説明

回転角検出又は回転同期装置用のステータ構造及びその製造方法

【課題】ステータに対して絶縁キャップやコネクタユニット等を一体成形する際に、金型の位置を安定させることができる回転角検出又は回転同期装置用のステータ構造及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】ステータ巻線と電気的に接続されるコネクタピンが表面側に設けられたコネクタユニット60は、その裏面64側に、裏面64に対して凹んだ部分である凹部65が形成される。その凹部65において、ステータ10のコネクタユニット60との接続部分の一部分13が露出される。この一部分13である当接部は、コネクタユニット60をステータ10に対して一体成形する際に、ステータ10を金型内に充填したときにコネクタユニット用の金型に当接される。よって、金型の位置を安定させることができる。なお、凹部65は、当接部13と当接する金型の跡とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルバ、シンクロ等の回転角検出又は回転同期装置用のステータ構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータ及びロータを有し、ステータに対するロータの回転位置によってステータとロータとの間の相互インダクタンスが変化することを利用して、ステータに対するロータの回転角度に応じた検出信号を出力する回転角検出装置としてのレゾルバが知られている(例えば、特許文献1参照)。ここで、図10は、従来のレゾルバの構造を示した図である。図10のレゾルバ200は、内周面210aから内方へ突出する複数のステータティース220が形成された輪状のステータ210を備える。また、ステータ210の内側には、ロータ280がそのステータ210に対して回転可能に設けられる。
【0003】
各ステータティース220には、ステータ巻線250が巻回される。そのステータ巻線250は、複数相の巻線から構成される。具体的には、ステータ巻線250は、励磁信号が入力されてステータティース220を励磁する励磁巻線251と、ロータ280の回転にともなって変化するギャップパーミアンスに応じた検出信号が出力される出力巻線252とを有する。
【0004】
また、ステータ巻線250とステータティース220との絶縁を確保する等のために、各ステータティース220には、その外側を覆うように樹脂製のボビン241が設けられる。すなわち、ステータ巻線250は、各ボビン241の外側に巻回されて、ボビン241を介してステータティース220に巻回される。そして、これらボビン241が一体に形成された絶縁キャップ240が、ステータ210に装着される。
【0005】
また、レゾルバ200は、ステータ巻線250と電気的に接続され、ステータ巻線250に対して励磁信号を入力したり検出信号を出力したりする導電性のコネクタピン270が設けられた樹脂製のコネクタユニット260を備える。そのコネクタユニット260は、ステータ210の一部を覆うようにしてステータ210に接続され、ステータ210に対して径方向に突出するように設けられる。このコネクタユニット260の表面261には、コネクタピン270が設けられるとともに、そのコネクタピン270に接続されるステータ巻線250の導線255が保持される。
【0006】
また、コネクタユニット260の表面261には複数の挿入孔265が形成されている。それら挿入孔265は、表面261の反対側の裏面まで貫通されており、導線255をコネクタピン270に接続する際に、中継ピン(図示外)が挿入される孔である。導線255は、その中継ピンを経由してコネクタピン270に接続される。その接続後、ワニスによって、導線255はコネクタユニット260の表面261に固定される。
【0007】
また従来、レゾルバと同様の構造を有する回転同期装置としてのシンクロが知られている。このシンクロは、レゾルバと同様のステータ及びロータを有し、ステータティースに巻回される出力巻線からロータの回転角に応じて正弦波状に変化する互いに位相角が120度ずれた3相の信号を出力する。そして、同じ構造の2つのシンクロを接続すると、各シンクロから出力される信号の差に基づいて、一方のシンクロのロータが、他方のシンクロのロータと同じ回転角となるように回転される。すなわち、これら2つのシンクロが同期される。このように、シンクロは、一般的に、2個1組で用いられ、この場合、一方をシンクロ発信機と称し、他方をシンクロ受信機と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−344107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、従来、絶縁キャップ及びコネクタユニットは、例えばインサート成形により、ステータに対して一体成形されていた。この場合、絶縁キャップ及びコネクタユニット用の金型内にステータを充填する。この際、絶縁キャップ及びコネクタユニットが形成されないステータの部分(図10の例では、絶縁キャップ400及びコネクタユニット260から露出したステータ210の部分)において、ステータが金型に保持される。その後、その金型に樹脂を流し込んで、絶縁キャップ及びコネクタユニットをステータに対して一体成形する。
【0010】
しかしながら、コネクタユニットは、ステータの一部を覆うように接続されるので、その接続部分においては、ステータを金型で保持することができない。そのため、ステータに対する金型の位置が不安定となる場合があった。金型の位置が不安定となると、絶縁キャップやコネクタユニットを精度良く成形できなくなってしまう。
【0011】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、ステータに対して絶縁キャップやコネクタユニット等を一体成形する際に、金型の位置を安定させることができる回転角検出又は回転同期装置用のステータ構造及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、外側にステータ巻線が巻回されるステータティースが形成されたステータと、
そのステータと接続され、前記ステータ巻線と電気的に接続される導電性のコネクタピンが設けられる樹脂製のコネクタユニットと、を備える回転角検出又は回転同期装置用のステータ構造であって、
前記コネクタユニットは、前記コネクタユニット用の金型内に前記ステータが充填されて、前記ステータに対して一体成形されたものであり、
前記ステータは、前記コネクタユニットとの接続部分において、前記コネクタユニットの成形の際に前記金型に当接される当接部を有することを特徴とする。
【0013】
これによれば、ステータは、コネクタユニットとの接続部分において、コネクタユニットの成形の際に金型に当接される当接部を有するので、その当接部にてステータと当接することで金型の位置を安定させることができる。なお、当接部にて金型に当接された状態で、コネクタユニットが成形されることで、コネクタユニットには、例えば以下のような金型の跡が形成される。
【0014】
すなわち、本発明におけるステータ構造において、前記コネクタユニットは、前記ステータの前記当接部と当接する前記金型の跡として、周囲が壁に囲まれるように凹まれた部分である凹部が形成される。
【0015】
この場合、前記凹部が形成された前記コネクタユニットの面を裏面とし、その裏面の反対側の前記コネクタユニットの面を表面としたときに、
前記表面は、前記コネクタピンと接続される前記ステータ巻線の導線がワニスで固定される面とされ、
前記コネクタユニットは、前記ステータ巻線の導線が前記コネクタピンに接続される際にその導線に掛けられる中継ピンの挿入孔が、前記表面から前記裏面まで貫通するように形成されており、
前記挿入孔が、前記凹部の底面に開口がくるように形成されたとすることができる。
【0016】
これによれば、裏面に凹部が形成されるので、コネクタユニットの表面において、ステータ巻線の導線をワニスで固定することができる。この際、導線に掛けられる中継ピンの挿入孔が形成されるので、導線を固定するワニスが、裏面側まで挿入孔を伝ってくる場合がある。この場合、その挿入孔の開口において、ワニスが表面張力によって留まり、その結果、挿入孔の開口周辺の面に対してワニスのしずくが突出する場合がある。この場合であっても、挿入孔が、凹部の底面に開口がくるように形成されているので、裏面からワニスのしずくが突出するのを防止できる。
【0017】
また、本発明は、外側にステータ巻線が巻回されるステータティースが形成されたステータと、
前記ステータと接続され、前記ステータ巻線と電気的に接続される導電性のコネクタピンが設けられる樹脂製のコネクタユニットと、を備える回転角検出又は回転同期装置用のステータ構造の製造方法であって、
前記ステータの前記コネクタユニットとの接続部分の一部が前記コネクタユニット用の金型に当接されるように、前記ステータを前記金型に充填して、前記ステータに対して前記コネクタユニットを一体成形する工程を含むことを特徴とする。
【0018】
これによれば、コネクタユニットを一体成形する際に、コネクタユニット用の金型が、ステータのコネクタユニットとの接続部分の一部を当接するようにしたので、その金型の位置を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】レゾルバ1の平面図である。
【図2】レゾルバ1の側面図である。
【図3】ステータ10の平面図である。
【図4】コネクタユニット60の裏面側を示した図である。
【図5】裏面側のコネクタユニット60の斜視図である。
【図6】レゾルバ1の製造手順の一例を示したフローチャートである。
【図7】挿入孔631〜635に中継ピン81〜85が設けられた状態を示した図である。
【図8】ワニスがコネクタユニット60の裏面64に対して突出しないことを説明する図である。
【図9】シンクロの用途例を説明する図である。
【図10】従来のレゾルバの構造を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第一実施形態)
以下、本発明に係る回転角検出又は回転同期装置用のステータ構造及びその製造方法の第一実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態の回転角検出装置としてのレゾルバ1の平面図、図2はレゾルバ1の側面図である。また、図3は図1のステータ10の平面図である。レゾルバ1は、磁性材料から構成された輪状のステータ10を備える(図3参照)。そのステータ10は、内周面10aから内方へ突出する複数のステータティース12が形成される。より具体的には、8個のステータティース12が、内周面10aの周に沿って等間隔となるように形成される。そのステータ10は、例えば、磁性材料としての電磁鋼板が複数積層されて構成される。
【0021】
各ステータティース12は、その外側に、後述する樹脂製のボビン41が装着される。そして、そのボビン41の外側に、ステータ巻線50が巻回される。より具体的には、ステータ巻線50として、ステータティース12を励磁するための励磁信号が入力される励磁巻線51と、後述するロータ80の回転角度に応じた検出信号を出力させるための2相分の出力巻線52、53とが巻回される。
【0022】
励磁巻線51は、各ステータティース12を励磁するために、各ステータティース12に所定巻回数だけ巻回される。この際、後述するように、隣り合う2つのステータティース12間で磁気回路を生成させるために、励磁巻線51は、隣り合うステータティース12間で巻回方向が互いに反対方向となるように巻回される。また、各ステータティース12に巻回される各励磁巻線51は、直列接続される。この場合、例えば、1本の導線で、順番に各ステータティース12に巻回することで、各励磁巻線51が直列接続される。そして、この場合、直列接続後の励磁巻線51の両端線55が、後述するコネクタピン70に電気的に接続される。
【0023】
出力巻線52、53は、それぞれ、ロータ80の回転角に応じて正弦波状に変化する検出信号を出力させるための巻線である。ただし、出力巻線52、53は、それぞれから出力される検出信号が互いに位相が異なる巻線とされる。より具体的には、例えば、第1相の出力巻線52がsin相の巻線とされ、第2相の出力巻線53がcos相の巻線とされる。すなわち、第1相の出力巻線52は、ロータ80の回転角度の変化に伴って、sin波状に変化する検出信号が出力される巻線とされる。また、第2相の出力巻線53は、ロータ80の回転角度の変化に伴って、cos波状に変化する検出信号が出力される巻線とされる。この場合、第1相の出力巻線52から出力される検出信号と第2相の出力巻線53から出力される検出信号とは、90度の位相差があることになる。
【0024】
これら出力巻線52、53は、それぞれ所望の検出信号(sin波状に変化する検出信号、cos波状に変化する検出信号)が出力されるように、各ステータティース12に巻回される巻線の巻回数及び巻回方向が調節されている。また、出力巻線52、53は、それぞれ、各ステータティース12に巻回される各出力巻線52、53が直列接続される。この場合も励磁巻線51と同様に、1本の導線で、出力巻線52を構成することにより、各ステータティース12に巻回された各出力巻線52が直列接続されることになる。そして、出力巻線52の両端線55が、コネクタピン70に電気的に接続される。また、出力巻線53についても同様に、1本の導線で、出力巻線53を構成することにより、各ステータティース12に巻回された各出力巻線53が直列接続されることになる。そして、出力巻線53の両端線55が、コネクタピン70に電気的に接続される。
【0025】
このように、各ステータティース12には、ボビン41を介して、励磁巻線51、出力巻線52、53の3相のステータ巻線50が巻回されている。この際、例えば、各ステータティース12における巻回位置をずらして巻回することにより、又は、各ステータティース12において各巻線を重ねて巻回することにより、これら巻線51、52、53が各ステータティース12に巻回される。
【0026】
図1のロータ80は、磁性材料からなり、例えば電磁鋼板が積層されて形成されるドーナツ型の形状とされたものである。そのロータ80は、ステータ10の内側に、ステータ10に対して回転可能に設けられたインナーロータである。より具体的には、ロータ80は、その回転軸回りの回転により各ステータティース12との間のギャップパーミアンスが変化するように、ステータ10に対して回転可能に設けられる。例えば、ロータ80は、軸倍角が「2」であり、所与の半径の円周線を基準に、その円周線の1周につき、平面視おける外形輪郭線が2周期で変化する形状を有している。そして、各ステータティース12の先端面と対向するロータ80の外周側の面が、ロータ80の1回転につき2周期でギャップパーミアンスが変化するようになっている。また、ロータ80は、その回転軸と交差する中心付近において貫通されており、その貫通部にモータ等の回転角度の計測対象物を取り付けることができるようになっている。
【0027】
ステータ10の両端面には、PBT(Poly−butylene−terephtalate:ポリブチレンテレフタレート)やPPT(Polypropylene−terephtalate:ポリプロピレンテレフタレート)等の絶縁性の樹脂からなる輪状の絶縁キャップ40が設けられる。その絶縁キャップ40の内周側には、各ステータティース12の外周を覆うように装着される複数のボビン41が、絶縁キャップ40の構成要素として一体に形成される。換言すると、絶縁キャップ40は、各ステータティース12と対応する部分に形成された8個のボビン41を有する。
【0028】
各ボビン41は、上述したように、その外側にステータ巻線50が巻回される。このように、ボビン41を介してステータ巻線50をステータティース12に巻回することで、ステータ巻線50を各ステータティース12に対して精度良く巻回できるとともに、ステータ巻線50とステータティース12との間の絶縁を確保できる。
【0029】
なお、ステータ10は、絶縁キャップ40が装着された状態において、外周縁部の辺りが絶縁キャップ40から露出している。以下、この露出している部分を露出部11と言う。これに対し、図3に示すステータ10の一部分14は、後述するコネクタユニット60が接続される部分とされる。そのため、そのステータ10の一部分14は、コネクタユニット60が接続された状態では、露出されない部分とされる。なお、以下、そのステータ10の一部分14を接続部分14と言う。
【0030】
また、ステータ10にはコネクタユニット60が接続される。そのコネクタユニット60は、図1、図2に示すように、ステータ10の接続部分14(図3参照)における両端面を挟み込むように、ステータ10と接続される。また、コネクタユニット60は、ステータ10に対して、径方向の外方に突出するように設けられる。そのコネクタユニット60は、PBTやPPT等の絶縁性の樹脂から構成される。なお、本実施形態では、コネクタユニット60は、絶縁キャップ40と一体に形成される。よって、コネクタユニット60は、絶縁キャップ40と同じ樹脂で構成されている。
【0031】
コネクタユニット60の面のうち、図1に表されている面をコネクタユニット60の表面とすると、その表面には、ピン保持面61と端線保持面62とを有する。ピン保持面61には、ステータ巻線50と電気的に接続される導電性のコネクタピン70が設けられる。より具体的には、ピン保持面61には、ステータ巻線50を構成する各巻線51、52、53の各端線55と接続される6個のコネクタピン70が、一列に配置される。
【0032】
これらコネクタピン70は、ステータ巻線50に対して、信号の入出力を行うためのピンである。上述したように、6個のコネクタピン70のうちの2つには、励磁巻線51の両端線55が接続される。また、6個のコネクタピン70のうちの別の2つには、第1相の出力巻線52の両端線55が接続される。また、6個のコネクタピン70のうちの別の2つには、第2相の出力巻線53の両端線55が接続される。そして、励磁巻線51の両端線55が接続された2つのコネクタピン70間に、ステータティース12を励磁するための励磁信号が入力される。また、第1相の出力巻線52の両端線55が接続された2つのコネクタピン70間には、その出力巻線52で発生した検出信号(sin波状に変化する検出信号)が出力される。また、第2相の出力巻線53の両端線55が接続された2つのコネクタピン70間には、その出力巻線53で発生した検出信号(cos波状に変化する検出信号)が出力される。
【0033】
コネクタユニット60の端線保持面62は、ステータ10とピン保持面61との間に位置される。その端線保持面62は、各コネクタピン70に接続されるステータ巻線50の各端線55に経由され、各端線55を保持する面として機能する。なお、各端線55は、端線保持面62においてワニスで固定されている。なお、端線保持面62は、図2に示すように、ステータ10の両端面やピン保持面61に対して斜めとなっている。
【0034】
また、上記のコネクタユニット60の表面と反対側の面を、コネクタユニット60の裏面とすると、コネクタユニット60は、その表面から裏面まで貫通された5つの貫通孔631〜635が形成されている。それら貫通孔631〜635は、それぞれ、貫通孔の開口が、端線保持面62内にくるように、形成されている。より具体的には、貫通孔631〜635は、6個のコネクタピン70の列と略平行の列をなして形成されている。また、図1の方向から見たときに、一番左の第一の貫通孔631は、左から1番目及び2番目のコネクタピン70の下辺りに形成されている。また、左から2番目の第二の貫通孔632は、左から2番目及び3番目のコネクタピン70の下辺りに形成されている。また、左から3番目の第三の貫通孔633は、左から3番目及び4番目のコネクタピン70の下辺りに形成されている。また、左から4番目の第四の貫通孔634は、左から4番目及び5番目のコネクタピン70の下辺りに形成されている。また、左から5番目の第五の貫通孔635は、左から5番目及び6番目のコネクタピン70の下辺りに形成されている。
【0035】
これら貫通孔631〜635は、ステータ巻線50の各端線55を各コネクタピン70に接続する際に設けられる中継ピン(図示外)が挿入される孔である。この中継ピンは、各端線55を各コネクタピン70に接続する際に、その接続をしやすくする等のために、各端線55に掛けられるピンである。このように貫通孔631〜635は中継ピンに挿入される孔であることから、以下、貫通孔を挿入孔と言う。
【0036】
次に、コネクタユニット60の裏面側について説明する。ここで、図4は、レゾルバ1のコネクタユニット60周辺を示すとともに、コネクタユニット60の裏面側を示した図である。また、図5は、図4の裏面側のコネクタユニット60を斜めから見た斜視図である。図4、図5に示すように、コネクタユニット60は、その裏面64側に、裏面64に対して凹まれた部分である凹部65が形成されている。その凹部65は、周囲が四角形状の4つの壁面652〜655に囲まれるとともに、それら壁面652〜655が接続される底面651を有する。この凹部65は、コネクタユニット60を成形する際の金型の跡とされる。
【0037】
また、上述したように、コネクタユニット60は、挿入孔631〜635が、表面62から裏面64まで貫通するように形成されているので、裏面64には、挿入孔631〜635の開口が形成されている。より具体的には、両端の第一、第五の挿入孔631、635の開口は、凹部65の外の裏面64に形成されている。一方、挿入孔631、635の間の第二〜第四の挿入孔632〜634の開口は、凹部65の中、つまり凹部65の底面651に形成されている。
【0038】
また、凹部65には、ステータ10の一部がステータ10側の壁面653から露出している。その露出した部分13は、コネクタユニット60を成形する際に金型に当接される部分である。以下、当接部13と言う。なお、図3には、ステータ10に対する当接部13の位置を破線で示している。図3に示すように、当接部13は、ステータ10の外周縁部に設けられる。また当接部13は、ステータ10の接続部分14内に設けられる。また、当接部13は、接続部分14の周方向中心付近に設けられる。
【0039】
以上のような構成を有するレゾルバ1では、励磁巻線51に励磁信号が入力されることで、各ステータティース12が励磁される。この際、隣り合うステータティース12間で、巻回方向が互いに反対方向となるように励磁巻線51が巻回されているので、隣り合うステータティース12間で磁界の向きが反対方向となるように、各ステータティース12が励磁される。そのため、隣り合う2つのステータティース12及びロータ80間でそれぞれ磁気回路が生成される。この際、ロータ80の回転角度に応じて、各ステータティース12とロータ80との間のギャップパーミアンスが変化するので、各磁気回路に発生する磁束が変化する。また、出力巻線52、53の各ステータティース12における巻回数及び巻回方向が調節されているので、出力巻線52、53には、ロータ80の回転に応じてsin波状、cos波状に変化する検出信号が発生される。よって、第1相の出力巻線52からの検出信号と第2相の出力巻線53からの検出信号に基づいて、ロータ80の回転角度の絶対値を一意に求めることができる。例えば、ロータ80をブラシレスモータの回転軸に固定することにより、そのブラシレスモータの回転角度を求めることができる。
【0040】
次に、レゾルバ1の製造方法について説明する。ここで、図6は、レゾルバ1の製造手順の一例を示したフローチャートである。ステップS10では、ステータ形成工程として、上述したステータ10(図3参照)を形成する。具体的には、例えば、電磁鋼板を複数積層して、その積層された電磁鋼板をプレス加工により、輪状に加工する。また、その際、内周面側に、8個のステータティース12が形成されるように、プレス加工をする。
【0041】
次いで、ステップS11では、絶縁キャップ及びコネクタユニット形成工程として、上述した絶縁キャップ40及びコネクタユニット60を、インサート成型により、ステータ10に対して一体成形する。具体的には、予め絶縁キャップ40及びコネクタユニット60の型に形成された金型(図示外)に、ステップS10で形成したステータ10を所定の位置に充填する(ステータ10を基準とすると、ステータ10に対して金型をセットする。)この際、絶縁キャップ40から露出されるステータ10の露出部11(図3参照)に金型が当接されるように、金型をセットする(金型内にステータ10を充填する)。また、ステータ10のコネクタユニット60との接続部分14には金型が当接されないように、金型をセットする(金型内にステータ10を充填する)。さらに、接続部分14に設けられた当接部13(図3参照)には金型が当接されるように、金型をセットする(金型内にステータ10を充填する)。つまり、ステータ10の露出部11の少なくとも一部及び当接部13と金型とが当接されるように、ステータ10が金型内に充填される。その後、金型に液状の樹脂を流し込み、その樹脂を冷やして固めた後に、金型を外す。これによって、ステータ10に対して、絶縁キャップ40及びコネクタユニット60が一体成形される。
【0042】
なお、金型がステータ10の当接部13に当接された状態で、コネクタユニット60が成形されるので、コネクタユニット60には、その当接部13に当接する金型の跡が形成されることなる。具体的には、コネクタユニット60には、上述した凹部65が形成される。また、その凹部65には、ステータ10の当接部13が露出されることになる。
【0043】
次いで、ステップS12では、ステータ巻線装着工程として、ボビン41を介して各ステータティース12に導線を巻回して、ステータ巻線50を装着する。具体的には、上述したように、励磁巻線51、出力巻線52、53として、それぞれ1本の導線を、各ステータティース12に対して所定巻回数及び所定巻回方向に順番に巻回していく。
【0044】
また、ステップS12では、ステータ巻線50の各端線55を、各コネクタピン70に接続する。この際、図7に示すように、コネクタユニット60に形成された挿入孔631〜635に中継ピン81〜85を設ける。そして、それら中継ピン81〜85を経由させて各端線55を各コネクタピン70に接続する。これによって、各端線55を程よい張力とすることができる。なお、中継ピン81〜85は、例えば、ステップS11でコネクタユニット60を成形する際に、そのコネクタユニット60と一体に設ければよい。また、コネクタユニット60を成形した後に、中継ピン81〜85を挿入孔631〜635に挿入してもよい。
【0045】
また、ステップS12では、端線55を各コネクタピン70に接続した後、中継ピン81〜85を除去する。これによって、各端線55の張力が強くなりすぎるのを防止できる。その結果、熱応力等によって、端線55が切れてしまうのを防止できる。また、ステップS12では、コネクタユニット60の端線保持面62において、各端線55をワニスで固定する。
【0046】
また、図6の工程とは別に、ロータ80を形成するとともに、そのロータ80をステータ10に対して回転可能に設ける工程を行うことで、レゾルバ1が製造される。
【0047】
以上説明したように、本実施形態のレゾルバ1では、ステータ10のコネクタユニット60との接続部分14において、コネクタユニットの成形の際に金型に当接される当接部13を有するので、その当接部13にてステータ10と当接することで金型の位置を安定させることができる。よって、精度良く、コネクタユニット60及び絶縁キャップ40をステータ10に対して一体成形することができる。
【0048】
また、当接部13は、接続部分14における周方向中心付近に設けられるので、ステータ10を均等に金型に当接させることができる。よって、より一層、金型の位置を安定させることができる。
【0049】
また、その当接部13を、コネクタユニット60の裏面側に設けたので、コネクタユニット60の表面側には、金型の跡が形成されない。よって、コネクタユニット60の表面側で、コネクタピン70を設けることができるとともに、ステータ巻線50の端線55を保持し、ワニスで固定することができる。
【0050】
また、中継ピンの5つの挿入孔631〜635のうち、3つの挿入孔632〜634が、凹部65の底面651に開口がくるように形成されているので、以下の効果を得ることができる。ここで、図8は、その効果を説明するための図であり、図1におけるA−A線で切ったときのコネクタユニット60の断面図を示している。なお、図1のA−A線は、左から3番目の第三の挿入孔633を通る線である。図8に示すように、コネクタユニット60の裏面側には凹部65が形成されているとともに、第三の挿入孔633が、コネクタユニット60の表面から凹部65の底面651まで貫通して形成されている。なお、凹部65には、ステータ10の一部である当接部13が露出している。
【0051】
コネクタユニット60の端線保持面62には、上述したように、ワニスでステータ巻線50の端線55が固定される。そのため、そのワニスが、第三の挿入孔633を伝ってくる場合がある。この場合、その第三の挿入孔633の開口において、ワニスが表面張力によって留まり、その結果、挿入孔633の開口周辺の面である凹部65の底面651に対してワニスのしずく90が突出する場合がある(図8参照)。この場合であっても、第三の挿入孔633が、凹部65の底面651に開口がくるように形成されているので、裏面64に対してはワニスのしずくは突出されない。よって、コネクタユニットの裏面に対してワニスのしずくが突出されることによるコネクタユニットの寸法精度がNGとなってしまうのを防止できる。なお、第二の挿入孔632、第四の挿入孔634についても、凹部65の中に形成されているので、図8と同じ効果を得ることができる。
【0052】
(第二実施形態)
上記実施形態ではレゾルバに本発明を適用した例について説明したが、回転同期装置としてのシンクロに本発明を適用してもよい。このシンクロは、ステータとロータとステータティースに巻回されたステータ巻線(励磁巻線、出力巻線)とコネクタピンが設けられるコネクタユニットとを備えており、その出力巻線から、ロータの回転に応じて変化する正弦波信号を出力する点で、レゾルバと同じである。また、シンクロは、3相分の出力巻線がステータティースに巻回され、各出力巻線から出力される出力信号が、互いに位相角が120度ずれている点で、レゾルバと異なっている。このように、シンクロは、ステータ巻線の巻線構造以外はレゾルバと同じと考えることができるので、上記実施形態はそのままシンクロにも適用することができる。すなわち、コネクタユニットとの接続部分において、コネクタユニットの成形の際に金型に当接される当接部をステータに設けることで、その金型の位置を安定させることができる。
【0053】
ここで、図9は、シンクロの用途例を示した図である。シンクロは、図9に示すように、主に、複数の機器間でそれらの運転を同期させるために用いられ、一般的に、同じ構造のシンクロ発信機とシンクロ受信機のセットで用いられる。具体的には、図9において、シンクロとしてのシンクロ発信機702は、その回転軸701が、一方の機器(発信側の機器、図示外)の運転にしたがって回転するように設けられる。そのシンクロ発信機702は、接続された機器の回転角に応じて変化する第1相〜第3相の信号(正弦波信号)を出力する。また、同様に、シンクロとしてのシンクロ受信機703は、その回転軸704が他方の機器(受信側の機器、図示外)の運転にしたがって回転するように設けられる。そのシンクロ受信機703は、接続された機器の回転角に応じて変化する第1相〜第3相の信号(正弦波信号)を出力する。そして、これらシンクロ発信機702とシンクロ受信機703の各相が接続される。これらの動作について、(1)シンクロ発信機702とシンクロ受信機703でロータの位置が異なると、それらの間で電位差が生じ、各相に電流が流れる。(2)その電流によって、シンクロ受信機703のロータが回転する。すなわち、トルクが発生する。(3)シンクロ受信機703のロータ(回転軸704)の回転にともなって、それに接続された受信側の機器が回転される。(4)シンクロ受信機703のロータの位置がシンクロ発信機702のロータの位置と同じになると、各相に電流が流れなくなる。(5)電流が流れなくなると、シンクロ受信機703のロータの回転が停止される。よって、シンクロ発信機702とシンクロ受信機703のロータの位置が同じ、つまり発信側の機器と受信側に機器の運転が同期される。このように、レゾルバと同様に、ロータの回転に応じて変化する正弦波信号を出力するシンクロ発信機及びシンクロ受信機に対して本発明を適用しても、金型の位置を安定させることができるので、好適である。
【0054】
なお、本発明に係る回転角検出又は回転同期装置用のステータ構造及びその製造方法は、上記実施形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々変形することができる。例えば、上記実施形態では、凹部65内に3つの挿入孔632〜634が形成されていたが、全部の挿入孔が凹部内に形成されるように、凹部を大きくしてもよい。これにより、より一層、ワニスがコネクタユニットの裏面から突出されるのを防止できる。
【0055】
また、上記実施形態では、絶縁キャップ40とコネクタユニット60とが一体であるとして説明したが、絶縁キャップ40とコネクタユニット60とが別体であってもよい。この場合、例えば、コネクタユニットについては、インサート成型により、ステータに対して一体成形し、絶縁キャップについては、予め形成したものをステータに装着するようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、ステータの内側にロータが設けられたインナーロータ型のレゾルバ、シンクロについて説明したが、ステータの外側にロータが設けられたアウターロータ型のレゾルバ、シンクロにも適用できる。また、上記実施形態では、ステータティースがステータの内方(半径方向)に向いたレゾルバ、シンクロについて説明したが、ステータティースが軸方向(スラスト方向)に向いたレゾルバ、シンクロにも適用できる。
【符号の説明】
【0057】
1 レゾルバ(回転角検出装置)
10 ステータ
11 露出部
12 ステータティース
13 当接部
14 接続部分
40 絶縁キャップ
41 ボビン
50 ステータ巻線
51 励磁巻線
52、53 出力巻線
55 ステータ巻線の端線
60 コネクタユニット
61 ピン保持面
62 端線保持面
631〜635 挿入孔
64 コネクタユニットの裏面
65 凹部
651 凹部の底面
652〜655 凹部の壁面
70 コネクタピン
80 ロータ
81〜85 中継ピン
702 シンクロ発信機(シンクロ、回転同期装置)
703 シンクロ受信機(シンクロ、回転同期装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側にステータ巻線が巻回されるステータティースが形成されたステータと、
そのステータと接続され、前記ステータ巻線と電気的に接続される導電性のコネクタピンが設けられる樹脂製のコネクタユニットと、を備える回転角検出又は回転同期装置用のステータ構造であって、
前記コネクタユニットは、前記コネクタユニット用の金型内に前記ステータが充填されて、前記ステータに対して一体成形されたものであり、
前記ステータは、前記コネクタユニットとの接続部分において、前記コネクタユニットの成形の際に前記金型に当接される当接部を有することを特徴とする回転角検出又は回転同期装置用のステータ構造。
【請求項2】
前記コネクタユニットは、前記ステータの前記当接部と当接する前記金型の跡として、周囲が壁に囲まれるように凹まれた部分である凹部が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の回転角検出又は回転同期装置用のステータ構造。
【請求項3】
前記凹部が形成された前記コネクタユニットの面を裏面とし、その裏面の反対側の前記コネクタユニットの面を表面としたときに、
前記表面は、前記コネクタピンと接続される前記ステータ巻線の導線がワニスで固定される面とされ、
前記コネクタユニットは、前記ステータ巻線の導線が前記コネクタピンに接続される際にその導線に掛けられる中継ピンの挿入孔が、前記表面から前記裏面まで貫通するように形成されており、
前記挿入孔が、前記凹部の底面に開口がくるように形成されたことを特徴とする請求項2に記載の回転角検出又は回転同期装置用のステータ構造。
【請求項4】
外側にステータ巻線が巻回されるステータティースが形成されたステータと、
前記ステータと接続され、前記ステータ巻線と電気的に接続される導電性のコネクタピンが設けられる樹脂製のコネクタユニットと、を備える回転角検出又は回転同期装置用のステータ構造の製造方法であって、
前記ステータの前記コネクタユニットとの接続部分の一部が前記コネクタユニット用の金型に当接されるように、前記ステータを前記金型に充填して、前記ステータに対して前記コネクタユニットを一体成形する工程を含むことを特徴とする回転角検出又は回転同期装置用のステータ構造の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−239529(P2011−239529A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107502(P2010−107502)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】