説明

回転装置のシリーズ、回転装置の追加ユニット、及び回転装置のシール装置

【課題】オイルシールの個数の異なる複数種類の回転装置をトータルで安く製造することができる。
【解決手段】第1部材Aと第2部材Bが相対的に回転する回転装置のシリーズにおいて、当該回転装置のシリーズは、第1回転装置Xと第2回転装置Yを備える。第1回転装置Xは、第1部材Aと第2部材Bとの間にn個のオイルシールOnが配置された第1シール装置Jを備えている。一方、第2回転装置Yは、第1シール装置Jと共通の第1、第2部材A、Bと、第1部材Aに接続され第1部材Aと一体的に回転する接続部材Cとを備えており、且つ第1部材Aと第2部材Bの間にn個のオイルシールOnが配置されていると共に、接続部材Cと第2部材Bの間にm個のオイルシールOmが配置されている第2シール装置Kを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転装置のシリーズ、回転装置の追加ユニット、及び回転装置のシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、減速装置(回転装置)が開示されている。
【0003】
減速装置には、ケーシング(第1部材)と、減速した回転を取り出すフランジ(第2部材)とが備えられている。フランジは、該ケーシングの内周に配置され、ケーシングと相対的に回転している。オイルシールが、ケーシングとフランジの間に配置されており、ケーシングとフランジの間をシールしている。この特許文献1にはオイルシールの個数が、1個の例と2個の例が開示されているが、それぞれの例においてケーシングの形状は異なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−85267号公報(図1、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
減速装置の製造メーカは、減速装置の使用条件、環境等に応じて、異なったシール性能を必要とする需要に応じて、オイルシールの個数が異なる減速装置を製造しなければならない。
【0006】
しかしながら、従来は、組み込むオイルシールの個数が異なる場合、該オイルシールの占有するスペースが異なることから、ケーシングを含め減速装置自体を個別に設計・製造していた。そのため、結果として、オイルシールの個数に応じて複数種類の減速装置を設計・製造することになり、これらの減速装置の(シリーズ全体としての)総製造コストが高くなってしまっていた。
【0007】
本発明では、上記の問題を解決するために、組み込むべきオイルシールの個数が異なっても、これらの異なる個数のオイルシールを組み込み可能な複数種類の回転装置をトータルでより安く製造することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1部材と第2部材が相対的に回転する回転装置のシリーズにおいて、当該回転装置のシリーズは、第1回転装置と第2回転装置を備えており、前記第1回転装置は、前記第1部材と第2部材との間にn個のオイルシールが配置された第1シール装置を備えているとともに、前記第2回転装置は、前記第1シール装置と共通の前記第1、第2部材と、該第1部材に接続され該第1部材と一体的に回転する接続部材とを備えており、且つ前記第1部材と第2部材の間に前記n個のオイルシールが配置されていると共に、前記接続部材と第2部材の間にm個のオイルシールが配置されている第2シール装置を備えている構成により上記課題を解決した。
【0009】
本発明に係る第1部材と第2部材が相対的に回転する回転装置のシリーズは、オイルシールがn個の第1回転装置と、オイルシールがn+m個の第2回転装置を備えている。
【0010】
第1回転装置は、第1部材と第2部材との間にn個のオイルシールが配置された第1シール装置を備えている。また、第2回転装置は、第1シール装置と共通の第1部材と第2部材の間にn個のオイルシールが配置されていると共に、接続部材と第2部材の間にm個のオイルシールが配置されている第2シール装置を備えている。
【0011】
この第1、第2回転装置を備える回転装置のシリーズは、オイルシールがn個の第1回転装置に対して接続部材及びm個のオイルシール等を備える追加ユニットを追加するだけで、オイルシールがn+m個の第2回転装置を製造することができる。つまり、シリーズを構成する第1、第2回転装置の双方に対して第1、第2部材を共用し、追加ユニットを脱着するだけで、オイルシールの個数が異なる種類の回転装置を製造することができる。これにより、当該複数種類の回転装置は、オイルシールの個数が異なっても、第1、第2部材を含む多くの部材が共用できるため、シリーズ全体としての総製造コストを低減できる。
【0012】
なお、上記オイルシールの個数nは0でもよい。即ち、nは0以上の整数である(n≧0)。一方、追加されるべきオイルシールの個数mは、1以上の整数である(m≧1)。これについては後述する。
【0013】
上記視点で、本発明は、「新規のオイルシールの追加ユニット」という概念として捉えることもできる。即ち、本発明は、第1部材と第2部材が相対的に回転する回転装置に追加して使用する追加ユニットであって、前記第1部材と接続される接続部材と、該接続部材と前記第1部材とを接続する接続機構と、前記接続部材と前記第2部材の間に配置されるオイルシールと、を備えている発明と捉えることもできる。
【0014】
また、(シリーズ中の)第2回転装置の構成に着目するならば、本発明は、第1部材と第2部材が相対的に回転する回転装置のシール装置において、前記第1部材に接続され、該第1部材と一体的に回転する接続部材を備え、前記第1部材と第2部材の間にオイルシールを備えると共に、前記接続部材と第2部材の間にもオイルシールが配置されている発明と捉えることもできる。
【0015】
ここで、「オイルシール」とは、装置内部から潤滑剤の漏れを防止できる何らかのシール部材であればよく、オイルシール自身の形状や装置への組み込み態様は特に限定されない。即ち、単独で配置されたいわゆるオイルシールそのものに限らず、後述するように、例えば、シール軸受内部に組み込まれるシール部材も、オイルシールの概念に含まれる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、オイルシールの個数の異なる複数種類の回転装置をトータルで安く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明における回転装置のシリーズの概念図
【図2】本発明の実施形態にかかる第2減速装置の縦断面図
【図3】図2における矢示III部の拡大図
【図4】本発明の実施形態にかかる第1減速装置に備えられた第1シール装置の拡大図
【図5】本発明の他の実施形態にかかる第2減速装置に備えられた第2シール装置の拡大図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0019】
まず、全体の理解を容易とするために、本回転装置のシリーズの概念について説明する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る回転装置のシリーズの概念図である。
【0021】
回転装置のシリーズは、第1回転装置Xと第2回転装置Yを備えている。
【0022】
第1回転装置Xは、第1部材Aと第2部材Bとの間にn個のオイルシールOnが配置された第1シール装置Jを備えている。なお、符号Gは、該第1回転装置Xが本来的に備えている回転機構(例えば減速機構)である。
【0023】
第2回転装置Yは、第1部材Aと第2部材Bの間にn個のオイルシールOnが配置されていると共に、接続部材Cと第2部材Bの間にm個のオイルシールOmが配置されている第2シール装置Kを備えている。また、第1回転装置Xと同一の本来的な回転機構Gを備えている。即ち、第2シール装置Kは、第1シール装置Jと共通の第1、第2部材A、B、及び回転機構Gを備えている。
【0024】
本実施形態では、第2回転装置Yは、第1回転装置Xに追加ユニットZを追加した装置である。ここで言う追加ユニットZとは、第1部材Aと接続される前記接続部材Cと、該接続部材Cと前記第1部材Aとを接続する接続機構Dと、接続部材Cと第2部材Bの間に配置される前記オイルシールOmと、を備えたユニットである。
【0025】
なお、追加ユニットZは、オイルシールを「追加」するための独立ユニットであるから、接続部材Cと第1部材Aを接続する手段として、接続機構Dは該追加ユニットZに必須の構成要素である。しかしながら、(追加ユニットZを用いずに)本シリーズを、当初より第1回転装置Xと第2回転装置Yのシリーズとして構築するならば、接続部材Cと第1部材Aは、必ずしも、追加ユニットZの接続機構Dのような独立した接続機構を用いて接続される必要はない。例えば、第1回転装置X内に第1部材Aと一体的に回転する部材Fがあるときは、接続部材Cがこの部材Fと接続されることにより、間接的に第1部材Aと接続部材Cとが接続されるような構成を採用してもよい。換言するならば、シリーズの一部を構成する第2回転装置Yという観点で見るならば、要は、結果として接続部材Cが第1部材Aと一体的に接続される関係が充足されていれば足りる。即ち、第2回転装置Yは、必ずしも第1回転装置Xから独立した接続機構Dを有している必要はない。
【0026】
以下、減速装置(回転装置)のシリーズを構成する第1、第2減速装置100、200(図1の第1、第2回転装置X、Y)のより具体的な構成について説明する。
【0027】
本実施形態では、第2減速装置200が、第1減速装置100及び追加ユニット162の構成要素を全て含んでいるため、説明の便宜上、第2減速装置200を描写した図2およびその拡大主要部を描写した図3を用いて説明してゆく。第1減速装置100については、該第1減速装置100の主要部を図4に拡大図示したため合わせて参照されたい。
【0028】
なお、第1、第2減速装置100、200に共通の減速機構103(図1の回転機構G)の構成については、後に簡単に触れる。ここでは、シリーズの構成を中心に説明する。
【0029】
本減速装置のシリーズは、ケーシング122(図1の第1部材A)とフランジ体132(図1の第2部材B)が相対的に回転する減速装置のシリーズであり、第1減速装置100と、第2減速装置200を備えている。
【0030】
図2及び図4に示されるように、本シリーズの一部を構成する第1減速装置100(図1の符号X)は、ケーシング122(図1の第1部材A)とフランジ体132(図1の第2部材B)との間にn個(この例では1個:n=1)の第1オイルシール150(図1のオイルシールOn)が配置されている第1シール装置101(図1の符号J)を備えている。
【0031】
これに対し、第2減速装置200(図1の符号Y)は、図2、図3に示すように、第1減速装置100(図1の符号X)に追加ユニット162(図1の符号Z)を取り付けた減速装置である。
【0032】
追加ユニット162(図1の符号Z)は、第1減速装置100に追加して使用するユニットであって、ケーシング122と接続される接続部材156(図1の符号C)と、該接続部材156とケーシング122とを接続する接続機構153(図1の符号D)と、接続部材156とフランジ体132の間に配置されるm個(この例では1個:m=1)の第2オイルシール152(図1のオイルシールOm)と、を備えたユニットである。
【0033】
追加ユニット162は、第1減速装置100のケーシング122と接続部材156とを接続機構153を介して接続することによって第1減速装置100に追加され、フランジ体132と接続部材156の間に第2オイルシール152を追加可能としている。
【0034】
追加ユニット162の接続機構153(図1の符号D)は、接続部材156(図1の符号C)をケーシング122(図1の第1部材A)に接続するためのものなので、本来、追加ユニット162自体に備えられるが、接続機構の機能上、その構成要素の一部がケーシング122の側にあった方がより確実な接続が行える場合がある。本実施形態の場合も、接続機構153は、ケーシング122に設けられたボルト穴154と、接続部材156に設けられた貫通孔155と、該貫通孔155を介してボルト穴154にねじ込まれるボルト158とで構成されており、該接続機構153の一部(ボルト穴154)がケーシング122の側に設けられている。
【0035】
本実施形態の第2減速装置200(図1の符号Y)は、第1減速装置100の第1シール装置101(図1の符号J)に追加ユニット162(図1の符号Z)を加えた第2シール装置201(図1の符号K)を備えている。
【0036】
即ち、第2減速装置200の第2シール装置201(図1の符号K)は、第1シール装置101と共通のケーシング122及びフランジ体132と、ケーシング122に接続されケーシング122と一体的に回転する接続部材156とを備えており、且つケーシング122とフランジ体132の間にn個(前述したようにこの例では1個)の第1オイルシール150が配置されていると共に、接続部材156とフランジ体132の間にm個(この例では1個)の第2オイルシール152が配置されているものである。
【0037】
第2減速装置200の第2シール装置201は、見方を変えて捉えるならば、ケーシング122とフランジ体132の間に第1オイルシール150を備えると共に、接続部材156とフランジ体132の間にも第2オイルシール152が配置されているシール装置であると言うこともできる。
【0038】
なお、本実施形態においては、第2減速装置200において、接続部材156とフランジ体132の間に配置される第2オイルシール152の一部が、(第1部材である)ケーシング122と(第2部材である)フランジ体132の間にも入り込んでいる。具体的には、第1オイルシール150は、ケーシング122の軸方向端面Pよりも軸受136側に入り込んで配置されており、第2オイルシール152の外周部152Cの先端が、第1オイルシール150の軸方向外側の側面に当接している。
【0039】
また、第1、第2オイルシール150、152は、主リップ部150A、152Aとダストリップ部150B、152Bを備えた、いわゆるダブルリップ構造である。第1オイルシール150の主リップ部150Aは、第1オイルシール150の軸受136側(軸方向内側)に備えられている。主リップ部150Aは、第2減速装置200内部の潤滑剤が第2減速装置200から大気中へ漏れることを防止している。また、ダストリップ部150Bは、第1オイルシール150の外部空間側(軸方向外側)に備えられている。ダストリップ部150Bは、大気側から異物が入ることを防止している。
【0040】
なお、第1、第2減速装置100、200の本来的な機能を果たす減速機構103(図1の回転機構G)も第1、第2減速装置100、200で共通である。本発明では、第1、第2回転装置の回転機構の具体的な構成については特に限定されないが、ここで、本実施形態において第1、第2減速装置100、200に具体的に採用されている減速機構103の構成について簡単に説明すると以下の通りである。
【0041】
入力軸102が回転すると、伝動ピニオン104と3個の振り分けギヤ(1個のみ図示)106の噛合により、3本の偏心体軸(1本のみ図示)108が同時に減速回転する。それぞれの偏心体軸108の回転は、第1、第2偏心体110、112を同位相で回転させ、第1、第2ころ140、142を介して第1、第2外歯歯車114、116に伝達される。この結果、第1、第2外歯歯車114、116は、内歯歯車118に内接しながら揺動回転する。内歯歯車118は、既述の(図1の第1部材Aに相当する)ケーシング122と固定(一体化)されている。このため、第1、第2外歯歯車114、116が揺動回転すると、該第1、第2外歯歯車114、116と内歯歯車118の内歯である外ピン120との噛合位置が順次移動する。この噛合位置の移動により、第1、第2外歯歯車114、116の位相が、ケーシング122と一体化されて固定状態にある内歯歯車118に対して歯数差に相当する分だけずれる(自転する)。そのため、偏心体軸108が該自転成分に相当する速度で第2減速装置200の軸心周りで公転し、キャリヤピン(1個のみ図示)138によって連結されている一対のフランジ体130、132が一体となって当該公転速度に相当する速度で回転する。この一対のフランジ体130、132のうちのフランジ体132が、既述の図1の第2部材Bに相当する部材である。
【0042】
この実施形態に係る減速機構103は、このような構成からなり、第1、第2減速装置100、200において共通である。
【0043】
次に、第1、第2減速装置100、200のシリーズの作用を説明する。
【0044】
従来は、組み込むオイルシールの個数が異なる場合、該オイルシールの占有するスペースが異なることから、ケーシングを含め減速装置自体を個別に設計・製造していた。そのため、結果として、オイルシールの個数に応じて複数種類の減速装置を設計・製造することになり、これらの減速装置のシリーズ全体としての総製造コストが高くなってしまっていた。
【0045】
しかしながら、本実施形態に係る第1減速装置100と、第2減速装置200のシリーズによれば、1個の第1オイルシール150を備える第1減速装置100に対して追加ユニット162を追加するだけで、2個の第1、第2オイルシール150、152を備える第2減速装置200を製造することができる。これにより、追加ユニット162の追加、取り外しにより、オイルシールの個数が異なる2種類の第1、第2減速装置100、200を製造することができ、ケーシング122やフランジ体132を含む多くの部材が共用できる。特に、ケーシング122やフランジ体132は、重量部材であり高コストな金型代を必要とするものであるため、これらの部材の共用化が図れると、結果として、大幅に総製造コストを低減できる。
【0046】
また、実施形態においては、接続部材156とフランジ体132の間に配置される第2オイルシール152の一部(外周部152C)が、ケーシング122とフランジ体132の間にも入り込んでいる。これにより、(第2オイルシール152の外周部152Cの先端をケーシング122の軸方向端面Pに沿って、第2オイルシール152を配置するよりも)第2オイルシール152は、接続部材156とケーシング122の間から潤滑剤が漏れることを防止しやすくなる。
【0047】
また、ケーシング122(図1の第1部材A)は、接続機構153(図1の接続機構D)の一部を構成するボルト穴154を備えているため、より堅牢な接続機構を構成することができ、接続部材156をケーシング122に安定して支持することができる。
【0048】
また、ユーザは、シール能力を強化する場合、第2減速装置200を別途購入せずに、追加ユニット162を購入するだけでよいため、安価に減速装置のシール能力を強化することができる。この場合にも、ボルト穴154がケーシング122に予め空けられていることにより、現場で追加ユニット162の追加を容易に行うことができる。例えば、第1オイルシール150の材質が、ガラス繊維である場合には、第1オイルシール150の摩耗が生じやすくなる恐れがあるため、潤滑剤の漏れ防止の観点から、追加ユニット162を装着し、安価にシール能力を強化できる実益は大きい。
【0049】
次に、他の実施形態について説明する。
【0050】
本実施形態にかかる減速装置のシリーズは、オイルシールが1個の第1減速装置300と、オイルシールが2個の第2減速装置400を備えている。図5では追加ユニット362が含まれた構成、即ち第2減速装置400相当の描写がなされている。
【0051】
本実施形態において、第1、第2減速装置300、400に共通の第1シール装置301は、ケーシング322(図1の第1部材A相当)とフランジ体332(図1の第2部材B相当)の間に軸受370が配置されている。この軸受370はシール軸受であり、軸受370の内部に組み込まれている第1、第2シール片370A1、370A2からなるシール部材370Aが、図1に示すオイルシールOnである(本発明にかかるオイルシールである)。軸受370内部のシール部材370Aが、ケーシング322とフランジ体332の間の密閉に寄与し、第2減速装置400内部から外部空間へ潤滑剤が漏れることを防止している。具体的には、軸受370の内・外輪370B、370Cとシール部材370Aで密閉している。即ち、ケーシング322とフランジ体332の間に配置されているオイルシールの個数は1である(n=1)。なお、この場合、第1、第2シール片370A1、370A2は、軸受370の軸方向の両側にあるが、両方を併せて、1個のシール部材370Aとして捉えている。一般に、シール軸受の内部に配置されたシール部材のシール性能は、単体のいわゆるオイルシールのシール性能より劣るが、需要者が要求する一定のシール性能を満たすのであれば、第1部材と第2部材との間に必ずしも単体のいわゆるオイルシールが配置される必要はない。一方、例えば、硬いグリースが潤滑剤として採用され、回転装置内部を移動しにくくなっているとともに、第1、第2部材がラビリンス構造を構成し、グリースが回転装置から外部空間へ漏れることが防止されていて、特にオイルシールが配置されていない構成も考えられる。このような事例が、本発明でいうn=0の事例に相当する。なお、第2回転装置に対して追加されるべきオイルシールの個数mは、オイルシールの追加が目的であるから1以上の整数である(m≧1)。
【0052】
本実施形態においても、ケーシング322とフランジ体332を共用し、追加ユニット362を脱着するだけで、オイルシールの個数が異なる2種類の第1、第2減速装置300、400を製造可能としている。これにより、オイルシールの個数の異なる2種類の第1、第2減速装置300、400をトータルで安く製造することができる。
【0053】
なお、追加ユニット362及び第2減速装置400の構成は、先の実施形態とほぼ同様の構成である。よって先の実施形態の第1、第2減速装置100、200の構造と基本的に同一であるため、第1、第2減速装置100、200と対応する部分(機能的に同様の部分)に、下2桁が同一の符号を付すに止め、重複説明を省略する。
【0054】
なお、本発明における回転装置の追加ユニットは、接続部材が、回転装置が組み込まれる相手側部材によって構成されるようにしてもよい。これにより、回転装置が組み込まれる相手側部材の壁面等を接続部材として代用することができ、接続部材を別途用意する必要がなくなり、追加ユニットを、相手側部材に融合させつつ、回転装置を組み込む装置全体のコンパクト化を図れる。例えば、ロボットアームに回転装置を組み込む場合等に、該ロボットアームの一部の壁面等を接続部材として代用するようにすると、ロボットアーム側への潤滑剤の漏洩をより確実に防止しつつ、接続部材のスペースに相当する分、よりロボットアーム全体の軽量化、コンパクト化が図れるようになる。
【0055】
また、図5の実施形態においては、第1部材と第2部材の間に配置されるオイルシールと、接続部材と第2部材の間に配置されるオイルシールの種類が異なっている。このように、形状、材質、強度等が、異なるオイルシールを組み合わせることにより、様々な環境に応じて最適なシール装置の設計あるいは変更を簡単に行うことができる。種類の異なるオイルシールを採用する他の例としては、例えば、第1部材と第2部材の間に配置されるオイルシールと、接続部材と第2部材の間に配置されるオイルシールの適正使用温度が異なるものである場合、それぞれのオイルシールが、全体として、良好に機能できる温度域が広がり、幅広い温度に対応できるようになる。この結果、急激な温度変化や幅広い温度変化が生じる環境等において、回転装置を幅広く使用できる。
【0056】
更には、接続機構は、要は、接続部材を第1部材に接続できる機構であればよく、その構成はボルト及びボルト穴によるものである必要はない。例えば、凹凸を利用した嵌着構造、あるいは、接続部材を第1部材に圧入する圧着機構や他の装着機構等であってもよい。なお、上記実施形態において、第1部材は、接続部材を該第1部材に接続するための接続機構の一部を備えることで、接続機構の機能をより確実なものとしていたが、元より第1部材は、接続機構の構成要素を全く有していなくても構わない。例えば、接続部材が第1部材の外周に重なるようにして被さり、該接続部材を半径方向に貫通するボルトを第1部材の半径方向外側からねじ込んで押し付けるような構成としてもよい。第1部材が接続機構の構成要素を一切有しない場合、第1回転装置は、製品として、(接続部材を接続するためのボルト穴等のない)より独立性の高い意匠を持つことができる。
【0057】
回転装置内部から潤滑剤の漏れを防止できるシール部材であれば、オイルシールの構造、形状、大きさ、素材及び装置への組み込み態様等は、上記実施形態に示すオイルシールに限らない。また、例えば、単独で配置されるいわゆるオイルシールの構造に関して言えば、上記実施形態に示すダブルリップ構造(主リップとダストリップ)のものであるが、これに限らず、ダブルリップ構造に、更に補助リップを備えたトリプルリップ構造のオイルシールでもよいし、ダブルリップ構造からダストリップを取り除いたシングルリップ構造のオイルシールでもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、第1部材と第2部材の間、接続部材と第2部材の間にそれぞれ1個のオイルシールが配置されているが(n、m=1)、これに限らず、第1部材と第2部材の間、接続部材と第2部材の間にそれぞれ2個以上のオイルシールを配置するようにしてもよい(n、mは2以上の整数であってもよい)。更には、前述したように、第1部材と第2部材の間のオイルシールは、必ずしも配置されている必要はない(nは0であってもよい)。
【0059】
また、上記実施形態では、接続部材と第2部材の間に配置されるオイルシールの一部が、第1部材と第2部材の間に入り込んでいるが、必ずしも第1部材と第2部材の間にまで入り込んでいる必要はない。
【0060】
また、上記実施形態では、回転装置として、減速装置が用いられているが、これに限らず、第1部材と第2部材が相対回転するものであれば、他の回転装置に適用しても良い。また、上記実施形態において、回転装置の第1、第2部材は、それぞれケーシング、フランジ体であったが、これに限らず、相対的に回転する部材であれば他の部材でもよい。
【0061】
また、第1部材と接続部材の対向する端面の間にO−リングやシールゴム等を配置するようにしてもよい。これにより、第1部材と接続部材の間から回転装置内部の潤滑剤が更に漏れにくくすることができる。
【0062】
また、図1を用いて既に説明したように、「追加ユニット」を用いずに、本シリーズを、当初より第1回転装置と第2回転装置のシリーズとして構築するならば、接続部材と第1部材は、必ずしも、独立した接続機構を用いて接続される必要はなく、例えば、第1回転装置内に第1部材と一体的に回転する部材がある場合には、接続部材がこの部材と接続されることによって、(間接的に)第1部材と接続部材とが接続されるような構成としてもよい。
【符号の説明】
【0063】
100(X)…第1回転装置(第1減速装置)
101(J)…第1シール装置
122(A)…第1部材(ケーシング)
132(B)…第2部材(フランジ体)
150(On)…第1部材と第2部材の間に配置されているオイルシール(第1オイルシール)
152(Om)…接続部材と第2部材の間に配置されているオイルシール(第2オイルシール)
156(C)…接続部材
200(Y)…第2回転装置(第2減速装置)
201(K)…第2シール装置
n…第1部材と第2部材との間に配置されているオイルシールの個数
m…接続部材と第2部材の間に配置されているオイルシールの個数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と第2部材が相対的に回転する回転装置のシリーズにおいて、
当該回転装置のシリーズは、第1回転装置と第2回転装置を備えており、
前記第1回転装置は、前記第1部材と第2部材との間にn個のオイルシールが配置された第1シール装置を備えているとともに、
前記第2回転装置は、前記第1シール装置と共通の前記第1、第2部材と、該第1部材に接続され該第1部材と一体的に回転する接続部材とを備えており、且つ前記第1部材と第2部材の間に前記n個のオイルシールが配置されていると共に、前記接続部材と第2部材の間にm個のオイルシールが配置されている第2シール装置を備えている
ことを特徴とする回転装置のシリーズ。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1部材は、前記接続部材を該第1部材に接続するための接続機構の一部を備えている
ことを特徴とする回転装置のシリーズ。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記接続部材が、前記回転装置が組み込まれる相手側部材によって構成される
ことを特徴とする回転装置のシリーズ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記第1部材と第2部材の間に配置されるオイルシールと、前記接続部材と第2部材の間に配置されるオイルシールの種類が異なる
ことを特徴とする回転装置のシリーズ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記接続部材と第2部材の間に配置されるオイルシールの一部が、前記第1部材と第2部材の間にも入り込んでいる
ことを特徴とする回転装置のシリーズ。
【請求項6】
第1部材と第2部材が相対的に回転する回転装置に追加して使用する追加ユニットであって、
前記第1部材と接続される接続部材と、該接続部材と前記第1部材とを接続する接続機構と、前記接続部材と前記第2部材の間に配置されるオイルシールと、を備えている
ことを特徴とする回転装置の追加ユニット。
【請求項7】
第1部材と第2部材が相対的に回転する回転装置のシール装置において、
前記第1部材に接続され、該第1部材と一体的に回転する接続部材を備え、
前記第1部材と第2部材の間にオイルシールを備えると共に、前記接続部材と第2部材の間にもオイルシールが配置されている
ことを特徴とする回転装置のシール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−57672(P2012−57672A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199729(P2010−199729)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】