説明

回転型電気部品

【課題】操作者がスイッチ切換などの回転動作を良好に認識できる回転型電気部品を提供すること。
【解決手段】回転操作される操作体(3)と、前記操作体(3)を回転可能に保持するハウジングと、前記操作体(3)の回転動作を検出する回転検出手段と、前記操作体(3)と共に回転するクリック部材(4)と、前記クリック部材(4)に設けられた係合部(402)と係脱してクリック感触を生起する突部(502)を有するクリック板(5)と、を備え、前記操作体(3)の回転操作に伴って、前記係合部(402)と前記突部(502)とが係脱した際に、クリック音を発生させるクリック音発生手段を、前記係合部(402)および前記突部(502)とは異なる位置に設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作体の回転操作に伴ってクリック感触が生起される回転型電気部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の回転型電気部品は、回転軸の回転操作に伴って、スイッチの切り換えが行われるとともに、回転軸に配設されたクリック部材の係合部が、抵抗基板に形成されたクリック用凸部と係脱してスイッチ切換時におけるクリック感触が生起されるよう構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−173570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の回転型電気部品では、クリック部材およびクリック用凸部が、ともに樹脂などの絶縁体で形成されているため、クリック感触を生起させるクリック部材の係合部とクリック用凸部とが係脱する際に発生する音が小さく、操作者が、例えばスイッチの切換に伴うクリック感触の生起を認識しにくいという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、操作者が、例えばスイッチ切換などの操作体の回転動作を良好に認識できる回転型電気部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の回転型電気部品は、回転操作される操作体と、前記操作体を回転可能に保持するハウジングと、前記操作体の回転動作を検出する回転検出手段と、前記操作体と共に回転するクリック部材と、前記クリック部材に設けられた係合部と係脱してクリック感触を生起する突部を有するクリック板と、を備え、前記操作体の回転操作に伴って、前記係合部と前記突部とが係脱した際に、クリック音を発生させるクリック音発生手段を、前記係合部および前記突部とは異なる位置に設けたことを特徴とする。
【0007】
この回転型電気部品によれば、操作体の回転操作に伴って、クリック部材に設けられた係合部とクリック板に設けられた突部とが係脱してクリック感触が生起される際に、クリック音を発生させるクリック音発生手段を設けたことから、回転操作時に、クリック感触およびクリック音を得ることができるので、操作者が、例えばスイッチ切換などの操作体の回転動作を良好に認識することが可能となる。
【0008】
また、上記回転型電気部品において、前記係合部と前記突部とが係脱した際に、前記クリック板の一部が当接する当接部を設け、前記クリック音発生手段を前記クリック板と前記当接部とで構成することが好ましい。この場合には、クリック板と、クリック板の一部が当接する当接部とでクリック音発生手段を構成できるので、簡単な構成でクリック音発生手段を設けることが可能となる。
【0009】
さらに、上記回転型電気部品において、前記ハウジングは、前記操作体を回転可能に保持する軸受け部材と、前記軸受け部材に重なるケースと、を備え、前記軸受け部材と前記ケースとには、前記操作体の回転軸線方向に沿って複数箇所に挿通孔が形成され、前記挿通孔のそれぞれに前記軸受け部材と前記ケースとを一体化させるための金属製の取り付けピンが挿通され、前記クリック板は、金属材からなるとともに、前記クリック板には、前記取り付けピンがクリアランスを有して挿通される挿通部が形成され、前記係合部と前記突部とが係脱した際に、前記挿通部の端面が前記クリアランス内で移動して、前記当接部を構成する前記取り付けピンに当接することが好ましい。この場合には、ハウジングを組み立てるために用いる取り付けピンを、クリック音発生手段を構成する当接部として利用しているため、別部品を必要とすることなくクリック音発生手段を構成することができ、回転型電気部品の小型化や安価対応を図ることが可能となる。また、クリック音発生手段を構成するクリック板および当接部(取り付けピン)がともに金属材からなるため、クリック音発生手段によって発生するクリック音を大きくすることが可能となる。
【0010】
さらに、上記回転型電気部品において、前記クリック板は、前記軸受け部材と前記ケースとの間にその板面方向に移動可能に配設されているとともに、前記クリック部材は前記操作体に取り付けられた金属製の板ばねからなることが好ましい。この場合には、操作体の回転操作に伴う、クリック部材(板ばね)に形成された係合部と、クリック板に形成させた突部との係脱が、金属同士の係脱となるため、係脱に伴う部材の劣化を抑制することができ、良好なクリック感触を長期に渡って実現すること、すなわちクリック感触の長寿命化が可能となる。
【0011】
さらに、上記回転型電気部品において、前記係合部は、前記クリック板の板面に沿って対向することが好ましい。この場合には、クリック部材(板ばね)に形成された係合部と、クリック板の板面とが面接触した状態で摺動することとなるため、係合部の摩耗に起因する劣化を緩和することができ、クリック感触のさらなる長寿命化が可能となる。
【0012】
さらに、上記回転型電気部品において、前記板ばねは、前記操作体にかしめられて取り付けられているとともに、前記板ばねには、前記操作体の一部と弾接する弾性片が設けられていることが好ましい。この場合には、板ばねをがたつきなく確実に操作体に取り付けることができるため、クリック感触およびクリック音を良好に発生させることが可能となる。
【0013】
さらに、上記回転型電気部品において、前記挿通部は、前記操作体の回転軸線を挟んで対角線上の隅部近傍に一対設けられ、前記突部は、前記一対の挿通部の周方向における中間部に形成されていることが好ましい。この場合には、クリック音発生手段を構成するクリック板の挿通部が一対設けられているため、2箇所でクリック音を発生させることができ、より大きなクリック音を得ることが可能となる。また、一対の挿通部の周方向における中間部に突部が形成されているため、突部および挿通部間の距離を長く取ることができるので、係合部と突部との係脱時に、クリック板がたわみやすくなり、クリック感触のよりいっそうの長寿命化が可能となる。また、クリック板がたわみやすくなるため、ケースと軸受け部材との間に形成される空間内でクリック音が反響しやすくなり、より大きなクリック音を得ることが可能となる。
【0014】
また、上記回転型電気部品において、前記回転検出手段は、前記操作体の回転操作に伴って回転する摺動子と、前記摺動子が摺接する抵抗体パターンが形成された抵抗基板と、前記摺動子が摺接する固定接点が形成された接点基板と、から構成されることが考えられる。この場合には、回転検出手段の構成を簡単にすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、操作者が操作体の回転動作を良好に認識できる回転型電気部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施の形態に係る回転型電気部品を前方から見たときの分解斜視図である。
【図2】上記実施の形態に係る回転型電気部品を後方から見たときの分解斜視図である。
【図3】上記実施の形態に係る回転型電気部品を組み立てた状態の斜視図である。
【図4】上記実施の形態に係る回転型電気部品を組み立てた状態の断面図である。
【図5】上記実施の形態に係る回転型電気部品を組み立てた状態の軸受け部材と、操作体と、板ばねを取り外した状態を示す正面図である。
【図6】上記実施の形態に係る回転型電気部品を組み立てた状態の板ばねとクリック板との関係を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
本発明の実施の形態に係る回転型電気部品は、例えば、パーソナルオーディオのスイッチ等に好適なスイッチ装置として利用可能である。
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態に係る回転型電気部品1を前方から見たときの分解斜視図である。図2は、本実施の形態に係る回転型電気部品1を後方から見たときの分解斜視図である。なお、以下においては、説明の便宜上、図1に示す左上方側を「回転型電気部品1の前方側」と呼び、図1に示す右下方側を「回転型電気部品1の後方側」と呼ぶものとする。また、図1、図2に示す上下方向を「回転型電気部品1の上下方向」と呼ぶものとする。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態に係る回転型電気部品1は、軸受け部材2と、軸受け部材2に回転可能に保持される操作体3と、操作体3に取り付けられる板ばね4と、クリック感触およびクリック音を発生させるクリック板5と、クリック板5を収容するケース6と、ケース6および接点基板12との間に収容される摺動子受け10および摺動子11と、取り付け板15と、取り付けピン16a〜16dと、を含んで構成される。この回転型電気部品1は、操作体3の回転操作に伴って、板ばね4に形成された係合部402と、クリック板5に形成された突部502とが係脱することにより、スイッチ切換時のクリック感触が生起され、かつ、クリック音が発生する構成を有する。
【0020】
軸受け部材2は、合成樹脂などの絶縁体、あるいは亜鉛ダイキャストなどで形成され、中央に貫通孔201aが設けられた概して円筒形状を有する筒状部201と、筒状部201の後端に設けられた概して直方体形状を有する基部202と、から構成される。基部202における筒状部201の周囲には、前後方向に貫通する4つの挿通孔203a〜203d(図1において、挿通孔203dは図示しない)が形成されている。軸受け部材2の後端側には、略円形状の収容凹部204が設けられている(図2参照)。この収容凹部204の内周面の一端(本実施の形態において下端)には、収容凹部204内に突出したストッパー部205が形成されている。基部202の上端部であって、収容凹部204の周囲には、後述するケース6の係合部607と係合可能な係合部206が形成されている。また、基部202の下方部であって、収容凹部204の下方には、後述するケース6の係合部608と係合可能な係合部207が形成されている。
【0021】
操作体3は、アルミニウム、あるいは合成樹脂などで形成され、概して円柱状の軸部301と、軸部301の後端に設けられた鍔状の基盤部302と、基盤部302の後方に延出する断面D字形状の台座部303と、台座部303の後方に延出する略角柱状の駆動部304と、から構成される。軸部301の先端には、断面D字形状の操作部301aが形成されている。基盤部302の後端側には、後方に突出する突出片305a,305bが設けられている。また、基盤部302の外周の一部には、径方向に突出するストッパー部306が設けられている(図2参照)。台座部303は、側面に曲面形状部と、平面形状部と、を有している。
【0022】
板ばね4は、弾性を有する金属板に打ち抜き加工および折り曲げ加工を施して形成される。板ばね4は、概して円環形状をしており、中央に操作体3の台座部303に挿通される孔401が設けられている。板ばね4を構成する金属板としては、例えば、高い硬度を持ち耐久性に優れたオーステナイト系ステンレス(SUS301)が適している。孔401の周囲には、クリック板5側(後方側)から見て凸状の係合部402が設けられている。係合部402には、操作体3の回転軸線方向と直交する方向に延在する平面部402aが設けられている(図2参照)。また、孔401の周囲には、操作体3における突出片305a,305bがそれぞれ挿通される挿通孔403a,403bが形成されている。挿通孔403a,403bに挿通された突出片305a,305bの先端は、押しつぶされるなどして変形させられており、この変形によるかしめにより、板ばね4は操作体3に取り付けられている。孔401の内周の一部には、クリック板5側(後方側)に突出して形成された弾性片404が設けられている(図2参照)。この弾性片404は、板ばね4を操作体3の台座部303に取り付けた際に、台座部303の平面形状部と弾接する。これにより、板ばね4をがたつきなく確実に操作体3に取り付けることができ、クリック感触およびクリック音を良好に発生させることが可能となる。
【0023】
また、板ばね4には、2箇所の曲げ位置それぞれを逆方向に曲げるZ曲げ加工が施されている。以下では、板ばね4のうち、挿通孔403a,403bが形成されている部分を一端部4a、係合部402が形成されている部分を他端部4b、一端部4aと他端部4bに挟まれた部分を中間部4cと記して説明する。一端部4aは、平面状に形成されている。中間部4cは一端部4aに対して金属板を曲げ下げて形成されている。他端部4bは中間部4cに対して金属板を曲げ起こして形成され、一端部4aと略平行に構成されている。一端部4aを平面状とすることで、板ばね4をがたつきなく操作体3に取り付けることが可能となる。
【0024】
クリック板5は、金属板に打ち抜き加工および折り曲げ加工を施して形成される。クリック板5は、矩形形状のうち対角線上にある1組の角部が弧を描いた形状となるように切り欠かれており、中央に操作体3の台座部303に挿通される孔501が設けられている。孔501を規定する板面部5aは、操作体3の回転軸線方向と直交する方向に延在して設けられている。孔501の周囲には、板ばね4側(前方側)から見て凸状段差となる突部502が設けられている。クリック板5における対角線上に位置する他の1組の角部には、一対の挿通部503a,503bが形成されている。なお、挿通部503a(503b)は、円形状を有している。また、突部502は、操作体3の回転軸線を中心とした仮想の円弧(例えば、孔501を画成する円)の周方向において、挿通部503aと503bの中間部に位置している。
【0025】
ケース6は、合成樹脂などで形成され、概して直方体形状を有する基部601から構成される。基部601の中央には、前後方向に貫通して挿通孔602が形成されている。基部601の前面であって、挿通孔602の周囲には略円形状の収容凹部603が設けられている。基部601の後面であって、挿通孔602の周囲には略円形状の収容凹部604が設けられている。基部601における収容凹部603,604の周囲には、前後方向に貫通する4つの挿通孔605a〜605dが形成されている。基部601の前端側において、挿通孔605b,605dの周囲には、挿通孔605a,605cの周囲に対して凹状段差となる段差部606が設けられている。また、基部601の前端側上端部であって、収容凹部603の周囲には、軸受け部材2の凹状の係合部206と係合可能な凸状の係合部607が形成されている。基部601の前端側下方部には、軸受け部材2の凹部からなる係合部207と係合可能な突起からなる係合部608が形成されている。一方、基部601の後端側上端部であって、収容凹部604の周囲には、後述する接点基板12の凸状の係合部125と係合可能な凹状の係合部609が形成されている(図2参照)。また、基部601の後端側下方部には、後述する接点基板12の突起からなる係合部126a,126bとそれぞれ係合可能な凹状の係合部610a,610bが形成されている。
【0026】
また、ケース6の中央部には、フェノール樹脂やエポキシ樹脂などの絶縁性の樹脂材からなる平面状の抵抗基板7がインサート成形などの方法で一体的に埋設されている。図2に示すように、ケース6の収容凹部604内に露出した抵抗基板7には、挿通孔602を囲む円環状の導電体パターン701や、導電体パターン701を囲む下方が開口した円環状の抵抗体パターン702が露出して配設されている。導電体パターン701は、抵抗基板7に銀ペーストなどを印刷形成して構成される。抵抗体パターン702は、抵抗基板7にカーボンなどの抵抗体ペーストを印刷形成して構成される。また、ケース6の下端側には、導電体パターン701および抵抗体パターン702にそれぞれ接続され、抵抗基板7から導出された導電性の金属板からなる接続端子8,9が突出して設けられている。
【0027】
摺動子受け10は、合成樹脂などの絶縁体で形成され、概して円筒形状を有する軸部101と、軸部101を中心とする概して半円形状を有する保持部102と、から構成される。軸部101の中央には、断面が略矩形状の嵌合孔103が形成されている。また、軸部101の前端側には、軸部101より小径の円筒形状を有する小径部104が設けられている。小径部104は、ケース6の挿通孔602に回転可能に挿入される。
【0028】
摺動子受け10の保持部102には、概して一部が開口した円環形状(円弧形状)を有する摺動子11がインサート成形などの方法で一体的に埋設されている。保持部102に保持された摺動子11は、弾性を有する導電性の金属薄板で形成される。摺動子11は、保持部102から露出し、先端部から中間部にかけて2重の円弧形状を有する第1〜第4接片11a〜11dを有している。第1接片11a、第2接片11bは、後述する接点基板12側(後方側)に折り曲げられ、先端部には接点基板12側から見て凸状段差となるようにプレス曲げ加工を施されている。第3接片11c、第4接片11dは、ケース6(抵抗基板7)側(前方側)に折り曲げられ、先端部にはケース6側から見て凸状段差となるようにプレス曲げ加工を施されている。
【0029】
接点基板12は、合成樹脂などの絶縁材で形成され、概して直方体形状を有する基部121から構成される。基部121の中央には、前後方向に貫通して挿通孔122が形成されている。基部121の前面であって挿通孔122の周囲には、挿通孔122を中心とする、略円形状の収容凹部123が設けられている。基部121における収容凹部123の周囲には、前後方向に貫通する4つの挿通孔124a〜124dが形成されている。基部121の前端側上端部であって、収容凹部123の周囲には、ケース6の係合部609と係合可能な係合部125が形成されている。基部121の前端側下方部には、ケース6の係合部610a,610bとそれぞれ係合可能な係合部126a,126bが形成されている。一方、基部121の後端側には、後述する取り付け板15を収容するための収容部127が設けられている(図2参照)。
【0030】
また、接点基板12の中央部には、導電性の金属板からなる固定接点13がインサート成形などの方法で一体的に埋設されている。図1に示すように、接点基板12の収容凹部123内には、一部(図1において左方側)が開口した円弧状の接点パターン131および連続した円環状のコモンパターン132が露出して配設されている。なお、接点パターン131の一方の起端部位置は、クリック板5における突部502の位置に対応して設けられている。また、接点基板12の下端側には、接点パターン131およびコモンパターン132に接続され、接点基板12から導出された接続端子14a,14bが突出して設けられている。
【0031】
取り付け板15は、金属板などで形成され、概して矩形状を有しており、4隅に挿通部15a〜15dが形成されている。取り付けピン16a〜16dは、金属製の棒状部材で形成される。取り付けピン16a〜16dはそれぞれ、取り付け板15の挿通部15a〜15d、接点基板12の挿通孔124a〜124d、ケース6の挿通孔605a〜605dおよび軸受け部材2の挿通孔203a〜203dに挿通される。また、取り付けピン16b,16dは、それぞれクリック板5の挿通部503a,503bに挿通される。なお、これらの取り付けピン16b,16dは、クリック音発生手段の一部を構成する。取り付けピン16a〜16dは、挿通孔203a〜203dから突出する先端部(一端部)がかしめられる。なお、図1、図2においては、かしめられた後の状態の取り付けピン16a〜16dについて示している。また、取り付けピン16a〜16dの他端部には、挿通部15a〜15dよりも径の大きな鍔状部が設けられており、この鍔状部が取り付け板15と当接することにより、取り付けピン16a〜16dが軸受け部材2やケース6などから抜け落ちないように構成されている。
【0032】
続いて、本実施の形態に係る回転型電気部品1を組み立てた状態について説明する。図3は、本実施の形態に係る回転型電気部品1を組み立てた状態の斜視図である。図4は、図3のA−A線矢視断面図である。なお、図3、図4においては、操作体3に操作を受けていない初期状態の回転型電気部品1について示している。
【0033】
図3に示すように、このような構成の回転型電気部品1を組み立てると、取り付けピン16a〜16dによって(図3において、取り付けピン16cは図示しない)、軸受け部材2と取り付け板15との間に、ケース6および接点基板12が挟持されて保持されることによりハウジングが構成される。また、軸受け部材2における筒状部201の貫通孔201aからは、操作体3の軸部301が突出する。
【0034】
図4に示すように、操作体3は、軸部301が軸受け部材2における筒状部201の貫通孔201aに回転可能に挿入されて保持される。操作体3において、基盤部302は、軸受け部材2の収容凹部204に収容されている。台座部303は、軸受け部材2の収容凹部204とケース6の収容凹部603とで形成される収容空間(以下、「前方側収容空間」と記す)に収容されている。駆動部304は、挿通孔602より後方側の位置に配置され、摺動子受け10の嵌合孔103に嵌合している。板ばね4は、操作体3の基盤部302に固定された状態で、前方側収容空間に収容されている。板ばね4は、一端部4aが基盤部302の後面に固定され、中間部4cが後方側に延出した状態となっている。クリック板5は、同じく前方側収容空間に配置された板ばね4と対向して配置される。
【0035】
クリック板5は、板面部5aをケース6の挿通孔605b,605dが形成された段差部606(下段側)と対向させた状態で、前方側収容空間に収容される。段差部606に対向して配置されていることから、クリック板5の後方側には収容凹部603の一部の空間が存在している。クリック板5の孔501には、操作体3の台座部303が挿通されている。
【0036】
摺動子受け10は、ケース6の収容凹部604と接点基板12の収容凹部123とで形成される収容空間(以下、「後方側収容空間」と記す)に収容される。このとき、摺動子11の第1接片11aの先端部は、接点基板12に埋設された固定接点13の接点パターン131と摺接する。第2接片11bの先端部は、固定接点13のコモンパターン132と摺接する。第3接片11cの先端部は、ケース6に埋設された抵抗基板7の抵抗体パターン702と摺接する。第4接片11dの先端部は、抵抗基板7の導電体パターン701と摺接する。このように、回転型電気部品1においては、抵抗基板7、摺動子受け10、摺動子11および固定接点13で回転検出手段が構成されている。
【0037】
ここで、前方側収容空間におけるクリック板5の配置について説明する。図5は、初期状態の回転型電気部品1から軸受け部材2と、操作体3と、板ばね4を取り外した状態を示す正面図である。図5に示すように、クリック板5は、ケース6の段差部606における略直角の角部とクリック板5における略直角の角部とが重なるように段差部606に対し隙間を有してはめ込まれる。この状態で、挿通部503a,503bに取り付けピン16b,16dが挿通されている。挿通部503a(503b)の内径は、取り付けピン16b(16d)の外径よりもわずかに大きく設定されている。そのため、取り付けピン16b(16d)は、挿通部503a(503b)にクリアランスを有して挿通されている。また、このクリアランス内において、クリック板5は、操作体3の回転軸線方向と直交する方向に移動可能に配設されている。さらに、クリック板5は、ケース6の段差部606内において、操作体3の回転軸線方向と直交する方向(板面方向、図6に示す紙面手前−奥方向)に移動可能に配設されている。
【0038】
図6は、初期状態の回転型電気部品1における板ばね4とクリック板5との関係を示す斜視図である。図6に示すように、初期状態において、板ばね4における係合部402と、クリック板5における突部502とは、離れた位置に位置している。板ばね4における係合部402の平面部402aは、クリック板5の板面部5aに面接触した状態で配置されている。したがって、操作体3が回転操作された際に、係合部402は、クリック板5の板面に平面部402aが面接触した状態で摺動することとなる。これにより、摺動時における係合部402への応力が分散され、係合部402の摩耗に起因する劣化が緩和されるため、クリック感触の長寿命化が可能となる。また、係脱時においては、一端部4aと中間部4cとの境界部分に応力集中が生ずるため、クリック感触を強く出すことが可能となる。
【0039】
続いて、本実施の形態に係る回転型電気部品1の動作について説明する。初期状態から操作体3の軸部301を所定量回転すると、操作体3の台座部303に取り付けられた板ばね4が操作体3とともに回転する。そして、板ばね4に形成された係合部402は、クリック板5に形成された突部502に当接した後、突部502を乗り越える。すなわち、係合部402と突部502とが係脱する。このとき、突部502が、係合部402を押圧することにより、板ばね4がたわみ、板ばね4の弾性付勢力によってクリック感触が生起される。このとき、突部502も、係合部402によって押圧される。クリック板5は、その板厚がケース6の段差部606の段差寸法よりも小さく設定されており、軸受け部材2とケース6との間に挟持されていない。このため、クリック板5は、回転軸線方向に移動可能に配設されており、また、クリック板5の後方側には収容凹部603が設けられていることから、突部502の押圧によってクリック板5全体がたわむ。したがって、突部502への応力が分散され、係脱に伴う劣化が緩和されるため、クリック感触の長寿命化が可能となる。また、係合部402と突部502との係脱は、金属材同士の係脱となるため、係脱に伴う部材の劣化を抑制することができ、良好なクリック感触を長期にわたって実現することが可能となる。すなわち、クリック感触の長寿命化が可能となる。
【0040】
また、係合部402の傾斜した一方の側面が突部502の傾斜した一方の側面に当接した状態から、突部502を乗り越えた際(直後)に、係合部402の傾斜した他方の側面が突部502の傾斜した他方の側面を回転軸線方向に付勢するため、突部502を含むクリック板5には、板ばね4の回転方向とは逆方向に力が加わる。これにより、クリック板5がクリアランス内において回転するように移動し、挿通部503a(503b)の一部が取り付けピン16b(16d)に当接することにより、金属材同士がぶつかってクリック音が発生する。このように、クリック板5における挿通部503a(503b)および取り付けピン16b(16d)によってクリック音発生手段を構成しているため、簡単な構成でクリック音発生手段を設けることが可能となる。また、回転型電気部品1におけるハウジングを組み立てるために用いる取り付けピン16b,16dを、クリック音発生手段の構成部材として利用しているため、別部品を必要とすることなくクリック音発生手段を構成することができ、回転型電気部品1の小型化や安価対応を図ることが可能となる。さらに、挿通部503aと取り付けピン16b、挿通部503bと取り付けピン16dからなる2箇所でクリック音を発生させることができるため、操作者が十分に認識できる音量のクリック音を得ることが可能となる。また、突部502は、操作体3の回転軸線を中心とする円弧の周方向において、挿通部503aと503bの中間部に形成されているため、突部502および挿通部503a(503b)間の距離を長く取ることができるので、係合部402と突部502との係脱時に、クリック板5がたわみやすくなる。そして、クリック板5がたわみやすくなることから、クリック板5が収容される前方側収容空間内でクリック音が反響しやすくなるため、操作者が十分に認識できる音量のクリック音を得ることが可能となる。
【0041】
さらに、突部502は、接点基板12の収容凹部123内に配設された接点パターン131の一方の起端部位置に対応して設けられているため、係合部402が突部502を乗り越えてクリック感触が生起された際に、摺動子11における第1接片11aが接点パターン131と導通してスイッチ(接続端子14aと14bとの間の導通状態)がオフ状態(非導通状態)からオン状態となるように設定されている。このオン状態において、操作体3をさらに回転させると、摺動子11の第3接片11cが抵抗体パターン702上を摺接し、導電体パターン701、第4接片11dおよび第3接片11cを介して、接続端子8と一方の接続端子9間の抵抗値が変化する。
【0042】
なお、操作体3の軸部301が所定量回転すると、軸受け部材2におけるストッパー部205が、操作体3におけるストッパー部306と当接することにより、それ以上の回転が規制される。
【0043】
また、本実施の形態に係る回転型電気部品1のクリック板5に形成された突部502および板ばね4の係合部402は、それぞれ左右の傾斜が同じ形状となっているため、板ばね4に形成された係合部402がこれを乗り越える場合には、行きと帰り、すなわち操作体3の一方向の回転操作と多方向の回転操作とで同じ感触が得られるようになっている。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態に係る回転型電気部品1においては、操作体3の回転操作に伴って、板ばね4(クリック部材)に設けられた係合部402とクリック板5に設けられた突部502とが係脱してクリック感触が生起される際に、クリック音を発生させるクリック音発生手段を設けたことから、回転操作時に、クリック感触およびクリック音を得ることができるので、操作者が、例えばスイッチ切換などの操作体3の回転動作を良好に認識することが可能となる。
【0045】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、さまざまに変更して実施可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更が可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施可能である。
【0046】
例えば、上記実施の形態においては、スイッチ切換の際にクリック感触が生起されるスイッチ付きの回転型電気部品(可変抵抗器)について説明したが、これに限られず、スイッチを有さない可変抵抗器やエンコーダに本発明の構成を適用することも可能である。回転型の可変抵抗器に適用する場合には、例えば、有限回転角度の中間点でクリック感触が生起されるとともに、クリック音を発生されることが考えられる。
【0047】
また、上記実施の形態においては、クリック板5に設けられる挿通部503a(503b)が円形状を有する構成について説明しているが、この構成に限定されず、適宜変更が可能である。例えば、挿通部503a(503b)は、略C字状を有する構成であってもよい。
【0048】
また、上記実施の形態においては、ケース6における段差部606にクリック板5が取り付けられる構成について説明しているが、この構成に限定されず、適宜変更が可能である。例えば、クリック板5を取り付けるための段差部を、軸受け部材2に設ける構成であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 回転型電気部品
2 軸受け部材
201 筒状部
201a 貫通孔
202 基部
203a〜203d 挿通孔
204 収容凹部
205 ストッパー部
206,207 係合部
3 操作体
301 軸部
301a 操作部
302 基盤部
303 台座部
304 駆動部
305a,305b 突出片
306 ストッパー部
4 板ばね(クリック部材)
401 孔
402 係合部
402a 平面部
403a,403b 挿通孔
404 弾性片
4a 一端部
4b 他端部
4c 中間部
5 クリック板
5a 板面部
501 孔
502 突部
503a,503b 挿通部
6 ケース
601 基部
602 挿通孔
603,604 収容凹部
605a〜605d 挿通孔
606 段差部
607,608,609,610a,610b 係合部
7 抵抗基板
701 導電体パターン
702 抵抗体パターン
8,9 接続端子
10 摺動子受け
101 軸部
102 保持部
103 嵌合孔
104 小径部
11 摺動子
11a 第1接片
11b 第2接片
11c 第3接片
11d 第4接片
12 接点基板
121 基部
122 挿通孔
123 収容凹部
124a〜124d 挿通孔
125,126a,126b 係合部
127 収容部
13 固定接点
131 接点パターン
132 コモンパターン
14a,14b 接続端子
15 取り付け板
15a〜15d 挿通部
16a〜16d 取り付けピン(当接部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転操作される操作体と、前記操作体を回転可能に保持するハウジングと、前記操作体の回転動作を検出する回転検出手段と、前記操作体と共に回転するクリック部材と、前記クリック部材に設けられた係合部と係脱してクリック感触を生起する突部を有するクリック板と、を備えた回転型電気部品において、
前記操作体の回転操作に伴って、前記係合部と前記突部とが係脱した際に、クリック音を発生させるクリック音発生手段を、前記係合部および前記突部とは異なる位置に設けたことを特徴とする回転型電気部品。
【請求項2】
前記係合部と前記突部とが係脱した際に、前記クリック板の一部が当接する当接部を設け、前記クリック音発生手段を前記クリック板と前記当接部とで構成することを特徴とする請求項1に記載の回転型電気部品。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記操作体を回転可能に保持する軸受け部材と、前記軸受け部材に重なるケースと、を備え、前記軸受け部材と前記ケースとには、前記操作体の回転軸線方向に沿って複数箇所に挿通孔が形成され、前記挿通孔のそれぞれに前記軸受け部材と前記ケースとを一体化させるための金属製の取り付けピンが挿通され、
前記クリック板は、金属材からなるとともに、前記クリック板には、前記取り付けピンがクリアランスを有して挿通される挿通部が形成され、
前記係合部と前記突部とが係脱した際に、前記挿通部の端面が前記クリアランス内で移動して、前記当接部を構成する前記取り付けピンに当接することを特徴とする請求項2に記載の回転型電気部品。
【請求項4】
前記クリック板は、前記軸受け部材と前記ケースとの間にその板面方向に移動可能に配設されているとともに、前記クリック部材は前記操作体に取り付けられた金属製の板ばねからなることを特徴とする請求項3に記載の回転型電気部品。
【請求項5】
前記係合部は、前記クリック板の板面に沿って対向することを特徴とする請求項4に記載の回転型電気部品。
【請求項6】
前記板ばねは、前記操作体にかしめられて取り付けられているとともに、前記板ばねには、前記操作体の一部と弾接する弾性片が設けられていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の回転型電気部品。
【請求項7】
前記挿通部は、前記操作体の回転軸線を挟んで対角線上の隅部近傍に一対設けられ、前記突部は、前記一対の挿通部の周方向における中間部に形成されていることを特徴とする請求項3から請求項6のいずれかに記載の回転型電気部品。
【請求項8】
前記回転検出手段は、前記操作体の回転操作に伴って回転する摺動子と、前記摺動子が摺接する抵抗体パターンが形成された抵抗基板と、前記摺動子が摺接する固定接点が形成された接点基板と、から構成されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の回転型電気部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−221654(P2012−221654A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84382(P2011−84382)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】