説明

回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤およびそれを用いた汚泥脱水方法

【課題】汚泥に添加すると急速に分散し、凝集反応が起き、そして濾過性が良く、強度の高いフロックが形成されるので、汚泥の脱水効率を向上できる高分子凝集剤からなる汚泥脱水剤であって、回転式圧縮濾過機に好適な汚泥脱水剤の提供およびそれを用いた脱水方法の提供。
【解決手段】架橋性単量体共存下でビニル単量体を重合した架橋水溶性高分子、あるいはさらに変性した架橋水溶性高分子からなる回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤を用いる。この架橋水溶性高分子を汚泥に添加混合した後、回転式圧縮濾過機101により脱水することにより課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤およびそれを用いた汚泥脱水方法に関するものであり、さらに詳しくは、架橋水溶性高分子や水溶性高分子からなる回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤およびこれらの汚泥脱水剤を汚泥に添加、混合した後、回転式圧縮濾過機により脱水する汚泥の脱水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体と液体を分離する装置には、遠心分離機、遠心濾過機、フィルタープレス、スクリュープレス、ロータリーバキュームフィルタ、回転式の圧縮濾過機など、様々なタイプのものがある。これらのうち、回転式の圧縮濾過機については、その構造および脱水機構が特許文献1に記載されている。
【0003】
すなわち図1は、従来の代表的な回転式圧縮濾過機101の構造を示す一部切欠斜視図であり、図2は、図1の回転式圧縮濾過機101のAA線による断面図である。これらの図からも明らかなように、この回転式圧縮濾過機101は、基本的には、回転軸102、内輪スペーサ103、外輪スペーサ104、2枚のドーナツ状のスクリーン105,105、隔壁板106、および、図示しない背圧装置、外部ケーシング、駆動装置などによって構成されるものである。
【0004】
より詳細には、回転軸102は、ほぼ水平に保持されるとともに、図示しない駆動装置により駆動力が供給されることにより、図1に示す矢印Bの方向に低速(0.2〜1.3回転/分程度)で回転するようになっている。内輪スペーサ103は、回転軸102周りに固定されており、回転軸102に従って同方向に回転する。
【0005】
外輪スペーサ104は、内輪スペーサ103の外側に配置されるとともに、図示しない外部ケーシングにより保持されており、基端部104aから回転軸102の同心円上に約240°〜300°程度に亘って延出する円状部分と、終端部104bまで当該同心円の接線方向に延出する直線部分とからなっている。また、外輪スペーサ104は、円状部分においては、その内周面104cが、内輪スペーサ103の外周面103aと常に一定の間隔をもって対向するように配置されており、回転軸102の軸方向についての外輪スペーサ104の厚さ寸法W1は、内輪スペーサ103の厚さ寸法W2と一致している。
【0006】
2枚のスクリーン105,105は、内周縁部105a,105aが内輪スペーサ103の両側面上にそれぞれ固定されるとともに、外周縁部105b,105bが外輪スペーサ104の両側面に接するような位置および寸法にて配置されている。従って、スクリーン105,105は、回転軸102が回転すると、内輪スペーサ103に従って同方向に回転することになり、このとき、その外周縁部105b,105bは、外輪スペーサ104の両側面上を摺動するようになっている。
【0007】
また、各スクリーン105,105は、透水性を確保するために直径0.18mm程度の多数の小孔を有しており、後述するように、処理原液から水分を取り除くためのフィルターとして機能するものである。
【0008】
隔壁板106は、ほぼ水平に、かつ、回転軸102の軸方向と直交する方向に保持されており、回転軸102の軸方向についての隔壁板106の厚さ寸法W3は、外輪スペーサ104の厚さ寸法W1および内輪スペーサ103の厚さ寸法W2と一致している。また、隔壁板106の内側端部106aは、内輪スペーサ103の外周面103aの曲率に一致し、これと面接触し、摺動するように形成されている。
【0009】
隔壁板106の、内側端部106aとは反対側の端部(外側端部106b)は、外輪スペーサ104の基端部104aおよび終端部104bとの間に、それぞれ所定間隔を置いた位置に保持されている。そして、外側端部106bと外輪スペーサ104の基端部104aとの間に確保されたスペースは、原液供給口108として、装置内部に導入する処理原液を供給するために使用され、外側端部106bと外輪スペーサ104の終端部104bとの間に確保されたスペースは、ケーキ出口109として機能するようになっている。
【0010】
隔壁板106の底面106cは、内輪スペーサ103の外周面103aの接線方向と一致しており、かつ、外輪スペーサ104の直線部分の上面104dと平行に延出している。尚、この回転式圧縮濾過機101は、原液供給口108、ケーキ出口109、および図示しない液体排出口を除き、外部ケーシングにより密閉される構造になっている。
【0011】
また、ケーキ出口109の側方には、図4に示すような可動弁107を有する背圧装置が設けられている。この背圧装置の可動弁107は、可撓性の材料によって形成され、ケーキ出口109側の端部107aが反対側の外部ケーシング113の内壁に接するまで撓むようになっており、図4の(1)に示す全開状態から、同図の(2)に示す全閉状態まで、ケーキ出口109の開口面積を自由に調整できるようになっている。
【0012】
ここで、上記のような構造の従来の回転式圧縮濾過機101の運転方法とその作動原理について、図3(図1の回転式圧縮濾過機101のCC線による断面図)および図4を用いて簡単に説明する。まず、運転開始時においては、図4の(2)に示すように背圧装置の可動弁107を全閉状態にし、図3に示す原液供給口108より、濾過室110[内輪スペーサ103および隔壁板106と、外輪スペーサ104との間に形成されている、断面が矩形状(図2参照)のスペースであって、環状(C字状)に延出する部分(環状部分)と直線状に延出する部分(直状部分)を有する。すなわち原液供給口108から環状部分および直状部分を経て、ケーキ出口109に至るまでのスペース。]内へ、処理原液を順次導入していく。このとき背圧装置の可動弁107は前述の通り全閉状態にあるので、導入された処理原液は、ケーキ出口109より外部に排出されることなく、濾過室110内に貯留されていくことになる。
【0013】
濾過室110のうち、環状部分の全部および直状部分の一部においては、両側方が、対向する2枚のスクリーン105,105によって閉塞(以下、濾過室110のうち、これらのスクリーン105,105によって側方が閉塞されている部分を「スクリーン部」という。)されているが、スクリーン105は、前述の通り透水性を確保するための小孔を多数有しているので、処理原液が濾過室110内に貯留されていく過程で、処理原液中の水分がスクリーン105の小孔を抜けて、次第に濾過室110外に排出されていくことになる。そうすると処理原液は固形分濃度を増してスラリー状になり、その一部がスクリーン面に付着する。尚、濾過室110外に排出された水分は、外部ケーシングの内壁とスクリーン105の間隙を流れ落ち、液体排出口より、装置外部に排出される。D1〜D4は処理原液、スラリー、脱水ケーキなどの進行方向を示し、112はケーキ通路、113は外部ケーシングを示す。
【0014】
この状態で、図示しない駆動装置を駆動させ、回転軸102に駆動力を供給し、回転軸102を図3に示す矢印Bの方向に低速(0.2〜1.3回転/分程度)で回転させる。そうすると、回転軸102周りに固定された内輪スペーサ103、および、内輪スペーサ103の両側面上に固定されたスクリーン105が同方向に回転する。
【0015】
スクリーン105が回転すると、濾過室110内に導入された処理原液は、回転するスクリーン105或いはこれに付着したスラリー状の処理原液との間に生じる摩擦力により、原液供給口108からケーキ出口109に向かって、濾過室110内を順次進行していくことになる。このようにしてスラリー状の処理原液が濾過室110内を進行していくと、その過程で更に脱水が進み、スラリー状の処理原液は、次第にケーキ状(脱水ケーキ)になっていく。そうすると、スクリーン105との間の摩擦力もより大きくなっていき、その増大した摩擦力によって、脱水ケーキは更に先方へと搬送されることになるが、先行する脱水ケーキによって抵抗を受けるため、スクリーン105と等速で搬送されることにはならず、逆に、先行する脱水ケーキを圧縮することになる。このため、先行する脱水ケーキの脱水が更に進むことになる。
【0016】
このようにして、濾過室110内に導入された処理原液は、ケーキ出口109に近づいて行くに従って脱水が進行し、濾過室110内のケーキ出口109付近には、脱水ケーキが滞留して行くことになる。そして、運転を開始してから所定時間経過後、背圧装置の可動弁107を開くと、ケーキ出口109付近に滞留していた最初の脱水ケーキが、後続の脱水ケーキによって押し出され、ケーキ出口109から外部に排出されることになる。そして、最初の脱水ケーキが排出されたら、開始運転を完了し、定常運転へと移行する。
【0017】
定常運転においては、図4に示されている背圧装置の可動弁107を開いた状態で、開始運転時と同様に原液供給口108より濾過室110内に処理原液を順次導入するとともに、スクリーン105を所定の速度で回転させることにより、処理原液を連続的に濾過・脱水してケーキ出口109より脱水ケーキを排出するようにする。かかる定常運転においても、処理原液の導入から脱水ケーキの排出に至るまでの濾過・脱水作用については、前述の開始運転時と基本的に異なるところはないが、処理原液の供給量、スクリーン105の回転速度、および、背圧装置の可動弁107の開度を適宜調節することにより、所望の脱水度にて脱水ケーキを排出することができるようになっている。
【0018】
以上に説明したように、この回転式圧縮濾過機101は、内輪スペーサ103およびスクリーン105を低速で回転させるだけで、処理原液を液体(水分)と固体(脱水ケーキ)とに、好適に分離することができるようになっており、このため、エネルギー消費量および騒音が小さく、また、外部ケーシングにより密閉されているため、食品の加工の場合は、衛生面での管理が容易であり、汚物の処理の場合は、臭気の発生を最低限に抑えることができるという利点がある。
【0019】
また凝集剤を使用し回転式圧縮濾過機によって脱水した例としては、非特許文献1に記載されているが、架橋高分子に関しては特別な記載はない。
【特許文献1】特開2001−113109号公報
【非特許文献1】紙パ技協誌第57巻第11号第40〜45頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
前記のように、回転式の圧縮濾過機は、ドーナツ状のスクリーンを有する回転金属フィルター部、給泥管、稼動弁などにより構成されている。そして調質汚泥を密閉濾過室に詰め込んで濾過、圧搾、せん断によって汚泥などを脱水する機構を有する。
従って脱水効率を向上させる一つの方法として特許文献1のように濾過室内に加圧手段を設けることが考えられ、もう一つの方法としては、脱水機の機種に適した凝集剤を開発することである。すなわち初期の濾過工程における被処理原水のスクリーン濾過性が処理状態を決める重要な因子であるので、汚泥に凝集剤を添加してフロックを形成させ脱水する場合も、濾過性が悪いフロックや壊れたフロックが回転式圧縮濾過機に注入されると、水切れが悪くなり、入り口内圧を急激に上昇させ、最悪の場合は出口弁が耐え切れず、勢い良く汚泥が噴出すことになるなどという問題があった。
特に繊維物質が少ないため凝集し難く、その結果初期の濾過工程において濾過性が悪いフロックや壊れ易いフロックが生成する下水消化汚泥や余剰汚泥では、従来、回転式圧縮濾過機は脱水に不向きと考えられていた。
【0021】
本発明の第1の目的は、下水消化汚泥や余剰汚泥などの汚泥に添加すると急速に分散し、凝集反応が起き、そして濾過性が良く、強度の高いフロックが形成されるので、これらの汚泥の脱水効率を向上できる高分子凝集剤からなる汚泥脱水剤であって、回転式圧縮濾過機に好適な汚泥脱水剤を提供することである。
そして、本発明の第2の目的は、この汚泥脱水剤を回転式圧縮濾過機に適用しこれらの汚泥の脱水効率を向上できる脱水方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、下記のような発明に達した。
すなわち、請求項1の発明は、架橋性単量体共存下でビニル単量体を重合した架橋水溶性高分子、あるいはさらに変性した架橋水溶性高分子からなることを特徴とする回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤である。
【0023】
そして請求項2の発明は、請求項1に記載の回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤において、前記架橋水溶性高分子が、架橋性単量体共存下でN−ビニルカルボン酸アミドと(メタ)アクリロニトリルからなる単量体混合物を重合し、その後酸により加水分解して変性して製造した下記一般式(1)および/または(2)の構造単位を10〜95モル%含有することを特徴とする。
【0024】
【化6】

【0025】
(前記一般式(1)において、R1 、R2 は水素またはメチル基、X- は陰イオンをそれぞれ表わす。)
【0026】
【化7】

【0027】
(前記一般式(2)において、R1 、R2 は水素またはメチル基、X- は陰イオンをそれぞれ表わす。)
【0028】
また、請求項3の発明は、請求項1に記載の回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤において、前記架橋水溶性高分子が、架橋性単量体共存下で下記一般式(3)および/または一般式(4)で表わされる単量体5〜100モル%、下記一般式(5)で表わされる単量体0〜50モル%、非イオン性単量体0〜95モル%からなる単量体混合物(単量体合計100モル%)を重合したものであることを特徴とする。
【0029】
【化8】

【0030】
(前記一般式(3)において、R3 は水素またはメチル基、R4 、R5 は炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、R6 は水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。Aは酸素原子またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基、X1 は陰イオンをそれぞれ表わす。)
【0031】
【化9】

【0032】
(前記一般式(4)において、R7 は水素またはメチル基、R8 、R9 は炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、X2 は陰イオンをそれぞれ表わす。)
【0033】
【化10】

【0034】
(前記一般式(5)において、R10は水素またはCH2 COOY2 、QはSO3、C64 SO3 、CONHC(CH32 CH2 SO3 、C64 COOあるいはCOO、R11は水素、メチル基またはCOOY2 であり、Y1 、Y2 は水素または陽イオンをそれぞれ表わす。)
【0035】
また、請求項4の発明は、請求項1に記載の回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤において、前記架橋水溶性高分子が、架橋性単量体共存下で前記一般式(5)で表わされる単量体0〜100モル%、非イオン性単量体0〜100モル%からなる単量体混合物(単量体合計100モル%)を重合したものであることを特徴とする。
【0036】
そして、請求項5の発明は、前記一般式(3)および/または(4)で表わされる単量体50〜100モル%、前記一般式(5)で表わされる単量体0〜30モル%および非イオン性単量体0〜50モル%からなる単量体混合物(単量体合計100モル%)を重合した水溶性高分子からなることを特徴とする回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤である。
【0037】
また、請求項6の発明は、N−ビニルカルボン酸アミドと(メタ)アクリロニトリルからなる単量体混合物を重合し、その後酸により加水分解して変性して製造した前記一般式(1)および/または(2)の構造単位を10〜95モル%含有する水溶性高分子からなることを特徴とする回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤である。
【0038】
また、請求項7の発明は、請求項1〜請求項3あるいは請求項6のいずれかに記載の架橋水溶性高分子あるいは水溶性高分子の質量をM1とし、請求項5に記載の水溶性高分子の質量をM2とした場合、M1/M2の比が=2〜19の範囲の混合物からなることを特徴とする回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤である。
【0039】
また、請求項8の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤において、前記架橋水溶性高分子あるいは水溶性高分子の形態が、油中水型エマルジョンあるいは塩水溶液中分散液であることを特徴とする。
【0040】
また、請求項9の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤において、前記架橋水溶性高分子が、電荷内包率20%以上、80%未満を有するものであることを特徴とする。
【0041】
請求項10の発明は、請求項1〜9のいずれかに記載の汚泥脱水剤を汚泥に添加、混合した後、回転式圧縮濾過機によって脱水することを特徴とする汚泥脱水方法である。
【0042】
請求項11の発明は、請求項10に記載の汚泥脱水方法において、請求項1〜3あるいは7のいずれかに記載の汚泥脱水剤を下水消化汚泥、余剰汚泥あるいは製紙スラッジと余剰汚泥の混合汚泥に添加、混合した後、回転式圧縮濾過機によって脱水することを特徴とする。
【0043】
請求項12の発明は、請求項10に記載の汚泥脱水方法において、請求項5あるいは6に記載の汚泥脱水剤を下水混合生汚泥に添加、混合した後、回転式圧縮濾過機によって脱水することを特徴とする。
【0044】
請求項13の発明は、請求項10〜12のいずれかに記載の汚泥脱水方法において、無機凝集剤を併用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0045】
本発明の請求項1の回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤は、架橋性単量体共存下でビニル単量体を重合した架橋水溶性高分子、あるいはさらに変性した架橋水溶性高分子からなることを特徴とするものであり、回転式圧縮濾過機によれば、汚泥などを密閉濾過室に詰め込んで濾過、圧搾、せん断によって脱水するため、初期の濾過工程における被処理原水のスクリーン濾過性が処理状態を決める重要な因子となるので、汚泥などに架橋水溶性高分子からなる本発明の汚泥脱水剤を添加することにより、締った強度の高いフロックを形成して、初期の濾過工程において迅速なスクリーン濾過性を付与し、以後の圧搾、せん断への作用を効率よく行なうことを可能とするものである。汚泥などに架橋水溶性高分子からなる本発明の汚泥脱水剤を添加することにより、締った強度の高いフロックが形成されるので、圧搾、せん断によってフロックが破壊されず、脱水されるべき「水の通り道」が確保され、脱水作用が効率よく行なわれ、その結果、従来の水溶性高分子からなる汚泥脱水剤に較べて脱水ケーキ含水率も低下するという顕著な効果を奏する。
【0046】
本発明の請求項2の回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤は、請求項1に記載の回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤において、前記架橋水溶性高分子が、架橋性単量体共存下でN−ビニルカルボン酸アミドと(メタ)アクリロニトリルからなる単量体混合物を重合し、その後酸により加水分解して変性して製造した前記一般式(1)および/または(2)の構造単位を10〜95モル%含有することを特徴とするものであり、より締ったより強度の高いフロックが形成されるので、圧搾、せん断によってフロックが破壊されず、脱水作用がより効率よく行なわれるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0047】
本発明の請求項3の回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤は、請求項1に記載の回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤において、前記架橋水溶性高分子が、架橋性単量体共存下で前記一般式(3)および/または一般式(4)で表わされる単量体5〜100モル%、前記一般式(5)で表わされる単量体0〜50モル%、非イオン性単量体0〜95モル%からなる単量体混合物(単量体合計100モル%)を重合したものであることを特徴とするものであり、より締ったより強度の高いフロックが形成されるので、圧搾、せん断によってフロックが破壊されず、脱水作用がより効率よく行なわれるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0048】
本発明の請求項4の回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤は、請求項1に記載の回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤において、前記架橋水溶性高分子が、架橋性単量体共存下で前記一般式(5)で表わされる単量体0〜100モル%、非イオン性単量体0〜100モル%からなる単量体混合物(単量体合計100モル%)を重合したものであることを特徴とするものであり、土木工事で発生する浚渫時のヘドロやシールド工法などによって排出された泥土などに添加することにより、より締った強度の高いフロックが形成されるので、圧搾、せん断によってフロックが破壊されず、脱水作用がより効率よく行なわれるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0049】
本発明の請求項5の回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤は、前記一般式(3)および/または(4)で表わされる単量体50〜100モル%、前記一般式(5)で表わされる単量体0〜30モル%および非イオン性単量体0〜50モル%からなる単量体混合物(単量体合計100モル%)を重合した水溶性高分子からなることを特徴とするものであり、回転式圧縮濾過機によれば、特に下水混合生汚泥などを密閉濾過室に詰め込んで濾過、圧搾、せん断によって脱水するため、初期の濾過工程における被処理原水のスクリーン濾過性が処理状態を決める重要な因子となるので、下水混合生汚泥などに特に非架橋で比較的高カチオン化度の水溶性高分子からなる本発明の汚泥脱水剤を添加することにより、締った強度の高いフロックを形成して、初期の濾過工程において迅速なスクリーン濾過性を付与し、以後の圧搾、せん断への作用を効率よく行なうことを可能とするものである。下水混合生汚泥などに水溶性高分子からなる本発明の汚泥脱水剤を添加することにより、締った強度の高いフロックが形成されるので、圧搾、せん断によってフロックが破壊されず、脱水されるべき「水の通り道」が確保され、脱水作用が効率よく行なわれ、その結果、従来の水溶性高分子からなる汚泥脱水剤に較べて脱水ケーキ含水率も低下するという顕著な効果を奏する。
【0050】
本発明の請求項6の回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤は、N−ビニルカルボン酸アミドと(メタ)アクリロニトリルからなる単量体混合物を重合し、その後酸により加水分解して変性して製造した前記一般式(1)および/または(2)の構造単位を10〜95モル%含有する水溶性高分子からなることを特徴とするものであり、回転式圧縮濾過機によれば、特に下水混合生汚泥などを密閉濾過室に詰め込んで濾過、圧搾、せん断によって脱水するため、初期の濾過工程における被処理原水のスクリーン濾過性が処理状態を決める重要な因子となるので、下水混合生汚泥などに水溶性高分子からなる本発明の汚泥脱水剤を添加することにより、締った強度の高いフロックを形成して、初期の濾過工程において迅速なスクリーン濾過性を付与し、以後の圧搾、せん断への作用を効率よく行なうことを可能とするものである。下水混合生汚泥などに水溶性高分子からなる本発明の汚泥脱水剤を添加することにより、締った強度の高いフロックが形成されるので、圧搾、せん断によってフロックが破壊されず、脱水されるべき「水の通り道」が確保され、脱水作用が効率よく行なわれ、その結果、従来の水溶性高分子からなる汚泥脱水剤に較べて脱水ケーキ含水率も低下するという顕著な効果を奏する。
【0051】
本発明の請求項7の回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤は、請求項1〜請求項3あるいは請求項6のいずれかに記載の架橋水溶性高分子あるいは水溶性高分子の質量をM1とし、請求項5に記載の水溶性高分子の質量をM2とした場合、M1/M2の比が=2〜19の範囲の混合物からなることを特徴とするものであり、回転式圧縮濾過機によれば、特に下水消化汚泥、余剰汚泥あるいは製紙スラッジと余剰汚泥の混合汚泥などを密閉濾過室に詰め込んで濾過、圧搾、せん断によって脱水するため、初期の濾過工程における被処理原水のスクリーン濾過性が処理状態を決める重要な因子であるので、下水消化汚泥、余剰汚泥あるいは製紙スラッジと余剰汚泥の混合汚泥などに前記混合物からなる本発明の汚泥脱水剤を添加してより締った強度の高いフロックを形成して、初期の濾過工程において迅速なスクリーン濾過性を付与し、以後の圧搾、せん断への作用を効率よく行なうことを可能とするものである。前記混合物からなる本発明の汚泥脱水剤を添加することにより締った強度の高いフロックが形成されるので、圧搾、せん断によってフロックが破壊されず、脱水されるべき「水の通り道」が確保され脱水作用が効率よく行なわれ、その結果、従来の水溶性高分子からなる汚泥脱水剤に較べて脱水ケーキ含水率も低下するという顕著な効果を奏する。
【0052】
本発明の請求項8の回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤は、請求項1〜7のいずれかに記載の回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤において、前記水溶性高分子の形態が、油中水型エマルジョンあるいは塩水溶液中分散液であることを特徴とするものであり、乾燥工程が不要、濃度を高めることができる、溶解時間が短い、見掛け粘度が低いなどというさらなる顕著な効果を奏する。
【0053】
本発明の請求項9の回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤は、請求項1〜3のいずれかに記載の回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤において、前記架橋水溶性高分子が、電荷内包率20%以上、80%未満を有するものであることを特徴とするものであり、架橋度が最適となるので汚泥などに添加して確実に締った強度の高いフロックを形成できるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0054】
本発明の請求項10は、請求項1〜9のいずれかに記載の汚泥脱水剤を汚泥に添加、混合した後、回転式圧縮濾過機によって脱水することを特徴とする汚泥脱水方法であり、本発明の汚泥脱水方法によれば締った強度の高いフロックを形成でき、初期の濾過工程において迅速なスクリーン濾過性を付与できるので、以後の圧搾、せん断への作用を効率よく行なうことを可能とすることができ、圧搾、せん断によってフロックが破壊せず、脱水作用が効率よく行なわれ、その結果従来の水溶性高分子からなる汚泥脱水剤に較べて脱水ケーキ含水率も低下するという顕著な効果を奏する。
【0055】
本発明の請求項11は、請求項10に記載の汚泥脱水方法において、請求項1〜3あるいは7のいずれかに記載の汚泥脱水剤を下水消化汚泥、余剰汚泥あるいは製紙スラッジと余剰汚泥の混合汚泥に添加、混合した後、回転式圧縮濾過機によって脱水することを特徴とするものであり、汚泥が下水消化汚泥、余剰汚泥あるいは製紙スラッジと余剰汚泥の混合汚泥であっても、締った強度の高いフロックが形成されるので、圧搾、せん断によってフロックが破壊せず、脱水作用が効率よく行なわれるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0056】
本発明の請求項12は、請求項10に記載の汚泥脱水方法において、請求項5あるいは6に記載の汚泥脱水剤を下水混合生汚泥に添加、混合した後、回転式圧縮濾過機によって脱水することを特徴とするものであり、汚泥が下水混合生汚泥であっても締った強度の高いフロックが形成されるので、圧搾、せん断によってフロックが破壊せず、脱水作用が効率よく行なわれるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0057】
本発明の請求項13は、請求項10〜12のいずれかに記載の汚泥脱水方法において、無機凝集剤を併用することを特徴とするものであり、締った強度の高いフロックを形成でき、初期の濾過工程において迅速なスクリーン濾過性を付与でき、濾布剥離性が高く、難脱水性汚泥の脱水性を改善することができ脱水ケーキ含水率も低下するというさらなる顕著な効果を奏する。
【0058】
以上のように、特に下水消化汚泥、余剰汚泥あるいは製紙スラッジと余剰汚泥の混合汚泥に対しては、架橋性単量体を共存させた状態で重合した架橋水溶性高分子、あるいは架橋性単量体を共存させた状態で重合した架橋水溶性高分子と架橋性単量体非共存下で重合した高カチオン性のカチオン性あるいは両性の水溶性高分子との混合物が好ましく使用できる。下水消化汚泥、余剰汚泥などに架橋水溶性高分子、あるいは架橋水溶性高分子と高カチオン性のカチオン性あるいは両性の水溶性高分子との混合物を添加すると、より締った強度の高いフロックを形成できるので、初期の濾過工程において迅速なスクリーン濾過性を付与でき、以後の圧搾、せん断への作用を効率よく行なうことが可能となる。
下水混合生汚泥に対しては高カチオン性のカチオン性あるいは両性の水溶性高分子が好ましく使用できる。下水混合生汚泥に対しては高カチオン性のカチオン性あるいは両性の水溶性高分子使用すると、より締った強度の高いフロックを形成させることができる。
いずれの場合もフロックが締った強度の高いものが形成されると言うことは、圧搾、せん断によってフロックが破壊されず、脱水されるべき「水の通り道」が確保され、脱水作用が効率よく行なわれることを意味する。その結果、従来の水溶性高分子にくらべ脱水ケーキ含水率も低下すると推定される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
本発明で使用する水溶性高分子としては、(a)架橋性単量体共存下で水溶性単量体からなる単量体あるいは単量体混合物を重合し、適宜変性し製造した架橋水溶性高分子、(b)高カチオン性で架橋性単量体非共存下において重合し製造した水溶性高分子、(c)架橋性単量体非共存下において重合し製造した一般式(1)および/または(2)で表される構造単位を含む水溶性高分子、(d)前記(a)のうちカチオン性または両性の架橋水溶性高分子あるいは(c)の水溶性高分子と、(b)の水溶性高分子の混合物からなる水溶性高分子を挙げることができる。
(a)の架橋水溶性高分子は、架橋性単量体共存下で水溶性単量体からなる単量体あるいは単量体混合物を重合し、適宜変性し製造したものである。すなわちそのイオン性は、カチオン性、両性、アニオン性あるいは非イオン性がある。
【0060】
例えば、一般式(1)および/または(2)で表わされる構造単位を有する架橋水溶性高分子および水溶性高分子は、以下のようにして製造することができる。
一般的には一級アミノ基または変換反応により一級アミノ基が生成しうる置換アミノ基を有するビニル単量体と、アクリロニトリルまたはメタアクリロニトリルおよび前記単量体総量に対し生成した重合体が水溶性を保つモル比で架橋性単量体を添加した共重合体を製造し、あるいは前記架橋性単量体の非存在下で共重合体を製造し、更に、該共重合体中のシアノ基と一級アミノ基を反応させてアミジン化して変性することにより得ることができる。
この場合、架橋性単量体を添加し共重合体を製造しアミジン化することにより製造すると(a)の架橋水溶性高分子が生成し、架橋性単量体の非存在下で共重合体を製造しアミジン化することにより製造すると(c)の水溶性高分子が生成する。
【0061】
また、前記(c)の水溶性高分子は、架橋性単量体の非共存下で一級アミノ基または変換反応により一級アミノ基が生成しうる置換アミノ基を有するビニル単量体と、アクリロニトリルまたはメタアクリロニトリルを共重合し、更にアミジン化することにより得ることができる。
N−ビニルカルボン酸アミドと(メタ)アクリロニトリルからなる単量体混合物を重合し、その後酸により加水分解して変性して製造した前記一般式(1)および/または(2)の構造単位を10〜95モル%含有する水溶性高分子からなる汚泥脱水剤を下水混合生汚泥などに添加することにより、締った強度の高いフロックを形成して、初期の濾過工程において迅速なスクリーン濾過性を付与し、以後の圧搾、せん断への作用を効率よく行なうことができるので、好ましく使用できる。
【0062】
前記ビニル単量体としては、N−ビニルカルボン酸アミドであり、その例としては、 N−ビニルホルムアミドやN−ビニルアセトアミドなどを挙げることができる。共重合体中において、かかる化合物に由来する置換アミノ基は、加水分解あるいは加アルコール分解により容易に一級アミノ基に変性、変換される。更にこの一級アミノ基は、隣接したシアノ基と反応してアミジン化する。また共重合するビニル系ニトリル類としては、アクリロニトリルが最も一般的である。
【0063】
これらのビニル単量体とニトリル類との重合モル比は、通常20:80〜80:20であるが、若し所望ならばこの範囲外の重合モル比を採用することもできる。一般的にカチオン性高分子凝集剤中に占めるアミジン単位の比率が多い方が凝集剤としての性能は優れている。また、アミン単位も凝集剤としての性能に有利に寄与していると考えられる。従って、凝集剤として好適な共重合体を与えるビニル単量体とニトリル類との重合モル比は、一般に20:80〜80:20、好ましくは40:60〜60:40である。
【0064】
アミジン化反応は、ビニル単量体として前記一般式で示されるN−ビニルアミド化合物を用いた場合には、共重合体の置換アミノ基を一級アミノ基に変換し、次いで、生成した一級アミノ基と隣接するシアノ基と反応させてアミジン構造を生成させるという2段階反応により製造することができる。そして、好ましくは、該共重合体を、強酸また強塩基の存在下、水またはアルコール溶液中で加温して、一段階でアミジン構造を生成させる。この場合においても、先ず、一級アミノ基が中間構造として生成しているものと考えられる。
【0065】
該反応の具体的条件としては、例えば共重合体に対し、その置換アミノ基に対して通常0.9〜5.0倍、好ましくは1.0〜3.0倍当量の強酸、好ましくは塩酸を加え、通常80〜150℃、好ましくは90〜120℃の温度で、通常0.5〜20時間加熱することによりアミジン単位を有するカチオン化高分子とすることができる。一般に置換アミノ基に対する強酸の当量比が大きいほど、かつ、反応温度が高いほど、アミジン化が進行する。また、アミジン化に際しては反応に供する共重合体に対し、通常10質量%以上、好ましくは20質量%以上の水を反応系内に存在させる。
【0066】
一般式(1)および/または(2)の構造単位を有する架橋水溶性高分子は、最も典型的には、上記で説明したところに従い、N−ビニルホルムアミド、アクリロニトリルおよび前記単量体総量に対し生成した重合体が水溶性を保つモル比で架橋性単量体を添加し共重合させ、生成した共重合体を、通常、水懸濁液として塩酸の存在下に加熱して置換アミノ基と隣接するシアノ基からアミジン単位を形成させることにより製造される。
そして、共重合に供するN−ビニルホルムアミドとアクリロニトリルとのモル比、および共重合体のアミジン化条件を選択することにより、各種の組成のアミジン系架橋水溶性高分子を製造することができる。
【0067】
加水分解後の分子中アミジン構造単位(前記一般式(1)および/または(2)の構造単位)のモル%は、10〜95モル%であり、好ましくは20〜95モル%、最も好ましくは30〜95モル%である。非イオン性構造単位は、未加水分解のカルボン酸アミド基と未反応のニトリル基であり、5〜90モル%であり、好ましくは5〜80モル%、最も好ましくは5〜70モル%(単量体合計100モル%)である。
アミジン構造単位が10モル%未満であるとアミジン系架橋水溶性高分子の機能が発揮できず汚泥脱水剤としての効果が低下する恐れがあり、95モル%を超えると製造することが難しく、例え製造できても汚泥脱水剤としての効果が顕著に向上しない恐れがある。
また、分子量は、架橋性単量体を共存させ共重合し製造した架橋水溶性高分子の場合、あるいは架橋性単量体の非存在下で共重合体を製造した水溶性高分子のどちらの場合も1万〜1,000万であり、好ましくは100万〜1,000万である。
【0068】
また、(a)の架橋水溶性高分子のうち(メタ)アクリル系架橋水溶性高分子は、前記一般式(3)および/または(4)で表わされる単量体および架橋性単量体を添加し重合する。
両性の場合は、前記カチオン性単量体と架橋性単量体に前記一般式(5)で表わされるアニオン性単量体を共存させ重合する。
更にアニオン性架橋水溶性高分子は、前記一般式(5)で表わされるアニオン性単量体と非イオン性単量体をからなる単量体あるいは単量体混合物に架橋性単量体を添加し重合する。
【0069】
すなわち、架橋性単量体を共存させた状態で単量体モル比が前記一般式(3)および/または(4)で表わされる単量体を5〜100モル%、非イオン性単量体を0〜95モル%であり、好ましくは前記一般式(3)および/または(4)で表わされる単量体を10〜100モル%、非イオン性単量体を0〜90モル%である。
両性の(メタ)アクリル系あるいはジアリルアンモニウム系架橋水溶性高分子を重合する場合は、架橋性単量体を共存させた状態で、前記一般式(3)および/または(4)で表わされる単量体を5〜95モル%、前記一般式(5)で表わされる単量体を5〜50モル%および非イオン性単量体を0〜90モル%(単量体合計100モル%)であり、好ましくは前記一般式(3)および/または(4)で表わされる単量体を10〜90モル%、前記一般式(5)で表わされる単量体を5〜50モル%、非イオン性単量体を0〜85モル%である。
これらカチオン性あるいは両性水溶性高分子の分子量は、300万〜2,000万であり、好ましくは300万〜1,500万、さらに好ましくは300万〜1,000万である。
前記一般式(3)および/または(4)で表わされる単量体が5モル%未満ではカチオン性が低く汚泥脱水剤としての効果が低下する恐れがあり、前記一般式(5)で表わされる単量体が50モル%を超えるとアニオン化度が高くなりすぎ汚泥脱水剤としての効果が低下する恐れがある。
【0070】
そして、下水混合生汚泥に対しては、架橋性単量体を共存させないで水溶性単量体を重合した水溶性高分子(b)である高カチオン性のカチオン性あるいは両性の水溶性高分子からなる汚泥脱水剤が好ましい。
このような水溶性高分子を重合する場合は、前記一般式(3)および/または(4)で表わされる単量体を50〜100モル%、前記一般式(5)で表わされる単量体を0〜30モル%、非イオン性単量体を0〜50モル%(単量体合計100モル%)であり、好ましくは前記一般式(3)および/または(4)で表わされる単量体を60〜100モル%、前記一般式(5)で表わされる単量体を0〜30モル%、非イオン性単量体を0〜40モル%である。
これらカチオン性あるいは両性の水溶性高分子の分子量は、100万〜1,500万であり、好ましくは200万〜1,500万、さらに好ましくは300万〜1,000万である。
前記一般式(3)および/または(4)で表わされる単量体が50モル%未満であると、脱水ケーキの含水率が上昇するなど効果が低下する恐れがある。また前記一般式(5)で表わされる単量体が30モル%を越えるとアニオン性が強くなり、凝集性能が低下し、その結果脱水ケーキの含水率が上昇する恐れがあるなど好ましくない。
特に下水混合生汚泥に非架橋で比較的高カチオン化度の水溶性高分子からなる上記範囲の単量体を(共)重合した水溶性高分子からなる本発明の汚泥脱水剤を添加することにより、締った強度の高いフロックを形成して、初期の濾過工程において迅速なスクリーン濾過性を付与でき以後の圧搾、せん断への作用を効率よく行なうことが可能となる。
【0071】
本発明で使用する水溶性高分子は、前記の架橋性単量体を共存させた状態で重合した架橋水溶性高分子と前記の高カチオン性のカチオン性あるいは両性の水溶性高分子を混合した水溶性高分子も使用することが出来る。
このような混合した水溶性高分子からなる汚泥脱水剤は、下水消化汚泥、余剰汚泥あるいは製紙スラッジと余剰汚泥の混合汚泥に好適である。
二つの水溶性高分子の混合比は、架橋性単量体を共存させた状態で重合した架橋水溶性高分子あるいはN−ビニルカルボン酸アミドと(メタ)アクリロニトリルからなる単量体混合物を重合し、その後酸により加水分解して変性して製造した前記一般式(1)および/または(2)の構造単位を10〜95モル%含有する水溶性高分子の質量をM1とし、高カチオン性のカチオン性あるいは両性の水溶性高分子の質量をM2とした場合、M1/M2=2〜19の範囲で混合することが好ましい。
この理由は、高カチオン性のカチオン性あるいは両性の水溶性高分子が混合物全体に占める割合を30質量%より多くすると効果が低下し、また架橋性単量体を共存させた状態で重合した架橋水溶性高分子が混合物全体に占める割合を5質量%より少なくするとやはり効果が低下するからである。
下水消化汚泥、余剰汚泥あるいは製紙スラッジと余剰汚泥の混合汚泥に対しては基本的に架橋水溶性高分子からなる汚泥脱水剤が適するが、非架橋の高カチオン性の水溶性高分子を相対的に少し混合すると脱水性が改良されたり、添加量を削減できる場合があり、そのような場合に上記のM1/M2の範囲で混合するとメリットがでる。非架橋の高カチオン性の水溶性高分子の混合割合が上記の範囲より多くても少なくてもメリットが発現しない恐れがある。
【0072】
架橋性単量体を共存させた状態においてアニオン性あるいは非イオン性の架橋水溶性高分子を重合する場合のモル比は、前記一般式(5)で表わされるアニオン性単量体0〜100モル%と非イオン性単量体0〜100モル%(単量体合計100モル%)である。またアニオン性水溶性高分子の組成としては、アニオン性単量体5〜100モル%と非イオン性単量体0〜95モル%であり、好ましくはアニオン性単量体10〜100モル%と非イオン性単量体0〜90モル%である。
これらアニオン性あるいは非イオン性の架橋水溶性高分子の分子量は、500万〜2,000万であり、好ましくは600万〜1,500万である。
浚渫汚泥やシールド工法などによって排出された土木関係の汚泥には、架橋性単量体共存下で上記の範囲で混合した単量体混合物を重合したアニオン性架橋水溶性高分子からなる汚泥脱水剤を使用することが好ましい。
【0073】
一般式(3)で表わされるカチオン性単量体の例としては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルやジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチルジアリルアミンなどの単量体が上げられ、四級アンモニウム基含有単量体の例は、前記三級アミノ含有単量体の塩化メチルや塩化ベンジルによる四級化物である(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物などである。また一般式(4)カチオン性単量体の例としては、ジメチルジアリルアンモニウム塩化物、ジアリルメチルベンジルアンモニウム塩化物などである。
【0074】
さらに一般式(5)で表されるアニオン性単量体の例としては、スルホン基でもカルボキシル基でもさしつかいなく、両方を併用しても良い。スルホン基含有単量体の例は、ビニルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸あるいは2−アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸などである。またカルボキシル基含有単量体の例は、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸あるいはp−カルボキシスチレンなどである。
【0075】
非イオン性単量体としては、水溶性単量体でもよく、また(共)重合後の高分子が水溶性を保つ範囲であれば水不溶性単量体でも、あるいは水溶性単量体との混合物でもよく、(共)重合できる。非イオン性単量体の例としては、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドアクリロイルモルホリン、アクリロイルピペラジンなどが挙げられる。
【0076】
架橋性単量体の例としては、N,Nーメチレンビス(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンなどのジビニル化合物、メチロール(メタ)アクリルアミドなどのビニル系メチロール化合物、アクロレインなどのビニル系アルデヒド化合物、メチル(メタ)アクリルアミドグリコレートメチルエーテルなどのビニル系エーテル化合物、あるいは熱架橋性単量体であるN,Nージメチルアクリルアミド、N,Nージエチルアクリルアミドなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
架橋性単量体の前記単量体あるいは単量体混合物に対する添加量は、0.0005〜0.1モル%であり、好ましくは0.001〜0.01モル%であり、更に好ましくは0.001〜0.005モル%である。
重合温度は、重合方法により適宜決定するが通常0〜100℃で行なうことができるが、好ましくは10〜60℃である。
また、重合度を調節するためイソプロピルアルコールを対単量体0.1〜5質量%など併用すると効果的である。
【0078】
本発明で使用する水溶性高分子は、その製品形態として特に限定はされるものではなく、どのような製品形態でも使用可能である。すなわち重合法として任意なものが適用でき、例えば水溶液重合、油中水型エマルジョン重合、油中水型分散重合、塩水中分散重合などによって重合した後、水溶液、分散液、エマルジョンあるいは粉末など任意の製品形態にすることができる。
最も好ましい形態としては、乾燥工程が不要であり、濃度を高められ、溶解時間も短い油中水型エマルジョン重合品あるいは塩水中分散重合品であるが、溶解液の見かけ粘性が低い塩水中分散重合品はさらに好適である。
【0079】
油中水型高分子エマルジョンの製造方法としては、単量体あるいは単量体混合物を水、少なくとも水と非混和性の炭化水素からなる油状物質、油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する少なくとも一種類の界面活性剤を混合し、強撹拌し油中水型エマルジョンを形成させた後、重合することにより合成する。
【0080】
分散媒として使用する炭化水素からなる油状物質の例としては、パラフィン類あるいは灯油、軽油、中油などの鉱油、あるいはこれらと実質的に同じ範囲の沸点や粘度などの特性を有する炭化水素系合成油、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0081】
油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する少なくとも一種類の界面活性剤の例としては、HLB3〜11のノニオン性界面活性剤であり、その具体例としては、ソルビタンモノオレ−ト、ソルビタンモノステアレ−ト、ソルビタンモノパルミテ−トなどがあげられる。これら界面活性剤の添加量としては、油中水型エマルジョン全量に対して0.5〜10質量%であり、好ましくは1〜5質量%である。
【0082】
重合後は、転相剤と呼ばれる親水性界面活性剤を添加して油の膜で被われたエマルジョン粒子が水になじみ易くし、中の水溶性高分子が溶解しやすくする処理を行い、水で希釈しそれぞれの用途に用いる。
親水性界面活性剤の例としては、カチオン性界面活性剤やHLB9〜15のノニオン性界面活性剤であり、ポリオキシエチレンアルキルエ−テル系、ポリオキシエチレンアルコールエ−テル系などである。
【0083】
塩水溶液中分散重合品は、水溶性単量体あるいは水溶性単量体混合物、およびこれら単量体の総量に対し生成した重合体が水溶性を保つモル比で添加した架橋性単量体を含有する単量体混合物を、塩水溶液中において高分子分散剤共存下に製造することができる。この製造方法は、特公平4−39481号公報や特公平6−51755号公報に記載された方法によって製造することが可能である。前者の公報は、分散剤として多価アルコ−ルを重合時共存させる方法が開示され、後者の公報では、分散剤として多価アニオン塩水溶液中に可溶なカチオン性高分子を重合時共存させる方法が開示されている。
これら高分子分散剤は、イオン性あるいは非イオン性どちらでも使用することができる。
非イオン性高分子は、ポリビニルピロリドンやポリビニルアルコールなどである。イオン性高分子は、イオン性ビニル単量体の重合体、あるいはイオン性ビニル単量体と非イオン性ビニル単量体の共重合体であり、例えばアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物の重合体やアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物とアクリルアミドの共重合体などである。
【0084】
これら重合法の重合時単量体濃度としては、油中水型エマルジョン重合は20〜50質量%であり、好ましくは25〜40質量%である。塩水中分散重合は15〜35質量%、好ましくは20〜30質量%である。
【0085】
本発明において使用する架橋水溶性高分子は、架橋度を以下に定義する荷電内包率によって表記する。すなわち
電荷内包率[%]=(1−α/ β)×100
αは酢酸にてpH4.0に調整した架橋性イオン性水溶性高分子0.01%水溶液をミューテック社製PCD滴定装置(Mutek PCD 03、MutekPCD−Two Titrator Version2)により、滴下液:1/1000Nポリビニルスルホン酸カリウム水溶液、滴下速度:0.05ml/10sec、終点判定:0mvにて滴定し、求めた滴定量である。
βは酢酸にてpH4.0に調整した架橋性水溶性イオン性高分子0.01%水溶液に1/400Nポリビニルスルホン酸カリウム水溶液を電荷の中和を行うに十分な量加え、十分に撹拌し、同様にPCD滴定装置により、滴下液:1/1000Nジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液、滴下速度:0.05ml/10sec、終点判定:0mvにて滴定し、この滴定量をブランク値から差し引いた値とする。
ブランク値とは酢酸にてpH4.0に調整した前記サンプルと同濃度のポリビニルスルホン酸カリウム水溶液を同様にPCD滴定装置により、滴下液:1/1000Nジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液、滴下速度:0.05ml/10sec、終点判定:0mvにて滴定し、求めた滴定量である。
【0086】
本発明において、アニオン性の架橋水溶性高分子および、両性でかつカチオン性単量体とアニオン性単量体のモル濃度の差が負である架橋水溶性高分子では、電荷内包率とは以下のように計算される。
電荷内包率[%]=(1−α/ β)×100
αは、アンモニアにてpH10.0に調整した架橋性水溶性イオン性高分子0.01%水溶液をミューテック社製PCD滴定装置(Mutek PCD 03、MutekPCD−Two Titrator Version2)により、滴下液:1/1000Nジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液、滴下速度:0.05ml/10sec、終点判定:0mvにて滴定し、求めた滴定量である。
βはアンモニアにてpH10.0に調整した架橋性イオン性水溶性高分子0.01%水溶液に1/400Nジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液を電荷の中和を行うに十分な量加え、十分に撹拌し、同様にPCD滴定装置により、滴下液:1/1000Nポリビニルスルホン酸カリウム水溶液、滴下速度:0.05ml/10sec、終点判定:0mvにて滴定し、この滴定量をブランク値から差し引いた値とする。
ブランク値とはアンモニアにてpH10.0に調整した前記サンプルと同濃度のジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液を同様にPCD滴定装置により、滴下液:1/1000Nポリビニルスルホン酸カリウム水溶液、滴下速度:0.05ml/10sec、終点判定:0mvにて滴定し、求めた滴定量である。
【0087】
本発明の水溶性高分子は、架橋水溶性高分子を使用する場合、電荷内包率20以上、80%未満を有するものであることが好ましい。電荷内包率20未満であると架橋度が低く、架橋水溶性高分子の機能が発現せず、回転式圧縮濾過機用凝集剤に適用した場合、濾過工程におけるスクリーン濾過性が十分ではなく好ましくない。また電荷内包率80%以上であると、架橋が進みすぎ水不溶性高分子の割合が高くなり効果が低下する上、特に添加量の増大をもたらしコスト上昇につながり不利である。
【0088】
水溶性高分子は、架橋することによって水中における分子の広がりが抑制される。そのためにより「密度の詰まった」分子形態として存在し、さらに架橋が進めば水膨潤性の微粒子となる。通常高分子凝集剤として使用されるのは、前記の「密度の詰まった」分子形態である場合が効率的とされる。架橋水溶性高分子が汚泥中に添加されると懸濁粒子に吸着し、粒子同士の接着剤として作用し結果として粒子の凝集が起こる。この時「密度の詰まった」分子形態であるため粒子表面と多点で結合し、より締った強度の高いフロックを形成すると推定される。多点で結合することは、懸濁粒子への吸着性能が優れ、そのため未吸着の水溶性高分子が少なく、汚泥中に遊離せず汚泥粘性の増加が発生しない。
【0089】
結果として、機械脱水時、水切れが良く、ケーキ含水率が低下すると考えられる。さらに、使用する高分子凝集剤が両性であるならば、高分子凝集剤の分子同士によるイオン結合、あるいは懸濁粒子表面に吸着している高分子凝集剤分子のカチオン性基とアニオン性基同士によるイオン結合も発生し、電荷の中和が起こる。すなわち、電荷的によりゼロに近い状態に近づく。そのため最適添加量範囲は広がり、薬注調節はしやすいものとなる。高分子凝集剤のイオン性がカチオン性のものを使用した場合も吸着、凝集などは同様な機構で起こると推定されるが、カチオン性基とアニオン性基同士によるイオン結合による電荷の中和が発生しないため、添加しすぎると再分散作用が起きやすく、最適添加量範囲は両性に較べより狭いものとなる。
【0090】
上記概念を回転式圧縮濾過機による脱水機構に当てはめて検討してみると、以下のように考えられる。
この脱水機は、調質汚泥を密閉濾過室に詰め込んで濾過、圧搾、せん断によって汚泥などを脱水する。そのため初期の濾過工程における非処理原水のスクリーン濾過性も処理状態を決める重要な因子と考えられる。従って架橋水溶性高分子を添加してより締った強度の高いフロックを形成することは、初期の濾過工程において迅速なスクリーン濾過性を付与でき、以後の圧搾、せん断への作用を効率よく行なうことが可能となる。
フロックが締った強度の高いものが形成されていると言うことは、圧搾、せん断によってフロックが破壊せず、脱水されるべき「水の通り道」が確保され、脱水作用が効率よく行なわれることを意味する。その結果従来の水溶性高分子にくらべ脱水ケーキ含水率も低下すると推定される。
【0091】
濾過、圧搾、せん断によって脱水される機構を有するので基本的は多少の繊維分を有するほうが好ましいが、ほぼどのような汚泥にも適用できる。すなわち製紙排水、化学工業排水、食品工業排水などの生物処理したときに発生する余剰汚泥、あるいは都市下水の生汚泥、混合生汚泥、余剰汚泥、消化汚泥などの汚泥であるが、特に顕著な効果を発揮する汚泥に対する水溶性高分子の組み合わせとして、下水消化汚泥、余剰汚泥あるいは製紙スラッジと余剰汚泥の混合汚泥に対しては、架橋性単量体を共存させた状態で重合した架橋水溶性高分子あるいは架橋性単量体を共存させた状態で重合した架橋水溶性高分子と架橋性単量体非共存下で重合した水溶性高分子との混合物からなる汚泥脱水剤が好ましい。
【0092】
また下水混合生汚泥に対しては高カチオン性のカチオン性あるいは両性の水溶性高分子からなる汚泥脱水剤が好ましい。
【0093】
その結果、回転式圧縮濾過機が「不得手」としてきた種々の汚泥に対しても、本発明で使用する架橋水溶性高分子および/または水溶性高分子からなる汚泥脱水剤の添加によって効率よく脱水することが可能になる。
また、本発明の架橋水溶性高分子および/または水溶性高分子からなる汚泥脱水剤の添加量は、汚泥固形分に対し質量で0.1〜1.5%であり、好ましくは0.2〜1.0%である。
【0094】
また、本発明の汚泥脱水方法を用いて汚泥を脱水する際、請求項1〜9のいずれかに記載の汚泥脱水剤と無機凝集剤を併用することができる。無機凝集剤を併用することにより難脱水性汚泥の脱水性を改善することができる。
本発明で用いる無機凝集剤としては、硫酸バンド、塩化第二鉄、ポリ塩化アルミニウムなどを挙げることができる。
【0095】
汚泥への添加順序は、無機凝集剤の添加順序は無機凝集剤を添加し、次いで本発明の汚泥脱水剤を添加しても、本発明の汚泥脱水剤を添加し、次いで無機凝集剤を添加してもよく、あるいは両者を同時に添加しても差し支えない。すなわち無機凝集剤は、汚泥中の溶解性アニオン性物質であるタンパク質や多糖類の電荷の中和を行い、その後本発明の汚泥脱水剤の凝集作用によってフロックを形成させるという作用を効率よく行うために添加するものである。したがって好ましくは無機凝集剤を添加し、次いで本発明の汚泥脱水剤を添加する順序が好ましい。無機凝集剤の添加量としては、対汚泥固形分0.05〜0.5%であり、好ましくは0.1〜0.3%である。
【0096】
以下、実施例および比較例によって本発明の汚泥脱水剤およびそれを用いた汚泥脱水方法の具体例およびその効果を説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0097】
(合成例1)
撹拌機および温度制御装置を備えた反応槽に、沸点190℃ないし230℃のイソパラフィン126.0gにソルビタンモノオレート6.0gおよびポリリシノ−ル酸/ポリオキシエチレンブロック共重合物0.6gを仕込み溶解させた。別に脱イオン水35.0gとアクリル酸(以下、AACと略記する場合がある)60%水溶液19.7gを混合し、これを35%水酸化ナトリウム水溶液17.8gで当量中和した。中和後、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物(以下、DMQと略記する場合がある)80%水溶液119.1g、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物(以下、DMCと略記する場合がある)80%水溶液42.6g、アクリルアミド(以下、AAMと略記する場合がある)50%水溶液116.4gおよびメチレンビスアクリルアミド(架橋性単量体)[以下、MBAと略記する場合がある]0.1質量%水溶液3.3g(対単量体0.0018モル%)を各々採取し前記アクリル酸溶液に添加し、完全に溶解させた。また、pHを4.01に調節し、油と水溶液を混合し、ホモジナイザーにて1000rpmで15分間撹拌乳化した。この時の単量体組成は、DMC/DMQ/AAC/AAM=10/30/10/50(モル%)である。
【0098】
得られたエマルジョンにイソプロピルアルコール40%水溶液2.0g(対単量体0.5質量%)を加え、単量体溶液の温度を30〜33℃に保ち、窒素置換を30分行った後、2、2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物の10%水溶液0.35g(対単量体0.02質量%)を加え、重合反応を開始させた。反応温度を32±2℃で12時間重合させ反応を完結させた。
重合後、生成した油中水型エマルジョンに転相剤としてポリオキシエチレントリデシルエ−テル10.0g(対液2.0質量%)を添加混合して試験に供する試料(試料−1)(本発明の汚泥脱水剤)とした。
【0099】
得られた試料をミューテック社製PCD滴定装置により荷電内包率を測定し、また静的光散乱法による分子量測定器(大塚電子製DLS−7000)によって重量平均分子量を測定し、回転粘度計により分散液粘度を測定した。
単量体組成、製品形態、MBA添加量(対単量体モル%)を表1に、分散液粘度(mPa・s)、分子量(単位万)、荷電内包率(%)の測定結果を表2に示す。
【0100】
(合成例2および3)
合成例1と同様な操作により単量体組成DMQ/AAM=60/40(モル%)およびDMQ/AAC/AAM=70/20/10(モル%)からなる油中水型エマルジョンを重合し、転相剤を加え試料−2(本発明の汚泥脱水剤)および試料−3(本発明の汚泥脱水剤)とした。単量体組成、製品形態、MBA添加量(対単量体モル%)を表1に、分散液粘度(mPa・s)、分子量(単位万)、荷電内包率(%)の測定結果を表2に示す。
【0101】
(合成例4)
合成例1と同様な操作によりMBA添加量を変え架橋度を変えた油中水型エマルジョン試料−4(本発明の汚泥脱水剤)を合成した。単量体組成、製品形態、MBA添加量(対単量体モル%)を表1に、分散液粘度(mPa・s)、分子量(単位万)、荷電内包率(%)の測定結果を表2に示す。
【0102】
(合成例5)
撹拌機および温度制御装置を備えた反応槽に、沸点190℃ないし230℃のイソパラフィン126.0gにソルビタンモノオレート6.0gおよびポリリシノ−ル酸/ポリオキシエチレンブロック共重合物0.6gを仕込み溶解させた。別に脱イオン水35.0gとアクリル酸(AAC)60%水溶液19.7gを混合し、これを35質量%水酸化ナトリウム水溶液17.8gで当量中和した。中和後、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物(DMQ)80%水溶液119.1g、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物(DMC)80%水溶液42.6gおよびアクリルアミド(AAM)50%水溶液116.4gを各々採取し前記アクリル酸溶液に添加し、完全に溶解させた。また、pHを4.01に調節し、油と水溶液を混合し、ホモジナイザーにて1000rpmで15分間撹拌乳化した。この時の単量体組成は、DMC/DMQ/AAC/AAM=10/30/10/50(モル%)である。
【0103】
得られたエマルジョンにイソプロピルアルコール40質量%水溶液2.0g(対単量体0.5質量%)を加え、単量体溶液の温度を30〜33℃に保ち、窒素置換を30分行った後、2、2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物の10%水溶液0.35g(対単量体0.02質量%)を加え、重合反応を開始させた。反応温度を32±2℃で12時間重合させ反応を完結させた。
この試料を試料−5(比較のための汚泥脱水剤)とする。単量体組成、製品形態、MBA添加量(対単量体モル%)を表1に、分散液粘度(mPa・s)、分子量(単位万)、荷電内包率(%)の測定結果を表2に示す。
【0104】
(合成例6)
温度計、撹拌機、窒素導入管、ペリスタポンプ(SMP−21型、東京理化器械製)に接続した単量体供給管およびコンデンサ−を備えた500mLの4ツ口フラスコ内にメタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物(DMC)の80質量水溶液%84.6g、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物(DMQ)の80質量%水溶液78.9g、アクリル酸(AAC)の60質量%水溶液19.6g、アクリルアミド(AAM)の50%水溶液115.8g、イオン交換水38.8g、硫酸アンモニウム125.0g、分散剤としてアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物単独重合体30.0g(20質量%水溶液液、粘度6450mPa・s)およびメチレンビスアクリルアミド0.1質量%水溶液2.3g(対単量体0.0015モル%)をそれぞれしこみpHを3.3に調節した。この時各単量体のモル%は、DMC/DMQ/AAC/AAM=20/20/10/50である。
次ぎに反応器内の温度を30±2℃に保ち、30分間窒素置換をした後、開始剤として2、2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物の1%水溶液1.2g(対単量体0.01%)を添加し重合を開始させた。内部温度を30±2℃に保ち重合開始から7時間反応させた時点で上記開始剤を対単量体0.01%追加し、さらに7時間反応させ終了した。得られた分散液のしこみ単量体濃度は23.5%である。
これを試料−6(本発明の汚泥脱水剤)とする。得られた試料を合成例1と同様にして測定し、単量体組成、製品形態、MBA添加量(対単量体モル%)を表1に、分散液粘度(mPa・s)、分子量(単位万)、荷電内包率(%)の測定結果を表2に示す。
【0105】
(合成例7)
合成例6と同様な操作により、表1に示す複数のビニル基を有する単量体とその他の単量体組成により、それぞれDMQ/AAM=60/40(モル%)(試料−7)(本発明の汚泥脱水剤)からなる組成の塩水溶液中分散重合品を合成した。単量体組成、製品形態、MBA添加量(対単量体モル%)を表1に、分散液粘度(mPa・s)、分子量(単位万)、荷電内包率(%)の測定結果を表2に示す。
【0106】
(合成例8)
温度計、撹拌機、窒素導入管、ペリスタポンプ(SMP−21型、東京理化器械製)に接続した単量体供給管およびコンデンサ−を備えた500mLの4ツ口フラスコ内にメタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物(DMC)の80質量水溶液%84.6g、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物(DMQ)の80質量%水溶液78.9g、アクリル酸(AAC)の60質量%水溶液19.6g、アクリルアミド(AAM)の50%水溶液115.8g、イオン交換水41.1g、硫酸アンモニウム125.0gおよび分散剤としてアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物単独重合体30.0g(20質量%水溶液液、粘度6450mPa・s)をそれぞれしこみpHを3.3に調節した。この時各単量体のモル%は、DMC/DMQ/AAC/AAM=20/20/10/50である。
次ぎに反応器内の温度を30±2℃に保ち、30分間窒素置換をした後、開始剤として2、2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物の1%水溶液1.2g(対単量体0.01%)を添加し重合を開始させた。内部温度を30±2℃に保ち重合開始から7時間反応させた時点で上記開始剤を対単量体0.01%追加し、さらに7時間反応させ終了した。得られた分散液のしこみ単量体濃度は23.5%である。
これを試料−8(比較のための汚泥脱水剤)とする。得られた試料を合成例1と同様にして測定し、単量体組成、製品形態、MBA添加量(対単量体モル%)を表1に、分散液粘度(mPa・s)、分子量(単位万)、荷電内包率(%)の測定結果を表2に示す。
【0107】
(合成例9)
撹拌機および温度制御装置を備えた反応槽に沸点190℃ないし230℃のイソパラフィン126.0gにソルビタンモノオレート10.0gおよびポリリシノ−ル酸/ポリオキシエチレンブロック共重合物1.0gを仕込み溶解させた。別に脱イオン水150.0g、N−ビニルホルムアミド85.9g、アクリロニトリル64.1gおよびメチレンビスアクリルアミド0.1質量%水溶液7.5g(対単量体0.002モル%)を混合し、前記油相成分と混合した。
その後ホモジナイザーにて1000rpmで15分間撹拌乳化した。
この時の単量体組成は、N−ビニルホルムアミド/アクリロニトリル=50/50(モル%)である。
得られたエマルジョンにイソプロピルアルコール40%水溶液0.4g(対単量体0.1質量%)を加え、単量体溶液の温度を25〜28℃に保ち、窒素置換を30分行った後、2、2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物の10%水溶液0.35g(対単量体0.05質量%)を加え、重合反応を開始させた。反応温度を27±2℃で12時間重合させ反応を完結させた。重合後、N−ビニルホルムアミドに対しモル比で1.2倍の36%塩酸191.4gを添加し、70℃で5時間、90℃で3時間反応させ、加水分解とアミジン化反応を行った。
【0108】
冷却後、転相剤としてポリオキシエチレントリデシルエ−テル13.5g(対液2.0質量%)を添加混合して試験に供する試料(試料−9)(本発明の汚泥脱水剤)とした。
得られた試料を合成例1と同様にして測定した結果、重量平均分子量;350万であり、生成したアミジン系高分子の組成を核磁気共鳴装置で測定した結果、アミジン構造単位;78モル%、アクリロニトル構造単位;10モル%、一級アミノ基構造単位;8モル%、N−ビニルホルムアミド構造単位;4モル%であった。
単量体組成、製品形態、MBA添加量(対単量体モル%)を表1に、分散液粘度(mPa・s)、分子量(単位万)、荷電内包率(%)の測定結果を表2に示す。
【0109】
(合成例10)
合成例9と同様な操作により、メチレンビスアクリルアミドを添加しないでアミジン構造を有する水溶性高分子エマルジョンを合成した(試料−10)(本発明の汚泥脱水剤)。得られた試料を合成例1と同様にして測定した結果、重量平均分子量;300万、生成したアミジン系高分子の組成を核磁気共鳴装置で測定した結果、アミジン構造単位;65モル%、アクリロニトル構造単位;15モル%、一級アミノ基構造単位;12モル%、N−ビニルホルムアミド構造単位;8モル%であった。単量体組成、製品形態、MBA添加量(対単量体モル%)を表1に、分散液粘度(mPa・s)、分子量(単位万)、荷電内包率(%)の測定結果を表2に示す。
【0110】
(合成例11〜12)
合成例5と同様な操作により架橋剤を共存させないで単量体組成DMQ/AAM=90/10(モル%)およびDMQ/AAC/AAM=80/10/10(モル%)からなる油中水型エマルジョンを重合し、転相剤を加え試料−11(本発明の汚泥脱水剤)および試料−12(本発明の汚泥脱水剤)とした。単量体組成、製品形態、MBA添加量(対単量体モル%)を表1に、分散液粘度(mPa・s)、分子量(単位万)、荷電内包率(%)の測定結果を表2に示す。
【0111】
(合成例13)
合成例6と同様な操作により架橋剤を共存させないで単量体組成DMC/DMQ/AAC/AAM=20/20/10/50(モル%)からなる塩水溶液中分散液を重合し試料−13(比較のための汚泥脱水剤)とした。単量体組成、製品形態、MBA添加量(対単量体モル%)を表1に、分散液粘度(mPa・s)、分子量(単位万)、荷電内包率(%)の測定結果を表2に示す。
【0112】
(合成例14〜15)
合成例1と同様な操作により架橋剤を共存させ単量体組成AAC/AAM=10/90(モル%)(試料−14)(本発明の汚泥脱水剤)およびAAM=100(モル%)(試料−15)(本発明の汚泥脱水剤)からなる油中水型エマルジョンを重合した。単量体組成、製品形態、MBA添加量(対単量体モル%)を表1に、分散液粘度(mPa・s)、分子量(単位万)、荷電内包率(%)の測定結果を表2に示す。
【0113】
(合成例16〜17)
合成例1と同様な操作により架橋剤を共存させないで単量体組成AAC/AAM=10/90(モル%)(試料−16)(比較のための汚泥脱水剤)およびAAM=100(モル%)(試料−17)(比較のための汚泥脱水剤)からなる油中水型エマルジョンを重合した。単量体組成、製品形態、MBA添加量(対単量体モル%)を表1に、分散液粘度(mPa・s)、分子量(単位万)、荷電内包率(%)の測定結果を表2に示す。
【0114】
【表1】

【0115】
【表2】

【実施例1】
【0116】
下水余剰汚泥(pH6.42、全SS分20750mg/L)200mLをポリビ−カ−に採取し、表1、2の本発明の汚泥脱水剤である試料−1〜試料−4、試料−6〜試料−7、試料−9〜試料−10、また試料−1と試料−11、試料−2と試料−12をそれぞれ質量で90%:10%でブレンドした試料−M1および試料−M2を、対汚泥固形分0.7%添加し、ビ−カ−移し替え撹拌20回行った後、T−1179Lの濾布(ナイロン製)により濾過し、10秒後の濾液量の測定、およびフロック強度(大きさ)を目視により測定した。その後50秒間濾過した汚泥をプレス圧3Kg/m2で1分間脱水する。その後、濾布剥離性を目視によりチェックし、ケ−キ含水率(105℃で20hr乾燥)を測定した。
結果を表3に示す。
【0117】
比較試験1として、表1、2の比較のための汚泥脱水剤である試料−5、試料−8を用いて、実施例1と同様な試験操作によって行った。
結果を表3に示す。
【0118】
【表3】

【実施例2】
【0119】
都市下水消化汚泥(pH7.08、全ss32000mg/mL)200mLをポリビ−カ−に採取し、表1、2の本発明の汚泥脱水剤である試料−1〜試料−4、試料−6〜試料−7、試料−9、また試料−1と試料−11、試料−2と試料−12をそれぞれ質量で90%:10%でブレンドした試料−M1および試料−M2を、対汚泥固形分0.6%添加し、ビ−カ−移し変え撹拌20回行った後、T−1179Lの濾布(ナイロン製)により濾過し、10秒後濾液量の測定、およびフロック強度(大きさ)を目視により測定した。その後1分放置し濾過した汚泥をプレス圧3Kg/m2で1分間脱水する。その後濾布剥離性を目視によりチェックし、ケ−キ含水率(105℃で20hr乾燥)を測定した。
結果を表4に示す。
【0120】
比較試験2として表1、2の比較のための汚泥脱水剤である試料−5、試料−8、試料−13を用い、実施例2と同様な試験操作によって行った。
結果を表4に示す。
【0121】
【表4】

【実施例3】
【0122】
都市下水混合生汚泥(pH7.08、全ss32000mg/mL)200mLをポリビ−カ−に採取し、表1、2の本発明の汚泥脱水剤である試料−10、試料−11および試料−12、また試料−10と試料−11、試料−10と試料−12をそれぞれ質量で90%:10%でブレンドした試料−M3および試料−M4を、対汚泥固形分0.6%添加し、ビ−カ−移し変え撹拌20回行った後、T−1179Lの濾布(ナイロン製)により濾過し、10秒後濾液量の測定、およびフロック強度(大きさ)を目視により測定した。その後1分放置し濾過した汚泥をプレス圧3Kg/m2で1分間脱水する。その後濾布剥離性を目視によりチェックし、ケ−キ含水率(105℃で20hr乾燥)を測定した。
結果を表5に示す。
【0123】
比較試験3として表1、2の比較のための汚泥脱水剤である試料−5および試料−8を用い、実施例3と同様な試験操作によって行った。
結果を表5に示す。
【0124】
【表5】

【実施例4】
【0125】
製紙スラッジに余剰汚泥が質量で7:3で混合された製紙工場の汚泥の脱水試験を実施した(pH6.85、全SS分39100mg/L)。200mLをポリビ−カ−に採取し、表1、2の本発明の汚泥脱水剤である試料−2および試料−7、また試料−1と試料−11、試料−4と試料−11、試料−6と試料−11をそれぞれ質量で90%:10%でブレンドした試料−M1、試料−M5、試料−M6を、対汚泥固形分0.7%添加し、ビ−カ−移し替え撹拌20回行った後、T−1179Lの濾布(ナイロン製)により濾過し、10秒後の濾液量の測定、およびフロック強度(大きさ)を目視により測定した。その後50秒間濾過した汚泥をプレス圧3Kg/m2で1分間脱水する。その後、濾布剥離性を目視によりチェックし、ケ−キ含水率(105℃で20hr乾燥)を測定した。結果を表6に示す。
【0126】
比較試験4として表1、2の比較のための汚泥脱水剤である試料−5、試料−8を用いて、実施例3と同様な試験操作によって行った。
結果を表6に示す。
【0127】
【表6】

【実施例5】
【0128】
浚渫汚泥(pH6.76、全ss105,000mg/mL)200mLをポリビ−カ−に採取し、表1、2の本発明の汚泥脱水剤である試料−14および試料−15の架橋水溶性高分子を対汚泥固形分0.1%添加し、ビ−カ−移し変え撹拌20回行った後、T−1179Lの濾布(ナイロン製)により濾過し、10秒後濾液量の測定、およびフロック強度(大きさ)を目視により測定した。その後1分放置し濾過した汚泥をプレス圧3Kg/m2で1分間脱水する。その後濾布剥離性を目視によりチェックし、ケ−キ含水率(105℃で20hr乾燥)を測定した。
結果を表7に示す。
【0129】
比較試験5として表1、2の比較のための汚泥脱水剤である試料−16および試料−17を用い、実施例5と同様な試験操作によって行った。
結果を表7に示す。
【0130】
【表7】

【実施例6】
【0131】
(6−1〜6−3)
食品排水余剰汚泥(pH6.27、全ss23100mg/L)200mLをポリビ−カ−に採取し、対汚泥固形分0.2%の硫酸バンドを添加し、ビ−カ−移し変え撹拌10回行った後、表2の本発明の汚泥脱水剤である試料−3および試料−4および試料−12を対汚泥固形分0.3%添加し、ビ−カ−移し変え撹拌15回行った後、T−1179Lの濾布(ナイロン製)により濾過し、10秒後濾液量の測定、およびフロック強度(大きさ)を目視により測定した。その後50秒間放置し濾過した汚泥をプレス圧3Kg/m2で1分間脱水する。その後濾布剥離性を目視によりチェックし、ケ−キ含水率(105℃で20hr乾燥)を測定した。
(6−4〜6−6)
また、硫酸バンドを添加しない他は上記(6−1〜6−3)と全く同様に試験操作して処理した場合についても試験した。
結果を表8に示す。
【0132】
比較試験6として表2の比較のための汚泥脱水剤である試料−5および試料−8を用い、硫酸バンドを添加した場合および硫酸バンドを添加ない場合について実施例6と同様な試験操作によって行った。
結果を表8に示す。
【0133】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明の回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤は、汚泥などに添加してより締った強度の高いフロックを形成でき、初期の濾過工程において迅速なスクリーン濾過性を付与できるので、以後の圧搾、せん断への作用を効率よく行なうことを可能とするものであり、その結果、圧搾、せん断によってフロックが破壊されず、脱水作用が効率よく行なわれ、従来の水溶性高分子からなる汚泥脱水剤に較べて脱水ケーキ含水率も低下するという顕著な効果を奏するので、産業上の利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】代表的な回転式圧縮濾過機の構造を示す一部切欠斜視図である。
【図2】図1の回転式圧縮濾過機のAA線による断面図である。
【図3】図1の回転式圧縮濾過機のCC線による断面図である。
【図4】(1)は図1の回転式圧縮濾過機の背圧装置の可動弁の全開状態を示し、(2)は同可動弁の全閉状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0136】
101 回転式圧縮濾過機
102 回転軸
103 内輪スペーサ
104 外輪スペーサ
105 スクリーン
106 隔壁板
107 可動弁
108 原液供給口
109 ケーキ出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性単量体共存下でビニル単量体を重合した架橋水溶性高分子、あるいはさらに変性した架橋水溶性高分子からなることを特徴とする回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤。
【請求項2】
前記架橋水溶性高分子が、架橋性単量体共存下でN−ビニルカルボン酸アミドと(メタ)アクリロニトリルからなる単量体混合物を重合し、その後酸により加水分解して変性して製造した下記一般式(1)および/または(2)の構造単位を10〜95モル%含有することを特徴とする請求項1に記載の回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤。
【化1】

(前記一般式(1)において、R1 、R2 は水素またはメチル基、X- は陰イオンをそれぞれ表わす。)
【化2】

(前記一般式(2)において、R1 、R2 は水素またはメチル基、X- は陰イオンをそれぞれ表わす。)
【請求項3】
前記架橋水溶性高分子が、架橋性単量体共存下で下記一般式(3)および/または一般式(4)で表わされる単量体5〜100モル%、下記一般式(5)で表わされる単量体0〜50モル%、非イオン性単量体0〜95モル%からなる単量体混合物(単量体合計100モル%)を重合したものであることを特徴とする請求項1に記載の回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤。
【化3】

(前記一般式(3)において、R3 は水素またはメチル基、R4 、R5 は炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、R6 は水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。Aは酸素原子またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基、X1 は陰イオンをそれぞれ表わす。)
【化4】

(前記一般式(4)において、R7 は水素またはメチル基、R8 、R9 は炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、X2 は陰イオンをそれぞれ表わす。)
【化5】

(前記一般式(5)において、R10は水素またはCH2 COOY2 、QはSO3、C64 SO3 、CONHC(CH32 CH2 SO3 、C64 COOあるいはCOO、R11は水素、メチル基またはCOOY2 であり、Y1 、Y2 は水素または陽イオンをそれぞれ表わす。)
【請求項4】
前記架橋水溶性高分子が、架橋性単量体共存下で前記一般式(5)で表わされる単量体0〜100モル%、非イオン性単量体0〜100モル%からなる単量体混合物(単量体合計100モル%)を重合したものであることを特徴とする請求項1に記載の回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤。
【請求項5】
前記一般式(3)および/または(4)で表わされる単量体50〜100モル%、前記一般式(5)で表わされる単量体0〜30モル%および非イオン性単量体0〜50モル%からなる単量体混合物(単量体合計100モル%)を重合した水溶性高分子からなることを特徴とする回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤。
【請求項6】
N−ビニルカルボン酸アミドと(メタ)アクリロニトリルからなる単量体混合物を重合し、その後酸により加水分解して変性して製造した前記一般式(1)および/または(2)の構造単位を10〜95モル%含有する水溶性高分子からなることを特徴とする回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤。
【請求項7】
請求項1〜請求項3あるいは請求項6のいずれかに記載の架橋水溶性高分子あるいは水溶性高分子の質量をM1とし、請求項5に記載の水溶性高分子の質量をM2とした場合、M1/M2の比が=2〜19の範囲の混合物からなることを特徴とする回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤。
【請求項8】
前記架橋水溶性高分子あるいは水溶性高分子の形態が、油中水型エマルジョンあるいは塩水溶液中分散液であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤。
【請求項9】
前記架橋水溶性高分子が、電荷内包率20%以上、80%未満を有するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の回転式圧縮濾過機用汚泥脱水剤。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の汚泥脱水剤を汚泥に添加、混合した後、回転式圧縮濾過機によって脱水することを特徴とする汚泥脱水方法。
【請求項11】
請求項1〜3あるいは7のいずれかに記載の汚泥脱水剤を下水消化汚泥、余剰汚泥あるいは製紙スラッジと余剰汚泥の混合汚泥に添加、混合した後、回転式圧縮濾過機によって脱水することを特徴とする請求項10に記載の汚泥脱水方法。
【請求項12】
請求項5あるいは6に記載の汚泥脱水剤を下水混合生汚泥に添加、混合した後、回転式圧縮濾過機によって脱水することを特徴とする請求項10に記載の汚泥脱水方法。
【請求項13】
無機凝集剤を併用することを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載の汚泥脱水方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−759(P2006−759A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179701(P2004−179701)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(591162022)巴工業株式会社 (32)
【出願人】(000142148)ハイモ株式会社 (151)
【Fターム(参考)】