説明

回転ロール

【課題】クラックなどの部分的な破損が生じたとしても、完全には折損し難い、耐久性の優れたシャフト部を備えた回転ロールを簡単かつ低コストで提供する。
【解決手段】ロール本体11と、該ロール本体11の少なくとも一端に嵌入され、ロール本体11に固定されたシャフト部12とを備えた回転ロール10において、シャフト部12は、外層材13と、該外層材13内に軸方向に沿って配設され、前記外層材13よりも引張り強度の大きな材料からなる芯材14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば樹脂フィルムなどの長尺なシート状物の搬送、巻取りなどに使用される産業用の回転ロールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば樹脂フィルムなどのシート状物の製造工程や加工工程においては、巻き取りロール、ガイドロール、ニップロールなどの各種回転ロールが採用されている。また、鋼鈑の熱間圧延工程などでも、鋼鈑を搬送する搬送ロールなどが用いられている。
【0003】
このような産業用の回転ロールは、一般に、回転体であるロール本体と、その両端部に位置するシャフト部とを備えた構成になっている。このような回転ロールのシャフト部においては、使用期間の経過とともに、磨耗や金属疲労による折損が認められる場合があった。このようなシャフト部の折損は、回転ロールの落下につながり、安全上好ましくない。
そこで、例えば特許文献1には、ロール軸部(シャフト部)のクラッチ部を特定の材質にして、クラッチ部の耐摩耗性などを改善する方法が記載されている。また、特許文献2には、オンラインでのクラック(亀裂)検査を導入し、ロール軸部の疲労折損を予見する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−304612号公報
【特許文献2】特開2010−162580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、クラッチ部を黒鉛鋳鉄で鋳継ぎして、ロールを製造する方法であり、製造に手間がかかる。
また、特許文献2に記載の方法は、オンラインでクラック検査する必要があり、検査装置を別途用意する必要があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、クラックなどの部分的な破損が生じたとしても、完全には折損し難い、耐久性の優れたシャフト部を備えた回転ロールを簡単かつ低コストで提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の回転ロールは、ロール本体と、該ロール本体の少なくとも一端に嵌入され、前記ロール本体に固定されたシャフト部とを備えた回転ロールにおいて、前記シャフト部は、外層材と、該外層材内に軸方向に沿って配設され、前記外層材よりも引張り強度の大きな材料からなる芯材とを備えることを特徴とする。
前記芯材は、前記シャフト部の軸線上の位置、および、前記軸線に対して互いに対称な位置の少なくとも一方に配設されていることが好ましい。
前記シャフト部は、穿設形成された前記外層材の中空部に、前記芯材が内挿されて得られたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、クラックなどの部分的な破損が生じたとしても、完全には折損し難い、耐久性の優れたシャフト部を備えた回転ロールを簡単かつ低コストで提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の回転ロールの一例を示す(a)部分断面側面図と、(b)(a)のI−I’線に沿う断面図である。
【図2】本発明の回転ロールの他の一例を示す径方向断面図である。
【図3】本発明の回転ロールの他の一例を示す径方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の回転ロールについて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態例として、樹脂フィルムを延伸する縦延伸機に備えられたニップロールなどの回転ロール10を図示するものであり、(a)部分断面側面図と、(b)(a)のI−I’線に沿う断面図(径方向断面図)である。
【0011】
この例の回転ロール10は、円筒状のロール本体11と、ロール本体11と軸線が一致するように、ロール本体11の長手方向の両端に設けられた一対のシャフト部12とを備えて構成されている。
ロール本体11は、例えば、機械構造用炭素鋼鋼管(STKM)などの材質から形成されている。
【0012】
各シャフト部12は、ロール本体11の端部に、長手方向の途中までが嵌入された状態でロール本体11に固定されている。この例では、各シャフト部12のうち、ロール本体11の端部に嵌入され、ロール本体11の内周面に固定された固定部Fは、ロール本体11の端部から外方に突出している突出部Pよりも、径が大きく形成されている。突出部Pは、この回転ロール10が例えば巻き取りロールなどとして工場などに設置される場合において、図示略の軸受けに軸支される部分である。
【0013】
このシャフト部12は、シャフト部12の外表面を含む部分を構成する外層材13と、外層材13内に軸方向に沿って配設された1本の芯材14とを備えている。この例のシャフト部12は、長手方向に沿って中空部13aが穿設形成された管状の外層材13の該中空部13aに、1本の棒状の芯材14が内挿され、芯材14が固定されることにより形成されている。芯材14は、シャフト部12の軸線上の位置に、シャフト部12の全長に亘って配設されている。
そして、芯材14は、外層材13よりも引張り強度の大きな材料から形成されている。
【0014】
外層材13と芯材14の材質は、芯材14の引張り強度が外層材13よりも大きくなるように、組み合わされていればよい。例えば、外層材13の材質を炭素鋼とし、芯材14の材質をチタン合金とする組み合わせなどが挙げられる。炭素鋼およびチタン合金には、組成が異なる複数種がそれぞれ存在するため、芯材14の引張り強度が外層材13よりも大きくなるようにこれらを適宜選択し、組み合わせればよい。その他には、外層材13の材質を炭素鋼とし、芯材14の材質をクロムモリブデン鋼とする組み合わせなどが挙げられる。
【0015】
このようにシャフト部12が、このシャフト部12の外表面を含む部分を構成する外層材13と、外層材13内に軸方向に沿って配設され、外層材13よりも引張り強度の大きな材料からなる芯材14とを備えた2重構造になっていると、シャフト部12にクラックなどの部分的な破損が発生したとしても、完全には折損し難い、耐久性の優れたシャフト部12とすることができる。完全には折損し難いシャフト部12を備えることによって、回転ロール10の落下を未然に防止することができる。
【0016】
すなわち、仮にシャフト部がこのような芯材を具備しておらず、単一の部材から形成されている場合に、シャフト部において金属疲労などにより部分的な破損が一旦生じてしまうと、その破損は連続的に進行、拡大し、その結果、シャフトが完全に折損し、回転ロールが軸受けから落下してしまう可能性がある。
これに対して、図1の例のように、外層材13の内側に、外層材13よりも引張り強度の大きな材料からなる芯材14が配設されたシャフト部12の場合には、金属疲労などによる破損は、まず、芯材14よりも引張り強度の小さい外層材13において、外表面のクラックなどとして生じる。このように外層材13に生じたクラックは、シャフト部12の中心側に向かって拡大し、外層材13と芯材14との境界部分にまでは到達しやすいものと考えられる。しかしながら、芯材14は、外層材13よりも引張り強度が大きい材料から形成されているために、外層材13と芯材14との境界部分にまで到達したクラックが、引張り強度の大きな芯材14にまで、連続的に及ぶことはない。
よって、作業者は、外層材13に生じたクラックを目視などで確認した後、クラックが芯材14にまで及ぶ前に、回転ロール10の稼動を停止することができる。これにより、芯材14までが完全に折損し、回転ロール10が軸受けから落下してしまうことを未然に防止することができる。
【0017】
図1の例のシャフト部12は、例えば、芯材を備えていない従来の中実部材からなるシャフトに、ドリルなどで中空部13aを穿設形成して外層材13とし、ついで、形成された中空部13aに、中空部13aとほぼ同径の芯材14を内挿する方法などで製造できる。中空部13aと芯材14とは、いわゆる「焼き嵌め」などにより固定することが好ましい。
このような製造方法は、既存のシャフトを改良する方法であるため、簡単かつ低コストで、耐久性の優れたシャフト部12を得ることができる。
【0018】
図1では、シャフト部12として、1本の芯材14がシャフト部12の軸線上の位置に配設された形態を例示したが、芯材14は1本に限定されず、複数本配設されていてもよい。
例えば、図2に示すように、シャフト部12の軸線に対して互いに対称な位置に偶数本の芯材14が配設された形態や、図3に示すように、シャフト部12の軸線に対して互いに対称な位置に配設された偶数本の芯材14と、シャフト部12の軸線上の位置に配設された1本の芯材14との合計奇数本の芯材14を備えた形態などが挙げられる。図2および図3のように複数本の芯材14を配置すると、シャフト部12の耐久性がより向上する。また、これら図示例では、シャフト部12の軸線に対して芯材14が対称配置されているため、芯材14の配設による偏心のおそれもない。また、各芯材14の径は、偏心が生じない限り、同径でなくてもよい。
【0019】
なお、図1では、シャフト部12として、ロール本体11の端部に嵌入されてロール本体11に固定された固定部Fの径が、ロール本体11の端部から外方に突出している突出部Pの径よりも大きい形態を例示したが、これらは同径であってもよく、特に制限はない。
【0020】
また、図1では、回転ロール10として、ロール本体11の両方の端部に一対のシャフト部12が設けられた両持ち式の回転ロールを例示したが、ロール本体の一方の端部のみにシャフト部が設けられた片持ち式の回転ロールであってもよい。
また、ロール本体11としては、全長に亘って円筒状のものを例示したが、シャフト部12が少なくとも一端に嵌入され得る形態である限り、その形態には何ら制限はない。
【0021】
また、回転ロール10の用途としては、例えば樹脂フィルムなどの長尺なシート状物の製造工程や加工工程において使用される巻き取りロール、ガイドロール、ニップロールや、鋼鈑の熱間圧延工程などで使用される鋼鈑搬送用の搬送ロールなど各種産業ロールが挙げられ、特に制限はない。
【符号の説明】
【0022】
10 回転ロール
11 ロール本体
12 シャフト部
13 外層材
13a 中空部
14 芯材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール本体と、該ロール本体の少なくとも一端に嵌入され、前記ロール本体に固定されたシャフト部とを備えた回転ロールにおいて、
前記シャフト部は、外層材と、該外層材内に軸方向に沿って配設され、前記外層材よりも引張り強度の大きな材料からなる芯材とを備えることを特徴とする回転ロール。
【請求項2】
前記芯材は、前記シャフト部の軸線上の位置、および、前記軸線に対して互いに対称な位置の少なくとも一方に配設されていることを特徴とする請求項1の回転ロール。
【請求項3】
前記シャフト部は、穿設形成された前記外層材の中空部に、前記芯材が内挿されて得られたことを特徴とする請求項1または2に記載の回転ロール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−132487(P2012−132487A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283218(P2010−283218)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000106726)シーアイ化成株式会社 (267)
【Fターム(参考)】