回転ダンパ装置及びその製造方法
【課題】 回転ダンパにおいて、ロータ軸とロータ軸に結合される回転部材との結合構造を簡素かつ確実なものにする。
【解決手段】 内部に粘性流体が封入されたダンパハウジング11と、ダンパハウジング内に回転可能に受容されたロータ翼28及びロータ翼に突設されてダンパハウジングの外部に突出するロータ軸29を備えたロータ12と、ロータ軸の突出端に結合されるワンウェイクラッチ3とを有する回転ダンパ装置1であって、ワンウェイクラッチは、ロータ軸の突出端が通過する挿通孔44と、挿通孔のダンパハウジング側と相反する側の孔縁に挿通孔を挟んで互いに対向するように立設された一対の規制壁44とを有し、ロータ軸の突出端は、挿通孔を通過した状態で加熱変形されて規制壁間の間隙に沿ってロータ軸の径方向に突出し、挿通孔の孔縁に係合していることを特徴とする。
【解決手段】 内部に粘性流体が封入されたダンパハウジング11と、ダンパハウジング内に回転可能に受容されたロータ翼28及びロータ翼に突設されてダンパハウジングの外部に突出するロータ軸29を備えたロータ12と、ロータ軸の突出端に結合されるワンウェイクラッチ3とを有する回転ダンパ装置1であって、ワンウェイクラッチは、ロータ軸の突出端が通過する挿通孔44と、挿通孔のダンパハウジング側と相反する側の孔縁に挿通孔を挟んで互いに対向するように立設された一対の規制壁44とを有し、ロータ軸の突出端は、挿通孔を通過した状態で加熱変形されて規制壁間の間隙に沿ってロータ軸の径方向に突出し、挿通孔の孔縁に係合していることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギヤ等の回転部材の回転を減衰する回転ダンパ装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開又は閉方向の一方に付勢した扉等をゆっくりと作動させる目的で、回転ダンパを使用したものがある。回転ダンパは、内部に粘性流体が封入されたダンパハウジングと、ダンパハウジングに受容されるロータ翼及びロータ翼に突設されてダンパハウジングから突出するロータ軸とを備えたロータとを有し、ロータ軸において回転を減衰すべきギヤ等の回転部材に結合される。このような回転ダンパは、一方向の回転のみに対して減衰力を発生させるべく、ワンウェイクラッチと組み合わせて使用されることがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−163667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明では、ロータ軸の先端にキー部を形成するとともに、ワンウェイクラッチ側にキー孔を形成し、キー部とキー孔との嵌合によってロータ軸とワンウェイクラッチとを一体回転可能に結合している。しかしながら、特許文献1に記載の発明は、ロータ軸とワンウェイクラッチとをロータ軸の軸線方向に規制する手段を有していないため、ロータ軸とワンウェイクラッチが分離するという問題がある。
【0005】
本発明は、以上の問題を鑑みてなされたものであって、回転ダンパにおいて、ロータ軸とロータ軸に結合される回転部材との結合構造を簡素かつ確実なものにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、内部に粘性流体が封入されたダンパハウジング(11)と、前記ダンパハウジング内に回転可能に受容されたロータ翼(28)及び前記ロータ翼の回転軸に沿って突設されて前記ダンパハウジングの外部に突出するロータ軸(29)を備えたロータ(12)と、前記ロータ軸の突出端に結合される回転部材(3)とを有する回転ダンパ装置(1)であって、前記回転部材は、前記ロータ軸の突出端が通過する挿通孔(43)と、前記挿通孔の前記ダンパハウジング側と相反する側の孔縁に前記挿通孔を挟んで互いに対向するように立設された一対の規制壁(44)とを有し、前記ロータ軸の突出端は、前記挿通孔を通過した状態で加熱変形されて前記一対の規制壁間の間隙に沿って前記ロータ軸の径方向に突出し、前記挿通孔の孔縁に係合していることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、ロータ軸の突出端を加熱変形させて挿通孔の孔縁に係合させる際に、一対の規制壁がロータ軸の突出端の変形方向を規制するため、ロータ軸の突出端と挿通孔の孔縁との係合形成が容易である。また、変形(突出)方向を径方向の全方位にするのではなく、一部の方向に限定することで、挿通孔の孔縁と係合するロータ軸の突出端を肉厚にすることができ、係合構造の剛性を高めることができる。また、加熱変形したロータ軸の突出端は規制壁とも係合することができるため、規制壁をロータ軸と一体に回転させることができる。
【0008】
本発明の他の側面は、前記回転部材(3)は、内歯車(63)を有する円筒状のアウタ部材(36)と、前記アウタ部材に同軸かつ回転自在に受容され、外周部に2つの凹部(47)を有するインナ部材(35)と、前記凹部のそれぞれに回転可能に受容されて前記内歯車に噛み合う遊星ギヤ(37)とを有し、前記アウタ部材が前記インナ部材に対して正方向に回転する際には、前記遊星ギヤが前記凹部内で回転して前記アウタ部材が前記インナ部材と独立に回転する一方、前記アウタ部材が前記インナ部材に対して負方向に回転する際には、前記凹部の周方向における一側に形成された角部(49)に前記遊星ギヤが係合して前記アウタ部材及び前記インナ部材が一体に回転するワンウェイクラッチであり、前記インナ部材は、その回転軸線に沿って前記挿通孔を有するともに、前記一対の規制壁を有し、前記凹部のそれぞれは、前記一対の規制壁の前記挿通孔と相反する側に配置されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、加熱変形によって径方向外方に突出するロータ軸の突出端と遊星ギヤとをロータ軸の軸線方向において重なる位置に配置することができ、ワンウェイクラッチを小型化することができる。換言すると、規制壁を配置したことによって形成されたデッドスペースに凹部を配置することで、インナ部材の大型化を招かずにロータ軸の突出端が径方向外方に突出するための空間をインナ部材に確保することができる。
【0010】
本発明の他の側面は、前記挿通孔は、断面が四角形に形成され、前記一対の規制壁は前記挿通孔の互いに相対する対辺に沿って立設されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、ロータ軸の突出端は、加熱変形時に一対の規制壁によって導かれ、ロータ軸の径方向において180°異なる2方向に突出するため、ロータ軸とインナ部材との係合状態を確実にすることができる。
【0012】
本発明の他の側面は、前記ロータ軸は、前記挿通孔に回転不能に嵌合可能な形状に形成され、前記規制壁に対向しない部分が径方向外方へと加熱変形されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、ロータ軸が挿通孔に嵌合することによって、ロータ軸と挿通孔とが一体的に回転可能となる。また、ロータ軸の規制壁に対向しない部分を径方向外方へと加熱変形させることで、ロータ軸の挿通孔からの抜け止めがなされ、ロータ軸の加熱変形させる部位を最小化することができる。
【0014】
本発明の他の側面は、内部に粘性流体が封入されたダンパハウジング(11)と、前記ダンパハウジング内に回転可能に受容されたロータ翼(28)及び前記ロータ翼の回転軸に沿って突設されて前記ダンパハウジングの外部に突出するロータ軸(29)を備えたロータ(12)と、前記ロータ軸の突出端に結合される回転部材とを有する回転ダンパ装置(1)の製造方法であって、前記回転部材は、前記ロータ軸の突出端が通過する挿通孔(43)と、前記挿通孔の孔縁に前記挿通孔を挟んで互いに対向するように立設された一対の規制壁(44)とを有し、前記ロータ軸の突出端を、前記規制壁が立設された側と相反する側から前記挿通孔に通過させる工程と、前記突出端を加熱した押圧片(80)によって押圧し、前記突出端を加熱変形させて前記一対の規制壁間の間隙に沿って前記ロータ軸の径方向に突出させ、前記挿通孔の孔縁に係合させる工程とを有することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、ロータ軸を回転部材に対して容易に結合させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上の構成によれば、回転ダンパ装置において、ロータ軸とロータ軸に結合される回転部材とを結合構造を簡素かつ確実なものにすることができる。また、ロータ軸と回転部材との結合構造を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係る回転ダンパ装置の斜視図
【図2】実施形態に係る回転ダンパ装置の平面図
【図3】実施形態に係る回転ダンパ装置の正面図
【図4】実施形態に係る回転ダンパ装置の側面図
【図5】実施形態に係る回転ダンパ装置の底面図
【図6】図2のVI−VI線に沿った断面斜視図
【図7】図2のVII−VII断面図
【図8】図3のVIII−VIII断面図
【図9】ロータ軸の加熱変形工程を示す模式図
【図10】実施形態に係る回転ダンパ装置を適用した蓋付き箱を示す側面図
【図11】図10のXI−XI断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明を適用した実施形態について詳細に説明する。以下の説明では、図中に示す座標軸を基準にして各方向を定める。
【0019】
実施形態に係る回転ダンパ装置1は、図1〜図8に示すように、回転ダンパ2と、回転部材としてのワンウェイクラッチ3とを組み合わせたものである。
【0020】
図6に示すように、回転ダンパ2は、内部に粘性流体が封入されるダンパハウジング11と、ダンパハウジング11内に回転可能に受容されたロータ12とを備えている。ダンパハウジング11は、共に樹脂材料から形成された有底円筒形の底部材14と、底部材14の開口端を塞ぐ円板状の蓋部材15とを備えている。蓋部材15の周縁部には、底部材14の開口端が嵌合可能な環状溝17が凹設されている。底部材14及び蓋部材15は、底部材14の開口端が環状溝17に嵌合した状態で摩擦溶着(振動溶着)によって互いに結合されている。
【0021】
図1に示すように、底部材14の外周面の底部側部分には、径方向外方に張り出した顎部21が周方向に互いに180°の間隔をおいて2つ設けられている。各顎部21の突出端には、底部材14の軸線方向と平行に底部材14の開口端側へと延びる弾性爪22がそれぞれ設けられている。各弾性爪22は、底部材14の径方向外方に突出するともに、弾性爪22の基端側を向く逆止面を備えた爪部23を有しており、弾性変形することによって底部材14の径方向に傾倒可能となっている。
【0022】
図6に示すように、底部材14の底部19の中心部には、底部材14の軸線に沿って蓋部材15側に突出する円柱状の軸25が突設されている。底部材14の中心部には、軸25と同軸の円孔である貫通孔26が形成されている。
【0023】
ロータ12は、円板状のロータ翼28と、ロータ翼28の中心から一側へと軸線に沿って突設されたロータ軸29とを有している。ロータ12は熱可塑性樹脂から形成され、ロータ翼28及びロータ軸29は一体となっている。ロータ軸29は、基端部31が円柱状に形成され、基端部31に連続する先端部32が四角柱状に形成されている。
【0024】
ロータ翼28のロータ軸29が突設された側と相反する側には、断面円形状の有底孔である軸受孔33が凹設されている。ロータ翼28は、底部材14と蓋部材15とによって画成される空間(すなわち、ダンパハウジング11の内部空間)に受容され、軸受孔33において軸25に回転可能に軸支される。このとき、ロータ軸29は、貫通孔26を通過して、先端部32及び基端部31の一部がダンパハウジング11の外部に突出する。この状態で、基端部31の外周面が貫通孔26の孔壁に対向する。
【0025】
ロータ軸29の基端部31と貫通孔26との間には可撓性を有するOリング34が介装されている。Oリング34は、ロータ軸29と貫通孔26との隙間をシールし、ダンパハウジング11の内部空間に充填された、例えばシリコーンオイルといった粘性流体が貫通孔26から流出することを防止している。
【0026】
以上のように構成した回転ダンパ2は、ロータ12がダンパハウジング11に対して回転する際に、粘性流体の流動抵抗によってロータ12に回転抵抗を与える(回転を減衰する)。回転ダンパ2の回転抵抗は、粘性流体の粘度やロータ12の形状を適宜変更することで、調整することができる。
【0027】
図8に示すように、ワンウェイクラッチ3は、ロータ軸29に結合され、ロータ軸29と一体となって回転するインナ部材35と、インナ部材35を相対回転可能に受容するアウタ部材36と、インナ部材35とアウタ部材36との間に介装された一対の遊星ギヤ37とを有している。インナ部材35、アウタ部材36及び遊星ギヤ37は、それぞれ樹脂材料から形成されている。
【0028】
インナ部材35は、一端に底板41を有する一方、他端が開口した筒状を呈する。底板41の下面の中心部には底板41と同軸となる円柱状の支持軸42が突設されている。底板41及び支持軸42の中心部には、両者の軸線に沿って一体に貫通する挿通孔43が形成されている。挿通孔43の断面は四角形状となっている。
【0029】
底板41の上面には、挿通孔43の互いに対向する1組の対辺のそれぞれに沿って規制壁44が上方へと立設されている。規制壁44の側端は、挿通孔43の一辺より外方へと延出している。各規制壁44の両側端に連続する第1壁45及び第2壁46はインナ部材35の径方向外方へと延びている。これらの規制壁44、第1壁45及び第2壁46によって径方向外向きに開口した凹部47が画成されている。2つの凹部47間で、一方の凹部47の第1壁45と、他方の凹部47の第2壁46とは円弧状に延在する円弧壁48によって連続されている。以上のようにして、凹部47は周方向において180°間隔でインナ部材35の側周部に形成されている。
【0030】
図8に示すように、第1壁45及び第2壁46は、それぞれ規制壁44に滑らかに連続し、凹部47の側面の側面を滑らかな曲面に形成している。第1壁45は、インナ部材35の径方向において、円弧壁48の外周面を外挿した弧上まで延出している。一方、第2壁46は、第1壁45に比べて、インナ部材35の径方向への延出長さが約半分程度と短く、延出した端部に角部49を形成している。
【0031】
図7に示すように、規制壁44、第1壁45及び第2壁46の上端同士は、天壁50によって連結されている。すなわち、凹部47の上端は天壁50によって封止されている。一対の円弧壁48の上端の外縁には、周方向に沿って延在する突条52が形成されている。
【0032】
以上のように構成されたインナ部材35は、視点を変えて見ると、底板41、規制壁44、第1壁45、第2壁46及び円弧壁48によって画成された、上方に向けて開口する内部空間55を有している。内部空間55は、挿通孔43に連通している。
【0033】
アウタ部材36は、円筒状の側周壁61と、側周壁61の一端に設けられた円板状の底板62とからなる有底円筒状部材である。側周壁61の内周面には複数の内歯からなる内歯車63が形成されており、外周面には複数の外歯からなる外歯車64が形成されている。また、側周壁61の開口端(底板62が設けられた側と異なる端部)の内周面には、周方向に沿って環状に延在する係止溝65が形成されている。底板62の中心には、インナ部材35の支持軸42が摺接しつつ通過可能な断面円形状の貫通孔66が形成されている。
【0034】
アウタ部材36は、側周壁61及び底板62によって画成される空間にインナ部材35を受容する。このとき、インナ部材35の支持軸42はアウタ部材36の貫通孔66に摺接しつつ挿通され、突条52が係止溝65に嵌合する。突条52は係止溝65内を係止溝65の延在方向に沿って移動可能に嵌合するため、アウタ部材36はインナ部材35に対して軸線方向に抜け止めがなされつつ、周方向に相対回転可能に支持される。このとき、アウタ部材36の内歯車63は、インナ部材35に接触しないように構成されている。
【0035】
一対の遊星ギヤ37のそれぞれは、軸方向に所定の長さを有する平歯車であり、軸線がインナ部材35及びアウタ部材36の軸線と平行になるように、各凹部47に受容されている。遊星ギヤ37は、凹部47に受容された状態において、アウタ部材36の内歯車63に噛み合っている。
【0036】
以上のように構成したワンウェイクラッチ3は、図8に示すように上方から見た状態を基準とすると、インナ部材35に対してアウタ部材36が正方向(反時計回り)に回転する際には、アウタ部材36の内歯車63によって回転させられる遊星ギヤ37は、凹部47を第1壁45側に移動する。このとき、遊星ギヤ37は、第1壁45に当接することによって、第1壁45方向への移動が規制され、第1壁45上を摺接しつつ、空転する。第1壁45はインナ部材35の径方向外方に比較的延出しているため、遊星ギヤ37は、第1壁45と円弧壁48との境界部に噛み合うことなく、第1壁45上を円滑に空転する。そのため、アウタ部材36が回転してもインナ部材35は回転しない。
【0037】
一方、インナ部材35に対してアウタ部材36が負方向(時計回り)に回転する際には、アウタ部材36の内歯車63によって回転させられた遊星ギヤ37は、第2壁46側へと移動して第2壁46の角部49と噛み合い、回転不能となる。これにより、インナ部材35は、遊星ギヤ37を介してアウタ部材36に係合し、アウタ部材36と一体に回転する。
【0038】
以上のように、ワンウェイクラッチ3は、インナ部材35に対してアウタ部材36が正方向に相対回転しようとする際には、インナ部材35及びアウタ部材36は相対回転することができ、インナ部材35に対してアウタ部材36が負方向に相対回転しようとする際には、インナ部材35及びアウタ部材36が一体となって回転する。
【0039】
以上のように構成された回転ダンパ2とワンウェイクラッチ3との結合構造およびその形成方法について説明する。最初に、回転ダンパ2のロータ軸29の先端部32を、ワンウェイクラッチ3のインナ部材35の挿通孔43を通過させ、内部空間55内に突出させる。先端部32及び挿通孔43は、共に断面が四角形に形成されており、互いに嵌合する形状となっているため、ロータ軸29とインナ部材35とはロータ軸29の軸線回りの相対回転が規制され、一体回転するようになる。
【0040】
次に、図9に示すように、加熱された押圧片80を使用して、ロータ軸29の先端部32を変形させる。押圧片80は、インナ部材35の内部空間55に突入可能な金属製の棒状部材であり、その先端に一対の突片81を備えている。一対の突片81は、先端部32の互いに対向する対辺に対向可能なように、所定の間隔をおいて平行に配設されている。押圧片80は、先端部32を変形可能な温度に昇温した後に、先端部32の規制壁44に対向しない一対の対辺に一対の突片81が対向するように配置し、ロータ軸29の軸線方向から先端部32に押し付ける。これにより、先端部32は、突片81に加熱されるともに押圧され、変形する。このとき、先端部32の両脇には規制壁44が存在するため、加熱によって可撓性が高められた部分は、突片81に押圧され、ロータ軸29の径方向であって規制壁44が存在しない方向に突出し、凸部71を形成する。すなわち、一対の規制壁44は、凸部71の突出方向をガイドする。以上の形成方法によって、凸部71は、ロータ軸29の径方向外方であって互いに相反する向きに2つ形成される。各凸部71は、挿通孔43の周縁部に係合し、ロータ軸29の挿通孔43からの離脱を阻止する。これにより、回転ダンパ2とワンウェイクラッチ3とが結合され、回転ダンパ装置1が形成される。
【0041】
以上のように構成した回転ダンパ装置1では、ダンパハウジング11を固定した状態で、インナ部材35に対してアウタ部材36が正方向に回転する際には、アウタ部材36が回転してもインナ部材35は回転せず、回転ダンパ2による回転抵抗(減衰力)は発生しないが、インナ部材35に対してアウタ部材36が負方向に回転する際には、アウタ部材36とともにインナ部材35及びロータ軸29が回転して、回転ダンパ2による回転抵抗(減衰力)が発生する。
【0042】
本実施形態の回転ダンパ2とワンウェイクラッチ3との結合構造では、ロータ軸29の互いに対向する対辺部分のみを加熱変形させるようにしたため、押圧片80の押圧力及び加熱量を低減することができる。また、一対の規制壁44によって、凸部71の突出方向を一部に規制したため、凸部71を肉厚に形成することができるとともに、凸部71の形成操作が容易になる。
【0043】
図10及び図11に示すように、回転ダンパ装置1の使用例を示す。回転ダンパ装置1は、例えば、カップホルダ等の蓋付き箱90に使用される。蓋付き箱90は、上方開口の箱91と、箱91の開口を開閉自在に閉塞する平板状の蓋92とを有している。蓋92は、その側辺部に主面に対して垂直に立設された扇形の耳部93を有し、耳部93に設けられた軸94によって箱91の側壁95に回転可能に支持されている。耳部93の弧状の周縁部には、ラック96が形成されている。なお、図示しないが、蓋付き箱90には、蓋92が開口を閉塞した状態に維持するためのロック装置と、蓋92が開口を開く方向に回転付勢するばねが設けられている。
【0044】
回転ダンパ装置1は、箱91の側壁95に形成された貫通孔である取付孔98に取り付けられている。取付孔98は、図示しないが円形状の主部と、主部の周縁から径方向外方へと切り欠かれた2つの切欠部とを有している。2つの切欠部は、主部の中心を対称軸として点対称位置に設けられている。回転ダンパ装置1は、取付孔98の主部に挿入される。このとき、顎部21が取付孔98の周縁に係合するとともに、弾性爪22が取付孔98の切欠部に係合して回転ダンパ装置1は取付孔98に支持される。この状態で、回転ダンパ装置1のアウタ部材36の外歯車64は、ラック96に噛み合う。
【0045】
以上のように、回転ダンパ装置1を蓋付き箱90に適用した場合には、蓋92がばねに付勢力を受けて開く際には、ラック96によってアウタ部材36が負方向に回転し、インナ部材35及びロータ軸29が共に回転し、回転ダンパ2が回転抵抗を生じさせ、蓋92の開速度が低減する。一方、蓋92を閉じる際には、ラック96によってアウタ部材36が正方向に回転し、インナ部材35及びロータ軸29は回転せず、回転ダンパ2が回転抵抗を生じさせることはない。
【0046】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。特に、本実施形態では回転ダンパ2にワンウェイクラッチ3を組み合わせた構成としたが、ワンウェイクラッチ3の代えて歯車やプーリ等の回転部材としてもよい。この場合には、回転部材に挿通孔43及び規制壁44を設ければよい。また、規制壁44の形状は、適宜変更可能であり、例えばコ字状にして挿通孔43の一方を残して囲むようにしてもよい。また、押圧片80は様々な形状のものを使用することができる。また、本実施形態では、ロータ軸29の先端部32を四角柱状とし、挿通孔43を四角形状としたが、挿通孔42をI形や楕円形とし、先端部32を挿通孔43に回転不能に嵌合する形状としてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…回転ダンパ装置、2…回転ダンパ、3…ワンウェイクラッチ、11…ダンパハウジング、12…ロータ、28…ロータ翼、29…ロータ軸、31…基端部、32…先端部、35…インナ部材、36…アウタ部材、37…遊星ギヤ、43…挿通孔、44…規制壁、45…第1壁、46…第2壁、47…凹部、48…円弧壁、49…角部、50…天壁、55…内部空間、63…内歯車、64…外歯車、71…凸部、80…押圧片、81…突片、90…蓋付き箱、91…箱、92…蓋
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギヤ等の回転部材の回転を減衰する回転ダンパ装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開又は閉方向の一方に付勢した扉等をゆっくりと作動させる目的で、回転ダンパを使用したものがある。回転ダンパは、内部に粘性流体が封入されたダンパハウジングと、ダンパハウジングに受容されるロータ翼及びロータ翼に突設されてダンパハウジングから突出するロータ軸とを備えたロータとを有し、ロータ軸において回転を減衰すべきギヤ等の回転部材に結合される。このような回転ダンパは、一方向の回転のみに対して減衰力を発生させるべく、ワンウェイクラッチと組み合わせて使用されることがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−163667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明では、ロータ軸の先端にキー部を形成するとともに、ワンウェイクラッチ側にキー孔を形成し、キー部とキー孔との嵌合によってロータ軸とワンウェイクラッチとを一体回転可能に結合している。しかしながら、特許文献1に記載の発明は、ロータ軸とワンウェイクラッチとをロータ軸の軸線方向に規制する手段を有していないため、ロータ軸とワンウェイクラッチが分離するという問題がある。
【0005】
本発明は、以上の問題を鑑みてなされたものであって、回転ダンパにおいて、ロータ軸とロータ軸に結合される回転部材との結合構造を簡素かつ確実なものにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、内部に粘性流体が封入されたダンパハウジング(11)と、前記ダンパハウジング内に回転可能に受容されたロータ翼(28)及び前記ロータ翼の回転軸に沿って突設されて前記ダンパハウジングの外部に突出するロータ軸(29)を備えたロータ(12)と、前記ロータ軸の突出端に結合される回転部材(3)とを有する回転ダンパ装置(1)であって、前記回転部材は、前記ロータ軸の突出端が通過する挿通孔(43)と、前記挿通孔の前記ダンパハウジング側と相反する側の孔縁に前記挿通孔を挟んで互いに対向するように立設された一対の規制壁(44)とを有し、前記ロータ軸の突出端は、前記挿通孔を通過した状態で加熱変形されて前記一対の規制壁間の間隙に沿って前記ロータ軸の径方向に突出し、前記挿通孔の孔縁に係合していることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、ロータ軸の突出端を加熱変形させて挿通孔の孔縁に係合させる際に、一対の規制壁がロータ軸の突出端の変形方向を規制するため、ロータ軸の突出端と挿通孔の孔縁との係合形成が容易である。また、変形(突出)方向を径方向の全方位にするのではなく、一部の方向に限定することで、挿通孔の孔縁と係合するロータ軸の突出端を肉厚にすることができ、係合構造の剛性を高めることができる。また、加熱変形したロータ軸の突出端は規制壁とも係合することができるため、規制壁をロータ軸と一体に回転させることができる。
【0008】
本発明の他の側面は、前記回転部材(3)は、内歯車(63)を有する円筒状のアウタ部材(36)と、前記アウタ部材に同軸かつ回転自在に受容され、外周部に2つの凹部(47)を有するインナ部材(35)と、前記凹部のそれぞれに回転可能に受容されて前記内歯車に噛み合う遊星ギヤ(37)とを有し、前記アウタ部材が前記インナ部材に対して正方向に回転する際には、前記遊星ギヤが前記凹部内で回転して前記アウタ部材が前記インナ部材と独立に回転する一方、前記アウタ部材が前記インナ部材に対して負方向に回転する際には、前記凹部の周方向における一側に形成された角部(49)に前記遊星ギヤが係合して前記アウタ部材及び前記インナ部材が一体に回転するワンウェイクラッチであり、前記インナ部材は、その回転軸線に沿って前記挿通孔を有するともに、前記一対の規制壁を有し、前記凹部のそれぞれは、前記一対の規制壁の前記挿通孔と相反する側に配置されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、加熱変形によって径方向外方に突出するロータ軸の突出端と遊星ギヤとをロータ軸の軸線方向において重なる位置に配置することができ、ワンウェイクラッチを小型化することができる。換言すると、規制壁を配置したことによって形成されたデッドスペースに凹部を配置することで、インナ部材の大型化を招かずにロータ軸の突出端が径方向外方に突出するための空間をインナ部材に確保することができる。
【0010】
本発明の他の側面は、前記挿通孔は、断面が四角形に形成され、前記一対の規制壁は前記挿通孔の互いに相対する対辺に沿って立設されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、ロータ軸の突出端は、加熱変形時に一対の規制壁によって導かれ、ロータ軸の径方向において180°異なる2方向に突出するため、ロータ軸とインナ部材との係合状態を確実にすることができる。
【0012】
本発明の他の側面は、前記ロータ軸は、前記挿通孔に回転不能に嵌合可能な形状に形成され、前記規制壁に対向しない部分が径方向外方へと加熱変形されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、ロータ軸が挿通孔に嵌合することによって、ロータ軸と挿通孔とが一体的に回転可能となる。また、ロータ軸の規制壁に対向しない部分を径方向外方へと加熱変形させることで、ロータ軸の挿通孔からの抜け止めがなされ、ロータ軸の加熱変形させる部位を最小化することができる。
【0014】
本発明の他の側面は、内部に粘性流体が封入されたダンパハウジング(11)と、前記ダンパハウジング内に回転可能に受容されたロータ翼(28)及び前記ロータ翼の回転軸に沿って突設されて前記ダンパハウジングの外部に突出するロータ軸(29)を備えたロータ(12)と、前記ロータ軸の突出端に結合される回転部材とを有する回転ダンパ装置(1)の製造方法であって、前記回転部材は、前記ロータ軸の突出端が通過する挿通孔(43)と、前記挿通孔の孔縁に前記挿通孔を挟んで互いに対向するように立設された一対の規制壁(44)とを有し、前記ロータ軸の突出端を、前記規制壁が立設された側と相反する側から前記挿通孔に通過させる工程と、前記突出端を加熱した押圧片(80)によって押圧し、前記突出端を加熱変形させて前記一対の規制壁間の間隙に沿って前記ロータ軸の径方向に突出させ、前記挿通孔の孔縁に係合させる工程とを有することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、ロータ軸を回転部材に対して容易に結合させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上の構成によれば、回転ダンパ装置において、ロータ軸とロータ軸に結合される回転部材とを結合構造を簡素かつ確実なものにすることができる。また、ロータ軸と回転部材との結合構造を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係る回転ダンパ装置の斜視図
【図2】実施形態に係る回転ダンパ装置の平面図
【図3】実施形態に係る回転ダンパ装置の正面図
【図4】実施形態に係る回転ダンパ装置の側面図
【図5】実施形態に係る回転ダンパ装置の底面図
【図6】図2のVI−VI線に沿った断面斜視図
【図7】図2のVII−VII断面図
【図8】図3のVIII−VIII断面図
【図9】ロータ軸の加熱変形工程を示す模式図
【図10】実施形態に係る回転ダンパ装置を適用した蓋付き箱を示す側面図
【図11】図10のXI−XI断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明を適用した実施形態について詳細に説明する。以下の説明では、図中に示す座標軸を基準にして各方向を定める。
【0019】
実施形態に係る回転ダンパ装置1は、図1〜図8に示すように、回転ダンパ2と、回転部材としてのワンウェイクラッチ3とを組み合わせたものである。
【0020】
図6に示すように、回転ダンパ2は、内部に粘性流体が封入されるダンパハウジング11と、ダンパハウジング11内に回転可能に受容されたロータ12とを備えている。ダンパハウジング11は、共に樹脂材料から形成された有底円筒形の底部材14と、底部材14の開口端を塞ぐ円板状の蓋部材15とを備えている。蓋部材15の周縁部には、底部材14の開口端が嵌合可能な環状溝17が凹設されている。底部材14及び蓋部材15は、底部材14の開口端が環状溝17に嵌合した状態で摩擦溶着(振動溶着)によって互いに結合されている。
【0021】
図1に示すように、底部材14の外周面の底部側部分には、径方向外方に張り出した顎部21が周方向に互いに180°の間隔をおいて2つ設けられている。各顎部21の突出端には、底部材14の軸線方向と平行に底部材14の開口端側へと延びる弾性爪22がそれぞれ設けられている。各弾性爪22は、底部材14の径方向外方に突出するともに、弾性爪22の基端側を向く逆止面を備えた爪部23を有しており、弾性変形することによって底部材14の径方向に傾倒可能となっている。
【0022】
図6に示すように、底部材14の底部19の中心部には、底部材14の軸線に沿って蓋部材15側に突出する円柱状の軸25が突設されている。底部材14の中心部には、軸25と同軸の円孔である貫通孔26が形成されている。
【0023】
ロータ12は、円板状のロータ翼28と、ロータ翼28の中心から一側へと軸線に沿って突設されたロータ軸29とを有している。ロータ12は熱可塑性樹脂から形成され、ロータ翼28及びロータ軸29は一体となっている。ロータ軸29は、基端部31が円柱状に形成され、基端部31に連続する先端部32が四角柱状に形成されている。
【0024】
ロータ翼28のロータ軸29が突設された側と相反する側には、断面円形状の有底孔である軸受孔33が凹設されている。ロータ翼28は、底部材14と蓋部材15とによって画成される空間(すなわち、ダンパハウジング11の内部空間)に受容され、軸受孔33において軸25に回転可能に軸支される。このとき、ロータ軸29は、貫通孔26を通過して、先端部32及び基端部31の一部がダンパハウジング11の外部に突出する。この状態で、基端部31の外周面が貫通孔26の孔壁に対向する。
【0025】
ロータ軸29の基端部31と貫通孔26との間には可撓性を有するOリング34が介装されている。Oリング34は、ロータ軸29と貫通孔26との隙間をシールし、ダンパハウジング11の内部空間に充填された、例えばシリコーンオイルといった粘性流体が貫通孔26から流出することを防止している。
【0026】
以上のように構成した回転ダンパ2は、ロータ12がダンパハウジング11に対して回転する際に、粘性流体の流動抵抗によってロータ12に回転抵抗を与える(回転を減衰する)。回転ダンパ2の回転抵抗は、粘性流体の粘度やロータ12の形状を適宜変更することで、調整することができる。
【0027】
図8に示すように、ワンウェイクラッチ3は、ロータ軸29に結合され、ロータ軸29と一体となって回転するインナ部材35と、インナ部材35を相対回転可能に受容するアウタ部材36と、インナ部材35とアウタ部材36との間に介装された一対の遊星ギヤ37とを有している。インナ部材35、アウタ部材36及び遊星ギヤ37は、それぞれ樹脂材料から形成されている。
【0028】
インナ部材35は、一端に底板41を有する一方、他端が開口した筒状を呈する。底板41の下面の中心部には底板41と同軸となる円柱状の支持軸42が突設されている。底板41及び支持軸42の中心部には、両者の軸線に沿って一体に貫通する挿通孔43が形成されている。挿通孔43の断面は四角形状となっている。
【0029】
底板41の上面には、挿通孔43の互いに対向する1組の対辺のそれぞれに沿って規制壁44が上方へと立設されている。規制壁44の側端は、挿通孔43の一辺より外方へと延出している。各規制壁44の両側端に連続する第1壁45及び第2壁46はインナ部材35の径方向外方へと延びている。これらの規制壁44、第1壁45及び第2壁46によって径方向外向きに開口した凹部47が画成されている。2つの凹部47間で、一方の凹部47の第1壁45と、他方の凹部47の第2壁46とは円弧状に延在する円弧壁48によって連続されている。以上のようにして、凹部47は周方向において180°間隔でインナ部材35の側周部に形成されている。
【0030】
図8に示すように、第1壁45及び第2壁46は、それぞれ規制壁44に滑らかに連続し、凹部47の側面の側面を滑らかな曲面に形成している。第1壁45は、インナ部材35の径方向において、円弧壁48の外周面を外挿した弧上まで延出している。一方、第2壁46は、第1壁45に比べて、インナ部材35の径方向への延出長さが約半分程度と短く、延出した端部に角部49を形成している。
【0031】
図7に示すように、規制壁44、第1壁45及び第2壁46の上端同士は、天壁50によって連結されている。すなわち、凹部47の上端は天壁50によって封止されている。一対の円弧壁48の上端の外縁には、周方向に沿って延在する突条52が形成されている。
【0032】
以上のように構成されたインナ部材35は、視点を変えて見ると、底板41、規制壁44、第1壁45、第2壁46及び円弧壁48によって画成された、上方に向けて開口する内部空間55を有している。内部空間55は、挿通孔43に連通している。
【0033】
アウタ部材36は、円筒状の側周壁61と、側周壁61の一端に設けられた円板状の底板62とからなる有底円筒状部材である。側周壁61の内周面には複数の内歯からなる内歯車63が形成されており、外周面には複数の外歯からなる外歯車64が形成されている。また、側周壁61の開口端(底板62が設けられた側と異なる端部)の内周面には、周方向に沿って環状に延在する係止溝65が形成されている。底板62の中心には、インナ部材35の支持軸42が摺接しつつ通過可能な断面円形状の貫通孔66が形成されている。
【0034】
アウタ部材36は、側周壁61及び底板62によって画成される空間にインナ部材35を受容する。このとき、インナ部材35の支持軸42はアウタ部材36の貫通孔66に摺接しつつ挿通され、突条52が係止溝65に嵌合する。突条52は係止溝65内を係止溝65の延在方向に沿って移動可能に嵌合するため、アウタ部材36はインナ部材35に対して軸線方向に抜け止めがなされつつ、周方向に相対回転可能に支持される。このとき、アウタ部材36の内歯車63は、インナ部材35に接触しないように構成されている。
【0035】
一対の遊星ギヤ37のそれぞれは、軸方向に所定の長さを有する平歯車であり、軸線がインナ部材35及びアウタ部材36の軸線と平行になるように、各凹部47に受容されている。遊星ギヤ37は、凹部47に受容された状態において、アウタ部材36の内歯車63に噛み合っている。
【0036】
以上のように構成したワンウェイクラッチ3は、図8に示すように上方から見た状態を基準とすると、インナ部材35に対してアウタ部材36が正方向(反時計回り)に回転する際には、アウタ部材36の内歯車63によって回転させられる遊星ギヤ37は、凹部47を第1壁45側に移動する。このとき、遊星ギヤ37は、第1壁45に当接することによって、第1壁45方向への移動が規制され、第1壁45上を摺接しつつ、空転する。第1壁45はインナ部材35の径方向外方に比較的延出しているため、遊星ギヤ37は、第1壁45と円弧壁48との境界部に噛み合うことなく、第1壁45上を円滑に空転する。そのため、アウタ部材36が回転してもインナ部材35は回転しない。
【0037】
一方、インナ部材35に対してアウタ部材36が負方向(時計回り)に回転する際には、アウタ部材36の内歯車63によって回転させられた遊星ギヤ37は、第2壁46側へと移動して第2壁46の角部49と噛み合い、回転不能となる。これにより、インナ部材35は、遊星ギヤ37を介してアウタ部材36に係合し、アウタ部材36と一体に回転する。
【0038】
以上のように、ワンウェイクラッチ3は、インナ部材35に対してアウタ部材36が正方向に相対回転しようとする際には、インナ部材35及びアウタ部材36は相対回転することができ、インナ部材35に対してアウタ部材36が負方向に相対回転しようとする際には、インナ部材35及びアウタ部材36が一体となって回転する。
【0039】
以上のように構成された回転ダンパ2とワンウェイクラッチ3との結合構造およびその形成方法について説明する。最初に、回転ダンパ2のロータ軸29の先端部32を、ワンウェイクラッチ3のインナ部材35の挿通孔43を通過させ、内部空間55内に突出させる。先端部32及び挿通孔43は、共に断面が四角形に形成されており、互いに嵌合する形状となっているため、ロータ軸29とインナ部材35とはロータ軸29の軸線回りの相対回転が規制され、一体回転するようになる。
【0040】
次に、図9に示すように、加熱された押圧片80を使用して、ロータ軸29の先端部32を変形させる。押圧片80は、インナ部材35の内部空間55に突入可能な金属製の棒状部材であり、その先端に一対の突片81を備えている。一対の突片81は、先端部32の互いに対向する対辺に対向可能なように、所定の間隔をおいて平行に配設されている。押圧片80は、先端部32を変形可能な温度に昇温した後に、先端部32の規制壁44に対向しない一対の対辺に一対の突片81が対向するように配置し、ロータ軸29の軸線方向から先端部32に押し付ける。これにより、先端部32は、突片81に加熱されるともに押圧され、変形する。このとき、先端部32の両脇には規制壁44が存在するため、加熱によって可撓性が高められた部分は、突片81に押圧され、ロータ軸29の径方向であって規制壁44が存在しない方向に突出し、凸部71を形成する。すなわち、一対の規制壁44は、凸部71の突出方向をガイドする。以上の形成方法によって、凸部71は、ロータ軸29の径方向外方であって互いに相反する向きに2つ形成される。各凸部71は、挿通孔43の周縁部に係合し、ロータ軸29の挿通孔43からの離脱を阻止する。これにより、回転ダンパ2とワンウェイクラッチ3とが結合され、回転ダンパ装置1が形成される。
【0041】
以上のように構成した回転ダンパ装置1では、ダンパハウジング11を固定した状態で、インナ部材35に対してアウタ部材36が正方向に回転する際には、アウタ部材36が回転してもインナ部材35は回転せず、回転ダンパ2による回転抵抗(減衰力)は発生しないが、インナ部材35に対してアウタ部材36が負方向に回転する際には、アウタ部材36とともにインナ部材35及びロータ軸29が回転して、回転ダンパ2による回転抵抗(減衰力)が発生する。
【0042】
本実施形態の回転ダンパ2とワンウェイクラッチ3との結合構造では、ロータ軸29の互いに対向する対辺部分のみを加熱変形させるようにしたため、押圧片80の押圧力及び加熱量を低減することができる。また、一対の規制壁44によって、凸部71の突出方向を一部に規制したため、凸部71を肉厚に形成することができるとともに、凸部71の形成操作が容易になる。
【0043】
図10及び図11に示すように、回転ダンパ装置1の使用例を示す。回転ダンパ装置1は、例えば、カップホルダ等の蓋付き箱90に使用される。蓋付き箱90は、上方開口の箱91と、箱91の開口を開閉自在に閉塞する平板状の蓋92とを有している。蓋92は、その側辺部に主面に対して垂直に立設された扇形の耳部93を有し、耳部93に設けられた軸94によって箱91の側壁95に回転可能に支持されている。耳部93の弧状の周縁部には、ラック96が形成されている。なお、図示しないが、蓋付き箱90には、蓋92が開口を閉塞した状態に維持するためのロック装置と、蓋92が開口を開く方向に回転付勢するばねが設けられている。
【0044】
回転ダンパ装置1は、箱91の側壁95に形成された貫通孔である取付孔98に取り付けられている。取付孔98は、図示しないが円形状の主部と、主部の周縁から径方向外方へと切り欠かれた2つの切欠部とを有している。2つの切欠部は、主部の中心を対称軸として点対称位置に設けられている。回転ダンパ装置1は、取付孔98の主部に挿入される。このとき、顎部21が取付孔98の周縁に係合するとともに、弾性爪22が取付孔98の切欠部に係合して回転ダンパ装置1は取付孔98に支持される。この状態で、回転ダンパ装置1のアウタ部材36の外歯車64は、ラック96に噛み合う。
【0045】
以上のように、回転ダンパ装置1を蓋付き箱90に適用した場合には、蓋92がばねに付勢力を受けて開く際には、ラック96によってアウタ部材36が負方向に回転し、インナ部材35及びロータ軸29が共に回転し、回転ダンパ2が回転抵抗を生じさせ、蓋92の開速度が低減する。一方、蓋92を閉じる際には、ラック96によってアウタ部材36が正方向に回転し、インナ部材35及びロータ軸29は回転せず、回転ダンパ2が回転抵抗を生じさせることはない。
【0046】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。特に、本実施形態では回転ダンパ2にワンウェイクラッチ3を組み合わせた構成としたが、ワンウェイクラッチ3の代えて歯車やプーリ等の回転部材としてもよい。この場合には、回転部材に挿通孔43及び規制壁44を設ければよい。また、規制壁44の形状は、適宜変更可能であり、例えばコ字状にして挿通孔43の一方を残して囲むようにしてもよい。また、押圧片80は様々な形状のものを使用することができる。また、本実施形態では、ロータ軸29の先端部32を四角柱状とし、挿通孔43を四角形状としたが、挿通孔42をI形や楕円形とし、先端部32を挿通孔43に回転不能に嵌合する形状としてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…回転ダンパ装置、2…回転ダンパ、3…ワンウェイクラッチ、11…ダンパハウジング、12…ロータ、28…ロータ翼、29…ロータ軸、31…基端部、32…先端部、35…インナ部材、36…アウタ部材、37…遊星ギヤ、43…挿通孔、44…規制壁、45…第1壁、46…第2壁、47…凹部、48…円弧壁、49…角部、50…天壁、55…内部空間、63…内歯車、64…外歯車、71…凸部、80…押圧片、81…突片、90…蓋付き箱、91…箱、92…蓋
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に粘性流体が封入されたダンパハウジングと、
前記ダンパハウジング内に回転可能に受容されたロータ翼及び前記ロータ翼の回転軸に沿って突設されて前記ダンパハウジングの外部に突出するロータ軸を備えたロータと、
前記ロータ軸の突出端に結合される回転部材と
を有する回転ダンパ装置であって、
前記回転部材は、前記ロータ軸の突出端が通過する挿通孔と、前記挿通孔の前記ダンパハウジング側と相反する側の孔縁に前記挿通孔を挟んで互いに対向するように立設された一対の規制壁とを有し、
前記ロータ軸の突出端は、前記挿通孔を通過した状態で加熱変形されて前記一対の規制壁間の間隙に沿って前記ロータ軸の径方向に突出し、前記挿通孔の孔縁に係合していることを特徴とする回転ダンパ装置。
【請求項2】
前記回転部材は、内歯車を有する円筒状のアウタ部材と、前記アウタ部材に同軸かつ回転自在に受容され、外周部に2つの凹部を有するインナ部材と、前記凹部のそれぞれに回転可能に受容されて前記内歯車に噛み合う遊星ギヤとを有し、前記アウタ部材が前記インナ部材に対して正方向に回転する際には、前記遊星ギヤが前記凹部内で回転して前記アウタ部材が前記インナ部材と独立に回転する一方、前記アウタ部材が前記インナ部材に対して負方向に回転する際には、前記凹部の周方向における一側に形成された角部に前記遊星ギヤが係合して前記アウタ部材及び前記インナ部材が一体に回転するワンウェイクラッチであり、
前記インナ部材は、その回転軸線に沿って前記挿通孔を有するともに、前記一対の規制壁を有し、前記凹部のそれぞれは、前記一対の規制壁の前記挿通孔と相反する側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の回転ダンパ装置。
【請求項3】
前記挿通孔は、断面が四角形に形成され、前記一対の規制壁は前記挿通孔の互いに相対する対辺に沿って立設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の回転ダンパ装置。
【請求項4】
前記ロータ軸は、前記挿通孔に回転不能に嵌合可能な形状に形成され、前記規制壁に対向しない部分が径方向外方へと加熱変形されていることを特徴とする請求項3に記載の回転ダンパ装置。
【請求項5】
内部に粘性流体が封入されたダンパハウジングと、前記ダンパハウジング内に回転可能に受容されたロータ翼及び前記ロータ翼の回転軸に沿って突設されて前記ダンパハウジングの外部に突出するロータ軸を備えたロータと、前記ロータ軸の突出端に結合される回転部材とを有する回転ダンパ装置の製造方法であって、
前記回転部材は、前記ロータ軸の突出端が通過する挿通孔と、前記挿通孔の孔縁に前記挿通孔を挟んで互いに対向するように立設された一対の規制壁とを有し、
前記ロータ軸の突出端を、前記規制壁が立設された側と相反する側から前記挿通孔に通過させる工程と、
前記突出端を加熱した押圧片によって押圧し、前記突出端を加熱変形させて前記一対の規制壁間の間隙に沿って前記ロータ軸の径方向に突出させ、前記挿通孔の孔縁に係合させる工程と
を有することを特徴とする回転ダンパ装置の製造方法。
【請求項1】
内部に粘性流体が封入されたダンパハウジングと、
前記ダンパハウジング内に回転可能に受容されたロータ翼及び前記ロータ翼の回転軸に沿って突設されて前記ダンパハウジングの外部に突出するロータ軸を備えたロータと、
前記ロータ軸の突出端に結合される回転部材と
を有する回転ダンパ装置であって、
前記回転部材は、前記ロータ軸の突出端が通過する挿通孔と、前記挿通孔の前記ダンパハウジング側と相反する側の孔縁に前記挿通孔を挟んで互いに対向するように立設された一対の規制壁とを有し、
前記ロータ軸の突出端は、前記挿通孔を通過した状態で加熱変形されて前記一対の規制壁間の間隙に沿って前記ロータ軸の径方向に突出し、前記挿通孔の孔縁に係合していることを特徴とする回転ダンパ装置。
【請求項2】
前記回転部材は、内歯車を有する円筒状のアウタ部材と、前記アウタ部材に同軸かつ回転自在に受容され、外周部に2つの凹部を有するインナ部材と、前記凹部のそれぞれに回転可能に受容されて前記内歯車に噛み合う遊星ギヤとを有し、前記アウタ部材が前記インナ部材に対して正方向に回転する際には、前記遊星ギヤが前記凹部内で回転して前記アウタ部材が前記インナ部材と独立に回転する一方、前記アウタ部材が前記インナ部材に対して負方向に回転する際には、前記凹部の周方向における一側に形成された角部に前記遊星ギヤが係合して前記アウタ部材及び前記インナ部材が一体に回転するワンウェイクラッチであり、
前記インナ部材は、その回転軸線に沿って前記挿通孔を有するともに、前記一対の規制壁を有し、前記凹部のそれぞれは、前記一対の規制壁の前記挿通孔と相反する側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の回転ダンパ装置。
【請求項3】
前記挿通孔は、断面が四角形に形成され、前記一対の規制壁は前記挿通孔の互いに相対する対辺に沿って立設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の回転ダンパ装置。
【請求項4】
前記ロータ軸は、前記挿通孔に回転不能に嵌合可能な形状に形成され、前記規制壁に対向しない部分が径方向外方へと加熱変形されていることを特徴とする請求項3に記載の回転ダンパ装置。
【請求項5】
内部に粘性流体が封入されたダンパハウジングと、前記ダンパハウジング内に回転可能に受容されたロータ翼及び前記ロータ翼の回転軸に沿って突設されて前記ダンパハウジングの外部に突出するロータ軸を備えたロータと、前記ロータ軸の突出端に結合される回転部材とを有する回転ダンパ装置の製造方法であって、
前記回転部材は、前記ロータ軸の突出端が通過する挿通孔と、前記挿通孔の孔縁に前記挿通孔を挟んで互いに対向するように立設された一対の規制壁とを有し、
前記ロータ軸の突出端を、前記規制壁が立設された側と相反する側から前記挿通孔に通過させる工程と、
前記突出端を加熱した押圧片によって押圧し、前記突出端を加熱変形させて前記一対の規制壁間の間隙に沿って前記ロータ軸の径方向に突出させ、前記挿通孔の孔縁に係合させる工程と
を有することを特徴とする回転ダンパ装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−180917(P2012−180917A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45380(P2011−45380)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
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