説明

回転式電子部品

【課題】容易且つ確実に消音用の部材を取り付けることができ、同時に効果的な消音が図られる回転式電子部品を提供する。
【解決手段】基台30と押え部材100に設けた軸支穴45,101に回動自在に回転体60の回転軸61,63を軸支する。回転体60の一方の面側に摺動子85を設置する。回転体60の他方の面側にねじりコイルバネ90を設置し、基台30等に対して回転体60を回転する際に引出部93の一方を基台30の係止部37a,41aに係止し、引出部93の他方を回転体60の当接部73に当接して当接部73の移動と共に移動させることで回転体60を元の位置に自動復帰させる弾発力を生じさせる。ねじりコイルバネ90の外周から半径方向外方に突出する引出部93にゴム状弾性部材95を塗布によって被覆する。回転体60の回転軸63と軸支穴101の間に回転体60の回転に粘性抵抗を付与するグリス170を塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式可変抵抗器等の回転式電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転式電子部品の中には、回転体を回転(揺動)することでその電気的出力を変化させる構造のものがある。例えば特許文献1には、ねじりコイルバネからなる弾発手段の両端部を回路基板を固定する基台等の固定側部材に設けた一対の係止部と、回転体に設けた一対の当接部に同時に当接させておくことで回転体を中立位置に保持しておき、回転体を回転(揺動)させた際は、弾発手段の一方の端部が固定側部材の一方の係止部に係止したまま、弾発手段の他方の端部が回転体の他方の当接部に押圧されて移動し、これによって回転体にこれを元の位置に自動復帰させる弾発力を生じさせる構造のものがある。そして上記移動させた回転体への押圧を解除すると、回転体は元の中立位置に自動復帰する。しかしながら自動復帰の際、弾発手段の端部が固定側部材の他方の係止部に強く衝突し、その衝撃力で当接音が発生してしまうという問題があった。
【0003】
この問題を解決するため例えば、弾発手段であるねじりコイルバネの両端部に固定側部材の係止部に当接した際の衝撃力を緩和するチューブ(緩衝部材)を取り付けることとするか、或いは特許文献2に示すように、固定側部材の係止部にチューブ(緩衝部材)を取り付けることとしている。これによって前記衝撃力は緩和され、当接音は発生しなくなる。しかしながら緩衝部材としてチューブを用いた場合、以下のような問題があった。
【0004】
(1)ねじりコイルバネの端部にチューブを取り付けた場合は、この端部からチューブが抜け落ちてしまう恐れがあった。一方固定側部材の係止部にチューブを取り付けた場合は、前記ねじりコイルバネの細い端部が何度も当接することでチューブが打撃され、チューブが破損して切れてしまう恐れがあった。
【0005】
(2)ねじりコイルバネの端部や固定側部材の係止部にチューブを取り付ける作業は煩雑であった。特に電子部品が小型化した場合、この問題は顕著になる。
【特許文献1】特開2007−173092号公報
【特許文献2】特開2002−198209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、容易且つ確実に消音用の部材を取り付けることができると同時に、効果的な消音効果を得ることができる回転式電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願請求項1に記載の発明は、固定側部材と、前記固定側部材に設けた軸支穴に回動自在に挿入して軸支される回転軸を設けてなる回転側部材と、前記回転側部材の一方の面側に設置され回転側部材の回転に伴って電気的出力を変化する電気的機能部と、前記回転側部材の前記電気的機能部を設置した反対面側に設置され、固定側部材に対して回転側部材を回転する際に端部の一方が固定側部材の係止部に係止されるとともに、端部の他方が回転側部材の当接部に当接して当接部の移動と共に移動することで回転側部材を元の位置に自動復帰させる弾発力を生じるねじりコイルバネからなる復帰用バネと、を具備し、前記復帰用バネの外周から半径方向外方に向けて突出する両端部にゴム状弾性部材を塗布によって被覆するとともに、前記回転側部材の前記復帰用バネを設置した側の面から突出する回転軸とこの回転軸を回転自在に軸支する固定側部材の軸支穴の間に回転側部材の回転に粘性抵抗を付与するグリスを塗布したことを特徴とする回転式電子部品にある。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、消音用のゴム状弾性部材を復帰用バネの端部に確実に取り付けることができて外れる恐れがなくなる。またゴム状弾性部材は復帰用バネの端部に塗布して硬化させるだけで容易に形成できる。従って復帰用バネが小型化してもこれに容易且つ確実にゴム状弾性部材を取り付けることができる。
【0009】
また回転側部材の回転軸と固定側部材の軸支穴との間にグリスを塗布したので、回転側部材の回転にグリスによる粘性抵抗が生じ、回転側部材が元の位置に自動復帰する際の復帰速度が弱められ、復帰用バネの端部が固定側部材の係止部に当接する際の衝撃力が弱められ、この点からも当接音及び当接振動をなくすことができる。同時に前記ゴム状弾性部材の衝撃による劣化を防止することもできる。
【0010】
またグリスは復帰用バネを設置した側の面(即ち回転側部材の電気的機能部を設置した反対側の面)から突出する回転軸に塗布したので、グリス塗布部分と電気的機能部との離間距離が大きくなり、電気的機能部にグリスが付着する恐れがなくなり、電気的機能部へのグリスの付着による接続不良を防止できる。また前記復帰用バネの外周から半径方向外方に向けて突出する両端部にゴム状弾性部材を形成したので、回転側部材の復帰用バネを設置した側の面から突出する回転軸にグリスを塗布しても、回転軸のグリス塗布部分と復帰用バネのゴム状弾性部材の間が離れ、ゴム状弾性部材へのグリスの付着も防止でき、ゴム状弾性部材の劣化が防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明を適用してなる回転式電子部品1の分解斜視図、図2は回転式電子部品1の側断面図である。両図に示すように回転式電子部品1は、回路基板(以下この実施形態では「フレキシブル回路基板」という)10を取り付けた基台30と、基台30に対して回転自在に設置される回転体60と、回転体60に内蔵され回転体60を所定位置(中立位置)に自動復帰させる復帰用バネ(以下「ねじりコイルバネ」という)90と、回転体60の基台30に向く面の反対側の面に設置されて回転体60及び回転体60の弾発手段収納部69に収納したねじりコイルバネ90の抜けを防止する押え部材100と、回路基板(以下この実施形態では「第2フレキシブル回路基板」という)140を載置した取付台120と、基台30を取付台120に取り付ける固定部材150と、回転体60の外周上部(半径方向の外周の上部)に設置され回転体60と一体に回転するつまみ200と、を具備して構成されている。なお上記各構成部品の内、回転体60とねじりコイルバネ90とつまみ200を除く他の部品は固定側部材、回転体60とつまみ200は固定側部材に対して相対的に回転する回転側部材である。以下各構成部品について説明する。
【0012】
図3はフレキシブル回路基板10を取り付けた基台30を示す斜視図である。同図に示すようにフレキシブル回路基板10は、機能パターン部11と端子パターン部13とを設けて構成されている。機能パターン部11の表面には円弧状の摺接パターン15が設けられ、端子パターン部13には端子パターン17が設けられ、摺接パターン15と端子パターン17間は接続パターン19によって接続されている。なお摺接パターン15はスイッチパターンであっても良いし、抵抗体パターンであっても良く、さらにそれら以外の機能を有するパターンであっても良い。端子パターン部13の両側辺には下記する固定部材150の取付片153を係合する凹状の係合部21が設けられている。機能パターン部11の中央(回転体60の回転中心軸部分)には下記する回転体60の回転軸61を通す円形の貫通孔23が設けられている。
【0013】
基台30は成形樹脂を略半円板状に成形してなる電子部品取付部31と、電子部品取付部31を略L字状に屈曲することで回転体60から離れる方向(後方)に伸びる圧接接続部35とを一体成形して構成されている。電子部品取付部31は、フレキシブル回路基板10の機能パターン部11の周囲と背面とを囲むように成形されている。電子部品取付部31の上部中央と下部両端には、それぞれ下記する回転体60の外周の外側を通して押え部材100側に向かって棒状に突出するストッパー軸39及び弾発手段係止部37,41が設けられている。ストッパー軸39及び各弾発手段係止部37,41の先端には熱カシメによって下記する押え部材100を固定する小突起状の固定部43が設けられている。弾発手段係止部37,41の上面は下記するねじりコイルバネ90から半径方向外側に向かって引き出される一対の端部(以下「引出部」という)93を当接する係止部37a,41aとなっている。また電子部品取付部31の上部中央に設けたストッパー軸39の左右両側面は下記する回転体60のストッパー当接部79を当接するストッパ当接面39aとなっている。また電子部品取付部31中央の前記フレキシブル回路基板10の貫通孔23を設けた位置にはこの貫通孔23の内径寸法と同一内径寸法であって下記する回転体60の回転軸61を回転自在に軸支する円形の軸支穴45が設けられている。一方圧接接続部35は平板状であって、その両側辺には下記する固定部材150の取付片153を係合する凹状の取付片挿入部47が設けられている。
【0014】
回転体60は略円板状の合成樹脂成形品であり、その両面中央から一対の回転軸61,63を突出し、その一方の面(基台30側の面)を摺動子取付面65とし、他方の面に弾発手段収納部69を設けている。両回転軸61,63の先端面には、それぞれ下記するつまみ200の一対の係合部215に係合される取付部67が設けられている。取付部67は回転軸61,63の先端面から上下に帯状(直線状)に伸びる平板状の突起であり、平板状のその突起先端面は、つまみ200から離れる方向に従って外方に広がるテーパ面68となっている。つまり取付部67は下記する係合部215にスナップイン係合していく方向に向かって縦長形状に形成されている。弾発手段収納部69は回転軸63の周囲を囲むリング形状の凹部によって構成されており、その半径方向外側に向けて一対の切り欠き状の引出部挿通部71を設けている。一対の引出部挿通部71の下側の面はそれぞれ当接部73となっている。摺動子取付面65には図2に示すように下記する摺動子85の取付部87に挿入される小突起状の固定部75が突設されている。
【0015】
次に回転体60の外周面の上部中央から左右に等間隔の位置には、それぞれ2本の突起81を円周方向に連続して設けることで突起81の間に凹部を設け、これら突起81と凹部とによって係止部83を構成している。これら一対の係止部83,83の間の回転体60の外周面にはこの外周面部分を凹状に窪ませて前記基台30のストッパー軸39を挿通する挿通部77が設けられ、挿通部77の両側に位置する係止部83の突起81の両内側面をストッパー当接部79としている。
【0016】
摺動子85は弾性金属板を略リング状に形成して構成されており、その上下部分2ヶ所に孔からなる取付部87を設け、両取付部87間を連結する一対のアーム88の中央位置にフレキシブル回路基板10側に突出するように湾曲する摺接部89を設けている。
【0017】
図1に示すねじりコイルバネ90はバネ材からなる線材をコイル状に巻き回したコイル部91の両端から半径方向外方に向けて引出部93を引き出して構成されている。このねじりコイルバネ90は両引出部93を図1の上方向に移動することでコイル部91の内径が小さくなって絞られる方向になるように巻き回されている。そしてこのねじりコイルバネ90の両引出部93には、ゴム状弾性部材95が塗布によって被覆されている。ゴム状弾性部材95はこの実施形態ではシリコーンゴムを用いている。なお図1に示すねじりコイルバネ90の形状は、回転式電子部品1を組み立てた際の状態、即ち回転体60の両当接部73に両引出部93を当接しているときの状態を示しており、フリーの状態のときは図7に示すようにもう少し両引出部93間は接近している。
【0018】
図7,図8はねじりコイルバネ90にゴム状弾性部材95を被覆する被覆方法説明図である。ねじりコイルバネ90にゴム状弾性部材95を被覆するには、まず複数のねじりコイルバネ90のコイル部91を棒状の保持部材99に所定の間隔をあけて取り付けていく(図8の状態参照)。このとき両引出部93の引出方向を揃える。またコイル部91の内周は保持部材99の外周に軽く圧入され、保持部材99に対してねじりコイルバネ90は回動しない。次にねじりコイルバネ90(少なくともゴム状弾性部材95を被覆する部分)を脱脂処理する(有機溶剤液中に浸して油の付着を取り除く処理)。これはゴム状弾性部材95の付着性を向上させるためである。次に図7に示すように容器内に満たした液状シリコーンゴム97中に保持部材99に取り付けた複数のねじりコイルバネ90の両引出部93を同時に浸漬して液状シリコーンゴム97を付着させた後、液状シリコーンゴム97中から取り出す。そして両引出部93に液状シリコーンゴム97を付着させた複数のねじりコイルバネ90を取り付けた保持部材99を、図示しない恒温槽等の加熱手段内に設置することで加熱(例えば100〜150℃、2〜5分間)して両引出部93に付着させた液状シリコーンゴムを固体化させる。この例で用いているシリコーンゴム97は、2液の付加重合型のRTV(Room Temperature Vulcanzing)シリコーンゴムで、加熱することにより短時間でゴム状に硬化するものである。
【0019】
そして保持部材99から複数のねじりコイルバネ90を取り外せば、この実施形態にかかるゴム状弾性部材95を被覆したねじりコイルバネ90が完成する。このようにして消音用のゴム状弾性部材95をねじりコイルバネ90の引出部(端部)93に塗布すれば、取り付けが確実となってゴム状弾性部材95が引出部93から抜け落ちることはない。またゴム状弾性部材95はねじりコイルバネ90の引出部93に塗布して硬化させるだけなので、その形成が容易である。従ってねじりコイルバネ90が小型化してもその引出部93に容易且つ確実にゴム状弾性部材95を取り付けることができる。このねじりコイルバネ90は、復帰用バネの中の中立位置復帰用バネである。
【0020】
なおねじりコイルバネ90の引出部93にゴム状弾性部材95を被覆する方法は上記方法に限定されず、他の各種方法を用いても良い。また被覆するゴム状弾性部材95の材質はシリコーンゴムに限定されるものではなく、ゴム状弾性を有するものであれば他の各種材質であっても良い。
【0021】
図1,図2に戻って、押え部材100は成形樹脂を略板状であって、前記回転体60の弾発手段収納部69を塞ぐ外形寸法に形成されており、その中央には前記回転体60の回転軸63を回動自在に軸支しながら挿入する円形の貫通孔からなる軸支穴101が設けられ、またその外周の下部両端と上部中央からは半径方向外側に向けて舌片状に突出する取付部103が設けられ、各取付部103には前記基台30に設けた固定部43を挿入する挿入固定部105が設けられている。
【0022】
図4はつまみ200を下面側から見た斜視図である。同図及び図1,図2に示すようにつまみ200は合成樹脂の成形品であり、半円筒形状であって前記基台30及び回転体60の上部に位置するつまみ本体部201と、つまみ本体部201の両側部から前記基台30及び回転体60側に向かう(つまみ本体部201の両側部を覆う)一対のつまみ支持部211とを具備して構成されている。つまみ本体部201の上面中央には長手方向(つまみ200の回転軸方向)に向かって延びる長尺の操作部203が突出して形成され、またその下面(回転体60の外周面に対向する側の面)には、前記回転体60に設けた一対の係止部83の凹部にそれぞれ係合する一対の係止部205が設けられている。係止部205は、略三角形状に突出する一本の突起によって構成され、前記回転体60に設けた係止部83の凹部にぴったり係合する寸法形状に形成されている。一方つまみ支持部211は平板状であって、その下辺中央から舌片状に突出する取付部213を設け、取付部213の中央上部に縦方向に帯状(直線状)に延びる矩形状の貫通孔からなる係合部215を設け、また一対の取付部213の対向する内側の面の下部に下方向に向かって両面間が広がっていくテーパ面217を設けている。
【0023】
固定部材150は金属板製であり、前記基台30の圧接接続部35の上面をほぼ覆う矩形状の押え部151と、電子部品取付部31の背面に当接する当接部152と、押え部151の両側辺から2本ずつ突出して下方向に屈曲される舌片状の取付片153とを具備して構成されている。
【0024】
第2フレキシブル回路基板140は、可撓性を有する合成樹脂フイルム上に3つの端子パターン141を設け、各端子パターン141から引き出した引出パターン143をこの第2フレキシブル回路基板140の引出部145に導出している。第2フレキシブル回路基板140の先端側の一辺には2つの凹状の係合部147が設けられ、また各端子パターン141を形成した部分よりも引出部145を引き出す側の部分にも2つの貫通孔からなる係合部147が設けられている。
【0025】
取付台120は合成樹脂を略矩形状に成形して構成されており、その前方側は電子部品載置部121、後方側は基板圧接部123となっている。基板圧接部123の略中央には矩形状で凹状の収納部125が設けられ、また基板圧接部123の両側辺にはそれぞれ2つずつの凹状の係合部127が設けられている。また収納部125内に収納される弾発手段130は弾性金属板製であり、略矩形状の基部131の長手方向の一側辺から3本の弾発片133を突出して上方向に折り曲げ、それぞれの先端に上方向に突出する弾発部135を形成して構成されている。
【0026】
図1に示す170はグリスであり、下記するように回転体60の回転軸63と押え部材100の軸支穴101の間に塗布されるものである。このグリス170は温度依存性の少ないグリスであり、具体的には凝固点の低い(−50℃〜−65℃程度)シリコン系のシリコンオイルを用いている。
【0027】
次に回転式電子部品1の組立方法を説明すると、まず予め回転体60の摺動子取付面65に摺動子85を当接し、その際回転体60に設けた固定部75(図2参照)を摺動子85に設けた取付部87に挿入してその先端を熱カシメすることで固定する。次に回転体60を、基台30に取り付けたフレキシブル回路基板10の機能パターン部11の表面上に設置し、その際フレキシブル回路基板10及び基台30の貫通孔23,軸支穴45に回転体60の一方の回転軸61を回動自在に挿入する。次に回転体60の弾発手段収納部69内にねじりコイルバネ90のコイル部91を収納して両端の引出部93をそれぞれ回転体60の引出部挿通部71に挿入し、当接部73に弾接させる(このとき引出部93の先端は引出部挿通部71からその外方に突出し、基台30の係止部37a,41a上にも弾接している)。次に回転軸63又は押え部材100の軸支穴101に前記グリス170を塗布した上で、回転体60の弾発手段収納部69を設けた面上に押え部材100を設置して被せ、押え部材100の軸支穴101に回転体60の回転軸63を挿入して回動自在に軸支し、このとき同時に押え部材100の各挿入固定部105に基台30の各固定部43を挿入してその先端を熱カシメして固定する。これによって回転体60の回転軸61,63はそれぞれ回転体60の両側において基台30と押え部材100に軸支される。また押え部材100を取り付けることで、基台30から回転体60は外れず、且つ回転体60の弾発手段収納部69からねじりコイルバネ90が抜け出ない。なお前記ねじりコイルバネ90等によって自動復帰機構が構成されている。このとき摺動子85の摺接部89は機能パターン部11の摺接パターン15上に当接している。また図2に示すA1の範囲の回転軸63と軸支穴101の間の部分(グリス塗布部分)に前記グリス170が塗布されている。そして基台30と回転体60の上につまみ200を被せるように設置することで、回転体60の一対の回転軸61,63の取付部67をつまみ200に設けた一対の係合部215に係止しつまみ200と回転体60とを一体化する。このとき同時に、つまみ200に設けた一対の係止部205が回転体60に設けた一対の係止部83の凹部に係合し、両者は回転方向の力に対して係止(固定)される(図5参照)。
【0028】
次に取付台120の収納部125内に弾発手段130を収納した上で、その上に端子パターン141を上向きとした第2フレキシブル回路基板140を載置する。次に基台30に取り付けたフレキシブル回路基板10の端子パターン部13を図1に示すように基台30の圧接接続部35の下面側に折り曲げて、前記第2フレキシブル回路基板140上に載置する。そして前記圧接接続部35の上面に固定部材150の押え部151を載置し、その際固定部材150の取付片153を圧接接続部35の取付片挿入部47と端子パターン部13の係合部21と第2フレキシブル回路基板140の係合部147と取付台120の係合部127とに係合し、取付片153の先端を取付台120の裏面に折り曲げ、これによって基台30を取付台120に固定すると同時に、取付台120上に載置した第2フレキシブル回路基板140の各端子パターン141とフレキシブル回路基板10の各端子パターン17とを圧接接続部35の下面と弾発手段130の弾発部135とによって圧接接続する。なお上記組立手順はその一例であり、他の各種異なる組立手順を用いて組み立てても良いことはいうまでもない。
【0029】
図5,図6は以上のようにして組み立てられた回転式電子部品1の動作説明図(但し、押え部材100の記載は省略)である。回転体60が中立位置にあるときは、ねじりコイルバネ90の両引出部93(正確にはゴム状弾性部材95)は回転体60の当接部73と基台30の係止部37a,41aに弾接している。そして例えばつまみ200を図5に示す矢印A方向に押圧して回転(揺動)すれば、回転体60及びつまみ200全体が図6に示すように矢印A方向に回転し、摺動子85の摺接部89がフレキシブル回路基板10の摺接パターン15上を摺動してその電気的出力を変化する。つまり摺接パターン15と摺動子85が回転体60の移動に伴なって電気的出力を変化する電気的機能部となっている。その際ねじりコイルバネ90の左側の引出部93は元の位置(係止部37aに当接する位置)に保持されたまま右側の引出部93が当接部73によって押し上げられて移動し、コイル部91がねじられることで回転体60には中立位置への弾性復帰力が与えられる。回転体60を中立位置から図5に示す矢印A方向と逆方向に押圧して回転(揺動)した際も同様である。回転体60の回転角度は、回転体60のストッパー当接部79に基台30のストッパー当接面39aが当接することで制限される。
【0030】
つまりねじりコイルバネ90は、固定側部材である基台30に対して移動体である回転体60を回転移動する際に、一方の引出部93が基台30の係止部37a(又は41a)に係止されると共に、他方の引出部93が回転体60の当接部73に当接して当接部73の回転移動と共に移動することで回転体60を元の位置に自動復帰させる弾発力が生じる復帰用バネであり、特にこの実施形態のねじりコイルバネ90は、何れの方向に回転体60を回転移動しても何れか一方の引出部93が基台30の係止部37a(又は41a)に係止されると共に、何れか他方の引出部93が回転体60の当接部73に当接して当接部73の回転移動と共に回転移動することで回転体60を中立位置に自動復帰させる中立位置復帰用バネである。
【0031】
そしてつまみ200への押圧力を解除すれば、ねじりコイルバネ90の弾発復帰力によって回転体60は元の中立位置(図5の状態)に自動復帰する。その際、回転体60の当接部73によって移動していた(持ち上げられていた)他方の引出部93も元の中立位置に戻り、その際この他方の引出部93は強く係止部41a(又は37a)に当接する。しかしながら引出部93にはゴム状弾性部材95が被覆されているので、前記当接による衝撃力はこのゴム状弾性部材95によって大きく緩衝される。従って前記当接による音や振動は生じなくなる。
【0032】
また回転体60の回転軸63と押え部材100の軸支穴101との間にグリス170を塗布しているので、回転体60及びつまみ200の回転にグリスによる粘性抵抗が付与され、回転体60及びつまみ200が元の位置に自動復帰する際の復帰速度を弱め、ねじりコイルバネ90の他方の引出部93が基台30の係止部41a(又は37a)に当接する際の衝撃力を弱め、この点からも当接音及び当接振動をなくすことができる。同時に前記ゴム状弾性部材95の衝撃による劣化を防止することもできる。
【0033】
またグリス170はねじりコイルバネ90を設置した側の面(即ち回転体60の電気的機能部である摺動子85を設置した反対側の面)から突出する回転軸63に塗布したので、グリス塗布部分(A1)と電気的機能部とが回転体60によって仕切られて両者間の離間距離が大きくなり、電気的機能部にグリス170が付着する恐れがなくなり、電気的機能部へのグリス付着による接触不良を防止できる。またねじりコイルバネ90の外周から半径方向外方に向けて突出する両引出部93にゴム状弾性部材95を形成したので、回転体60のねじりコイルバネ90を設置した側の面から突出する回転軸63にグリス170を塗布しても、回転軸63のグリス塗布部分(A1)とゴム状弾性部材95の間が離れ、ゴム状弾性部材95へのグリス170の付着も防止できる。ゴム状弾性部材95はシリコンゴム製であり、シリコンオイル製のグリス170が付着すると溶解する恐れがあるので、ゴム状弾性部材95へのグリス170の付着を防止してゴム状弾性部材95の劣化を防止する上記構成は有効である。
【0034】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば上記実施形態ではねじりコイルバネ90の両引出部93全体にゴム状弾性部材95を被覆したが、両引出部93中の回転体60の当接部73と基台30の係止部37a,41aに当接する部分だけにゴム状弾性部材95を被覆しても良い。また場合によってはねじりコイルバネ90のコイル部91を含むねじりコイルバネ90全体にゴム状弾性部材95を被覆しても良い。またグリス170の材質やゴム状弾性部材95の材質に種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0035】
また上記実施形態ではねじりコイルバネ90を、回転体60を左右両方向に回転した際に何れの方向に対しても弾発力が生じて回転体60を中立位置に自動復帰させる中立位置復帰用バネとして用いた例を示したが、回転体60を一方の方向のみに弾発することで他方の方向に回転体60を回転した際に一方の方向のみに回転体60を自動復帰させる復帰用バネとして用いても良い。また上記実施形態ではフレキシブル回路基板10に設けた摺接パターン15とこれに摺接する摺動子85とによって電気的機能部を構成したが、電気的機能部は他の各種構造であっても良い。要は回転体60の一方の面側に設置され回転体60の回転に伴って電気的出力を変化する電気的機能部であればどのような構成であっても良い。なお上記実施形態において用いた第2フレキシブル回路基板140と取付台120と弾発手段130と固定部材150とは必ずしも必要なく、省略しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】回転式電子部品1の分解斜視図である。
【図2】回転式電子部品1の側断面図である。
【図3】フレキシブル回路基板10を取り付けた基台30を示す斜視図である。
【図4】つまみ200を下面側から見た斜視図である。
【図5】回転式電子部品1の動作説明図である。
【図6】回転式電子部品1の動作説明図である。
【図7】ねじりコイルバネ90へのゴム状弾性部材95の被覆方法説明図である。
【図8】ねじりコイルバネ90へのゴム状弾性部材95の被覆方法説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 回転式電子部品
10 フレキシブル回路基板(回路基板、固定側部材)
15 摺接パターン(電気的機能部)
30 基台(固定側部材)
37a,41a 係止部
45 軸支穴
60 回転体(回転側部材)
61,63 回転軸
73 当接部
90 ねじりコイルバネ(復帰用バネ)
93 引出部(端部)
95 ゴム状弾性部材
100 押え部材(固定側部材)
101 軸支穴
120 取付台(固定側部材)
140 第2フレキシブル回路基板(回路基板)
150 固定部材(固定側部材)
170 グリス
200 つまみ(回転側部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側部材と、
前記固定側部材に設けた軸支穴に回動自在に挿入して軸支される回転軸を設けてなる回転側部材と、
前記回転側部材の一方の面側に設置され回転側部材の回転に伴って電気的出力を変化する電気的機能部と、
前記回転側部材の前記電気的機能部を設置した反対面側に設置され、固定側部材に対して回転側部材を回転する際に端部の一方が固定側部材の係止部に係止されるとともに、端部の他方が回転側部材の当接部に当接して当接部の移動と共に移動することで回転側部材を元の位置に自動復帰させる弾発力を生じるねじりコイルバネからなる復帰用バネと、を具備し、
前記復帰用バネの外周から半径方向外方に向けて突出する両端部にゴム状弾性部材を塗布によって被覆するとともに、
前記回転側部材の前記復帰用バネを設置した側の面から突出する回転軸とこの回転軸を回転自在に軸支する固定側部材の軸支穴の間に回転側部材の回転に粘性抵抗を付与するグリスを塗布したことを特徴とする回転式電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−10384(P2010−10384A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167778(P2008−167778)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000215833)帝国通信工業株式会社 (262)
【Fターム(参考)】