説明

回転ポンプ

【課題】回転軸の交換を容易するとともに、交換コストの低減を図る。
【解決手段】回転ポンプ1は、円柱形のポンプ室Pを有するポンプケーシング2と、軸方向の位置が周方向に沿って周期的に変化する波形翼32を備えたロータ3であって、波形翼32の周縁と頂点をそれぞれポンプ室Pの周面と両端面に摺接させてポンプ室Pに収容したロータ3と、ロータ3に連結した回転軸7をポンプケーシング2に支承するベアリング51と、ベアリング51とロータ3の間で回転軸7をシールするシール部材84とを備えている。回転軸7はベアリング51とシール部材84の間で分割されてねじ結合してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として粉体の混入したスラリー状の流体の圧送に使用する回転ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の回転ポンプとしては、円柱形のポンプ室を有するポンプケーシングと、軸方向の位置が周方向に沿って周期的に変化する波形翼を備えたロータであって、波形翼の周縁と頂点をそれぞれポンプ室の周面と両端面に摺接させてポンプ室に収容したロータと、ポンプ室の周面に開口すべくポンプケーシングに設けた給排出路と、波形翼にゲートを係合させて給排出路の間を遮断し、ロータの回転にともなってゲートを軸方向に往復動させるゲート機構とを備えたものが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−37456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この回転ポンプでは、回転軸の一端部にロータを連結するとともに、回転軸の他端部をベアリングを介してポンプケーシングに支持してある。また、ポンプ室から漏出した液体がベアリングに達するのを防止するため、ベアリングとロータの間にシール部材を設けて回転軸のシールを行なっている。
【0004】
ところで、ポンプ室から漏れ出した液体が有機溶剤を含んでいる場合、シール部材は膨潤や溶解の虞のないフッ素樹脂(PTFE等)製のものを用いる必要がある。また、細かい固体粒子が液体に含まれている場合もあるが、いずれの場合も、シール部材との擦接により回転軸の摩耗が生じる。磨耗がある程度進行した段階で回転軸を新しいものと交換しなければならなくなる。しかし、回転軸の他端部にはベアリングが設けてあるため、回転軸の交換に際してベアリングの取り外しと取り付けを行わなければならず、作業が面倒である。また、回転軸の一部が磨耗するだけなのに、回転軸の全部を交換しなければならず、コスト的にも問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑み、回転軸の交換が容易で、交換コストの低減が可能な回転ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、円柱形のポンプ室を有するポンプケーシングと、軸方向の位置が周方向に沿って周期的に変化する波形翼を備えたロータであって、波形翼の周縁と頂点をそれぞれポンプ室の周面と両端面に摺接させてポンプ室に収容したロータと、該ロータに連結した回転軸をポンプケーシングに支承するベアリングと、該ベアリングとロータの間で回転軸をシールするシール部材と、ポンプ室の周面に開口すべくポンプケーシングに設けた給排出路と、波形翼にゲートを係合させて給排出路の間を遮断し、ロータの回転にともなってゲートを軸方向に往復動させるゲート機構とを備えた回転ポンプにおいて、回転軸をベアリングとシール部材の間で分割するとともに、分割した回転軸を着脱自在に結合したことを特徴とする。
【0007】
分割した回転軸のうちの一方は小径の雄螺子部を形成するとともに、他方は雌螺子部を有する段付き孔を形成し、他方の回転軸の段付き孔で一方の回転軸をガイドしながら雄螺子部を雌螺子部に螺入するのが好ましい。
【0008】
ポンプケーシングのポンプ室に面する部分を着脱自在なリッドで構成するとともに、回転軸の先端部にロータをナット部材で締結固定し、該ナット部材の円周部を嵌合させるガイド部をリッド内面に設けるのが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回転軸の交換に際し、ベアリングで支持された部分から磨耗した部分を取り外し、新しいものを取り付ければよいので、ポンプケーシングに対してベアリングを着脱する手間が省け、作業が容易になる。
【0010】
また、回転軸の磨耗した部分だけの交換で済み、コスト的にも有利になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の回転ポンプの断面図、図2は図1のA−A線断面図である。
この回転ポンプ1は、円柱形のポンプ室Pを有するポンプケーシング2と、ポンプ室P内に収容されたロータ3とを備えている。
【0012】
ポンプケーシング2は、有底円筒形のケーシング本体21と、ケーシング本体21のポンプ室Pに面する部分を着脱自在にしたリッド22とで構成されており、ケーシング本体21の端部にリッド22をボルト23で締結することにより、内部に略円柱形状の中空部であるポンプ室Pが形成される。ケーシング本体21には、ポンプ室Pの周面P3に開口してポンプ室Pに液体を供給する供給路24と、ポンプ室Pの周面P3に開口してポンプ室Pから液体を排出する排出路25とが形成されている(図2参照)。これら供給路24及び排出路25は、断面円形に形成されており、その内径は、ポンプ室Pの周面P3の高さよりも小さく形成されている。また、ポンプケーシング2の供給路24の接続部と排出路25の接続部との間には、ポンプ室Pの上下の端面P1,P2と直交する方向に長手のゲート室Gが設けられている。
【0013】
ロータ3は、図3に示すように、回転軸7を挿通するハブ部31と、そのハブ部31から全周にわたって半径方向外方に同じ長さだけ延び且つ軸方向位置が位相とともに連続的に変化する波形翼32とを有している。波形翼32は、軸方向の高さが最も高い凸頂部32aと高さが最も低い凹頂部32bとを交互にそれぞれ2つずつ持つ完全サイクルを有している(図6参照)。なお、ハブ部31の中心には後述する回転軸7を挿入するための中心孔33が形成されている。
【0014】
ポンプ室Pの上下の端面P1,P2は、ロータ3の波形翼32の凸頂部32a及び凹頂部32bの頂点がそれぞれ摺接するように形成されている。また、ポンプ室Pの周面P3は、波形翼32の周縁32eが摺接するように形成されている。
【0015】
供給路24と排出路25の間には、波形翼32によって画成される供給路24側の空間と排出路25側の空間とを遮断するゲート機構4が設けられている(図6参照)。このゲート機構4は、ゲート41と、ゲート41をガイドするゲートガイド42とで構成されている。ゲート41は、図4に示すように、長方形状の板部材の下方中央に、ロータ3の波形翼32に係合する切り欠き41aが設けられている。ゲートガイド42は、ゲート室Gに気密に嵌入する略四角柱形状部材に、ゲート41を軸方向にガイドするための溝状のガイド部42a(軸方向)と、ポンプ室Pの供給路24側と排出路25側とを連通させるための連通部42b(周方向)とが形成されている。
【0016】
ゲート41の切り欠き41aは、ロータ3の波形翼32に係合して、波形翼32の表裏両面及び周縁32eに気密に接触し、ロータ3の回転による波形翼32の軸方向位置の変位に伴って、ゲート41がゲートガイド42のガイド部42aに案内されて軸方向に往復動する。これにより、ゲート41が常にゲートガイド42の連通部42bを遮断するので、ポンプ室Pの供給路24側の空間と排出路25側の空間とが遮断される。
【0017】
ポンプケーシング2は、円筒状の軸箱部5をケーシング本体21の端部に備え、この軸箱部5にボルト61で締結された取付板6を介して床板等に設置される。軸箱部5の内部にベアリング51を設けてロータ3の回転軸7を軸支してある。具体的には、軸箱部5にベアリング51を嵌入し、回転軸7にナット52を螺着してベアリング51の内側部材に締結固定してある。なお、軸箱部5はボルト61でケーシング本体21に固定してある。
【0018】
回転軸7は、その先端部をロータ3のハブ部31にスプライン結合し、その先端の雄螺子部7aにナット部材81を螺着してロータ3を固定してある。さらに、リッド22の内面にリング状のガイド部材82を固設してナット部材81の円周部81aを嵌合させてある。なお、回転軸7は図外のモータで駆動される。
【0019】
ケーシング本体21には、回転軸7を挿通するスリーブ83が固設してあり、その内部にシール部材84を配設して回転軸7をシールしてある。これによって、ポンプ室Pから漏出した液体がベアリング51に達するのを防止している。
ところで、回転軸7はベアリング51とシール部材84の間で分割してねじ結合してある。すなわち、シール部材84側の分割軸70は小径の雄螺子部70aを分割面に形成する一方、ベアリング51側の分割軸71は雌螺子部71aを有する段付き孔71bを分割面に形成してある。そして、分割軸71の段付き孔71bで分割軸70をガイドしながら雄螺子部70aを雌螺子部71aに螺入してある。
【0020】
次に、この回転ポンプ1の作用について説明する。
図外のモータの駆動により回転軸7が回転(図2において反時計回り)すると、回転軸7に接続されているロータ3がポンプ室P内で回転する。そして、この回転の開始と同時に、供給路24に対して液体が供給され、ロータ3のポケット空間、すなわち、ロータ3の2つの凸頂部32a間の波型翼表面32cとポンプ室Pの上端面P1とで囲まれた空間及び、ロータ3の2つの凹頂部32b間の波型翼裏面32dとポンプ室Cの下端面P2とで囲まれた空間に液体が充填される。こうして充填された液体は、ロータ3の回転によりポンプ室Pを通って排出路25側に移送される。なお、図6はロータ3の波形翼32、供給路24、排出路25、ポンプ室Pおよびゲート41を模式的に示した図で、本来円筒状、円形状の各部を平面上に展開し、動作をわかりやすくしたものである。
【0021】
ところで、回転軸7はシール部材84との擦接により摩耗するため、磨耗がある程度進行した段階で回転軸7を新しいものと交換しなければならない。回転軸7は、上述のようにベアリング51とシール部材84の間で分割してねじ結合してあるので、交換に際しては、ベアリング51側の、磨耗した部分70だけを新しいものと取り換えればよい。
【0022】
すなわち、ケーシング本体21からリッド22を取り外し、回転軸7の先端のナット部材81を取り外し、ボルト61を緩めてケーシング本体21と軸箱部5の結合を解除する。その後、回転軸7から波形翼32を取り外し、分割軸71から分割軸70を取り外し、新しい分割軸70を分割軸71に取り付ければよい。つまり、ベアリング51側の、磨耗していない分割軸71は軸箱部5から取り外さなくてもよいので、ケーシング本体21に対してベアリング51を着脱する手間が省け、作業が容易になる。また、シール部材84側の、磨耗した分割軸70だけの交換で済むので、コスト的にも有利になる。
【0023】
さらに、分割軸70,71の結合に際して、分割軸71の段付き孔71bで分割軸70をガイドしながら雄螺子部70aを雌螺子部71aに螺入するようにしてあるので、回転軸7として必要な同芯度の確保が容易になる。
【0024】
また、リッド22にガイド部材82を固設して回転軸7の先端を支持しているので、キャビテーションの発生によりロータ3に不均一な荷重がかかった場合でも、回転軸7の曲げがガイド部材82で規制され、ロータ3がポンプハウジング2に押し付けられなくなり、波形翼32の摩耗や傷の発生が防げる。
【0025】
ところで、シール部材84との擦接による回転軸7の磨耗を防止するためには、回転軸7にカラーを装着しておけばよいが、その場合、次のような問題が生じる。
すなわち、回転軸7として必要な剛性を確保するためには、回転軸7のカラー装着部分だけを小径にすることはできないので、回転軸7の直径が事実上カラーの肉厚分だけ大きくなる。いま、ポンプハウジング2の大きさを一定に保とうとすると、波形翼32の直径も一定に保たなければならず、回転軸7の直径が大きくなった分だけ波形翼32の有効径が小さくなり、ロータ3の1回転当たりの吐出量が小さくなる。ここで、従前と同量の吐出量を確保しようとすると、波形翼32の回転速度を大きくする必要があるため、キャビテーションが発生し易くなるばかりでなく、シール部材84の摩耗も激しくなる。
【0026】
なお、本発明は以上の実施形態のものに限定されるものではなく、必要に応じて種々変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の回転ポンプの断面図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】(a)はロータの断面図、(b)はロータの側面図。
【図4】(a)はゲートの側面図、(b)はゲートの平面図、(c)はゲートの正面図。
【図5】(a)がゲートガイドの側面図、(b)はゲートの正面図。
【図6】波形翼のポンプ作用を説明する図。
【符号の説明】
【0028】
1 回転ポンプ
2 ポンプハウジング
3 ロータ
4 ゲート機構
5 軸箱部
7 回転軸
21 ケーシング本体
22 リッド
32 波形翼
32a 凸頂部
32b 凹頂部
32e 周縁
41 ゲート
42 ゲートガイド
51 ベアリング
52 ナット
70 分割軸
70a 雄螺子部
71 分割軸
71a 雌螺子部
71b 段付き孔
81 ナット部材
81a 円周部
82 ガイド部材
83 スリーブ
84 シール部材
P ポンプ室
G ゲート室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱形のポンプ室を有するポンプケーシングと、軸方向の位置が周方向に沿って周期的に変化する波形翼を備えたロータであって、波形翼の周縁と頂点をそれぞれポンプ室の周面と両端面に摺接させてポンプ室に収容したロータと、該ロータに連結した回転軸をポンプケーシングに支承するベアリングと、該ベアリングとロータの間で回転軸をシールするシール部材と、ポンプ室の周面に開口すべくポンプケーシングに設けた給排出路と、波形翼にゲートを係合させて給排出路の間を遮断し、ロータの回転にともなってゲートを軸方向に往復動させるゲート機構とを備えた回転ポンプにおいて、回転軸をベアリングとシール部材の間で分割するとともに、分割した回転軸を着脱自在に結合したことを特徴とする回転ポンプ。
【請求項2】
分割した回転軸のうちの一方は小径の雄螺子部を形成するとともに、他方は雌螺子部を有する段付き孔を形成し、他方の回転軸の段付き孔で一方の回転軸をガイドしながら雄螺子部を雌螺子部に螺入することを特徴とする請求項1に記載の回転ポンプ。
【請求項3】
ポンプケーシングのポンプ室に面する部分を着脱自在なリッドで構成するとともに、回転軸の先端部にロータをナット部材で締結固定し、該ナット部材の円周部を嵌合させるガイド部をリッド内面に設けたことを特徴とする請求項2に記載の回転ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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