説明

回転式充填装置

【課題】 充填時における液体の舞い上がりによる泡立ちを抑え、気泡量の増大を大幅に抑える。
【解決手段】 円板9の外周に複数の充填バルブ5を支持し、円板9がほぼ1回転する間に充填バルブ5のノズル32に開口部10bをあてがった容器10内へノズル32から液体Lを注入する。充填バルブ5を傾斜させて支持することにより、ノズル32から下方に吐出される液体Lの吐出方向を、鉛直に支持した容器10に対して円板9の回転中心側へ傾斜させる。これにより、充填バルブ5のノズル32から吐出させた液体Lを、容器10の底部におけるほぼ中心に落下させ、容器10の底面に沿って外周側へ均一に分散させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料水等の液体をPETボトルやボトル缶等の容器に充填する回転式充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料水等の液体をPETボトルやボトル缶等の容器に充填する装置として、回転式充填装置が用いられている。この回転式充填装置は、回転する円板の外周部に複数の充填バルブを備えており、円板がほぼ1回転する間に、充填バルブから容器内への充填を行う。
ところで、充填バルブから容器内に充填する液体が、容器底部における周面との隅にぶつかると、充填される液体が舞い上がり、その乱流エネルギーによって空気の巻き込みが生じ気泡量が増大してしまう。
このため、充填バルブにスプレッダと呼ばれる拡水部を取り付け、充填液を容器内壁に沿うように拡げながら充填し、容器内壁を沿うことで容器底への衝突エネルギーを下げたり、容器底付近まで充填ノズルを挿入し、ノズル先端から容器底までの落下距離を短くして衝突エネルギーを下げたり、液体の充填時に容器を大きく傾けることにより、容器の内面に沿って液体を流して流体速度を減速させ、容器の底部における衝突エネルギーを下げて乱流エネルギーを下げたり、何れも充填時の容器底での液体の巻き上がりを抑え気泡混入を少なくする手法の技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−100096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記装置では、充填液を容器内面に沿わせるため、スプレッダと呼ばれる拡水部を取り付けたり、容器の把持機構部に、充填時に容器を大きく傾ける複雑な構造の大がかりな機構、充填ノズルを容器底まで挿入する機構等が必要であり、設備コストが嵩み、しかもこれらの部品は容器の形状により型替えが必要になる。
また、近年では、容器底部の形状として、中心部分が突出したような複雑なものが多く、このため、容器の内面に沿わせて液体を充填しても、容器の底部に形成された中心の凸部によって液体が舞い上がり、結果的に空気の巻き込みによる泡立ちが生じて気泡量の増大を招いてしまう。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、充填時における液体の舞い上がりによる泡立ちを抑え、巻き込み気泡量の増大を大幅に抑えることが可能な回転式充填装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明者らは鋭意検討を行った。その結果、容器の内面に沿って液体を流し込むと、容器の底部において液体を流し込んだ方向の延長線上の特定の位置に液体が集中し、その結果、前記の容器の底部の形状の曲面に沿った方向に舞い上がる現象があることに着目した。液体が容器の底部の形状の曲面に沿って舞い上がると、自ずと大きく舞い上がることになる。このため、舞い上がり量を抑えるには、容器の底部において液体を均等に分散させるのが有効ではないかと考えるに至った。
【0007】
これに基づいてなされた本発明の回転式充填装置は、円板の外周に複数の充填バルブを備え、円板の回転中に、充填バルブのノズルに開口部があてがわれた容器内へノズルから液体を注入する回転式充填装置であって、充填バルブのノズルから吐出された液体が、容器の底部におけるほぼ中心に落下されることを特徴とする。
容器の底部は、ガラス壜やアルミ缶ではほぼ凸状の半球形状で、PETボトルでは放射状に容器底部の中心点に対して点対称な形状をしており、他のどの容器においても容器の底部中央から点対称な形状をしており、角型容器や多角形容器で点対称性が取れていなくとも飲料充填時の衝突状況が最も安定しているのが容器の底部中央になる。
このように、容器の底部におけるほぼ中心に液体を落下させるので、例え容器底部の中心に凸部があっても、容器底部に落下した液体が、容器の底部中心から底面に沿って周囲に均等に分散し、容器内に安定して充填される。これにより、容器内における液体の舞い上がりによる泡立ちを抑えて気泡量の増大を抑えることができる。また容器の成形バラツキによる影響や容器の充填ノズル下での姿勢の影響も受け難くなる。
【0008】
ところで、回転式充填装置においては、液体は、円板の回転中にノズルから吐出されて容器に充填される。このため、ノズルから吐出される液体は遠心力を受け、円板の外周側に向けて傾斜するように流れる。したがって、ノズルからの液体の吐出方向をそのまま容器の底部の中心に向けたのでは、遠心力によって液体が外周側に流され、液体を容器の底部のほぼ中心に落下させることはできない。
一般に、回転式充填装置においては、生産効率を上げるために高速で円筒ドラム状の充填機を回転させており、上記の問題は非常に顕著なものとなる。
【0009】
そこで、本発明の回転式充填装置においては、充填バルブを、ノズルから下方に吐出される液体の吐出方向が、鉛直に支持された容器に対して下方へ向かって円板の回転中心側へ傾斜するよう設けるのが好ましい。これにより、ノズルから吐出される液体の吐出方向を、遠心力によって径方向外方へ傾けられる分だけ円板の回転中心側へ傾斜させることができ、鉛直に支持された容器の底部の中心に液体を落下させることができる。
このためには、充填バルブ全体を傾斜しても良い。充填バルブの全体を傾斜させることにより、液体の吐出方向を容易に傾斜させることができる。
【0010】
また、充填バルブの先端部分を傾斜させるようにしても良い。このようにしても、液体の吐出方向を容易に傾斜させることができる。このような構造は、既存の回転式充填装置に対して適用が容易である。充填バルブの先端部分のみを交換すればよいからである。
【0011】
容器の底部の中心に液体を落下させるには、容器を支持する容器ホルダによって、ノズルから鉛直下方へ吐出される液体の吐出方向に対して下方へ向かって円板の外周側へ傾斜するように容器を支持しても良い。ノズルから鉛直下方へ吐出される液体の吐出方向が遠心力によって径方向外方へ傾けられる分だけ円板の外周側へ容器を傾斜させることにより、容器の底部の中心に液体を落下させることができる。容器の底部中央に当てる程度の傾きであれば前記文献記載のような大掛かりな機構は不要であり、簡単に具現化できる。
【0012】
また、ノズルの先端面は、水平に形成しても良い。これにより、液吐出を停止させたとき、液体の液面張力によって、ノズルに液を保持することが可能となる。さらに、ノズルの先端に、多数の開口が形成された、金網状、多孔状のスクリーンメッシュ等と称されるメッシュ部材を設けてもよい。
【0013】
ノズルからの液体の吐出方向と容器との傾斜角度θは、円板の回転による充填バルブの移動軌跡の半径をr(m)、充填バルブの本数をn(本)、重力加速度をg(m/s2)、毎分液体を充填できる容器本数をN(本/分)とすると、θ=tan-1(π22r/900n2g)であることが好ましい。
また、液体のノズルからの吐出速度の影響も受けるため、さらには、液体のノズルからの吐出速度に応じ、ノズルからの液体の吐出方向と容器との傾斜角度θを基準とし、調整するのが好ましい。
これにより、ノズルから吐出される液体を、容器の底部における中心へ確実に導くことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の回転式充填装置によれば、充填時における液体の舞い上がりによる泡立ちを抑えて気泡量の増大を大幅に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る回転式充填装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係る回転式充填装置について説明する。
図1は、本発明の回転式充填装置を説明する斜視図、図2は、回転式充填装置を説明する概略平面図、図3は、第1実施形態に係る回転式充填装置の充填バルブの断面図、図4は、容器への充填状態を説明する充填バルブの断面図である。
図1に示すように、回転式充填装置1は、下部機械部2と、この下部機械部2の上部に設けられた上部機械部3とを備えている。
【0016】
上部機械部3には、製品液および炭酸ガス等の不活性ガスを貯える環状の液体貯槽4が備えられ、この液体貯槽4の下部には、図2に示すように、駆動モータ8によって一方向(図2における時計回り)へ回転される円板9が設けられている。この円板9には、その外周に多数の充填バルブ5が周方向へ等間隔に配設されており、円板9が回転することにより、その回転に伴って、直径Dの円軌道上を移動する。
【0017】
下部機械部2は、充填バルブ5の下部の対応位置に、容器台6が設けられた環状の回転テーブル7を備えており、これら容器台6には、円板9が回転した状態で容器10が順次載置される。そして、これら容器台6は、回転テーブル7が円板9の回転と同期して一方向(図2における時計回り)へ移動することにより、充填バルブ5と同様に、直径Dの円軌道上を移動する。
【0018】
また、下部機械部2は、容器10を搬入する搬入コンベア11及び容器10を搬出する搬出コンベア12を備えており、これら搬入コンベア11及び搬出コンベア12によって容器10の回転テーブル7への搬入及び搬出が行われる。
【0019】
これら搬入コンベア11及び搬出コンベア12と回転テーブル7との間には、入口スターホイール14及び出口スターホイール15が設けられている。そして、搬入コンベア11によって搬入される容器10は、入口スターホイール14によって回転テーブル7の容器台6へ受け渡され、回転テーブル7の容器台6の容器10は、出口スターホイール15によって搬出コンベア12へ受け渡される。
【0020】
そして、上記回転式充填装置1では、搬入コンベア11から入口スターホイール14によって空の容器10が容器台6へ受け渡され、円板9がほぼ1回転する間に、容器10内へ充填バルブ5から液体が充填される。その後、液体が充填された容器10は、出口スターホイール15によって搬出コンベア12へ受け渡されて搬出される。
【0021】
次に、上記の回転式充填装置1の充填バルブ5について説明する。
図3は、第1実施形態に係る回転式充填装置1の充填バルブ5の断面図、図4は、容器10への充填状態を説明する充填バルブ5の断面図である。
ここでは、充填バルブ5として、いわゆる炭酸飲料を容器10へ充填する炭酸飲料用充填バルブを例にとり、また、図3に示すように、充填バルブ5によって液体が充填される容器10として、その底部の中心に、上方へ突出する凸部10aが形成されたPETボトルを例にとって説明する。
【0022】
充填バルブ5は、上部機械部3の円板9に、ブラケット21を介して支持されている。この充填バルブ5は、中心に縦長の貫通穴22を有するバルブ本体23を備え、この貫通穴22内に、弁棒24が配設されている。そして、この貫通穴22と弁棒24との間が、筒状の液通路25とされている。
【0023】
バルブ本体23は、上部本体23aと、この上部本体23aの下部に連結された下部本体23bとから構成されており、上部本体23aには、その上部における側部に、液通路25と連通する液供給口26が形成されている。この液供給口26には、液供給管27が接続されており、この液供給管27から送り込まれる液体が、液供給口26を介して液通路25へ供給される。
【0024】
また、下部本体23bにおける貫通穴22には、下方へ向かって次第に窄まる漏斗部31及び漏斗部31に連通して下部本体23bの下端にて開口するノズル32が設けられている。
【0025】
弁棒24には、その先端部に、大径に形成された弁体33が形成されており、この弁体33は、その後端側が上向きに狭まる凸錐面状のシール面33aを有している。また、上部本体23aの下端部近傍には、貫通穴22の内周側に突出する弁座34が設けられており、この弁座34には、上向きに狭まる凹錐面状のシール面34aが形成されている。
【0026】
そして、これら弁体33及び弁座34によって液弁35が構成され、互いのシール面33a、34aが接することにより、液弁35が閉鎖され、シール面33a、34a同士が離れることにより、液弁35が開口される。
【0027】
弁棒24は、その上端が、上部本体23aの上部に取り付けられたシール材36を貫いて上方へ突出されている。また、バルブ本体23には、その上部に、エアシリンダ42が設けられたケース43が取り付けられている。エアシリンダ42は、ロッド41を進退させるもので、このエアシリンダ42のロッド41は、弁棒24の上端に連結されている。
【0028】
そして、このエアシリンダ42のロッド41が上方に引き込まれると、弁棒24が引き上げられ、この弁棒24の弁体33と上部本体23aの弁座34のシール面33a、34a同士が密着して液弁35が閉鎖される。これとは逆に、エアシリンダ42のロッド41が下方に押し出されると、弁棒24が押し下げられ、この弁棒24の弁体33と上部本体23aの弁座34のシール面33a、34a同士が離間して液弁35が開口される。
【0029】
充填バルブ5の下方には、容器ホルダ51が設けられている。この容器ホルダ51は、容器10の上端近傍を把持する把持部51aを有しており、この把持部51aによって容器10の上端近傍を把持して容器10を鉛直方向に支持した状態にて、図示しない昇降機構によって昇降される。
【0030】
また、バルブ本体23の下端には、例えば、ゴムなどの弾性材を環状に形成したシール部材52が、ノズル32の外周を囲うように配設され、固定具53によって下部本体23bに取り付けられている。
そして、容器10の上端近傍を把持部51aによって把持した容器ホルダ51が上昇すると、容器10の上部の開口部10bがシール部材52に当接されて密着される。
【0031】
また、バルブ本体23の先端部には、シール部材52とノズル32との間に、下部本体23bの下端面にて開口した円筒状のガス通路55が形成されている。このガス通路55は、バルブ本体23に形成されたガス通路56に連通されている。
このガス通路56は、充填バルブ5を円板9に支持するブラケット21に形成されたガス通路57に連通されており、このガス通路57に設けられた図示しない切換弁を介して液体貯槽4の気層部あるいは大気のいずれかに連通している。
【0032】
上記構造の充填バルブ5は、ノズル32の中心を通る中心軸Xが、鉛直に支持される容器10の中心軸Yに対して傾けられ、これによってノズル32からの液体の吐出方向が中心軸Xに対し傾斜角度θだけ円板9の回転中心側へ傾けられている。
この傾斜角度θは、次式(1)にて表される。
【0033】
θ=tan-1(π22r/900n2g)……(1)
【0034】
この傾斜角度θは、重力mg及び遠心力mrω2の釣り合いで、以下のように決定される。(m;質量(kg)、r;回転半径(m)、ω;回転角速度(rad/s)、g;重力加速度(m/s2))
【0035】
充填バルブ5の移動軌跡の半径をr(=D/2)、半径rの円上を移動する充填バルブ5の速度をυ、角速度をωとすると、重力mg及び遠心力mrω2から、
tanθ=mrω2/mg
=rω2/gが導かれ、
θ=tan-1(rω2/g)…(2)が求められる。
また、ω=υ/rより、上式(2)は、
θ=tan-12/(rg)]…(3)とされる。
【0036】
さらに、回転式充填装置1の製造能力(毎分液体を充填できる容器本数)を、N(BPM:Bottles per minute,本/分)、円板9に設けられた充填バルブ5の本数をn(本)とすると、
υ=(2πr/n)・(N/60)=(πrN)/(30・n)…(4)
が導かれ、この式(4)及び式(3)より、上式(1)が導かれる。
【0037】
例えば、上部機械部3の充填バルブ5自体の回動軌跡の直径Dが3mであるとr=3/2=1.5mであり、したがって、製造能力がN=600BPM、充填バルブ5の本数が72本であると、傾斜角度θ=6.6°となる。
【0038】
次に、上記実施形態に係る回転式充填装置1による容器10への液体の充填動作について説明する。
搬入コンベア11から入口スターホイール14によって空の容器10が容器台6へ受け渡されると、容器ホルダ51が、その把持部51aによって容器台6の容器10の上端部を把持して上昇する。これにより、容器10の開口部10bが、充填バルブ5のシール部材52に密着され、容器10の内外が遮断密閉される。また、ガス通路57の図示しない切換弁が作動し、ガス通路57、56を通して、液体貯槽4の気層部から、高圧ガスが送り込まれ、容器10内に充填される。
【0039】
次に、エアシリンダ42によって弁棒24が押し下げられて液弁35が開かれる。これにより、図4に示すように、液体貯槽4の液層部から、液体Lが自重によって液供給管27、液供給口26及び液通路25を通り、ノズル32から容器10内へ注入される。
なお、上記の動作は、円板9が所定の角速度ωで回転した状態で行われる。
【0040】
充填バルブ5は、鉛直に支持された容器10に対して下方へ向かって円板9の回転中心側へ傾けられているので、この充填バルブ5のノズル32から吐出される液体Lの吐出方向も、鉛直に対して円板9の回転中心側へ向かって傾斜する。
【0041】
ここで、この充填バルブ5のノズル32からの液体Lの吐出方向の傾斜角度θが、液体Lにかかる重力と円板9の回転による遠心力とが釣り合いで決定されている。このため、円板9の回転中に、ノズル32から円板9の回転中心側へ向けて吐出された液体Lは、円板9の回転による遠心力の影響を受けるが、ノズル32からの吐出方向が円板9の回転中心側に向かって傾斜しているので、遠心力とバランスし、ほぼ鉛直方向に落下する。
これにより、この容器10内に充填される液体Lは、鉛直に保持された容器10の底部のほぼ中心に落下する。そして、容器10の底部中心に落下した液体Lは、容器10の底部中心に形成された凸部10aに沿って全周にほぼ均等に分散し、従来より少ない舞い上がり量で容器10内に安定して充填される。
【0042】
その後、図示しない流量計によって、容器10内へ充填した液体Lが所定の充填量に達したら、エアシリンダ42によって弁棒24が引き上げられて液弁35が閉鎖され、容器10への液体Lの充填が停止される。
次に、ガス通路57の図示しない切換弁が作動し、容器10の上端部に残ったガスが、ガス通路56、57を経て外部に排出され、容器10内が大気圧とされる。
【0043】
充填バルブ5による容器10への液体Lの充填動作が終了すると、容器ホルダ51が下降するとともに把持部51aによる容器10の上端部の把持が解除され、容器10が容器台6に載置される。
その後、液体Lが充填された容器10は、出口スターホイール15によって搬出コンベア12へ受け渡されて搬出される。
【0044】
以上、説明したように、上記実施形態に係る回転式充填装置1によれば、ノズル32から吐出される液体Lの吐出方向を、遠心力によって外方へ傾けられる分だけ円板9の回転中心側へ傾斜させることにより、鉛直に支持された容器10の底部の中心に液体Lを落下させることができる。これにより、例え容器10の底部に凸部10aがあっても、底部に落下した液体Lを容器10の底部中心から底面に沿って周囲に均等に分散させ、容器10内に安定して充填させることができ、容器10内における液体Lの舞い上がりによる泡立ちを抑えて気泡量の増大を抑えることができる。
【0045】
なお、上記実施形態では、炭酸飲料を容器10へ充填する炭酸飲料用の充填バルブ5を備えた場合を例にとって説明したが、充填バルブ5としては、炭酸飲料用充填バルブに限定されず、無炭酸飲料用充填バルブであっても良い。
また、充填バルブ5の支持角度を調節可能な機構を設けても良い。そして、このような機構を設けることにより、容器10の長さ、液体Lの充填速度、あるいは円板9の回転速度等の条件の変化に応じて充填バルブ5の角度を極めて容易に調節して、充填する液体Lを容器10の底部における中心に合わせることができる。
充填バルブ5における充填量制御手段としては、流量計(例えば電磁流量計やコリオリ力式質量流量計、タービン流量計、渦流量計等)を用いることができる。流量計以外に、ロードセルを用いた重力計測式でも、事前に空間容積で定まった量を充填する容積式等、容量計測式(Volumetric Filling)や圧力バランス式等、充填量制御手段は関係無く適用可能である。
また容器口は充填ノズル5に接していなくても問題ない。
【0046】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る回転式充填装置1について説明する。
なお、上記第1実施形態と同一構造部分は、同一符号を付して説明を省略する。
図5は、第2実施形態に係る回転式充填装置1の充填バルブ60の断面図である。
【0047】
図5に示すように、第2実施形態に係る回転式充填装置1を構成する充填バルブ60は、ブラケット21によって鉛直に支持されている。この充填バルブ60のバルブ本体23では、縦長の貫通穴22が、下部本体23bにて屈曲され、その中心軸Xが、鉛直に対して下方へ向かって円板9の回転中心側へ傾けられている。これにより、ノズル32から吐出される液体Lの吐出方向が鉛直に対して傾斜角度θだけ下方へ向かって円板9の回転中心側へ傾けられている。
なお、この傾斜角度θも、上記第1実施形態における傾斜角度θと同様に、前記の式(1)にて表される。
【0048】
そして、この回転式充填装置1では、充填バルブ60のノズル32から円板9の回転中心側へ向けて吐出された液体Lは、遠心力とバランスしほぼ鉛直方向に落下する。
これにより、鉛直に支持された容器10内に充填される液体Lは、容器10の底部における中心に落下する。そして、容器10の底部中心に落下した液体Lは、容器10の底部中心に形成された凸部10aに沿って周囲に均等に分散し、容器10内に安定して充填される。
【0049】
このように、上記構造の充填バルブ60を備えた回転式充填装置1の場合も、容器10内における液体Lの舞い上がりによる泡立ちを抑えて気泡量の増大を抑えることができる。
【0050】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る回転式充填装置1について説明する。
なお、上記第1実施形態と同一構造部分は、同一符号を付して説明を省略する。
図6は、第3実施形態に係る回転式充填装置1の充填バルブ70の断面図である。
【0051】
図6に示すように、第3実施形態に係る回転式充填装置1を構成する充填バルブ70は、ブラケット21によって鉛直に支持され、ノズル32からの液体Lの吐出方向も鉛直下向きとされている。これに対して容器ホルダ51の把持部51aは、水平面に対して傾けられており、これにより、この把持部51aによって上端部が把持される容器10は、その中心軸Yが、鉛直に対して、傾斜角度θだけ下方へ向かって円板9の外周側へ傾くようになっている。
なお、この傾斜角度θも、上記第1実施形態における傾斜角度θと同様に、前記式(1)にて表される。
【0052】
そして、この充填バルブ70では、容器ホルダ51が、その把持部51aによって容器10の上端部を把持して上昇し、容器10の開口部10bをシール部材52に当接させると、鉛直に支持された充填バルブ70に対して容器10が、傾斜角度θだけ下方へ向かって円板9の外周側へ傾けられて配置される。
【0053】
これにより、ノズル32から鉛直下方へ向けて吐出された液体Lは、遠心力によってほぼ容器10の中心軸Yに沿って落下する。
したがって、この容器10内に充填される液体Lは、容器10の底部における中心に落下する。そして、容器10の底部中心に落下した液体Lは、容器10の底部中心に形成された凸部10aに沿って周囲に均等に分散し、容器10内に安定して充填される。
【0054】
このように、上記構造の充填バルブ70を備えた回転式充填装置1によっても、容器10内における液体Lの舞い上がりによる泡立ちを抑えて気泡量の増大を抑えることができる。
【0055】
(第4実施形態)
まず、第4実施形態に係る回転式充填装置1について説明する。なお、上記第1実施形態と同一構造部分は、同一符号を付して説明を省略する。
図7は、第4実施形態に係る回転式充填装置1の容器10への充填状態を説明する充填バルブ80の断面図である。
ここでは、充填バルブ80として、いわゆる無炭酸飲料を容器10へ充填する無炭酸飲料用充填バルブを例にとり、また、図7に示すように、充填バルブ80によって液体Lが充填される容器10として、その底部の中心に、上方へ突出する凸部10aが形成されたPETボトルを例にとって説明する。
【0056】
充填バルブ80は、上部機械部3の円板9に、ブラケット21を介して支持されている。
充填バルブ80の下方には、容器ホルダ51が設けられている。この容器ホルダ51は、容器10の上端近傍を把持する把持部51aを有しており、この把持部51aによって容器10の上端近傍を把持して容器10を鉛直方向に支持した状態にある。
【0057】
充填バルブ80は、直管状のノズル32の先端部に、金網状あるいは多孔状のスクリーンメッシュ(メッシュ部材)81を備えている。
スクリーンメッシュ81としては、例えばステンレス製で、厚さ1mmの円板にφ1.0mmの円形の孔が開口率60%の割合で入れたものを採用することができるが、この孔の大きさはこれ以上の大きさでも小さくても良く、円形の孔でなく格子金網状のものでも良い。
この直管状のノズル32は、鉛直方向に対し、前述の式(1)の傾斜角度θを持って取り付けられており、ノズル32の先端は傾斜角度θ分斜めに切断されており、これによりノズル32の先端端面は地上に対して水平とされている。これにより、液弁35を閉じて液体Lの吐出を停止させた状態では、液弁35とノズル32の先端部との間に残った液体Lを、ノズル32の先端端面で、液体Lを表面張力によって保持できるようになっている。
表面張力による液体保持はノズル32の先端端面が水平であれば生じるので、スクリーンメッシュ81がなくても良いが、スクリーンメッシュ81を備えた方がより確実に液体保持が行える。またスクリーンメッシュ81を備えることで、万が一、液体Lに混入して異物が流れてきても、スクリーンメッシュ81の孔以上の大きさであればこの異物を捕集できる。
【0058】
なお、このような、ノズル32の先端端面を水平とし、スクリーンメッシュ81を備える構成は、上記のように、容器10を鉛直方向に支持してノズル32を傾斜させた場合に限らず、ノズル32を鉛直状態とし、容器10を傾斜させて支持した第3実施形態(図6)に示すような構成にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態に係る回転式充填装置を説明する斜視図である。
【図2】回転式充填装置を説明する概略平面図である。
【図3】第1実施形態に係る回転式充填装置の充填バルブの断面図である。
【図4】容器への充填状態を説明する充填バルブの断面図である。
【図5】第2実施形態に係る回転式充填装置の充填バルブの断面図である。
【図6】第3実施形態に係る回転式充填装置の充填バルブの断面図である。
【図7】第4実施形態に係る回転式充填装置の充填バルブの断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1…回転式充填装置、5,60,70,80…充填バルブ、9…円板、10…容器、10b…開口部、32…ノズル、51…容器ホルダ、81…スクリーンメッシュ(メッシュ部材)、L…液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板の外周に複数の充填バルブを備え、前記円板の回転中に、前記充填バルブのノズルに開口部があてがわれた容器内へ前記ノズルから液体を注入する回転式充填装置であって、
前記充填バルブの前記ノズルから吐出された液体が、前記容器の底部におけるほぼ中心に落下されることを特徴とする回転式充填装置。
【請求項2】
前記充填バルブは、前記ノズルから下方に吐出される液体の吐出方向が、鉛直に支持された前記容器に対して前記円板の回転中心側へ傾斜するよう設けられていることを特徴とする請求項1に記載の回転式充填装置。
【請求項3】
前記充填バルブ全体が傾斜されていることを特徴とする請求項2に記載の回転式充填装置。
【請求項4】
前記充填バルブの先端部分が傾斜されていることを特徴とする請求項2に記載の回転式充填装置。
【請求項5】
前記容器を支持する容器ホルダを備え、該容器ホルダは、前記ノズルから鉛直下方へ吐出される液体の吐出方向に対して下方へ向かって前記円板の外周側に傾斜するよう前記容器を支持することを特徴とする請求項1に記載の回転式充填装置。
【請求項6】
前記ノズルの先端面は、水平に形成されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の回転式充填装置。
【請求項7】
前記ノズルの先端に、多数の開口が形成されたメッシュ部材が取り付けられていることを特徴とする請求項6に記載の回転式充填装置。
【請求項8】
前記ノズルからの液体の吐出方向と前記容器との傾斜角度θは、前記円板の回転による前記充填バルブの移動軌跡の半径をr、前記充填バルブの本数をn、重力加速度をg、毎分液体を充填できる容器本数をNとすると、θ=tan-1(π22r/900n2g)であることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の回転式充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−248547(P2006−248547A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64879(P2005−64879)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(505193313)三菱重工食品包装機械株式会社 (146)
【Fターム(参考)】