説明

回転入力装置

【課題】操作範囲を越えて回転された回転操作部の逆方向への回転角度が小さくてもその回転角度を確実に検出できる回転入力装置を提供する。
【解決手段】回転入力装置(10)は、操作ノブ12に連結されたプラネタリキャリア14に回動可能に支持されたプラネタリギヤ28が、出力軸(66)が固定されたサンギヤ(30)の外歯列(30a)と、アウターギヤ(42)に形成された内歯列(42a)とに噛合している。サンギヤ(30)に設けたプランジャ(36)はアウターギヤ42の凹カム部(445)に弾接される。ソレノイドユニット(58)は、出力軸(66)に設けた磁石76と対向する磁気センサ78の出力に応じて、アウターギヤ(42)の回転を阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、カーナビゲーションシステム、カーオーディオシステム又はカーエアコンシステム等の車載機器に適用される入力装置には、一軸の回りに回転させられる操作ノブ(回転操作部)を有する回転入力装置がある。操作者は、操作ノブを回転させることによって、車載機器に適当な命令を入力することができる。
【0003】
回転入力装置には、操作ノブを回転させたときに、操作ノブの回転位置に応じて操作ノブに電磁ブレーキによる制動力を与え、操作者に操作範囲及び操作限界を認識させるものがある。
例えば、特許文献1が開示する力覚付与型入力装置では、操作範囲を越えると、電磁ブレーキが操作ノブの回転を阻止し、操作者に壁感触を付与する。
【0004】
この場合において、操作者が操作ノブを逆方向に回転させようとするとき、電磁ブレーキは解除されている必要がある。しかし、操作ノブが完全にロックされていると、操作ノブを回転させようとする方向を判断できず、電磁ブレーキを解除することができない。そこで、この力覚付与型入力装置は、駆動軸の中間に弾性部材を設け、電磁ブレーキが制動力を与えているときでも操作ノブを回転できるようにし、操作ノブを回転させようとする方向を判断できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−19113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1が開示する力覚付与型入力装置では、電磁ブレーキによって駆動軸が回転阻止されたとき、駆動軸が回転阻止されるまで回転された方向と同方向に操作ノブを更に回転させると、弾性部材が弾性変形して壁感触を感じることができ、その後、操作ノブを逆方向に回転させると、操作ノブの回転角度及び方向をロータリーエンコーダが検出し、電磁ブレーキによる駆動軸の回転阻止を解除して、操作ノブのロック状態が解除される。
【0007】
しかしながら、操作範囲を越えて回転された操作ノブの逆方向への回転角度が小さい場合、その回転角度を検出できず、電磁ブレーキによる駆動軸の回転阻止が継続されて、操作ノブのロック状態が解除されないという問題がある。
【0008】
本発明は上記した事情に鑑みてなされ、その目的とするところは、操作範囲を越えて回転された回転操作部の逆方向への回転角度が小さくてもその回転角度を確実に検出できる回転入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の解決手段を採用する。
本発明の回転入力装置によれば、回転操作部と、回転操作部の回転操作によって回転操作部と同心に回転する第1回転体及び第2回転体と、第1回転体の回転を検出する回転検出手段と、第2回転体の回転を制止する制動手段と、回転検出手段の出力に基づき、回転操作部が操作範囲を越えたと判断すると、制動手段を制御して第2回転体の回転を制止し、第2回転体の回転が制止された状態で回転操作部の回転方向が逆転したと判断したら、制動手段を制御して第2回転体の回転制止状態を解除する制御手段と、第1回転体及び第2回転体間に介設されてなり、第2回転体が回転制止されていない状態で回転操作部を回転すると、第1回転体及び第2回転体を一体的に回転させ、第2回転体が回転制止された状態で前記回転操作部を第2回転体が回転制止されるまで回転した方向に回転すると、回転操作部への回転力に対して抗力を付与すると共に前記第2回転体に対して前記第1回転体を所定の位置から他の位置へと回転させ、抗力が付与された状態で回転操作部への回転力を除くか又は回転操作部を逆方向に回転させると、前記第1回転体を前記他の位置から前記所定の位置へと復帰させる復帰手段とを備え、回転操作部に、遊星歯車を回転可能に支持する遊星歯車支持体を回転操作部と同心に連結し、第2回転体は、遊星歯車の径方向外側と噛合する内歯列を有し、第1回転体は、遊星歯車の径方向内側と噛合する外歯列を有することを特徴とする回転入力装置が提供される。
【0010】
かかる構成によれば、制動手段が駆動されて第2回転体の回転が制止された状態において、操作者が、回転操作体を第2回転体が回転制止されるまで回転させた方向に回転すると、回転操作体への回転力に対する抗力、即ち、壁感触が付与されつつ、遊星歯車が自公転され、遊星歯車支持体に対して第1回転体が増速回転される。その後、回転操作部への力を除くか又は回転操作部を逆方向に回転すると、第2回転体に対して第1回転体が他の位置から所定位置へと戻されつつ、遊星歯車が自公転され、遊星歯車支持体に対して第1回転体が増速回転される。このように、遊星歯車支持体に対して第1回転体が遊星歯車支持体と同方向に増速回転されるので、回転操作部を逆方向に回転する角度がたとえ小さくても、第1回転体の回転角度を回転検出手段によって確実に検出できる。ここで、遊星歯車支持体に支持された遊星歯車と、内歯列を有して回転制止された第2回転体と、外歯列を有して回転自在な第1回転体とは、プラネタリ型の遊星歯車機構として動作する。
【0011】
また、本発明の回転入力装置において、第1回転体は、外歯列が形成された回転基板と回転基板に連結された回転検出用の出力軸とを有し、前記回転検出手段は、前記出力軸の回転を検出することが好ましい。
この場合、第1回転体を、板状の回転基板と軸形状の出力軸との連結体とすることで、第1回転体の一部を構成する外歯列を回転基板に容易に形成することができるため、第1回転体を加工し易くできると共に、回転検出手段の配置の自由度を高めることができる。
【0012】
上記のように第1回転体が回転基板を有する場合、第2回転体及び回転基板が同一平面上に配置され、復帰手段は、第2回転体及び回転基板の何れか一方に設けられたカム部と、何れか他方に設けられてカム部に弾接する駆動部とから構成されることが好ましい。
【0013】
かかる構成によれば、復帰手段を簡単な構成にすることができ、回転軸方向への薄型化を図ることができる。また、カム部と駆動部のサイズを適宜設定することで、第2回転体が回転制止された状態下で回転が許容される回転操作部の角度範囲、すなわち遊びを小さく設定できるので、操作フィーリングを向上できる。
【0014】
さらに、本発明の回転入力装置によれば、遊星歯車を周方向に等角度間隔で複数設けるとともに、それら複数の遊星歯車間にカム部及び駆動部を配置するのが望ましい。
かかる構成によれば、装置をコンパクトに構成できる。
【0015】
また、駆動部の周囲には、径方向外方に突設する突設部を有し、カム部の両側には、突設部の側壁と対向する規制壁を有することが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、回転制止された回転操作部にさらに大きな力がかかっても、各構成部材に破損を生じることなく回転操作部の回転を確実に制止できるので、信頼性の高い回転入力装置を提供することができる。
【0017】
また、本発明の回転入力装置によれば、制動手段は、磁性材料からなり第2回転体と連結されて一体的に回転する摩擦板と摩擦板を吸引するコイルを有するソレノイドユニットとから構成されるのが望ましい。かかる構成によれば、第2回転体の回転制止を安定して行うことができ、信頼性のより高い回転入力装置を提供することができる。
【0018】
さらに好ましくは、本発明の回転入力装置は、回転操作部の回転中心から、遊星歯車の回転中心、第1回転体の外歯列と遊星歯車との噛合位置、及び、第2回転体の内歯列と遊星歯車との噛合位置までのそれぞれの距離が回転操作部の回転操作に伴い変動するのを吸収する変動吸収手段をさらに備えることができる。
【0019】
かかる構成によれば、回転操作部の回転中心に対して、遊星歯車支持体、遊星歯車、第1回転体及び第2回転体など各回転部材のそれぞれの回転中心が偏心しても各回転部材の回転が阻害されないので、回転操作部の回転操作をスムーズにすることができる。
【0020】
また本発明において、変動吸収手段は、遊星歯車の中央部に形成された丸孔と、遊星歯車支持体に立設され丸孔に挿通される歯車軸部において前記遊星歯車支持体の径方向の内方及び外方の少なくとも一方に形成されたカット面とから構成されることが望ましい。
【0021】
このような構成であれば、径方向の内方及び外方の少なくとも一方において、カット面の両端部から丸孔内壁までの隙間を、歯車軸部においてカット面がない部分の外壁と丸孔内壁間の隙間に比較して大きく設定できる。これにより、回転操作部の回転中心に対して各回転部材の回転中心が偏心しても、遊星歯車の回転が阻害されることはなく、回転操作部の回転操作をスムーズにすることができる。
【0022】
上記のようなカット面を有する変動吸収手段として好ましくは、遊星歯車が弾性変形可能な樹脂又はエラストマーから構成されている。
かかる構成によれば、遊星歯車が弾性変形することによって、回転操作体の回転中心に対する各回転部材の偏心を効率よく吸収することができ、回転操作部の回転操作をさらにスムーズにすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、操作範囲を越えて回転された回転操作部の逆方向への回転角度が小さくてもその回転角度を確実に検出できる回転入力装置を提供できる。
【0024】
また本発明によれば、回転操作体の回転中心に対して各回転部材の回転中心に偏心が生じても、回転操作部のスムーズな回転操作を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】一実施形態の回転入力装置を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1の回転入力装置を、操作ノブを除いて示す概略的な分解斜視図である。
【図3】図1の回転入力装置の概略的な縦断面である。
【図4】図1の回転入力装置の回路構成を説明するための概略的なブロック図である。
【図5】電磁ブレーキの制動力と、操作ノブの回転角度との関係を説明するためのグラフである。
【図6】電磁ブレーキが作動していないときの図1の回転入力装置を、操作ノブ及びプラネタリキャリアを除いて示す概略的な平面図である。
【図7】電磁ブレーキが作動しているときにロック方向に操作ノブを回転させたときの図1の回転入力装置を、操作ノブ及びプラネタリキャリアを除いて示す概略的な平面図である。
【図8】操作ノブの回転角度と出力軸の回転角度との関係を説明するためのグラフである。
【図9】変形例の回転入力装置の概略的な縦断面図である。
【図10】追加構成を備えた回転入力装置の概略的な分解斜視図である。
【図11】追加構成を備えた回転入力装置の要部を示す平面図である。
【図12】プラネタリギヤの丸孔内壁と歯車軸部のカット面との間隔を詳細に示す部分的な拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、一実施形態の回転入力装置10の全体的な構成を示す概略的な断面図である。回転入力装置10は、例えば、カーエアコンシステムの入力装置として使用され、車室内のインストルメントパネルやセンターコンソールに設置される。
【0027】
回転入力装置10は、回転操作部として操作ノブ12を有する。操作者は、操作ノブ12を回転させることによって、カーエアコンシステムの動作条件を選択することができる。
【0028】
図2は、操作ノブ12を除く、回転入力装置10の概略的な分解斜視図であり、図3は、回転入力装置10の概略的な縦断面図である。
操作ノブ12には、遊星歯車(プラネタリギヤ)28を回転可能に支持する遊星歯車支持体としてのプラネタリキャリア14が、操作ノブ12と同心かつ一体的に回転するように連結されている。
具体的には、操作ノブ12は、プラネタリキャリア14に連結される連結軸部16を有する。プラネタリキャリア14は、円板部18の操作ノブ12側の面から突出される連結筒部20と、円板部18の操作ノブ12とは反対側の面から突出される歯車軸部22及び回転軸部24とを有する。
【0029】
操作ノブ12の連結軸部16とプラネタリキャリア14の連結筒部20とはタッピングスクリュー等で結合される。
歯車軸部22は、回転軸部24の周りに120°間隔にて配置されている。
【0030】
各歯車軸部22には、プラネタリギヤ(遊星歯車)28が回転可能にそれぞれ支持されている。
図6に示すように、3つのプラネタリギヤ28は、第2回転体としてのアウターギヤ42に形成された内歯列42aと、第1回転体の一部をなす回転基板であるサンギヤ(太陽歯車)30に形成された外歯列30aとにそれぞれ噛合されている。これらプラネタリギヤ28、サンギヤ30及びアウターギヤ42が遊星歯車機構を構成している。
【0031】
図3に示すように、サンギヤ30(回転基板)の中央の軸孔30bの図中下側には、前述する回転板と共に第1回転体の一部をなす出力軸66が同心に固設され、軸孔30bの図中上側には、プラネタリキャリア14の回転軸部24が回転可能に挿入されている。したがって、出力軸66は、操作ノブ12に対して同心かつ間接的に回転するように設けられている。また、アウターギヤ42は略リング状をなしており、出力軸66に対し同心で回転可能である。
【0032】
図6に示すように、サンギヤ30は、3つの外歯列30aの間に、各外歯列30aよりも径方向外方に突出している突出基部32を有する。各突出基部32には凹部34がそれぞれ形成されている。各凹部34は、サンギヤ30の径方向に延びており、径方向外方に向けて開口している。
【0033】
各凹部34には、駆動部としてのプランジャ36と圧縮コイルばね38とがそれぞれ配置されている。プランジャ36は、後述するカム部としての凹カム部44に弾接されるように、圧縮コイルばね38によって外方へ向けて常時付勢されている。
【0034】
プランジャ36は、圧縮コイルばね38を外挿する軸部36aを有する。
凹部34は、径方向において外方の凹部分34aが内方の凹部分34bよりも幅広くなるように段差を介して形成されている。プランジャ36は、外方の凹部分34aに往復動可能に摺接される。凹部34の開口の両側には、径方向外方に向けて突出する、突設部としての突起40が形成されている。突起40は、後述する遊びの角度範囲を規制するものである。
【0035】
図6に示すように、アウターギヤ42の内側面には、各突出基部32に配設されたプランジャ36の先端部が当接する、カム部としての3つの凹カム部44が形成されている。
【0036】
各凹カム部44は、プランジャ36の先端部が弾性的に当接して摺接するカム面46を有している。カム面46は、中央の谷部46aとその両側を挟んだ1対の傾斜面46bとからなり、サンギヤ30の回転中心からカム面46までの距離が、カム面46の中央で最も長く、両端に向けて徐々に短くなるように設定されている。
【0037】
カム面46の両側には、各傾斜面46bの傾きよりも大きな傾きをもち、突起40(突設部)の側壁と対向する規制壁としての規制面48が形成されている。もし、アウターギヤ42が回転制止された場合、プランジャ36の両側に位置する規制面48は、アウターギヤ42に対しサンギヤ30(操作ノブ12・プラネタリキャリア14)が回転可能な角度範囲を規定する。例えば、サンギヤ30が一方向へ回転される場合、プランジャ36の先端が谷部46aに係合する状態から、突起40の側面と規制面48とが衝当される状態までの角度範囲において、サンギヤ30はアウターギヤ42に対して回転可能である。この角度範囲が遊び(図8中のΔθn)に相当する。なお、サンギヤ30を他方向へ回転する場合も同様に遊びを有する。かかる構成によれば、回転阻止された操作ノブ12に大きな力がかかっても、各構成部材に破損を生じることなく操作ノブ12の回転を確実に制止できるので、信頼性の高い回転入力装置10を提供することができる。
【0038】
ここで、凹カム部44、プランジャ36及び圧縮コイルばね38は、復帰手段を構成しており、アウターギヤ42(第2回転体)及びサンギヤ30(第1回転体)間に介設されている。アウターギヤ42が回転制止されていないときには、プランジャ36が凹カム部44の谷部46aに係止されており、サンギヤ30とアウターギヤ42とが仮固定されている。したがって、操作ノブ12を回転させると、サンギヤ30とアウターギヤ42とが一体的に回転される。
【0039】
また、アウターギヤ42が回転制止されているときには、操作ノブ12をアウターギヤ42が回転制止されるまで回転した方向に回転させることによって、アウターギヤ42に対してサンギア30が所定位置から他の位置へと回転され、プランジャ36の先端がカム面46の谷部46aから規制面48へ向けて傾斜面46bを上るように移動して、操作ノブ12への回転力に対して抗力(壁感触となる力)を生じる。その際、プラネタリギヤ28が自公転され、アウターギヤ42に対してサンギヤ30が増速回転される。その後、操作ノブ12への力を除くか、又は、操作ノブ12を逆方向に回転させると、アウターギヤ42に対してサンギヤ30が他の位置から所定位置へと戻されつつ操作ノブ12を元の位置に戻すと共に、プラネタリギヤ28が自公転され、プラネタリキャリア14に対してサンギヤ30が増速回転される。ここで抗力は、プランジャ36の先端がカム面46の谷部46aから規制面48へと移動するとき圧縮される圧縮コイルばね38の弾発力によって生じる。一方、操作ノブ12を元の位置へと戻す力は、圧縮状態の圧縮コイルばね38が伸長しようとして傾斜面46bを付勢する力によって生じる。
【0040】
図3に示すように、アウターギヤ42は、プラネタリキャリア14と、後述する摩擦板としてのアーマチュア52との間に介設される。また、アウターギヤ42は、その外周部から図中上方へ延設された3つの係合突起50を有する。各係合突起50の先端には径方向内方に突出する爪部50aが形成され、それら爪部50aが、円板部18(プラネタリキャリア14)の上面に形成された切欠18aにそれぞれ係合される。
【0041】
上述の遊びを確保するために、切欠18aの周方向の幅は、係合突起50の爪部50aの幅よりも広く形成されている。したがって、アウターギヤ42とプラネタリキャリア14とは、遊びの少なくとも2倍に応じた角度範囲で相対的に回転可能である。
【0042】
アウターギヤ42は、アウターギヤ42からアーマチュア52(摩擦板)に向けて突設された連結突起54が、アーマチュア52に形成された連結孔56に挿入されており、図6に示すように、ネジ59によってアーマチュア52に螺着されている。かかる構成により、アウターギヤ42は、軸方向へは移動せずに周方向においてのみアーマチュア52と一体的に回転する。したがって、アウターギヤ42は、アーマチュア52がソレノイドユニット58によって吸引されると、軸方向に変位せずに回転停止される。
【0043】
磁性材料からなる摩擦板としてのアーマチュア52は、ソレノイドユニット58によって電磁的に吸引されるものであり、ソレノイドユニット58と共に制動手段(電磁ブレーキ)を構成している。
ソレノイドユニット58は、軟磁性材料からなるヨークコア60の収納部60aにコイル(ソレノイド)64を収納している。
【0044】
コイル64に電流を流すと、アーマチュア52は、コイル64に生じる磁力によってヨークコア60に吸引されて、磁力に応じた接触圧にてヨークコア60に当接する。操作ノブ12を回転させると、その接触圧によって、アーマチュア52とヨークコア60との間に生じる摩擦力、すなわち、アウターギヤ42の回転を制止する制動力が生じる。
【0045】
サンギヤ30の軸孔30bに固設された出力軸66は、図3に示すように、ヨークコア60の中心部とハウジング68を構成する上ケース70の中心孔とを貫通して、その先端がハウジング68内に存する。このように出力軸66を構成することによって、後述する回転検出手段(磁石76・磁気センサ78)を適宜設定でき、配置の自由度を高めることができる。
【0046】
出力軸66の先端に螺子75で固設されたバックヨーク74には、磁石76が固定されている。なお、ハウジング68は、上ケース70及び下ケース72からなり、上ケース70がヨークコア60の下面に固定されている。
【0047】
下ケース72に取り付けた回路基板80上には、磁石76と対向するように、磁気センサ78(例えばGMRセンサ)が設置されている。磁気センサ78は、回路基板80に取り付けたコネクタ82を介して、出力軸66の回転に応じた信号を外部に出力する。ここで、磁石76、及び、磁気センサ78が回転検出手段を構成している。
【0048】
なお、上ケース70には、図2に示すように、2つの固定用突起84が外方に突設されている。これら固定用突起84を利用して、ハウジング68は、インストルメントパネルやセンターコンソール等に固定される。
【0049】
図4に示すように回転入力装置10は、回転入力装置10の動作を制御する制御手段としての制御部86を有する。制御部86は、例えばMCU(マイクロコンピュータ)によって構成され、CPU(中央演算処理装置)やメモリ等を有する。
制御部86は、磁気センサ78(回転検出手段)と、カーエアコンのメインコントローラ88と、コイル64(制動手段)に電流を流す電源部90とに接続され、磁気センサ78の出力に基づいてカーエアコンのメインコントローラ88を制御する。
【0050】
制御部86は、例えば、コイル64に電流が流されてアウターギヤ42が回転制止されているときに、磁気センサ78の出力に基づいて操作ノブ12の回転方向が逆転したと判断すると、コイル64に供給される電流を停止するように制御して、ソレノイドユニット58の駆動を解除する。なお、操作ノブ12が操作範囲を越えていない場合には、制御部86はコイル64に電流を供給しない。
【0051】
以下、図5乃至図8に基づいて回転入力装置10の動作について説明する。
図5は、操作ノブ12の回転角度と制動力との関係を示したものである。図5において、操作ノブ12の操作範囲は、出力軸66の角度が15°〜75°に対応し、ロック範囲は、15°未満及び75°超に対応する。操作範囲を越えて操作ノブ12がロック範囲に回転されると、制御部86はコイル64に電流を流して所定の制動力を発生させる。この所定の制動力は、操作ノブ12と一体的に回転するアウターギヤ42の回転を制止するのに充分な大きさである。
【0052】
図6は、操作ノブ12の回転角度が操作範囲内にあるときの回転入力装置10を要部示す平面図である。
ソレノイドユニット58が作動していないとき、アウターギヤ42は回転制止されておらず、図6に示すように、プランジャ36が凹カム部44の谷部46aに弾接された状態にある。このため、操作ノブ12が回転されてプラネタリキャリア14が回転すると、プラネタリギヤ28は自転せずに公転し、アウターギヤ42及びサンギヤ30がプラネタリキャリア14と一体的に回転する。
【0053】
図7は、操作ノブ12の回転角度がロック範囲内にあるときの回転入力装置10の要部を示す平面図である。
【0054】
操作ノブ12が操作範囲を越えてロック範囲内へと回転されると、磁気センサ78の出力に基づいて制御部86がコイル64に電流を流して、所定の制動力によってアウターギヤ42の回転は制止される。この状態で、操作者が、操作ノブ12をアウターギヤ42が回転制止されるまで回転させた方向と同方向、すなわち、操作範囲から離れる方向(ロック方向)に回転すると、アウターギヤ42に対し出力軸66が所定位置(図6に対応する位置)から他の位置(図7に対応する位置)へと回転する。その結果、プラネタリギヤ28は自転しながら公転し、サンギヤ30が、図8に示すようにプラネタリキャリア14に対して増速回転する。
【0055】
したがって、プラネタリキャリア14、すなわち操作ノブ12の回転角度よりも、出力軸66(サンギヤ30)の回転角度が大きくなる。ここで、プラネタリキャリア14に支持されたプラネタリギヤ28と、プラネタリギヤ28に噛合した状態で回転制止されているアウターギヤ42と、プラネタリギヤ28と噛合するサンギヤ30とは、プラネタリ型の遊星歯車機構として動作する。なお、図7の状態では、プランジャ36の先端が谷部46aから規制面48へ向けて傾斜面46bを移動するので、圧縮コイルばね38が圧縮されて、操作ノブ12への回転力に抗力(壁感触)が付与される。
【0056】
本実施形態では、増速比が1.5倍となるように、プラネタリギヤ28、サンギヤ30の外歯列30a及びアウターギヤ42の内歯列42aの各ピッチ円が設定されている。したがって、これら各ピッチ円の大きさを適宜選択すれば所望の増速比を有する回転入力装置10を実現できる。
【0057】
なお、操作ノブ12を操作範囲から離れる方向(ロック方向)へと更に回転させると、図7に示すように、サンギヤ30の突起40がアウターギヤ42の規制面48に当たって操作ノブ12の回転が確実に止められる。
【0058】
図7の状態から、操作者が操作ノブ12から手を離して力を除くか又は操作ノブ12を逆方向(図中反時計まわり)に回転すると、アウターギヤ42に対してサンギヤ30が他の位置から所定位置へと戻されつつ、操作ノブ12とプラネタリキャリア14とが一体的に逆方向に回転される。その結果、プラネタリギヤ28が自公転され、プラネタリキャリア14に対してサンギヤ30がプラネタリキャリア14と同方向に増速回転される。ここでも、プラネタリキャリア14に支持されたプラネタリギヤ28と、プラネタリギヤ28に噛合した状態で回転制止されているアウターギヤ42と、プラネタリギヤ28と噛合するサンギヤ30とは、プラネタリ型の遊星歯車機構として動作する。
【0059】
したがって、操作ノブ12を逆方向に回転する角度がたとえ小さくても、サンギヤ30(出力軸66)の回転角度を磁気センサ78によって確実に検出できる。なお、操作者が操作ノブ12から手を離した際に操作ノブ12を所定位置へと戻す力は、圧縮状態の圧縮コイルばね38が伸長しようと傾斜面46bを付勢する力によって生じる。
【0060】
図8は、操作範囲からロック範囲へと操作ノブ12を回転操作するときの、操作ノブ12の回転角度と出力軸66(サンギヤ30)の回転角度との関係を示すグラフである。図8中の75°は、図5に示す操作範囲の上限の角度である。操作範囲(15°〜75°)内では、プラネタリキャリア14及びサンギヤ30は一体的に回転するため、操作ノブ12の回転角度は、出力軸66の回転角度と一致する。
【0061】
図8中に矢印Aで示したように、操作ノブ12が75°を越えてロック範囲に1°回転されると、アウターギヤ42が回転制止された状態で、出力軸66(サンギヤ30)は操作ノブ12(プラネタリキャリア14)よりも増速されて、76.5°へと1.5°回転する。このように、出力軸66の回転角度の変化量Δθsは、操作ノブ12の回転角度の変化量Δθnの約1.5倍である。
【0062】
同様に、操作ノブ12が操作範囲の下限の15度からロック範囲の14度へと1度回転されると、出力軸66は操作ノブ12(プラネタリキャリア14)よりも増速されて、約13.5°へと1.5度回転する。
【0063】
一方、ロック範囲内に操作ノブ12を回転させた後、操作者が手を離すか、又は、操作ノブ12を逆方向に回転させると、図8中に矢印Bで示したように、出力軸66がロック方向とは逆方向に回転し、出力軸66の回転角度が76.5°から75°に戻る。このときの出力軸66の回転角度の変化量Δθs(1.5度)は、操作ノブ12の回転角度の変化量Δθn(1度)の約1.5倍である。したがって、操作範囲を越えて回転された操作ノブ12の逆方向への回転角度が小さくても、出力軸66の回転角度を増大でき、磁気センサ78の出力変化を増大できるので、操作ノブ12の逆方向への回転角度を確実に検出できる。なお、図5に示す操作範囲の下限の角度15°近傍における、操作ノブ12の回転角度と出力軸66の回転角度との関係は、実質的に図8の操作範囲と同様の関係となるので、その説明を省略する。
【0064】
以上のように本発明の回転入力装置10は、回転検出手段(磁気センサ78・磁石76)が、操作ノブ12と同心に回転するサンギヤ30(第1回転体)の出力軸66の回転を検出する。凹カム部44・プランジャ36・圧縮コイルばね38(復帰手段)は、サンギヤ30(第1回転体)とアウターギヤ42(第2回転体)間に介設されてなり、アウターギヤ42が回転制止されていない状態では、操作ノブ12を回転すると、サンギヤ30とアウターギヤ42とを一体的に回転させる。また、アウターギヤ42が回転阻止される状態では、操作ノブ12をアウターギヤ42が回転制止されるまでに回転した方向に回転すると、アウターギヤ42に対しサンギヤ30を所定位置から他の位置へと回転させつつ、操作ノブ12への回転力に対して抗力を生じさせる。その後、操作ノブ12への力を除くか又は操作ノブ12を逆方向に回転させると、サンギヤ30を他の位置から所定位置へと戻す。アーマチュア52・ソレノイドユニット58(制動手段)は、磁気センサ78の出力が操作ノブ12の操作範囲を越えたとき、アウターギヤ42を回転制止する。制御部86(制御手段)は、アウターギヤ42が回転制止されているときに、磁気センサ78の出力に基づきサンギヤ30の回転方向が逆転したと判断すると制動手段の駆動を解除する。プラネタリキャリア14は、操作ノブ12と同心かつ一体的に回転して、プラネタリギヤ28を回動可能に支持する。そして、アウターギヤ42に形成された内歯列42aとサンギヤ30に設けられた外歯列30aとはプラネタリギヤ28に噛合する。
【0065】
かかる構成によれば、アウターギヤ42が回転阻止された状態において、操作者が、操作ノブ12を所定位置から他の位置へと回転すると、操作ノブ12に抗力(壁感触)が付与されつつ、操作ノブ12とプラネタリキャリア14とが一体的に回転されてプラネタリギヤ28が自公転され、プラネタリキャリア14に対して出力軸66がプラネタリキャリア14と同方向に増速回転される。その後、操作ノブ12への力を除くか又は操作ノブ12を逆方向に回転すると、操作ノブ12が他の位置から所定位置へと戻されつつ、操作ノブ12とプラネタリキャリア14とが一体的に逆方向に回転されてプラネタリギヤ28が自公転され、プラネタリキャリア14に対して出力軸66がプラネタリキャリア14と同方向に増速回転される。このように、プラネタリキャリア14に対して出力軸66が増速回転されるので、操作範囲を越えて回転する操作ノブ12を逆方向に回転する角度がたとえ小さくても、出力軸66の回転角度及び回転方向の変化を回転検出手段によって確実に検出できる。
【0066】
また、本発明のサンギヤ30は、外歯列30aが形成された回転基板と、回転基板に連結された出力軸66とを有しており、この出力軸66の自由端部に設けた磁石74に対向配置された磁気センサ78によって回転角度が検出されている。かかる構成であれば、サンギヤ30を、互いに別部材である板状の回転基板と軸形状の出力軸66との連結体とすることで、サンギヤを構成する回転基板に外歯列30aを容易に形成することができ、また、回転検出手段を配置する自由度を高めることができる。
【0067】
また、アウターギヤ42とサンギヤ30をなす回転基板とが同一平面上に配置されており、復帰手段は、アウターギヤ42に設けられた凹カム部44と、回転基板に設けられた圧縮コイルばね38と、圧縮コイルばね38によって凹カム部44に弾接するプランジャ36とから構成されている。かかる構成によれば、復帰手段を簡単な構成にすることができ、回転軸方向への薄型化を図ることができる。また、凹カム部とプランジャ36のサイズとを適宜設定することで、アウターギヤ42が回転阻止された状態下で回転が許容される操作ノブ12の角度範囲、すなわち遊びを小さく設定できるので操作フィーリングを向上できる。なお、プランジャ36及び圧縮コイルばね38がアウターギヤ42に設けられ、凹カム部44がサンギヤ30に設けられていてもよい。
【0068】
さらに、本発明のプラネタリギヤ28を周方向に等角度間隔で複数設けるとともに、それら複数のプラネタリギヤ28の間に凹カム部44、プランジャ36及び圧縮コイルばね38を配置した。かかる構成によれば、装置をコンパクトに構成できる。
【0069】
さらにまた、プランジャ36の周囲に径方向外方に突設する突起40を有し、凹カム部44の両側には、突起40と対向する規制壁(規制面48)を有している。
【0070】
かかる構成によれば、回転制止された操作ノブ12にさらに大きな力がかかっても、各構成部材の破損を生じることなく操作ノブ12の回転を確実に制止できるので、信頼性の高い回転入力装置を提供することができる。
【0071】
また、本発明の制動手段は、磁性材料からなりアウターギヤ42と一体に回転するアーマチュア52と、アーマチュア52を吸引するコイル64を有するソレノイドユニット58から構成されている。かかる構成によれば、アウターギヤ42の回転制止を安定して行うことができ、信頼性のより高い回転入力装置を提供することができる。
【0072】
なお、上記実施形態による回転入力装置10には、操作ノブ12の回転操作をスムーズにするための追加構成を設けることができる。以下、このような追加構成についてさらに説明する。
【0073】
回転入力装置10は遊星歯車機構を有するため、遊星歯車機構を構成する各回転部材間に設定される間隔(クリアランス)や、各回転部材の加工精度・組み付け状態のバラツキや、使用温度による膨張・収縮などの影響によって、操作ノブ12の回転中心に対して各回転部材の回転中心が偏心し易いため、操作ノブ12の回転中心と、プラネタリギヤ28の回転中心、外歯列30aとプラネタリギヤ28との噛合位置、及び、内歯列42aとプラネタリギヤ28との噛合位置との間の距離が操作ノブ12の回転操作に伴って変動し、プラネタリギヤ28の回転が阻害されて、操作ノブ12をスムーズに操作できない虞がある。
【0074】
そこで本発明では、追加構成として上記各距離の変動を吸収する変動吸収手段を備えることによって、スムーズに操作ノブ12を回転操作できるようにしている。
図10は、追加構成を備えた回転入力装置10の概略的な分解斜視図である。また図11は、追加構成を備えた回転入力装置10の要部を示す平面図である。なお図10では、操作ノブ12及びソレノイドユニット58の図示を省略しており、分解斜視図の視線方向は図2と異なっている。また図11では、一部の構成が断面で示されている。その他、以下で説明する追加構成において、上記実施形態(図1〜図9)と共通する部材には同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0075】
図10及び図11に示されるように、追加構成において特徴的な部分は、歯車軸部220に、プラネタリキャリア14の径方向の内方及び外方にカット面220aを形成した点にある。
各プラネタリギヤ28の中央部に丸孔28aが形成されており、丸孔28aには歯車軸部220が挿通されている。
【0076】
図12は、プラネタリギヤ28の丸孔28a内壁と歯車軸部220のカット面220aとの間隔を詳細に示す部分的な拡大図である。図中の矢印に付記された径方向とは、プラネタリキャリア14の径方向のことである。
丸孔28a内壁と歯車軸部220との間隔は、カット面220aがない部分ではAである。一方、プラネタリキャリア14の径方向では、カット面220aの両端部と丸孔28a内壁との間隔が、上記Aよりも大きいBとなる(A<B)。したがってこのような構成によれば、プラネタリギヤ28が、プラネタリキャリア14の径方向に変位できる範囲を拡大することができる。
【0077】
このように追加構成においては、操作ノブ12の回転中心に対して遊星歯車機構を構成する各回転部材の回転中心が偏心した場合であっても、プラネタリギヤ28の回転が阻害されないので、操作ノブ12のスムーズな回転操作を実現することができる。ここで、プラネタリギヤ28の丸孔28a内壁と歯車軸部220のカット面220aとが上記変動吸収手段を構成する。
【0078】
また追加構成において、プラネタリギヤ28は、弾性変形可能な樹脂又はエラストマーから構成されている。かかる構成によれば、プラネタリキャリア14の径方向においてプラネタリギヤ28が変位できる範囲を拡大できるのに加えて、プラネタリギヤ28が良好に弾性変形するため、操作ノブ12のさらにスムーズな回転操作を実現することができる。なお、プラネタリギヤ28を弾性変形可能な樹脂材料又はエラストマーとしている。好ましくは、プラネタリギヤ28の材料として、例えば柔軟グレード材(製品名:テナック−C SG454:旭化成ケミカルズ株式会社製)を好適に用いることができる。また、アウターギヤ42の材料としては、例えばPOM(ポリアセタール)−MF(メラミン)樹脂アロイを用いることができ、サンギヤ30の材料としては、例えばMD(ミネラルパウダー)を分散させたPBT(ポリブチレンテレフタレート)-ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂アロイを用いることができる。
【0079】
本発明は、上述した一実施形態に限定されることはなく、上述した一実施形態に適宜変更を加えた形態も含む。
例えば、上述した一実施形態では、出力軸66の回転角度を検出するためにGMRセンサが用いられていたが、ホールセンサを用いてもよい。また、回転角検出手段として光学式のものを用いてもよい。
上述した一実施形態では、規制面48がアウターギヤ42に設けられ、突起40がサンギヤ30に設けられていたけれども、逆であってもよい。
【0080】
更に、上述した一実施形態では、復帰手段が、凹カム部44、プランジャ36及び圧縮コイルばね38によって構成されていたが、図9に示したように、プランジャ36及び圧縮コイルばね38に代えて、凹部34からアウターギヤの凹カム部44に渡って存する、例えばゴム製の弾性部材92であってもよい。或いは、出力軸66とアウターギヤ42の間を、ゴム製の弾性部材で連結するようにしてもよい。
【0081】
追加構成では、歯車軸部220をダブルDカット形状とし、径方向の内方及び外方の両方にカット面220aを形成しているが、いずれか一方だけにカット面220aを形成してもよい。また、プラネタリギヤ28の材料は、弾性変形可能なもので適宜に変更可能である。
【0082】
最後に、本発明はカーエアコンシステムのための入力装置に好適であるが、これ以外の機器、例えば、カーオーディオシステムやカーナビゲーションシステム等の車載機器にも好適であり、また、パーソナルコンピュータ等にも適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0083】
10 回転入力装置
12 操作ノブ(回転操作部)
14 プラネタリキャリア(遊星歯車支持体)
22,220 歯車軸部
28 プラネタリギヤ(遊星歯車)
28a 丸孔(変動吸収手段)
30 サンギヤ(第1回転体:回転基板)
30a 外歯列
36 プランジャ(駆動部,復帰手段)
38 圧縮コイルばね(復帰手段)
40 突起
42 アウターギヤ(第2回転体)
42a 内歯列
44 凹カム部(復帰手段)
46 カム面
46a 谷部
46b 傾斜面
48 規制面(規制壁)
52 アーマチュア
58 ソレノイドユニット
60 ヨークコア
64 コイル
66 出力軸(第1回転体)
74 磁石(回転検出手段)
76 バックヨーク
78 磁気センサ(回転検出手段)
86 制御部(制御手段)
220a カット面(変動吸収手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転操作部と、
該回転操作部の回転操作によって該回転操作部と同心に回転する第1回転体及び第2回転体と、
前記第1回転体の回転を検出する回転検出手段と、
前記第2回転体の回転を制止する制動手段と、
前記回転検出手段の出力に基づき、前記回転操作部が操作範囲を越えたと判断すると、前記制動手段を制御して前記第2回転体の回転を制止し、該第2回転体の回転が制止された状態で前記回転操作部の回転方向が逆転したと判断したら、前記制動手段を制御して前記第2回転体の回転制止状態を解除する制御手段と、
前記第1回転体及び前記第2回転体間に介設されてなり、該第2回転体が回転制止されていない状態で前記回転操作部を回転すると、前記第1回転体及び前記第2回転体を一体的に回転させ、該第2回転体が回転制止された状態で前記回転操作部を前記第2回転体が回転制止されるまで回転した方向に回転すると、前記回転操作部への回転力に対して抗力を付与すると共に前記第2回転体に対して前記第1回転体を所定の位置から他の位置へと回転させ、抗力が付与された状態で前記回転操作部への回転力を除くか又は該回転操作部を逆方向に回転させると、前記第1回転体を前記他の位置から前記所定の位置へと復帰させる復帰手段とを備え、
前記回転操作部に、遊星歯車を回転可能に支持する遊星歯車支持体を前記回転操作部と同心に連結し、
前記第2回転体は、前記遊星歯車の径方向外側と噛合する内歯列を有し、
前記第1回転体は、前記遊星歯車の径方向内側と噛合する外歯列を有する
ことを特徴とする回転入力装置。
【請求項2】
前記第1回転体は、前記外歯列が形成された回転基板と該回転基板に連結された回転検出用の出力軸とを有し、前記回転検出手段は、前記出力軸の回転を検出することを特徴とする請求項1記載の回転入力装置。
【請求項3】
前記第2回転体及び前記回転基板が同一平面上に配置され、前記復帰手段は、前記第2回転体及び前記回転基板の何れか一方に設けられたカム部と、何れか他方に設けられて該カム部に弾接する駆動部とから構成されることを特徴とする請求項2記載の回転入力装置。
【請求項4】
前記遊星歯車を周方向に等角度間隔で複数設けるとともに、それら複数の遊星歯車間に前記カム部及び前記駆動部を配置したことを特徴とする請求項3記載の回転入力装置。
【請求項5】
前記駆動部の周囲には、径方向外方に突設する突設部を有し、前記カム部の両側には、前記突設部の側壁と対向する規制壁を有することを特徴とする請求項3又は4記載の回転入力装置。
【請求項6】
前記制動手段は、磁性材料からなり前記第2回転体と連結されて一体的に回転する摩擦板と該摩擦板を吸引するコイルとを有するソレノイドユニットから構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の回転入力装置。
【請求項7】
前記回転操作部の回転中心から、前記遊星歯車の回転中心、前記第1回転体の前記外歯列と前記遊星歯車との噛合位置、及び、前記第2回転体の前記内歯列と前記遊星歯車との噛合位置までのそれぞれの距離が、前記回転操作部の回転操作に伴い変動するのを吸収する変動吸収手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の回転入力装置。
【請求項8】
前記変動吸収手段は、
前記遊星歯車の中央部に形成された丸孔と、前記遊星歯車支持体に立設され前記丸孔に挿通される歯車軸部において前記遊星歯車支持体の径方向の内方及び外方の少なくとも一方に形成されたカット面とから構成されることを特徴とする請求項7に記載の回転入力装置。
【請求項9】
前記変動吸収手段は、
前記遊星歯車が弾性変形可能な樹脂又はエラストマーから構成されていることを特徴とする請求8に記載の回転入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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