説明

回転式位置検出装置

【課題】中心射影方式に基づく回転式位置測定装置について、検査光路上における個々の構成部材間の最適でない間隔についてより影響度を抑え、及び/又は検査すべき被検査物の汚れの影響を極力受けないようにすること。
【解決手段】光源10と、被検査物20を備えたスリット板と、検出装置30とを備える構成とするとともに、スリット板を光源10及び検出装置30に対して回転軸Rを中心として回転可能とし、相対回転時に回転角度に応じた位置信号を検出装置30によって検出可能であり、回転軸R上の光源10を被検査物20から第1の距離uだけ離間させて配置し、検出装置30を、第1の距離uとは異なる第2の距離vだけ被検査物20から離間させて配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式位置検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1には中心射影方式の検査原理に基づく光学式位置測定装置の部分概要図が示されており、ここでは、光源1が反射式の被検査物2を照射するようになっている。この被検査物2は、位置測定装置が回転状の相対運動をするか、線形の相対運動をするかに応じて、線状及び回転スリットとして形成されることができる。また、被検査物2に入射してくる照射ビームは、該被検査物2によって光源1方向へ反射され、検査面において光電的な検出装置3へ到達する。ここで、被検査物2は、光源1及び検出装置3に対して相対変位可能に配置されている。すなわち、被検査物は、線形の軸に沿って変位可能であるか、又は回転軸を中心として回転可能となっている。
【0003】
被検査物2が光源1及び検出装置3に対して相対回転する場合には、検査面において、変調された縞模様が得られ、この縞模様は、検出装置3によって、変位に応じた位置信号に変換可能である。
【0004】
このような位置測定装置によって、互いに変位(線形又は回転)する2つの物体の相対位置又は絶対位置を決定することが可能である。ここで、2つの物体のうちいずれかは被検査物2に接続され、他方は光源1及び検出装置3に接続されている。
【0005】
図1から分かるように、光源1は被検査物2から距離uだけ離間して配置されており、以下、この距離uを第1の距離という。また、検出装置3は被検査物2から距離vだけ離間して配置されており、以下、この距離vを第2の距離という。図1においては、第2の距離vは第1の距離uと異なっている。
【0006】
モデル的に、上述の検査用光路を、実際の光源1の代わりに被検査物2から第1の距離uだけ離間した仮想光源1’によって反対側から距離u’=u離間した位置から被検査物2を照射することが考えられる。この仮想光源1’から照射される照射ビームは、被検査物2の検査されるスリットの検出面への中心射影を引き起こすものとなっている。
【0007】
光学的な中心射影方式の検査原理に基づく回転式位置測定装置が例えば特許文献1に開示されている。この位置測定装置は光源、回転対称かつ反射性の被検査物を備えたスリット板及び光電式の検出装置を含んで構成されており、スリット板は、回転軸を中心として、光源及び検出装置に対して回転可能となっている。そのため、相対回転する際に、回転角度に応じた位置信号が検出装置によって検出可能となっている。
【0008】
ここで位置信号を生成するために使用されている中心射影方式の検査原理は、いわゆる3格子システムと呼ばれ、例えば非特許文献1に開示されている。
【0009】
理想的な場合には、このような中心射影方式による検査においては、第1の距離u及び第2の距離vは同一のものとして選択される。ここで、位置測定装置の適当な構成要素は、光路中に適切に配置される。また、第1の距離u及び第2の距離vを同一に選択した場合には、生じ得る物体間あるいは被検査物2間の間隔すなわち検査距離の変化が検査面に生じた照射による結像の大きさに影響を及ぼさない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−133552号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】R. Pettigrew著、"Analysis of Grating Imaging and its Application to Displacement Metrology"、SPIE Vol. 36, 1st European Congress on Optics applied to Metrology、1977、第325〜332ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、実際には、第1の距離u及び第2の距離vが常に同一であることは保証されていない。すなわち、図1に示されているように、第1の距離uが第2の距離vと相違する、具体的には、u<vの関係となることがある。このような場合には、検査距離の変動が照射による結像の大きさの変化を生じさせてしまい、その結果、位置測定における誤差を招くこととなってしまう。
【0013】
上記のような位置測定装置における他の問題は、被検査物上の汚れによる影響度に基づく問題である。
【0014】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、中心射影方式に基づく回転式位置測定装置について、検査光路上における個々の構成部材間の最適でない間隔についてより影響度を抑え、及び/又は検査すべき被検査物の汚れの影響を極力受けないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的は、請求項1記載の特徴を備えた回転式位置測定装置によって達成される。
また、本発明による回転式位置測定装置の他の実施形態は、各従属請求項に記載されている。
【0016】
本発明による回転式位置測定装置は、光源と、回転対称かつ反射性を有する被検査物を備えたスリット板と、電光式の検出装置とを含んで成る回転式位置測定装置であって、前記スリット板を前記光源及び前記検出装置に対して回転軸を中心として回転可能とし、相対回転時に回転角度に応じた位置信号を前記検出装置によって検出可能であり、前記回転軸上の前記光源を前記被検査物から第1の距離だけ離間させて配置し、前記検出装置を、前記第1の距離とは異なる第2の距離だけ前記被検査物から離間させて配置し、前記スリット板を、光学手段を含むよう構成し、該光学手段を、前記光源の結像が前記第1の距離とは異なる第3の距離だけ前記被検査物から離間した位置に形成される光学的効果を有するよう構成したことを特徴としている。なお、このとき、第3の距離を第2の距離と同一にすることも可能である。
【0017】
本発明による回転式位置測定装置の他の実施形態は、前記スリット板上の光学手段を、所定の焦点距離を有する凹面鏡の光学的効果に対応する光学的効果を有するよう構成したことを特徴としている。
【0018】
このとき、前記スリット板上の光学手段により前記光源の実像を任意の位置に形成し、該位置から照射される照射ビームが、まず前記検出装置を通過して前記被検査物に到達し、ここで反射された後、前記検出装置方向へ収束するよう構成することも可能である。
【0019】
また、本発明の他の実施形態は、前記スリット板上の光学手段を、所定の焦点距離を有する凸面鏡の光学的効果に対応する光学的効果を有するよう構成したことを特徴としている。
【0020】
さらに、前記被検査物を径方向スリットとして形成し、該径方向スリットを、異なる反射特性を有し、かつ、円環状に配置された複数のスリット領域で構成することも考えられる。
【0021】
また、前記スリット板上の比較的高い反射率を有する前記スリット領域を、該スリット領域に入射される照射ビームに対する光学的効果を有するよう構成することもできる。
【0022】
また、前記光学手段を、回転対称の段状構造として前記スリット板の支持基板上に形成することも可能である。
【0023】
本発明による回転式位置検出装置の他の実施形態は、前記光源を、中間配置された光学要素を介すことなく前記被検査物を完全に照射するよう構成したことを特徴としている。
【0024】
さらに、前記検出装置を円環状の検出装置アセンブリを含んで構成するとともに、該検出装置アセンブリを前記回転軸を中心として円環状に配置された複数の検出要素で構成することも可能である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、検査光路中における構成部材の距離の変化に対する影響度を大きく低減することが可能である。また、本発明によれば、例えば位置測定装置の誤った取付により生じ得る理想的な間隔からのずれが生じた場合であっても、十分なクオリティの位置信号を得ることが可能である。
【0026】
また、他の利点は、被検査物と検出装置の間で軸方向へ拡径する照射ビームにより、回転角度に応じた位置信号を生成するために、非常に小さな検査面を検出装置において得ることが可能である。これにより、検出装置に対するコスト削減も図ることができる。さらに、このような光路により、被検査物に照射される領域が検査装置へ結像される範囲よりも大きいため、被検査物に生じ得る汚れによる影響度を大幅に低減することも可能である。
【0027】
本発明による他の利点は、以下の図面を用いた説明において明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】中心射影方式の検査原理に基づく光学式位置測定装置の部分概要図である。
【図2】本発明による回転式位置測定装置の第1の実施形態による部分概要図である。
【図3a】本発明による回転式位置測定装置の第1の実施形態による検出装置の部分側面図である。
【図3b】本発明による回転式位置測定装置の第1の実施形態による検出装置の平面図である。
【図4a】本発明による回転式位置測定装置の第1の実施形態によるスリット板の平面図である。
【図4b】図4aにしめすスリット板の部分断面図である。
【図5】本発明による回転式位置測定装置の第2の実施形態による部分概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0030】
<実施の形態1>
図2には、本発明による回転式位置測定装置の第1の実施形態が図1と同様に部分的かつ概略的に示されている。
【0031】
回転式位置測定装置の図示の実施形態においては光源10が設けられており、この光源10は、回転対称で反射性を有する被検査物20を備えたスリット板を照射するものとなっている。光源10と被検査物20の間には他の光学要素が配置されておらず、本発明による回転式位置測定装置のコンパクト化を図ることが可能となっている。スリット板上の被検査物20は径方向スリットとして形成されており、この径方向スリットは、回転軸Rの周囲に環状に配置されつつ様々な反射特性を有するスリット領域で構成されている。
【0032】
ここで、被検査物20としては、周期的に配置されつつ様々な反射率を有するスリット領域を備えたインクリメンタルスリットや、非周期的に配置されつつ異なる周期性を有するアブソリュートスリットなどが考えられる。また、照射される照射ビームは、回転対称であり完全に照射される被検査物20によって光源10へ向けて反射され、検出面において、回転対称の光電式の検出装置30へ至る。被検査物20を備えたスリット板は、光源10及び検出装置30に対して、回転軸Rを中心に回転可能となっている。被検査物20を備えたスリット板の光源10及び検出装置30に対する相対回転時には、検出面において、環状かつ変調された縞模様が生じる。そして、この縞模様は、検出装置30によって、回転角度に応じた位置信号に変換される。
【0033】
このような回転式位置測定装置によって、回転軸Rを中心に回転可能な2つの物体の互いの相対位置又は絶対位置を検出することが可能である。これら2つの物体のうちいずれかがここではスリット板あるいは被検査物20に接続されている一方、他方は光源10及び検出装置30に接続されている。なお、これら2つの物体としては、互いに相対回転する機械部品が考えられる。また、位置測定装置により生成される位置信号は機械制御に用いられ、この機械制御は、例えば対応する機械部品の位置決めに用いられる。
【0034】
図2に示すように、光源10は、回転軸R上において被検査物20との間に第1の距離uをもって配置されている。また、検査装置30は、被検査物20から第2の距離vをもって配置されている。ここで、第2の距離vは、第1の距離uと異なるように設定されている。
【0035】
本発明においてはスリット板に複数の光学手段が設けられているか、又は統合されており、これら光学手段は、光源10の像を回転軸R上のある位置に形成するものとなっている。また、この像は被検査物20から第3の距離u’だけ離間しており、この第3の距離u’も第1の距離uとは異なるものとなっている。図2には、この位置に結像された光源すなわち光源の像が符号10’を付して示されているとともに、この位置から照射される光路が破線で示されている。
【0036】
図示の実施形態においては、適当な光学手段が、第3の距離u’が第2の距離vと同一となるようスリット板において寸法設定されている。しかしながら、後述するように、第2の距離vと同一となるよう第3の距離u’を設定することは、本発明において必須のものではない。すなわち、本発明における回転式位置測定装置において、第3の距離u’を他の方法で選択してもよい。
【0037】
スリット板に統合された光学手段は、それぞれ所定の焦点距離fを有する凹面鏡又は凸面鏡の光学的効果を有している。図2に示す実施例においては、スリット板上の適当な光学手段を介して凹面鏡の光学的効果が得られるようになっており、この凹面鏡の焦点距離は、凹面鏡による結像時の対物距離よりも大きくなるよう設定されている。これにより、光源10の結像が回転軸R上のある位置に仮想の光源10’としてなされる。なお、回転軸R上のある位置は、被検査物20から第3の距離u’だけ離間している。
【0038】
以下に、本実施の形態についてのスリット板における凹面鏡あるいは適当な光学手段の焦点距離fをどのように算出するか説明する。なお、焦点距離fは、第3の距離u’において仮想光源10’を得るために必要である。
第1の距離及び第2の距離をそれぞれu、vとすると、拡大係数(Abbildungsmassstab)m1,2は、
1,2=u/(2v)±Sqrt((u/(2v))2−1) (式1)
という関係となる。
【0039】
必要な第3の距離u’は、
u’=m1,2・u (式2)
となる。
【0040】
そして、凹面鏡に対して必要な焦点距離は、
1/u+1/u’=1/f (式3)
から算出される。
【0041】
スリット板における適当な光学手段によって、結果的に、上記のように算出される焦点距離fを有する凹面鏡の光学的効果が保証されることになる。そのため、光源10の仮想の結像が所望の位置に形成されることになる。
【0042】
本発明による回転式位置測定装置の図2に示す第1の実施形態の具体的な構成を、図3a,図3b,図4a及び図4bに基づいて説明する。ここで、図3a及び図3bには位置測定装置全体の異なる一部を示されており、図4a及び図4bには被検査物を含むスリット板の異なる角度から見た図が示されている。
【0043】
位置測定装置のケーシング700内における固定された回路ボード500上には検出装置300が配置されており、この検出装置300上の中心部には光源100が配置されている。検出装置300と光源100は、ボンディングワイヤ400を介して、回路ボード500における不図示の信号伝達ケーブルに接続されている。また、回路ボード500は、ケーブル600を介して不図示の後続の電子機器に結合されている。また、ケーブル600によって、生成された位置信号が伝達されるとともに、位置測定装置内の電子部品に電力供給がなされるようになっている。
【0044】
特に図3bに示すように、検出装置300は円環状の検出装置アセンブリ310を含んで構成されており、この検出装置アセンブリ310は、回転軸Rを中心として一定間隔に配置された各検出要素で構成されている。
【0045】
また、ケーシング700内においてスリット板210が回転軸Rを中心として回転可能に配置されており、このスリット板210は、その検出装置300と対向する側において反射性の被検査物200を支持している。このスリット板210には光学手段が統合されており、この光学手段は、上述のような光学的効果すなわち光源100がある位置に結像されるという効果を有している。また、この結像は、被検査物200から第3の距離u’だけ離間している。具体的な本実施の形態において、光学手段は、スリット板210において、このスリット板210が図2に示す実施例に基づく凹面鏡のような光学的効果を有するよう、すなわち得られる第3の距離u’が第2の距離vと同一となるよう形成されている。
【0046】
本実施の形態におけるスリット板210の平面図が図4aに示されており、このスリット板210の部分断面図が図4bに示されている。図4aに示すように、例えばガラス、金属、合成樹脂などで形成された支持基板上のスリット板210上には反射性の被検査物200がインクリメンタルスリットとして配置されており、このインクリメンタルスリットは、回転軸Rを中心として円環状に配置され、かつ、異なる反射特性を有する複数のスリット領域220a,220bで構成されている。被検査物200において暗色で示されたスリット領域220aは、本実施の形態において、これらの間に配置されたスリット領域220bよりも小さな反射率を有している。ここで、スリット領域220aを、これにおいて反射された光が検出装置に到達しないように形成することが考えられる。
【0047】
図4aに示すスリット板210上の同心円は、比較的高い反射率を有するスリット領域220bにおける回転対称の構造あるいは径方向への段状構造の境界部を示している。なお、このスリット領域220bは、図4bにおける部分断面図に示されている。また、スリット板210におけるこの径方向への段状構造により、本実施の形態においては、光源100の所定の結像を得るための光学手段が形成されている。この段状構造の具体的な形成、すなわち、回転対称の段状構造の段の高さ、段の幅及び段の同心性の選択によって、スリット板210が回折性の凹面鏡に対して所定の焦点距離を有することになる。そして、この凹面鏡によって、上述のように、光源100の結像が得られることになる。ここで、段状構造の重要なパラメータの選択は、二点間結像に対する回折要素に対する公知の原理に基づいている。
【0048】
スリット210の製造は、例えば、まず、反射性の支持基板上で回転対称の段状構造を適当な層及び石版上の構造の分離によって形成することによってなされる。次に、例えば適当な吸収性の材料を分離することで、その上に比較的小さな反射率を有する径方向スリットのスリット領域が形成される。
【0049】
これに代えて、例えばCDの製造において知られている技術によってスリット板210を形成してもよい。この場合、比較的小さな反射率を有するスリット領域には回折性の微細構造が設けられ、この微細構造によって、この微細構造に入射する光が検査装置に到達せずに空間方向へ回折されることが保証される。このような微細構造は、回転対称の段状構造としても、例えばまず透明な合成樹脂に成形され、次に良好な反射性を有する例えばアルミニウムや金などの金属層を取り付けられる。
【0050】
ところで、本発明による回転式位置測定装置の本実施の形態において、スリット板における凹面鏡として形成された光学手段の代わりに、スリット板における適当な段状構造によって光学的効果を得るようにしてもよい。この光学的効果は凸面鏡に相当し、この凸面鏡の焦点距離は、凹面鏡による結像時の対物距離よりも大きくなるよう設定されている。
【0051】
<実施の形態2>
本発明による回転式位置測定装置の第2の実施形態を図5に基づいて説明する。この図5は、本実施の形態における光路を示す図2と同様な図である。
【0052】
ここでも、被検査物2000に対して第1の距離uだけ離間した光源1000が回転軸R上に配置されている。第1の実施形態と同様に、被検査物2000から第2の距離vだけ離間して検出装置3000が配置されている。被検査物2000は、ここでも反射性の径方向スリットとして形成されている。
【0053】
上述の実施形態と異なり、本実施形態においては光学手段がスリット板内に形成されており、この光学手段は、光源1000の結像を所定の位置に形成するようになっている。そして、この光源1000は、被検査物2000から第3の距離u’だけ離間した位置に配置されている。また、第1の実施形態においては凹面鏡として機能する光学手段によって仮想光源が形成されている一方、本実施の形態においてはスリット板内に形成された光学手段によって光源の実像1000’が形成される。このとき、光源の実像1000’の検出装置3000からの距離は、第4の距離wに相当する。この第4の距離wは、被検査物2000と検出装置3000との間の第2の距離vと同一となっている。また、得られる第3の距離u’は、ここでは上述の実施形態とは違い、第2の距離vと同一となっている。光学手段は、本実施の形態においても凹面鏡として形成されているが、上述の実施形態と異なり、この凹面鏡の焦点距離は対物距離よりも小さく設定されている。
【0054】
光源の実像1000’の位置に起因して、この実像1000’から照射される照射ビームは図5に示すようにまず検査装置3000を通過して被検査物2000へ至り、ここで反射されて検査装置3000方向へ収束する。
【0055】
本実施の形態においては第1の距離uと第2の距離vの一致は保証されておらず、これにより、中心射影方式の検査原理に基づき、起こり得る被検査物2000と検出装置3000の間の変化の際に、検査面において生じる照射による結像の大きさに変化が生じる。照射による結像の直径が変化してもこの照射による結像における暗部と明部の移行領域の位置は変化しないため、このような変化は、本発明による回転対称な検査面への結像時において大きな問題とはならない。
【0056】
また、本実施の形態の利点は、検査距離の変動に依存しないことではなく、被検査物2000と検出装置の間に収束する光路が存在するという事実にある。すなわち、被検査物の構造は、検査面に縮小されて結像され、従来のこのようなシステムに比して検出装置3000における検査面の大きさを小さくすることができる。さらに、これにより、検査すべき被検査物2000に生じ得る汚れの影響をより受けにくくすることができる。
【0057】
なお、本発明は上述の実施の形態に限られず、本発明の範囲を逸脱しない限り他の実施の形態も考えられる。
【符号の説明】
【0058】
1 光源
1’ 仮想光源
2 被検査物
3 検出装置
10 光源
10’ 仮想光源
20 被検査物
30 検出装置
100 光源
200 被検査物
210 スリット板
220a,220b スリット領域
300 検出装置
310 検出装置アセンブリ
400 ボンディングワイヤ
500 回路ボード
600 ケーブル
700 ケーシング
1000 光源
1000’ 仮想光源
2000 被検査物
3000 検出装置
f 焦点距離
R 回転軸
u 第1の距離
v 第2の距離
u’ 第3の距離
w 第4の距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源(10;100;1000)と、
回転対称かつ反射性を有する被検査物(20;200;2000)を備えたスリット板(210)と、
電光式の検出装置(30;300;3000)と
を備えて成る回転式位置測定装置であって、
前記スリット板(210)を前記光源(10;100;1000)及び前記検出装置に対して回転軸(R)を中心として回転可能とし、相対回転時に回転角度に応じた位置信号を前記検出装置(30;300;3000)によって検出可能であり、
前記回転軸(R)上の前記光源(10;100;1000)を前記被検査物(20;200;2000)から第1の距離(u)だけ離間させて配置し、
前記検出装置(30;300;3000)を、前記第1の距離(u)とは異なる第2の距離(v)だけ前記被検査物(20;200;2000)から離間させて配置し、
前記スリット板を、光学手段を含むよう構成し、該光学手段を、前記光源(10;100;1000)の結像が前記第1の距離(u)とは異なる第3の距離(u’)だけ前記被検査物(20;200;2000)から離間した位置に形成される光学的効果を有するよう構成した
ことを特徴とする回転式位置測定装置。
【請求項2】
前記第3の距離(u’)を前記第2の距離(v)と同一としたことを特徴とする請求項1記載の回転式位置測定装置。
【請求項3】
前記スリット板(210)上の光学手段を、所定の焦点距離(f)を有する凹面鏡の光学的効果に対応する光学的効果を有するよう構成したことを特徴とする請求項1記載の回転式位置測定装置。
【請求項4】
前記スリット板(210)上の光学手段により前記光源(10;100;1000)の実像を任意の位置に形成し、該位置から照射される照射ビームが、まず前記検出装置(30;300;3000)を通過して前記被検査物(20;200;2000)に到達し、ここで反射された後、前記検出装置(30;300;3000)方向へ収束するよう構成したことを特徴とする請求項3記載の回転式位置測定装置。
【請求項5】
前記スリット板(210)上の光学手段を、所定の焦点距離(f)を有する凸面鏡の光学的効果に対応する光学的効果を有するよう構成したことを特徴とする請求項1記載の回転式位置測定装置。
【請求項6】
前記被検査物(20;200;2000)を径方向スリットとして形成し、該径方向スリットを、異なる反射特性を有し、かつ、円環状に配置された複数のスリット領域(220a,220b)で構成したことを特徴とする請求項1記載の回転式位置測定装置。
【請求項7】
前記スリット板(210)上の比較的高い反射率を有する前記スリット領域(220b)を、該スリット領域に入射される照射ビームに対する光学的効果を有するよう構成したことを特徴とする請求項1記載の回転式位置測定装置。
【請求項8】
前記光学手段を、回転対称の段状構造として前記スリット板(210)の支持基板上に形成したことを特徴とする請求項1記載の回転式位置測定装置。
【請求項9】
前記光源(10;100;1000)を、中間配置された光学要素を介すことなく前記被検査物(20;200;2000)を完全に照射するよう構成したことを特徴とする請求項1記載の回転式位置測定装置。
【請求項10】
前記検出装置(30;300;3000)を円環状の検出装置アセンブリ(310)を含んで構成するとともに、該検出装置アセンブリ(310)を前記回転軸(R)を中心として円環状に配置された複数の検出要素で構成したことを特徴とする請求項1記載の回転式位置検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図4b】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−61330(P2013−61330A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−195723(P2012−195723)
【出願日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【出願人】(390014281)ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (115)
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
【Fターム(参考)】