aの固定側リング板21側(図4の下側)の端部から当該ベースリング26の内側に向かう平面である当て面(第1規制部)26cが形成されている。
【0034】
この構成で、ベースリング26に回転ローラ27を配置する際には、取付円筒26aに外筒部27aを被せるようにして回転ローラ27を取り付ける。このとき、図4等に示すように、当接軸27c及び弾性係止片27bは、当該取付円筒26aの内部に挿入される。
【0035】
ここで、回転ローラ27をベースリング26に取り付けた状態では、弾性係止片27bは、突出部26bによって当該回転ローラ27の側へ若干弾性変形し、その復元力によって、弾性係止片27bの前記テーパ面が突出部26bに接触するように構成されている。この復元力の作用により、回転ローラ27には、回転側リング板22から離れる方向の力が働く。ただし、当接軸27cの端部が固定側リング板21に接触することで、回転側リング板22から離れる方向の回転ローラ27の移動は規制される。この結果、回転ローラ27が固定側リング板21に対して位置決めされる。
【0036】
一方、上記のように回転ローラ27に作用する力の反作用として、ベースリング26は回転側リング板22に近づく向きに付勢される。ただし、ベースリング26の前記当て面26cには内側筒部32の下端部が接触しているため、上向きの付勢力が作用するベースリング26を内側筒部32で受け止めることができる。この結果、ベースリング26が内側筒部32に対して位置決めされる。
【0037】
ベースリング26に回転ローラ27が取り付けられた後、当該ベースリング26の当て面26cにはフレキシブルフラットケーブル14が載せられる。従って、ベースリング26は、フレキシブルフラットケーブル14が回転側リング板22から離れる方向に移動することを規制している。また、回転ローラ27が回転側リング板22へ近づく向きの移動は、当該回転ローラ27の弾性係止片27bの先端に形成された鉤状部分が、ベースリング26の突出部26bに接触することで規制される。つまり、ベースリング26は、回転ローラ27の軸方向における、回転ローラ27及びフレキシブルフラットケーブル14の双方の移動を規制している。
【0038】
この構成により、回転ローラ27とフレキシブルフラットケーブル14の位置関係が、回転ローラ27の軸方向においてズレにくくすることができる。特に、本実施形態では、単一の部材(ベースリング26)によって、このズレを防止しているため、誤差の累積を防止して、位置ズレを一層小さくすることができる。
【0039】
次に、収容空間15内においてフレキシブルフラットケーブル14が収容される構成について図5を参照して説明する。図5は、ステアリングロールコネクタ1の平面断面図である。
【0040】
2本のフレキシブルフラットケーブル14は、図5に示すように、それぞれ第1コネクタ41から収容空間15へ引き出され、2本が重なるようにして外側筒部31の内周面に沿って時計回りに巻かれる。
【0041】
続いて、2本のフレキシブルフラットケーブル14のうちの片方は、第1反転部61においてU字状に折り返されて向きを反転する。この第1反転部61は、1つの回転ローラ27と、ガイド壁63と、を備える。第1反転部61の回転ローラ27は、フレキシブルフラットケーブル14の前記U字の湾曲部に内側から当接して、当該フレキシブルフラットケーブル14を案内する。また、前記ガイド壁63は、フレキシブルフラットケーブル14の前記U字の湾曲部に外側から当接して、当該フレキシブルフラットケーブル14を案内する。以上の構成で、フレキシブルフラットケーブル14は、前記回転ローラ27とガイド壁63との間を通り、当該回転ローラ27に巻き掛かるようにして向きを反転する。
【0042】
また、もう一方のフレキシブルフラットケーブル14は、第2反転部62においてU字状に折り返されて向きを反転する。この第2反転部62には、第1反転部61のような回転ローラ27やガイド壁63は配置されていないが、フレキシブルフラットケーブル14がU字状に向きを反転するために十分なスペースが確保されている。
【0043】
フレキシブルフラットケーブル14が反転部61,62において向きを反転した後は、内側筒部32の外周面に沿うように反時計回りに巻かれる。また、フレキシブルフラットケーブル14は、最終的には収容空間15から引き出されて第2コネクタ42側に接続される。
【0044】
このように、前記収容空間15の内部においてフレキシブルフラットケーブル14は適宜の長さの弛みを有するように巻かれており、この弛みの長さは、ロテータ12がステータ11に対して回転することにより変化する。本実施形態のステアリングロールコネクタ1では、この弛み長さの変化に追従するようにリテーナ25が適宜回転することにより、フレキシブルフラットケーブル14を収容空間15内で常に整列させた状態で保持することができる。
【0045】
具体的には以下のとおりである。例えばロテータ12が図5で見て時計回りに回転すると、フレキシブルフラットケーブル14の内側筒部32に巻かれている部分も一緒に時計回りに回転する。すると、内側筒部32の外周面からフレキシブルフラットケーブル14が巻き戻される。そして、反転部61,62で巻き方向を反転されたフレキシブルフラットケーブル14は、外側筒部31の内周面に巻きとられていく。このとき、第1反転部61において、フレキシブルフラットケーブル14のU字状に反転している部分がガイド壁63に力を加え、リテーナ25全体を時計回りに回転させる。このとき、リテーナ25が備える複数の回転ローラ27は、フレキシブルフラットケーブル14が外側筒部31の内周面に沿って適切に回転できるように、当該フレキシブルフラットケーブル14をガイドする。以上のようにして、内側筒部32の外周面からフレキシブルフラットケーブル14が全て巻き戻されるまでは、ロテータ12を時計回りに回転させることができる。
【0046】
逆に、ロテータ12が図5で見て反時計回りに回転すると、フレキシブルフラットケーブル14の内側筒部32に巻かれている部分も一緒に反時計回りに回転する。すると、外側筒部31の内周面からフレキシブルフラットケーブル14が巻き戻され、反転部61,62で巻き方向を反転されて、内側筒部32の外周面に巻かれていく。このとき、第1反転部61において、フレキシブルフラットケーブル14がU字状に反転している部分が回転ローラ27に力を加え、リテーナ25全体を反時計回りに回転させる。このときにおいても、リテーナ25が備える回転ローラ27は、フレキシブルフラットケーブル14が外側筒部31の内周面に沿って適切に回転できるように、当該フレキシブルフラットケーブル14を適切にガイドする。以上のようにして、外側筒部31の内周面からフレキシブルフラットケーブル14が全て巻き戻されるまでは、ロテータ12を反時計回りに回転させることができる。
【0047】
以上のように、ロテータ12がステータ11に対して相対回転するときにおいては、フレキシブルフラットケーブル14が回転ローラ27の外周面と接触することになる。一方で、一般的に回転ローラは合成樹脂製であり、射出成形することによって製造される。そのため、回転ローラには、パーティングラインに突起や段差が形成されることが多く、この突起等によってフレキシブルフラットケーブルの導体部が損傷してしまうことがある。従来の構成では、この導体部の損傷の防止が課題となっていた。特に、この導体部の損傷によってエアバッグが正確に動作しなくなることもあり、早急な解決が望まれていた。
【0048】
以下、この課題を解決するための構成について図4及び図6を参照して説明する。図6は、図4の領域Aを拡大した図であり、回転ローラ27に生じた突起271,272とフレキシブルフラットケーブル14の導体部14aとの位置関係を示している。
【0049】
本実施形態の回転ローラ27においては、外筒部27aの回転側リング板22側(図4における上側)の端面の部分に、射出成形装置の金型の分割面が設定されている。従って、回転ローラ27には、外筒部27aの端面の内周端及び外周端に、円状のパーティングラインがそれぞれ形成される。このパーティングラインに相当する位置には、図6に示すように、それぞれ突起271及び突起272が形成される。
【0050】
一方、フレキシブルフラットケーブル14は、上述のようにベースリング26の当て面26c上に配置されている。また、本実施形態では、2本のフレキシブルフラットケーブル14を用いているが、この2本のフレキシブルフラットケーブル14は、内部の導体部14aの形状及び間隔が同一のものが用いられている。そのため、図6に示すように、2本のフレキシブルフラットケーブル14内の導体部14aは、回転ローラ27の軸方向における高さが同一となっている。なお、図6には、4本のフレキシブルフラットケーブル14が表示されているが、これは、2本のフレキシブルフラットケーブル14がそれぞれ2周巻き付けられているためである。
【0051】
そして、本実施形態の回転ローラ27は、外周に形成される円状のパーティングラインを含む平面を仮想面90(図4及び図6)としたときに、当該仮想面90が導体部14aを通過しないレイアウトとなっている(図6)。この構成により、フレキシブルフラットケーブル14が回転ローラ27の外周面と接触したときに、突起272は導体部14aを避けた位置に当たるので、当該導体部14aを損傷させることを防止できる。なお、本実施形態では回転ローラ27の外周面側のパーティングラインは円状に形成されるため、当該パーティングラインを含む仮想面90は、回転ローラ27の回転軸に垂直な平面となっている。
【0052】
なお、仮想面90が導体部14aを通過しないようなレイアウトとするために考慮する事項として、例えば、回転ローラ27、ベースリング26、及びこれらに組み付けられる部材の寸法や、回転ローラ27のパーティングラインの位置や、採用するフレキシブルフラットケーブル14の導体部14aの配置等を挙げることができる。
【0053】
また、フレキシブルフラットケーブル14は、ホーンを動作させる信号及びエアバッグを動作させる信号等の様々な信号を伝達している。そして、本実施形態のフレキシブルフラットケーブル14は、図4に示すように、エアバッグを動作させる信号を伝達する導体部14a(エアバッグ用導体部)を、固定側リング板21側の端部近傍に収容する構成となっている。そのため、突起272とエアバッグ用導体部との距離を大きく離すことができるので、エアバッグ用導体部の損傷を確実に防止できる。
【0054】
なお、本実施形態では、フレキシブルフラットケーブル14の回転側リング板22側の端部近傍には、ホーンを動作させる信号を伝達する導体部14a(ホーン用導体部)を収容する構成となっている。従って、上記の構成は、「仮想面90がエアバッグ用導体部以外の導体部14a同士の間を通過する」と表現することもできる。
【0055】
なお、突起272によるエアバッグ用導体部の損傷を効果的に防ぐためには、エアバッグ用導体部を仮想面90からある程度遠ざければ良く、例えばフレキシブルフラットケーブル14の幅方向中央近傍に収容してもエアバッグ用導体部の損傷を十分に防止できる。
【0056】
また、フレキシブルフラットケーブル14の回転側リング板22側(仮想面90に近い側)に収容する導体部14aは、ホーン用導体部以外の導体部としても良い。ただし、この位置に収容される導体部14aは突起272によって損傷する可能性が相対的に大きいため、損傷による悪影響が小さい導体部14aを配置することが望ましい。
【0057】
以上のようにして、フレキシブルフラットケーブル14の導体部14a(特にエアバッグ用導体部)の損傷を効果的に防止した構成のステアリングロールコネクタ1が実現される。
【0058】
以上に示したように、本実施形態のステアリングロールコネクタ1は、ステータ11と、ロテータ12と、ベースリング26と、フレキシブルフラットケーブル14と、回転ローラ27と、を備える。ロテータ12は、ステータ11に対し相対回転可能に取り付けられる。ベースリング26は、ステータ11とロテータ12の間に形成される収容空間15内に配置される。フレキシブルフラットケーブル14は、導体部14a及び当該導体部14aを覆う被覆部14bで構成されており、ステータ11に配置される第1コネクタ41とロテータ12に配置される第2コネクタ42とを当該導体部14aによって電気的に接続する。回転ローラ27は、ベースリング26に回転可能に支持され、ロテータ12がステータ11に対して相対回転するときに、外周面をフレキシブルフラットケーブル14に接触させて当該フレキシブルフラットケーブル14の案内を行う。回転ローラ27は型を用いて成形される。そして、成形時に回転ローラ27の外周面に形成されるパーティングラインを含む平面を仮想面90としたときに、当該仮想面90は回転ローラ27の軸に垂直であり、かつフレキシブルフラットケーブル14の導体部14aと重ならないように配置される。
【0059】
これにより、回転ローラ27の外周面に形成された突起272による導体部14aの損傷を防止できる。従って、耐久性の高いステアリングロールコネクタ1が実現できる。
【0060】
また、本実施形態のステアリングロールコネクタ1において、フレキシブルフラットケーブル14は、回転ローラ27の軸方向に並べて配置された複数の導体部14aを有している。仮想面90は、導体部14a同士の間を通過する。
【0061】
これにより、仮想面90がフレキシブルフラットケーブル14(詳細には被覆部14bのみ)を通過するレイアウトを採用しつつ導体部14aの損傷を防止できるため、回転ローラ27のパーティングラインの位置、回転ローラ27及びフレキシブルフラットケーブル14の配置等に関して、自由度を向上させることができる。
【0062】
また、本実施形態のステアリングロールコネクタ1において、フレキシブルフラットケーブル14は、自動車のステアリング側と車体側とを電気的に接続する。複数の導体部14aには、エアバッグの動作に関する信号を伝達するエアバッグ用導体部が含まれている。仮想面90は、エアバッグ用導体部以外の導体部14a同士の間を通過する。
【0063】
これにより、突起272によるエアバッグ用導体部の損傷を確実に防止できるレイアウトを実現できる。
【0064】
また、本実施形態のステアリングロールコネクタ1において、ベースリング26には、当て面26cと突出部26bとが形成されている。当て面26cは、回転ローラ27の軸方向の一側(即ち、回転側リング板22から離れる側)にフレキシブルフラットケーブル14が移動しないように規制する。突出部26bは、回転ローラ27の軸方向の一側(即ち、固定側リング板21から離れる側)に当該回転ローラ27が移動しないように規制する。
【0065】
これにより、1つの部材(ベースリング26)で回転ローラ27とフレキシブルフラットケーブル14の位置を規制できるため、寸法誤差の累積を防止しながら回転ローラ27及びフレキシブルフラットケーブル14を正確に配置することができる。従って、仮想面が導体部14aと重ならないレイアウトをより確実に実現できるので、導体部14aが損傷する確率を一層低減させることができる。
【0066】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0067】
回転ローラ27に形成されるパーティングラインの位置は、回転側リング板22に近い側の外筒部27aの端面に設定することに限られず、仮想面90が導体部14aを通過しないレイアウトであれば適宜の位置とすることができる。例えば、外筒部27aの本実施形態と逆側の端部(回転ローラ27の基端部、図4における下端)にパーティングラインが形成される構成にしても良い。また、外筒部27aの外周側と内周側で、形成されるパーティングラインの位置が異なっていても良い。
【0068】
上記実施形態では、導体部14a同士の間を仮想面90が通過しているが、回転側リング板22側(図4における上側)の端部に位置する導体部14aの更に回転側リング板22側を仮想面90が通過する構成にしても良い。
【0069】
ケーブルハウジング13内でフレキシブルフラットケーブル14が巻かれる方向は、上記実施形態と逆方向にしても良い。また、収容されるフレキシブルフラットケーブル14の数は、必要に応じて1本でも良いし3本以上にしても良い。
【符号の説明】
【0070】
1 ステアリングロールコネクタ(回転コネクタ装置)。
11 ステータ(第1ケース)
12 ロテータ(第2ケース)
14 フレキシブルフラットケーブル(ケーブル)
15 収容空間
25 リテーナ
26 ベースリング(支持部材)
27 回転ローラ(ローラ)
90 仮想面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ケースと、
前記第1ケースに対し相対回転可能に取り付けられる第2ケースと、
前記第1ケースと前記第2ケースの間に形成される収容空間内に配置される支持部材と、
導体部及び当該導体部を覆う被覆部で構成されており、前記第1ケースに配置される第1コネクタと前記第2ケースに配置される第2コネクタとを前記導体部によって電気的に接続するケーブルと、
前記支持部材に回転可能に支持され、前記第2ケースが前記第1ケースに対して相対回転するときに、外周面を前記ケーブルに接触させて当該ケーブルの案内を行うローラと、
を備え、
前記ローラは型を用いて成形され、
前記成形時に当該ローラの外周面に形成されるパーティングラインを含む平面を仮想面としたときに、当該仮想面は前記ローラの軸に垂直であり、かつ前記ケーブルの前記導体部と重ならないように配置されることを特徴とする回転コネクタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転コネクタ装置であって、
前記ケーブルは、前記ローラの軸方向に並べて配置された複数の前記導体部を有しており、
前記仮想面は、前記導体部同士の間を通過することを特徴とする回転コネクタ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の回転コネクタ装置であって、
前記ケーブルは、自動車のステアリング側と車体側とを電気的に接続し、
複数の前記導体部には、エアバッグの動作に関する信号を伝達するエアバッグ用導体部が含まれており、
前記仮想面は、前記エアバッグ用導体部以外の前記導体部同士の間を通過することを特徴とする回転コネクタ装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の回転コネクタ装置であって、
前記支持部材には、第1規制部と第2規制部とが形成されており、
前記第1規制部は、前記ローラの軸方向の少なくとも一側に前記ケーブルが移動しないように規制し、
前記第2規制部は、前記ローラの軸方向の少なくとも一側に当該ローラが移動しないように規制することを特徴とする回転コネクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−89382(P2012−89382A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235803(P2010−235803)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】