説明

回転スライド扉

【課題】扉構造の大型化の回避と扉の回転方向の規制をなくすこと。
【解決手段】 回転スライド扉は、扉本体10を吊り機構部12と、スライド機構部14と、付勢部16とを備えている。機構部12は、本体10に回転力が加えられると、自重により元の位置に復帰する付勢力が作用する傾斜カム面が設けられている。機構部14は、本体10を上ガイドレール18に沿って移動させるスライド台20と、スライド移動させる際に、回転角度を90°以内に規制し、かつ、逆回転を規制する回転規制部22とを有している。扉本体10は、前方に押圧すると、機構部12を中心にして回転して、本体10と開口部との交差角度が所定回転角度以上の状態で、ガイドレール18に沿ってスライド移動し、スライド移動の押圧力が消失すると、本体10は、付勢部16とグラビティヒンジ部との付勢力により復帰移動回転して、開口部を閉止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転スライド扉に関し、特に、どの方向からも回転が行え、扉幅にほぼ相当する開口部が得られる回転スライド扉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の出入り口に設置され、押圧操作により開いて、操作を解除することで閉止する半自動扉は、高齢化社会の到来と共に、病院や身障者施設だけでなく、個人の住宅内でも利用することが望まれている。
【0003】
この種の半自動扉は、扉の一端側をグラビティヒンジで回転自在に支持する方式が、例えば、特許文献1に提案されている。ところが、このような方式の半自動扉では、扉の前面また背面側に、扉の回転を確保するための比較的大きな大きな空間が必要になる。
【0004】
この場合、扉の中央部分にグラビティヒンジを設けると、扉の回転のために、前面ないしは背面側に必要とする空間は、少なくて済むが、扉の回転に伴って発生する開口部の幅が、扉の略半分となって、人や車椅子の通過できる開口部の幅を確保するためには、扉を大きくしなければならない。
【0005】
このような課題を解決するために、例えば、特許文献2には、扉の回転とスライド移動とを同時に行うスライド・スイング方式の半自動扉が提案されている。この特許文献2に開示されている半自動扉は、ドアパネルを幅方向にスライドさせながら前後方向に回転させて開閉するスイングスライド式扉装置において、ドアパネルと、その回転縦柱とからなる扉体を、回転軸と共通軸を有するようにドア用オートヒンジを設け、このオートヒンジの本体底部から水平に突設された接続部にドアパネル取付けアームを固定し、当該ドアパネル取付けアームの先端部にドアパネルの下部を回転自在に支持する構成を備えている。
【0006】
しかしながら、特許文献2に開示されている半自動扉には、以下に説明する技術的な課題があった。
【0007】
【特許文献1】特開平10−169301号公報
【特許文献2】特開2004−190301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
すなわち、特許文献2に開示されている半自動扉は、ドアパネルを幅方向にスライドさせながら前後方向に回転させて開閉するので、比較的大きな開口部を確保しつつ、しかも、ドアパネルを回転させる際に必要な空間も少なくて済む。
【0009】
ところがこの構成では、ドアパネルの回転方向が一方向に限られ、ドアパネルが回転する方向の手前側から、これを開けようとすると、ドアパネルが手前側に回転してくるので、例えば、車椅子でここを通過する場合には、一人での通過が難しいという問題がある。
【0010】
また、ドアパネルは、上下端を一対の取付けアームで、片持ち梁状に支持する構造なので、取付けアームは、ドアパネルの荷重を支持した状態での、回転操作となり、扉構造が大型化するという問題もある。
【0011】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、扉の回動のために、扉の前面ないしは背面側に必要とする空間が小さく、かつ、開口した際に、十分な開口幅を確保することができ、しかも、扉構造の大型化を回避しつつ、扉の回転方向が一方向に限られることがない回転スライド扉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、壁と天井及び床とで隔成された開口部を開閉する扉本体を備えた回転スライド扉において、前記扉本体の幅方向の中心上部に配置され、当該扉本体を回転自在に支持する吊り機構部と、前記扉本体を前記開口部の端部側にスライド移動可能に案内するスライド機構部と、前記扉本体が前記開口部の開口端側にスライド移動する際に、当該扉本体を前記扉本体の閉止位置側に向けて復帰付勢する付勢部とを備え、前記吊り機構部は、前記扉本体に回転力が加えられると、自重により元の位置に復帰する付勢力が作用する傾斜カム面が設けられたグラビティヒンジを有し、前記スライド機構部は、前記扉本体を前記開口部に沿って延設された上ガイドレールに沿って移動させるスライド台と、前記扉本体をスライド移動させる際に、前記扉本体の回転角度を90°以内に規制し、かつ、逆回転を規制する回転規制部とを有し、前記扉本体は、前方に押圧すると、前記吊り機構部を中心にして回転して、前記上ガイドレールに沿って前記開口部の開口端に向けてスライド移動し、前記扉本体へのスライド移動の押圧力が消失すると、前記扉本体は、前記付勢部と前記グラビティヒンジ部との付勢力により復帰移動回転して、前記開口部を閉止するようにした。
【0013】
このように構成した回転スライド扉によれば、扉本体は、前方に押圧すると、吊り機構部を中心にして回転して、この状態でさらに押圧すると、上ガイドレールに沿って開口部の開口端に向けてスライド移動し、扉本体へのスライド移動の押圧力が消失すると、扉本体は、付勢部とグラビティヒンジ部との付勢力により復帰移動回転して、開口部を閉止するので、扉の回動のために、扉の前面ないしは背面側に必要とする空間は、扉本体の幅の略1/2があればよく、これを小さくすることができるとともに、開口した際に、十分な開口幅を確保することができ、しかも、扉構造の大型化を回避しつつ、扉の回転方向が一方向に限られることもない。
【0014】
さらに、押圧力がなくなると、付勢部とグラビティヒンジ部との付勢力により自動的に復帰移動回転して、開口部を閉止することができる。
【0015】
本発明の回転スライド扉は、前記扉本体が前記開口部の中心に復帰した際に、前記スライド台を中心位置に停止させる停止部を有することができる。
【0016】
前記回転規制部は、前記扉本体が前記開口部を閉止した際には、前記扉本体の回転を許容し、前記扉本体が所定角度回転した後に、前記扉本体の逆回転を規制するスイッチを有することができる。
【0017】
前記扉本体は、中心軸の下端に設けられた振れ防止部を備え、前記振れ防止部は、前記開口部の下端に沿って延設された下ガイドレールに沿って転動する回転自在なローラと、前記下ガイドレールに設けられた磁石との間に吸着力が作用する磁石片とで構成することができる。
【0018】
前記付勢部は、前記上ガイドレールに沿って移動する第1スライドピースに一端が固定され、他端が前記開口部の一方の端部に固定された第1ガイドシーブを周回するようにして前記ガイドレールの中心部に固定される第1弾性紐と、前記上ガイドレールに沿って移動する第2スライドピースに一端が固定され、他端が前記開口部の他方の端部に固定された第2ガイドシーブを周回するようにして前記ガイドレールの中心部に固定される第2弾性紐と、前記スライド台が前記開口部の端部側にスライド移動する際に、前記第1及び第2スライドガイドピースにの一方に係合して、前記第1及び第2弾性紐のいずれか一方のみを引き伸ばしながら移動させるピンストッパを設けることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる回転スライド扉によれば、扉の回動のために、扉の前面ないしは背面側に必要とする空間が小さく、かつ、開口した際に、十分な開口幅を確保することができ、しかも、扉構造の大型化を回避しつつ、扉の回転方向も一方向に限られることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1から図13は、本発明にかかる回転スライド扉の一実施例を示している。本実施例の回転スライド扉は、図1に示すように、壁Bと天井C及び床Dで四周が隔成された概略長方形状の開口部Aを、平板状の扉本体10で開閉するものである。
【0022】
図1には、開口部Aを扉本体10で閉塞した状態(A)、扉本体10を約75°回転させて、開口部Aと扉本体10とが交差した状態(B)、及び、扉本体10を開口部Aの一端側にスライド移動させて、開口部Aのほぼ全面を開放させた状態(C)が、それぞれ斜視図と平面図とで示されている。
【0023】
本実施例の回転スライド扉は、扉本体10の幅方向の中心上部に配置され、当該扉本体10を回転自在に支持する吊り機構部12と、扉本体10が所定角度回転した状態で、扉本体10を開口部Aの端部側にスライド移動可能に案内するスライド機構部14と、扉本体10が開口部Aの開口端側にスライド移動する際に、当該扉本体10を扉本体10の閉止位置側に向けて復帰付勢する付勢部16とを備えている。
【0024】
吊り機構部12は、本実施例の場合、グラビティヒンジから構成されていて、扉本体10に回転力が加えられると、自重により元の位置に復帰する付勢力が作用する傾斜カム面12aを有している。グラビティヒンジからなる吊り機構部12は、傾斜カム面12aで相互に係合する外筒部12bと回転軸12cとを備えていて、外筒部12bが扉本体10の上端中心軸上に固設されている。回転軸12cは、後述するスライド台20の中心に取り付けられている。
【0025】
スライド機構部14は、扉本体10を開口部Aに沿って延設された上ガイドレール18に沿って移動させるスライド台20と、扉本体10をスライド移動させる際に、扉本体10の回転角度を90°以内に規制し、かつ、逆回転を規制する回転規制部22とを有している。
【0026】
上ガイドレール18は、開口部Aの天井Cの下方に設置されていて、開口部Aの全長に亘って延設されている。本実施例の場合、上ガイドレール18は、平板状の上板18aと、上板18aの両端から下方に垂設された一対の側板18bと、各側板18bの下端から内方に延設された棚板18cとを備えていて、断面が概略偏平な角型になっている。
【0027】
一対の棚板18c間には、ガイドレール18の長手方向に沿って延設されるスリット状空間18dが形成され、この空間18d内に、吊り機構部12の外筒部12bが挿通するように設置されている。
【0028】
また、上ガイドレール18の上板18aの下面には、対向する鉤形の突起で構成された一対のガイド部18eが並列的に設けられている。各ガイド部18eは、ガイドレール18の長手方向に沿ってその全長に亘って延設され、各ガイド部18eには、後述するスライドピース16a,16bが移動自在に装着される。
【0029】
さらに、各棚板18cには、側板18bの下端近傍に位置する凹溝18fが設けられている。スライド台20は、概略平板状に形成された上及び下フレーム20a,20bを備え、相互に固設されたフレーム20a,20bの中心位置を貫通するようにして、グラビティヒンジ(吊り機構部12)の回転軸12cが固設されている。
【0030】
下フレーム20bの対向する2側面には、図4にも示すように、合計4個の垂直ローラ20cが回転自在に枢着されていて、各垂直ローラ20cは、図2,3に示すように、上ガイドレール18の凹溝18f内に下端側が挿入されていて、凹溝18fに沿って転動するようになっている。
【0031】
この構成により、扉本体10の荷重は、吊り機構部12を介して、スライド台20に伝達され、垂直ローラ20cを経て、上ガイドレール18に伝えられて、この部分で支持されることになる。
【0032】
また、上フレーム20aの対向する2側面には、図5にも示すように、合計4個の水平ローラ20dが回転自在に枢着されていて、各水平ローラ20fは、図2,3に示すように、上ガイドレール18の側板18bの内面に当接していて、側板18bに沿って転動するようになっている。
【0033】
回転規制部22は、吊り機構部12の外筒部12bの外周に固設された円弧状のストッパ磁石台22aと、起動スイッチ22bと、ストッパ22cとを備えている。ストッパ磁石台22aは、円弧状の磁石片22dが上面側に固設されている。
【0034】
起動スイッチ22bは、平面形状が概略凸形に形成されたものであって、上,下フレーム20a,20bに貫通形成された貫通孔22e内に上下移動自在に挿通されている。この起動スイッチ22bの下端側は、上ガイドレール18の一方の棚板18cの上面に固設された、スイッチガイド板に24上に載置されている。
【0035】
このスイッチガイド板24は、図9に示すように、上ガイドレール18の中心に固設され、左右方向に傾斜面を有している。ストッパ22cは、スライド台20の下フレーム20bの下面に固設されていて、扉本体10が左右いずれかの方向に略90°回転すると、ストッパ磁石台22aの先端が当接して、それ以上扉本体10が回転することを阻止する。
【0036】
ここで、扉本体10は、回転すると、この回転に伴って、吊り機構部12のグラビティヒンジの傾斜カム面12aにより、図3に示すように、所定の距離だけ上昇する。(図2が下降位置の状態を示し、図3が上昇位置の状態を示している。)
【0037】
扉本体10の下降位置においては、起動スイッチ22bは、スイッチガイド板24の中心部に載置されており、この状態では、ストッパ磁石台22aと干渉しないので、扉本体10は、吊り機構部12のグラビティヒンジにより回転することができる。
【0038】
扉本体10が回転すると、傾斜カム面12bに載り上がることで、これが徐々に上昇するが、所定回転角度(75°)だけ回転すると、円弧状のストッパ磁石台22aと起動スイッチ22bとの位置的な干渉がなくなり、これをさらに回転させて90°の回転位置では、ストッパ磁石台22aがストッパ22cに当接して、その後の回転が阻止される。
【0039】
この状態でさらに回転を継続すると、扉本体10は、スライド台20に支持された状態で、上ガイドレール18に沿ってスライド移動することになる。この際に、扉本体10の逆回転は、ストッパ磁石台22aが起動スイッチ22bに当接することで、これ以上の逆回転が規制される。
【0040】
なお、図2,3及び図4に示した符号26の部材は、下フレーム20bに配置された円盤磁石であって、この円盤磁石26は、ストッパ磁石台22aに配置されている磁石片22dと、相互に反発する関係にあって、この反発力は、扉本体10が、図8に示すように、75°回転した位置から90°回転するまでの間で作用し、この反発力により、扉本体10がストッパ22cに強く当たらないようにしている。
【0041】
また、図2,3および図 に示した符号28の部材は、扉本体10が開口部Aの中心に位置する際、および、扉本体10が中心に復帰した際に、スライド台20を開口部Aの中心に位置決め停止させる停止部であり、本実施例の場合には、上ガイドレール18の棚板18c上に固設された一対の第1磁石28aと、下フレーム20bに固設された一対の第2磁石28bとから構成され、これらの磁石28a,28bは、相互に吸着する磁極構成になっている。
【0042】
一方、付勢部16は、それぞれ一対ずつの第1,第2スライドピース16a,16bと、第1,第2弾性紐16c,16dと、第1,第2ガイドシーブ16e,16fと、第1,第2固定プレート16g,16hと、第1および第2ピンストッパ16i,16j前記とを備えている。
【0043】
第1,第2スライドピース16a,16bは、図2,3に示すように、上ガイドレール18のガイド部18e内に上端側を挿入することにより、ガイドレール18に沿って移動可能に設置されている。
【0044】
第1弾性紐16cは、一端側が第1スライドピース16aに固定され、他端側は、図11に示すように、開口部Aの一方の端部に固定された第1ガイドシーブ16eを周回するようにしてガイドレール18の中心部に固定される第1固定プレート16gに固定されている。
【0045】
第2弾性紐16dは、一端側が第2スライドピース16bに固定され、他端側は、図11に示すように、開口部Aの他方の端部に固定された第2ガイドシーブ16fを周回するようにしてガイドレール18の中心部に固定される第2固定プレート16hに固定されている。なお、弾性紐16c,16dは、例えば、ストレッチコード(E−30エステル)(株式会社カタヤマ製、商品名)を用いることができる。
【0046】
ピンストッパ16i,16jは、スライド台20の上フレーム20aに固定されている。各ピンストッパ16i,16jは、一対から構成されていて、図5に示すように、第1,第2スライドピース16a,16bの内側に配置されている。このような位置関係にあると、スライド台20が、図5の右方向に移動する際には、同図の上側のスライドピース16aだけがこれに押されて、同じ方向に移動し、下側のスライドピース16bは、そのままの位置に留まる。
【0047】
つまり、本実施例の場合、スライド台20が開口部Aの端部側にスライド移動する際には、第1及び第2スライドガイドピース16a,16bの一方にのみストッパピン16i,16jが係合して、第1及び第2弾性紐16c,16dのいずれか一方を引き伸ばしながら移動させることになる。
【0048】
さらに、本実施例の場合には、扉本体10は、中心軸の下端に設けられた振れ防止部30を備えている。図6および図7は、振れ防止部30の詳細であり、振れ防止部30は、開口部Aの下端に沿って延設された下ガイドレール32に沿って転動する回転自在なローラ30aと、下ガイドレール32に設けられた磁石32aとの間に吸着力が作用する磁石片30bとで構成されている。
【0049】
本実施例の場合、下ガイドレール32は、床面Dに埋め込まれていて、ローラ30aに当接する面が床面上に露出している。磁石32aは、ガイドレール32の内部にあって、その全長に亘って延設されている。
【0050】
ローラ30aは、支持ロッド30cの側面に回転自在に枢着されていて、磁石片30bは、支持ロッド30cの下端に固設され、磁石32aと対向するように配置されている。支持ロッド30cは、回転扉10の中心軸上の下端に固設されたホルダ30d内に上下移動自在に挿入されている。
【0051】
このように構成した振れ防止部30によれば、扉本体10が回転すると、吊り機構部12の傾斜カム面12aにより上昇移動するが、この際にも、磁石30b,32a同士の吸着力が作用して、下端側の振れが防止されるとともに、スライド台20でスライド移動する際にも、同様に吸着力が作用して、振れを防止することができる。
【0052】
以上のように構成された回転スライド扉においては、扉本体10を、前方に押圧すると、まず、吊り機構部12を中心にしてこれが回転する。そして、扉本体10の幅方向と開口部Aとの交差角度が所定角度以上の状態(例えば、図8に示すように、75°)、あるいは、90°回転させた状態で、さらに扉本体10を前方に移動させると、扉本体10を吊り支持しているスライド台20が、上ガイドレール18に沿って開口部Aの開口端(図8の左方向)に向けてスライド移動する。
【0053】
この際に、扉本体10の回転は、回転規制部22のストッパ磁石台22aがストッパ22cに当接することにより、90°以上の回転が規制されるとともに、ストッパ磁石台22aが起動スイッチ22bに当接することにより、これ以上の逆回転が規制される。
【0054】
また、付勢部16は、扉本体10の回転およびスライド移動時には、以下のように機能する。すなわち、まず、扉本体10が回転する際には、付勢部16は、その障害とならず、回転がスムーズに行え、図11に示した状態に維持される。
【0055】
そして、スライド台20が左方向にスライド移動すると、図12に示すように、付勢部16のスライドピース16bだけが、ストッパピン16jに押されて、スライド台20と同じ方向に移動し、スライドピース16aは、図11に示した位置に留まる。この結果、図12に示すように、第2弾性紐16dだけが引伸ばされることになる。
【0056】
そして、図9に示すように、スライド台20が開口部Aの左端まで移動すると、開口部Aのほぼ全長が開放された状態になる。そして、この状態で、扉本体10へのスライド移動の押圧を停止して、押圧力が消失すると、扉本体10は、付勢部16の第2弾性紐16dが引伸ばされているので、その弾性収縮力により、開口部Aの中心側にスライド移動して復帰しようとする。
【0057】
この際に、扉本体10は、吊り機構部12のグラビティヒンジの傾斜カム面12aにより閉止する方向に付勢されているので、元の位置に復帰回転しようとするが、この復帰回転は、ストッパ磁石台22aが起動スイッチ22bに当接することで、約75°の回転位置に規制され、この状態で開口部Aの中心の近傍までスライド移動することになる。
【0058】
このようなスライド移動が継続されて、回転扉10が開口部Aの中心近傍まで移動して、起動スイッチ22bが傾斜ガイド板24の傾斜面を経てその上部中心位置に到達すると、起動スイッチ22bの上昇移動により、ストッパ磁石台22aの回転規制が解除され、扉本体10は、復帰回転して開口部Aを閉止することになる。
【0059】
このような扉本体10の停止位置は、磁石28a,28b間の吸着磁力が作用する停止部28により正確に位置決めされる。以上のような扉本体10の回転およびスライド移動、その後に復帰する際の移動回転の最中は、振れ防止部30の機能により、扉本体10が下ガイドレール32から脱落することがなく、扉本体10の姿勢を垂設状態に常時維持することができる。
【0060】
なお、以上の扉本体10の回転およびスライド移動では、図8,9において、扉本体10を左方向に回転させて、さらにこれを左方向にスライド移動させる場合について説明したが、扉本体10を右回転させながらスライド移動させる場合は、図10や図13に示すような形態となり、この形態は、左方向の場合と実質的には同一なのでその説明を省略する。
【0061】
また、上記実施例で示した付勢部16は、弾性紐16c,16dの伸長と弾性復帰とを利用するものを例示したが、本発明の実施は、これに限定されることはなく、例えば、実施例の構成に替えて、リニアモータを用いて、扉本体10に復帰付勢力が加わるようにしてもよい。
【0062】
また、起動スイッチ22bの上昇移動構成として、上記実施例では、両側に傾斜面を設けた傾斜ガイド板24を用いる場合を例示したが、これに代えて、例えば、起動スイッチ22bの下端とガイド板24の設置相当位置に、相互に反発する永久磁石を配置しておき、起動スイッチ22bが所定位置で上昇するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明にかかる回転スライド扉によれば、開口部の閉塞を自動的に行うことができるので、例えば、病院などの出入口用扉として有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明にかかる回転スライド扉の閉止状態(A)、半開状態(B)、全開状態(C)の斜視図と上面説明図である。
【図2】本発明にかかる回転スライド扉で開口部を閉止した状態の要部断面図である。
【図3】図1の状態で、扉本体を回転させた際の断面図である。
【図4】図2のA−A線上面図である。
【図5】図2のB−B線上面図である。
【図6】図1に示した回転スライド扉の下端側の説明図である。
【図7】図6のD部拡大図である。
【図8】本発明にかかる回転スライド扉の扉本体を閉止位置から左75°回転させた際の、スライド台の状態を示す図である。
【図9】図8に示した状態から扉本体を左または右端までスライド移動させた際のスライド台の状態を示す図である。
【図10】本発明にかかる回転スライド扉の扉本体を閉止位置から右75°回転させた際の、スライド台の状態を示す図である。
【図11】本発明にかかる回転スライド扉の扉本体を閉止位置から左75°回転させた際の、付勢部の状態を示す図である。
【図12】図11に示した状態から扉本体を左または右端までスライド移動させた際の付勢部の状態を示す図である。
【図13】本発明にかかる回転スライド扉の扉本体を閉止位置から右75°回転させた際の、付勢部の状態を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
10 扉本体
12 吊り機構部(グラビティヒンジ)
12a 傾斜カム面
12b 外筒部
12c 回転軸
14 スライド機構部
16 付勢部
18 上ガイドレール
20 スライド台
20a 上フレーム
20b 下フレーム
22 回転規制部
22a ストッパ磁石台
22b 起動スイッチ
22c ストッパ
24 傾斜ガイド板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁と天井及び床とで隔成された開口部を開閉する扉本体を備えた回転スライド扉において、
前記扉本体の幅方向の中心上部に配置され、当該扉本体を回転自在に支持する吊り機構部と、
前記扉本体を前記開口部の端部側にスライド移動可能に案内するスライド機構部と、
前記扉本体が前記開口部の開口端側にスライド移動する際に、当該扉本体を前記扉本体の閉止位置側に向けて復帰付勢する付勢部とを備え、
前記吊り機構部は、前記扉本体に回転力が加えられると、自重により元の位置に復帰する付勢力が作用する傾斜カム面が設けられたグラビティヒンジを有し、
前記スライド機構部は、前記扉本体を前記開口部に沿って延設された上ガイドレールに沿って移動させるスライド台と、前記扉本体をスライド移動させる際に、前記扉本体の回転角度を90°以内に規制し、かつ、逆回転を規制する回転規制部とを有し、
前記扉本体は、前方に押圧すると、前記吊り機構部を中心にして回転して、前記上ガイドレールに沿って前記開口部の開口端に向けてスライド移動し、
前記扉本体へのスライド移動の押圧力が消失すると、前記扉本体は、前記付勢部と前記グラビティヒンジ部との付勢力により復帰移動回転して、前記開口部を閉止することを特徴とする回転スライド扉。
【請求項2】
請求項1記載の回転スライド扉は、前記扉本体が前記開口部の中心に復帰した際に、前記スライド台を中心位置に停止させる停止部を有することを特徴とする回転スライド扉。
【請求項3】
前記回転規制部は、前記扉本体が前記開口部を閉止した際には、前記扉本体の回転を許容し、前記扉本体が所定角度回転した後に、前記扉本体の逆回転を規制するスイッチを有することを特徴とする請求項1または2記載の回転スライド扉。
【請求項4】
前記扉本体は、中心軸の下端に設けられた振れ防止部を備え、
前記振れ防止部は、前記開口部の下端に沿って延設された下ガイドレールに沿って転動する回転自在なローラと、前記下ガイドレールに設けられた磁石との間に吸着力が作用する磁石片とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の回転スライド扉。
【請求項5】
前記付勢部は、前記上ガイドレールに沿って移動する第1スライドピースに一端が固定され、他端が前記開口部の一方の端部に固定された第1ガイドシーブを周回するようにして前記ガイドレールの中心部に固定される第1弾性紐と、
前記上ガイドレールに沿って移動する第2スライドピースに一端が固定され、他端が前記開口部の他方の端部に固定された第2ガイドシーブを周回するようにして前記ガイドレールの中心部に固定される第2弾性紐と、
前記スライド台が前記開口部の端部側にスライド移動する際に、前記第1及び第2スライドガイドピースにの一方に係合して、前記第1及び第2弾性紐のいずれか一方のみを引き伸ばしながら移動させるピンストッパを設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の回転スライド扉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−169948(P2007−169948A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−366230(P2005−366230)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(504175774)有限会社 住創 (3)
【Fターム(参考)】