説明

回転動力機構

【課題】 駆動手段である電磁石19〜21を、半円の範囲に集中的に配置できるようにする。
【解決手段】 内接ギアリング14に、この内接リングに対して偏心して一部を接触させた外接ギア7を設け、これら内接リングと外接部材とはそれらの一部を接触した状態で相対回転可能にしている。さらに、上記内接ギアリングと外接ギアとを互いに所定の箇所で接触させるために、内接ギアリングに常時一定の力を作用させる永久磁石17を設け、上記内接ギアリングに対して永久磁石の力に抗する方向の力を作用させる複数の電磁石19〜21を設けるとともに、これら複数の駆動手段を制御する制御手段を設ける。そして、この制御手段は、上記電磁石の磁力と上記永久磁石の磁力とを合成した半径方向の合成力を周方向に順次変化させる機能を備え、この順次変化させた合成力で内接リングを揺動し、外接ギア7を回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内接リング内に外接部材を組み込むとともにそれら両者を偏心させ、内接リングあるいは外接部材のいずれか一方を、その中心がエンドレスの軌跡を描く揺動運動させて回転力を取り出す回転動力機構に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の回転動力機構として、特許文献1に記載された発明が従来から知られている。この従来の回転動力機構は、ケーシング内に、外形を正六角形にして自転を阻止された内接ギアリングを揺動可能に組み込んでいる。なお、内接ギアリングの揺動は、その中心がエンドレスの軌跡を描く揺動である。
上記のようにした内接ギアリングには、内接ギアリングよりも歯数を少なくした外接ギアをかみ合わせている。
【0003】
そして、上記内接ギアリングの外周には、円周方向に等間隔に複数のピストンを配置し、内接ギアリングに対してピストンの押圧力を円周方向に作用させることによって、内接ギアリングを上記のように揺動させ、外接ギアリングを回転させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−355607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにした従来の回転動力機構では、ピストンなどの駆動手段を、内接ギアリングの外周に等間隔に配置しなければならないので、当該ケーシングの一方の側面に、ピストンを駆動するための空圧源やその配管を設けるスペースが確保できないときには、それを用いることができないという問題があった。
この発明の目的は、一方の側面に駆動手段等を設けるスペースがなくても設置可能な回転動力機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、内接リングに、この内接リングに対して偏心して一部を接触させた外接部材を設け、これら内接リングと外接部材とはそれらの一部を接触した状態で相対回転可能にするとともに、これら内接リングあるいは外接部材のいずれか一方に自転防止機構を設けている。
そして、上記内接リングと外接部材とを互いに所定の箇所で接触させるために、内接リングあるいは外接部材のうちのいずれか一方に常時一定の力を作用させる接触力付与手段を設け、上記内接リングあるいは外接部材のうちのいずれか一方に対して、上記接触力付与手段の力に抗する方向の力を作用させる複数の駆動手段を設けている。
また、これら複数の駆動手段を制御する制御手段を設け、この制御手段は、上記駆動手段が発揮する力と上記接触力付与手段が発揮する力とを合成した半径方向の合成力を周方向に順次変化させる機能を備えている。そして、順次変化させた上記合成力で内接リングあるいは外接部材のいずれか一方を揺動し、自転防止機構を設けていない外接部材あるいは内接リングを回転させて回転動力を出力する。
なお、上記揺動とは、内接リングあるいは外接部材の中心が、エンドレスの軌跡を描いて移動し、内接リングあるいは外接部材が揺れ動く運動のことである。また、この発明では、上記中心が自転するものと、自転しないものの両方を含む。
【0007】
第2の発明は、上記内接リングあるいは外接部材のうち、いずれか一方を磁性体で構成するとともに、上記複数の駆動手段は、上記磁性体で構成された内接リングあるいは外接部材に対して磁力を作用させる複数の電磁石からなる構成にしている。
【0008】
第3の発明は、上記複数の駆動手段が、上記内接リングあるいは外接部材のいずれかに対して、直接もしくは間接的に押圧力を作用させる複数の押圧手段からなる。
第4の発明は、内接リングには揺動可能にした自転防止機構を設け、順次変化させた上記合成力によって内接リングを揺動させ、外接部材を自転させる構成にしている。
【0009】
第5の発明は、内接リングには自転及び揺動を防止する機構を設け、順次変化させた上記合成力によって上記外接部材を揺動させながら自転させる構成にしている。
【0010】
第6の発明は、外接部材には自転及び揺動を防止する機構を設け、順次変化させた上記合成力によって上記内接リングを揺動させながら自転させる構成にしている。
第7の発明は、外接部材には揺動可能にした自転防止機構を設け、順次変化させた上記合成力によって上記内接リングを自転させる構成にしている。
第8の発明は、上記複数の駆動手段が保持体に保持され、この保持体は上記内接リング及び外接部材から分離する構成にしている。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、接触力付与手段によって内接リングあるいは外接部材のうちのいずれか一方に常時一定の力を作用させるようにしたので、駆動手段を円周方向に均等に設ける必要がない。したがって、一方の側に駆動手段等を設けるためのスペースがなくても、当該回転動力機構を設置することができる。
【0012】
第2の発明によれば、内接リングあるいは外接部材のいずれか一方を磁性体で構成し、駆動手段を電磁石で構成したので、例えば、電磁石の磁力が作用する限り、駆動手段と内接リングあるいは外接部材との間に、別の部材を介在させることもでき、その分、設計の自由度が大きくなる。
【0013】
第3の発明によれば、電磁石を用いる場合と異なり、内接リングや外接部材の素材を選択するときの自由度が大きくなる。
第4〜7の発明によれば、出力を取り出す出力源を、外接部材にしたり、内接リングにしたりでき、その使用状況に応じて使い分けることができる。
【0014】
第8の発明によれば、駆動手段を保持体に保持させるとともに、この保持体を内接リングおよび外接部材から分離させたので、例えば、内接リングおよび外接部材と保持体とを別置きにし、必要に応じて保持体を内接リングあるいは外接部材に接近させて使用できる。したがって、多様な用途に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は第1実施形態の斜視図である。
【図2】図2は第1実施形態の断面図である。
【図3】図3は上記図2のIII-III線断面図である。
【図4】図4は第2実施形態の斜視図である。
【図5】図5は第2実施形態の断面図である。
【図6】図6は上記図5のVI-VI線断面図である。
【図7】図7は上記図5のVII-VII線断面図である。
【図8】図8は第3実施形態の断面図である。
【図9】図9は第4実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜3に示した第1実施形態は、軸方向に所定の長さを保った筒状のケーシング1の一端には、一対の軸保持部材2,3を、間隔を保ってはめる一方、ケーシング1の他端にも軸保持部材4をはめている。
一対の軸保持部材2,3のうち外側に位置する軸保持部材2には軸受5をはめ、軸保持部材4にも軸受6をはめている。
【0017】
上記のように軸保持部材2にはめた軸受5は、この発明の外接部材であって外周にギアを形成した外接ギア7の軸部8を回転自在に支持し、この外接ギア7を上記軸保持部材2,3間に保持している。また、上記外接ギア7であって、上記軸部8とは反対側にはスクリューシャフト9の軸部10を一体に設けるとともに、この軸部10は軸保持部材2,3のうちの内側に位置する軸保持部材3に回転自在に支持されている。
一方、上記スクリューシャフト9の先端に設けた軸部11は、上記軸受6に回転自在に支持されている。
【0018】
上記のようにしたスクリューシャフト9のスクリュー部には移動体12を噛み合わせているが、この移動体12は、ケーシング1の軸方向に沿って形成したガイド孔13から外方に突出している。そして、上記スクリューシャフト9が回転したとき、上記移動体12はガイド孔13に規制されて回転を阻止されるので、スクリューシャフト9の回転にともなって、移動体12はスクリューシャフト9の軸方向に移動する。
【0019】
さらに、上記外接ギア7の周囲には、磁性体からなり、内周にギアを形成した内接ギアリング14を設けている。言い換えると、外接ギア7を内接ギアリング14内に組み込んでいる。そして、これら内接ギアリング14と外接ギア7とは互いに偏心させるとともに、内接ギアリング14は、その中心がエンドレスの移動軌跡を描く揺動が可能な構成にし、かつ、内接ギアリング14の歯数に対して外接ギア7の歯数を少なくし、これら内接ギアリング14と外接ギアリング7とはそれらの一部が互いにかみ合って相対回転可能にしている。
なお、上記内接ギアリング14がこの発明の内接リングを構成する。
【0020】
上記のようにした内接ギアリング14は、揺動はするがその自転を防止する自転防止機構を設けているが、この自転防止機構は、内接ギアリング14の側面に設けた規制ピン15と、上記軸保持部材2に形成した規制穴16とによって構成される。
すなわち、上記規制穴16の内径は、規制ピン15の外径よりも大きくし、これら規制穴16および規制ピン15によって、内接ギアリング14の自転を防止すとともに、中心がエンドレスの軌跡を描く内接ギアリング14の揺動を許容する。
【0021】
さらに、上記ケーシング1の一箇所には、この発明の接触力付与手段である永久磁石17を設け、この永久磁石17の磁力を、磁性体である内接ギアリング14に作用させられるようにしている。
そして、上記永久磁石17の磁力が内接ギアリング14に作用すると、当該内接ギアリング14は永久磁石17側に引き寄せられ、永久磁石17とは反対側において、図3に示すように内接ギアリング14と外接ギア7とをかみ合わせる。
【0022】
一方、上記ケーシング1の外形に沿う形状にした半円状の保持体18を設け、この保持体18には3つの電磁石19〜21を設けるとともに、これらいずれの電磁石19〜21を励磁させるかを制御する図示していない制御手段を設けている。
【0023】
次に、外接ギア7を回転させる場合について説明する。
先ず、上記保持体18を、永久磁石17とは反対側においてケーシング1に密着させ、図3に示すように、永久磁石17と反対側における半円内に電磁石19〜21を集中的に等間隔で配置された状態にする。
このとき、電磁石19〜21を非励磁状態に保っていれば、内接ギアリング14は、永久磁石17にひきつけられて、この永久磁石17とは反対側において、内接ギアリング14と外接ギア7とがかみ合う。
【0024】
上記の状態から制御手段を用いて、電磁石19〜21を円周方向に順に励磁させていけば、内接ギアリング14は、永久磁石17の吸引力と、励磁された電磁石19〜21の吸引力とによる半径方向の合成力が円周方向に変化していく。この変化する合成力によって、内接ギアリング14は、その中心がエンドレスの軌跡を描く揺動運動をする。内接ギアリング14が上記のように揺動運動すれば、内接ギアリング14と外接ギア7とのかみ合い位置が円周方向に順次ずれ、上記エンドレスの軌跡が1周したとき、外接ギア7は、内接ギアリング14との歯数の差分だけ回転することになる。
【0025】
例えば、上記電磁石19〜21の全てが非励磁の図3の状態から、電磁石19のみを励磁すると、この電磁石19の磁力と上記永久磁石17の磁力との合成力は、上記電磁石19の磁力と上記永久磁石17との中間から外側に向かう力となって、上記電磁石19と上記永久磁石17との中間において上記内接ギアリング14をケーシング1側に引き付ける。次に、電磁石20を励磁すると、上記永久磁石17、電磁石19、及び電磁石20の磁力の合成力が、上記永久磁石17と電磁石19との合成力よりも、永久磁石17から離れた位置に作用して、内接ギアリング14を引き付ける。
さらに、電磁磁石21を励磁すれば、この電磁石21の磁力が加わった合成力が、永久磁石17と反対方向、すなわち電磁石20の方向に作用して、内接ギアリング14を引き付ける。
【0026】
次に、上記電磁石19を非励磁にすると、合成力の方向は電磁石20よりも電磁石21側に移動する。同様に電磁石20を非励磁、次に電磁石21を順次非励磁にすれば、上記合成力の方向は円周方向に移動し、全てが非励磁の図3の状態に戻る。このように、永久磁石17の磁力と、電磁石19〜21の磁力との合成力の方向が円周に沿って移動すると、この合成力の方向と反対側で接触する内接ギアリング14と外接ギア7との接触位置も移動し、その1周ごとに、上記外接ギア7が、内接ギアリング14との歯数の差分だけ回転することになる。
【0027】
また、上記のように電磁石19〜21を円周方向に順次励磁させていくとき、いずれかの電磁石を同時に励磁させたり、それらの磁力の大きさを個々に制御したりすることによって、内接ギアリング14と外接ギア7とのかみ合い位置を無段階的に円周方向に移動させて、よりスムーズな回転力を得ることができる。
なお、上記電磁石の制御方法は、上記の例に限らず、よりスムーズな回転力を得るためには、様々な方法が考えられる。
上記のように内接ギアリング14に対して外接ギア7の歯数を少なくすることによって、これら内接ギアリング14と外接ギア7とで減速機構を構成することになり、その分、大きな回転トルクを得ることができる。
【0028】
上記のようにして外接ギア7が回転すれば、それにともなってスクリューシャフト9が回転するとともに、ガイド孔13で回転を規制された移動体12がスクリューシャフト9に沿って移動する。
なお、この発明の回転動力機構は回転力を出力できればよく、出力された回転力を上記のように移動体12を移動させるのに利用するのはひとつの実施形態に過ぎない。
【0029】
図4〜7に示した第2実施形態は、磁性体からなる内接ギアリング14が揺動回転する構成にしたもので、図5〜7は、電磁石19〜21の合成力が、永久磁石17の吸引力とは正反対に作用している状態を示している。
なお、上記揺動回転とは、その中心がエンドレスの軌跡を描く揺動運動をしながら自転する運動のことである。
この第2実施形態では、内接ギアリング14を、その中心がエンドレスの軌跡を描く揺動運動可能な状態でしかも自転可能にしてケーシング1に組み込んでいる。
【0030】
上記のようにした内接ギアリング14には、それよりも歯数を少なくした外接ギア7を、内接ギアリング14に対して偏心させて組み込んでいるが、この外接ギア7には軸部22を設け、この軸部22をケーシング1に固定している。なお、この軸部22とそれを固定したケーシング1とでこの発明の自転防止機構を構成するものである。
そして、上記内接ギアリング14にはスクリューシャフト9を一体に設けるとともに、このスクリューシャフト9の先端に設けた軸部11が、第1実施形態と同じように軸保持体4に設けた軸受6に支持されている。ただし、この軸受6の内径は軸部11の内径よりも大きくし、軸部11の中心が、内接ギアリング14の中心が描く移動軌跡と同じ軌跡を描けるようにしている。
【0031】
上記スクリューシャフト9には移動体12を設けているが、この移動体12はスクリューシャフト9に直接はめた移動部12aとこの移動部12aに取付けた出力部12bとからなる。そして、出力部12bと移動部12aとの間には、すき間12cを形成し、このすき間12cの範囲内で移動部12aと出力部12bとが相対移動してスクリューシャフト9の揺動を吸収するようにしている。
なお、図中符号12dは出力部12bの側面に形成した溝で、この溝12dとガイド孔13の縁とがはまって、出力部12bがガイド孔13から抜け出るのを防止している。
なお、保持体18に複数の電磁石19〜21を保持させている点は、第1実施形態とまったく同じである。
【0032】
このようにした第2実施形態においても、内接ギアリング14が、その中心がエンドレスの軌跡を描く揺動運動するとともに、内接ギアリング14と外接ギア7とが相対回転する原理は第1実施形態と同じである。
すなわち、上記保持体18を、この発明の接触力付与手段である永久磁石17とは反対側においてケーシング1に密着させ、図6に示すように、永久磁石17と反対側における半円内に電磁石19〜21を集中的に等間隔で配置された状態にする。
このとき、電磁石19〜21を非励磁状態に保っていれば、内接ギアリング14は、永久磁石17にひきつけられて、この永久磁石17とは反対側において、内接ギアリング14と外接ギア7とがかみ合う。
【0033】
上記の状態から制御手段を用いて、電磁石19〜21を円周方向に順に励磁させていけば、内接ギアリング14は、永久磁石17の吸引力と、励磁された電磁石19〜21の吸引力とによる半径方向の合成力が円周方向に変化していく。この変化する合成力によって、内接ギアリング14は、その中心がエンドレスの軌跡を描く揺動運動をする。内接ギアリング14が上記のように揺動運動すれば、内接ギアリング14と外接ギア7とのかみ合い位置が円周方向に順次ずれ、上記エンドレスの軌跡が1周したとき、内接ギアリング14は、外接ギア7との歯数の差分だけ回転することになる。
【0034】
上記のように内接ギアリング14に対して外接ギア7の歯数を少なくしているので、第1実施形態と同様に、これら内接ギアリング14と外接ギア7とで減速機構を構成することになり、その分、大きな回転トルクを得ることができる。
また、上記のように電磁石19〜21を円周方向に順次励磁させていくが、このとき、いずれかの電磁石を同時に励磁させたり、それらの励磁力を制御したりすることによって、内接ギアリング14と外接ギア7とのかみ合い位置を無段階的に円周方向に移動させて、よりスムーズな回転力を得ることができる。
【0035】
上記のように内接ギアリング14が揺動しながら回転すれば、スクリューシャフト9も揺動しながら回転するので、その回転にともなって移動体12がスクリューシャフト9に沿って移動する。なお、このときには、移動部12aも揺動するが、その揺動はすき間12cで吸収される。
【0036】
図8に示した第3実施形態は、ケーシング1に内接ギアリング14を回転自在に組み込むとともに、この内接ギアリング14の一方の側面にスクリューシャフト9を一体に設けている。さらに、このスクリューシャフト9の先端の軸部11を、第1実施形態と同じ構成の軸受6に回転自在に支持させている。
そして、上記スクリューシャフト9には、第1実施形態と同じ移動体12を噛み合わせている。
【0037】
一方、上記内接ギアリング14には、それよりも歯数を少なくした外接ギア7を、内接ギアリング14に対して偏心させて組み込むとともに、この外接ギア7には上記内接ギアリング14とは反対側である外側に突出させた揺動体7aを一体に設けている。
そして、上記揺動体7aの外径は外接ギア7よりも大きくし、その外接ギア7および揺動体7aの揺動過程で、当該揺動体7aがケーシング1に接触しながら揺動する大きさを保っている。
なお、上記外接ギア7および揺動体7aは一体的にしてそれら両者を磁性体で構成しているが、外接ギア7と揺動体7aとを別体にして、少なくとも揺動体7aのみを磁性体で構成してもよい。
【0038】
上記のようにした揺動体7aの外側すなわち外接ギア7とは反対側面に軸部8を設け、この軸部8を第1実施形態と同様の軸受5に支持させている。ただし、この軸受5の内径は軸部8の内径よりも大きくし、軸部8の中心が、外接ギア7の中心が描く移動軌跡と同じ軌跡を描いて揺動できるようにしている。
【0039】
さらに、上記揺動体7aには、揺動はするがその自転を防止する自転防止機構を設けているが、この自転防止機構は、揺動体7aの側面に設けた規制ピン15と、上記軸保持部材2に形成した規制穴16とによって構成される。
すなわち、上記規制穴16の内径は、規制ピン15の外径よりも大きくし、これら規制穴16および規制ピン15によって、外接ギア7の自転を防止すとともに、中心がエンドレスの軌跡を描く外接ギア7の揺動を許容する。
【0040】
さらに、上記ケーシング1の一箇所であって、上記揺動体7aに対応する位置には、この発明の接触力付与手段である永久磁石17を設け、この永久磁石17の磁力を、磁性体である揺動体7aに作用させられるようにしている。
そして、上記永久磁石17の磁力が揺動体7aに作用すると、当該揺動体7aは永久磁石17側に引き寄せられ、この永久磁石17側において、内接ギアリング14と外接ギア7とをかみ合わせる。
【0041】
そして、第1実施形態と同じ構成にした保持体18を、永久磁石17とは反対側においてケーシング1に密着させ、永久磁石17と反対側における半円内に電磁石19〜21を集中的に等間隔で配置された状態にする。
このとき、電磁石19〜21を非励磁状態に保っていれば、上記したように外接ギア7は揺動体7aとともに永久磁石17にひきつけられて、この永久磁石17側において、内接ギアリング14と外接ギア7とをかみ合わせる。
【0042】
上記の状態から第1実施形態と同じ制御手段を用いて、電磁石19〜21を円周方向に順に励磁させていけば、外接ギア7は、永久磁石17の吸引力と、励磁された電磁石19〜21の吸引力とによる半径方向の合成力が円周方向に変化していく。この変化する合成力によって、外接ギア7は、その中心がエンドレスの軌跡を描く揺動運動をする。外接ギア7が上記のように揺動運動すれば、内接ギアリング14と外接ギア7とのかみ合い位置が円周方向に順次ずれ、上記エンドレスの軌跡が1周したとき、内接ギアリング14は、外接ギア7との歯数の差分だけ回転することになる。
【0043】
上記のように内接ギアリング14に対して外接ギア7の歯数を少なくしているので、第1実施形態と同様に、これら内接ギアリング14と外接ギア7とで減速機構を構成することになり、その分、大きな回転トルクを得ることができる。
【0044】
また、上記のように電磁石19〜21を円周方向に順次励磁させていくが、このとき、いずれかの電磁石を同時に励磁させたり、それらの励磁力を制御したりすることによって、内接ギアリング14と外接ギア7とのかみ合い位置を無段階的に円周方向に移動させて、よりスムーズな回転力を得ることができる。
上記のように内接ギアリング14が回転すれば、スクリューシャフト9も回転するので、その回転にともなって移動体12がスクリューシャフト9に沿って移動する。
【0045】
図9に示した第4実施形態は、磁性体からなる外接ギア7が、揺動回転する構成にしたもので、図9は、電磁石19〜21の合成力が、永久磁石17の吸引力とは正反対に作用している状態を示している。
なお、上記揺動回転とは、その中心がエンドレスの軌跡を描く揺動運動をしながら自転する運動のことである。
この第4実施形態では、ケーシング1に内接ギアリング14を組み込んで固定しているが、このように内接ギアリング14をケーシング1に固定する構造が、この発明の自転防止機構を構成することになる。
【0046】
上記ケーシング1に固定した内接ギアリング14には、それよりも歯数を少なくした磁性体からなる外接ギア7を、内接ギアリング14に対して偏心させて組み込み、第1実施形態と同様の原理のもとで、外接ギア7は内接ギアリング14に対して揺動回転可能にしている。
上記のようにした外接ギア7の外側面には軸部8を設け、この軸部8を第1実施形態と同様の軸受5に支持させている。ただし、この軸受5の内径は軸部8の内径よりも大きくし、軸部8の中心が、外接ギア7の中心が描く移動軌跡と同じ軌跡を描いて揺動回転できるようにしている。
【0047】
また、上記外接ギア7であって上記軸部8とは反対側面に揺動体7aを一体に設けているが、この揺動体7aの外径は外接ギア7よりも大きくし、その外接ギア7および揺動体7aが揺動回転する過程で、当該揺動体7aがケーシング1に接触しながら揺動回転できるようにしている。
なお、上記外接ギア7および揺動体7aは一体的にしてそれら両者を磁性体で構成しているが、外接ギア7と揺動体7aとを別体にして、少なくとも揺動体7aのみを磁性体で構成してもよい。
【0048】
また、上記揺動体7aの一方の側面すなわち上記軸部8とは反対側面にスクリューシャフト9を一体に設けている。さらに、このスクリューシャフト9の先端の軸部11を、第1実施形態と同じ構成の軸受6に回転自在に支持させている。ただし、この軸受6の内径は軸部11の内径よりも大きくし、軸部11の中心が、外接ギア7の中心が描く移動軌跡と同じ軌跡を描いて揺動回転できるようにしている。
そして、上記スクリューシャフト9には、第2実施形態と同じ移動体12を噛み合わせている。
【0049】
さらに、上記ケーシング1の一箇所であって、上記揺動体7aに対応する位置には、この発明の接触力付与手段である永久磁石17を設け、この永久磁石17の磁力を、揺動体7aに作用させられるようにしている。
そして、上記永久磁石17の磁力が揺動体7aに作用すると、当該揺動体7aは永久磁石17側に引き寄せられ、この永久磁石17側において、内接ギアリング14と外接ギア7とをかみ合わせる。
【0050】
そして、第1実施形態と同じ構成にした保持体18を、永久磁石17とは反対側においてケーシング1に密着させ、永久磁石17と反対側における半円内に電磁石19〜21を集中的に等間隔で配置された状態にする。
このとき、電磁石19〜21を非励磁状態に保っていれば、上記したように外接ギア7は揺動体7aとともに永久磁石17にひきつけられて、この永久磁石17側において、内接ギアリング14と外接ギア7とをかみ合わせる。
【0051】
上記の状態から第1実施形態と同じ制御手段を用いて、電磁石19〜21を円周方向に順に励磁させていけば、外接ギア7は、永久磁石17の吸引力と、励磁された電磁石19〜21の吸引力とによる半径方向の合成力が円周方向に変化していく。この変化する合成力によって、外接ギア7は、その中心がエンドレスの軌跡を描く揺動回転運動をする。外接ギア7が上記のように揺動回転運動をすれば、内接ギアリング14と外接ギア7とのかみ合い位置が円周方向に順次ずれ、上記エンドレスの軌跡が1周したとき、内接ギアリング14と外接ギア7とはその歯数の差分だけ相対回転することになる。
【0052】
上記のように内接ギアリング14に対して外接ギア7の歯数を少なくしているので、第1実施形態と同様に、これら内接ギアリング14と外接ギア7とで減速機構を構成することになり、その分、大きな回転トルクを得ることができる。
【0053】
また、上記のように電磁石19〜21を円周方向に順次励磁させていくが、このとき、いずれかの電磁石を同時に励磁させたり、それらの励磁力を制御したりすることによって、内接ギアリング14と外接ギア7とのかみ合い位置を無段階的に円周方向に移動させて、よりスムーズな回転力を得ることができる。
上記のように外接ギア7が揺動回転すれば、スクリューシャフト9も揺動回転するので、その回転にともなって移動体12がスクリューシャフト9に沿って移動する。
なお、移動体12の出力部12bと移動部12aとの間には、第2実施形態と同じすき間12cを形成しているので、このすき間12cの範囲内で移動部12aと出力部12bとが相対移動してスクリューシャフト9の揺動を吸収する。
【0054】
なお、上記各実施形態では、接触力付与手段として永久磁石17の引力を利用したが、この永久磁石の斥力を利用してもよい。この場合には、例えば、図3に示した永久磁石17を、内接ギアリング14を挟んで直径方向反対側に設けるとともに、内接ギアリング14の周囲に永久磁石を設ける。そして、上記永久磁石17と、内接ギアリング14の永久磁石との間に斥力が発生するように、両永久磁石の磁極を配置する。
このようにすれば、電磁石19〜21を制御して、第1実施形態と同様に外接ギア7を回転させることができる。
【0055】
また、上記の場合には、永久磁石17も保持体18側に位置させられるので、永久磁石17と電磁石19〜21の全てを上記保持体18側にまとめることができ、保持体18とは反対側をスペース的に開放することができる。
なお、永久磁石の斥力を利用する考え方は、第2〜4実施形態の全てに利用できること当然である。
さらに、接触力付与手段としてスプリングを用い、このスプリングの弾性力を利用して、押圧力あるいは引っ張り力を発揮させるようにしてもよい。そして、このスプリングの押圧力を利用する場合には、上記スプリングを上記電磁石19〜21とともに保持体18側にまとめることができる。
【0056】
また、上記各実施形態において、駆動手段として電磁石19〜21を用いたが、例えばエアシリンダやスプリング等の押圧手段若しくは引張手段を用い、この押圧手段若しくは引張手段によって外接ギア7あるいは内接ギアリング14に、直接又は間接的な力を作用させるようにしてもよい。
さらに、上記各実施形態では、内接ギアリングおよび外接ギアというようにギアを用いたが、内接リングおよび外接部材として、お互いの摩擦力さえ維持できれば、どのようなものであってもよい。
【符号の説明】
【0057】
7 外接ギア
14 内接ギアリング
15 自転防止機構を構成する規制ピン
16 自転防止機構を構成する規制穴
17 接触力付与手段を構成する永久磁石
19〜21 駆動手段を構成する電磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内接リングに、この内接リングに対して偏心して一部を接触させた外接部材を設け、これら内接リングと外接部材とはそれらの一部を接触した状態で相対回転可能にし、かつ、これら内接リングあるいは外接部材のいずれか一方に自転防止機構を設け、上記内接リングと外接部材とを互いに所定の箇所で接触させるために、内接リングあるいは外接部材のうちのいずれか一方に常時一定の力を作用させる接触力付与手段を設け、上記内接リングあるいは外接部材のうちのいずれか一方に対して、上記接触力付与手段の力に抗する方向の力を作用させる複数の駆動手段を設けるとともに、これら複数の駆動手段を制御する制御手段を設け、この制御手段は、上記駆動手段が発揮する力と上記接触力付与手段が発揮する力とを合成した半径方向の合成力を周方向に順次変化させる機能を備え、この順次変化させた合成力で内接リングあるいは外接部材のいずれか一方を揺動し、自転防止機構を設けていない外接部材あるいは内接リングを回転させて回転動力を出力する回転動力機構。
【請求項2】
上記内接リングあるいは外接部材のうち、いずれか一方を磁性体で構成するとともに、上記複数の駆動手段は、上記磁性体で構成された内接リングあるいは外接部材に対して磁力を作用させる複数の電磁石からなる請求項1に記載の回転動力機構。
【請求項3】
上記複数の駆動手段は、上記内接リングあるいは外接部材のいずれかに対して、直接もしくは間接的に押圧力を作用させる複数の押圧手段からなる請求項1に記載の回転動力機構。
【請求項4】
内接リングには揺動可能にした自転防止機構を設け、順次変化させた上記合成力によって内接リングを揺動させ、外接部材を自転させる構成にした請求項1〜3のいずれか1に記載の回転動力機構。
【請求項5】
内接リングには自転及び揺動を防止する機構を設け、順次変化させた上記合成力によって上記外接部材を揺動させながら自転させる構成にした請求項1〜3のいずれか1に記載の回転動力機構。
【請求項6】
外接部材には自転及び揺動を防止する機構を設け、順次変化させた上記合成力によって上記内接リングを揺動させながら自転させる構成にした請求項1〜3のいずれか1に記載の回転動力機構。
【請求項7】
外接部材には揺動可能にした自転防止機構を設け、順次変化させた上記合成力によって上記内接リングを自転させる構成にした請求項1〜3のいずれか1に記載の回転動力機構。
【請求項8】
上記複数の駆動手段は保持体に保持され、この保持体は上記内接リング及び外接部材から分離した請求項1〜7のいずれか1に記載の回転動力機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−21636(P2012−21636A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162114(P2010−162114)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(000110206)トックベアリング株式会社 (83)
【Fターム(参考)】