説明

回転体組付け用治具およびそれを用いた回転体組付け方法

【課題】所定の支持体において回転自在に支持される回転体が、被組付体に対して回転方向の位相を合わせた状態で組み付けられる構成において、位相合わせ作業を無くすことができ、作業性の向上および作業の均一化を図ることができる回転体組付け用治具を提供すること。
【解決手段】所定の支持体において回転自在に支持される回転体を、被組付体に対して、回転体の回転位相を合わせた状態で組み付けるための治具10であって、円柱状の外形を有する本体部11と、本体部11を被組付体に対して所定の姿勢で支持するとともに回転方向について位置決めするための位置決め支持部12と、本体部11の外周面11aにらせん状に形成され、回転体の位置決め支持部12側への移動にともない、回転体を被組付体に対する回転位相が合うように回転させる回転案内部13と、回転体に挿入されるとともに回転案内部13が係合するように回転体を導く挿入部14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、エンジンの製造過程におけるチェーンカバーの組付けに際し、チェーンカバーにおいて回転自在に支持されるロータを、クランク軸に支持されるスプロケットに対して回転方向の位相を合わせた状態で組み付けるために用いられる回転体組付け用治具およびそれを用いた回転体組付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用のエンジンにおいては、クランク軸の回転をカム軸に伝達するチェーン等を覆うためのチェーンカバーが組み付けられる。チェーンカバーは、クランク軸を支持するシリンダブロックと、シリンダブロックの一側に取り付けられカム軸をクランク軸と軸方向を同じくして支持するシリンダヘッドと、シリンダブロックにおけるシリンダヘッド側と反対側に取り付けられるオイルパンとを含む構成に対して、クランク軸(カム軸)の軸方向の一側に組み付けられる。
【0003】
チェーンカバーにおいては、オイルパン内のオイルを吸い上げること等によってエンジンの各部にオイルを供給するためのオイルポンプが構成される。オイルポンプは、回転駆動部としてのロータ(以下「ポンプロータ」という。)を備える。ポンプロータは、チェーンカバーにおいて回転自在に支持される。
【0004】
チェーンカバーにおいて構成されるオイルポンプは、クランク軸から回転動力を得る。つまり、オイルポンプに備えられるポンプロータは、クランク軸の回転にともなって回転する。このため、ポンプロータは、エンジンにおいてチェーンカバーが組み付けられた状態で、クランク軸に対して相対回転不能に支持される。クランク軸に対するポンプロータの支持構成としては、前記のとおりクランク軸の回転をカム軸に伝達するチェーンが巻回されるスプロケット(以下「クランクスプロケット」という。)を介するものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
すなわち、クランク軸に支持されるクランクスプロケットは、キーによってクランク軸に対して相対回転不能に支持される。このようにクランク軸に支持されるクランクスプロケットに対して、ポンプロータが相対回転不能な状態に組み付けられる。ポンプロータは、クランク軸に支持されるための孔部を有し、この孔部にクランクスプロケットが有する所定の形状部分を嵌合させることで、クランクスプロケットに対して組み付けられる。
【0006】
このように、ポンプロータは、クランク軸に対して相対回転不能に支持されるクランクスプロケットに組み付けられることで、クランク軸に対する相対回転が規制された状態でクランク軸に支持される。特許文献1には、このようなポンプロータとクランクスプロケットとの組付け構造において、オイルのシール性向上を目的とした技術が開示されている。
【0007】
以上のような構成においては、チェーンカバーが組み付けられる工程において、ポンプロータは、クランクスプロケットに対して回転方向の位相が合った状態で組み付けられる必要がある。すなわち、所定の支持体としてのチェーンカバーに支持される回転体としてのポンプロータは、自由に回転できる構造になっている。これに対し、被組付体としてのクランクスプロケットについては、チェーンカバーの組付けに際して回転方向の位相が一定であるクランク軸に対してキーにより相対回転不能に支持されることから、回転方向の位相が一定である。このため、チェーンカバーについては、その支持するポンプロータの回転方向の位相をクランク軸に支持されるクランクスプロケットの回転方向の位相に合わせた状態で組み付ける必要がある。
【0008】
しかし、エンジンの製造ライン等におけるチェーンカバーの組付けに際するチェーンカバーの納入状態では、ポンプロータの回転方向の位相が製品毎にバラバラになっている。このため、従来におけるチェーンカバーの組付け工程においては、ポンプロータのクランクスプロケットに対する位相合わせ作業が発生している。このような位相合わせ作業は、作業性の低下や作業者の熟練度等による作業時間のバラツキの原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−299504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、所定の支持体において回転自在に支持される回転体が、被組付体に対して回転方向の位相を合わせた状態で組み付けられる構成において、位相合わせ作業を無くすことができ、作業性の向上および作業の均一化を図ることができる回転体組付け用治具およびそれを用いた回転体組付け方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0012】
すなわち、請求項1においては、所定の支持体において回転自在に支持されるとともにその回転軸方向と平行な方向を貫通方向とする貫通孔を有する回転体を、前記貫通孔に嵌ることで前記回転体との相対回転を規制する形状部分である嵌合部を有する被組付体に対して、前記回転軸方向と平行な方向を組付け方向として、前記嵌合部が前記貫通孔に嵌るように前記回転体の回転方向の位相を合わせた状態で組み付けるための回転体組付け用治具であって、円柱状の外形を有する本体部と、前記本体部の一端側に設けられ、前記本体部を、前記被組付体に対して、前記本体部の長手方向が前記組付け方向に沿う姿勢で支持するとともに前記回転方向について位置決めするための位置決め支持部と、前記本体部の外周面にらせん状に形成され、前記貫通孔を形成する内周面部における所定の位置に係合することで、前記位置決め支持部により前記姿勢で支持されるとともに前記回転方向について位置決めされた状態の前記本体部の他端側から前記貫通孔に前記本体部を貫通させた状態での前記回転体の前記位置決め支持部側への移動にともない、前記回転体を前記被組付体に対する前記回転方向の位相が合うように回転させる回転案内部と、前記本体部の他端側に設けられ、前記貫通孔に挿入されるとともに、前記内周面部における所定の位置に対して前記回転案内部が係合するように、前記本体部の他端側から前記貫通孔に前記本体部を貫通させる前記回転体を導く挿入部と、を備えるものである。
【0013】
請求項2においては、前記位置決め支持部は、前記本体部を前記姿勢で支持するとともに前記回転方向について位置決めした状態で前記嵌合部の前記貫通孔に対する嵌合形状に沿って前記組付け方向に連続する外周面形状を形成する案内面部を有するものである。
【0014】
請求項3においては、前記回転体は、前記被組付体に対して、前記回転方向について等間隔な複数の位相位置で前記回転方向の位相が合った状態となるものであり、前記位置決め支持部は、前記回転方向について、前記複数の位相位置の間隔に対応する間隔の複数の位相位置のうちいずれかの位相位置で前記本体部を位置決めするように構成されるものである。
【0015】
請求項4においては、請求項1〜3のいずれか一項に記載の回転体組付け用治具を用いた回転体組付け方法であって、前記所定の支持体は、エンジンにおいてクランク軸の軸方向の一側に組み付けられるチェーンカバーであり、前記回転体は、前記チェーンカバーにおいてオイルポンプを構成するロータであり、前記被組付体は、前記クランク軸に対して相対回転不能に支持されるスプロケットであり、前記位置決め支持部により、前記回転体組付け用治具を前記クランク軸に対して前記回転方向について位置決めした状態で取り付けることで、前記本体部を前記スプロケットに対して前記姿勢で支持するとともに前記回転方向について位置決めし、前記回転体組付け用治具を、前記挿入部側から前記ロータが有する前記貫通孔に挿入させた状態で、前記チェーンカバーが前記クランク軸を支持するエンジンの本体に対して前記組付け方向に近付くように、前記チェーンカバーを前記エンジンの本体に対して相対的に移動させることで、前記回転案内部によって前記スプロケットに対して前記回転方向の位相が合った状態の前記ロータを、前記スプロケットに対して組み付けるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
すなわち、本発明によれば、所定の支持体において回転自在に支持される回転体が、被組付体に対して回転方向の位相を合わせた状態で組み付けられる構成において、位相合わせ作業を無くすことができ、作業性の向上および作業の均一化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る回転体および被組付体の構成を示す図。
【図2】同じく回転体の被組付体に対する位相合わせについての説明図。
【図3】本発明の一実施形態に係る回転体組付け用治具の構成を示す斜視図。
【図4】治具による回転体の被組付体に対する位相合わせについての説明図。
【図5】本発明の別実施形態に係る回転体組付け用治具の構成を示す斜視図。
【図6】同じく別方向からの斜視図。
【図7】同じく側面図。
【図8】同じく側面一部断面図。
【図9】図7におけるX方向矢視図。
【図10】エンジンにおけるチェーンカバーの組付け構造を示す側面断面図。
【図11】オイルポンプの構成を示す図。
【図12】ポンプロータおよびクランクスプロケットの構造を示す図。
【図13】位置決め支持された状態の治具とポンプロータとの関係を示す斜視図。
【図14】治具が位置決め支持された状態を示す側面一部断面図。
【図15】チェーンカバーの組付けにおける治具によるポンプロータの位相合わせ過程を示す側面一部断面図。
【図16】チェーンカバーが組み付けられた状態を示す側面一部断面図。
【図17】治具によるポンプロータのクランクスプロケットに対する位相合わせについての説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、所定の支持体に回転自在に支持される回転体が回転方向の位相が一定の被組付体に対して組み付けられる構成において、回転体に貫通した状態で、支持体の移動等にともなう回転体の組付け方向の移動によって、回転体の被組付体に対する回転方向の位相を合わせるための新規な治具を提案するものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
図1(a)に示すように、本実施形態に係る回転体組付け用治具(以下単に「治具」という。)は、回転体1を、被組付体2に対して、回転体1の回転軸方向(図1において図面に対して垂直方向)と平行な方向を組付け方向として、回転体1の回転方向の位相(以下「回転位相」という。)を合わせた状態で組み付けるためのものである。
【0020】
図1(b)に示すように、回転体1は、図示せぬ所定の支持体において回転自在に支持される。つまり、回転体1は、所定の支持体において例えば外周面側が支持されること等により、自由に回転できる状態で支持される(矢印A参照)。回転体1は、回転軸方向と平行な方向を貫通方向とする貫通孔1aを有する。
【0021】
図1(c)に示すように、被組付体2は、貫通孔1aに嵌ることで回転体1との相対回転を規制する形状部分である嵌合部2aを有する。本実施形態では、回転体1の貫通孔1aが、図1に示すような回転体1の回転軸方向視で、円形状における対向する一対の端部が互いに平行な直線を形成するような略楕円形状を有する(図1(b)参照)。つまり、回転体1において貫通孔1aを形成する内周面部が、回転軸方向視において、円形状の対向する両端部が互いに平行な直線で切り欠かれたような形状(二面取りされた形状)を有する。したがって、貫通孔1aを形成する内周面部は、互いに平行に対向する一対の内周平面部1bを有する。
【0022】
これに対し、被組付体2の嵌合部2aは、回転軸方向視で、正方形における四隅が面取りされたような形状を有する(図1(c)参照)。そして、嵌合部2aは、同じく回転軸方向視で、互いに平行に対向する少なくとも一対の辺部(面取り部分以外の辺部)が、貫通孔1aにおける一対の内周平面部1bの間隔に対応する間隔で形成される。したがって、嵌合部2aを形成する外周面部は、互いに平行な少なくとも一対の外周平面部2bを有する。
【0023】
つまり、嵌合部2aは、貫通孔1aに対して、外周平面部2bが内周平面部1bに接触するように嵌った状態となる。言い換えると、内周平面部1bおよび外周平面部2bが、回転体1の被組付体2に対する組付けに際しての摺動面となる。
【0024】
したがって、図1(a)に示すように、回転体1の貫通孔1aに被組付体2の嵌合部2aが嵌った状態、つまり回転体1が被組付体2に組み付けられた状態においては、内周平面部1bが外周平面部2bに接触した状態で、回転体1の被組付体2に対する相対回転が規制される。このように、回転体1の貫通孔1a(の内周面部)、および被組付体2の嵌合部2a(の外周面部)は、いずれも回転軸方向視で非円形状となる嵌合形状を有する。
【0025】
以上のような構成においては、回転体1が所定の支持体において自由に回転できるように支持されることから、図2(a)に示すように、回転体1の被組付体2に対する組付けに際し、例えば回転位相が一定の状態で支持される被組付体2(二点鎖線参照)に対して、回転体1の回転位相がずれる場合がある。かかる場合、回転体1の回転位相を被組付体2の回転位相に合わせるための位相合わせ作業が必要となる。
【0026】
位相合わせ作業としては、図2(b)に示すように、回転体1が、組付け方向の移動によって被組付体2に組み付けられる(貫通孔1aに嵌合部2aが嵌る)ような回転位相となるまで回転させられる(矢印B参照)。そして、回転体1についての位相合わせ作業が行われた後、回転体1が被組付体2に対して組付け方向に近付くように移動させられることで、回転体1が被組付体2に組み付けられる(図2(c)参照)。
【0027】
このような位相合わせ作業は、作業性の低下や作業者の熟練度等による作業時間のバラツキの原因となる。そこで、本実施形態に係る治具は、こうした位相合わせ作業を無くすために用いられる。本実施形態に係る治具は、例えば回転体1を支持する支持体の移動等のような、回転体1の被組付体2に対する組付けにともなう動作により、回転体1の被組付体2に対する位相合わせを自動的に行わせる。このように、本実施形態に係る治具は、回転体1を、被組付体2に対して、嵌合部2aが貫通孔1aに嵌るように回転体1の回転位相を合わせた状態で組み付けるためのものである。
【0028】
図3に示すように、本実施形態に係る治具10は、全体として棒状に構成されるものであり、本体部11と、位置決め支持部12と、回転案内部13と、挿入部14とを備える。治具10においては、前記各部が、例えば鋳鉄等の金属材料によって一体的に構成される。また、治具10は、全体を通して、回転体1の貫通孔1aに対して貫通可能な太さ(外径)を有する。
【0029】
本体部11は、円柱状の外形を有する。つまり、本体部11は、略円柱面となる外周面11aを形成する。本体部11は、全体として棒状に構成される治具10における主たる部分を構成する。したがって、本体部11についての円柱状の外形における中心軸方向が、本体部11の長手方向、つまり治具10の長手方向となる。以下では、本体部11の長手方向(治具10の長手方向)を「治具長手方向」という。
【0030】
位置決め支持部12は、本体部11の一端側に設けられる。つまり、位置決め支持部12は、治具10において治具長手方向の一側端部に形成される部分である。位置決め支持部12は、本体部11に対してわずかに拡径された部分である。位置決め支持部12は、本体部11を、被組付体2に対して、治具長手方向が組付け方向に沿う姿勢(以下「治具支持姿勢」という。)で支持するとともに回転体1の回転方向(以下単に「回転方向」ともいう。)について位置決めするための部分である。
【0031】
本実施形態では、位置決め支持部12は、本体部11を治具支持姿勢で支持するための形状部分として、嵌合穴12aを有する。嵌合穴12aは、治具長手方向における位置決め支持部12側に開口する円形状の穴部である。位置決め支持部12は、嵌合穴12aを有することにより、略筒状の形状を有する。つまり、位置決め支持部12は、嵌合穴12aを形成する内周面を有するとともに、本体部11の外周面11aと略連続する外周面を有する。
【0032】
位置決め支持部12は、嵌合穴12aに、所定の突起部分を嵌め込ませることにより、本体部11を被組付体2に対して支持する。嵌合穴12aに嵌め込まれる突起部分は、例えば、被組付体2を回転位相が一定の状態で支持する部材に形成されたり、被組付体2自体に形成されたりする。位置決め支持部12によって本体部11が治具支持姿勢で支持された状態においては、治具長手方向が回転体1の被組付体2に対する組付け方向に沿うとともに、位置決め支持部12の外周面が被組付体2の嵌合部2aの外周面に対して略連続した状態となる。
【0033】
また、位置決め支持部12は、本体部11を回転方向について位置決めするための形状部分として、切欠部12bを有する。切欠部12bは、位置決め支持部12の略筒状の形状における一部が、位置決め支持部12の端面側(嵌合穴12aが開口する側)に開放するように形成される切欠き部分である。
【0034】
位置決め支持部12は、切欠部12bに、所定の突起部分を嵌め込ませることにより、本体部11を被組付体2に対して回転方向について位置決めする。切欠部12bに嵌め込まれる突起部分は、嵌合穴12aの場合と同様、被組付体2を回転位相が一定の状態で支持する部材に形成されたり、被組付体2自体に形成されたりする。位置決め支持部12によって本体部11が回転方向について位置決めされた状態においては、本体部11が被組付体2に対して所定の回転位相関係となり、本体部11の(治具10の)被組付体2に対する相対的な回転が規制される。
【0035】
このように、位置決め支持部12は、嵌合穴12aおよび切欠部12bにより、被組付体2を支持する部材等の、被組付体2とは異なる他の部材を介して間接的に、あるいは被組付体2自体に直接的に、本体部11を被組付体2に対して治具支持姿勢で支持するとともに回転方向について位置決めする。つまり、位置決め支持部12による被組付体2に対する本体部11の支持および位置決めに際し、嵌合穴12aおよび切欠部12bに対して嵌合する部分は、被組付体2とは異なる他の部材に形成される部分であっても、被組付体2自体に形成される部分であってもよい。
【0036】
回転案内部13は、本体部11の外周面11aにらせん状に形成される部分である。回転案内部13は、本体部11の外周面11aに沿って、本体部11の周方向(外周面11aが有する略円柱面における周方向)を旋回方向とするらせん形状に沿う筋状の突起部分(突条部分)である。本実施形態では、回転案内部13として、本体部11の周方向について略等間隔に配される略同一形状の二本のらせん形状部分が形成される。
【0037】
回転案内部13は、回転体1において貫通孔1aを形成する内周面部における所定の位置に係合することで、本体部11が(治具10が)位置決め支持部12により治具支持姿勢で支持されるとともに回転方向について位置決めされた状態(以下「位置決め支持された状態」という。)において、回転体1を被組付体2に対する回転位相が合うように回転させる。回転案内部13は、位置決め支持された状態の本体部11の他端側(位置決め支持部12側と反対側)から貫通孔1aに本体部11を貫通させた状態での回転体1の位置決め支持部12側への移動にともない、回転体1を回転させる。
【0038】
すなわち、回転案内部13は、本体部11上の(貫通孔1aに本体部11を貫通させた状態の)回転体1に対して、回転体1の内周面側から係合する。つまり、回転案内部13は、本体部11の外周面11a上における突起部分として、貫通孔1aを形成する内周面部における所定の位置に引っかかった状態となる。これにより、回転案内部13は、本体部11上の回転体1について、治具長手方向における定位置での回転を規制するとともに、回転体1の治具長手方向の移動(本体部11に対する相対的な移動)にともなってらせん形状の旋回にならって回転体1を回転させる。
【0039】
本実施形態では、回転案内部13は、回転体1の貫通孔1aに対して、次のようにして係合する。すなわち、回転体1が有する貫通孔1aは、前記のとおり回転軸方向視で円形状における対向する一対の端部が互いに平行な直線を形成するような略楕円形状を有する(図1(b)参照)。したがって、図1等に示すように、貫通孔1aを形成する内周面部は、互いに対向する一対の内周曲面部1cを有する。一対の内周曲面部1cは、共通する円筒内周面の一部形状を有し、回転軸方向視で一対の内周平面部1bの対向方向に対して直交する方向に対向する。
【0040】
そして、回転案内部13は、貫通孔1aを形成する内周面部において、内周平面部1bと内周曲面部1cとの境目の位置に係合する。つまり、図4(a)、(b)に示すように、回転案内部13は、貫通孔1aにおいて内周平面部1bと内周曲面部1cとにより形成される角の部分に引っかかった状態となる。
【0041】
したがって、回転案内部13は、貫通孔1aを形成する内周面部に係合した状態で、前記のとおり本体部11上の回転体1が治具長手方向の移動にともなってらせん形状の旋回にならって回転するように、貫通孔1aの内周面部の形状に対応して形成される。言い換えると、回転案内部13は、内周平面部1bと内周曲面部1cとの境目の部分の形状に対して、本体部11上の回転体1の治具長手方向の移動にともなって回転体1がらせん形状に沿って回転することができる程度の係合作用が得られるように形成される。
【0042】
本実施形態では、回転案内部13としての略同一形状の二本のらせん形状部分は、治具長手方向に対して垂直方向の断面形状において、回転位相として約180°ずれた位置となるように配される。したがって、図4(a)、(b)に示すように、回転体1の貫通孔1aに対して係合する二本の回転案内部13は、内周平面部1bと内周曲面部1cとにより形成される角の部分のうち、回転軸方向視で本体部11の径方向に対向する二箇所の角の部分に位置する。つまり、二本の回転案内部13は、本体部11において回転軸方向視で対角配置される。なお、図4(a)、(b)における回転案内部13については、貫通孔1aを形成する内周面部に対する回転案内部13の係合位置を模式的に示している。
【0043】
このように形成される回転案内部13により、所定の支持体において回転自在に支持される回転体1は、貫通孔1aを形成する内周面部に回転案内部13を係合させた状態で、治具長手方向の移動にともなって回転する。そして、本体部11を位置決め支持部12側と反対側から挿入させる回転体1は、回転案内部13によって回転しながら本体部11に沿って治具長手方向に位置決め支持部12側に移動し、被組付体2に対して回転位相が合った状態で位置決め支持部12に到達する。
【0044】
このため、回転案内部13は、その終端部(位置決め支持部12側の端部)について、本体部11の周方向における位置(回転位相)が、被組付体2に対して回転位相が合った状態の回転体1に対する係合位置に対応する位置となるように形成される。つまり、回転案内部13は、位置決め支持部12によって被組付体2に対して所定の回転位相関係で回転方向について位置決めされた状態の本体部11において、回転案内部13によって回転させられた回転体1が位置決め支持部12に達した状態で、貫通孔1aに対する係合位置(内周平面部1bと内周曲面部1cとの境目の位置)の回転位相が、被組付体2に対して回転位相が合った状態の回転体1における係合位置に対応するように形成される。言い換えると、回転案内部13は、らせん形状に沿う回転体1の回転により、回転体1に対する係合位置を、被組付体2に対して回転位相が合った状態の回転体1における係合位置に対応する位置まで持って行くことで、被組付体2に対する回転体1の回転位相を合わせる。
【0045】
回転案内部13によって本体部11上を通過することで被組付体2に対する回転位相が合った状態の回転体1は、引き続き治具長手方向に移動することで、位置決め支持部12に乗り移る。つまり、本体部11上を通過した回転体1は、貫通孔1aに位置決め支持部12の部分を貫通させた状態となる。
【0046】
したがって、本体部11の外周面11aにおける突起部分である回転案内部13は、位置決め支持部12に対して、回転案内部13によって回転位相が合わせられた状態の回転体1が治具長手方向の移動によって位置決め支持部12にスムーズにスライドして乗り移るように連続する形状を有する。
【0047】
具体的には、例えば、回転案内部13が、前記のとおり本体部11に対して拡径された部分である位置決め支持部12に対して、外周面11aからの突出高さが本体部11に対する位置決め支持部12の拡径量に相当するように形成される。これにより、回転案内部13が、位置決め支持部12(の外周面)に対して同じ高さ位置(本体部11の径方向の位置)で連続するように形成される。
【0048】
そして、回転案内部13によって被組付体2に対する回転位相が合った状態で本体部11から位置決め支持部12に乗り移った回転体1は、さらに治具長手方向に移動することで、被組付体2に対して組み付けられる(貫通孔1aに嵌合部2aが嵌った状態となる)。つまり、回転体1は、本体部11上を通過することで回転案内部13によって回転位相が合った状態のまま、位置決め支持部12から被組付体2に乗り移ることで、被組付体2に組み付けられる。
【0049】
なお、本実施形態の治具10においては、回転案内部13は、本体部11の外周面11aに対して突出する突起部分であるが、回転体1の貫通孔1aを形成する内周面部の形状によっては、外周面11aに対する凹部(溝部)であってもよい。つまり、回転案内部13は、回転体1を治具長手方向に沿う移動にともなって回転させることができるように、貫通孔1aを形成する内周面部における所定の位置に係合可能な形状であればよい。
【0050】
また、本実施形態の治具10においては、回転案内部13は二本のらせん形状部分として設けられているが、これに限定されない。つまり、回転案内部13としてのらせん形状部分は、一本であっても三本以上であってもよい。
【0051】
挿入部14は、本体部11の他端側(位置決め支持部12側と反対側)に設けられる。つまり、挿入部14は、治具10において治具長手方向の他側端部に形成される部分である。挿入部14は、本体部11と略同径の部分である本体部11側の部分から端部側にかけて縮径するテーパ形状を有する部分である。つまり、挿入部14は、その外周面として、本体部11の外周面11aに連続するとともに治具10の端部側に向けて縮径するテーパ面14aを形成する。
【0052】
挿入部14は、回転体1の貫通孔1aに挿入される治具10において、挿入方向の先端部分を形成する部分である。つまり、位置決め支持部12によって所定の姿勢で位置決め支持された状態の治具10に対して、治具長手方向に移動する回転体1が、挿入部14側から貫通孔1aに治具10を挿入させる。
【0053】
挿入部14は、回転体1の貫通孔1aに挿入されるとともに、貫通孔1aを形成する内周面部における係合位置(内周平面部1bと内周曲面部1cとの境目の位置)に対して回転案内部13が係合するように、本体部11の他端側から貫通孔1aに本体部11を貫通させる回転体1を導く。
【0054】
すなわち、挿入部14は、治具長手方向に移動する回転体1の貫通孔1aに挿入されることで、回転体1を本体部11において回転案内部13に係合した状態となるように案内する。言い換えると、挿入部14は、治具10において、貫通孔1aに本体部11を貫通させる回転体1を受け入れるとともに、治具長手方向の移動にともない回転体1を回転案内部13に対して係合させる部分である。
【0055】
したがって、挿入部14は、回転案内部13に対して連続するような形状を有する。つまり、回転案内部13の始端部(挿入部14側の端部)は、挿入部14に対して連続するような形状を有する。具体的には、挿入部14と回転案内部13との連続部分には、案内面14bが形成される。
【0056】
案内面14bは、回転案内部13に対してその始端部側に形成される面部であり、挿入部14のテーパ面14aに沿うように形成される。つまり、案内面14bは、本体部11の外周面11aから突出する回転案内部13の始端部側を、挿入部14のテーパ面14aに沿わせる面部である。言い換えると、案内面14bは、テーパ面14aが、回転案内部13の始端部側の一部まで延長された部分である。
【0057】
このように、案内面14bを介して回転案内部13と連続する挿入部14は、治具10が挿入される際における回転体1の回転位相(初期位相)にかかわらず、本体部11において回転体1を回転案内部13に対して係合させる。つまり、治具10を挿入部14側から貫通孔1aに挿入させる回転体1は、その初期位相にかかわらず、挿入部14を介して本体部11に達することで、自動的に回転案内部13が貫通孔1aの内周面部における係合位置に係合した状態となる。
【0058】
また、本実施形態に係る治具10においては、位置決め支持部12の外周面部に一対の案内面部12cが形成される。案内面部12cは、位置決め支持部12によって本体部11が位置決め支持された状態で嵌合部2aの貫通孔1aに対する嵌合形状に沿って組付け方向に連続する外周面形状を形成する。
【0059】
したがって、本実施形態では、一対の案内面部12cは、位置決め支持部12の外周面部において互いに平行な一対の平面部として形成される。すなわち、本実施形態では、被組付体2の嵌合部2aは、回転体1の貫通孔1aに対して、外周平面部2bが内周平面部1bに接触するように嵌った状態となる。つまり、嵌合部2aの貫通孔1aに対する嵌合形状には、一対の外周平面部2bが含まれる。
【0060】
そこで、本実施形態において、位置決め支持部12が有する一対の案内面部12cは、被組付体2の嵌合部2aが有する一対の外周平面部2bに対応して形成される。すなわち、一対の案内面部12cは、治具10が位置決め支持部12によって被組付体2に対して位置決め支持された状態において、被組付体2の嵌合部2aが有する一対の外周平面部2bに連続するように形成される。これにより、一対の案内面部12cは、嵌合部2aの貫通孔1aに対する嵌合形状に沿って組付け方向に連続する外周面形状を形成する。
【0061】
したがって、円柱状の外形を有する本体部11に対して拡径された部分である位置決め支持部12は、回転軸方向視における外周面形状として、円形状の対向する両端部が互いに平行な直線で切り欠かれたような形状(二面取りされた形状)を有する。そして、位置決め支持部12が有する一対の案内面部12cの二面幅(二面間の距離)は、被組付体2の嵌合部2aが有する一対の外周平面部2bの二面幅と略同じ寸法となる。
【0062】
このように、位置決め支持部12が、案内面部12cを有することにより、治具長手方向に移動する回転体1について、位置決め支持部12から被組付体2に対する乗り移り性が向上する。つまり、位置決め支持部12が一対の案内面部12cを有することにより、治具10が被組付体2に対して位置決め支持された状態において、嵌合部2aにおいて貫通孔1aに対する嵌合形状を形成する一対の外周平面部2bが組付け方向に延長される態様となる。これにより、治具長手方向に移動する回転体1を、位置決め支持部12から被組付体2の嵌合部2aに対してスムーズにスライドさせて乗り移らせることができる。
【0063】
以上のような構成を備える本実施形態の治具10による、回転体1の被組付体2に対する組付け手順について説明する。回転体1の組付けに際しては、まず、治具10が、位置決め支持部12によって被組付体2に対して位置決め支持される。
【0064】
治具10が被組付体2に対して位置決め支持された状態において、回転体1(を支持する支持体)および治具10(の位置決め対象である被組付体2)の少なくともいずれかが、これらが組付け方向に相対的に近付くように移動することにより、治具10が挿入部14側から回転体1の貫通孔1aに挿入される。挿入部14側から貫通孔1aに挿入された治具10においては、回転体1が本体部11に達することで、回転案内部13が貫通孔1aを形成する内周面部における係合位置に自動的に係合する。
【0065】
回転案内部13が回転体1に係合することで、回転体1の位相合わせがスタートする(図4(a)参照)。つまり、回転案内部13が回転体1の貫通孔1aを形成する内周面部における係合位置に対して係合した状態となり、回転体1の本体部11上における治具長手方向の移動にともなう回転案内部13のらせん形状に沿う回転体1の回転が開始される。
【0066】
図4(b)に示すように、回転案内部13によってらせん形状に沿って回転する回転体1は、本体部11上を通過することで(位置決め支持部12に達することで)、被組付体2に対して回転位相が合った状態となる(矢印C参照)。
【0067】
そして、被組付体2に向けて治具長手方向に移動する回転体1が、本体部11から位置決め支持部12を介して被組付体2に乗り移ることで、回転体1の貫通孔1aに被組付体2の嵌合部2aが嵌合し、回転体1の被組付体2に対する組付けが完了する(図4(c)参照)。
【0068】
以上説明した本実施形態に係る治具10によれば、所定の支持体において回転自在に支持される回転体1が、被組付体2に対して回転位相を合わせた状態で組み付けられる構成において、位相合わせ作業を無くすことができ、作業性の向上および作業の均一化を図ることができる。
【0069】
次に、本発明に係る治具のより好ましい形態について説明する。本発明に係る治具のより好ましい形態である別実施形態の治具20を、図5〜図9に示す。なお、本実施形態に係る治具20において、前述した実施形態に係る治具10(図3参照)と共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0070】
本実施形態に係る治具20は、本体部11を回転方向について位置決めするための形状部分として位置決め支持部12において形成される切欠部12bを、二箇所に有する。二箇所に設けられる切欠部12bは、位置決め支持部12において互いに径方向に対向する位置に設けられる。具体的には、図9に示すように、二箇所の切欠部12bは、その対向方向が互いに平行な一対の案内面部12cの面方向と略平行な(わずかにずれた)方向となるように設けられる。
【0071】
このように、位置決め支持部12が切欠部12bを二箇所に有することにより、位置決め支持部12による治具20の被組付体2に対する位置決め支持作業において、作業性の向上を図ることができる。それは次のような理由による。
【0072】
すなわち、本実施形態において、回転体1は、被組付体2に対して、回転方向について等間隔な二つの位相位置で回転位相が合った状態となる。具体的には、図1等に示すように、回転体1は、被組付体2に対して、貫通孔1aの一対の内周平面部1bが嵌合部2aの一対の外周平面部2bに対応する、回転位相が約180°異なる二つの位相位置で、回転位相が合った状態となる。つまり、貫通孔1aの内周平面部1bに嵌合部2aの外周平面部2bが接触するように嵌った状態となることで組み付けられる回転体1は、貫通孔1aに対して嵌合部2aが嵌合可能な、回転位相が約180°異なる二つの位相位置で、被組付体2に対して組付け可能となる。
【0073】
このように、回転体1と被組付体2とは、貫通孔1aの嵌合部2aに対する嵌合形状から、回転位相が約180°異なる二つの位相位置で、回転位相が合った状態となる。したがって、治具20についても、被組付体2に対して、回転位相が約180°異なる二つの位相位置で、回転体1の位相合わせを行うことができる。
【0074】
そこで、本実施形態の治具20においては、回転体1の被組付体2に対する組付けが可能となる二つの位相位置の間隔に対応する間隔で、切欠部12bが二箇所に設けられる。つまり、治具20においては、位置決め支持部12が切欠部12bを二箇所に有することにより、位置決め支持部12が、回転方向について、二つの位相位置の間隔に対応する間隔の二つの位相位置のうちいずれかの位相位置で本体部11を位置決めするように構成される。
【0075】
これにより、位置決め支持部12による治具20の被組付体2に対する位置決め支持作業において、回転位相が約180°異なる二つの位相位置のいずれかの位相位置を用いることができる。このため、治具20が被組付体2に対して位相が合った状態となるまで治具20を回転させる量が、位置決めされた状態の回転位相として一つの位相位置が用いられる場合と比べて少なくてすむので、作業性が向上する。なお、本実施形態では、切欠部12bは、二箇所に設けられているが、三箇所以上設けられてもよい。また、切欠部12bの形状も、特に限定されない。
【0076】
また、本実施形態に係る治具20においては、図8および図9に示すように、軽量化を図るための穴部15が形成されている。穴部15は、全体として棒状の治具20において、治具長手方向に沿って中心部分に形成される。穴部15は、位置決め支持部12側に開口するように、治具20の治具長手方向の略全体にわたって形成される。つまり、穴部15は、位置決め支持部12が有する嵌合穴12aに連続するように、位置決め支持部12から本体部11を介して挿入部14の一部にかけて形成される。したがって、治具20は、全体として略筒状の形状を有する。
【0077】
穴部15は、治具20の軽量化を図りつつ、治具20に必要とされる強度が確保されるような形状・大きさ(径)に形成される。本実施形態の治具20においては、穴部15は、位置決め支持部12の嵌合穴12aに対して小径に形成される。なお、穴部15の形状は、本実施形態に限定されるものではない。
【0078】
以下では、本実施形態に係る治具20の適用例として、治具20が、自動車用のエンジンの製造過程においてチェーンカバーが組み付けられる工程において用いられる場合について説明する。本例においては、治具20が、チェーンカバーの組付けに際し、チェーンカバーにおいて回転自在に支持されるロータ(以下「ポンプロータ」という。)を、クランク軸に支持されるスプロケット(以下「クランクスプロケット」という。)に対して回転位相を合わせた状態で組み付けるために用いられる。
【0079】
まず、本例に係るエンジンの構成について、図10および図11を用いて説明する。図10に示すように、本例に係るエンジンにおいては、シリンダブロック30に、クランク軸31が回転可能に支持される。
【0080】
図10に示すように、クランク軸31は、シリンダブロック30において気筒間に設けられる壁状の部分であるバルクヘッド(主軸受部)30aと、バルクヘッド30aにボルト等により固定されるクランクキャップ30bとにより構成される軸受部によって複数箇所で支持される。クランク軸31の軸受部においては、バルクヘッド30aおよびクランクキャップ30bそれぞれに形成される半円状の軸受面同士によって形成される軸孔に、クランク軸31のジャーナル部(主軸部)がクランクベアリング30cを介して支持される。
【0081】
クランク軸31の回転は、タイミングチェーン32を介してカム軸(図示略)に伝達される。カム軸は、シリンダブロック30の一側(図10において上側)に取り付けられるシリンダヘッド(図示略)において、クランク軸31と軸方向を同じくして支持される。タイミングチェーン32は、クランク軸31に対して、シリンダブロック30の外側において巻回される。
【0082】
すなわち、クランク軸31は、その軸方向の一側(図10において左側、以下、エンジンにおける前側とする。)の端部が、シリンダブロック30から突出した状態で支持される。このクランク軸31のシリンダブロック30からの突出部分に、タイミングチェーン32が巻回されるクランクスプロケット33が支持される。
【0083】
クランクスプロケット33は、キー34によってクランク軸31に対して相対回転不能に支持される。タイミングチェーン32は、クランクスプロケット33のほか、カム軸に対して相対回転不能に支持されるスプロケットに巻回されることで、クランク軸31の回転をカム軸に伝達する。また、シリンダブロック30におけるシリンダヘッド側と反対側(図10において下側)には、オイルを貯溜するためのオイルパン35が取り付けられる。
【0084】
シリンダブロック30に対しては、その前側に、タイミングチェーン32等を覆うためのチェーンカバー40が組み付けられる。チェーンカバー40は、エンジンにおいて、シリンダブロック30とシリンダヘッドとオイルパン35とを含む構成(以下「エンジン本体」という。)に対して、前側に組み付けられる。
【0085】
図11に示すように、チェーンカバー40においては、オイルパン35内のオイルを吸い上げること等によってエンジンの各部にオイルを供給するためのオイルポンプ41が構成される。オイルポンプ41は、チェーンカバー40に設けられるケーシング42内において、回転駆動部としてのポンプロータ(インナーロータ)43と、アウターロータ44とを備える。ケーシング42においては、オイルポンプ41に対するオイルの吸込通路に接続される吸込孔や、オイルの吐出通路に接続される吐出孔等が形成される。
【0086】
ポンプロータ43およびアウターロータ44は、ケーシング42に形成される凹部42aに収容される。具体的には、凹部42aは、円形に沿う内周面を形成する。アウターロータ44は、円形に沿う外周面を有し、凹部42aの内周面に接触するように配置される。ポンプロータ43は、アウターロータ44の内側に配置される。ポンプロータ43は、凹凸状の外周面として形成される外歯を有し、アウターロータ44は、凹凸状の内周面として形成される内歯を有する。そして、ポンプロータ43は、その外歯がアウターロータ44の内歯に噛み合うように、アウターロータ44に対して偏心して配置される。チェーンカバー40においては、オイルポンプ41を構成するポンプロータ43は、アウターロータ44とともに回転自在に支持される。
【0087】
このようにチェーンカバー40において構成されるオイルポンプ41は、クランク軸31から回転動力を得る。つまり、オイルポンプ41においては、回転駆動部としてのポンプロータ43が、クランク軸31の回転にともなって回転する。このため、ポンプロータ43は、エンジンにおいてチェーンカバー40が組み付けられた状態で、クランク軸31に対して相対回転不能に支持される。ポンプロータ43は、クランク軸31に対してクランクスプロケット33を介して支持される。
【0088】
すなわち、前記のとおりクランク軸31に対してキー34によって相対回転不能に支持されるクランクスプロケット33に対して、ポンプロータ43が相対回転不能な状態となるように組み付けられる。つまり、ポンプロータ43は、クランク軸31に対して相対回転不能に支持されるクランクスプロケット33に組み付けられることで、クランク軸31に対する相対回転が規制された状態でクランク軸31に支持される。
【0089】
また、図10に示すように、クランク軸31は、エンジン本体に組み付けられたチェーンカバー40を貫通して前側に突出する。つまり、クランク軸31は、クランクスプロケット33を介してポンプロータ43を貫通するとともに、チェーンカバー40を貫通する。
【0090】
チェーンカバー40においては、エンジン本体に組み付けられた状態における前側の面部に、凹部40aが形成される。凹部40aは、チェーンカバー40から突出するクランク軸31の周囲を囲むような円形状の内周面を形成する。したがって、チェーンカバー40の前側においては、凹部40aを形成する面と凹部40aに突出するクランク軸31の外周面とによって、円環状の溝部が形成される。
【0091】
クランク軸31のチェーンカバー40からの突出部分には、クランク軸31の回転動力をエンジン本体の前側に配置されるエンジンの補機に対して伝達するためのベルトが巻回されるクランクプーリ(図示略)が取り付けられる。このため、クランク軸31の先端部には、クランクプーリを取り付けるためのボルト穴31aが、クランク軸31の軸方向に沿って先端側に開口するように形成されている。クランクプーリは、クランク軸31に対してチェーンカバー40の凹部40aとの間に円環状のオイルシールを介して取り付けられる。
【0092】
以上のような構成においては、エンジン本体にチェーンカバー40が組み付けられる工程において、ポンプロータ43は、クランクスプロケット33に対して回転位相が合った状態で組み付けられる必要がある。すなわち、チェーンカバー40に支持されるポンプロータ43は、アウターロータ44とともに自由に回転できる構造になっている。これに対し、クランクスプロケット33については、チェーンカバー40の組付けに際して回転位相が一定なクランク軸31に対してキー34により相対回転不能に支持されることから、回転位相が一定である。このため、チェーンカバー40については、その支持するポンプロータ43の回転位相をクランク軸31に支持されるクランクスプロケット33の回転位相に合わせた状態で組み付ける必要がある。
【0093】
そこで、本実施形態に係る治具20が、エンジン本体に対するチェーンカバー40の組付けにともなって回転位相を合わせた状態で組み付けられるポンプロータ43のクランクスプロケット33に対する組付けに用いられる。すなわち、治具20は、ポンプロータ43を、クランクスプロケット33に対して、ポンプロータ43の回転軸方向(図10において左右方向)と平行な方向を組付け方向として、ポンプロータ43の回転位相を合わせた状態で組み付けるためのものである。
【0094】
したがって、本例に係る構成においては、前述した実施形態との対比において、回転体1を支持する所定の支持体が、エンジンにおいて前側に組み付けられるチェーンカバー40であり、回転体1が、チェーンカバー40においてオイルポンプ41を構成するポンプロータ43であり、被組付体2が、クランク軸31に対して相対回転不能に支持されるクランクスプロケット33である。
【0095】
治具20によって回転位相が合わせられて互いに組み付けられるクランクスプロケット33およびポンプロータ43について、図12を用いて説明する。図12(a)に示すように、ポンプロータ43は、チェーンカバー40においてアウターロータ44とともに自由に回転できる状態で支持される(矢印D参照)。ポンプロータ43は、クランク軸31に支持されるための孔部として、回転軸方向と平行な方向を貫通方向とする貫通孔43aを有する。
【0096】
図12(b)に示すように、クランクスプロケット33は、クランク軸31に支持される部分である筒状の基部33aと、タイミングチェーン32が巻回される部分である歯部33dとを有する。クランクスプロケット33においては、基部33aの内周面33eに、クランク軸31の外周面から突出した状態となるキー34が嵌るキー溝33fが形成される。
【0097】
クランクスプロケット33においては、基部33aが、ポンプロータ43の貫通孔43aに嵌ることでポンプロータ43との相対回転を規制する形状部分である嵌合部として用いられる。つまり、ポンプロータ43は、貫通孔43aにクランクスプロケット33の基部33aを嵌合させることで、クランクスプロケット33に対して組み付けられる。
【0098】
ポンプロータ43の貫通孔43aは、前述した実施形態における回転体1の貫通孔1a(図1(b)参照)と同様の形状を有する。すなわち、図12(a)に示すように、ポンプロータ43の貫通孔43aは、回転軸方向視で、円形状における対向する一対の端部が互いに平行な直線を形成するような略楕円形状(二面取りされた形状)を有する。したがって、ポンプロータ43の貫通孔43aを形成する内周面部は、互いに平行に対向する一対の内周平面部43bと、これらの対向方向に対して直交する方向を対向方向とする一対の内周曲面部43cとを有する。
【0099】
これに対し、クランクスプロケット33の基部33aは、ポンプロータ43の貫通孔43aの内周面形状に沿う外周面形状を有する。すなわち、図12(b)に示すように、クランクスプロケット33の基部33aの外周面部は、互いに平行に対向する一対の外周平面部33bと、これらの対向方向に対して直交する方向に互いに対向する一対の外周曲面部33cとを有する。
【0100】
したがって、図12(c)に示すように、ポンプロータ43の貫通孔43aにクランクスプロケット33の基部33aが嵌った状態、つまりポンプロータ43がクランクスプロケット33に組み付けられた状態においては、内周平面部43bが外周平面部33bに、内周曲面部43cが外周曲面部33cにそれぞれ接触した状態で、ポンプロータ43のクランクスプロケット33に対する相対回転が規制される。このように、ポンプロータ43の貫通孔43a(の内周面部)、およびクランクスプロケット33の基部33a(の外周面部)は、いずれも回転軸方向視で非円形状となる嵌合形状を有する。
【0101】
以上のような構成において、本実施形態に係る治具20が備える各部は次のようにして用いられる。すなわち、位置決め支持部12は、本体部11を(治具20を)、クランクスプロケット33に対して、治具支持姿勢で支持するとともに回転方向について位置決めする。
【0102】
具体的には、図13および図14に示すように、位置決め支持部12は、嵌合穴12aに、クランク軸31の先端部分を嵌め込ませることにより、本体部11をクランクスプロケット33に対して支持する。位置決め支持部12によって本体部11が支持された状態においては、治具長手方向がポンプロータ43のクランクスプロケット33に対する組付け方向(クランク軸31の軸方向)に沿うとともに、位置決め支持部12の外周面がクランクスプロケット33の基部33aの外周面に対して略連続した状態となる。
【0103】
つまり、治具20が位置決め支持部12によってクランク軸31に支持された状態においては、位置決め支持部12とクランクスプロケット33とは、端面同士が接触した状態となる。ここで、位置決め支持部12において形成される一対の案内面部12cは、クランクスプロケット33が有する一対の外周平面部33bと連続した状態となる。つまり、本例においては、位置決め支持部12が有する一対の案内面部12cは、クランクスプロケット33の基部33aが有する一対の外周平面部33bに対応して(同じ二面幅で)形成される。なお、図13においては、チェーンカバー40に支持されるポンプロータ43およびアウターロータ44について、チェーンカバー40の図示を省略している。
【0104】
また、位置決め支持部12は、切欠部12bに、クランク軸31の外周面から突出した状態となるキー34を嵌め込ませることにより、本体部11をクランクスプロケット33に対して回転方向について位置決めする。位置決め支持部12によって本体部11が回転方向について位置決めされた状態においては、本体部11がクランクスプロケット33に対して所定の回転位相関係となり、本体部11の(治具20の)クランクスプロケット33に対する相対的な回転が規制される。
【0105】
また、回転案内部13は、ポンプロータ43において貫通孔43aを形成する内周面部における所定の位置に係合することで、本体部11が位置決め支持された状態において、ポンプロータ43をクランクスプロケット33に対する回転位相が合うように回転させる。回転案内部13は、位置決め支持された状態の本体部11の他端側(位置決め支持部12側と反対側)から貫通孔43aに本体部11を貫通させた状態でのポンプロータ43の位置決め支持部12側への移動にともない、ポンプロータ43を回転させる。
【0106】
回転案内部13は、ポンプロータ43の貫通孔43aを形成する内周面部に対して、前述した実施形態における回転体1の貫通孔1aの場合と同様にして係合する。つまり、回転案内部13は、ポンプロータ43の貫通孔43aを形成する内周面部において、内周平面部43bと内周曲面部43cとの境目の位置に係合する(図17(a)、(b)参照)。
【0107】
また、挿入部14は、ポンプロータ43の貫通孔43aに挿入されるとともに、貫通孔43aを形成する内周面部における係合位置(内周平面部43bと内周曲面部43cとの境目の位置)に対して回転案内部13が係合するように、本体部11の他端側から貫通孔43aに本体部11を貫通させるポンプロータ43を導く。
【0108】
以下では、本例に係る構成における、治具20による、エンジン本体に対するチェーンカバー40の組付けにともなうポンプロータ43のクランクスプロケット33に対する組付け手順について説明する。
【0109】
チェーンカバー40の組付けに際しては、まず、位置決め支持部12により、治具20がクランク軸31に対して回転方向について位置決めされた状態で取り付けられることで、本体部11がクランクスプロケット33に対して位置決め支持された状態とされる。すなわち、図13および図14に示すように、位置決め支持部12の嵌合穴12aおよび切欠部12bが用いられることで、治具20が、クランクスプロケット33を支持するクランク軸31の先端部に、クランク軸31に対して相対回転不能な状態で支持される。
【0110】
そして、図15に示すように、治具20が挿入部14側からポンプロータ43が有する貫通孔43aに挿入させられた状態で、チェーンカバー40がクランク軸31を支持するエンジン本体に対して組付け方向に近付くように、チェーンカバー40がエンジン本体に対して相対的に移動させられる(矢印F参照)。つまり、治具20がクランクスプロケット33に対して位置決め支持された状態において、ポンプロータ43を支持するチェーンカバー40および治具20が支持されるエンジン本体の少なくともいずれかが、これらが組付け方向に相対的に近付くように移動することにより、治具20が挿入部14側からポンプロータ43の貫通孔43aに挿入される。
【0111】
これにより、図16に示すように、回転案内部13によってクランクスプロケット33に対して回転位相が合った状態のポンプロータ43が、クランクスプロケット33に対して組み付けられる。つまり、チェーンカバー40のエンジン本体に対する組付けにともない、ポンプロータ43がクランクスプロケット33に対して組み付けられる。
【0112】
詳細には、治具20がクランク軸31を介してクランクスプロケット33に対して位置決め支持された状態において、チェーンカバー40のエンジン本体に対する組付け方向の移動により、治具20が挿入部14側からポンプロータ43の貫通孔43aに挿入される。挿入部14側から貫通孔43aに挿入された治具20においては、ポンプロータ43が本体部11に達することで、回転案内部13が貫通孔43aを形成する内周面部における係合位置に自動的に係合する。
【0113】
回転案内部13がポンプロータ43に係合することで、ポンプロータ43の位相合わせがスタートする(図17(a)参照)。つまり、回転案内部13がポンプロータ43の貫通孔43aを形成する内周面部における係合位置に対して係合した状態となり、ポンプロータ43の本体部11上における治具長手方向の移動にともなう回転案内部13のらせん形状に沿うポンプロータ43の回転が開始される。ここで、ポンプロータ43は、アウターロータ44とともに回転する(図13、矢印G参照)。
【0114】
図17(b)に示すように、回転案内部13によってらせん形状に沿って回転するポンプロータ43は、本体部11上を通過することで(位置決め支持部12に達することで)、クランクスプロケット33に対して回転位相が合った状態となる(矢印E参照)。
【0115】
そして、クランクスプロケット33に向けて治具長手方向に移動するポンプロータ43が、アウターロータ44とともに本体部11から位置決め支持部12を介してクランクスプロケット33に乗り移ることで(図13、矢印G参照)、ポンプロータ43の貫通孔43aにクランクスプロケット33の基部33aが嵌合し、ポンプロータ43のクランクスプロケット33に対する組付けが完了する(図16、図17(c)参照)。ポンプロータ43がクランクスプロケット33に組み付けられたチェーンカバー40は、エンジン本体における前側の面部に、ボルト等によって固定されることで組み付けられる。
【0116】
ここで、位置決め支持部12が、案内面部12cを有することにより、チェーンカバー40の移動にともなって治具長手方向に移動するポンプロータ43について、位置決め支持部12からクランクスプロケット33に対する良好な乗り移り性が得られる。
【0117】
また、治具20においては、位置決め支持部12が有する切欠部12bが、ポンプロータ43のクランクスプロケット33に対する組付けが可能となる二つの位相位置の間隔に対応する間隔で二箇所に設けられることから、位置決め支持部12による治具20のクランクスプロケット33に対する位置決め支持作業において、作業性の向上を図ることができる。
【0118】
すなわち、治具20の位置決め支持に際し、クランク軸31の外周面において一箇所にて突出するキー34に対して、位置決め支持部12が有する二つの切欠部12bのうちのいずれかを用いることができる。このため、切欠部12bが一箇所である場合との比較において、治具20がクランクスプロケット33に対して位相が合った状態となるまで治具20を回転させる量が少なくてすむので、作業性が向上する。
【0119】
以上のように、本例に係る構成において、チェーンカバー40の組付けに治具20が用いられることで、チェーンカバー40において回転自在に支持されるポンプロータ43が、クランクスプロケット33に対して回転位相を合わせた状態で組み付けられる構成において、位相合わせ作業を無くすことができ、作業性の向上および作業の均一化を図ることができる。
【0120】
すなわち、本実施形態に係る治具20によれば、ポンプロータ43がクランクスプロケット33に対して元々有する嵌合形状を利用することにより、ポンプロータ43のクランクスプロケット33に対する位相合わせを自動的に簡単に行うことができる。そして、治具20が用いられてチェーンカバー40の組付けが行われることにより、チェーンカバー40におけるポンプロータ43の初期位相にかかわらず、目視確認不要で、ポンプロータ43をクランクスプロケット33に対して確実に組み付けることができる。
【0121】
これにより、簡単に組付け作業が行われるようになるので、作業者の熟練度等にかかわらず、作業時間のバラツキや作業のやり直しが無くなる。したがって、エンジンの製造過程におけるチェーンカバー40の組付け工程において、組付け時間の短縮が図れ、コストの低減を図ることができる。
【0122】
また、チェーンカバー40の組付け工程において、やり直しが無くなることから、エンジン本体に対するチェーンカバー40の接合面において用いられる液状ガスケット(FIPG;Formed In Place Gasket)等のシール剤が切れるおそれが無くなる。これにより、エンジンの品質面における向上が実現する。
【0123】
また、本実施形態の治具20が用いられることにより、エンジン本体に対するチェーンカバー40の組付け方向として、横方向(水平方向)に限らず、鉛直方向の上からの組付けも可能となる。これにより、チェーンカバー40の組付け工程における部品の動作や設備の配置等についてフレキシブル性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0124】
1 回転体
1a 貫通孔
2 被組付体
2a 嵌合部
10 治具(回転体組付け用治具)
11 本体部
12 位置決め支持部
12a 嵌合穴
12b 切欠部
12c 案内面部
13 回転案内部
14 挿入部
14b 案内面
20 治具(回転体組付け用治具)
30 シリンダブロック
31 クランク軸
33 クランクスプロケット(スプロケット)
33a 基部(嵌合部)
40 チェーンカバー
41 オイルポンプ
43 ポンプロータ(ロータ)
43a 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の支持体において回転自在に支持されるとともにその回転軸方向と平行な方向を貫通方向とする貫通孔を有する回転体を、前記貫通孔に嵌ることで前記回転体との相対回転を規制する形状部分である嵌合部を有する被組付体に対して、前記回転軸方向と平行な方向を組付け方向として、前記嵌合部が前記貫通孔に嵌るように前記回転体の回転方向の位相を合わせた状態で組み付けるための回転体組付け用治具であって、
円柱状の外形を有する本体部と、
前記本体部の一端側に設けられ、前記本体部を、前記被組付体に対して、前記本体部の長手方向が前記組付け方向に沿う姿勢で支持するとともに前記回転方向について位置決めするための位置決め支持部と、
前記本体部の外周面にらせん状に形成され、前記貫通孔を形成する内周面部における所定の位置に係合することで、前記位置決め支持部により前記姿勢で支持されるとともに前記回転方向について位置決めされた状態の前記本体部の他端側から前記貫通孔に前記本体部を貫通させた状態での前記回転体の前記位置決め支持部側への移動にともない、前記回転体を前記被組付体に対する前記回転方向の位相が合うように回転させる回転案内部と、
前記本体部の他端側に設けられ、前記貫通孔に挿入されるとともに、前記内周面部における所定の位置に対して前記回転案内部が係合するように、前記本体部の他端側から前記貫通孔に前記本体部を貫通させる前記回転体を導く挿入部と、
を備えることを特徴とする回転体組付け用治具。
【請求項2】
前記位置決め支持部は、前記本体部を前記姿勢で支持するとともに前記回転方向について位置決めした状態で前記嵌合部の前記貫通孔に対する嵌合形状に沿って前記組付け方向に連続する外周面形状を形成する案内面部を有することを特徴とする請求項1に記載の回転体組付け用治具。
【請求項3】
前記回転体は、前記被組付体に対して、前記回転方向について等間隔な複数の位相位置で前記回転方向の位相が合った状態となるものであり、
前記位置決め支持部は、前記回転方向について、前記複数の位相位置の間隔に対応する間隔の複数の位相位置のうちいずれかの位相位置で前記本体部を位置決めするように構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転体組付け用治具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の回転体組付け用治具を用いた回転体組付け方法であって、
前記所定の支持体は、エンジンにおいてクランク軸の軸方向の一側に組み付けられるチェーンカバーであり、前記回転体は、前記チェーンカバーにおいてオイルポンプを構成するロータであり、前記被組付体は、前記クランク軸に対して相対回転不能に支持されるスプロケットであり、
前記位置決め支持部により、前記回転体組付け用治具を前記クランク軸に対して前記回転方向について位置決めした状態で取り付けることで、前記本体部を前記スプロケットに対して前記姿勢で支持するとともに前記回転方向について位置決めし、
前記回転体組付け用治具を、前記挿入部側から前記ロータが有する前記貫通孔に挿入させた状態で、
前記チェーンカバーが前記クランク軸を支持するエンジンの本体に対して前記組付け方向に近付くように、前記チェーンカバーを前記エンジンの本体に対して相対的に移動させることで、
前記回転案内部によって前記スプロケットに対して前記回転方向の位相が合った状態の前記ロータを、前記スプロケットに対して組み付けることを特徴とする回転体組付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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