説明

回転管球X線管

【課題】機械的強度を高め改善された出力を有する回転管球X線管を提供する。
【解決手段】X線に対しほぼ透過性のX線射出窓7を有するハウジング1を備え、ハウジング1が内側カバー2とこの内側カバーに固く結合された外側カバー4とを有し、内側カバー2と外側カバー4との間に冷却液を導通するための間隙3が形成されている回転管球X線管において、X線射出窓7がその内部に冷却液のための貫流可能な構造を有し、この構造を間隙3と結合し、機械的強度を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線に対しほぼ透過性のX線射出窓を有するハウジングを備え、ハウジングが内側カバーとこの内側カバーに固く結合された外側カバーとを有し、内側カバーと外側カバーとの間に冷却液を導通するための間隙が形成されている回転管球X線管に関する。
【背景技術】
【0002】
このような回転管球X線管は知られている(例えば特許文献1参照)。この種の回転管球X線管においては、ハウジングの外側ケースはリング状のX線射出窓を有し、そのX線射出窓はX線に対し透過性の材料で作られている。外側カバーとこの外側カバーに固く結合された内側カバーとの間に形成された間隙中に冷却液が循環される。高い回転速度においては特に、冷却液は遠心力により生み出される高い圧力をX線射出窓に及ぼす。最大回転速度及びそれとともに回転管球X線管の出力は、とりわけX線射出窓の強度によって制限される。
【特許文献1】独国特許第10335664 B3号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、さらに改善された出力を有する回転管球X線管を提示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、請求項1の特徴により解決される。本発明の目的に適った実施形態は、請求項2〜14の特徴から得られる。
【0005】
本発明に従えば、X線射出窓はその内部に冷却液のための貫流可能な構造を有する。即ち、それに関してX線射出窓は厚く形成することが可能である。本発明に従い提起された貫流可能な構造は、その上X線射出窓の有効な冷却を可能にする。それとともに全体としてX線射出窓の強度を著しく高めることができる。そのことは他方、さらに高められた回転速度での回転管球X線管の駆動及びそれと同時に回転管球X線管の負荷耐性を可能にする。
【0006】
有利な実施形態に従えば、ハウジングは内側カバー及びそれと固く結合された外側カバーを有し、その際内側カバーと外側カバーとの間には冷却液を導通させるための間隙が形成されている。冷却液はこの場合従ってハウジングと同じ回転速度で回転される。そのことは冷却液の正確な強制誘導及びそれとともに特に効果のある冷却を可能にする。内側カバーが外側カバーと回転しないように固く結合されていない回転管球X線管に比べて、その際生じる冷却液と内側カバーとの間の望ましくない摩擦は防止される。提起された回転管球X線管は、比較的低い駆動出力で回転させることができる。
【0007】
別の実施形態に従えば、X線射出窓は外側カバーによって形成されたハウジングの外面に冷却液に対し通り抜け不可能な壁を有するよう定められる。このことは、外側カバーによって限定された液密の構造を可能にする。この場合、外側カバーがX線射出窓を通して漏れる冷却液を収容するための別のハウジングを備えるようなことは必要としない。
【0008】
X線射出窓は目的に適うように、外側カバーから半径方向内側に向かって間隙内へ延びている。特に有利な実施形態に従えば、X線射出窓は外側カバーから間隙を越えて内側カバーまで延び、内側カバーと力ロック式に結合されている。それによって、X線射出窓の機械的に特に安定な構成を得ることができる。この提起された構成は、回転管球X線管の特に高い負荷耐性を可能にする。
【0009】
間隙が貫流可能な構造と結合されると目的にかなっている。それによって、間隙中を流れる冷却液が構造を通り抜けるのが容易に可能である。貫流可能な構造に冷却液を供給するための特別の装置は必要としない。貫流可能な構造に間隙から直接冷却液を供給することができ、また貫流可能な構造から流出する冷却液は間隙に再び供給することができる。
【0010】
別の実施形態に従えば、構造は固い構造要素とその間に存在する空所から形成することができる。固い構造要素はX線に対しほぼ透過性である。その間に存在する空所に比べて構造はもちろん若干低い透過度を有する。構造要素の各々は、X線窓の所定の半径方向部分にわたって延びている。その際構造要素はハウジングの周方向に規則的に配置されるのが目的にかなっている。この場合、構造要素は周方向に繰り返される幾何学的形状によって与えられ、この幾何学的形状は特に空所の配置によって生じる。構造要素及び空所が周方向に規則的に配置されると、X線射出窓から出るX線の画像発生を乱す変調を防止することができる。特に、吸収要素の数Nが次の関係が成立するように選ばれると有利である。
T/N << 1/f
ここでTは回転管球の回転に関する回転時間、Nは1回転当たりの構造要素の数、fは画像データ読み出しレートである。
【0011】
上述の式を顧慮して構造要素を規則的ないし周期的に配置する場合には、構造が画像発生を妨害しないという保証が得られる。
【0012】
特に簡単な実施形態に従えば、構造は、連通する孔空間を有する多孔性又は泡状に構成された材料から形成される。その際特に、X線に対しほぼ透過性の材料が選ばれる。提案された多孔性又は泡状の材料から作られた構造は特に安定であり、同時にX線射出窓の卓越した冷却を可能にする。その材料としては、金属、例えばアルミニウム、マグネシウム、チタン、セラミックス又はガラスが対象となり得る。
【0013】
別の実施形態に従えば、構造は多数の溝を含む。その際溝はハウジングの回転軸にほぼ平行に配置することができる。この提起された溝を設けることは、特に金属から作られたX線射出窓の場合には比較的簡単に実施することができる。
【0014】
X線射出窓はハウジングのリング状の部分を形成すると有利である。それによって製造費を低減することができる。
【0015】
X線射出窓は以下の材料、即ちSiSiC、SSiC、LP:SiC、Al、Mg、Ti、SiC、Al2O3、AlN、Si3N4の1つから作ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0017】
図1に示される回転管球X線管においては、ハウジング1は真空密の内側カバー2及び間隙3を形成するように内側カバー2を囲む外側カバー4を含む。間隙3内に示される矢印によって、間隙3内に収容された冷却液の流れの方向が示されている。内側カバー2及び外側カバー4は結合手段(図示せず)によって固く互いに結合され、その結果外側カバー4が回転すると内側カバー2及び間隙3内に収容された冷却液が同じ速度で回転される。符号5で陽極が示され、この陽極は内側カバー2と固く結合されているか、又は同じ構成要素である。陽極5から放射されるX線ビーム6はハウジング1をX線射出窓7の範囲で突き抜ける。符号Aで回転管球X線管の軸が示されている。
【0018】
図2はX線射出窓7の範囲において軸Aに垂直な部分的断面を示す。例えばアルミニウムから作られる構造8は、外側カバー4から間隙3を超えて内側カバー2まで延びている。構造8は軸Aに平行に延びる規則的に配置された溝9を有する。図の実施例においては、溝9の各々は4つの隣接した溝を有する。これらの溝9はそれぞれ半径rを有する。溝9間の間隔Abは、半径rの1.4〜2倍、好ましくは1.5〜1.8倍の大きさであるように選ばれるのが有利である。
【0019】
構造8は外側カバー4及び内側カバー2と力ロック式に結合されている。例えば構造8はX線射出窓7の軸長手方向にわたって延びるリングを形成することができ、このリングは外側カバー4及び内側カバー2の部分と一体的な形成に作られている。しかしまた、構造8は外側カバー4と内側カバー2との間に形成された間隙3内へ挿入され、外側カバー4及び内側カバー2と例えば溶接又はろう付け等で力ロック式に結合されているようにしてもよい。
【0020】
図3はX線射出窓7を通って軸Aに垂直な部分横断面を示す。この例では構造8は連通する孔空間を有する焼結金属で形成される。「連通する孔空間」とは、冷却液が貫流し得る孔空間を意味する。焼結金属の代わりに連続気泡型のセラミックス、発泡金属などを使用することもできる。
【0021】
構造8は、目的にかなうように構造要素と空所9とからなる規則的な模様を形成する。そのような規則的な模様は例えば図2に示されている。その際構造要素はそれぞれ構造8の符号10で示される半径方向の部分に相応する。構造要素10の数Nないしその大きさは、特に回転管球の回転に関する回転時間T及び画像データ読み出しレートfに依存する既に述べた関係から生じるものが有利である。
【0022】
図2から明らかなように、半径方向内側に存在する溝9の列と半径方向外側に存在する溝9の列とが設けられ、これらの溝はそれぞれ2つの互いに隣接する孔間の距離Abの半分だけ相互にずれている。それによって、X線射出窓7を透過するX線に対し僅かな度合いでのみ引き起こされる周期的な減衰が生じる。
【0023】
提起されたX線射出窓7によって、高速回転においてX線射出窓7内に形成される圧縮力を補償することが簡単なやり方で達成される。その際溝9ないし空所の容積は溝9ないし空所を囲む構造要素10の容積にほぼ等しいのが目的にかなうことが立証された。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の回転管球X線管の部分断面の概略図である。
【図2】本発明の回転管球X線管の軸に垂直に第1のX線射出窓を通る部分断面図である。
【図3】本発明の回転管球X線管の軸に垂直に第2のX線射出窓を通る部分断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 ハウジング
2 内側カバー
3 間隙
4 外側カバー
5 陽極
6 X線ビーム
7 X線射出窓
8 構造
9 溝
10 構造要素
A 軸
Ab 溝間の距離
r 溝の半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線に対しほぼ透過性のX線射出窓(7)を有するハウジング(1)を備え、ハウジング(1)が内側カバー(2)とこの内側カバーに固く結合された外側カバー(4)とを有し、内側カバー(2)と外側カバー(4)との間に冷却液を導通するための間隙(3)が形成されている回転管球X線管において、X線射出窓(7)がその内部に冷却液のための貫流可能な構造(8)を有し、この構造(8)は間隙(3)と結合されていることを特徴とする回転管球X線管。
【請求項2】
X線射出窓(7)が外側カバー(4)によって形成されたハウジング(1)の外面に、冷却液に対し通り抜け不可能な壁を有することを特徴とする請求項1記載の回転管球X線管。
【請求項3】
X線射出窓(7)が外側カバー(4)から半径方向内側に向かって間隙(3)へ延びていることを特徴とする請求項1又は2記載の回転管球X線管。
【請求項4】
X線射出窓(7)が外側カバー(4)から間隙(3)を超えて内側カバー(2)まで延び、内側カバー(2)と力ロック式に結合されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の回転管球X線管。
【請求項5】
構造(8)が固い構造要素(10)とその間に存在する空所(9)とからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の回転管球X線管。
【請求項6】
構造要素(10)がハウジング(1)の周方向に規則的に配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の回転管球X線管。
【請求項7】
構造要素(10)の数Nが次の関係
T/N << 1/f
T:回転管球の回転に関する回転時間
N:1回転あたりの構造要素の数
f:画像読み出しレート
が成立するように選ばれることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の回転管球X線管。
【請求項8】
構造(8)が、連通する孔空間を有する多孔性又は発泡性に構成された材料から形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の回転管球X線管。
【請求項9】
空所が溝(9)であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の回転管球X線管。
【請求項10】
溝(9)がハウジング(1)の回転軸(A)にほぼ平行に配置されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の回転管球X線管。
【請求項11】
X線射出窓(7)がハウジング(1)のリング状部分を形成することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の回転管球X線管。
【請求項12】
X線射出窓(7)が次の材料、SiSiC、SSiC、LP:SiC、Al、Mg、Ti、SiC、Al2O3、AlN、Si3N4のいずれか1つから作られていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の回転管球X線管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−109663(P2007−109663A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279746(P2006−279746)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】