説明

回転トランス型レゾルバ

【課題】本発明は、輪状ロータトランスコアと輪状ステータトランスコアが互いに対向するギャップ面積を広くすることにより、回転トランスの磁気結合効率を向上させることを目的とする。
【解決手段】本発明による回転トランス型レゾルバは、各輪状ステータコア部材(5,6)の内径側(B)に軸方向(A)に沿って内方に突出する各輪状突起(30,31)は互いに対向配置され、各輪状突起(30,31)は輪状ロータトランスコア(13b)の外周面(32)と輪状ボビン(7)のボビン内周面(7a)との間に位置し、ギャップ面積を広くするようにした構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転トランス型レゾルバに関し、特に、輪状ロータトランスコアと輪状ステータトランスコアが互いに対向するギャップ面積を広くすることにより、回転トランスの磁気結合効率を向上させるための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の回転トランス型レゾルバとしては、例えば、特許文献1に開示された構成を図4として挙げることができる。
すなわち、図4において符号1で示されるものは、全体形状が筒形をなすケースであり、このケース1の内壁1aには、輪状に形成された回転トランス2のステータトランス5Aを形成するための輪状ステータトランスコア3が設けられ、この輪状ステータトランスコア3に対して軸方向Aに沿って離間した状態でレゾルバステータ4が設けられている。
【0003】
前記輪状ステータトランスコア3は、二体に形成された第1、第2輪状ステータトランスコア部材5,6から構成されており、この輪状ステータトランスコア3の内側には、輪状ボビン7を介してステータトランス巻線8が設けられている。
また、前記レゾルバステータ4には、レゾルバステータ巻線9が設けられている。
【0004】
前記ケース1の軸方向Aに沿う両側に設けられた第1、第2軸受10,11間には、回転軸12が回転自在に設けられており、この回転軸12には、ロータトランス巻線13aを有する輪状ロータトランスコア13bからなるロータトランス13とレゾルバロータ巻線14aを有するレゾルバロータ14とが互いに離間した状態で設けられている。
尚、前述の輪状ステータトランスコア3とロータトランス13とは、互いに同芯配置で対応すると共に前記回転トランス2を構成し、前記レゾルバステータ4とレゾルバロータ14とによってレゾルバ部15が構成されている。
【0005】
前述の構成において、例えば、周知の2相励磁(ステータ励磁)の一相出力方式の場合、前記レゾルバステータ巻線9の図示しない励磁巻線へ励磁信号を供給した状態で、回転軸12が回転した時に、前記レゾルバロータ巻線14aに誘起された回転検出信号は、レゾルバロータ巻線14aから図示しない信号線を介してロータトランス巻線13aに伝達され、例えば、周知の電磁結合によってロータトランス13からロータトランス巻線13a及びステータトランス巻線8を経てリード線20を介して外部に取り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−75197号公報
【特許文献2】特開平8−189805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の回転トランス型レゾルバは、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、回転トランスの磁気効率を上げるために、輪状ステータトランスコアの内周面と輪状ロータトランスコアの外周面との間のギャップ距離を極力小さくするようにして解決していたが、このギャップ距離を小さくするためには、各トランスコアの加工精度を上げて同芯度を向上させることであるが、高い加工精度を向上させるには多大のコストアップとなり、さらに、レゾルバ全体の剛性を上げて外力によるギャップ変動を避けるためには、軸受等の各部品のコストアップを避けることは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による回転トランス型レゾルバは、ケースに設けられた一対の軸受により回転自在に設けられた回転軸と、前記回転軸に互いに離間して設けられたレゾルバロータ及びロータトランスと、前記ケースの内壁に互いに離間して設けられたレゾルバステータ及びステータトランスと、を備え、前記ロータトランスとステータトランスによって回転トランスを形成する回転トランス型レゾルバにおいて、前記ステータトランスは、前記ケースに設けられ互いに対向する第1、第2輪状ステータ部材からなる輪状ステータトランスコアと、前記輪状ステータトランスコアの内側に断面コ字型をなす輪状ボビンを介して設けられたステータトランス巻線とからなり、前記ロータトランスは、前記回転軸に設けられ断面コ字型をなす輪状ロータトランスコアと、前記輪状ロータトランスコアの内側に設けられたロータトランス巻線とからなり、前記各輪状ステータコア部材の内径側に軸方向に沿って内方に突出す第1、第2輪状突起は互いに対向配置され、前記各輪状突起は、前記輪状ロータトランスコアの外周面と前記輪状ボビンのボビン内周面との間に位置している構成であり、また、前記各輪状突起の先端の内端面は、前記輪状ロータトランスコアの各外周面の各内端より軸方向に沿って内側に突出している構成であり、また、前記輪状ボビンのボビン内周面の両側には、前記各輪状突起の突起内周面が接している構成であり、また、前記輪状ボビンのボビン内周面の両側には、外側へ向けて下がるボビンテーパ面が形成され、前記各輪状突起の内面に形成された突起テーパ面は前記ボビンテーパ面に接している構成である。
【発明の効果】
【0009】
本発明による回転トランス型レゾルバは、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、ケースに設けられた一対の軸受により回転自在に設けられた回転軸と、前記回転軸に互いに離間して設けられたレゾルバロータ及びロータトランスと、前記ケースの内壁に互いに離間して設けられたレゾルバステータ及びステータトランスと、を備え、前記ロータトランスとステータトランスによって回転トランスを形成する回転トランス型レゾルバにおいて、前記ステータトランスは、前記ケースに設けられ互いに対向する第1、第2輪状ステータ部材からなる輪状ステータトランスコアと、前記輪状ステータトランスコアの内側に断面コ字型をなす輪状ボビンを介して設けられたステータトランス巻線とからなり、前記ロータトランスは、前記回転軸に設けられ断面コ字型をなす輪状ロータトランスコアと、前記輪状ロータトランスコアの内側に設けられたロータトランス巻線とからなり、前記各輪状ステータコア部材の内径側に軸方向に沿って内方に突出す第1、第2輪状突起は互いに対向配置され、前記各輪状突起は、前記輪状ロータトランスコアの外周面と前記輪状ボビンのボビン内周面との間に位置していることにより、各トランスコア間のギャップ距離を狭くしなくても、従来よりも各トランスコアが対向するギャップ面積を広く取ることができ、各部品の加工精度を必要以上に上げることなく、磁気効率を向上させることができる。
また、前記各輪状突起の先端の内端面は、前記輪状ロータトランスコアの各外周面の各内端より軸方向に沿って内側に突出していることにより、各トランスコア間のギャップ面積を大幅に向上させることができる。
また、前記輪状ボビンのボビン内周面の両側には、前記各輪状突起の突起内周面が接していることにより、薄い各輪状突起を安定して輪状ボビンに保持することができる。
また、前記輪状ボビンのボビン内周面の両側には、外側へ向けて下がるボビンテーパ面が形成され、前記各輪状突起の内面に形成された突起テーパ面は前記ボビンテーパ面に接していることにより、前述と同様に、薄い輪状突起を安定して輪状ボビンに保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による回転トランス型レゾルバを示す断面図である。
【図2】図1の要部の拡大断面図である。
【図3】図2の他の形態を示す断面図である。
【図4】従来の回転トランス型レゾルバを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、輪状ロータトランスコアと輪状ステータトランスコアが互いに対向するギャップ面積を広くすることにより、回転トランスの磁気結合効率を向上させるようにした回転トランス型レゾルバを提供することを目的とする。
【実施例】
【0012】
以下、図面と共に本発明による回転トランス型レゾルバの好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明する。
図1において、符号1で示されるものは、全体形状が筒形をなすケースであり、このケース1の内壁1aには、輪状に形成された回転トランス2のステータトランス5Aを形成するための輪状ステータトランスコア3が設けられ、この輪状ステータトランスコア3に対して軸方向Aに沿って離間した状態でレゾルバステータ4が設けられている。
【0013】
前記輪状ステータトランスコア3は、二体に形成された第1、第2輪状ステータトランスコア部材5,6から構成されており、この輪状ステータトランスコア3の内側には、輪状ボビン7を介してステータトランス巻線8が設けられている。
また、前記レゾルバステータ4には、レゾルバステータ巻線9が設けられている。
【0014】
前記ケース1の軸方向Aに沿う両側に設けられた第1、第2軸受10,11間には、回転軸12が回転自在に設けられており、この回転軸12には、ロータトランス巻線13aを有する輪状ロータトランスコア13bからなるロータトランス13とレゾルバロータ巻線14aを有するレゾルバロータ14とが互いに離間した状態で設けられている。
尚、前述の輪状ステータトランスコア3とロータトランス13とは、互いに同芯配置で対応すると共に前記回転トランス2を構成し、前記レゾルバステータ4とレゾルバロータ14とによってレゾルバ部15が構成されている。
【0015】
従って、前記ステータトランス5Aは、前記ケース1に設けられ互いに対向する前記第1、第2輪状ステータコア部材5,6からなる輪状ステータトランスコア3と、前記輪状ステータトランスコア3の内側に断面コ字型をなす輪状ボビン7を介して設けられたステータトランス巻線8とからなり、前記ロータトランス13は、前記回転軸12に設けられ断面コ字型をなす輪状ロータトランスコア13bと、前記輪状ロータトランスコア13bの内側に設けられたロータトランス巻線13aとから構成されている。
【0016】
前記各輪状ステータコア部材5,6の内径側Bに軸方向Aに沿って内方に突出する第1、第2輪状突起30,31は、図2に示されるように、互いに対向配置され、前記各輪状突起30,31は前記輪状ロータトランスコア13bの外周面32と前記輪状ボビン7のボビン内周面7aとの間に位置している。
【0017】
前記各輪状突起30,31の先端の内端面30a,31aは、前記輪状ロータトランスコア13bの各外周面32の各内端33より軸方向Aに沿って内側に突出している。
また、前記輪状ボビン7のボビン内周面7aの両側には、前記各輪状突起30,31の突起内周面34が接している。
また、前記輪状ボビン7のボビン内周面7aの両側には、外側へ向けて下がるように形成されたボビンテーパ面35が形成され、前記各輪状突起30,31の内面に形成された突起テーパ面36は前記ボビンテーパ面35に接している。
【0018】
従って、前述の図2の構成のように、各輪状突起30,31の形状が突起テーパ面36を有して輪状ボビン7のボビン内周面7aのボビンテーパ面35に接する構成の場合も、図3の構成のように、各輪状突起30,31の形状がテーパ面等を有しない断面板状をなし、かつ、輪状ボビン7のボビン内周面7aがテーパ面等を有しない断面で直線状の構成の場合も、何れも、各内端面30a,31aが輪状ロータトランスコア13bの内端33よりも内方へ突出しているため、図4の従来構成と比較すると、各トランスコア3,13b間のギャップ面積を広く取ることができ、従来よりも、回転トランスにおける磁気効率を大幅に向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明による回転トランス型レゾルバは、回転トランスの磁気効率を向上させることにより、高い回転検出精度を有する分野に適用することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 ケース
1a 内壁
2 回転トランス
3 輪状ステータトランスコア
4 レゾルバステータ
5 第1輪状ステータコア部材
5A ステータトランス
6 第2輪状ステータコア部材
A 軸方向
B 内径側
7 輪状ボビン
7a ボビン内周面
8 ステータトランス巻線
9 レゾルバステータ巻線
10 第1軸受
11 第2軸受
12 回転軸
13 ロータトランス
13a ロータトランス巻線
13b 輪状ロータトランスコア
14 レゾルバロータ
14a レゾルバロータ巻線
15 レゾルバ部
30 第1輪状突起
30a 内端面
31 第2輪状突起
31a 内端面
32 外周面
33 内端
34 突起内周面
35 ボビンテーパ面
36 突起テーパ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース(1)に設けられた一対の軸受(10,11)により回転自在に設けられた回転軸(12)と、前記回転軸(12)に互いに離間して設けられたレゾルバロータ(14)及びロータトランス(13)と、前記ケース(1)の内壁(1a)に互いに離間して設けられたレゾルバステータ(4)及びステータトランス(5A)と、を備え、前記ロータトランス(13)とステータトランス(5A)によって回転トランス(2)を形成する回転トランス型レゾルバにおいて、
前記ステータトランス(5A)は、前記ケース(1)に設けられ互いに対向する第1、第2輪状ステータコア部材(5,6)からなる輪状ステータトランスコア(3)と、前記輪状ステータトランスコア(3)の内側に断面コ字型をなす輪状ボビン(7)を介して設けられたステータトランス巻線(8)とからなり、前記ロータトランス(13)は、前記回転軸(12)に設けられ断面コ字型をなす輪状ロータトランスコア(13b)と、前記輪状ロータトランスコア(13b)の内側に設けられたロータトランス巻線(13a)とからなり、
前記各輪状ステータコア部材(5,6)の内径側(B)に軸方向(A)に沿って内方に突出す第1、第2輪状突起は互いに対向配置され、前記各輪状突起(30,31)は、前記輪状ロータトランスコア(13b)の外周面(32)と前記輪状ボビン(7)のボビン内周面(7a)との間に位置していることを特徴とする回転トランス型レゾルバ。
【請求項2】
前記各輪状突起(30,31)の先端の内端面(30a,31a)は、前記輪状ロータトランスコア(13b)の各外周面(32)の各内端(33)より軸方向(A)に沿って内側に突出していることを特徴とする請求項1記載の回転トランス型レゾルバ。
【請求項3】
前記輪状ボビン(7)のボビン内周面(7a)の両側には、前記各輪状突起(30,31)の突起内周面(34)が接していることを特徴とする請求項1又は2記載の回転トランス型レゾルバ。
【請求項4】
前記輪状ボビン(7)のボビン内周面(7a)の両側には、外側へ向けて下がるボビンテーパ面(35)が形成され、前記各輪状突起(30,31)の内面に形成された突起テーパ面(36)は前記ボビンテーパ面(35)に接していることを特徴とする請求項1又は2記載の回転トランス型レゾルバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−220398(P2012−220398A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88025(P2011−88025)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】