説明

回転フィーダを用いたスピンドル自動塗装方法および装置

【課題】公転する複数の被塗装物を同時に塗装するスピンドル塗装は、塗膜の均一性を保つために正転と逆転の塗装が必要な場合、生産性を向上させる。
【解決手段】複数の被塗装物を回転テーブルに載置して公転させながら同時に塗装を行うスピンドル塗装において、回転テーブルを円周上に配置した回転フィーダを使用して順次間欠移動させ、2箇所の回転テーブルで正回転と逆回転で回転させて塗装を行い、他の箇所で被塗装物の着荷と脱荷を行うようにし、被塗装物を載置した回転テーブルを順次と正回転位置に送り、塗装後、逆回転位置に移動して逆回転で塗装を完了させ、順次正回転での塗装と逆回転での塗装を併行させる。
装置はY字形の3箇所に回転テーブルを設けたフィーダを2ヶ所の塗装位置で正回転と逆回転させる回転装置を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
被塗装物を回転するテーブルに円周上に配置して公転させながら正回転と逆回転を行って塗装する回転スピンドル塗装の生産性向上にかかる技術である。
【背景技術】
【0002】
被塗装物を多量に塗装する場合、回転するスピンドルに複数の被塗装物を円周上に載置できる回転テーブルを設け、被塗装物を公転させながら塗装を行う自動スピンドル塗装が多く用いられている。
この方法によれば次々と公転しながら送られてくる被塗装物に対して塗装箇所に応じたスプレーガンを数箇所にもしくは塗装ロボット等により必要な塗装域で噴霧されるように配置し、それぞれのスプレーガンが決められた箇所を塗装することによって前記複数の被塗装物を同時に多数塗装することができる。
【0003】
前記スピンドル塗装方法は、公転する被塗装物に塗装するため、回転方向に対しスプレーガンに向かってくる塗装面と遠ざかる塗装面が存在し、塗膜の不均一が生じることになる。これらの塗装が使用される多くの被塗装物は、近年の携帯電話、音響機器、光学機器等の比較的小形のもので、同時に高級感を求められ、高価な塗料と共に塗装の高品質が要求されている。したがってスピンドル塗装においては正回転塗装と逆回転塗装を合わせて行うことも必要な条件となっている。
【0004】
これらの条件のもと、スピンドル塗装を、高い生産性で行う方法としてはコンベアラインに正回転の塗装領域と逆回転の塗装域をそれぞれ設け、それぞれの塗装域を通過させることで塗装を完了させる方法がある。(例えば特許文献1参照)
しかし生産量がそれほど多くなく、大規模な塗装設備を採用することができない場合は、塗装位置に回転テーブルを備えたスピンドル装置を設置し、正回転で塗装した後、逆に回転させてから再び塗装を行う方法が採られている。したがって回転を変更する間は塗装作業ができないロスタイムとなり、1つの塗装サイクルが長くなる結果となっている。
【0005】
また塗装工程には回転テーブルに載置するための着荷作業と塗装を完了した被塗装物を取り外す脱荷作業が伴うことになるが、高い生産性を上げるために使用されるスピンドル塗装では、それぞれの条件の中で、全ての点でロスタイムを減じ、効率の高い方法で塗装できることが要求され、一般的には前後の処理工程の関係もあり、被塗装物を多数載置した回転テーブル毎、着荷および脱荷が行われることが多い。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-33887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
いずれにしても被塗装物を多数公転させながら、同時に塗装を行うスピンドル塗装においては被塗装物の公転方向を逆転させることが必要であり、方向転換する場合のロスタイムを押さえ、1つの塗装サイクルにおける塗装時間を短くすることによって生産性を高めることが必要となる。
スピンドル塗装においても、着脱位置で載置した被塗装物を搬送コンベアで塗装位置に搬送し、塗装後着脱位置に戻す設備が使用されることも多く、本発明はこのような条件に於いて効率的に塗装を行い生産性を向上させることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、多数の被塗装物を回転テーブルの円周上に載置して公転させながら同時に塗装を行うスピンドル塗装において、前記の回転テーブルは回転フィーダの回転円周上に等角度に分割した3ヶ所に配置されて間欠回転移動させ、そのうち2箇所を塗装位置とし正回転と逆回転で回転させて塗装を行わせ、他の箇所で被塗装物を着荷と脱荷を行うようにする。着脱位置で被塗装物を載置した回転テーブルを順次と正回転位置に送り、塗装後、逆回転位置に移動して逆回転で塗装を完了させ、これを順次繰返し行い、正回転での塗装と逆回転での塗装を同時に行う。
【0009】
前記方法を実施するための装置は間欠回転駆動する回転フィーダの回転円周上に、等角度に分割した3ヶ所に回転テーブルを配置し、回転フィーダの回転移動によって前記3ヶ所のうち予め定めた2ヶ所の位置に移動した回転テーブルが、それぞれ正回転と逆回転で回転される回転装置が設けられる。
回転装置は定位置に設けた回転駆動手段が、回転フィーダの回転によって移動してきた回転テーブルの回転軸と係合して回転する構成、もしくはそれぞれの回転テーブルに直接設けられた回転装置が回転フィーダの停止位置によって予め定められた回転で制御される手段をもつている。

【発明の効果】
【0010】
本発明は上記したように、回転フィーダ上の回転テーブルに載置された多数の被塗装物が回転フィーダによって正回転での塗装位置と逆回転での塗装位置を経て脱荷位置に戻ってくる間にスピンドル塗装に最適な塗装を完了させることができ、かつ順次載置される回転テーブルに対して連続的に塗装が行われるため、逆回転での塗装が行われている間に次の回転テーブルの被塗装物が正回転で塗装されているためこれまでの約半分の塗装時間で可能となり、生産性を大幅に向上させることができる。
【0011】
また従来のように被塗装物を正回転での塗装後、回転テーブルの回転を逆回転させるまでの塗装位置におけるスプレーガンおよび塗装ロボット等の待機時間が必要なくなり、回転フィーダが移動する間の最小限の時間で済む。更に塗装中に他の回転テーブルの脱荷および着荷を行うことができるので、これまでの往復搬送していた場合に比べ着脱時間の短縮も可能となり、この点でも生産性の向上が図れ、塗装コストの削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を実施する場合の回転フィーダの平面図である。
【図2】図1の回転フィーダの側面図である。
【図3】スピンドル塗装の工程を時間軸で見た説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の塗装方法を実施するための装置の一例を図1と図2により説明する。図1はスピンドル塗装を行う塗装領域に置かれた塗装ロボットと被塗装物の搬送装置であるフィーダ、および塗料ミスト排気装置を構成する塗装室の平面図を示し、図2は側面図を示している。
【0014】
塗装ロボット1は別に設けた制御装置からの信号により作動アームの先端に取り付けられたスプレーガン2を自在に動かしながら吹き付けを行うことができる装置であるが、被塗装物やその塗装条件によっては必ずしもこれに限定されること無く、より単純な自動塗装装置に代えることもできる。本実施例の場合塗装ロボットは前記制御装置によって被塗装物の搬送制御やスプレーガンの噴霧制御等を総合的に制御することができ、自動塗装として効率的な運用を図ることができるために使用されている。
【0015】
塗装ロボット1は2台設置されており、その中央部に回転フィーダ3が設置されている。被塗装物10を回転、搬送する回転フィーダ3は、Y形に3方に延びたアーム4の先端部に、同じ円周上に等分割された位置に回転テーブル5をそれぞれ設けられ、この場合お互いの角度が120度としている。これらの回転テーブル5の位置は回転フィーダ3に設けられた駆動装置6により前記スプレーガン2が塗装するそれぞれの位置A,Bと被塗装物を着脱する位置Cに設定されるように間欠駆動制御される。それぞれの塗装位置では、回転テーブル5の駆動を行う回転装置が設けられ、第1の塗装位置Aでは回転テーブルが正回転で、第2の塗装位置Bでは逆回転で回転させるように構成されている。符号9で示されるのは塗装室である。
【0016】
回転テーブルが設定された塗装位置に移動したときに回転させる手段は、それぞれの塗装位置に別途回転装置を設けておき、回転フィーダ3の回転により各回転テーブルが移動して設定位置にきたときに、その回転装置と係合して自動的に回転が伝わるように構成すればよく、例えば定位置に設置した回転駆動手段に回転ドラムを設けて回転させ、一方回転テーブルに回転軸を設けて、この回転軸が前記回転ドラムに接触したときに摩擦伝動によって回転させる構造が採用される。このような手段はいくつか知られており、設置される装置の状況によって選択される。
【0017】
また回転装置をプログラム制御によって前記各塗装位置での回転を制御することも可能である。この場合、回転テーブルに直接回転装置を設け、回転フィーダの作動と連動し、それぞれの塗装位置もしくは着脱位置に回転テーブルがきた時に、それぞれの回転もしくは停止が予め設定された制御装置の作動信号によって駆動制御されるように構成される。
【0018】
一方着脱位置では被塗装物の取り外しと装着のため、回転テーブルは停止状態を維持させる。したがって第2の塗装位置Bから移動する間に何らかの制動装置を経て着脱位置に送り込まれることが望ましい。そして被塗装物の着脱は、被塗装物の条件にもよるが通常は回転テーブルごとの着脱となる。この場合、これに限定されるものではないが、回転フィーダ3に設けられたスピンドル7と回転テーブル5が、差し込み等により容易に着脱できるように構成されている。また塗装位置に到着する前に回転の開始位置を設定して安定した回転状態で塗装位置に設定されるように構成することによって、直ちに塗装が可能になりロスタイムを無くし、塗装品質を安定させることができる。
【0019】
これらの構成により実際に行う塗装を以下詳細に説明する。
着脱位置Cで被塗装物10を載置した回転テーブル5が、回転スピンドルに装着され、回転フィーダ3に駆動されて第1の塗装位置Aに送り込まれる。ここでは回転テーブル5が矢印の方向に正回転し、塗装ロボット1に搭載したスプレーガン2によって設定された塗装が施される。次いで回転フィーダ3が再び作動し第1の塗装位置の回転テーブルを第2の塗装位置に移動させる。第2の塗装位置Bでは回転テーブル5が逆回転された状態で回転され塗装が行われる。被塗装物はこれによって塗装面全体が均一な塗装に仕上げられることになり、元の着脱位置Cに移動して脱荷され、乾燥等の次工程に送られる。
【0020】
本発明では3ヶ所の回転テーブル5を使用するため、第1の塗装位置で塗装している間に、次の回転テーブル5には新たな被塗装物が載置され、先の被塗装物が第2の塗装位置で逆回転での塗装が行われるときには、第1の塗装位置に移動し正回転での塗装が同時に行われることになり、図3に示すように順次塗装が行われる。
【0021】
これまで塗装位置と着脱位置を往復移動する搬送手段で、塗装位置で正回転と逆回転を行って塗装していた場合、1方向の塗装で30秒を必要とすれば塗装を完了するのに、1つの回転テーブルの被塗装物を塗装する時間だけで単純に1分を要することになる。
【0022】
本発明では図3に示されるとおり、塗装時間だけでなく、塗装中に着脱位置Cで待機している回転テーブルより塗装完了した被塗装物を脱荷して、新たな被塗装物を載置することができるため、着脱時間が節減できる。また従来同じ位置で回転を変更していた場合には、停止、逆転に要する時間を要し、この間塗装ロボット(スプレーガン)の待機時間となるが、本発明ではこのロスタイムをなくすことができる。
【0023】
このようにスピンドル塗装で必要とされる回転テーブルの正回転と逆回転をそれぞれの塗装位置で行うようにしたので、塗装の中断される時間は回転スピンドルが塗装位置を移動する間であり、その時間を最小限に留めることができ作業効率を高め生産性を向上させることができる。
【0024】
Y形とした回転フィーダによって塗装位置が2ヶ所で行われる塗装は、被塗装物が載置された回転テーブルに対して、同時にかつ対称する塗装が可能となることによって、スプレーガンを1つのステーの両側に、それぞれ逆回転の回転テーブルに載置された被塗装物に対応する位置へ取り付けることにより、同期作動させることで一台の塗装ロボットないしは自動塗装機によって同時に塗装する陽に構成することができる。
【0025】
本実施例では回転フィーダを製作上の容易性とコストの面で、アームを伸ばしたY形としているが、必ずしもこれに限定されることは無く、回転テーブル上に等分割された回転テーブルを円周上に設けることでも同様の目的を達成することができる。また着荷位置と脱荷位置を別々に設け、4等分割によって回転テーブルを円周上に設けることによっても同様の効果を得ることが可能である。

【符号の説明】
【0026】
1 塗装ロボット
2 スプレーガン
3 回転フィーダ
4 アーム
5 回転テーブル
6 駆動装置
7 スピンドル
10 被塗装物

















【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の被塗装物を回転テーブルの円周上に載置して公転させながら同時に塗装を行うスピンドル塗装において、被塗装物を塗装位置に搬送する回転フィーダの回転円周上に等角度に分割した3ヶ所に、前記回転テーブルを配置して間欠回転移動させ、前記回転テーブルが停止した位置のうち2箇所で正回転と逆回転で回転テーブルを回転させて塗装を行い、他の箇所で被塗装物の着荷と脱荷を行うようにし、被塗装物を載置した回転テーブルを順次と着脱位置から正回転位置、逆回転位置に移動させ、順次、正回転での塗装と逆回転での塗装を同時に行うスピンドル自動塗装方法。
【請求項2】
前記正回転と逆回転位置での塗装を、それぞれの被塗装物に対応する位置に配置し作動するスプレーガンを、共通する作動竿に設けて同時に塗装を行う請求項1の塗装方法。
【請求項3】
駆動装置によって間欠回転駆動する回転フィーダの回転円周上に、等角度に分割した3ヶ所に回転テーブルを配置し、前記回転フィーダの回転移動によって前記3ヶ所のうち予め定めた2ヶ所の位置に移動した回転テーブルが、それぞれ正回転と逆回転で回転される回転装置を設け、該回転装置は定位置に設けた回転駆動手段と、回転フィーダの回転移動によって定位置に移動した回転テーブルの回転軸が係合した時に、伝動して回転テーブルが回転する機構を備えたスピンドル自動塗装装置。
【請求項4】
駆動装置によって間欠回転駆動する回転フィーダの回転円周上に、等角度に分割した3ヶ所に回転テーブルを配置し、前記回転フィーダの回転移動によって前記3ヶ所のうち予め定めた2ヶ所の位置に移動した回転テーブルが、それぞれ正回転と逆回転で回転される回転装置を設け、該回転装置は、前記それぞれの回転テーブルに直結する駆動装置を設け、回転フィーダの停止位置と同期して回転を制御する制御手段によって駆動されるスピンドル自動塗装装置。























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−167354(P2010−167354A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11613(P2009−11613)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(390028495)アネスト岩田株式会社 (224)
【Fターム(参考)】