説明

回転伝達装置及び振動装置

【課題】容易に着磁でき且つ製造コストが安価な回転伝達装置及びその回転伝達装置を用いた振動装置を提供する。
【解決手段】軸周りを回転駆動する原動歯車25と、原動歯車25に歯合する従動歯車27とを備えた回転伝達装置1において、原動歯車25及び従動歯車27の各歯35は、各々軸方向の一方側面31と他方側面32とに異なる磁極を有し且つ各歯35は周方向で同じ磁極としてあり、原動歯車25と従動歯車24の噛み合い位置で互いに対向する歯面が同じ磁極としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車や摩擦車等の原動部材の回転を従動部材に伝達する回転伝達装置及びその回転伝達装置を用いた振動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる回転伝達装置において、特許文献1には、原動部材及び従動部材の外周部に周方向で異なる磁極を交互に形成し、原動部材と従動部材とで互いに異なる磁極を対向することにより、原動部材の回転を従動部材に伝達することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−51580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、原動部材及び従動部材には、各外周部に周方向で異なる磁極を交互に形成しているので、これらの部材を製造するときには、例えば、形成する磁極に対応した方向の着磁が必要になり、多数の方向の着磁が必要になるから、着磁に手間がかかり又は特殊な着磁機を用いて着磁しなければならないという不都合があった。
この為、原動部材及び従動部材等の部品の製造コストが高くなるという問題がある。
そこで、本発明は、容易に着磁でき且つ製造コストが安価な回転伝達装置及びその回転伝達装置を用いた振動装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、軸周りを回転駆動する原動歯車と、原動歯車に歯合する従動歯車とを備えた回転伝達装置において、原動歯車及び従動歯車の各歯は、各々軸方向の一方側面と他方側面とに異なる磁極を有し且つ各歯は周方向で同じ磁極としてあり、原動歯車と従動歯車の噛み合い位置で互いに対向する歯面が同じ磁極であることを特徴とする回転伝達装置である。
尚、原動歯車と従動歯車には、ラックとピニオンや、傘歯車等を含む。
【0006】
請求項2に記載の発明は、互いに外周面を対向して配置した原動車と従動車とを備え、従動車が原動車の回転に従動して各々の軸周りを回転する回転伝達装置において、原動車及び従動車は各々、非磁性体の基材と、複数のマグネットとを備え、基材は円柱形状であり、軸線と平行な貫通孔が基材の外周に沿って複数形成してあり、基材の前記貫通孔にマグネットを挿入してあり、原動車及び従動車の各マグネットは軸方向の一方側部と他方側部とで異なる磁極にしていることを特徴とする回転伝達装置である。
【0007】
請求項3に記載の発明は、モータ本体と、モータ本体に設けたモータシャフトと、偏芯錘と、偏芯錘を固定した錘シャフトと、錘シャフトの軸受け、請求項1に記載の回転伝達装置とを備え、モータシャフトと錘シャフトとは平行に配置して且つモータ本体と偏芯錘とを並列に配置してあり、モータシャフトと錘シャフトとは回転伝達機構により連結してモータシャフトの回転を錘シャフトに伝達していることを特徴とする振動装置である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、原動歯車及び従動歯車は、その軸方向における一側面と他側面とに異なる磁極を形成すれば良いので、歯車の製造はその一側面と他側面とを異なる磁極とする一方向の着磁であるから、特殊な着磁機を用いることなく容易に着磁できる。
これにより、製造コストが安価な回転伝達装置を提供できる。
【0009】
また、本発明による回転伝達装置は、互いに歯合する歯は、同じ磁極としているから、互いに反発する磁極により、互いに接触せずに又は接触して回転する。
本願発明によれば、歯車の歯は磁極の反発により、非接触か又は接触する場合でも歯車の接触圧を小さくでき、歯車の磨耗や接触音を低減できる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、磁力により反発する力で原動車に対して従動車を追従させて回転する。
また、本実施発明による回転伝達装置は、原動車と従動車とは互いに磁力により引張又は反発する力で追従するから、原動車と従動車とは非接触か接触する場合でも接触圧を小さくでき、原動車と従動車の磨耗や接触音を低減できる。
【0011】
原動車及び従動車は、既存の棒状や角柱状等のマグネットを基材に形成した挿入孔に挿入することで、容易に製造できる。
また、原動車及び従動車の製造において、汎用のマグネットを用いることができ、特殊な着磁機を用いることなく製造でき、製造コストが安価な回転伝達装置を提供できる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の作用効果を奏する振動装置を提供できる。
更に、請求項3に記載の発明によれば、偏芯錘はモータ本体と並列に設けているので、偏芯錘の長さを長くとることができ、その分偏芯錘の体積を大きくすることができる。したがって、偏芯錘が回転したときの径を小さくしても偏芯錘の重量を大きくできるので、高さ方向の設置スペースを小さくしながら、充分な振動を得ることができる。
【0013】
モータ本体の長さ方向の寸法を大きくすることなく、偏芯錘の長さを錘シャフトに沿って長くできるので、錘シャフトにかしめ固定する寸法を大きく取ることができる。したがって、偏芯錘を錘シャフトに強固に固定することができる。
モータシャフトの回転は伝達機構により錘シャフトに伝達する構成であるから、伝達機構の回転伝達比を変えることにより、偏芯錘の回転数を調整できる。したがって、振動の大きさの調整が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施の形態に係る回転伝達装置に用いる歯車の図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は斜視図である。
【図2】第1実施の形態に係る回転伝達装置を用いた振動装置の分解斜視図である。
【図3】図2に示す回転伝達装置を組立てた状態の振動装置の斜視図である。
【図4】第1実施の形態に係る回転伝達装置の歯合状態を示す斜視図である。
【図5】第2実施の形態に係る回転伝達装置の歯合状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の第3実施の形態に係る回転伝達装置の正面図である。
【図7】本発明の第3実施の形態に係る回転伝達装置に用いる原動車及び従動車の図であり、(a)は斜視図、(b)は分解斜視図である。
【図8】本発明の変形例に係る回転伝達装置に用いる原動車及び従動車の図であり、(a)は斜視図、(b)は分解斜視図、(c)はマグネットの側面図である。
【図9】本発明の変形例に係る回転伝達装置の正面図である。
【図10】本発明の変形例に係る回転伝達装置の正面図である。
【図11】本発明の変形例に係る回転伝達装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、まず、添付図面の図1〜図4を参照して、本発明の第1実施の形態について説明する。第1実施の形態に係る回転伝達装置1は、携帯電話等に用いられて着信時に振動を発生する振動装置3に用いたものである。
この振動装置3は、図2及び図3に示すように、ケース5と、ケース5内に保持されたモータ7と偏芯錘9とを備えている。
【0016】
ケース5は、前側ケース部5aと後側ケース部5bとに分割されており、これらを嵌合固定して環状のケース5を形成している。
ケース5の前側壁11には2つの軸受け13a、13bが並んで設けてあり、前側壁に対向する後側壁15にも軸受け17a、17bが設けてある。
【0017】
モータ7は、モータ本体19とモータシャフト21とを備えており、モータシャフト21はモータ本体19内に圧入して装着されている。
偏芯錘9は、モータ本体19の横に並んで配置してあり、本実施の形態ではモータ本体19と略同じ長手方向の寸法としてある。偏芯錘9は半円柱形状を成し、その平面部の中央部で錘シャフト23にかしめ固定してある。
【0018】
モータシャフト21及び錘シャフト23の各前側端及び後側端は、各々対応する軸受け13a、13b、17a、17bに回転自在に保持されている。
また、モータシャフト21及び錘シャフト23の各前側端及び後側端には、各々本実施の形態にかかる回転伝達装置1が設けてあり、モータシャフト21の回転を錘シャフト23に伝達している。
【0019】
前側と後側の各回転伝達装置1は同じ構成であるから、前側の回転伝達装置1について説明し、後側の回転伝達装置については、前側の回転伝達装置と同一の作用効果を奏する部分には同一の符号を付することにより、その部分の詳細な説明を省略する。モータシャフト21には原動歯車25が固定してあり、原動歯車25はモータシャフト21の回転と共に回転する。錘シャフト23には従動歯車27が固定してあり、原動歯車25と歯合している。尚、図2において、符号29で示すのはワッシャである。
【0020】
図1(b)(c)に示すように、原動歯車25及び従動歯車27は、磁石材料で作られ、各々S極とN極とに磁化してあり、歯車25、27の一方側面31をN極として他方側面32をS極としてある。したがって、各歯車25、27の歯35もその一方側をN極として他方側をS極としてある。
図4に示すように、これらの歯車25、27の歯35、35は、互いに離間し且つ噛み合った状態において同極が対向する。即ち、互いに歯合した歯車25、27の歯35、35では、N極どうし、S極どうしが互いに対向している。
【0021】
本実施の形態にかかる回転伝達装置1では、原動歯車25及び従動歯車27とは互いに歯合する歯35、35において、同じ磁極、即ち、N極とN極、S極とS極とが対向しており且つ同じ磁極により互いに反発しあうようになっている。
【0022】
次に、本発明の実施の形態に係る振動装置3の作用及び効果について説明する。
モータ本体1の駆動により、モータシャフト21が回転すると、モータシャフト21に固定されている原動歯車25が回転する。原動歯車25に歯合している従動歯車27が回転して、錘シャフト23が回転することにより、偏芯錘9が回転して、振動が発生する。このとき、図4に示すように、原動歯車25が回転すると、原動歯車25の歯35と、従動歯車27の歯35とは同じ磁極が対向しているので、磁力による反発のため、原動歯車25の歯35と従動歯車27の歯35が非接触状態か又は接触して回転する。
【0023】
本実施の形態によれば、原動歯車25及び従動歯車27は、その軸方向における一側面と他側面とに異なる磁極を形成すれば良いので、歯車の一側面と他側面とを異なる磁極とする一方向の着磁により製造できるから、特殊な着磁機を用いることなく簡易な構成で容易に着磁できる。これにより、製造コストが安価な回転伝達装置1を提供できる。
【0024】
回転伝達装置1では、原動歯車25及び従動歯車27は互いに歯合する歯35、35において、対向する部分は、同じ磁極としてあるから、互いに反発する磁極により非接触か、又は接触する場合でも歯35、35の接触圧を小さくでき、原動歯車25及び従動歯車27の磨耗や接触音を低減できる。
【0025】
本実施の形態では、振動装置3において、偏芯錘9はモータ本体19と長手方向の長さを略同じ寸法にしているので、モータ本体19に対して偏芯錘9を大きくして偏芯量を多くできるので、従来よりも大きな振動を得ることができる。
【0026】
偏芯錘9及び対応する錘シャフト23の長さを長くできるので、偏芯錘9のかしめ寸法を充分に取ることができ、偏芯錘9を錘シャフト23に強固に固定できる。また、偏芯錘9のかしめ位置も任意に決めることができるので、設計の自由度が高い。
ケース5内にモータ7及び偏芯錘9を収めているので、回転している偏芯錘9が周囲にある他の機器や部材に接触するのを防止できる。
【0027】
以下に本発明の他の実施の形態について説明するが、以下に説明する実施の形態において、上述した実施の形態と同一の作用効果を奏する部分には同一の符号を付することによりその部分の詳細な説明を省略し、以下の説明では上述した実施の形態と主に異なる点について、説明する。
【0028】
図5を参照して本発明の第2実施の形態について説明する。この第2実施の形態では、原動歯車25及び従動歯車27は各々、外周に形成されている各歯35、35を同じ磁極としてあり、各歯車25、27の内周側部を歯35、35とは異なる磁極にしている。本実施の形態では、歯35、35をS極とし、内周側部をN極としている。
この第2実施の形態では、原動歯車25及び従動歯車27が互いに歯合する各歯35、35を同じ磁極としているので、互いに反発する磁極により、原動歯車25及び従動歯車27の各歯35、35は非接触か、又は接触する場合でも歯35、35の接触圧を小さくでき、原動歯車25及び従動歯車27の磨耗や接触音を低減できる。
【0029】
図6及び図7を参照して、本発明の第3実施の形態について説明する。この第3実施の形態では、第1実施の形態における原動歯車25と従動歯車27に変えて、歯35のない原動車51と従動車53とを用いて、互いに磁極の反発力により回転を伝達するものである。即ち、原動車51と従動車53とは円柱形状をなしており、互いに周面を離して対向させていると共に、同じ磁極を対向させている。
【0030】
原動車51と従動車53とは、同じ構成であり、非磁性体の基材41と、マグネット45とから構成されている。図7に示すように、基材41は円柱形状を成しており、軸線と平行な貫通孔43が周方向に沿って等間隔で複数形成されている。本実施の形態では、各貫通孔43は、円柱形状である。
【0031】
マグネット45は円柱形状を成しており、軸方向の一方側部45aと他方側部45bとで異なる磁極に着磁してある。即ち、本実施の形態では、原動車51及び従動車53では、その外周面において、軸方向の一方側部45aと他方側部45bとで異なる磁極にしてあり、且つ図6に示すように、互いに対向する部分は同じ磁極になっている。
【0032】
この第3実施の形態によれば、原動車51が回転すると、従動車53が磁極の反発により追従して回転する。
この第3実施の形態によれば、上述した第1実施の形態における歯の噛み合いを除いて第1実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。即ち、第3実施の形態によれば、原動車51及び従動車53は互いに対向する部分が、異なる磁極による反発に追従して非接触で回転するので、磨耗や接触音がない。
【0033】
原動車51及び従動車53は、既存の棒状や角柱状等のマグネット45を基材41に形成した挿入孔43に挿入することで、容易に製造できる。
また、原動車51及び従動車53の製造において、汎用のマグネットを用いることができ、特殊な着磁機を用いることなく製造でき、製造コストが安価な回転伝達装置を提供できる。
【0034】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、本発明の回転伝達装置1は、振動装置3を例に用いて説明したが、これに限らず、回転動力を伝達するものであれば特に用途は制限されない。
第3実施の形態において、基材41に形成する貫通孔43及びマグネット45の形状は、図8に示すように、四角柱等の角柱形状であっても良く、その形状は限定されない。
第3実施の形態において、マグネット45は原動車51及び従動車53の外周面に露出するようにしても良い。
図9に示すように、原動車51と従動車53とは、接触するように配置しても良い。磁力の反発力に加えて、原動車51と従動車53の摩擦力も作用するので、従動車53の原動車51への追従性が向上する。この変形例では、原動車51及び従動車53に耐摩耗性樹脂であるポリウレタン製の表面層55を設けて、接触による磨耗に対して長寿命化を図っている。
更に、図10に示すように、図9に示す変形例において、対向する磁極を異なる磁極として、互いに引張る磁力の作用により、原動車51に追従して従動車53を回転駆動するものであっても良い。
また、図6に示す第3実施の形態においも、図11に示すように、対向する磁極を異なる磁極として、互いに引張る磁力の作用により、原動車51に追従して従動車53を回転駆動するものであっても良い。
【符号の説明】
【0035】
1 回転伝達装置
3 振動装置
25 原動歯車
27 従動歯車
31 一方側面
32 他方側面
39 外周側部材
41 基材
51 原動車
53 従動車
45 マグネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸周りを回転駆動する原動歯車と、原動歯車に歯合する従動歯車とを備えた回転伝達装置において、
原動歯車及び従動歯車の各歯は、各々軸方向の一方側面と他方側面とに異なる磁極を有し且つ各歯は周方向で同じ磁極としてあり、原動歯車と従動歯車の噛み合い位置で互いに対向する歯面が同じ磁極であることを特徴とする回転伝達装置。
【請求項2】
互いに外周面を対向して配置した原動車と従動車とを備え、従動車が原動車の回転に従動して各々の軸周りを回転する回転伝達装置において、
原動車及び従動車は各々、非磁性体の基材と、複数のマグネットとを備え、基材は円柱形状であり、軸線と平行な貫通孔が基材の外周に沿って複数形成してあり、基材の前記貫通孔にマグネットを挿入してあり、原動車及び従動車の各マグネットは軸方向の一方側部と他方側部とで異なる磁極にしていることを特徴とする回転伝達装置。
【請求項3】
モータ本体と、モータ本体に設けたモータシャフトと、偏芯錘と、偏芯錘を固定した錘シャフトと、錘シャフトの軸受け、請求項1に記載の回転伝達装置とを備え、
モータシャフトと錘シャフトとは平行に配置して且つモータ本体と偏芯錘とを並列に配置してあり、モータシャフトと錘シャフトとは回転伝達機構により連結してモータシャフトの回転を錘シャフトに伝達していることを特徴とする振動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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